遺伝子発現プロファイリングに基づく高リスク多発性骨髄腫のゲノム署名の特定とその使用
本発明は、高容量化学療法及び幹細胞レスキューによって処置された92人の新規に診断された多発性骨髄腫患者の集団由来のCD138分別されたプラズマ細胞における高分解度全ゲノム比較ゲノムハイブリダイゼーション及び遺伝子発現プロファイリングによって産出されたデータに対して新規なバイオインフォマティクスおよびコンピュータ方法論を適用する方法を開示する。その結果は、第1染色体のq腕獲得およびp腕喪失が本染色体中の常駐遺伝子の発現変化と高度に相関し、これらの変化が1)疾患進行による死亡リスク、2)遺伝子発現に依拠した増殖インデックス、および3)最近述べられた遺伝子発現に依拠した高リスクインデックスと強く相関することを明らかにした。重要なことに、強い相関は8q24のコピー数獲得とマイクロRNAの発現及び成熟の主要制御因子をコードする遺伝子であるArgonate 2 (AGO2)の発現上昇との間において見出され、転帰とも有意に相関していた。これらの新規知見は、多発性骨髄腫のゲノム構造及びその臨床転帰との関係の理解を有意に改善する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
当国際出願は、2008年4月24日付係属中出願米国通番第12/148,985号に係る合衆国法典第35巻第120条による先行利益を請求する。
【0002】
連邦資金の説明
当発明の一部は、国立ガン研究所研究補助金CA55819およびCA97513の下、連邦政府からの資金により創出された。その結果、合衆国政府は当発明中に関する一定の権利を有する。
【0003】
当発明は、概括的にはガン研究の分野に関係する。より具体的には、本発明は、臨床転帰および生存の予測に有用な、高リスク多発性骨髄腫に特異的なゲノム署名を特定するための、体細胞DNAコピー数の異常および遺伝子発現プロファイリングに関する情報の統合に関係する。
【背景技術】
【0004】
ゲノム不安定性は、ガンの特徴である。比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)(1)の最近の進歩に伴い、体細胞DNAコピー数異常(CNAs)の疾患生物学における相関関係がより深く理解されるに至った(2−5)。特筆すべきことに、最近DNAコピー数異常がヒト個体群内において生殖細胞系列DNA中に発見されており、その様なコピー数異常の遺伝は疾病に罹患し易くすることを示唆している(6−9)。
【0005】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄にホーミングしそこで拡張する末梢分化B細胞(プラズマ細胞)の腫瘍であり、溶骨性骨破壊、高カルシウム血症、免疫抑制、貧血症および末端器官の損傷を含む一群の疾病徴候を引き起こす(10)。多発性骨髄腫は、米国において非ホジキンリンパ腫に次いで2番目に発生頻度の高い血液ガンであり、2007年の新規症例19000、現在生存する罹患者約50000人と推定されている。疾患の臨床管理における新規薬剤および治療戦略の最適統合に起因する臨床転帰の有意な改善にも拘らず、多くの多発性骨髄腫患者は再発し、病死する(11)。重要なことに、遺伝子発現プロファイルによって定義される高リスク疾患の一部は、現在の治療行為の恩恵を受けない(12)。高リスク疾患の完全な定義は、患者の階層化および臨床試験のより良い手法を与えるであろうし、さらに、新規治療設計のための枠組みも与えるであろう。
【0006】
殆どの悪性血液疾患と異なり、多発性骨髄腫患者のゲノムは、上皮腫瘍様の構造および数の再編成を含む複雑な染色体異常をしばしば特徴とする(13)。機能性イムノグロブリン遺伝子の作成のためにB細胞中で機能している正常な遺伝子再編機構におけるエラーは、イムノグロブリン遺伝子座と他の染色体上のガン遺伝子との間の染色体転座を引き起こす。これらの再編はおそらく発癌イニシエーションを示し、強力なイムノグロブリンエンハンサー遺伝子素の影響下になる常在ガン遺伝子の構成的発現に至る。多発性骨髄腫においては、CCND1, CCND3, MAF, MAFBおよびFGFR3/MMSET遺伝子の関与する再発性転座が腫瘍の約40%を占め(13)、疾患の分子サブタイプを定義する(14)。典型的には未知のメカニズムによる第3、5、7、9、11、15、および19染色体の獲得を伴う超2倍性が多発性骨髄腫の残りの60%を定義する。それに加えて1pおよび13染色体の喪失および1q21染色体の獲得を含むコピー数変化も、多発性骨髄腫プラズマ細胞の特徴であり、疾病の病因および予後に影響する重要な因子である(15、16)。第1染色体長腕(1q)の獲得は、ミエローマにおいて最も一般的な遺伝子異常のひとつである(17)。セントロメア辺縁ヘテロクロマチンの脱凝縮に起因する1q染色体バンドの直列重複および跳躍分節重複は、疾病の進行に頻繁に伴う。くすぶり型ミエローマ患者由来のプラズマ細胞から分離したDNAのアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを用いて、顕在型疾患への転換リスクは1q21の獲得および第13染色体の喪失とリンクしていることが示された。これらの知見は分裂間期蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析によって確認された。さらに、症候性ミエローマにおける1q21の獲得は低生存率と関連しており、再発時さらに増幅していることが示された(18)。これらの異常の多くが良性プラズマ細胞疾患である意義未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)において観察され得るという認識は、治療を要する顕在型症候性疾患の進行には他のゲノム変化を要することを示唆している。
【0007】
コピー数異常が、疾病の進行における重要な事象であるかもしれないということは推測されている。多発性骨髄腫における倍数性の変化は主として、超顕微鏡的変化を見逃す可能性がありDNA切断点を正確に定義することができない分裂中期G-バンディング染色体分析のような低解像度手法、または、染色体上の2−3の予め定義された小さな特定領域に特化した分裂間期または分裂中期蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のような遺伝子座特異的研究によって観察されてきた。アレイに基づく比較ゲノムハイブリダイゼーションは、全ゲノムにわたってコピー数異常を高解像度で同時分析することを可能にする、最近開発された技法である(19−21)。この新興技法の力により、研究者らは既知の異常を確認するとともに、種々のガンにおける新規なゲノム異常をも発見した。それらの新たに発見された異常の中には、良性のものもあれば、疾病の発生または進行に関連したものもある。いわゆる「ドライバー」および「パッセンジャー」と呼ばれるこれら2種の病変は、疾病病理生物学および臨床診断および予後に係るメカニズムの探索に使用される以前に区別される必要がある(22)。
【0008】
DNAコピー数の細胞表現型への直接効果は、遺伝子用量に影響すること、遺伝子配列を分断すること、または、プロモーターまたはエンハンサー領域中のcis−エレメントを混乱されることのいずれかによって遺伝子発現に影響を及ぼすことである(23−30)。コピー数異常は、正常人群における遺伝子発現変動の約17%に関与し、単一ヌクレオチド多型(SNPs)の寄与とは殆ど重複しないことが示されている(28)。加えて、高増幅遺伝子の半分以上は、乳ガンにおいて中程度または高度に亢進した遺伝子発現を示すことが実証された(25)。従って、多発性骨髄腫細胞における多数のコピー数異常を考慮すると、コピー数異常は疾病の発生及び進行において極めて重要な役割を果たしている可能性が高い。
【0009】
