説明

遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングするための方法および作用物質

【課題】遺伝子発現およびタンパク質レベルを変化させるためのスクリーニングアッセイ、化合物、ならびに方法、特に、UTR依存的な様式で遺伝子発現をモジュレートしうる作用物質をスクリーニングするためのアッセイ、および遺伝子発現をモジュレートしうる作用物質を提供する。
【解決手段】高レベル哺乳動物発現ベクター、イントロン、およびレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列は標的非翻訳領域(UTR)に近位で連結されている、核酸構築物。高発現構成的プロモーターを標的5'UTRの上流に含む核酸構築物を有する細胞を提供する工程、該細胞を化合物と接触させる工程、レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含有し、かつ標的遺伝子に見出されないUTRは含有しない核酸分子を産生させる工程、および該レポーターポリペプチドを検出する工程、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
配列表の組み入れ
配列表のペーパーコピー、および容量が124,429バイト(MS-DOSで測定した場合)であり、かつ2004年8月16日に記録された「19025.023.SeqList.txt」という名前のファイルを含有するフロッピーディスク上のコンピュータ読み取り可能形式の配列表は、参照により本明細書中に含まれるものとする。
【0002】
発明の背景
遺伝子のヌクレオチド配列を安定なRNAのヌクレオチド配列またはタンパク質のアミノ酸配列へと変換することと定義される遺伝子発現は、あらゆる生物において非常に厳しく調節されている。mRNAの安定性と翻訳両方の遺伝子発現の調節は、栄養レベル、サイトカイン、ホルモン、および温度変化などの発生または環境刺激、ならびに低酸素状態、低カルシウム血症、ウイルス感染および組織損傷のような環境ストレスに対する細胞応答において重要である(GuhaniyogiおよびBrewer, 2001, Gene 265(1-2):11-23に概説されている)。その上、mRNA安定性の変化は、新生物、サラセミア、およびアルツハイマー病などの特定の疾患の原因として関係している(GuhaniyogiおよびBrewer, 2001, Gene 265(1-2):11-23ならびにTranslational Control of Gene Expression, Sonenberg, HersheyおよびMathews編、2000, CSHL Pressに概説されている)。
【0003】
Giordanoらの米国特許第6,558,007号(以後は「007号特許」と記す)では、彼らは5' mRNA UTR偏向(biased)cDNAライブラリーまたは3' mRNA UTR偏向cDNAライブラリーを利用してスクリーニングアッセイを提供することを主張している。007号特許ではさらに、彼らはその5'または3'mRNA UTR偏向cDNAライブラリーを利用して調節性UTR配列を同定する方法を提供することを主張している。007号特許では、2つ以上のUTRの存在により制御される遺伝子、例えば、5' UTRおよび3' UTRに隣接する遺伝子のin vivo状態を模倣したアッセイを提供しているわけではない。さらに、007号特許の手段は、該特許に記載されているライブラリーを必要とする。
【0004】
Pesoleらは、真核生物mRMAの5'-および3'-UTRは遺伝子発現の転写後調節において重要な役割を果たすことが知られていることを主張している。Pesoleら、(2002) Nucleic Acids Research, 3(1):335-340(参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとする)。彼らは、UTR由来の核酸配列を用いて幾つかのデータベースを開発し、記載している。それらのデータベースエントリーの多くは、遺伝子調節において機能的な役割を果たすことが実験的証拠によって証明された配列パターンの存在を含む特定の情報が充実している。Pesoleらは、かかる実験的証拠を取得するためのアッセイを提供せず、かかる実験によりUTRデータベースエントリーのin vivo状態を模倣することを示唆しているわけでもない。さらに、Pesoleらの方法論は、配列解析および過去の実験的証拠に基づいたものである。Pesoleらは、遺伝子発現の転写後調節において重要な役割を果たすことが知られている真核生物mRNAの5'-および3'-UTRをモジュレートするための作用物質(agent)を開発するための実験的スクリーニング方法を提供せず、遺伝子発現の転写後調節において重要な役割を果たす真核生物mRNAの新規な5'-および3'-UTRを見出すための方法論を示唆しているわけでもない。おまけに、Pesoleらの手段は、彼らの文献に記載されているデータベースを必要とする。
【0005】
Trottaらは、La抗原とmdm2 5'UTRとの相互作用によりmdm2 mRNA翻訳が促進されると主張している。Trottaら、(2003) Cancer Cell 3:145-160(参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとする)。彼らは、遺伝子発現の翻訳調節において同様の役割を果たす追加のUTRをスクリーニングまたは同定するための方法または作用物質を示唆しているわけではない。さらに、mdm2 mRNA翻訳の調節をモジュレートするであろう化合物をスクリーニングするための作用物質は何ら提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,558,007号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】GuhaniyogiおよびBrewer, 2001, Gene 265(1-2):11-23
【非特許文献2】Translational Control of Gene Expression, Sonenberg, HersheyおよびMathews編、2000, CSHL Press
【非特許文献3】Pesoleら、(2002) Nucleic Acids Research, 3(1):335-340
【非特許文献4】Trottaら、(2003) Cancer Cell 3:145-160
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高レベル哺乳動物発現ベクター、イントロン、およびレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が標的非翻訳領域(UTR)に近位で連結されている核酸構築物を含む。
【0009】
また本発明は、高レベル哺乳動物発現ベクターおよびレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が1つ以上の標的UTRに直接連結されている核酸構築物も含む。
【0010】
また本発明は、1つ以上の標的UTRに直接連結されたレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子も含む。
【0011】
また本発明は、レポーター核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が1つ以上の標的UTRに直接連結されている、核酸分子の異種集団も含む。
【0012】
また本発明は、化合物をスクリーニングするための核酸構築物を作製する方法であって、a) 遺伝子およびベクターを核酸構築物としてクローニングする工程、b) 該核酸構築物を操作して、発現される遺伝子産物が標的遺伝子に見出されないUTRを持たないようにする工程、ならびにc) 標的UTRを該遺伝子に直接連結する工程、を含む方法も含む。
【0013】
また本発明は、ポリペプチドの発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、a) 細胞を維持する工程であって、該細胞は核酸分子を有し、かつその核酸分子はレポーターポリペプチドをコードする遺伝子を含み、かつそのレポーター遺伝子は標的5' UTRおよび標的3' UTRに隣接している前記工程、b) 該細胞内でUTR複合体を形成させる工程、c) 化合物を該UTR複合体と接触させる工程、ならびにd) 該化合物が該UTR複合体に及ぼす影響を検出する工程、を含む方法も含む。
【0014】
また本発明は、UTR依存的(UTR-dependent)発現をモジュレートする化合物をin vivoでスクリーニングする方法であって、a) 高発現構成的プロモーターを標的5' UTRの上流に含む核酸構築物を有する細胞を提供する工程であって該標的5' UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあり、かつレポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が標的3' UTRの上流にある前記工程、b) 該細胞を化合物と接触させる工程、c) レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含有し、かつ標的遺伝子に見出されないUTRは含有しない核酸分子を産生させる工程、およびd) 該レポーターポリペプチドを検出する工程、を含む方法も含む。
【0015】
また本発明は、UTRの影響を受ける発現(UTR-affected expression)をモジュレートする化合物をin vitroでスクリーニングする方法であって、a) in vitro翻訳系を提供する工程、b) 該in vitro翻訳系を、化合物、および標的5' UTRを含む核酸分子と接触させる工程であって、該標的5' UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあり、かつレポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が標的3' UTRの上流にあり、ここで該核酸分子は標的遺伝子に見出されないUTRを持っていない、前記工程、ならびにc) 該レポーターポリペプチドをin vitroで検出する工程、を含む方法も含む。
【0016】
また本発明は、核酸分子を細胞で発現させる方法であって、a) 異種核酸分子を細胞に与える工程であって、該核酸分子が、標的遺伝子に見出されないUTRを有さず標的UTRに隣接するレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含んでいる、前記工程、およびb) 該レポーターポリペプチドをin vivoで検出する工程、を含む方法も含む。
【0017】
また本発明は、主要ORF非依存的な(main ORF-independent)UTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、a) 標的UTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程、b) 化合物の存在下の該安定細胞系を、化合物の非存在下に対して比較する工程、およびc) 主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択する工程、を含む方法も含む。
【0018】
また本発明は、主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、a) 細胞において標的遺伝子をレポーター遺伝子で置換する工程であって該標的遺伝子の近位に連結された標的UTRは無傷のままであり、かつ細胞は分化細胞である前記工程、b) 該細胞系を増殖させる工程、およびc) 主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択する工程、を含む方法も含む。
【0019】
また本発明は、UTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、a) 標的UTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程であって該安定細胞系はin vivoで見出される標的遺伝子の転写後調節を模倣する(mimic)前記工程、b) 該細胞系を増殖させる工程、およびc) UTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択する工程、を含む方法も含む。
【0020】
また本発明は、UTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、a) 2つ以上の標的UTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程、b) 化合物の存在下の該安定細胞系を、化合物の非存在下に対して比較する工程であって該化合物が1つの標的UTRのみがレポーター遺伝子に近位で連結されている場合はUTR依存的発現をモジュレートしないものである前記工程、およびc) UTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択する工程、を含む方法も含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1には、HIF 1α5'および3'UTR (5+3 UTR)に隣接している場合の、レポーター遺伝子発現のUTR特異性を示す。該レポーター遺伝子は、酸素正常状態条件下および低酸素状態条件下で、HIF 1α 5'および3'UTR (5+3 UTR)、HIF 1α 5'UTR (5'UTR)、HIF 1α 3'UTR (3'UTR)に機能しうる形で連結されているか、またはHIF 1α UTRを有しない(UTRなし)。
【図2】図2Aには、使用したプライマーの位置を表示した構築物の概略図を示す。図2Bには、図2Aに表示したプライマーを使用して安定クローンの品質を調べた、実施例2に記載したRT-PCRの結果を示す。図2Cには、図2Aに表示したプライマーを使用して安定クローンの品質を調べた、実施例2に記載したRT-PCRの結果を示す。
【図3】図3には、表示された各安定クローン細胞系の総タンパク質1マイクログラム当たりのルシフェラーゼ活性を示す。
【図4】図4には、総タンパク質1マイクログラム当たりのルシフェラーゼ活性をアクチンRNAのレベルと比較した増加倍率(fold increase)の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
核酸配列の説明
配列番号1には、ルシフェラーゼ5' 逆方向プライマーを示す。
配列番号2には、ルシフェラーゼ3' 順方向プライマーを示す。
配列番号3には、FLucFを示す。
配列番号4には、FLucRを示す。
配列番号5には、FLucプローブを示す。
配列番号6には、アクセッション番号AF095785のNM_03376から得たホモ・サピエンスVFGF 5' UTRを示す。
配列番号7には、アクセッション番号AF022375から得た3' UTRを示す(配列を得たゲノムコンティグはVEGF-NT_007592である)。
配列番号8には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α5' UTRを示す。
配列番号9には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTRを示す。
配列番号10には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTRに由来するARE1を示す。
配列番号11には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTRに由来するARE1を示す。
配列番号12には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTR由来のARE1を示す。
配列番号13には、参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとするStoecklinら、(2003) Molecular and Cellular Biology, 23(10):3506-3515に論じられている、ホモ・サピエンスTNF-α3' UTRから得た構成的崩壊エレメント(constitutive decay element)(以後は「CDE」と記す)を示す。
配列番号14には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTRに由来する推定第2AREを示す。
配列番号15には、アクセッション番号NM_00594から得たホモ・サピエンスTNF-α3' UTRに由来する推定ポリ(A)シグナルを示す。
配列番号16には、アクセッション番号NM_002392から得たホモ・サピエンスMDM2 5' UTRを示す。
配列番号17には、アクセッション番号NM_004448から得たホモ・サピエンスHer-2 5' UTR配列を示す。
配列番号18には、アクセッション番号NM_004448から得たホモ・サピエンスHer-2 5' uORF配列を示す。
配列番号19には、アクセッション番号NM_004448から得たHer-2 3' UTRを示す。
配列番号20には、VEGF 5' UTRの336ヌクレオチド領域を示す。
配列番号21には、VEGF 5' UTRの476ヌクレオチド領域を示す。
配列番号22には、Her-2 3' UTR由来の73ヌクレオチド配列を示す。
配列番号23には、pcDNA(商標)3.1/Hygro(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)に元から備わっている(native)81ヌクレオチド領域を示す。
配列番号24には、pcDNA(商標)3.1/Hygro(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)に元から備わっている134ヌクレオチド領域を示す。
【0023】
定義
本明細書中で使用する場合、「構築物」という用語は、人為的に操作した核酸分子を指す。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチドを産生しうるDNA断片を指す。
【0025】
本明細書中で使用する場合、「異種」という用語は、種類の異なる(dissimilar)または多様な(diverse)起源を持つ成分または構成物質を指す。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「哺乳動物癌細胞」または「哺乳動物腫瘍細胞」という用語は、哺乳動物から得た不適切に増殖する細胞を指す。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「主要ORF非依存的な機構(main ORF-independent mechanism)」という用語は、その少なくとも1段階が遺伝子発現に関連しておりかつ主要オープンリーディングフレームの核酸配列に依存しない細胞経路または細胞過程を指す。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「レポーター遺伝子」という用語は、その発現を測定しうる遺伝子全てを指す。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「RNA誘導遺伝子サイレンシング、またはRNA干渉(RNAi)」という用語は、2本鎖RNA(dsRNA)を系に導入することにより特定の遺伝子配列のタンパク質発現を低下させる機構を指す。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「特異的に結合(specifically bind)」という用語は、ある化合物が、例えば親和力、機能的親和力などの点で同じタイプの化合物とは異なる様式で別の化合物に結合することを意味する。非限定的な例では、カゼインなどの競合試薬の存在下で結合がより多く生じる。別の非限定的な例では、標的タンパク質と特異的に結合する抗体は、ウェスタンブロットまたは他の免疫化学アッセイに使用した場合、他の分子によって提供される検出シグナルと比べて少なくとも2、5、10、または20倍高い検出シグナルを提供するはずである。代替的な非限定的例では、核酸はその相補的核酸分子と特異的に結合することができる。別の非限定的な例では、転写因子は特定の核酸配列と特異的に結合することができる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「二次構造」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、核酸、修飾核酸を含む化合物、修飾アミノ酸を含む化合物および他の種類の化合物中に、少なくともこれらの化合物の組成がもとで生じるαヘリックス構造、βシート構造、ランダムコイル構造、βターン構造およびらせん状核酸構造を意味する。
【0032】
本明細書中で使用する場合、「非ペプチド性治療薬」という用語および類似用語は、有機および無機化合物(すなわち、タンパク質、ポリペプチドおよび核酸を除くヘテロ有機化合物および有機金属化合物など)が包含されるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「uORF」という用語は、mRNAの主要オープンリーディングフレームの5' UTR内にある、上流オープンリーディングフレーム、すなわち機能タンパク質をコードする部分を指す。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「UTR」という用語は、mRNAの非翻訳領域を指す。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「非翻訳領域依存的発現」または「UTR依存的発現」という用語は、mRNA発現のレベルでの、すなわち、遺伝子の転写が始まってから該遺伝子によりコードされるタンパク質またはRNA産物が分解または排出されるまでの間の、UTRを介した遺伝子発現の調節を指す。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「ベクター」という用語は、ある核酸配列を細胞または生物に導入するために使用する核酸分子を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、非翻訳領域(UTR)が遺伝子の発現をモジュレートしうるという事実、およびかかる発現のモジュレーションが化合物の添加によって変更またはモジュレートされうるという事実を含み、またこれらを利用する。好適な実施形態では、UTRはタンパク質に翻訳されないRNAの領域である。より好適な実施形態では、UTRは、標的化タンパク質に翻訳されないRNA転写産物の隣接領域であり、短い推定オープンリーディングフレームを持つ5' UTRが含まれうる。最も好適な実施形態では、UTRは5' UTR、すなわちコード領域の上流、または3' UTR、すなわちコード領域の下流である。
【0038】
さらに、本発明は、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングする際に有用な作用物質および方法、さらにはハイブリッド分子を含み、またこれらを提供する。
【0039】
核酸作用物質および構築物
当業者であれば、本明細書中で論じた公知技術または等価技術の詳細な説明について一般的な参考テキストを参照することができる。これらのテキストとしては、Ausbelら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc.(1995); Sambrookら、Molecular cloning, A Laboratory Manual (第2版), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); Birrenら、Genome Analysis: A Laboratory Manual, 第1巻〜第4巻、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1997-1999)が挙げられる。勿論、これらのテキストを、本発明の態様を作製または利用する際に参照することもできる。