Cigudosaら(31)、Gutierrezら(32)、およびAvet-Loiseauら(17)は、最初古典的ゲノムハイブリダイゼーション手法を応用し(33)、多発性骨髄腫における染色体不安定性の特性に関する我々の知識を拡張した。Walkerら(34)は、この疾患におけるDNAコピー数とヘテロ接合性消失(LOH)の検討に単一ヌクレオチド多型(SNP)に基づくマッピングアレイを応用した。以前、分裂間期蛍光in situハイブリダイゼーション分析は、400以上の新規診断症例に使用され、1qの獲得は、意義未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症には見られないが、くすぶり型多発性骨髄腫に存在したときには顕在型多発性骨髄腫への進行リスクの上昇に随伴し、新規に診断された症候性疾患に存在したときには自家幹細胞移植後のよくない結果と相関することを示した(18)。重要なことに、この集団に関する長期研究は、1q獲得細胞のパーセンテージは任意の患者において経時的に上昇することを明らかにし、この事象が疾病の進行とクローン進化と関係していることを示唆している。67症例の小規模集団に対してアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを使用して、非負行列因子分解技法は、超2倍体疾患の2種のサブタイプ、1q獲得の証拠のあるもの、および、この型の超2倍体疾患がより短い無イベント生存に伴っていることを特定した(35)。これらのデータと一致して、遺伝子発現プロファイリングに関して、1q染色体にマップされる遺伝子の発現上昇および1pにマップされる遺伝子の発現低下を主とする高リスク疾患の遺伝子発現署名を特定することが報告された。
【0010】
多発性骨髄腫細胞におけるゲノム不安定性の可能なメカニズムも調べられた。その研究の結果は、1qおよび1p染色体におけるコピー数異常が遺伝子発現変化と強く相関しており、その変化は疾患の進行による死亡リスク、遺伝子発現に基づく増殖指数、および最近述べられた遺伝子発現に基づく高リスク指数と強く相関していることを明らかにした。重要なことに、コピー数増幅および、8q24にマップされマイクロRNAの発現と成熟の主要調節因子として専ら機能するタンパク質をコードする遺伝子であるAGO2の発現上昇もまた転帰と有意に相関していた。
【0011】
従って、疾病の進行に寄与し、高リスク疾患の特定に使用でき、治療処置をガイドするような、多発性骨髄腫の生存と関連した明確で予後上有用なゲノム署名を特定するためのコピー数異常及び遺伝子発現プロファイリングに関して、先行技術は不十分である。先行技術は、処置後再発を起こす患者の特定に使用できる遺伝子発現パターンと相関している第1および第8染色体上のDNA欠損または付加の特定においても不十分である。本発明は、この長期にわたる技術上の需要と要求を満足させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pinkel D and Albertson DG, Annu Rev Genomics Hum Genet, 2005a, 6:331-354.
【非特許文献2】Pinkel D and Albertson DG, Nat Genet, 2005b, 37 Suppl: S11-17.
【非特許文献3】Feuk et al. Hum Mol Genet, 2006, 15 Spec No 1:R57-66.
【非特許文献4】Sharp et al. Nat Genet 2006, 38:1038-1042.
【非特許文献5】Lupski JR and Stankiewicz P, PLoS Genet, 2005,1:e49.
【非特許文献6】Sebat et al. Science, 2004, 305:525-528.
【非特許文献7】Redon et al. Nature, 2006, 444:444-454.
【非特許文献8】Tuzun et al. Nat Genet 2005, 37:727-732.
【非特許文献9】Iafrate et al. Nat Genet, 2004, 36:949-951.
【非特許文献10】Barlogie et al. Plasma cell myeloma. In: Marshall Al Lichtman EB, Kenneth Kaushansky, Thomas J. Kipps, Uri Seligsohn, Josef Prchal, editor. Williams Hematology, 2005, 7 ed. New York: McGraw-Hill Professional.
【非特許文献11】Kumar S and Anderson KC, Nat Clin Pract Oncol, 2005, 2:262-270.
【非特許文献12】Zhan et al. Blood, 2008, 111:968-969.
【非特許文献13】Kuehl WM and Bergsagel PL, Nat Rev Cancer, 2002, 2:175-187.
【非特許文献14】Zhan et al. Blood, 2006, 108:2020-2028.
【非特許文献15】Fonseca et al. Cancer Res, 2004, 64:1546-1558.
【非特許文献16】Liebisch P and Dohner H, Eur J Cancer, 2006, 42:1520-1529.
【非特許文献17】Avet-Loiseau et al. Genes Chromosomes Cancer, 1997, 19:124-133.
【非特許文献18】Hanamura et al. Blood, 2006 108:1724-1732.
【非特許文献19】Barrett et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2004, 101:17765-17770.
【非特許文献20】Pollack et al. Nat Genet 1999, 23:41-46.
【非特許文献21】Pinkel et al. Nat Genet, 1998, 20:207-211.
【非特許文献22】Lee et al. Nat Genet, 2007, 39:S48-54.
【非特許文献23】Phillips et al. Cancer Res, 2001, 61:8143-8149.
【非特許文献24】Platzer et al. Cancer Res, 2002, 62: 1134-1138.
【非特許文献25】Pollack et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002, 99: 12963-12968.
【非特許文献26】Hyman et al. Cancer Res, 2002, 62: 6240-6245.
【非特許文献27】Orsetti et al. Cancer Res, 2004, 64:6453-6460.
【非特許文献28】Stallings RL, Trends Genet, 2007, 23:278-283.
【非特許文献29】Auer et al. BMC Genomics, 2007, 8:111.
【非特許文献30】Gao et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2007, 104:8995-9000.
【非特許文献31】Cigudosa et al. Blood, 1998, 91 3007-3010.
【非特許文献32】Gutierrez et al. Blood, 2004, 104:2661-2666.
【非特許文献33】Houldsworth J, Chaganti RS, Am J Pathol, 1994, 145:1253-1260.
【非特許文献34】Walker et al. Blood, 2006, 108:1733-1743.