【0040】
UTR
本発明は、遺伝子発現モジュレーター(GEM)、その断片、および各々の相補体を含むかまたはこれらからなるUTRを持つ核酸分子を含む。本明細書中で使用する場合、UTRは天然に存在するゲノムDNA配列でありうる。好適な実施形態では、UTRは、5' UTR、すなわちコード領域の上流、または3' UTR、すなわちコード領域の下流である。
【0041】
ある実施形態では、本発明のUTRは、配列番号6〜22からなり、さらに各々の断片および全ての相補体を含む群、より選択される核酸配列を含むかまたはそれらの配列からなる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明のUTR、GEM核酸配列、いずれか一方の相補体、およびこれらの配列のいずれかの断片に対して、85%を上回る同一性、およびより好ましくは86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%を上回る同一性を有する核酸配列を含有するかまたは含む。
【0042】
ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、約0.1×〜約10×SSC(蒸留水中にpH 7.0で3 M塩化ナトリウムおよび0.3 Mクエン酸ナトリウムを含有する20×SSCストック溶液から希釈したもの)、約2.5×〜約5×Denhardt溶液(蒸留水中に1%(w/v)ウシ血清アルブミン、1%(w/v)Ficoll(登録商標)(Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ)、および1%(w/v)ポリビニルピロリドンを含有する50×ストック溶液から希釈したもの)、約10 mg/mL〜約100 mg/mLサケ精子DNA、ならびに約0.02%(w/v)〜約0.1%(w/v) SDS中、約20℃〜約70℃で数時間〜一晩のインキュベーションを行う核酸ハイブリダイゼーションを含む。
【0043】
好適な態様では、中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、6×SSC、5×Denhardt溶液、100 mg/mLサケ精子DNA、および0.1%(w/v) SDS中、55℃で数時間のインキュベーションを行うことによって提供される。中程度のストリンジェンシーの洗浄条件は、約0.02%(w/v) SDS中、約55℃で一晩のインキュベーションである。より好適な態様では、高度なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、約2×SSC、約3×Denhardt溶液、および約10 mg/mLサケ精子DNAである。高度なストリンジェンシーの洗浄条件は、約0.05%(w/v) SDS中、約65℃で一晩のインキュベーションである。
【0044】
同一性%は、好ましくは、Sequence Analysis Software Package(商標)(バージョン10、Genetics Computer Group, Inc., University of Wisconsin Biotechnology Center, Madison, WI)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを利用して決定する。「Gap」は、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズムを利用することによって、一致(match)の数が最大となりかつギャップ(gap)の数が最小となる2配列のアラインメントを見出すものである。「Best Fit」は、2つの配列間の類似性が最も高いセグメントの最適アラインメントを行い、さらにSmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズムを利用してギャップを挿入することにより一致の数を最大化する。同一性%の算出は、LASERGENEバイオインフォマティクス計算ソフト(デフォルトパラメーター、DNASTAR Inc., Madison, Wisconsin)のMegalignプログラムを利用して実施してもよい。同一性%は、最も好ましくは、「Best Fit」プログラムを利用し、デフォルトパラメーターを使用して決定する。
【0045】
様々な方法のいずれかを利用して、上記の本発明の核酸分子を1つ以上取得してもよい。自動核酸合成装置をこの目的のために用いてもよい。かかる合成の代わりに、開示されている核酸分子を用いて、所望の核酸分子または断片を増幅および取得するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用しうるプライマー対を定めてもよい。
【0046】
相補的な核酸配列に特異的にハイブリダイズする能力を持つ短い核酸配列は、例えば、所与のサンプルにおいて相補的核酸配列の存在を同定するためのプローブとして、本発明で産生および利用してもよい。あるいは、この短い核酸配列を、PCR技術を利用して相補的な核酸配列を増幅または変異させるためのオリゴヌクレオチドプライマーとして使用してもよい。また、これらのプライマーにより、関連のある相補的核酸配列(例えば、他の種に由来する関連配列)の増幅を容易にしてもよい。
【0047】
これらのプローブまたはプライマーを使用して、現在開示されている構造核酸配列を含有するトランスジェニック細胞または生物の同定を大いに促進してもよい。また、例えば、かかるプローブまたはプライマーを使用することにより、現在開示されているプロモーターおよび構造核酸配列に関連するかもしくはこれらとの相同性を有する追加の核酸配列について、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングしてもよい。また、該プローブは、別の核酸との2本鎖構造の状態でポリメラーゼ活性を惹起することができる核酸分子であるPCRプローブであってもよい。
【0048】
一般に、プライマーまたはプローブは、同定、増幅、または変異させようとする核酸配列の一部であって、その相補体と安定かつ配列特異的な2本鎖分子を形成するのに十分な長さを持つものに対して相補的である。プライマーまたはプローブは、好ましくは約10〜約200残基長、より好ましくは約10〜約100残基長、さらにより好ましくは約10〜約50残基長、および最も好ましくは約14〜約30残基長である。
【0049】
プライマーまたはプローブは、例えば限定するものではないが、直接化学合成により、PCR(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)により、またはその核酸に特異的な断片をより大きな核酸分子から切り出すことにより調製してもよい。PCRプローブの配列を決定するための種々の方法およびPCR技術が当分野に存在する。Primer 3(www-genome.wi.mit. edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi)、STSPipeline(www-genome.wi.mit.edu/cgi-bin/www-STS_Pipeline)、またはGeneUp(Pesoleら、BioTechniques 25:112-123, 1998)などのプログラムを利用するコンピュータ検索を、例えば、潜在的PCRプライマーを同定するために利用することができる。
【0050】
さらに、二次構造の相同性に基づいて本発明の核酸分子を見出すために配列比較を行うことができる。核酸分子の二次構造を予測し比較するために、幾つかの方法およびプログラム、例えば、GeneBee (ワールドワイドウェブ上にあるgenebee.msu.su/services/rna2_reduced.htmlから入手可能)、Vienna RNA Package (ワールドワイドウェブ上にあるtbi.univie.ac.at/~ivo/RNA/から入手可能)、SstructView (ワールドワイドウェブ上にあるStanford Medical Informaticsウェブサイトのprojects/helix/sstructview/home.htmlから入手可能であり、また“RNA Secondary Structure as a Reusable Interface to Biological Information Resources.” 1997. Gene vol. 190GC59-70に記載されている)を利用することができる。例えば、二次構造の比較が、Leら、A common RNA structural motif involved in the internal initiation of translation of cellular mRNAs. 1997. Nuc. Acid. Res. vol. 25(2):362-369で実施されている。
【0051】
UTR複合体
また本発明は、複合体化したUTRも含む。UTR複合体としては、2つ以上の同一UTRの複合体、1つ以上の異なるUTRの複合体、同じ遺伝子に由来する1対のUTRの複合体、1つ以上のUTRと1つ以上のタンパク質との複合体、1つ以上のUTRと1つ以上の核酸との複合体、1つ以上のUTRと1つ以上の核酸分子との複合体が挙げられる。非限定的な例として、UTR複合体は、UTRと低分子干渉RNA(siRNA)との複合体、UTRとRNA/DNAセンス鎖との複合体、またはUTRとRNA/DNAアンチセンス鎖との複合体でありうる。
【0052】
本発明のUTR複合体は、UTRとの非共有結合または共有結合を指す場合がある。好適な実施形態では、核酸分子のGEMまたはUTRは、UTRを持つ核酸分子への複合体構成要素の結合をモジュレートする。より好適な実施形態では、UTR複合体は、核酸分子内のUTRの核酸配列によって様々である。最も好適な実施形態では、UTR複合体に影響を及ぼすUTRの核酸配列は、GEMの存在を表している。好適な実施形態では、UTR、GEM、またはそのいずれか一方の断片はUTR複合体の形成をモジュレートする。もう1つの実施形態では、UTRまたはその断片は、UTR複合体の解離、安定性、または構成要素をモジュレートする。好適な実施形態では、この非共有結合または共有結合は一過性の結合である。より好適な実施形態では、UTR複合体の構成要素はプロセシング中に変動する。最も好適な実施形態では、UTR複合体の構成要素は、細胞型特異的でありうる細胞タンパク質の存在下では、核酸分子内のUTRの核酸配列によって異なる。
【0053】
本発明のUTR複合体は、UTRを含有する核酸分子への1つ以上のリボ核タンパク質の非共有結合または共有結合を含みうる。好適な実施形態では、本発明のGEMまたは本発明の核酸分子のUTRは、核酸分子と1つ以上のリボ核タンパク質との結合をモジュレートする。
【0054】
非限定的な例として、UTR複合体は、先に引用しかつ参照により本明細書中に含まれるものとするPesoleらおよびTrottaらの文献、ならびに参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとするFTPサイトbighost.ba.itb.cnr.it/pub/Embnet/Database/UTR/ (2004年7月20日に利用可能であった)を含むワールドワイドウェブ上で提供されている。その上、本発明のGEMまたはUTRは、Hu抗原R (HuR)媒介型の調節に関与する、AUを豊富に含有するmRNAの大ファミリーに由来するタンパク質(国際公開第03/087815号に引用されているIL-3、c-fos、c-myc、GM-CSF、AT-R1、Cox-2、IL-8またはTNF-αを含む)、RNA認識モチーフ(RRM)スーパーファミリー、核内低分子RNP(snRNP)、hnRNPタンパク質、mRNAタンパク質、エキソン接合部複合体(EJC)タンパク質、細胞質エキソン接合部複合体(cEJC)タンパク質、U snRNAタンパク質、核膜孔複合体タンパク質、デッドボックス(dead-box)ファミリーのタンパク質、スプライシング因子、リボソームタンパク質、ならびに、それぞれ非リボソーム性、非調節性リボソームタンパク質およびクロマチン結合性タンパク質である翻訳特異的タンパク質と相互作用しうる。具体例については、参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとするDreyfuss,ら(2002) Nature Reviews: Molecular Cell Biology 3:195-205を参照されたい。その全内容は参照により本明細書中に含まれるものとするワールドワイドウェブ上のFTPサイトftp.ebi.ac.uk/pub/databases/UTR/ (2004年7月21日に利用可能であった)も参照されたい。本発明では、スプライシング因子として、限定するものではないが、セリン-アルギニン(SR)タンパク質が挙げられる。本発明では、非リボソーム性の翻訳特異的タンパク質として、限定するものではないが、エキソン接合部複合体タンパク質、ポリA結合タンパク質、およびキャップ結合タンパク質が挙げられる。
【0055】
UTR複合体の他の例としては、トリステトラプロリンタンパク質(TTP;参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとするLaiら、(1999) Molecular and Cellular Biology, 19(6):4311-4323を参照されたい)と複合体化したTNF-α mRNA および3' UTR内のAREに結合したTIA-1が挙げられる。TIA-1が認識されると、より多くのTIAが最初のTIA-1に結合するようになる。このTIA複合体は、5' UTRに結合している40 Sのリボソームサブユニットを認識する。従って、TIA-1がAREに結合するのを阻止することで、3' UTR内の結合されるAREの上流にコードされているタンパク質の翻訳が阻止される。参照によりその全内容が本明細書中に含まれるものとするKedershaおよびAnderson, (2002) Biochemical Society Transactions, 30(6):963-969を参照されたい。
【0056】
本発明の構築物
本発明は、核酸構築物を含み、またこれらを提供する。本発明の構築物および他の核酸作用物質がいずれもDNAまたはRNAでありうることは理解されよう。好適な実施形態では、構築物は、UTR、コード配列、またはその両方を持つ核酸分子でありうる。別の実施形態では、構築物は、少なくとも1つの本発明のUTR、レポーターポリペプチドをコードする配列、およびベクターからなる。さらに、本発明の核酸分子はいずれも、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。
【0057】
ベクター
外来性の遺伝物質を、かかる目的のために設計されたベクターまたは構築物を使用して宿主細胞に導入してもよい。本発明の核酸配列はいずれも本発明のベクターまたは構築物に組み入れることができる。本発明のベクターまたは構築物としては、限定するものではないが、線状または閉環状プラスミドが挙げられる。ベクター系は、単一ベクターもしくはプラスミド、または宿主ゲノムに導入しようとする総DNAを一緒に含有する2つ以上のベクターまたはプラスミドであってもよい。好適な実施形態では、ベクターは、哺乳動物細胞もしくは細菌またはその両方において機能するプロモーターを含有する。ベクターまたは構築物を調製するための方法は当分野で周知である。
【0058】
哺乳動物細胞における複製に適したベクターは、ウイルスレプリコン、またはHCVエピトープをコードする適当な配列の宿主ゲノムへの組み込みを保証する配列を含んでいてもよい。例えば、外来DNAを発現させるために使用される別のベクターはワクシニアウイルスである。かかる異種DNAを、通常は、該ウイルスにとって必須ではない遺伝子、例えば、選択可能マーカーをも提供するチミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入する。その結果、組換え生ワクシニアウイルスに感染させた細胞または動物においてHCVポリペプチドの発現が起こる。
【0059】
一般に、宿主細胞と適合する種から得たレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターを細菌宿主と共に使用する。ベクターは通常、複製部位、ならびに形質転換細胞における表現型選抜を提供しうるマーキング配列を担持している。例えば、大腸菌(E.coli)は典型的には、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性に関する遺伝子を含有し、それ故、形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する、pBR322などのベクターから得た骨格を持つ構築物を使用して形質転換する。pBR322プラスミド、または他の微生物プラスミドもしくはファージもまた、選択マーカー遺伝子の発現のために微生物によって使用されうるプロモーターを通常含有するか、または含有するように改変されている。
【0060】
本発明の好適な実施形態では、発現ベクターは、ゲノムに無作為に組み込まれるよう設計された高レベル哺乳動物発現ベクター、例えば、pCMR1でありうる。高レベル発現ベクターは、1細胞当たり約100〜約1000コピー、1細胞当たり約100〜約500コピー、1細胞当たり約500〜約1000コピー、または1細胞当たり約250〜約1000コピーを持つ。ある実施形態では、高レベル哺乳動物発現ベクターは、pUCベクターファミリーから得られる。本発明の好適な実施形態では、発現ベクターは、細胞のゲノムに部位特異的に組み込まれるよう設計された高レベル哺乳動物発現ベクターでありうる。例えば、pMCP1を、Flpリコンビナーゼにより、FRT部位特異的組換え部位を含有するように遺伝子操作された細胞のゲノムに部位特異的に組み込むことができる(例えば、Craig, 1988, Ann. Rev. Genet. 22: 77-105;およびSauer, 1994, Curr. Opin. Biotechnol. 5: 521-527を参照されたい)。
【0061】
プロモーター
構築物にプロモーターを含めることが可能であり、例えば組換えベクターは、典型的には、目的の核酸分子の転写を指令するためのプロモーターを5'から3' 方向で含む。
【0062】
本発明の好適な態様では、構築物に哺乳動物プロモーターを含めることが可能であり、またこれを利用して最適な核酸分子を発現させることができる。本明細書中で使用する場合、「哺乳動物プロモーター」とは、哺乳動物細胞において機能するか、哺乳動物細胞から得たものであるか、またはその両方であるプロモーターを指す。哺乳動物細胞において活性な数多くのプロモーターが文献に記載されている。プロモーターは、ベクターを挿入する細胞型に基づいて選択することができる。
【0063】
本発明の好適なプロモーターは内在性プロモーターである。特に好適なプロモーターは、その発現がGEMによってモジュレートされる標的遺伝子の上流にある。他のプロモーター配列を構築物または他の核酸分子に利用することが可能であり、適切なプロモーターとしては、限定するものではないが、本明細書中に記載したものが挙げられる。
【0064】
哺乳動物細胞のための適切なプロモーターは当分野で公知であり、例として、シミアンウイルス40 (SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)、サイトメガロウイルス(CMV)、およびウシパピローマウイルス(BPV)に由来するプロモーターおよびパルボウイルスB19p6プロモーターなどのウイルスプロモーター、ならびに哺乳動物細胞由来のプロモーターが挙げられる。ウイルスを基にした数多くの発現系を使用して、哺乳動物宿主細胞でレポーター遺伝子を発現させることができる。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、レポーター遺伝子をコードする配列を、後期プロモーターおよび3部リーダー配列(tripartite leader sequence)を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体に連結することができる。
【0065】
好適なプロモーターの他の例としては、組織特異的プロモーターおよび誘導プロモーターが挙げられる。他の好適なプロモーターとしては、造血幹細胞特異的なもの、例えば、CD34、グルコース-6-ホスファターゼ、インターロイキン-1α、CD11cインテグリン遺伝子、GM-CSF、インターロイキン-5Rα、インターロイキン-2、c-fos、h-rasおよびDMD遺伝子のプロモーターが挙げられる。他のプロモーターとしては、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列が挙げられる。
【0066】
細菌宿主での使用に好適な誘導プロモーターとしては、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アラビノースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。とは言え、他の公知の細菌性誘導プロモーターも適している。細菌系で使用するためのプロモーターは、一般に、目的のポリペプチドをコードするDNAに機能しうる形で連結されたシャイン・ダルガルノ配列も含有している。
【0067】
プロモーターは、それらの調節特性、例えば、転写活性の増強、誘導性、組織特異性、および発生段階特異性に基づいて選択することもできる。プロモーターはin vitroで作動することができ、例えばT7プロモーターが挙げられる。特に好適なプロモーターは、非ヒト哺乳動物において本発明の核酸分子を発現させるために使用することもできる。利用しうる追加のプロモーターは、例えば、BernoistおよびChambon, Nature 290:304-310 (1981); Yamamotoら、Cell 22:787-797 (1980); Wagnerら、PNAS 78:1441-1445 (1981); Brinsterら、Nature 296:39-42 (1982)に記載されている。
【0068】
主要ORF
本発明の作用物質および構築物は、主要ORFを持つ核酸分子を含みうる。本明細書中で使用する場合、「主要ORF(main ORF)」は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸分子中にあってポリペプチドをコードする配列を含む核酸配列である。本明細書中で使用する場合、「主要ORF DNA」という用語は、遺伝子のオープンリーディングフレーム、すなわち、タンパク質に翻訳される遺伝子の領域を指す。本明細書中で使用する場合、「ORF」という用語は、mRNAのオープンリーディングフレーム、すなわち、タンパク質に翻訳されるmRNAの領域を指す。本発明の好適な実施形態では、主要ORFは、遺伝子の5' UTR内に含有される上流オープンリーディングフレーム(「uORF」)を有する遺伝子内に存在しうる。本明細書中で使用する場合、「uORF」という用語は、mRNAの主要オープンリーディングフレームの5' UTR内にある、上流オープンリーディングフレーム、すなわち、機能タンパク質をコードする部分を指す。
【0069】
本明細書中で使用する場合、「制御遺伝子」は、使用する標的遺伝子と同一ではないあらゆる遺伝子でありうる。好適な実施形態では、制御遺伝子は、GEMを含有していない遺伝子である。最も好適な実施形態では、制御遺伝子は、GEM配列を除去したかまたは無力化した標的遺伝子である。
【0070】
標的遺伝子
本明細書中で使用する場合、「標的遺伝子」という用語は、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子またはヌクレオチド配列を指す。好適な実施形態では、標的遺伝子は、1)疾患の表現型における標的遺伝子の役割、2)標的遺伝子の発現の転写後調節、および3)医学的ニーズ、市場の規模、および競争相手を含むがこれらに限定されない商業上の考慮事項に基づく調査に合わせて選択される。
【0071】
非常に好適な実施形態では、標的遺伝子は、ミオスタチン、ユートロフィン、α7インテグリン、インスリン様増殖因子1、またはホスホランバンでありうる。最も好適な実施形態では、標的遺伝子は、ユートロフィンアイソフォームA、α7インテグリンアイソフォームX2A、X2DA、X2B、およびX2DB(これらは筋特異的である)、肝外組織で発現されるインスリン様増殖因子1アイソフォームエキソン1-Ea、または骨格筋で特異的に発現されるインスリン様増殖因子1アイソフォームエキソン1-MGFでありうる。
【0072】
好適な実施形態では、標的遺伝子は、皮膚病、癌、炎症性疾患、喘息、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、自己免疫、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、遺伝病、糖尿病、肥満、神経系疾患、中枢神経系(CNS)の疾患、パーキンソン病、疼痛反応の異常、統合失調症、ハンチントン病、心血管疾患、抗感染症(anti-infective diseases)、ヒト免疫不全(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、およびコレラを含むがこれらに限定されない疾患または症状において何らかの役割を果たす標的遺伝子群から選択される。
【0073】
特に好適な標的遺伝子は、癌および炎症性疾患などの組み合わせ;炎症性疾患および喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、アルツハイマー病、自己免疫、SLE、クローン病、またはこれらのいずれかもしくは全ての組み合わせ;糖尿病および肥満;糖尿病および神経性の疾患;CNSおよびアルツハイマー病、疼痛反応の異常、パーキンソン病、ハンチントン病、統合失調症、抗感染症および炎症性疾患、癌、HIV、HCV、HBV、HAV、コレラ、またはこれらのいずれかもしくは全ての組み合わせ;ならびにこれらの疾患の組み合わせの組み合わせを含むがこれらに限定されない2種以上の疾患において役割を果たしうる。
【0074】
最も好適な実施形態では、グルコース恒常性の制御に関与し、また満腹感(satiety)および体重の管理に関与する、糖代謝の酵素などであるがこれらに限定されない標的遺伝子は、疾患または症状を改善する上で特定の機能を有する。好適な実施形態では、標的遺伝子は、ウシ成長因子ホルモン、アドレナリン・リピート(adenaline repeats)、レポーター配列、またはmycもしくはHLAのようなエピトープ・タグを含まない。
【0075】
レポーター遺伝子
本明細書中で使用する場合、「レポーター遺伝子」は、その発現を測定しうる全ての遺伝子である。好適な実施形態では、レポーター遺伝子はいかなるUTRも含まない。より好適な実施形態では、レポーター遺伝子は連続したオープンリーディングフレームである。別の好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、検出可能な発現に関して以前に決定された参照範囲を持ちうる。
【0076】
本発明の構築物は、1つ以上のUTRに融合された1つ以上のレポーター遺伝子を含みうる。例えば、標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートすることが知られているかまたはその疑いがある特定のRNA配列、RNA構造モチーフ、および/またはRNA構造エレメントをレポーター遺伝子に融合させることができる。タンパク質、その断片、またはポリペプチドをコードする本発明のレポーター遺伝子をプロペプチドコード領域に連結することもできる。プロペプチドは、プロタンパク質またはプロ酵素のアミノ末端に見出されるアミノ酸配列である。得られるポリペプチドは、プロポリペプチドまたはプロ酵素(時にチモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般に不活性であり、該プロポリペプチドまたはプロ酵素からのプロペプチドの触媒的または自己触媒的切断により成熟活性ポリペプチドへと変換されうる。
【0077】
レポーター遺伝子は、選択可能またはスクリーニング可能(screenable)なマーカーを発現しうる。また、選択可能マーカーを使用して、外来性遺伝物質を含有する生物または細胞を選択してもよい。かかる遺伝子の例としては、限定するものではないが、neo遺伝子(カナマイシン耐性をコードしており、カナマイシンを使用して選択することができる)、GUS、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼII (nptII)、ルシフェラーゼ(LUX)、または抗生物質耐性コード配列が挙げられる。スクリーニング可能なマーカーを使用して発現をモニターすることができる。スクリーニング可能なマーカーの例としては、その種々の発色基質が知られている酵素をコードするβ-グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)、その種々の発色基質(例えば、PADAC、発色セファロスポリン)が知られている酵素をコードする遺伝子であるβ-ラクタマーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、チロシンをDOPAおよびドパキノン(その後これが縮合してメラニンとなる)へと酸化しうる酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子、ならびに比色アッセイに使用しうるα-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0078】
「選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子」という用語には、形質転換細胞を同定または選択する方法としてその分泌を検出しうる分泌可能マーカーをコードする遺伝子も含まれる。例としては、抗体相互作用により同定しうる分泌可能な抗原、またはその固有の生化学的性質を利用して検出しうる分泌可能な酵素をコードするマーカーも挙げられる。分泌可能なタンパク質は、低分子で(例えばELISAにより)検出可能な拡散性タンパク質、または細胞外液中で検出可能な低分子活性酵素(例えば、α-アミラーゼ、β-ラクタマーゼ、ホスフィノトリシントランスフェラーゼ)を含む、数多くのクラスに分類される。他の考えられる選択可能もしくはスクリーニング可能なマーカー遺伝子、またはその両方は、当業者には自明である。
【0079】
レポーター遺伝子は融合タンパク質を発現しうる。融合タンパク質は、それ自体、別の遺伝子またはその断片に機能しうる形で連結された任意のレポーター遺伝子の融合物でありうる。例えば、発現された融合タンパク質は、GST、GFP、FLAG、またはポリHISなどの融合タンパク質の検出を容易にするための「タグ付き(tagged)」エピトープを提供しうる。かかる融合物は、好ましくは1〜50個のアミノ酸、より好ましくは5〜30個の追加のアミノ酸、さらにより好ましくは5〜20個のアミノ酸をコードする。ある実施形態では、融合タンパク質は、標的タンパク質配列の全部または一部を含む融合タンパク質でありうる。
【0080】
あるいは、前記融合物は、調節機能、酵素機能、細胞シグナル伝達機能、または細胞間輸送機能を提供しうる。例えば、シグナルペプチドをコードする配列を加えることにより、融合タンパク質を真核細胞内の特定の細胞小器官へと誘導することができる。かかる融合パートナーは、好ましくは1〜1000個の追加のアミノ酸、より好ましくは5〜500個の追加のアミノ酸、さらにより好ましくは10〜250個のアミノ酸をコードする。
【0081】
ある実施形態では、レポーター遺伝子は、測定しようとするレポーター遺伝子発現の能力を変更しない1つ以上の変異(例えば、1つ以上の置換、欠失および/または付加)を含む。非常に好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、BamHIおよびNot I部位などのクローニングのために使用しうる1つ以上の制限部位を含有しているが、該制限部位は該レポーター遺伝子の機能を変更するものではない。特に好適な実施形態では、制限部位がレポーターポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームの開始コドンから下流にあり、別の制限部位が該レポーターポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームの終止コドンから上流にある。
【0082】
また本発明は、1つ以上の非翻訳領域(例えば、標的遺伝子の5' UTR、3' UTR、または5' UTRと3' UTRの両方)に隣接したレポーター遺伝子も提供する。さらに本発明は、標的遺伝子の1つ以上のUTRに隣接しており、該UTRが1つ以上の変異(例えば、1つ以上の置換、欠失および/または付加)を含有しているレポーター遺伝子を提供する。好適な実施形態では、5' および3' UTR間の相互作用に干渉する化合物を同定できるように、レポーター遺伝子は5' および3' UTRに隣接している。
【0083】
別の好適な実施形態では、安定なヘアピン二次構造を標的遺伝子のUTR、好ましくは5' UTRに挿入する。例えば、5' UTRがIRES活性を有する場合、安定なヘアピン二次構造の5' UTR内への付加を利用してキャップ依存的翻訳をキャップ非依存的翻訳と区別することができる(例えば、その開示内容は参照によりその全てが本明細書中に含まれるものとするMuhlradら、1995, Mol. Cell. Biol. 15(4):2145-56を参照されたい)。別の実施形態では、イントロンをレポーター遺伝子のUTR(好ましくは5' UTR)内またはORFの5'末端に挿入する。例えば、限定するものではないが、RNAが不安定エレメントを持つ場合、イントロン、例えば、ヒト延長因子1α(EF-1α)の第1イントロンをUTR(好ましくは5' UTR)内またはORFの5'末端にクローニングして発現を高めることができる(例えば、Kimら、2002, J Biotechnol 93(2):183-7(その開示内容は参照によりその全てが本明細書中に含まれるものとする)を参照されたい)。本明細書中で使用する場合、イントロンは、少なくとも2つのスプライス部位を持つ遺伝子に天然に存在しうる。好適な実施形態では、イントロンはUTR内に天然に存在しうる。もう1つの実施形態では、イントロンは、異種遺伝子に天然に存在しうる。もう1つの実施形態では、イントロンは5'および3'スプライス部位によって境された非天然の配列でありうる。好適な実施形態では、安定なヘアピン二次構造とイントロンの両方をレポーター遺伝子構築物に加える。より好適な実施形態では、安定なヘアピン二次構造は5' UTR内にクローニングし、イントロンはレポーターポリペプチドをコードする配列の5'末端に付加する。
【0084】
レポーター遺伝子は、該レポーター遺伝子の翻訳がキャップ依存的翻訳またはキャップ非依存的翻訳(すなわち、内部リボソーム侵入部位を介した翻訳)などであるがこれらに限定されない翻訳開始様式に依存するように配置することができる。あるいは、UTRが上流オープンリーディングフレームを含有している場合、レポーター遺伝子を、UTRのリーディングフレームを移動させることによって以前は翻訳されなかったオープンリーディングフレームが翻訳されるようにする化合物の存在下でのみそのレポータータンパク質が翻訳されるように、配置することができる。
【0085】
レポーター遺伝子構築物は、モノシストロン性またはマルチシストロン性(multicistronic)でありうる。マルチシストロン性レポーター遺伝子構築物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個もしくはそれ以上の、または2〜5個、5〜10個もしくは10〜20個のレポーター遺伝子をコードしていてもよい。例えば、2シストロン性(bicistronic)レポーター遺伝子構築物は、次の順序で下流に向かって、プロモーター、第1レポーター遺伝子、標的遺伝子の5' UTR、第2レポーター遺伝子、および場合によっては標的遺伝子の3' UTRを含む。かかるレポーター構築物においては、両レポーター遺伝子の転写はプロモーターによって駆動されうる。この構築物例においては、本発明は、キャップ依存的走査機構による第1レポーター遺伝子からのmRNAの翻訳、およびキャップ非依存的機構による(例えば、IRESによる)第2レポーター遺伝子からのmRNAの翻訳を含む。このような場合、第2レポーター遺伝子のmRNAのIRES依存的翻訳を、第1レポーター遺伝子のキャップ依存的翻訳に対して正規化することができる。本発明の特に好適な実施形態では、安定なヘアピン二次構造を第1レポーター遺伝子の終止コドンのすぐ下流に挿入することにより、第2レポーター遺伝子の翻訳がキャップ依存的翻訳によっては起こり得ないことを保証する。
【0086】
レポーター遺伝子は、in vitroまたはin vivoで発現させることができる。in vivo発現は、適切な細菌宿主または真核生物宿主内で生じうる。発現のための適切な方法は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Haymesら、Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC (1985);または同様のテキストに記載されている。本発明の融合タンパク質またはペプチド分子は、好ましくは、組換え手段により産生される。これらのタンパク質およびペプチド分子を誘導体化することにより、炭水化物または他の部分(例えば、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)など)を含有させることができる。
【0087】
連結されている(Linked)
本明細書中で使用する場合、連結されている、とは、物理的に連結されていること、機能しうる形で連結されていること、隣接していること、またはこれらのいずれかの組み合わせを意味しうる。好適な実施形態では、プロモーターは、本発明の核酸配列に機能しうる形で連結されており、かつ物理的に連結されている。
【0088】
本明細書中で使用する場合、物理的に連結されているとは、物理的に連結された複数の核酸配列が同じ核酸分子上に存在していることを意味しており、例えばプロモーターは、構築物の一部としてレポーター遺伝子に物理的に連結されうる。物理的な連結が近位である(proximal)場合、該連結は直接的または間接的なものでありうる。一例として、構築物の一部としてレポーター遺伝子に近位で連結されているプロモーターは、該プロモーターと該レポーター遺伝子の間にギャップが入らないように該レポーター遺伝子に直接連結されうる。こうした場合、プロモーターのすぐ後にレポーター遺伝子が続くので、構築物のこれら2つのエレメントの間には該プロモーターまたは該レポーター遺伝子のいずれにも属さない核酸残基は存在しない。レポーター遺伝子に間接的に近位で連結されているプロモーターの例では、プロモーターまたはレポーター遺伝子の一部ではない核酸残基が該プロモーターと該レポーター遺伝子の間に存在する。その核酸配列がプロモーターまたはレポーター遺伝子に由来するものではない場合、ギャップとして、例えば、限定するものではないが、ウシ成長ホルモン遺伝子の断片または一部、特にそのUTRまたは断片;チミジンキナーゼ;ラムダ;SV40を挙げることができる。ギャップはおよそ3個よりも多くの終止コドンから構成されうる。ギャップは異なるコドンリーディングフレーム内に5個未満の終止コドンを持ちうる。さらに、ある実施形態では、ポリリンカーとも呼ばれる複数の制限部位がプロモーターとレポーター遺伝子の間に存在しうる。もう1つの実施形態では、ポリリンカーとも呼ばれる複数の制限部位はプロモーターとレポーター遺伝子との間に存在しない。 好適な実施形態では、ギャップ内の核酸配列は、本発明の作用物質としてクローニングする前はベクターの核酸配列上に位置している。
【0089】
レポーター遺伝子が標的遺伝子のUTRに直接連結されている場合、該レポーター遺伝子の末端核酸残基のうちの少なくとも1つは、標的遺伝子のUTRに由来する核酸配列に化学的に結合されうる。標的遺伝子のUTR(本明細書中では「標的UTR」と記す)は、全UTRまたはその断片でありうる。レポーター遺伝子は、該レポーター遺伝子の末端核酸残基が標的遺伝子のUTRに由来する核酸残基に化学的に結合されていない場合、該標的遺伝子のUTRに間接的に近位で連結されうる。好適な実施形態では、レポーター遺伝子が標的遺伝子のUTRに間接的に近位で連結されている場合、該レポーター遺伝子の最後の核酸残基は、標的遺伝子のUTRから約3残基離れているか、または標的遺伝子のUTRから5個よりも多いが20個未満の残基分離れている場合がある。レポーター遺伝子が標的遺伝子のUTRに直接連結されているがこの標的遺伝子のUTRの後に該標的遺伝子にないUTRが直接続いている場合、該レポーター遺伝子は該標的遺伝子のUTRに直接連結されている。最も好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、スプライシング事象後などに成熟mRNAである標的遺伝子のUTRに直接連結されるが、遺伝子発現過程の初期段階では該標的遺伝子にないUTRによって分断されることがありうる。
【0090】
本発明の好適な実施形態は、標的遺伝子の1つ以上のUTRに隣接したレポーター遺伝子を含有する特定の核酸分子も提供する。標的遺伝子のUTRとは、標的遺伝子内のいずれかのUTRの核酸配列を指す。この好適な実施形態では、標的遺伝子の1つ以上のUTRは、レポーター遺伝子に物理的に連結されるか、機能しうる形で連結されるか、または機能しうる形で物理的に連結されうる。より好適な実施形態では、5'および3' UTR間の相互作用に影響を及ぼす化合物を同定できるように、レポーター遺伝子に標的遺伝子の5'および3' UTRの両方が隣接している。その影響で、かかる相互作用の自由エネルギーが増大または減少することがある。
【0091】
好適な実施形態では、5'および3' UTR間の相互作用に干渉する化合物を同定できるように、レポーター遺伝子に1つ以上の標的遺伝子の5'および3' UTRの両方が隣接している。より好適な実施形態では、レポーター遺伝子に1つの標的遺伝子の5'および3' UTRが隣接しており、また該レポーター遺伝子は1つの標的遺伝子のUTRに物理的に、機能しうる形で、または物理的にかつ機能しうる形で連結されている。最も好適な実施形態では、レポーター遺伝子は、標的遺伝子の1つ以上のUTRに直接的または間接的に近位で連結されている。
【0092】
UTR
本発明の作用物質および構築物は、非翻訳領域(UTR)を持つ核酸分子を含む。好適な態様では、UTRとは、mRNAのUTR、すなわちタンパク質に翻訳されないmRNAの領域を指す。好適な実施形態では、UTRは、遺伝子発現の非翻訳領域依存的調節をモジュレートする1つ以上の調節エレメントを含有する。特に好適な実施形態では、UTRは5' UTR、すなわちコード領域の上流、または3' UTR、すなわちコード領域の下流である。より好適な実施形態では、UTRは1つ以上のGEMを含有する。
【0093】
本発明のUTRは、標的遺伝子、標的RNA、またはレポーター遺伝子に、機能しうる形で、物理的に、または機能しうる形でかつ物理的に連結されうる。本発明の好適な実施形態では、本発明のUTRはレポーター遺伝子に物理的に連結されている。この物理的な、機能しうる形の、または物理的でかつ機能しうる形の連結は、レポーター遺伝子に対して上流、下流、または内部にあってもよい。本明細書中で使用する場合、機能しうる形で連結されているとは、機能しうる形で連結された核酸配列がそれら相応の機能を示すことを意味する。例えば、プロモーターは、レポーター遺伝子に機能しうる形で連結されうる。
【0094】
本発明の好適な実施形態では、本発明のUTRはレポーター遺伝子の上流に物理的に連結されており、もう1つのUTRは該レポーター遺伝子の下流に物理的に連結されている。特に好適な実施形態では、本発明の5' UTRはGEMを含有するかまたはGEMからなるものであって、レポーター遺伝子の上流に物理的にかつ機能しうる形で連結されており、また3' UTRは該レポーター遺伝子の下流に物理的にかつ機能しうる形で連結されている。もう1つの好適な実施形態では、本発明の3' UTRはGEMを含有するかまたはGEMからなるものであって、レポーター遺伝子の下流に物理的にかつ機能しうる形で連結されており、また本発明の5' UTRは該レポーター遺伝子の上流に物理的にかつ機能しうる形で連結されている。もう1つの好適な実施形態では、本発明の5' UTRはGEMを含有するかまたはGEMからなるものであって、レポーター遺伝子の上流に物理的にかつ機能しうる形で連結されており、また本発明の3' UTRはGEMを含有するかまたはGEMからなるものであって、該レポーター遺伝子の下流に物理的にかつ機能しうる形で連結されている。5' UTR、3' UTR、または5'および3' UTRの両方における1つ以上のGEMは、連結された核酸配列とは無関係に、または該配列に依存した形で作用しうる。
【0095】
本発明の好適な実施形態では、本発明のUTRは、イントロンを含有するレポーター遺伝子に物理的に連結されている。本発明のより好適な実施形態では、GEMを含有する本発明のUTRは、イントロンを含有するレポーター遺伝子に物理的に連結されている。本発明の好適な実施形態では、本発明の5' UTRは、レポーター遺伝子の上流に物理的に連結されており、かつ該UTRの内部にイントロンを含有している。本発明の好適な実施形態では、本発明のUTRはレポーター遺伝子の上流に物理的に連結されており、かつUTRは該レポーター遺伝子の下流に物理的に連結されている。
【0096】
遺伝子は、ポリペプチドをコードする核酸配列の前後の領域、およびコード領域のエキソン間のイントロンを含みうる。典型的なmRNAは、5'キャップ、開始コドンの上流の5'非翻訳領域(「5' UTR」)、安定RNAまたは機能タンパク質をコードするコード配列とも呼ばれるオープンリーディングフレーム、終止コドンの下流の3'非翻訳領域(「3' UTR」)、およびポリ(A)尾部を含有する。本発明の核酸は、GEMを含有するUTR、GEM、いずれか一方の断片、またはこれらのいずれかの相補体を含みうる。好適な実施形態では、cis依存的RNAベースのGEMは5' UTR、3' UTR、または5' UTRおよび3' UTRに位置する。
【0097】
GEM
本明細書中で言及する場合、GEMは転写後に標的遺伝子の発現を調節する遺伝子発現モジュレーターである。ある態様では、GEMは標的遺伝子に由来するUTR(本明細書中では以後「標的UTR」と記す)の全長配列ではない。好適な態様では、GEMは全長5' UTRまたは全長3' UTRではない。GEMは、UTR間の相互作用、好ましくは同じ遺伝子に由来する5' UTRおよび3' UTR間(UTR対)の相互作用の結果として発現のモジュレーションに関与する核酸配列を含みうる。ある実施形態では、ある標的遺伝子のGEMは、別の標的遺伝子のGEMに対して一次核酸配列類似性を有する。あるいは、類似機能を持つGEM間に一次核酸配列類似性が全く見られないことがある。好適な実施形態では、ある標的遺伝子のGEMは、別の標的遺伝子のGEMと類似した二次、三次、または二次および三次構造を持ちうる。GEMの例としては、限定するものではないが、IRESエレメント、上流ORF、およびAREが挙げられる。
【0098】