【非特許文献35】Carrasco et al. Cancer Cell, 2006, 9:313-325.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、疾病からの生存に関連したゲノム署名を特定するためのコピー数異常および遺伝子発現プロファイリングを検出する方法を目的とする。その方法は、疾病に罹患した人々とその病気に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動の結果は、疾患生存に関連した具体的なゲノム署名を指す。
【0014】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行から高リスク指標および高死亡リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、疾病に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動およびコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾病進行から高リスク指標および高死亡リスクを指す。
【0015】
本発明は、染色体位8q24におけるコピー数異常および遺伝子発現変化と遺伝子アルゴナウテ2(Argonaute 2)(AGO2)の発現上昇とを検出する方法も目的とする。その方法は、多発性骨髄腫に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、アルゴナウテ2遺伝子の発現変動および8q24における獲得の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の高リスク指標および高死亡リスクを指す。
【0016】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行における高リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、その疾患に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、または1pタンパク質発現の喪失の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾患進行における高リスクの指標を指す。
【0017】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行における高リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、その疾患に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1q染色体DNAの獲得、1q遺伝子発現の獲得、または1qタンパク質発現の獲得の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾患進行における高リスクを指す。
【0018】
本発明は、疾患の診断、予測、または治療マーカーを検出する方法を目的とする。その方法は、疾患に罹患した人々と同疾患に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。プラズマ細胞の核酸は、プラズマ細胞におけるコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、または1pタンパク質発現の喪失、1q染色体DNAの獲得、1q遺伝子発現の獲得、または1qタンパク質発現の獲得、第8染色体DNAの獲得、8q遺伝子発現の獲得、または8qタンパク質発現の獲得の関与するコピー数異常の結果は、疾患の診断、予測、または治療マーカーの検出を指す。
【0019】
本発明は、疾患における生存と相関したゲノム署名を特定するために、コピー数異常および遺伝子発現変化を検出する方法も目的とする。その方法は、疾患に罹患した人々と同疾患に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞におけるコピー数異常、遺伝子発現レベル、および染色体領域を決定するため分析される。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、コピー数異常および遺伝子発現変化の結果は、疾患における生存と相関したゲノム署名を特定する。
【0020】
本発明は、疾患特異的な生存にリンクしたゲノム署名の特定のためのキットをも目的とする。そのようなキットは、プラズマ細胞におけるコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するためのアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションDNAマイクロアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイ、および個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し、核酸をDNAマイクロアレイとハイブリダイズするための説明書からなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、分子的に定義された多発性骨髄腫サブグループの原子領域(AR)全ゲノム領域ヒートマップを示す。暗灰色は獲得・増幅を示し、明灰色は喪失・欠損を示す。原子領域は、染色体マップ上p ter位からq ter位へ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と順序付けられている。サンプル(行)は、既述の通り遺伝子発現に基づく分類に従って並べられた(14)。CD-2サブタイプを除く全てのクラスにおける超2倍体性の証拠に留意されたい。さらに、ほぼ全てのサンプルでの、正常B細胞分化においてDNA欠損を引き起こすイムノグロブリン再編成に関係する可能性の高い事象である2qおよび14q染色体における微小欠損の証拠にも留意されたい。
【図2A】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Aは、染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と順序付けられていることを示す。黒色のポイントは、コピー数の増加が悪転帰と相関する原子領域を示す。赤色のポイントは、コピー数の減少が悪転帰と相関する原子領域を示す。上段のパネル(y>1)は、危険率を示し、下段のパネル(y>0)はlogランク検定のlog 10 P値を示す。上の赤色線は1である。下の赤色線は、多重検定のためのボンフェローニ補正に基づく最も厳密な基準を示す−6.3の位置にある。10よりも大きい危険率は全て10とした。
【図2B】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Bは、0.01の統計学的有意度で転帰と相関するDNA長の分布を示す。
【図2C】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Cは、5.4e-07のボンフェローニ補正統計学的有意度で転帰と相関するDNA長の分布を示す。
【図3】図3は、転帰とコピー数変動(CNVs)と重複した原子領域(ARs)およびコピー数変動との重複のない原子領域の間の相関を示す。X-軸は、原子領域のlog-ランク検定P値の対数(logP)である。赤色線は、正常コピー数変動と重複しない原子領域のlogPの確率分布を示す。黒色線は、正常コピー数変動と重複する原子領域のlogPの確率分布を示す。2本の線は明白に異なる分布(p=0.012、片側コルモゴルフ・スミルノフ検定)を持ち、このことは、正常コピー数変動と重複しない原子領域は、正常コピー数変動と重複するものよりも疾患転帰とより相関する傾向にあることを意味している(log-ランク検定におけるより小さいP値)。
【図4A】図4A-Bは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよびリスクインデックスと増殖インデックスの間の相関を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。赤色のポイント(赤色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)は、図4Aでは遺伝子発現に基づくリスクインデックスと、図4Bでは増殖インデックスと、正の相関のある上位100コピー数異常を示し、緑色のポイントは(緑色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)これらと負の相関のある上位100コピー数異常を示す。1q獲得および1p喪失のリスクインデックスおよび増殖インデックスとの有意な相関に着目されたい。8q24獲得とリスクインデックス間の強度な相関および増殖インデックスとの相関の欠如にも着目されたい。
【図4B】図4A-Bは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよびリスクインデックスと増殖インデックスの間の相関を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。赤色のポイント(赤色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)は、図4Aでは遺伝子発現に基づくリスクインデックスと、図4Bでは増殖インデックスと、正の相関のある上位100コピー数異常を示し、緑色のポイントは(緑色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)これらと負の相関のある上位100コピー数異常を示す。1q獲得および1p喪失のリスクインデックスおよび増殖インデックスとの有意な相関に着目されたい。8q24獲得とリスクインデックス間の強度な相関および増殖インデックスとの相関の欠如にも着目されたい。