ある実施形態では、本発明のGEMは、遺伝子の転写後にUTR依存的遺伝子発現をモジュレートする、UTR内の核酸配列である。GEMは標的遺伝子内のどこかに位置する核酸配列でありうる。本発明のGEMなどの5' UTR調節エレメントの例としては、鉄反応エレメント(「IRE」)、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、上流オープンリーディングフレーム(「uORF」)、雄特異的致死エレメント(male specific lethal element)(「MSL-2」)、G-カルテットエレメント(G-quartet element)、および5'末端オリゴピリミジン領域(5'-terminal oligopyrimidine tract)(「TOP」)(KeeneおよびTenenbaum, 2002, Mol Cell 9:1161ならびにTranslational Control of Gene Expression, Sonenberg, Hershey, およびMathews編、2000, CSHL Pressに概説されている)が挙げられる。本発明のGEMなどの3' UTR調節エレメントの例としては、AUに富むエレメント(「ARE」)、セレノシステイン挿入配列(「SECIS」)、ヒストンステムループ、細胞質ポリアデニル化エレメント(「CPE」)、ナノス翻訳制御エレメント(nanos translational control element)、アミロイド前駆体タンパク質エレメント(「APP」)、翻訳調節エレメント(「TGE」)、直列反復エレメント(「DRE」)、ブルーノエレメント(bruno element)(「BRE」)、15-リポキシゲナーゼ分化制御エレメント(15-LOX-DICE)、およびG-カルテットエレメント(KeeneおよびTenenbaum, 2002, Mol Cell 9:1161に概説されている)が挙げられる。GEMとしては、他のGEM配列をモジュレートするUTR内の核酸配列が挙げられる。
【0099】
例として、標的遺伝子の5' UTR内のGEMは、同じかまたは別のUTR内のGEM、例えば、同じ標的遺伝子の3' UTR内のGEMのGEM依存的発現をモジュレートすることができる。特に好適な実施形態では、GEMは、GEM活性が5'および3' UTR両方(それらの配列エレメントは単独で機能することができない)の存在を必要とする場合、同じ標的遺伝子の5'および3' UTRの配列間の相互作用によって構成されうる。本発明のGEMは、構築物内の任意の位置に存在しうるものであり、分子の5' UTRまたは3' UTR領域に限定されない。本発明のGEMは、UTRに機能しうる形で、物理的に、または機能しうる形でかつ物理的に連結されうる。本発明のもう1つの実施形態では、本発明のGEMは本発明のUTRである。
【0100】
本発明のある実施形態では、GEMはmRNAのオープンリーディングフレームの開始コドンから約1〜約100残基上流、開始コドンから約150〜約250残基上流、または開始コドンから約300〜約500残基上流に位置する。最も好適な実施形態では、GEMは、開始コドンから上流約30残基以内にある。核酸分子の他のGEMに加えて、または他のGEMに関係なく、本発明のGEMは、mRNAのオープンリーディングフレームの終止コドンから約1〜約100残基下流、終止コドンから約150〜約250残基下流、または終止コドンから約300〜約500残基下流に位置しうる。好適な実施形態では、GEMは終止コドンから下流約30残基以内にある。
【0101】
本発明の実施形態のさらなる例としては、主要ORFの5'末端から上流約1000残基以内、主要ORFの5'末端から上流約500残基以内、主要ORFの5'末端から上流約200残基以内、または主要ORFの5'末端から上流約100残基以内にGEMを含む。また本発明のGEMは、主要ORFの3'末端から下流約1000残基以内、主要ORFの3'末端から下流約500残基以内、主要ORFの3'末端から下流約200残基以内、または主要ORFの3'末端から下流約100残基以内にも位置しうる。好適な実施形態では、GEMは主要ORFの終止コドンから約5残基下流にある。
【0102】
本発明の構築物は、上記のものより多いかまたは少ない構成成分を有しうる。例えば、本発明の構築物は、3' 転写ターミネーター、3' ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳核酸配列、トランジットまたは標的化配列、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー、プロモーター、エンハンサー、およびオペレーターを包含するがこれらに限定されない遺伝的エレメントを所望に応じて含みうる。また本発明の構築物は、宿主細胞染色体への挿入時に内在性プロモーターを利用する、プロモーターを持たない遺伝子も含有しうる。
【0103】
あるいは、本発明の核酸分子をコードする配列を、mRNAプローブの産生のためにベクターにクローニングすることができる。かかるベクターは当分野で公知であり、市販されており、また該ベクターを使用し、標識ヌクレオチドおよびT7、T3、またはSP6などの適当なRNAポリメラーゼを加えることによってin vitroでRNAプローブを合成することができる。これらの手順は、様々な市販のキット(例えば、Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ;およびPromega Co, Madison, WI)を使用して行うことができる。
【0104】
本発明の核酸分子による遺伝子発現のモジュレーション
遺伝子発現のモジュレーションにより、遺伝子発現をより多くまたは少なく生じさせることができる。本発明の核酸分子を使用して遺伝子発現をモジュレートするための多くの手段は当業者に公知である。例えば、遺伝子産物の過剰発現は、本発明の構築物を哺乳動物細胞にトランスフェクトした結果生じうる。同様に、ダウンレギュレーションも、本発明の構築物を哺乳動物細胞にトランスフェクトした結果生じうる。他の非限定的な例としては、RNA干渉(RNAi)などのアンチセンス法、トランスジェニック動物、ハイブリッド、およびリボザイムが挙げられる。後述の実施例は例示のために提供されるものであって、本発明を限定するものとはみなされない。
【0105】
細胞機構
本明細書中で使用する場合、「UTR依存的発現」という用語は、mRNA発現のレベルでの、すなわち、遺伝子の転写が始まってから該遺伝子によりコードされるタンパク質またはRNA産物が分解されるまでの間の、UTRを介した遺伝子発現の調節を指す。好適な実施形態では、「UTR依存的発現」という用語は、mRNAの安定性または翻訳の調節を指す。より好適な実施形態では、「UTR依存的発現」という用語は、UTRに存在する調節エレメントを介した遺伝子発現の調節を指す。標的遺伝子のUTR内にあるGEMの配列を変更することで、該標的遺伝子について観察されるUTR依存的発現の量を変えることができる。
【0106】
本明細書中で使用する場合、「UTRの影響を受ける機構」とは、複数のUTRをそれらの核酸配列に基づいて、または二次、三次もしくは四次構造などのそれらの配列の機能である性質に基づいて区別する細胞機構である。本発明の実施形態では、UTRの影響を受ける機構は、複数のUTRをトランス作用因子のUTR配列依存的な高次複合体構築に基づいて区別する。標的遺伝子のUTR依存的発現のモジュレーションは、UTRの影響を受ける機構が標的遺伝子に作用するその様式が変化した結果生じることがある。例えば、標的遺伝子のUTRは、UTRの影響を受ける機構により標的遺伝子発現に影響を及ぼす、IRESを含有しうる。
【0107】
好適な実施形態では、UTRの影響を受ける機構は、主要ORF非依存的な機構でありうる。本明細書中で使用する場合、「主要ORF非依存的な機構」は、そのうちの少なくとも1段階が遺伝子発現に関連していてかつ主要オープンリーディングフレームの核酸配列に依存しない細胞経路または過程を指す。好適な実施形態では、UTRの影響を受ける機構は、主要ORF非依存的な、UTRの影響を受ける機構である。
【0108】
特定の化合物がUTR非依存的な様式で標的遺伝子の発現をモジュレートすることによってのみ機能しているという可能性を排除するために、レポーター遺伝子に機能しうる形で連結されたUTRに1つ以上の変異を導入し、本明細書中に記載したレポーター遺伝子ベースのアッセイで該レポーター遺伝子の発現に及ぼすその影響を調べることができる。例えば、標的遺伝子の5' UTRの断片を欠失させるかまたは標的遺伝子の5' UTRの断片を別の遺伝子の5' UTRの断片と置換し、さらに本発明のスクリーニングアッセイまたは当業者に周知のアッセイにおいて同定した化合物の存在下および非存在下でレポーター遺伝子の発現を測定することにより、該標的遺伝子の5' UTRを含むレポーター遺伝子構築物を変異させてもよい。標的遺伝子の5' UTRの断片の欠失、または標的遺伝子の5' UTRの断片と別の遺伝子の5' UTRの断片との置換がレポーター遺伝子の発現をモジュレートする化合物の能力に影響を及ぼす場合、欠失させたかまたは置換した5' UTRの断片はレポーター遺伝子発現を調節する該化合物の能力において役割を果たしており、またその調節は、少なくとも部分的にはUTR依存的である。
【0109】
あるいは、または上記試験と併せて、特定の化合物がUTR非依存的な様式で標的遺伝子の発現をモジュレートすることによってのみ機能しているという可能性を、レポーター構築物として利用するベクターを変えることによって調べることができる。レポーター遺伝子発現に及ぼす影響が化合物への曝露後に検出された第1レポーター構築物に由来するレポーター遺伝子に隣接したUTRを、例えば、異なる転写調節エレメント(例えば、異なるプロモーター)および異なる選択可能マーカーを持つ新規レポーター構築物に挿入してもよい。化合物の存在下のレポーター遺伝子発現のレベルは、化合物の非存在下または対照(例えば、PBS)の存在下のレポーター遺伝子発現のレベルと比較することができる。化合物存在下でのレポーター遺伝子の発現のレベルが該化合物の非存在下または対照存在下と比べて変わらない場合、該化合物はおそらくUTR非依存的な様式で機能している。
【0110】
さらなる例としては、追加試験を利用して、特定の化合物がUTR非依存的な様式で標的遺伝子の発現をモジュレートすることにより機能することを評価することができる。これは、例えば、レポーター遺伝子が別の標的遺伝子に由来するUTRに機能しうる形で連結されている場合に前記化合物の影響を測定することによって実施できる。化合物が本来のUTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子発現のレベルに影響を及ぼすその効力を、該化合物が対照UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子発現のレベルに影響を及ぼすその効力と比較することができる。本来のUTRがレポーター遺伝子に機能しうる形で連結されている場合のみ化合物が活性であり、かつ対照UTRがレポーター遺伝子に機能しうる形で連結されている場合にはその活性に有意な低下が見られる場合、該化合物はUTR非依存的な様式で機能する候補化合物である。
【0111】
本発明のアッセイにおいて同定された、標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートしうる化合物(便宜上、本明細書中では「リード」化合物と記す)は、標的RNA(少なくとも1つのUTR、および好ましくはUTRの少なくとも1つのエレメント、例えばGEMを含有するもの)へのUTR依存的結合についてさらに試験することができる。さらに、化合物が標的遺伝子発現に及ぼす影響を評定することにより、シス作用性エレメント、すなわち、UTR依存的発現に関与する特定のヌクレオチド配列を同定してもよい。RNA結合アッセイ、差し引きアッセイ(subtraction assays)、ならびに発現タンパク質濃度および活性アッセイは、遺伝子のUTR依存的発現を調べるための方法例である。
【0112】
ハイブリッド
本発明のある実施形態では、化合物と本発明のGEMとのハイブリッドは、2つの同一ではない分子間に形成されたハイブリッドである。好適な態様では、ハイブリッドは、2つの核酸分子間で形成されうる。例えば、ハイブリッドは、2つのリボ核酸分子間、リボ核酸分子とデオキシリボ核酸分子との間、またはいずれか一方の誘導体間で形成されうる。もう1つの実施形態では、ハイブリッドは、本発明の核酸と非核酸分子との間に形成されうる。好適な実施形態では、ハイブリッドは、核酸分子と、非核酸分子、例えば、ポリペプチドまたは非ペプチド性治療薬との間で形成されうる。
【0113】
リボザイム
本発明のある態様では、遺伝子の活性または発現は、本発明の核酸分子を特異的に指向するトランス切断型触媒RNA(リボザイム)を設計することにより調節される。もう1つの態様では、遺伝子の活性または発現は、本発明の核酸分子を特異的に指向するトランス切断型触媒RNA(リボザイム)を設計することにより調節される。
【0114】
リボザイムは、エンドリボヌクレアーゼ活性を持つRNA分子である。リボザイムは、特定の標的に対して特異的に設計されたものであり、その標的メッセージは特定のヌクレオチド配列を含有している。それらは、細胞RNAを背景とするあらゆるRNA種を部位特異的に切断するよう操作されている。その切断事象はmRNAを不安定にし、タンパク質発現を阻止する。重要なことに、遺伝子の機能をin vitroまたはin vivo状況において調べる目的で、リボザイムを使用し、表現型への影響を検出することによって未知の機能を持つ遺伝子の発現を阻害することができる。
【0115】
一般に使用されているリボザイムモチーフの1つは、基質配列要求性が最も低いハンマーヘッド型である。ハンマーヘッド型リボザイムの設計およびリボザイムの治療的使用については、Usmanら、Current Opin. Strict. Biol. 6:527-533 (1996)に開示されている。またリボザイムは、Longら、FASEB J. 7:25 (1993); Symons, Ann. Rev. Biochem. 61:641 (1992); Perrottaら、Biochem. 31:16-17 (1992); Ojwangら、PNAS 89:10802-10806 (1992);および米国特許第5,254,678号に記載されている通りに調製および使用することもできる。
HIV-I RNAのリボザイムによる切断、リボザイムを使用してRNAを切断する方法、リボザイムの特異性を高めるための方法、ならびにハンマーヘッド構造を持つリボザイム断片の調製および使用については、米国特許第5,144,019号、第5,116,742号、および第5,225,337号、ならびにKoizumiら、Nucleic Acid Res. 17:7059-7071 (1989)に記載されている。ヘアピン構造を持つリボザイム断片の調製および使用については、ChowriraおよびBurke, Nucleic Acids Res. 20:2835 (1992)に記載されている。またリボザイムは、DaubendiekおよびKool, Nat. Biotechnol. 15(3):273-277 (1997)に記載されている通りに転写を進める(rolling)ことによって作製することもできる。
【0116】
リボザイムのハイブリダイズ領域は、改変していてもよいし、またはHornおよびUrdea, Nucleic Acids Res. 17:6959-67 (1989)に記載の分岐構造物として調製してもよい。リボザイムの基本構造は当業者によく知られたやり方で化学的に変更してもよく、また化学的に合成されたリボザイムは、モノマー単位で修飾された合成オリゴヌクレオチド誘導体として投与することができる。治療との関係においては、Birikhら、Eur. J. Biochem. 245:1-16 (1997)に記載されているように、リボザイムのリポソームを介した送達により細胞取り込みが改善される。
【0117】
本発明のリボザイムには、テトラヒメナ好熱菌(Tetrahymena thermophila)に天然に存在し、かつThomas Cechおよび共同研究者達により幅広く記載(Zaugら、Science 224:574-578 (1984); ZaugおよびCech, Science 231:470-475 (1986); Zaugら、Nature, 324:429-433 (1986); 国際公開第88/04300号; BeenおよびCech, Cell 47:207-216 (1986))されているRNAエンドリボヌクレアーゼ(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られている)などのRNAエンドリボヌクレアーゼ(本明細書中では以後「Cech型リボザイム」とする)もまた含まれる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズして標的RNAの切断を引き起こす8塩基対活性部位を持つ。本発明は、標的遺伝子に存在する8塩基対活性部位配列を標的化するCech型リボザイムを包含する。
【0118】
リボザイムは(例えば、改善された安定性、標的化などのために)改変されたオリゴヌクレオチドで構成されうるものであり、また標的遺伝子をin vivoで発現する細胞に送達されるべきものである。好適な送達方法は、内在性メッセージを破壊して翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムをトランスフェクト細胞が産生されうるように、強力な構成的pol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下でリボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含む。リボザイムはアンチセンス分子と違って触媒作用を持つため、効率面では低い細胞内濃度が必要とされる。
【0119】
本発明の核酸配列および当分野で公知の方法を使用して、リボザイムがその対応するmRNA種に特異的に結合してそれらを切断するよう設計される。従って、リボザイムは、開示されている核酸またはそれらの全長遺伝子によりコードされているいかなるタンパク質の発現をも阻害する方法を提供する。特異的阻害リボザイムを設計し使用するために、全長遺伝子の核酸配列が分かっている必要はない。未知の機能を持つ核酸またはcDNAの場合は、その特異的ヌクレオチド配列に対応するリボザイムを、標的転写産物を切断する効力についてin vitroで試験することができる。in vitroで切断を生じるリボザイムをin vivoでさらに試験する。また、リボザイムを使用して、Birikhら、Eur. J. Biochem. 245:1-16 (1997)に記載の疾患動物モデルを作成することもできる。有効なリボザイムを使用し、目的の遺伝子の発現を阻止して細胞における表現型の変化を検出することにより、該遺伝子の機能を調べる。ある遺伝子が疾患のメディエーターであることが分かった場合には、該遺伝子の発現を阻止するために遺伝子治療において有効なリボザイムを設計し、送達する。
【0120】
リボザイムの治療および機能ゲノム学への適用は、阻害しようとする遺伝子のコード配列の一部を知ることから始まる。従って、多くの遺伝子に関しては、部分核酸配列により有効なリボザイムを構築するための十分な配列が提供される。標的切断部位を標的配列内で選択し、該切断部位に隣接する5'および3'ヌクレオチド配列を基にリボザイムを構築する。レトロウイルスベクターを操作することにより、標的コード配列を持つmRNAを標的化する単量体および多量体のハンマーヘッド型リボザイムを発現させる。これらの単量体および多量体のリボザイムを、標的mRNAを切断する能力についてin vitroで試験する。リボザイムを発現するレトロウイルスベクターを細胞系に安定に形質導入し、この形質導入をノーザンブロット分析および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により確認する。該細胞を、疾病マーカーの発現の低下または標的mRNAの遺伝子産物の減少といった指標により、標的mRNAの不活性化についてスクリーニングする。
【0121】
細胞および生物
細胞の形質転換またはトランスフェクションに使用しうる核酸分子は、本発明の核酸分子のうちのいずれかでありうる。本発明の核酸分子は細胞または生物に導入することができる。異種核酸分子は、異なる細胞で産生されたかまたはin vitro転写(Ambion, Inc., Austin, TX)により産生された後に目的の細胞に直接トランスフェクトされたRNA分子でありうる。
【0122】
宿主細胞株を、挿入配列の発現をモジュレートするその能力について選択することにより、所望のやり方で、または内在性もしくは異種標的遺伝子の発現レベルに基づいて、発現されるレポーター遺伝子を加工することができる。発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当分野で公知であり、例としては、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞および数多くの他の細胞系などの、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC, Manassas, VA)から入手できる多くの不死化細胞系が挙げられる。適切な哺乳動物宿主細胞系の非限定的な例としては、下記表1に示すものが挙げられる。
【表1】

【0123】
好適な態様では、本発明の細胞は生物の細胞でありうる。より好適な態様では、該生物は哺乳動物である。最も好適な態様では、該哺乳動物はヒトである。別のより好適な態様では、該生物は非ヒト哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、またはチンパンジーである。本発明のある態様では、細胞は多能性細胞または分化細胞でありうる。
本発明の核酸は、細胞に天然に存在するものでも、または当分野で記載されているような技術を利用して導入されたものでもありうる。DNA断片を細胞に導入し形質転換するための多くの方法が存在するが、その全てがDNAの真核細胞への送達に適しているわけではない。適切な方法としては、DNAの直接送達により、乾燥/阻害媒介DNA取り込みにより、電気穿孔により、炭化ケイ素繊維との攪拌により、DNA被覆粒子の加速により、化学的トランスフェクションにより、リポフェクションまたはリポソーム媒介トランスフェクションにより、塩化カルシウム媒介DNA取り込み等により、DNAを細胞内に導入しうる方法が挙げられる。例えば、限定するものではないが、Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen Co., Carlsbad, CA)およびFugene(登録商標)(Hoffmann-La Roche Inc., Nutley, NJ)を、構築物および低分子干渉RNA(siRNA)などの核酸分子を数種の哺乳動物細胞にトランスフェクトするために使用することができる。あるいは、ある種の実施形態では、加速法が好ましく、例えば微粒子銃(microprojectile bombardment)などが挙げられる。本発明の範囲内で、本発明のトランスフェクト核酸を一過性に、または安定に発現させてもよい。かかるトランスフェクト細胞は、2もしくは3次元細胞培養系または生物に存在させうる。
【0124】
例えば、限定するものではないが、前記構築物は、自律複製構築物、すなわちその複製が染色体の複製とは独立している染色体外物質として存在する構築物、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってもよい。該構築物は、自己複製を確保するための何らかの手段を含有していてもよい。自律複製のために、構築物は、該構築物の宿主細胞における自律複製を可能にする複製起点をさらに含んでいてもよい。あるいは、構築物は、細胞に導入された時に、ゲノムに組み込まれてその組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。この組み込みは、相同的または非相同的組換えの結果生じるものであってもよい。
【0125】
相同的組換えによるゲノムへの構築物または核酸の組み込みは、検討している宿主に関係なく、構築物の核酸配列に依存する。典型的には、構築物は、宿主ゲノムへの相同的組換えによる組み込みを指令するための核酸配列を含有する。これらの核酸配列により、1つ以上の染色体内の1または複数の正確な位置で宿主細胞ゲノムに構築物を組み込むことが可能となる。正確な位置で組み込みが生じる可能性を高めるためには、十分な数の核酸、好ましくは400残基〜1500残基、より好ましくは800残基〜1000残基を各々が含有し、対応する宿主細胞標的配列との相同性が高い2つの核酸配列が存在することが好ましいだろう。これにより相同的組換えの確率が上がる。これらの核酸配列は、宿主細胞標的配列と相同的な配列であればよく、さらに言えば、タンパク質をコードしていてもしていなくてもよい。
【0126】
安定な発現は、組換えタンパク質を長期にわたって高い収率で産生させる上で好ましい。例えば、レポーター遺伝子を安定に発現する細胞系を作製するために、ウイルスの複製起点および/または内在性発現エレメントおよび選択可能マーカー遺伝子を同じであるかまたは別個の構築物上に含有しうる発現構築物を使用して細胞系を形質転換することができる。構築物の導入後は、細胞を強化培地で1〜2日間増殖させてから選択培地に切り替えることができる。選択可能マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、またその存在によって、導入構築物を発現することに成功した細胞の増殖および回収が可能となる。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に合った組織培養技術を利用して増殖させることができる。例えば、Animal Cell Culture, R.I. Freshney編、1986を参照されたい。
【0127】
あらゆる選択系を使用して形質転換細胞系を回収することができる。これらとしては、限定するものではないが、それぞれtk-またはaprt-細胞に用いることができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell11:223-32 (1977))遺伝子およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell22:817-23 (1980 ))遺伝子が挙げられる。また、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤への耐性を選択基準として利用することもできる。例えば、dhfrはメトトレキセートに対する耐性を付与し(Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci.77:3567-70 (1980))、nptはアミノグリコシド、ネオマイシンおよびG-418に対する耐性を付与し(Colbere-Garapinら、J. Mol. Biol..150: 1-14 (1981)、さらにalsおよびpatはそれぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。追加の選択可能遺伝子が記載されている。例えば、trpBによって細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようになるし、またhisDによって細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようになる(HartmanおよびMulligan, Proc. Natl. Acad. Sci.85:8047-51 (1988))。アントシアニン、β-グルクロニダーゼおよびその基質であるGUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質であるルシフェリンなどの可視マーカーを使用することにより、形質転換体を同定したり、特定の構築物系に起因する一過性のまたは安定なタンパク質発現の量を定量化したりすることができる(Rhodesら、Methods Mol. Biol.55:121-131 (1995))。
【0128】
マーカー遺伝子発現の存在はレポーター遺伝子もまた存在することを示唆しているが、その存在および発現は確認する必要があるだろう。例えば、レポーター遺伝子をコードする配列がマーカー遺伝子配列内に挿入された場合、該レポーター遺伝子をコードする配列を含有する形質転換細胞を、該マーカー遺伝子の機能の欠如によって同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子を、単一プロモーターの制御下で、レポーター遺伝子をコードする配列と縦列に配置することができる。誘導または選択に応じた該マーカー遺伝子の発現は、通常、該レポーター遺伝子の発現を表している。
【0129】
あるいは、レポーター遺伝子を含有しかつ発現する宿主細胞を、当業者に公知の様々な手順により同定することができる。これらの手順としては、限定するものではないが、核酸もしくはタンパク質の検出および/もしくは定量化のための膜、溶液、もしくはチップを用いる技術を含む、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーションならびにタンパク質バイオアッセイあるいはイムノアッセイ技術が挙げられる。例えば、レポーター遺伝子の存在は、該レポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドのプローブまたは断片を使用するDNA-DNAもしくはDNA-RNAハイブリダイゼーションまたは増幅により検出することができる。核酸増幅に基づくアッセイは、レポーター遺伝子をコードする配列から選択されたオリゴヌクレオチドを使用して該レポーター遺伝子を含有する形質転換体を検出することを含む。
【0130】
本発明のスクリーニング方法
本発明の別の態様は、遺伝子発現をモジュレートし、また遺伝子発現をより多くまたは少なく生じさせうる作用物質および化合物を同定するためのスクリーニング方法を含む。遺伝子発現をモジュレートする作用物質および化合物をスクリーニングするための多くの方法が当業者に知られている。例えば、遺伝子産物の過剰発現は、本発明の構築物を哺乳動物細胞にトランスフェクトした結果生じうる。同様に、ダウンレギュレーションも、本発明の構築物を哺乳動物細胞にトランスフェクトした結果生じうる。他の非限定的な例としては、RNA干渉(RNAi)などのアンチセンス法、トランスジェニック動物、ハイブリッド、およびリボザイムが挙げられる。後述の実施例は例示のために提供されるものであって、本発明を限定するものとはみなされない。
【0131】
化合物
本発明は、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングするための方法を含む。
あらゆる化合物を本発明のアッセイでスクリーニングすることができる。ある実施形態では、化合物は、核酸またはポリペプチドもしくは非ペプチド性治療薬などの非核酸を含む。好適な実施形態では、核酸は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、またはヌクレオチド類似体でありうる。より好適な実施形態では、化合物は、本発明の特定DNAまたはRNA配列に相補的なヌクレオチド配列であるアンチセンスオリゴヌクレオチドでありうる。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも11ヌクレオチド長であるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50またはそれ以上のヌクレオチド長でありうる。もっと長い配列を使用することもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはその両方の組み合わせでありうる。
【0132】
アンチセンスオリゴヌクレオチド分子を含む核酸分子は、DNA構築物として提供したり、細胞に導入したりすることができる。核酸分子は、アンチセンスまたはセンスであり2本鎖または1本鎖でありうる。好適な実施形態では、核酸分子は、干渉RNA(RNAi)またはミクロRNA(miRNA)でありうる。好適な実施形態では、dsRNAは20〜25残基長であり、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる。
【0133】
オリゴヌクレオチドは、手作業でまたは自動合成装置により、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホラミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミダート、カルボキシメチルエステル、カーボネート、およびリン酸トリエステルといった非ホスホジエステル性ヌクレオチド間結合を用いて、あるヌクレオチドの5'末端を別のヌクレオチドの3'末端と共有結合させることにより、合成できる。Brown, 1994 Meth. Mol. Biol. vol. 20:1-8; Sonveaux, 1994. Meth. Mol. Biol. Vol. 26:1-72;およびUhlmannら、1990. Chem. Rev. vol. 90:543-583を参照されたい。かかる化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容しうる形態もまた包含される。
【0134】
好適な実施形態では、化合物は、ペプチド、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、アミノ酸、またはアミノ酸類似体でありうる。かかる化合物は、手作業で、または自動合成装置により合成することができる。あらゆるペプチド、ポリペプチド、ポリペプチド類似体、アミノ酸、またはアミノ酸類似体が、GEMによって仲介される遺伝子発現のUTR依存的モジュレーションに関与しうる。本発明のアッセイにより検出される化合物は、タンパク質またはリボ核タンパク質を含有するUTR複合体を含むGEMの相互作用をモジュレートしうる。かかる化合物は、GEMおよびタンパク質またはタンパク質複合体の相互作用を高めるかまたは低下させうる。
【0135】
化合物は、化合物ライブラリーのメンバーでありうる。特定の実施形態では、該化合物は、ペプトイド;ランダムバイオオリゴマー(random biooligomers);ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomers);ビニル性ポリペプチド;非ペプチド性ペプチド模倣薬;オリゴカルバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリー;抗体ライブラリー;炭水化物ライブラリー;ならびに有機小分子ライブラリーを含む化合物のコンビナトリアルライブラリーから選択される。好適な実施形態では、有機小分子ライブラリーは、ベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、またはジアゼピンジオンのライブラリーである。
【0136】
別の実施形態では、化合物は、1モル当たり約10,000グラム未満、1モル当たり約5,000グラム未満、1モル当たり約1,000グラム未満、1モル当たり約500グラム未満、1モル当たり約100グラム未満の分子量を持ちうるし、またかかる化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容しうる形態をとりうる。
【0137】
化合物は、その細胞傷害性について総合的に評価することができる。化合物の細胞傷害作用は、例えば、293T(腎臓)、HuH7 (肝臓)、およびHeLa細胞を含む細胞系を使用して、約4、10、16、24、36または72時間にわたって研究することができる。また、正常な繊維芽細胞および末梢血単核細胞(PBMC)などの数多くの一次細胞を、種々の濃度の化合物の存在下で約4日間増殖させることができる。新鮮な化合物を1日おきに加えれば、一定レベルの曝露を経時的に維持することができる。各化合物が細胞増殖に及ぼす影響は、CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega Co, Madison, WI)および[3H]-チミジン取り込みによって調べることができる。上記化合物のうちの幾つかを用いて一部の細胞を処理すると、細胞分裂抑制作用を示す場合がある。各化合物の選択指数(selective index)(細胞傷害性アッセイにおけるCC50と、ELISAまたはFACSまたはレポーター遺伝子アッセイにおけるEC50との比率)を、全てのUTRレポーターおよびタンパク質阻害アッセイについて算出することができる。実質的な選択指数を示す化合物は目的の化合物である可能性があり、機能アッセイにおいてさらに分析することができる。
【0138】
化合物の構造は、本発明の方法の一環として、質量分析、NMR、振動分光法、またはX線結晶構造解析などの周知の方法により決定することができる。
【0139】
化合物は、当分野で既に知られている薬理作用物質でも、または薬理活性を持つことがこれまで知られていなかった化合物でもありうる。該化合物は天然に存在するものでも、または研究室で設計されたものでもありうる。それらは微生物、動物、または植物から単離することができるし、組換えにより産生させるか、または当分野で公知の化学的手法により合成することもできる。必要に応じて、生物ライブラリー、空間的に指定可能な(spatially addressable)パラレル固相または液相ライブラリー、デコンボリューションを要する合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を利用する合成ライブラリー法を含むがこれらに限定されない当分野で公知の多数のコンビナトリアルライブラリー法の任意のものを使用して化合物を取得することができる。分子ライブラリーの合成方法は当分野で周知である(例えば、DeWittら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90, 6909, 1993; Erbら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 11422, 1994; Zuckermannら、J. Med. Chem. 37, 2678, 1994; Choら、Science 261, 1303, 1993; Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2059, 1994; Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2061; Gallopら、J. Med. Chem. 37, 1233, 1994を参照されたい)。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, BioTechniques 13, 412-421, 1992を参照されたい)、あるいはビーズ上(Lam, Nature 354, 82-84, 1991)、チップ上(Fodor, Nature 364, 555-556, 1993)、細菌もしくは胞子上(Ladner, 米国特許第5,223,409号)、プラスミド上(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 1865-1869, 1992)、 またはファージ上(ScottおよびSmith, Science 249, 386-390, 1990; Devlin, Science 249, 404-406, 1990); Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222, 301-310, 1991; ならびにLadner, 米国特許第5,223,409号)に提示することができる。
【0140】
化合物をスクリーニングするための本発明の方法により、標的遺伝子から転写されたリボ核酸分子に直接結合しうる、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物を選択することができる。好適な実施形態では、本発明の方法に従って同定される化合物は、標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートする1つ以上のトランス作用因子(例えば、限定するものではないが、タンパク質)に結合しうるものであってもよい。別の好適な実施形態では、本発明に従って同定される化合物は、5' UTRと3' UTRとの相互作用を中断させるものであってもよい。
【0141】
化合物は、当業者に周知であるかまたは本発明において提供されるin vitroアッセイ(例えば、無細胞アッセイ)またはin vivoアッセイ(例えば、細胞を用いるアッセイ)を利用して試験することができる。標的遺伝子の発現をモジュレートする化合物は、本発明において提供される方法で決定することができる。本発明のUTRとしては、化合物の存在下で、非存在下で、または存在下および非存在下で遺伝子発現をモジュレートしうるUTRが挙げられる。好適な実施形態では、化合物が1つ以上の遺伝子の発現に及ぼす影響を、当業者に周知であるかまたは本発明により提供されるアッセイを利用して調べることにより、標的遺伝子のUTR依存的発現に及ぼす特定の化合物の影響の特異性を評価することができる。より好適な実施形態では、化合物は、複数の遺伝子に対して特異性を示す。別のより好適な実施形態では、本発明の方法を利用して同定される化合物は、たった1つの遺伝子、あるいは、同じシグナル伝達経路内の一群の遺伝子を特異的に発現させることができる。本発明のアッセイにおいて同定された化合物は、UTR依存的遺伝子発現に関与する標的RNAエレメントを含有するかまたは含有するように操作された宿主細胞を機能的な読み出し系と併用して、生物活性について試験することができる。
【0142】
スクリーニングアッセイ
本発明は、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングしうるアッセイを含み、またこれを提供する。本発明の好適な態様では、アッセイはin vitroアッセイである。本発明の別の態様では、アッセイはin vivoアッセイである。本発明の別の好適な態様では、アッセイは翻訳を評価する。本発明の好適な態様では、アッセイは本発明の核酸分子または本発明の構築物を含む。本発明の核酸分子または構築物としては、限定するものではないが、GEM、またはその機能が変更されない形で核酸配列が欠失しているか、置換されているか、もしくは付加されているという点でGEM内の残基の任意のものと異なる配列が挙げられる。また本発明は、本発明の全ての核酸分子の断片および相補体も提供する。
【0143】
好適な本発明のある態様では、レポーター遺伝子の活性または発現がモジュレートされる。モジュレートされるとは、翻訳の前、後、またはその最中のいずれかの期間に発現が高められるかまたは低下することを意味する。好適な実施形態では、レポーター遺伝子の活性または発現は、翻訳中にモジュレートされる。例えば、レポーター遺伝子の翻訳の阻害によって発現をモジュレートすることができる。もう1つの例では、翻訳が阻害されていないにもかかわらず発現されたタンパク質の定常状態レベルが低下した場合には、レポーター遺伝子の発現レベルはモジュレートされている。さらなる例としては、mRNAの半減期の変化によって発現がモジュレートされうる。
【0144】
もう1つの実施形態では、レポーター遺伝子のモジュレートされた活性または発現とは、翻訳の前、その最中、または翻訳後のいずれかの時点で高められたかまたは低下した発現を意味する。
【0145】
より好適な態様では、レポーター遺伝子または標的遺伝子の活性または発現は、化合物の存在下で30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%よりも大きくモジュレートされる。非常に好適な態様では、より大きな影響が癌細胞において観察される。
【0146】
レポーター遺伝子の発現は、例えば、当分野で公知の技術を用いて検出することができる。レポーター遺伝子の翻訳はin vitroまたはin vivoで検出することができる。検出アッセイでは、化合物またはレポーター遺伝子のいずれか一方は、蛍光、放射性同位体もしくは化学発光標識などの検出可能な標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素標識を含みうる。
【0147】
本発明のアッセイを使用して、ある標的遺伝子に由来する1または複数のUTRに影響を及ぼす化合物を決定することができる。好適な実施形態では、単一標的遺伝子に由来する5' UTR、3' UTR、または5' および3' UTRに影響を及ぼす化合物を検出することができる。別の好適な実施形態では、複数の標的遺伝子に由来する5' および3' UTRをそれぞれ複数の化合物と反応させて、化合物がUTRに及ぼす影響を検出することができる。
【0148】
本発明のアッセイでは、化合物の影響を受けた1つ以上のUTRの結果を、該UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現のモジュレーションに基づいて定性的に、定量的に、または定性的かつ定量的に調べる。UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現のモジュレーションは、化合物の非存在下でのUTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現に対するものであってよく、異なる用量の同じ化合物と比較したもの、別の化合物と比較したもの、別のUTR/化合物の影響の反応と比較したもの、またはこれらの比較結果を組み合わせることにより比較したものであってよい。
【0149】
化合物は、レポーター遺伝子に機能しうる形で連結された1つまたは複数のUTRと反応させることができる。化合物がUTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子の発現をモジュレートする場合、該化合物を、試験した1つ以上のUTRに関して特異的に活性であるか、非特異的に活性であるか、または不活性であるかを決定することができる。化合物が試験した全UTRではなく一部のUTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子の発現をモジュレートする場合、該化合物は特異的に活性である。化合物が試験したUTR全てに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子の発現を同様にモジュレートする場合、該化合物は非特異的に活性である。化合物が2つ以上のUTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子の発現を同様にモジュレートするかどうかは、統計的に調べることができる。化合物が及ぼす影響により、試験したUTRについて10倍以内の規模でレポーター遺伝子発現がモジュレートされる場合、同様のモジュレーションが起きている。化合物が試験したUTRのいずれかに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現をモジュレートしない場合、該化合物は不活性である。
【0150】
1つ以上のUTRは、1つ以上の化合物を用いて試験することができる。好適な実施形態では、試験するUTRは幾つあってもよく、例えば、限定するものではないが、1、10、何百、何千、何万、または何十万個ものUTRまたはUTR対(この場合、UTR対とは、同一標的遺伝子に由来する5' UTRおよび3' UTRを指す)が存在しうる。好適な実施形態では、1対のUTRを約2,000〜約5,000個の化合物と反応させる。より好適な実施形態では、各UTRを約3〜約7倍の濃度の各化合物と、例えば、限定するものではないが、4.10倍の用量応答を利用して、反応させる。
【0151】