【図5A】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5B】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5C】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5D】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5E】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5F】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5G】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5H】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図6】図6は、多発性骨髄腫における原子領域の事例を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。獲得と相関した原子領域(ARs)の百分率は中央線より上に示し、喪失と相関した原子領域は中央線よりも下に示した。
【図7A】図7A-Bは、MYC座におけるDNAコピー数変化に基づく生存分析を示す。図7AはDNAコピー数変化に基づく異なる閾値におけるlog-ランク検定P値を示し、図7Bは左のパネルで決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図7A中の青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図7Aにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、92の研究症例においてMYC座における2原子領域、すなわちar9837(図7A)およびar9838(図7B)について実施した。
【図7B】図7A-Bは、MYC座におけるDNAコピー数変化に基づく生存分析を示す。図7AはDNAコピー数変化に基づく異なる閾値におけるlog-ランク検定P値を示し、図7Bは左のパネルで決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図7A中の青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図7Aにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、92の研究症例においてMYC座における2原子領域、すなわちar9837(図7A)およびar9838(図7B)について実施した。
【図8】図8は、MYC DNAコピー数とMYC mRNA発現レベルとの間の相関を示す。2つのMYC原子領域(ar)(ar9837およびar9838)は強い相関を示したが、それらのコピー数変化はMYC発現レベルと無関係であった。
【図9A】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9B】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9C】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9D】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9E】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9F】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、これらのステージ・リスク関連遺伝子と管理なし分子分類において特定された分子サブタイプ・病因関連遺伝子を統合する、定量的RT-PCRに依拠するアッセイを開発し実証することを企図する。これらの遺伝子の発現レベルの評価は、限定的な予後的意味しか持たずに現在用いられており、また創薬ターゲットも欠いている非常に多くの標準可変因子を検査する必要を無くす、簡単かつ強力な分子ベースの予後試験を供する可能性がある。PCRに依拠した方法の使用は蛍光in situハイブリダーゼーションに依拠した分析において費やされる時間と労力を劇的に減ずるばかりでなく、分析に必要な組織の量も大幅に減ずるであろう。これらの遺伝子署名がミエローマ腫瘍細胞に特異的であれば、その様な試験は処置後におそらく検体源として末梢血を用いて最小残留疾患を評価するのに有用であるかもしれない。
【0023】
重要な意味がこれらの観察より導かれる。第1に、変動遺伝子発現パターンはしばしば正常細胞と形質転換組織との本質的的生物学的状態の違いを表すので、高リスク署名は多発性骨髄腫における薬剤耐性や早期再発の生物学的表現型と関係している可能性が高い。従って、このミエローマ表現型は、最も関連の深い経路をより解明したり治療機会を特定したりする目的でさらに研究する価値がある。ここで使用された比較的大きな遺伝子発現データセットは、これらの腫瘍のタイプをより完全に定義する一つの手段を供する。第2に、高リスク分類を日常的に臨床実施するにはいくつかのハードルが残っているが、この仕事は、ある種のミエロ−マ患者は現行の治療からは極僅かな利益しか受けないことを明白にする。その様な患者を特定する実用的方法は、患者治療を顕著に改善するはずである。良好な転帰が予期される患者に対しては標準治療の毒性を最小化する努力が必要であるかもしれないし、悪い転帰が予想される患者は、現行の治療に拘らず、実験的処方の早期投与が考慮されてよい。本発明は、この腫瘍遺伝子発現プロファイリング(GEP)および高リスクアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションモデルが臨床的に実施出来、プロテアソーム阻害薬やIMIDsと標準的抗ミエローマ薬との新しい組み合わせや高用量治療の試験を含む他の前線治療法に有用であるか決定することを企図する。
【0024】
本発明の一実施例においては、以下の手順からなる疾患特異的な生存と相関したゲノム署名を特定するための高解像度全ゲノム長比較ゲノムハイブリダイゼーションおよび遺伝子発現プロファイリングの方法が供される: 一集団内の多発性骨髄腫が疑われる個人群および多発性骨髄腫が疑われない個人群からプラズマ細胞を分離すること、前述のプラズマ細胞をCD138陽性群に分別すること、この分別プラズマ細胞から核酸を抽出すること、コピー数異常を決定するために核酸を比較ゲノムハイブリダイゼーション用DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズすること、プラズマ細胞中の遺伝子発現レベルを決定するため前述の核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズすること、および、データより前述の疾患の生存にリンクした固有のゲノム署名の特定に至るよう、バイオインフォマティクスおよび計算機手法を前述のハイブリダイゼーションにより産生されたデータに応用すること。
【0025】
その様な方法はさらに、データ分析、アレイ内標準化、アレイ間標準化、断片化、原子領域の特定、多変数生存分析、遺伝子発現レベルとDNAコピー数の相関分析、配列分析、および遺伝子オントロジー(GO)分析を実施することより成ってよい。
【0026】
加えて、遺伝子は第1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および22染色体にマップされてよく、これらの染色体のpまたはq領域にマップされてよい。その様な遺伝子または遺伝子群の例は、AGL、AHCTF1、ALG14、ANKRD12、ANKRD15、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CHD1L、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNOT7、COG3、COG6、CREB3L4、CSPP1、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DENND2D、DHRS12、DIS3、DNAJC15、EDEM3、EIF2C2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FBXL6、FDPS、FLAD1、FLJ10769、FNDC3A、FOXO1、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、HBXIP、IARS2、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1219、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAPBPIP、MEIS2、MET、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEK2、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、PBX1、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PLEC1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRCC、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RIPK5、RNPEP、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM183A、TMEM9、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF364、およびZNF687を含んでよいが、これらに限定されない。
【0027】