本発明の化合物は、標的遺伝子に由来するUTRに及ぼすそれらの影響に基づいて分類することができる。好適な実施形態では、化合物を、UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現をモジュレートするそれらの能力に基づいて分類することができる。化合物の分類区分としては、例えば限定するものではないが、試験したUTRの50%以上をモジュレートする化合物、試験したUTRの50%未満のモジュレーションをモジュレートする化合物、いずれかの濃度で標的遺伝子に由来する少なくとも1つのUTRをモジュレートする化合物、試験したUTRの25%以上をモジュレートする化合物、試験したいずれかの濃度において少なくとも1つの標的UTRのモジュレーションの差が他のいずれかの標的UTRの25%以上である化合物、試験した少なくとも1種の濃度に関して少なくとも1つの標的UTRのモジュレーションの差が他のいずれかのUTR標的の25%以上である化合物、および試験した少なくとも1つの標的UTRについて奇妙な形の用量応答曲線を示す化合物、を挙げることができる。あるいは、本発明の化合物を、該化合物が少なくとも1つの標的UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現をモジュレートしうる濃度に基づいて分類することもできる。
【0152】
好適な実施形態では、大部分の化合物はUTR選択性を欠いており、少なくとも1つの標的UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現を同様にモジュレートする。より好適な実施形態では、大部分の化合物はUTR選択性を欠いており、少なくとも4つの異なる標的遺伝子に由来する少なくとも1つの標的UTRに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子からの発現を同様にモジュレートする。最も好適な実施形態では、約5,000個の無作為に選んだ化合物のうちの約10〜約50個の化合物が、少なくとも4つの異なる標的遺伝子にわたって4倍以上の2因子間(pairwise)IC50比を示す。
【0153】
最も好適な態様では、レポーター遺伝子の活性または発現は、一般的な無差別(indiscriminate)翻訳活性については制御遺伝子の活性が変更されることなくモジュレートされる。本明細書中で使用する場合、無差別翻訳活性とは、無作為もしくは非体系的な翻訳レベルまたは活性におけるモジュレーションを指す。一般的な無差別翻訳活性におけるモジュレーションのためのあるアッセイでは、一般的な翻訳インヒビター、例えば、活発に翻訳を行っているリボソームから新生ペプチドおよびmRNAを遊離させるインヒビターであるピューロマイシンを使用する。
【0154】
ハイスループットスクリーニングは、本発明の核酸分子を化合物ライブラリーに曝露し、さらに例えば限定するものではないが、上記アッセイを含む当分野で公知のアッセイを利用して遺伝子発現を検出することにより、行うことができる。本発明のある実施形態では、本発明の核酸分子を発現しているMCF-7細胞などの癌細胞を化合物ライブラリーで処理する。レポーター遺伝子活性の阻害パーセントをライブラリー化合物の全てについて取得することが可能であり、またこれを、例えば限定するものではないが、SpotFire(登録商標)(SpotFire, Inc., Somerville, MA)で作成した散布図を使用して分析することができる。前記ハイスループットスクリーニングに続けてその後の選択性スクリーニングを行うことができる。好適な実施形態では、その後の選択性スクリーニングは、例えば、GEMに連結されているかまたは同じ遺伝子の5' および3' UTR(いずれか一方は本発明のGEMを含有しうる)に隣接したレポーター遺伝子を発現している細胞における、該レポーター遺伝子発現の検出を含みうる。もう1つの好適な実施形態では、その後の選択性スクリーニングは、種々の濃度の化合物の存在下での細胞におけるレポーター遺伝子発現の検出を含みうる。
【0155】
いったん化合物が標的遺伝子のUTR依存的発現をモジュレートすることが同定され、かつ好ましくは、該化合物の構造が本発明に記載の方法および当分野で周知の方法により同定されたら、該化合物をさらなるアッセイおよび/または動物モデルで生物活性について試験する。さらに、リード化合物を使用して同族体(congeners)または類似体を設計してもよい。
【0156】
多種多様な標識およびコンジュゲーション技術が当業者に知られており、またこれらを種々の核酸およびアミノ酸アッセイに使用することができる。本発明のGEMに関連した配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを製造するための方法としては、オリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識、または標識ヌクレオチドを使用するPCR増幅が挙げられる。検出を容易にするために使用しうる適切なレポーター分子または標識としては、放射性核種、酵素、および蛍光物質、化学発光物質、または発色物質、ならびに基質、補因子、インヒビター、磁性粒子などが挙げられる。
【0157】
In vitro
本発明は、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングしうるアッセイを含み、またこれらを提供する。本発明の好適な態様では、アッセイはin vitroアッセイである。本発明の好適な態様では、in vitroアッセイにより翻訳を測定する。本発明の好適な態様では、in vitroアッセイは、本発明の核酸分子または本発明の構築物を含む。
【0158】
ある実施形態では、本発明のレポーター遺伝子は、融合タンパク質、または発現されたレポーター遺伝子が固体支持体に結合できるようにするドメインを含む融合タンパク質をコードしうる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることが可能であり、これをその後、化合物または化合物および吸着されていない発現レポーター遺伝子と合わせてから、この混合物を複合体の形成を促す条件下で(例えば、生理的塩濃度およびpH条件で)インキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、結合しなかった構成要素を全て取り除く。反応体の結合は、先に記載した通り、直接的または間接的に調べることができる。あるいは、結合を調べる前に、複合体を固体支持体から解離させることができる。
【0159】
発現されたレポーター遺伝子または化合物を固体支持体上に固定するための他の技術もまた本発明のスクリーニングアッセイに使用することができる。例えば、発現されたレポーター遺伝子または化合物のいずれか一方を、ビオチンとストレプトアビジンとのコンジュゲーションを利用して固定することができる。ビオチン化された発現レポーター遺伝子または化合物は、当分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を使用してビオチン-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンをコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemicals, Rockford, IL)のウェルに固定することができる。あるいは、発現されたレポーター遺伝子または化合物に特異的に結合するが、所望の結合または触媒部位には干渉しない抗体を、前記プレートのウェルに誘導体化することができる。結合していない標的またはタンパク質は、抗体コンジュゲーションによってウェルに捕捉することができる。
【0160】
かかる複合体を検出するための方法としては、GST固定化複合体について先に記載した方法の他に、発現されたレポーター遺伝子または化合物に特異的に結合する抗体を用いる複合体の免疫検出、発現されたレポーター遺伝子の活性の検出に依存する酵素結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、および還元または非還元条件下でのSDSゲル電気泳動が挙げられる。
【0161】
ある実施形態では、in vitroでのレポーター遺伝子の翻訳は、網状赤血球溶解物翻訳系、例えば、TNT(登録商標) Coupled Reticulocyte Lysate System (Promega Co., Madison, WI)を使用した後に検出することができる。この態様では、例えば、限定するものではないが、RNA(100 ng)を、70%網状赤血球溶解物、20μM アミノ酸およびRNアーゼ阻害剤(0.8単位/μL)を含有する反応混合物中37℃で翻訳することができる。45分間のインキュベーション後、20μLのLucliteを加えると、その発光をView-Lux上で読み取ることができる。各種濃度の化合物を最終DMSO濃度が2%となるように反応物に加えて、EC50値を算出することができる。ピューロマイシンを一般的な無差別翻訳阻害の対照として使用することができる。GAPDH、XIAP、TNF-α、およびHIF-1αを含む標的遺伝子に由来する特異的UTRに連結された、レポーター遺伝子をコードするin vitro転写産物を使用することもできる。
【0162】
細胞型特異的因子の影響力を研究するために、キャップ付きRNAを、特殊化した細胞または癌細胞系、例えば限定するものではないが、HT1080細胞(ヒト繊維肉腫細胞系)から調製した翻訳抽出物に翻訳することができる。簡単に言えば、該細胞をPBSで洗浄してから、氷上で5分間、低張緩衝液(10 mM Hepes、pH 7.4、15 mM KCl、1.5 mM Mg(OAc)2、2 mM DTT および0.5 mM Pefabloc (Pentapharm Ltd. Co., Switzerland))中で膨潤させることができる。該細胞をDounceホモジナイザーを用いて溶解(100ストローク)させてから、その抽出物を10,000×gで10分間遠心分離することができる。その後、これらの清澄な抽出物を液体窒素で急速冷凍し、幾つかのアリコートに分けて-70℃で保存することができる。翻訳反応物は、60%の清澄な翻訳抽出物、15μMの総アミノ酸、0.2 mg/mLクレアチンホスホキナーゼを全て1×翻訳用緩衝液(15 mM Hepes、pH 7.4、85 mM KOAc、1.5 mM Mg(OAc)2、0.5 mM ATP、0.075 mM GTP、18 mM クレアチンジホスフェートおよび1.5 mM DTT)中に含有する反応混合物中に含まれるキャップ付きRNA(50 ng)であってよい。該翻訳反応物を37℃で90分間インキュベーションした後に、レポーター遺伝子によりコードされているタンパク質の活性を検出することができる。レポーター遺伝子として働くルシフェラーゼ遺伝子によりコードされているルシフェラーゼの活性については、20μLのLucLite(登録商標)(Packard Instrument Co., Inc., Meriden, CT)の添加を利用することができる。キャップ付きRNAおよびキャップのないRNAは、T7ポリメラーゼ転写キット(Ambion Inc., Austin, TX)を使用してin vitroで合成することが可能であり、またこれらを同様のin vitro系で使用することにより、細胞型特異的因子が翻訳に及ぼす影響力を研究することができる。
【0163】
In vivo
本発明は、遺伝子発現をモジュレートしうる化合物をスクリーニングしうるアッセイを含み、またこれらを提供する。本発明の好適な態様では、アッセイはin vivoアッセイである。本発明のある好適な態様は、翻訳を測定するアッセイである。本発明の好適な実施形態では、in vivoアッセイは、本発明の核酸分子または本発明の構築物を含み、また細胞または生体内の細胞もしくは組織の使用を含みうる。より好適な実施形態では、in vivoアッセイは、細胞または生体内の細胞もしくは組織に存在する本発明の核酸分子を含む。
【0164】
別の実施形態では、レポーター遺伝子のin vivoでの翻訳を検出することができる。好適な実施形態では、レポーター遺伝子を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション((ATCC), Manassas, VA)で入手しうる細胞系から取得した癌細胞、例えばHeLa、MCF-7、およびCOS-7、BT474にトランスフェクトする。より好適な実施形態では、癌細胞は同様にして得た正常な一次細胞と比べると変更されたゲノムを有しており、またこの哺乳動物の癌細胞は、かかる一次細胞ではありえない条件下で増殖する。
【0165】
レポーター遺伝子発現をモジュレートする化合物のスクリーニングは、無傷の細胞内で実行することができる。レポーター遺伝子を含むあらゆる細胞を細胞ベースのアッセイ系に使用することができる。レポーター遺伝子は、細胞に天然に存在しうるものであるか、または上記技術(細胞および生物の項を参照されたい)などの技術を利用して導入しうるものである。ある実施形態では、細胞系は、その天然に存在するタンパク質、例えば限定するものではないが、VEGF、Her2、またはサバイビンの発現レベルに基づいて選択される。化合物によるレポーター遺伝子発現のモジュレーションは、上記の通りにin vitroで、または下記の通りにin vivoで調べることができる。
【0166】
内在性または異種タンパク質の発現を検出することを目的とする、レポーター遺伝子の発現を検出および測定するための様々なプロトコルが当分野で知られている。例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、発現されたレポーター遺伝子に特異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体を使用したウェスタンブロット、蛍光活性化セルソーター(FACS)、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、または放射免疫アッセイ(RIA)を実施することにより、化合物で処理した細胞から得られた溶解物または培養物中の特定のタンパク質のレベルを定量化することができる。好適な実施形態では、表現型または生理学的計測を利用して、リード化合物の存在下および非存在下における標的RNAのUTR依存的活性を評価することができる。
【0167】
多種多様な標識およびコンジュゲーション技術が当業者に知られており、またこれらを種々の核酸およびアミノ酸アッセイに使用することができる。本発明のGEMを有するポリヌクレオチドに関連した配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを産生させるための方法としては、オリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識、または標識ヌクレオチドを使用したPCR増幅が挙げられる。あるいは、本発明のGEMを有する配列を、mRNAプローブ作製用のベクター中にクローニングすることができる。かかるベクターは当分野で公知であり、市販されており、また該ベクターを使用し標識ヌクレオチドおよびT7、T3、またはSP6などの適当なRNAポリメラーゼを加えることによってin vitroでRNAプローブを合成することができる。これらの手順は、様々な市販のキット(Amersham Biosciences Inc., Piscataway, NJ;およびPromega Co, Madison, WI)を利用して行うことができる。検出を容易にするために使用しうる適切なレポーター分子または標識としては、放射性ヌクレオチド、酵素、および蛍光物質、化学発光物質、または発色物質、ならびに基質、補因子、インヒビター、磁性粒子などが挙げられる。
【0168】
治療的使用
本発明は、標的遺伝子の異常な発現を伴う疾患または障害の1つ以上の症状を治療、予防または改善するための方法であって、その必要がある被験体に、本明細書中に記載の方法に従って同定された化合物もしくはその製薬上許容しうる塩を治療上または予防上有効な量で投与することを含む前記方法もまた提供する。ある実施形態では、標的遺伝子は異常に過剰発現される。別の実施形態では、標的遺伝子は異常に低いレベルで発現される。特に、本発明は、疾患もしくは障害を治療もしくは予防するかまたはその症状を改善する方法であって、その必要がある被験体に、本明細書中に記載の方法に従って同定された化合物またはその製薬上許容しうる塩を有効な量で投与すること、ここでその有効な量により該疾患または障害の治療または予防に有益な標的遺伝子の発現が高められること、を含む前記方法を提供する。また本発明は、疾患もしくは障害を治療もしくは予防するかまたはその症状を改善する方法であって、その必要がある被験体に、本明細書中に記載の方法に従って同定された化合物またはその製薬上許容しうる塩を有効な量で投与すること、ここでその有効な量により該疾患もしくは該障害の発症、発生、進行もしくは重症度と関連するかまたはこれらと連動する(linked)該標的遺伝子の発現が低下すること、を含む前記方法もまた提供する。特定の実施形態では、疾患または障害は、増殖性疾患、炎症性疾患、感染症、遺伝病、自己免疫疾患、心血管疾患、または中枢神経系障害である。疾患または障害が感染症である実施形態では、該感染症は、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、または別のタイプの病原体による感染によって引き起こされることがある。
【0169】
さらに本発明は、患者に投与して治療効果を達成しうる医薬組成物もまた提供する。本発明の医薬組成物は、例えば、リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、本発明のGEMに特異的に結合する抗体、またはGEM活性の模倣薬、アクチベーター、インヒビター、または本発明の核酸分子を含みうる。該組成物は、単独で、または少なくとも1種の他の作用物質、例えば安定化化合物と組み合わせて投与することができ、それは例えば、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、および水を含むがこれらに限定されない無菌で生体適合性の医薬担体に溶解して投与することができる。該組成物は、患者に単独で、または他の作用物質、薬物もしくはホルモンと組み合わせて投与することができる。
【0170】
前記の活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物を加工して医薬品として使用可能な製剤とするのを容易にする賦形剤および助剤を含む、適切な製薬上許容しうる担体を含有しうる。本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、クモ膜下、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸手段を含むがこれらに限定されない、幾つもの経路により投与することができる。経口投与用の医薬組成物は、当分野で周知の製薬上許容しうる担体を経口投与に適した用量で使用して製剤化することができる。かかる担体により、医薬組成物を、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能となる。
【0171】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせて、場合によっては得られた混合物を粉砕し、さらに必要に応じて、錠剤または糖衣錠の核(cores)を取得するために適切な助剤を添加してから該混合物の顆粒を加工することにより、取得することができる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、または他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質といった、炭水化物またはタンパク質充填剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤または可溶化剤を加えることができる。
【0172】
経口で使用しるう医薬製剤としては、ゼラチン製の押し込み型(push-fit)カプセル剤ならびにゼラチンおよびコーティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)からなる密閉型軟カプセル剤が挙げられる。押し込み型カプセル剤は、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および場合によっては安定化剤と混合した、活性成分を含有しうる。軟カプセル剤の場合、活性化合物を、安定化剤を用いるかまたは用いずに、脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解させるかまたは懸濁することができる。
【0173】
非経口投与に適した医薬品製剤は、水溶液中、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理的緩衝化生理食塩水などの生理的に適合する緩衝液中に製剤化することができる。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を高める物質を含有しうる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射用懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。非脂質性ポリカチオンアミノポリマーを送達のために使用することもできる。場合によっては、懸濁物は、適切な安定化剤または化合物の溶解度を高めることにより高濃縮溶液の調製を可能にする作用物質もまた含有しうる。局所または経鼻投与の場合、透過させようとしている特定のバリアに合った浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は当分野で広く知られている。
【0174】
本発明の医薬組成物は、当分野で公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠の作製、研和、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥処理の方法により製造することができる。医薬組成物は塩として提供することが可能であり、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸を用いて形成させることができる。塩は、その対応する遊離塩基形態よりも水性溶媒または他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。他の場合には、好適な製剤は、次のもの:1〜50 mM ヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、および2〜7%マンニトール、のうちのいずれかまたは全てをpH 4.5〜5.5で含有し、使用前に緩衝液と合わせることができる凍結乾燥粉末とすることができる。製剤および投与に関する技術のさらなる詳細については、最新版のRemington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa.)に記載されている。医薬組成物を調製した後は、それらを適当な容器に入れ、適応症状の治療に関するラベルを貼ることができる。かかるラベル表示には、量、頻度、および投与方法が含まれる。
【0175】
治療上有効な投与量の決定
治療上有効な投与量とは、治療上有効な投与量の非存在下で生じるレポーター遺伝子活性と比べてレポーター遺伝子活性を増加させるかまたは低下させる活性成分の量を指す。どんな化合物についても、その治療上有効な投与量は、初めに細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタ)のいずれかで見積もることができる。また、動物モデルを使用して適当な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。その後、かかる情報を利用して、ヒトに投与する際に有用な投与量および経路を決定することができる。
【0176】
治療効果および毒性、例えば、ED50 (集団の50%において治療上有効な投与量)およびLD50 (集団の50%にとって致死的な投与量)は、細胞培養物または実験動物において標準的な製薬手順により決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50比で表すことができる。
【0177】
大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物実験から取得したデータを、ヒトに使用するための用量の範囲を策定する際に使用する。かかる組成物に含有させる用量は、好ましくは、ED50を含むが毒性を殆どまたは全く示さない血中濃度の範囲内とする。用量は、用いる剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変動する。
【0178】
正確な用量は、治療を必要とする被験体に関係する因子を踏まえた上で医者によって決定される。用量および投与は、十分なレベルの活性成分を提供するか、または所望の効果を維持するように調整される。考慮されうる因子としては、疾患の重症度、被験体の全身の健康、被験体の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する耐性/応答が挙げられる。 長時間作用型の医薬組成物は、その特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、3〜4日おきに、毎週、または2週間に1度、投与することができる。
【0179】
標準的な投与量は、投与経路に応じて、最高総投与量を約1gとして0.1〜100,000マイクログラムの間で変動しうる。特定の用量および送達方法に関する指針は文献に提供されており、当分野の医者であればこれらを一般に利用することができる。当業者は、タンパク質用またはそれらのインヒビター用の製剤とは異なる製剤をヌクレオチド用に用いるであろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとする。
【0180】
試薬が1本鎖抗体である場合、該抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、それをトランスフェリン-ポリカチオン媒介性DNA導入、裸の核酸またはカプセル封入核酸を用いるトランスフェクション、リポソーム媒介性細胞融合、DNA被覆ラテックスビーズの細胞内輸送、原形質融合、ウイルス感染、電気穿孔、「遺伝子銃」、およびDEAE-またはリン酸カルシウム-媒介性トランスフェクションを含むがこれらに限定されない十分に確立された技術を利用してex vivoまたはin vivoで細胞に導入することができる。
【0181】
抗体の有効なin vivo用量は、約5μg 〜約50μg/患者の体重kg、約50μg〜約5 mg/患者の体重kg、約100μg 〜約500μg/患者の体重kg、および約200〜約250μg/患者の体重kgである。1本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを投与する場合は、有効なin vivo用量は、約100 ng〜約200 ng、500 ng〜約50 mg、約1μg〜約2 mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAの範囲である。
【0182】
発現産物がmRNAである場合、試薬は好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドは、上記の様々な方法により細胞に導入することができる。
【0183】
好ましくは、試薬は、レポーター遺伝子の発現またはレポーター遺伝子の活性を、該試薬の非存在下と比べて少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%低下させるものである。あるいは、 試薬は、レポーター遺伝子の発現またはレポーター遺伝子の活性を、該試薬の非存在下と比べて少なくとも約10、好ましくは約50、より好ましくは約75、90、または100%増加させるものである。レポーター遺伝子の発現またはレポーター遺伝子の活性のレベルをモジュレートするために選択した試薬または機構の有効性は、ヌクレオチドプローブのレポーター遺伝子特異的mRNAへのハイブリダイゼーション、定量的RT-PCR、発現されたレポーター遺伝子の免疫学的検出、または発現されたレポーター遺伝子に由来する活性の測定などの当分野で周知の方法を利用して評価することができる。
【0184】
上記実施形態のいずれにおいても、本発明の医薬組成物のうち任意のものを他の適当な治療薬と組み合わせて投与することができる。治療と組み合わせて使用するための適当な作用物質の選択は、当業者であれば、従来の製薬原理に従って行うことができる。治療薬を組み合わせは、相乗的に作用して、上記の種々の障害の治療または予防に効果を発揮することができる。この手法を利用すれば、各作用物質をより少ない用量で用いて治療効果を達成し、ひいては有害な副作用が生じる可能性を低くすることができるだろう。
【0185】
上記治療方法はいずれも、かかる治療を必要とする、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくはヒトなどの哺乳動物を含むあらゆる被験体に適用することができる。
【0186】
治療上有効な投与量の投与
翻訳にin vitroまたはin vivoで影響を及ぼす試薬をヒト細胞に投与することにより、特定遺伝子の翻訳活性を特異的に低下させることができる。好適な実施形態では、試薬は好ましくは遺伝子の5' UTRに結合する。本発明のもう1つの実施形態では、試薬は好ましくは本発明のGEMに結合する。好適な実施形態では、試薬は化合物である。ヒト細胞をex vivoで治療するために、体から取り出しておいた幹細胞の調製物に抗体を加えることができる。該細胞は、その後、当分野で知られているようにクローン増殖を行ってまたは行わずに、同じヒトまたは別のヒトの体に戻すことができる。
【0187】
ある実施形態では、試薬はリポソームを使用して送達される。好ましくは、該リポソームは、これを投与した動物内で少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約1時間、さらにより好ましくは少なくとも約24時間安定なものである。リポソームは、ヒトなどの動物の特定部位に試薬、特にポリヌクレオチドを標的化させることができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームの脂質組成物は、肺、肝臓、脾臓、心臓、脳、リンパ節および皮膚などの、動物の特定の器官に標的化させることができるものである。
【0188】
本発明において有用なリポソームは、その内容物を標的化細胞に送達するために該細胞の形質膜と融合することができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は、約106個の細胞に送達された16ナノモルのリポソーム当たり約0.5μgのDNA、より好ましくは約106個の細胞に送達された16ナノモルのリポソーム当たり約1.0μgのDNA、さらにより好ましくは約106個の細胞に送達された16ナノモルのリポソーム当たり約2.0μgのDNAである。好ましくは、リポソームは、その直径が約100〜500 nm、より好ましくは約150〜450 nm、さらにより好ましくは約200〜400 nmである。
【0189】
本発明に使用するための適切なリポソームとしては、例えば、当業者に公知の遺伝子送達法に標準的に使用されているリポソームが挙げられる。より好適なリポソームとしては、ポリカチオン性脂質組成物を有するリポソームおよび/またはポリエチレングリコールにコンジュゲートさせたコレステロール骨格を有するリポソームが挙げられる。場合によっては、リポソームは、該リポソームを特定の細胞型に標的化させることができる化合物、例えば、該リポソームの外側表面に露出した細胞特異的リガンドを含む。
【0190】
リポソームとアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムなどの試薬との複合体形成は、当分野で標準的な方法(例えば、米国特許第5,705,151号を参照されたい)を利用して達成することができる。好ましくは、約0.1μg〜約10μgのポリヌクレオチドを約8 nmolのリポソームと混合し、より好ましくは約0.5μg〜約5μgのポリヌクレオチドを約8 nmolのリポソームと混合し、さらにより好ましくは約1.0μgのポリヌクレオチドを約8 nmolのリポソームと混合する。
【0191】
別の実施形態では、抗体を、受容体媒介性標的化送達を使用してin vivoで特異的組織に送達することができる。受容体媒介性DNA送達技術は、例えば、Findeisら、Trends in Biotechnol. 11, 202-05 (1993); Chiouら、Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff編) (1994); WuおよびWu, J. Biol. Chem. 263, 621-24 (1988); Wuら、J. Biol. Chem. 269, 542-46 (1994); Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 3655-59 (1990); Wuら、J. Biol. Chem. 266, 338-42 (1991) に教示されている。
【0192】
診断方法
本発明の作用物質は、本発明のGEMをコードする核酸配列中の変異の存在に関連した疾患および異常、またはこれらの疾患および異常に対する感受性を検出するための診断アッセイに使用することもできる。例えば、疾患に苦しむ個体と正常な個体の間での、GEMをコードするcDNAまたはゲノム配列の差異を調べることができる。変異が疾患に苦しむ個体の一部または全部で観察されるが正常な個体では観察されない場合、該変異は該疾患の原因因子である可能性が高い。
例えば、直接DNA配列決定法により、参照遺伝子と変異を有する遺伝子との間の配列の差異を明らかにすることができる。その上、クローン化したDNAセグメントをプローブとして用いて特異的DNAセグメントを検出することもできる。この方法の感度は、PCRと組み合わせると非常に高くなる。例えば、シークエンシングプライマーを、2本鎖PCR産物または改変PCRにより作製した1本鎖鋳型分子と共に使用することができる。配列の決定は、放射標識ヌクレオチドを使用する従来の手順により、または蛍光タグを使用する自動配列決定手順により、実施する。
【0193】
さらに、例えば、変性剤を用いてまたは用いずにゲル中のDNA断片の電気泳動移動度における変化を検出することにより、DNA配列の差異に基づく遺伝的検査を行うことができる。小さな配列の欠失および挿入は、例えば、高分解能ゲル電気泳動により可視化することができる。異なる配列を持つDNA断片は、異なるDNA断片の移動度がそれらの特異的融解温度または部分融解温度に応じてゲル内の異なる位置で遅くなる、変性ホルムアミド勾配ゲル上で識別することができる(例えば、Myersら、Science 230, 1242, 1985を参照されたい)。特定位置の配列変化もまた、RNアーゼおよびS1プロテクションなどのヌクレアーゼプロテクションアッセイ、または化学切断法(例えば、Cottonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 4397-4401, 1985)によって明らかにすることができる。従って、特定DNA配列の検出は、ハイブリダイゼーション、RNアーゼプロテクション、化学切断、直接DNA配列決定または制限酵素の使用およびゲノムDNAのサザンブロット法などの方法により実施することができる。ゲル電気泳動およびDNA配列決定などの直接法だけでなく、in situ分析によっても変異を検出することができる。
【0194】
本発明のGEMの変更されたレベルを種々の組織で検出することもできる。例えば、GEMを持つ1つ以上の遺伝子は、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、およびPCRなどの、特定の核酸配列のレベルを検出するために利用されるアッセイにより検出することができる。あるいは、アッセイを利用して、GEMにより調節されるレポーターポリペプチドまたはGEMを持つ遺伝子によりコードされるポリペプチドのレベルを検出することができる。かかるアッセイは当業者に周知であり、例として放射免疫アッセイ、競合的結合アッセイ、ウェスタンブロット分析、およびELISAアッセイが挙げられる。被験体に由来するサンプル、例えば、宿主から得た血液または組織生検サンプルを、これらのアッセイを行う材料としてもよい。
【0195】
ここまで本発明を大まかに記載してきたが、下記実施例を参照することにより本発明はより容易に理解されるであろう。下記実施例は、特に規定しない限り、例示のために提供されるものであって本発明を限定することは意図していない。
【0196】
各雑誌、特許、および本明細書中で引用した他の書籍または参照文献は、それらの全内容が参照により本明細書中に含まれるものとする。
【実施例】
【0197】
実施例1. レポーター遺伝子発現を転写後に特異的に阻害する化合物の同定
モノシストロン性レポーター構築物(pLuc/vegf5'+3'UTR)はCMVプロモーターの転写制御下にあり、VEGF 3'UTRの上流のルシフェラーゼレポーターを駆動するVEGF 5'UTRを含有している。安定細胞系は、293細胞に該pLuc/vegf5'+3'UTR構築物をトランスフェクトすることにより作製した。安定細胞系をハイグロマイシンB選択下で培養することにより、当分野で周知のプロトコルに沿うクローン細胞系を作り出した。選択の2週間後、クローン細胞系をそのルシフェラーゼ活性についてスクリーニングした。幾つかのクローン細胞系(以後「クローン」と記す)のルシフェラーゼ活性を比較し、総タンパク質含有量に対して正規化した。ルシフェラーゼ活性を断続的にモニタリングしながら、クローンをハイグロマイシンB選択下で3ヶ月よりも長期にわたって維持した。クローンは安定しており、高レベルのルシフェラーゼ発現を維持した。多くのクローン、例えば約20種のクローンを、ルシフェラーゼ活性に関して互いに比較してもよい。クローンB9、D3、およびH6で比較すると、クローンB9が最も高いレベルのルシフェラーゼ活性を示した。さらに、半定量的PCR分析を実施すると、その結果から、1細胞当たり複数コピーのレポーターが組み込まれていることが示された。転写後のハイスループットスクリーニング(HTS)で使用するために、クローンの特定パラメーターを選択前に検討しておいた。HTSの関連パラメーターとしては、限定するものではないが、細胞数、インキュベーション時間、DMSO濃度、および基質の量が挙げられる。
【0198】
150,000種より多くの化合物の化学ライブラリーを、前記モノシストロン性レポーター構築物pLuc/vegf5'+3'UTRを含有するクローンを用いてHTSによりスクリーニングした。スクリーニングは、約7.5μMという単一濃度で各分子について二重に実施した。Bright-Glow (Promega Co., Madison, WI)を基質として使用して、ホタル・ルシフェラーゼ活性を測定した。前記の二重に用いた化合物の平均阻害パーセントを記録し、続いて満足のいく再現性を示さなかった化合物を外すことにより、活性化合物を同定した。満足のいく再現性を示した化合物の平均阻害パーセントは、前記二重に用いた化合物では、約10%、約25%または約35%の範囲内であった。データは正規分布として分析したが、このことは歪度および尖度のグラフ解析および統計解析から明らかであった。その後ヒットが約99%の信頼度で記録されたが、これは通常、平均値からの標準偏差を3で選択すること、または観察された阻害のヒット下限値をほぼ50%とすることを示している。これらの選択基準では、ヒット率が約1%となった。
【0199】
クローンB9を用いたスクリーニングによるHTSスクリーニング段階を経て同定される特定の化合物は、低酸素誘導性の内在性VEGF発現をモジュレートした。内在性VEGFタンパク質レベルは、ELISAアッセイ(R&D Systems, Minneapolis, MN)によりモニタリングした。HeLa細胞を使用して低酸素誘導性発現を評価した。HeLa細胞は、酸素正常条件と比較して約3〜5倍の低酸素誘導濃度域(酸素正常状態下で約200〜約400 pg/mLであるのに対して低酸素状態下では約1000〜約1500 pg/mL)を示した。細胞を、化合物の存在下または非存在下で、低酸素条件(約1%O2、約5%CO2、窒素により調整)下で一晩〜48時間培養した。この馴化培地をELISAによりアッセイした。VEGFの濃度は各アッセイの標準ELISA曲線から算出した。アッセイは、約7.5μMという化合物濃度で二重に実施した。化合物について約50%阻害の閾値をさらなる調査のための基準として選択した。約700〜約800の初期HTSヒットの中から約100〜約150種の化合物のさらなる評価を行った。同定された化合物の活性は、上記実験を繰り返すことにより確認した。その後、同定された化合物を乾燥粉末として取得し、これをさらに分析した。同定された化合物の純度および分子量はLC-MSにより確認した。
【0200】
用量応答分析は、ELISAアッセイおよび上記条件を使用して実施した。用量応答ELISAのための条件は、上記の条件と同様であった。一連の、7つの異なる連続希釈濃度について分析した。並行して、用量応答細胞傷害性アッセイを前記ELISAと同一条件下で実施することにより、VEGF発現の阻害が細胞傷害性に起因するものではないことを確認した。用量応答曲線は、化合物の濃度の対数に対して阻害パーセントを使用してプロットした。
【0201】
各化合物について、最大阻害を100%と設定し、また最小阻害を0%と設定することにより、EC50値およびCC50値を生成した。HTSから同定された化合物は、Y軸上にVEGF発現の阻害パーセントに対する濃度の対数としてプロットした場合、約10-1 nM〜約104 nMの化合物濃度にわたってS字型曲線を示した。HTSから同定されたその化合物は、細胞傷害性パーセントに対してプロットした同化合物濃度範囲にわたって凸型曲線を示した。この特定の化合物のELISA EC50 (VEGF発現の50%阻害)は約7 nMであり、そのCC50 (50%細胞傷害性)は約2000 nMを上回っていた。同様の有効/細胞傷害性濃度域を示す化合物の部分集合もまた同定された。
【0202】
B9細胞系は、CMVプロモーターにより駆動され、かつVEGFの5'および3'UTRに隣接するホタル・ルシフェラーゼレポーターを担持する。HTSで該B9細胞系を使用して、VEGF UTRが発現をモジュレートするその機能を特異的に標的とする化合物を同定した。細胞系B12は、VEGF UTRを置換するために対照UTRに機能しうる形で連結されたルシフェラーゼを担持する。B9およびB12細胞系の両方においてルシフェラーゼ活性を阻害した化合物は、一般的な転写および/もしくは翻訳インヒビターまたはルシフェラーゼ酵素阻害剤である。幾つかのUTR特異的化合物が、上記のHTSにより同定された化合物を用いた実験で同定された。同定された化合物の用量応答曲線は、各ルシフェラーゼ阻害パーセントをX軸上に約10-1nM〜約104 nMの化合物濃度範囲にわたってプロットした場合、B9細胞ではS字型曲線、B12細胞では凹型曲線を示した。2つの細胞系(B9およびB12)の間の差異は、この化合物によるVEGF産生の阻害がVEGF UTRを介したもの、すなわち転写後の制御機構によるものであることを示している。対照実験は、一般的な翻訳インヒビターであるピューロマイシンを用いて実施した。これら2つの細胞系においては、ピューロマイシンで処理してもルシフェラーゼ発現の阻害に差異は見られなかった。
【0203】
実施例2. UTR特異的VEGFインヒビターの特性
全ての同定された化合物を再合成し、LC/MSおよび燃焼分析によりこれらの純度が95%よりも高いことを示した。続いて、再合成した化合物を用量応答VEGF ELISAで試験し、さらにルシフェラーゼアッセイを用いてまずUTR特異性を評価した。UTR特異性を保持する同定化合物全てを、VEGF発現の真正の(bona fide)UTR特異的インヒビターと定義した。
【0204】
B9細胞を使用したハイスループットスクリーニングとその後の内在性VEGF ELISAにより、眼内血管新生疾患および癌の治療のための、低酸素誘導性VEGF発現を特異的に阻害する化合物を同定した。癌の治療のための複数の血管新生因子(VEGFを含む)を標的とする化合物もまた同定することが可能であった。TNF-α、FGF-2、G-CSF、IGF-1、PDGF、およびHIF-1αを含む幾つかの標的を、これらの目的のために使用した。
【0205】
R&D Systems (Minneapolis, MN)から入手した市販のキットを使用して、ELISAアッセイによりこれらの因子の発現レベルを分析した。UTR特異的でHTSにより同定された化合物を、HeLa細胞において、FGF-2およびIGF-1を含むこれらのタンパク質の一部の発現を阻害する該化合物の能力について試験した。HeLa細胞でアッセイした結果VEGF産生の非常に強力なインヒビターであると同定された化合物は、低nM〜高nMのEC50値を有していた。一般的な翻訳阻害剤(ピューロマイシン)による処理でもこれら全てのサイトカインが同様に阻害されたが、そのEC50値は約0.2〜約2μMであった。
【0206】
リード化合物についてさらなる特性決定を行い、最適化した。類似体を合成したところ、同定された化合物はVEGF ELISAアッセイにおいて優れた効力を示した(EC50値は0.5 nM〜50 nM)。別の実施形態では、類似体は低いnM効力を示した。追加の実施形態では、幾つかの類似体を合成したところ、同定された化合物の一部はVEGF ELISAアッセイにおいて非常に活性が高かった(EC50値は1 nM〜50 nM)。非常に強力な類似体の活性は、その親化合物と比較して約500倍も改善された(EC50が、500 nMに対し1 nM)。最も活性の高い化合物の選択性および薬剤学的性質(ADMET)に関するさらなる特性決定および最適化により、臨床試験用の薬物候補を開発することができる。
【0207】
実施例3. HIF 1α UTRはレポーター遺伝子発現をモジュレートする
一過性トランスフェクション:
HIF-1αレポーター構築物pGEMS HIF-1α5F3、pGEMS HIF-1α5FおよびpGEMS HIF-1αF3およびpGEMS Fを、FuGENE(商標)6 (Fugent, LLC)トランスフェクション試薬(F. Hoffmann-La Roche Ltd, Basel, Switzerland)を製造会社の説明書に従って使用して、各々等量ずつ293細胞およびMCF7細胞にトランスフェクトした。プラスミドphRL-CMVを各レポーターと共に同時トランスフェクトすることにより、トランスフェクション効率を正規化した。24時間後、トランスフェクト細胞をPBSで洗浄し、新しい培地で再度洗浄し、正常酸素状態下または低酸素状態下でさらに24時間静置した。その時点で、細胞を回収し、デュアル-ルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Promega, Inc., Madison, WI)を製造会社の説明書に従って使用してウミシイタケ(Renilla)およびホタル・ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。
【0208】
DNAトランスフェクションおよび安定細胞系の作製:
安定細胞系を作製するために、293細胞に上記pGEMS HIF-1α5F3を一過性にトランスフェクトした。48時間後、細胞をトリプシンで処理し、計数してから、10 cmペトリ皿に5000細胞/mLの濃度で蒔いた(10 mL)。翌日、200μg/mLのハイグロマイシンBを培養培地に加えることにより、一過性にトランスフェクトしたプラスミドがゲノム内に安定に組み込まれている細胞を選択した。ハイグロマイシンB選択の10〜14日後、トリプシン浸漬フィルターディスクを製造会社の説明書に従って使用して細胞をペトリ皿から24ウェルプレートの単一ウェルに移すことにより、個々のハイグロマイシン耐性クローンを増やした。その後、個々の細胞系を、ホタル・ルシフェラーゼ発現レベルに基づくさらなる研究のために選択した。
【0209】
ルシフェラーゼアッセイ:
ホタルおよびウミシイタケのルシフェラーゼ活性またはホタル・ルシフェラーゼ活性のみを、デュアルルシフェラーゼまたはルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Promega Inc., Madison, WI)をそれぞれ製造会社の説明書に従って使用して測定した。