さらに、ここで述べる方法は、臨床転帰および個人の生存を予測するかもしれない、罹患した個人のための治療選択に有効であるかもしれない、個人の処置後再発リスクおよび生存を予測するかもしれない、疾患の分子分類をリスクグループを定義するゲノム署名と関連付けるかもしれない、またはこれらの組み合わせを可能にするかもしれない。分子分類はCD1であってよく、高リスク多発性骨髄腫のゲノム署名と相関してよい。CD1分類は、MMSET、MAF/MAFB、PROLIFERATION署名、またはこれらの組み合わせの上昇した発現から成ってよい。または、分子分類はCD2であってよく、低リスク多発性骨髄腫のゲノム署名と関連してよい。CD2分類は、HYPERDIPLOIDY、LOW BONE DISEASE、CCND1/CCND3 転位、CD20発現、またはこれらの組み合わせより成ってよい。加えて、その様な方法を使用してゲノム署名を特定される疾患型は、症候性多発性骨髄腫または多発性骨髄腫を含んでよいが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の別の実施例では、疾患特異的な生存にリンクしたゲノム署名の特定のための以下よりなるキットが供される: DNAマイクロアレイおよび個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズするための説明書。その様なキット中のDNAマイクロアレイは、第1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および22染色体にマップされる遺伝子のmRNAに相補的な核酸プローブから成ってよく、これらの染色体のpまたはq領域にマップされてよい。遺伝子の例は、上述のものを含んでよいが、それらに限定されない。
【0029】
加えて、キットが使用される疾患は、無症候性多発性骨髄腫、症候性多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、再発多発性骨髄腫、またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。
【0030】
(原文において)"a"または"an"は一またはそれ以上を意味する場合がある。ここで使用される通り、請求項において、「より成る("comprising")」なる語と組み合わせて用いられるとき、"a"または"an"なる語は一または一以上を意味することがある。ここで使用される通り、「別の("another")」または「他の("other")」は、最低第2のまたはそれ以上の同じまたは異なる請求事項またはその構成物を意味する場合がある。
【0031】
以下の例は、発明の種々の実施例を例示する目的で供するものであり、本発明をいかなる様態においても制限することを意図しない。当業者は、本発明が目的を達するよう良く適応されていることを容易に認識し、述べられた範囲と有利性、および内在する目的、範囲および有利性を取得するであろう。請求項の範囲によって定義される本発明の精神の中にある変更および別の使用は当業者に起こりうる。
【実施例1】
【0032】
研究材料
骨髄吸引物は、92人の新規に診断され引き続き国立衛生研究所出資の臨床試験において処置された多発性骨髄腫患者より得た。処置プロトコルは、導入療法に続くメファランによるタンデム末梢血幹細胞自家移植、地固め化学療法、および維持療法を使用した(36)。患者は施設内審査委員会によって認可されたインフォームドコンセントの元で供与し、記録はファイルに残された。多発性骨髄腫プラズマ細胞(PC)は、ヘパリン処理した骨髄吸引物からCD138によるイムノマグネティックビーズ選択によってMiltenyi社AutoMacs装置(Miltenyi社、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を使用して、以前述べた通り分離した(37)。
【実施例2】
【0033】
DNA分離およびアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション
高分子量ゲノムDNAは、CD138濃縮プラズマ細胞からQIAmp DNAミニキット(Qiagenサイエンス社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用して分離された。腫瘍および性別を一致した参照ゲノムDNA(Promega社、マディソン、ウィスコンシン州)はAgilent 244Kアレイに対し製造者の説明書に従ってハイブリダイズした(Agilent社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)。
【実施例3】
【0034】
分裂期間蛍光in situハイブリダイゼーション
多発性骨髄腫プラズマ細胞におけるコピー数変化は、染色体座の3色分裂期間蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を用いて既述の通り検出した(38)。13q14 (D13S31)、1q21 (CKS1B)、1p13 (AHCYL1)および11q13 (CCND1)に特異的な 細菌人工染色体(BAC)クローンは、BACPACリソースセンター(オークランド、カリフォルニア州)から入手し、スペクトラム・レッドまたはスペクトラム・グリーンとコンジュゲートしたヌクレオチドによりニックトランスレーションにより標識した(Vysis社、ダウナーズグローブ、イリノイ州)。
【実施例4】
【0035】
RNA精製およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
RNA精製、cDNA合成、cRNA調製、およびヒトゲノムU95Av2およびU133Plus2.0 GeneChipマイクロアレイ(Affymetrix社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)に対するハイブリダイゼーションは、以前に述べた通りに実施した(14、38-39)。
【実施例5】
【0036】
データ分析
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)データは、改変Lowessアルゴリズムによって標準化した(40)。統計学的に変化した領域は、サーキュラー・バイナリ・セグメンテーション(CBS)アルゴリズムを用いて特定した(41)。「原子領域(AR)」は、隣接プローブからのシグナル間のピアソン分布係数を適応することによって定義した。ゲノム不安定性が動的過程であることを踏まえれば、DNAブレイクポイントの強度は、コホート内での症例の割合に相関しており、またある症例中の腫瘍細胞のパーセンテージはある特定のブレイクポイントを持つと定義された。ブレイクポイントの有意性はR =1 - 相関係数と定義された。強ブレイクポイント(高パーセンテージの症例およびブレイクポイントを持つ症例内で高パーセンテージの細胞)はR > = 0.4 を持つとされた。R中のRMA(42)パッケージは、Affymetrixジーンチップ U133Plus2.0発現データの要約化、標準化を実施するために用いた。転帰との有意な関連は、生存のlog-ランク検定を用いて決定した。危険度は、Cox比例モデルを使用して計算した。多変数生存分析は、転帰と最も有意に関連した独立特性を選択するために応用した。全ての統計学的分析は、www.r-project.orgより無償供与される統計ソフトウェアR(バージョン2.6.2)およびwww.bioconductor.orgより無償供与されるBioConductorプロジェクトによって開発されたRパッケージを用いて実施した。データ分析方法の詳細な記述は実施例6-13に示す。さらに、もう2つの公共遺伝子発現マイクロアレイデータセットが我々の発見をさらに検証するために利用された。2つのデータセットは、各々、総治療2に参加した新規診断された多発性骨髄腫患者340名および総治療3試験において新規診断された多発性骨髄腫患者206名を示す。データセットはNIH GEOから受入番号GSE2658を用いてダウンロードできる。ここで述べた92症例を用いて産生されたアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよび遺伝子発現データは、ドナD.およびドナルドM.ランバートミエローマ遺伝学研究所ウェブサイト www.myeloma.uams.edu/lambertlab/software.asp, ftp://ftp.mirt.uams.edu/download/data/aCGHよりダウンロードできる。
【実施例6】
【0037】
アレイ内標準化
アレイ内標準化の目的は、2チャンネルマイクロアレイプラットフォームにおける異なる蛍光団と異なる濃度のDNAサンプルの使用に特有の性質により導入される系統的バイアスを除去することである。Loessアルゴリズムは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションの生データを標準化するために用いられ(1)、Cy5チャンネルのCy3チャンネルに対する対数比を概算する。対数比は、試験および参照DNA間の異なるDNA濃度の度合いを示す。我々の経験によればLoess標準化法は殆どのケースで強固であるが、Loess標準化後著しい偏向したシグナルは見出されなかった。これは、おそらくミエローマプラズマ細胞にはあまりにも多くのゲノム変化があること、およびその変化が有意に非対称である(DNA喪失よりもずっと多くのDNA獲得)という事実によるのかもしれない。そこで、Lowess標準化シグナルを得た後、発見的プロセスがこの問題を処理するために導入された。
【0038】
次に、各染色体は2つの特性、シグナルの中央値および中央値絶対偏差(MAD)によって特徴付けられた。中央値および中央値絶対偏差は、ロバストネスの向上のために平均値および分散に代えて用いられた。中央値絶対偏差は、MAD(s) = 中央値(|si - 中央値|)(si はプローブiのシグナルを現す)と定義される。
【0039】
第2に、典型的に全染色体獲得を示す第3、5、7、9、11染色体および2つの性染色体は除かれた。それから、その他全ての染色体を2つの特性を用いて4つのサブグループに分類するためにK-平均値クラスタリングが応用された:獲得、喪失、正常、異常。K-平均値に対するほとんどの染色体は獲得または喪失を示さないはずであるから、最大サイズのグループは正常染色体とみなされる。
【0040】
第3に、正常染色体の全てのシグナルの中央値および中央値絶対偏差が計算された。アレイ上の全てのシグナルから中央値を減じた後、アレイ内標準化シグナルが得られた。
【実施例7】
【0041】
アレイ間標準化
マイクロアレイ間で著しいスケール差が頻繁に見られた。その差は、スキャナーの光増倍管のセッティング変化、または他の未確定の理由によって起こり得る(1)。これに留意し、アレイ間のシグナルを標準化する必要がある。従って、データは全てのアレイが同一スケールであることを保証するよう変換された。使用した計算は、
【0042】
【化1】
であり、siはプローブiのアレイ内標準化シグナルを現す(median:中央値、MAD:中央値絶対偏差)。