【0210】
RT-PCRを利用した安定クローンの品質管理:
総RNAは、Trizol(登録商標)試薬(Invitrogen Co., Carlsbad, CA)を製造会社の説明書に従って使用して取得した各安定トランスフェクトクローンから単離した。その後、RT-PCRを利用して、安定クローンから単離したホタル・レポーターmRNA中の正しいサイズのHIF-1α UTRの存在を確認した。HIF-1α 5'UTR順方向プライマーおよびルシフェラーゼ5'逆方向プライマー(5' CTGCAACTCCGATAAATAACGCGCCCAACA 3'、配列番号1)またはルシフェラーゼ3'順方向プライマー(5' CGGGTACCGAAAGGTCTTACC 3'、配列番号2)およびHIF-1α 3'UTR逆方向プライマーを使用して、ランダムヘキサマーを使用して逆転写したRNAからmRNAの5'および3'末端をそれぞれ増幅した。
【0211】
リアルタイムRT-PCRを利用したルシフェラーゼレポーターRNAの定量化:
取得した全ての安定クローンからのルシフェラーゼレポーターmRNAレベルを、TaqMan(登録商標)リアルタイムRT-PCR (Applied Biosystems, Foster City, CA)を製造会社の説明書に従って使用して定量化した。次のホタル・ルシフェラーゼ特異的プライマーおよびプローブを使用した:FLuc F (5' TTCTTCATAGTTGACCGCTTGA 3'、配列番号3)、FLuc R (5' GTCATCGTCGGGAAGACCT 3'、配列番号4)およびFLucプローブ(5' 6FAM-CGATATTGTTACAACAACCCAACATCTTCG-TAMRA 3'。配列番号5の5'末端を6FAMで標識し、また3'末端をTAMRAで標識したもの)。ルシフェラーゼレポーターmRNAレベルは、市販のアクチン特異的プライマー/プローブセット(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用してアクチンmRNAレベルに正規化した。
【0212】
ハイスループットスクリーニング:
上記の通りに作製した安定細胞系を使用して、HIF-1αの非翻訳領域依存的発現を阻害する化合物のハイスループットスクリーニング(「HTS」)を達成した。293細胞系は、HIF-1αの5'および3'UTRの両方に隣接したホタル・ルシフェラーゼ遺伝子の安定に組み込まれたコピーを含有していた。その後、選択した安定細胞系を、HTSに利用する細胞数およびDMSOパーセントについて最適化しておいた細胞ベースのアッセイに使用した。
【0213】
化合物のスクリーニングは、1日当たり140枚の384ウェルプレートという速度で1週間以内に達成した。各384ウェルプレートには、阻害パーセントおよびアッセイで生じたデータポイントの統計的有意性を算出するための基準として使用する標準ピューロマイシン滴定曲線を含めた。この曲線を384ウェルプレートの3および4列目に設定し、20μMのピューロマイシン濃度から開始して0.078μMまで2倍連続希釈したものを4つずつ(in quadruplicate)蒔いた。1および2列目には、0.5%DMSO中の細胞からなる陽性対照および20μMピューロマイシン中の細胞からなる陰性対照の標準を各16個ずつ含有させた。これら2種の対照間の差異を、化合物存在下のルシフェラーゼ発現の阻害パーセントを算出するための濃度域として利用した。5〜24列目には、小分子のライブラリーから得た化合物を含有させた。
【0214】
約70%コンフルエントとなったHIF-1α安定細胞をHTSに使用した。簡単に言うと、細胞を4 mLの0.25%トリプシン-EDTA (Gibco BRL, カタログ番号25200-056)を用いてフラスコから遊離させ、非選択培地で希釈して10mLとした。全14フラスコについてこの作業を繰り返し、細胞を1つに混合し、フィルターに通し、計数してから希釈して濃度を1.3×105細胞/mLとした。38μLの量の細胞を、小分子ライブラリーから得た化合物2μLを含有する各ウェルに加えることにより、最終化合物濃度を0.5%DMSO中、7.5μM (3.75 mg/mL)とした。ピューロマイシン標準曲線にも0.5%DMSOを含有させた。化合物で処理した細胞を、酸素正常条件下、5%CO2中37℃で一晩(およそ16時間)インキュベートした。ホタル・ルシフェラーゼ活性をモニタリングするため、SteadyLite HTS (PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Inc., Boston, MA)を製造会社の説明書に従って調製し、20μLを各ウェルに加えた。各ウェルのホタル・ルシフェラーゼ活性は、ViewLux(商標) 1430 ultraHTS Microplate Imager (PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Inc., Boston, MA)で検出した。取得した全データを、ルシフェラーゼ活性の阻害パーセントの算出および統計解析のためにActivity Baseにアップロードした。
【0215】
実施例4. 本発明の好適な構築物
高レベル発現ベクターpcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を次の通りに調製した。pcDNA(商標)3.1/Hygroベクター内で、目的遺伝子もしくはレポーター遺伝子のクローニング、発現、もしくはクローニングおよび発現に関連する非翻訳領域(UTR)および制限部位を除去するかまたは置き換えた。
【0216】
ある種のUTRおよび制限部位は、高コピー哺乳動物発現ベクターにとって天然のものである。UTRおよび制限部位を持たないベクターを次の通りに調製した。欠失突然変異誘発を行うことにより、市販ベクターpcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)からUTRおよび制限部位を除去した。該ベクターから、pcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)のクローニング部位の上流に見出されるUTRの推定転写開始部位から始まって多重クローニング部位にあるHind III制限部位まで3'方向に続く領域を除去するように構築した。除去した核酸配列は配列番号23 (5'- AGAGAACCCA CTGCTTACTG GCTTATCGAA ATTAATACGAC TCACTATAGG GAGACCCAAGC TGGCTAGCGT TTAAACTTA -3')である。このようにして、前記ベクターにとって天然のものでありかつ標的遺伝子にとっては異種であるUTRを除去した。pcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)の場合、除去したUTRはウシ成長ホルモン遺伝子由来のものであった。 除去したもう1つの核酸配列は、pcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)のXho I部位から始まって3'方向に続き、pcDNA(商標)3.1/Hygro (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)ではウシ成長ホルモン遺伝子由来のポリ(A)尾部に相当するポリ(A)尾部で終わる領域内に形成されたUTRであった。Xho I部位からポリ(A)尾部までの核酸を除去することにより、前記ベクターにとって天然の3'UTRを除去した。ここで除去した核酸配列は配列番号24 (5'- CTCGAGTCTA GAGGGCCCGT TTAAACCCGCT GATCAGCCTC GACTGTGGCC TTCTAGTTGCC AGCCATCTGTTG TTGTCCCCTC CCCCGTCCCTT CCTTGACCCT GGAAGGTGCC ACTCCCACTG TCCTTTCCT -3')である。
【0217】
標的UTRを、Hind III部位、および該Hind III部位の下流にあるBamHI部位を使用して前記ベクターにクローニングした。標的5'UTRを開始コドンと共にBamHI部位の上流に挿入した。レポーター遺伝子で BamHI部位とNot I部位の間の配列を置換した。Not I部位と下流Xho I部位の間に、標的3'UTRを終止コドンと共に該Not I部位の下流に挿入した。前記レポーター遺伝子は、標的5'UTRおよび標的3'UTRに隣接しており、かつこれらに直接連結されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高レベル哺乳動物発現ベクター、イントロン、およびレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列は標的非翻訳領域(UTR)に近位で連結されている、核酸構築物。
【請求項2】
前記イントロンが5'UTR内に位置している、請求項1記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記イントロンが3'UTR内に位置している、請求項1記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記イントロンが前記のレポーターポリペプチドをコードする核酸配列内に位置している、請求項1記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記のレポーターポリペプチドをコードする核酸配列内に位置している前記イントロンが、mRNA前駆体のプロセシングの際にスプライシングで切り出される、請求項4記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記のレポーターポリペプチドをコードする核酸配列が標的UTRに直接連結されている、請求項1記載の核酸構築物。
【請求項7】
高レベル哺乳動物発現ベクター、およびレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列は1つ以上の標的UTRに直接連結されている、核酸構築物。
【請求項8】
前記の1つ以上の標的UTRが、鉄反応エレメント(「IRE」)、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、上流オープンリーディングフレーム(「uORF」)、雄特異的致死エレメント(「MSL-2」)、G-カルテットエレメント、および5'末端オリゴピリミジン領域(「TOP」)からなる群より選択されるエレメントを有する、請求項7記載の核酸分子。
【請求項9】
前記の1つ以上の標的UTRが同じ標的遺伝子に由来するものである、請求項7記載の核酸分子。
【請求項10】
前記高レベル哺乳動物発現ベクターがゲノム中に無作為に組み込まれる、請求項7記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記高レベル哺乳動物発現ベクターがゲノム中に部位選択的に組み込まれる、請求項7記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記高レベル哺乳動物発現ベクターがエピソーム性哺乳動物発現ベクターである、請求項7記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記レポーター遺伝子がイントロンを含有している、請求項7記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記の1つ以上の標的UTRがイントロンを含有している、請求項7記載の核酸構築物。
【請求項15】
1つ以上の標的UTRに直接連結されたレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項16】
前記のレポーターポリペプチドをコードする核酸配列がイントロンを含有している、請求項15記載の核酸分子。
【請求項17】
レポーター核酸配列を含み、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列は1つ以上の標的UTRに直接連結されている、核酸分子の異種集団。
【請求項18】
前記異種集団が安定細胞系から単離されたものである、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項19】
前記異種集団がin vitroで産生されたものである、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項20】
前記異種集団がin vitroでポリペプチドを産生させるために使用される、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項21】
前記の核酸分子の異種集団が各々5'キャップを有する、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項22】
前記異種集団が5'キャップを有する分子を排除するよう選択されたものである、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項23】
前記異種集団がポリアデニル化されている、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項24】
前記異種集団がポリアデニル化されていない、請求項17記載の核酸分子の異種集団。
【請求項25】
化合物をスクリーニングするための核酸構築物を作製する方法であって、
a) 遺伝子およびベクターを核酸構築物としてクローニングする工程、
b) 該核酸構築物を操作して、発現される遺伝子産物が標的遺伝子に見出されないUTRを持たないようにする工程、ならびに
c) 標的UTRを該遺伝子に直接連結する工程、
を含む上記方法。
【請求項26】
d) 標的遺伝子に見出されないUTRの非存在下で標的UTRに連結された前記遺伝子を発現させる工程をさらに含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記遺伝子がレポーターポリペプチドをコードするものである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記標的UTRが前記標的遺伝子に由来する5' UTRであり、かつ第2標的UTRが3' UTRである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記の第1標的UTRが前記第2標的UTRと同じ標的遺伝子に由来するものである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記の第1標的UTRが前記第2標的UTRとは異なる標的遺伝子に由来するものである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
ポリペプチドの発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 細胞を維持する工程であって、該細胞は核酸分子を有し、その核酸分子はレポーターポリペプチドをコードする遺伝子を含み、そのレポーター遺伝子は標的5' UTRおよび標的3' UTRに隣接している、前記工程、
b) 該細胞内でUTR複合体を形成させる工程、
c) 化合物を該UTR複合体と接触させる工程、ならびに
d) 該化合物が該UTR複合体に及ぼす影響を検出する工程、
を含む上記方法。
【請求項32】
前記UTR複合体が遺伝子発現モジュレーター(GEM)を含有している、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記検出が、RNA-タンパク質相互作用アッセイ、質量分析、RNAフットプリント分析、およびRNA細胞内局在アッセイからなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記検出が、前記化合物の存在下で前記細胞により発現されたレポーターポリペプチドのレベルを前記化合物の非存在下に対して比較することに基づくものである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
UTR依存的発現をモジュレートする化合物をin vivoでスクリーニングする方法であって、
a) 高発現構成的プロモーターを標的5' UTRの上流に含む核酸構築物を有する細胞を提供する工程であって該標的5' UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあり、かつレポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が標的3' UTRの上流にある、前記工程、
b) 該細胞を化合物と接触させる工程、
c) レポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含有し、かつ標的遺伝子に見出されないUTRは含有しない核酸分子を産生させる工程、および
d) 該レポーターポリペプチドを検出する工程、
を含む上記方法。
【請求項36】
UTRの影響を受ける発現をモジュレートする化合物をin vitroでスクリーニングする方法であって、
a) in vitro翻訳系を提供する工程、
b) 該in vitro翻訳系を、化合物、および標的5' UTRを含む核酸分子と接触させる工程であって、該標的5' UTRがレポーターポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあり、レポーターポリペプチドをコードする該核酸配列が標的3' UTRの上流にあり、ここで該核酸分子は標的遺伝子に見出されないUTRを持っていない、前記工程、ならびに
c) 該レポーターポリペプチドをin vitroで検出する工程、
を含む上記方法。
【請求項37】
核酸分子を細胞で発現させる方法であって、
a) 異種核酸分子を細胞に与える工程であって、該核酸分子が、標的遺伝子に見出されないUTRを有さず標的UTRに隣接するレポーターポリペプチドをコードする核酸配列を含んでいる、前記工程、および
b) 該レポーターポリペプチドをin vivoで検出する工程、
を含む上記方法。
【請求項38】
前記異種核酸分子がin vitro転写により産生されたものである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記異種核酸分子が合成により産生されたRNA分子である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記異種核酸分子が低分子干渉RNA(siRNA)分子である、請求項37記載の方法。
【請求項41】
主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 標的UTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程、b) 化合物の存在下の該安定細胞系を、該化合物の非存在下に対して比較する工程、および
c) 主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択する工程、
を含む上記方法。
【請求項42】
主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 細胞において標的遺伝子をレポーター遺伝子で置換する工程であって該標的遺伝子の近位に連結された標的UTRが無傷のままであり、かつ該細胞が分化細胞である、前記工程、
b) 該細胞系を増殖させる工程、および
c) 主要ORF非依存的なUTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択する工程、
を含む上記方法。
【請求項43】
UTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 標的UTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程であって、該安定細胞系がin vivoで見出される標的遺伝子の転写後調節を模倣する、前記工程、
b) 該安定細胞系を増殖させる工程、および
c) UTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする化合物を選択する工程、
を含む上記方法。
【請求項44】
前記標的UTRの核酸配列が哺乳動物の前記標的遺伝子に特異的なものである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記標的UTRの核酸配列が植物の前記標的遺伝子に特異的なものである、請求項43記載の方法。
【請求項46】
前記標的遺伝子がアイソフォームである、請求項43記載の方法。
【請求項47】
前記標的遺伝子が1つ以上の異なる遺伝子にも見出されるUTRを含有している、請求項43記載の方法。
【請求項48】
前記標的遺伝子が病状の指標となる、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記安定細胞系が癌細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項50】
UTRの影響を受ける機構によりタンパク質発現をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
a) 2つ以上のUTRに近位で連結されたレポーター遺伝子を有する安定細胞系を増殖させる工程、
b) 化合物の存在下の該安定細胞系を、該化合物の非存在下に対して比較する工程であって、該化合物が、1つの標的UTRのみがレポーター遺伝子に近位で連結されている場合はUTR依存的発現をモジュレートしないものである、前記工程、および
c) UTRの影響を受ける機構により該レポーター遺伝子のタンパク質発現をモジュレートする該化合物を選択する工程、
を含む上記方法。
【請求項51】
d) レポーター遺伝子に近位で連結された標的遺伝子に見出されないUTRによるUTR依存的タンパク質発現のモジュレーションを、近位で連結された標的5' UTRおよび近位で連結された標的3' UTRに隣接するレポーター遺伝子のUTR依存的タンパク質発現のモジュレーションに対して比較する工程、をさらに含む請求項50記載の方法。
【請求項52】
d) イントロンを有するレポーター遺伝子のUTR依存的タンパク質発現のモジュレーションを、イントロンを有しないレポーター遺伝子についてのUTR依存的タンパク質発現のモジュレーションに対して比較する工程、をさらに含む請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記化合物がUTR複合体に影響を及ぼすものであり、かつ該UTR複合体が、核内低分子RNP(snRNP)、hnRNPタンパク質、mRNAタンパク質、スプライシング因子、リボソームタンパク質、および非リボソーム性の翻訳特異的タンパク質からなる群より選択されるタンパク質を含有している、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記UTR複合体が、非調節性リボソームタンパク質およびクロマチン結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質を含まない、請求項53記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103886(P2011−103886A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279064(P2010−279064)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【分割の表示】特願2007−522473(P2007−522473)の分割
【原出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(503369705)ピーティーシー セラピューティクス,インコーポレーテッド (31)
【Fターム(参考)】