【実施例8】
【0043】
セグメント化
セグメント化は2つの目的がある;ブレイクポイントを特定すること、および定常領域のシグナルを平均化することによってシグナルから雑音除去することである。OlshenとVenkatraman(2、41)によって開発されたサーキュラー・バイナリ・セグメンテーション(CBS)アルゴリズムが、単一セグメント内のすべてのDNAが同じ含量となるように全長染色体を連続するセグメントに断片化するために応用された。簡単に述べると、アルゴリズムは、あるDNA断片(1段階目は全長染色体)を2または3のサブセグメントに切断し(アルゴリズムが自動的に2か3かを決断する)、2つの両側セグメントとことなる平均値をもつ中間セグメントが存在するか否かをチェックする。もしあると、差を最大化する切断ポイントを決定し、この手順が全てのブレイクポイントを特定するよう再帰的に適用される。
【実施例9】
【0044】
原子領域
「原子領域(AR)」は、全てのミエローマ症例由来のプラズマ細胞のゲノムブレイクポイントによって挟まれるDNA連続スチレッチである。ARsの定義に使用された手順は以下の通りである:あるプローブとその隣接プローブのピアソン分布係数(cc)を計算し、各染色体の第1ポイントの相関係数を0とする。(上位および下位1%は、ロバストネスのために、cc計算から除外した)特定の閾値より小さい相関係数をもつポイントを「0ポイント」とし、閾値より大きい場合は「1ポイント」とする。全ての「0ポイント」とそれにギャップなく続く「1ポイント」を併せて、1原子領域とする。
【0045】
原子領域のコンセプトは技術的および生物学的利点を持つ。技術的利点は、次元を244Kプローブから約40Kまたはそれ以下の原子領域に減じ、分析を加速することである。原子領域と最小共通領域とは、最小共通領域が個人レベルで定義されるのに対し、原子領域が集団レベルで定義される点で異なる。その様なものであるから、例えば、サンプル内のある領域のコピー数変化の分布やその他の領域との相関等、集団内の特性の研究における使用がより適切である。原子領域は、反復性ブレイクポイントをより精密に定義することも助ける。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータにおいては2つの異なるプローブ由来のシグナルが重複することは一般的である。このノイズによって、ブレイクポイントは精密に定義することがしばしば困難である。現方法は、全集団内の隣接するプローブのシグナルを同時に考慮することによってプローブが属する原子領域を決定し、従ってジョイントプローブを高い信頼度で精密に特定する能力を劇的に向上させる。生物学的観点からは、原子領域は染色体の天然構造単位であるかもしれない。多発性骨髄腫および他のガンにおける原子領域の役割の理解は、なぜがん細胞の多くのブレイクポイントがそれほど一定であるのか、ガンの原子領域は生殖細胞のハロタイプブロックと同様であるのか、虚弱部位のコンセプト、ゲノム不安定性のメカニズム、およびゲノム不安定性の進化の理解を助けるかもしれない。
【実施例10】
【0046】
多変数生存分析
Cox比例危険度回帰モデルは、モデルをデータにフィットするのに用いられた。手順は以下の通りである:ステップ1.全ての一変数モデルをフィットする。その係数のP値が<0.25なら、最も高い有意性(最小P値)を持つ一変数を選択した。ステップ2.最適N変数モデルのための残りの独立変数の段階的プログラム検索は、前段階の(N−1)変数モデルに各変数を一つずつ加えることによって達成した。その係数の補正P値が<0.25なら、最大の補正有意性を持つ変数を選択した。ステップ3.それから、モデル中の全ての変数をサイドチェックした。補正P値>0.1の変数があれば、その変数は除去した。ステップ4.ステップ2および3を変数を加えられなくなるまで繰り返した。
【実施例11】
【0047】
遺伝子発現レベルとDNAコピー数との相関分析
各々の遺伝子に対し、その発現レベルと対応するゲノム座のDNAコピー数との間のピアソン相関係数を計算した。
【0048】
相関の有意度を決定するため、92患者のサンプルラベルを無作為に入れ替えてから、各遺伝子に対して新しい相関係数を計算した。入れ替えを1000回繰り返し、各遺伝子につき1000の異なる相関係数を得、1000のランダム相関係数の95パーセンタイルにて有意度を決定した。
【実施例12】
【0049】
配列分析
全ての分析は、ヒトゲノム配列国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ビルド35(hg17)に依拠した。ヒトマイクロRNAの位置は、miRBase(microrna.sanger.ac.uk/sequences/)より得た。脆弱部位の位置は、NCBI遺伝子データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)から得た。セグメント重複、セントロメアおよびテロメアの位置はカリフォルニア大学サンタ・クルズ校(UCSC)ゲノムブラウザから得た。例えばhg18からhg17のような別のアセンブリからゲノム座標への変換には、LiftOverなるウェブツール(genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgLiftOver)を使用した。
【実施例13】
【0050】
遺伝子オントロジー(GO)分析
遺伝子オントロジーは、遺伝子を、機能、関与する手順、細胞内局在などの属性に従って異なるカテゴリーに分類する。カテゴリーは管理された語彙によって記述される。ヒト遺伝子用遺伝子オントロジーの注釈はNCBI遺伝子データベースからダウンロードした(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/gene/DATA)。遺伝子対と遺伝子オントロジー用語の関連度は、フィッシャーの直接確率検定によって計算した。
【実施例14】
【0051】
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)データの前処理および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)バリデーション
オリゴヌクレオチドに基づくアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションは高解像度を与えるが、しばしば高ノイズの影響を受ける(43)。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション生データのノイズ補正の不適切な方法は、しばしば不正確な結果を生む。シグナル−ノイズ比を向上させるため、管理標準化および自動セグメンテーションアルゴリズムを含む前処理手法が応用された。Lowess標準化法(40)は、最初2色強度の標準化および各アレイ内の多発性骨髄腫細胞DNAシグナルと正常参照DNAシグナルの対数比シグナルの計算のために用いられた。非常に多くの多発性骨髄腫サンプル中非常に多くのDNA領域が増幅されることから、Lowess法はしばしば総シグナルを過小評価する。従って、管理標準化の第2段階がこの問題の克服のために導入された。このステップにおいては、殆ど変化のない正常染色体領域を特定するためにK-平均クラスタリングが応用された。これらの「正常」領域のシグナルは0平均および1変数の分布にスケールされた(詳細は実施例6参照)。標準化後次に進む前に、以後の全ての分析と推論の基盤となる、前処理付きアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションのシグナルを確認するため、蛍光in situハイブリダイゼーション実験を実施した。50例を選んで、多発性骨髄腫において高頻度でコピー数変化を受ける1q21, 11q13および13q14なる3染色体領域を調査した。前処理アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションシグナルを蛍光in situハイブリダイゼーションの結果と比較することにより、 アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションシグナルは蛍光in situハイブリダイゼーションの結果と相関係数0.76 ± 0.08で一致することが確認された。最後に、単一セグメント中のすべてのDNAプローブが同一シグナルををもつように、全長染色体を連続セグメントにセグメント化するため、サーキュラーバイナリセグメンテーション(CBS)アルゴリズム(41)が応用された。
【実施例15】
【0052】
原子領域の定義
前処理したシグナルは余分なシグナルを含み、2セグメント内のシグナル分布の頻繁な重複のために、2つの連続したセグメント間の正確なブレイクポイントは正確に定義することが困難である。これに留意し、染色体内「原子領域(AR)」のコンセプトが導入された。原子領域は腫瘍サンプル中で常にともに喪失または獲得される連続したDNAの領域である。原子領域の定義には、簡単なピアソン相関に基づく方法が応用された(実施例9参照)。簡単に述べると、いかなる2つの連続したアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションプローブに対しても、サンプル中のそれらの前処理後シグナルの相関係数が特定の閾値よりも大きいなら(厳密な閾値0.99が使用された)、その2者は1原子領域にともにグループ化される。この方法は、多発性骨髄腫の完全長ゲノム内に18506個の原子領域を定義した。特筆すべきことに、ここで定義された原子領域は統計分析にのみ依拠していた。これらの多くは、生物学的な意味での真のブレイクポイントではなくノイズに起因するかもしれない。そうであっても、それらは最も完全な情報を含み、より低厳密性の閾値が必要なときにはフレキシブルであることから、以後の分析はこれらの原子領域に依拠するほうが望ましかった。
【実施例16】
【0053】
多発性骨髄腫におけるゲノム不安定性の概観
第一に、総体的なコピー数異常は92人の患者由来の多発性骨髄腫細胞で評価した(図1)。その結果は、1q染色体の獲得の存在、第3、5、7、9、11、15、17、19および21染色体の全獲得、1p染色体の欠損、第13染色体の全喪失など(44−45)、多発性骨髄腫のコピー数異常に関する現時点での知識と大部分において一致していた。1pにおける異常は遠位領域の獲得・増幅および近位領域の喪失・欠損として存在することが見出された。その発見は、1p染色体は主として欠損により影響されているという現在の認識に対する重要な修正であり、高リスク疾患の70遺伝子モデルにおける近位領域での遺伝子発現の喪失と1pテロメア領域における遺伝子発現上昇を示す、我々の最近の遺伝子発現プロファイリング−リスクモデルによって支持される。6pの獲得や6qの喪失、および第8および14染色体の喪失の様な比較的よく認知されていない事象が、多数の症例において認められた。これらは、常法によってはほとんど報告されていないが、以前の我々のアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション研究において特定された(35)。X染色体の有意なDNA獲得および喪失が観測され、多発性骨髄腫120症例における最近の核型に関する知見と一致していた(44)。その様な性染色体の獲得と喪失は、今では患者の転帰とも関連付けられた(下を参照)。2−3の患者サンプルは第2、4、8、12、16、18および20染色体における有意な異常を示した。
【0054】
全遺伝子発現プロファイリングを用いて、多発性骨髄腫は7種の異なった分子疾患型に分類できることが以前示された(14、46)。4つのクラスは、既知の反復性のIGHを介する転位と関連している。各々FGFR3およびMMSET/WHSC1を活性化するt(11;14)およびt(6;14)は、CD-1サブタイプまたはCD20をともに発現しているときCD-2サブタイプを形成する。それぞれMAFまたはMAFBを活性化するt(14;16)およびt(14;20)は、MFサブタイプを形成する。第3、5、7、9、11、15および19染色体にマップされる遺伝子の発現上昇と関連し、転位スパイクを欠くグループは、超二倍体(HY)サブタイプを形成する。認知可能なゲノム特性が無く特徴的な遺伝子発現署名をもつ低骨疾患を伴う新規疾患クラスは、低骨疾患(LB)サブタイプを形成する。他の各サブタイプからの症例より成る増殖遺伝子上昇も特定され、PRサブタイプと呼ばれた(14、46)。7種の確認された分子クラスに亘るコピー数異常の上昇は、予測通りおよび予測しなかった知見を明らかにした(図1参照)。予測したとおり、超二倍体(HY)タイプミエローマは、第3、5、7、9、11、15、17、19および21染色体の獲得を伴っていた。興味深いことに、ここでの予測しなかった新しい発見は、典型的には非超二倍体性と考えられていた(47)、IGH転位関連グループ(MS、MFおよびCD-1)を含むほとんど全ての他の疾患サブタイプの一部が超二倍体性を有していたことである。CD-2疾患サブタイプは倍数性変化を欠き、この疾患サブタイプと典型的に結びついた良好な転帰を説明するかもしれない。
【実施例17】
【0055】
コピー数異常(CNAs)と臨床転帰との相関
疾患に関連したコピー数異常、または所謂ドライバーコピー数異常を特定するため、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションのデータと臨床情報とを統合し、核原子領域に対して生存分析を適用した。転帰とP<0.01で有意に相関した、全部で〜416Mb(メガ塩基)のDNA配列を含む2929原子領域があった(図2A)。臨床的意義のあるコピー数異常は全ての染色体に存在するが、それらの染色体分布は一様ではなかった。転帰と最も強い相関は第1染色体上のコピー数異常に認められ、自由統計学的有意度P<0.01(図2B)またはより保守的なボンフェローニ補正統計学的有意度P < 5.4 x 10-7(図2C)を示した。1q上のコピー数異常は、1p上のコピー数異常よりもより有意に多発性骨髄腫の転帰と相関し、さらに、1qの増幅は、転帰との相関において1qコピー数異常中最も強かった。他の染色体よりも多くはないが、第8染色体上のコピー数異常は、転帰と2番目に有意に相関していた(図1および図6参照)。
【0056】
臨床上無関係なコピー数異常領域は、多発性骨髄腫における一般的なゲノム不安定性を反映する、またはヒト集団中の良性コピー数変化(CNVs)に相当するパッセンジャー変異とみなす事ができる(48)。ここで「コピー数変化」なる語は、一般的なヒト集団内で定義されるコピー数変化を、多発性骨髄腫患者において検出されたコピー数異常から区別するために使用された。理想的には、各腫瘍サンプルに対応する胚性ゲノムDNAが参照DNAとして使用されるであろう。それに代えて、多発性骨髄腫によって定義された原子領域は、正常人集団における既知のコピー数変化と比較された(48)。結果は、7443の多発性骨髄腫原子領域は対応する正常集団コピー数変化をもつことを明らかにした。それから、正常コピー数変化と重複する多発性骨髄腫原子領域(CNV-ARs)は、転帰と相関する可能性のより高い重複しない領域と比較された(p=0.012、片側コルモゴルフ・スミルノフ検定)(図3)。
【0057】
獲得および喪失を起こすコピー数異常のサイズは予後と相関するかどうか、が検討された。劣悪な転帰と関連したクラス指定(クラス1、コピー数上昇;クラス2、コピー数喪失)に従うと、0.01、0.001、および5.4E-07の異なる有意度レベルを適用した時のクラス1およびクラス2コピー数異常のDNA長比は、各々206Mb:171Mb、101Mb:31Mbおよび5Mb:0Mbであった。これらの結果はクラス1コピー数異常はクラス2コピー数異常よりも大きいことを示し、一般的にコピー数の増加はDNAの喪失よりも劣悪な予後と見かけ上より強く関係していることを示唆する。
【実施例18】
【0058】
コピー数異常と遺伝子発現由来増殖インデックスおよび高リスクインデックスとの相関
臨床転帰は、遺伝子発現プロファイリング由来増殖インデックスおよびリスクインデックス値に基づいて区別できる。コピー数異常について試験するとき、1pの喪失および1qの獲得が、高増殖インデックスと高リスクインデックスの両方ともっとも有意に相関した。従って、増殖インデックスと正および負に相関した上位100コピー数異常は1p上に位置していた(図4B)。面白いことに、8q24の獲得は、増殖インデックスとは強く関連しないが、リスクインデックスには強く関連していた。あわせると、これらのデータは1qの獲得と1pゲノムDNAの喪失は、多発性骨髄腫における進行性臨床経過と相関する、またはまさにその原因となることを強く示唆している。従って、これらのデータは、1qおよび8qにマップされる遺伝子の発現上昇および1pにマップされる遺伝子の発現低下を特徴とする最近の高リスク疾患遺伝子発現発現モデルが、これらの遺伝子座におけるコピー数異常と強く関係していることを証明しているように見える。興味深いことに、8q24の獲得は、高リスクと強力にリンクしているが、多発性骨髄腫細胞の増殖とは無関係であることが証明されており、このことは、8q24の獲得は高リスク疾患固有の特徴であることを示唆している。これは、遺伝子発現に基づく高リスク署名と増殖インデックスは相関したが、高リスクかつ低増殖の症例は高リスクかつ高増殖の症例と同程度に乏しい相関であり、また重要なことに、低リスクかつ高増殖の症例は高リスクかつ高増殖の症例と同程度によい相関であったことが以前に示されているので重要である。従って、この分析によって定義された高リスクは高増殖性とは異なり、従って、高リスクは細胞増殖とは無関係な固有の生物学的事象に起因しなければならない。これらのデータは、8q24におけるコピー数異常が決定的な差別因子であるかもしれず、疾患進行における8q24獲得の役割に向けたより総合的な研究が望まれることを意味している。
【実施例19】
【0059】
CNAブレイクポイントと染色体構造特性の相関関係
次に、コピー数異常ブレイクポイントの位置と、セグメント重複、セントロメアおよびテロメアのような既知の染色体構造特性との相関関係が評価された。その結果は、コピー数異常ブレイクポイントはセグメント重複およびセントロメアともっとも有意に関連することを明らかにした(表1)。「弱いブレイクポイント」と異なり、高率の症例および症例内の高率の腫瘍細胞にみられるもの(「強いブレイクポイント」)は、テロメア領域には見出されなかった。これは、テロメア近傍のブレイクポイントは選択的増殖優位性を与えない傾向があることを示唆している。既知の不安定部位、染色体不安定性との別の潜在的リンク、およびコピー数異常ブレイクポイントの相関が調査された。コルモゴルフ・スミルノフ検定適用の結果は、多発性骨髄腫の不安定部位とコピー数異常ブレイクポイントは相関しないことを示唆した(表1)。
【0060】
【表1】
【実施例20】
【0061】
遺伝子中の反復コピー数異常ブレイクポイントの定義
コピー数異常ブレイクポイントの大部分は遺伝子間領域に見出されたが(表1)、遺伝子内の強いブレイクポイント(有意な症例数および一症例中有意な細胞数において見出されるもの)が特定され、重要な疾患関連遺伝子を指しているかもしれない。強いブレイクポイントが見出された反復ブレイクポイントおよび対応する遺伝子のリストを供する(表2)。プラズマ細胞は重鎖および軽鎖イムノグロブリン遺伝子の両方において染色体再編を受けた後期B細胞であるから、この遺伝子中心ブレイクポイント特定法は、IGH、IGKおよびIGL座における対象物を明らかにしたことは強調に値する(表2)。イムノグロブリン遺伝子座中の期待ブレイクポイントを特定する能力は、イムノグロブンリン座外の遺伝子中の反復ブレイクポイントが重要な候補疾患遺伝子を指す強力な証拠を与える。それらの意義を実際に決定するには更なる研究を要するであろう。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
有意度>0.4(相関係数<0.6)のブレイクポイントにつきその遺伝子中の位置を調べた。太字のブレイクポイントと遺伝子は第2、14、および22染色体上のイムノグロブリン遺伝子を示す。
【0069】
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション法の限られた解像度によりブレイクポイントの厳密な位置は決定できないので、ブレイクポイントが位置する2つの隣接するプローブ間のギャップをブレイクポイントの指標として使用した。関係の定義は以下の通りである: "belongs_ to"はブレイクポイント領域が遺伝子内にあることを意味する; "contain"はブレイクポイント領域が遺伝子全部を含むことを意味する; "5'_overlaps with_3'"はブレイクポイント領域の5'末端が遺伝子の3'末端と重複することを意味する; "3'_overlaps with_5'"はブレイクポイント領域の3'末端が遺伝子の5'末端と重複することを意味する。
【実施例21】
【0070】
マイクロRNAs(miRNA)に影響するCNAs
マイクロRNA(miRNA)は、mRNA翻訳の抑制またはmRNA分解の促進を介して遺伝子発現を制御することによって成長および分化において重要な役割を演ずる新しいクラスの小分子ノンコーディングRNAsである。蓄積しつつある証明は、腫瘍発生においてmiRNAの無秩序な発現が疑われることを示した。重要なことに、本研究の目的のために、最近の研究はmiRNAはコピー数異常によって変調した遺伝子内に存在することを示した(49-50)。
【0071】
miRNAを標的とするコピー数異常を調べるため、ヒトゲノム全長に亘るmiRNAの染色体分布を最初に決定した。より多くのmiRNAが、偶数染色体(N=179)よりも、超二倍体性多発性骨髄腫において典型的にトリソミ-ーを呈す奇数染色体(N=268)に位置することは指摘するに興味深い(表3)。miRNAは多発性骨髄腫においてコピー数異常を呈す領域に偏在するかどうかを調査した(表4)。これらのデータは、miRNAが獲得および喪失を呈するコピー数異常に偏在するが、miRNAは転帰と有意に関連したコピー数異常にも偏在することを明らかにした(表5)。これらのデータは、miRNAが多発性骨髄腫におけるコピー数異常の標的となり得ることを示唆する。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【実施例22】
【0075】
候補疾患遺伝子の特定
コピー数異常、遺伝子発現データ、および生存情報を総合することにより、次に疾患進行関連領域・遺伝子を調査した。段階的多変数生存分析を実施し、587の原子領域から最大対数ランクP値<0.0001の14原子領域を特定した(表6)。各原子領域・遺伝子につき、92症例を2グループに分ける最適閾値を選択し、対数ランク検定を実施し、Cox比例ハザードモデルを用いて2グループの生存期間における差を比較した。最適閾値は、全ての値を検討することにより選択し、対数ランク検定において最小のP値を与える値を特定した。ここで採用した最適化P値は擬陰性を最小にしたが、擬陽性は有意に増加した。しかし、擬陽性はコピー数異常データが遺伝子発現結果と統合される際に除かれるので、この相殺は受け入れ可能とみなされた。可能性のある候補遺伝子は以下の基準によって定義された: 1)遺伝子発現は転帰と相関しなくてはならない(P<0.01); 2)その遺伝子座におけるコピー数異常は転帰と相関しなくてはならない(P<0.01); および3)その遺伝子座における遺伝子発現とコピー数の相関係数は、サンプルラベルの再採取手法によって決定された0.3よりも大きくなくてはならない(実施例5-13を参照)。これらの基準を用いて、210遺伝子のリストが発見された(表7)。遺伝子オントロジー分析によると、これらの遺伝子は、それらのタンパク質産物がrRNAプロセシング、RNAスプライシング、上皮成長因子受容体情報伝達経路、ユビキチン依存プロテオソーム媒介タンパク質異化過程、mRNA輸送、リン脂質生合成、タンパク質ミトコンドリア移送、および細胞サイクルに関与するものに多い(P<0.01)。特筆すべきことに、210遺伝子中122は、1q領域に位置しており、多発性骨髄腫病理における1q21獲得の中心的役割に対する更なる支持を供する。さらに、第13染色体上に位置する21遺伝子および13q14バンドに位置する17遺伝子が見出された。この分析は、候補疾患遺伝子を表す、多発性骨髄腫における生存に関連したコピー数異常およびコピー数異常常在コピー数感受性遺伝子を特定した。
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
【表16】
【0082】
【表17】
【0083】
【表18】
【0084】
【表19】
【0085】
【表20】
【0086】
【表21】
【0087】
【表22】
【0088】
【表23】
【0089】
【表24】
【0090】
【表25】
【実施例23】
【0091】
8q24におけるコピー数異常はEIF2C2/AGO2コピー数および遺伝子発現を増し、生存に影響する
20の候補遺伝子のひとつであるEIF2C2/AGO2は、miRNAに結合し、その結果mRNA翻訳またはmRNA分解またはその両方(51)、および成熟miRNA産物を制御するもう一つの機能から非常に興味深い(52-53)。重要なことに、最近の研究は、EIF2C2/AGO2がB細胞分化において必須の機能を果たすことを明らかにした(52、54)。EIF2C2/AGO2は、全て同一の原子領域に位置するAgilent 244Kアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションの5つのプローブによって示される。EIF2C2/AGO2はAffymetrix U133Plus2.0 GeneChip(登録商標)中の6プローブも持つが、国立バイオテクノロジー情報センター遺伝子データベースによると、唯一のプローブ225827_atがEIF2C2/AGO2のエクソンに正確にマップし、このプローブがEIF2C2/AGO2の発現評価に用いられた。DNAコピー数とEIF2C2/AGO2発現レベルの相関係数は、0.304であった。対数ランク検定の最適化P値は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションおよび遺伝子発現データにつき、各々0.00035および0.00068であった(図5A-5D)。次に、もう2種の公的遺伝子発現データセットにおけるEIF2C2/AGO2発現と転帰の関係を調査した(図5E-5H)。EIF2C2/AGO2の発現上昇は、これらのデータセットにおいても劣悪な転帰と関連していた。それから、総治療第2(表8)および総治療第3データセット(表9)中のEIF2C2/AGO2およびその他の一般的予後因子につき多変数分析を実施した。これらの結果は、EIF2C2/AGO2が両データセットにおいて独立した予後変数であることを示唆した。MYCオンコジーンは8q24にマップされ、その脱制御は種々のガンにおいて認められることから、次に、これらのデータセットにおけるコピー数および発現と転帰の関係を検討した。その結果は、MYCはコピー数異常について悪転帰と相関していたものの(図7A-7B)、MYC発現はコピー数異常とは有意に相関せず(図8)、MYC発現は92患者群および両確認遺伝子発現データセットにおける転帰と相関しなかった(P>0.01)(図9A-9F)。
【0092】
【表26】
【0093】
【表27】
【0094】
(参照文献)
1. Pinkel D and Albertson DG, Annu Rev Genomics Hum Genet, 2005a, 6:331-354.
2. Pinkel D and Albertson DG, Nat Genet, 2005b, 37 Suppl: S11-17.
3. Feuk et al. Hum Mol Genet, 2006, 15 Spec No 1:R57-66.
4. Sharp et al. Nat Genet 2006, 38:1038-1042.
5. Lupski JR and Stankiewicz P, PLoS Genet, 2005,1:e49.
6. Sebat et al. Science, 2004, 305:525-528.
7. Redon et al. Nature, 2006, 444:444-454.
8. Tuzun et al. Nat Genet 2005, 37:727-732.
9. Iafrate et al. Nat Genet, 2004, 36:949-951.
10. Barlogie et al. Plasma cell myeloma. In: Marshall Al Lichtman EB, Kenneth Kaushansky, Thomas J. Kipps, Uri Seligsohn, Josef Prchal, editor. Williams Hematology, 2005, 7 ed. New York: McGraw-Hill Professional.
11. Kumar S and Anderson KC, Nat Clin Pract Oncol, 2005, 2:262-270.
12. Zhan et al. Blood, 2008, 111:968-969.
13. Kuehl WM and Bergsagel PL, Nat Rev Cancer, 2002, 2:175-187.
14. Zhan et al. Blood, 2006, 108:2020-2028.
15. Fonseca et al. Cancer Res, 2004, 64:1546-1558.
16. Liebisch P and Dohner H, Eur J Cancer, 2006, 42:1520-1529.
17. Avet-Loiseau et al. Genes Chromosomes Cancer, 1997, 19:124-133.
18. Hanamura et al. Blood, 2006 108:1724-1732.
19. Barrett et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2004, 101:17765-17770.
20. Pollack et al. Nat Genet 1999, 23:41-46.
21. Pinkel et al. Nat Genet, 1998, 20:207-211.
22. Lee et al. Nat Genet, 2007, 39:S48-54.
23. Phillips et al. Cancer Res, 2001, 61:8143-8149.
24. Platzer et al. Cancer Res, 2002, 62: 1134-1138.
25. Pollack et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002, 99: 12963-12968.
26. Hyman et al. Cancer Res, 2002, 62: 6240-6245.
27. Orsetti et al. Cancer Res, 2004, 64:6453-6460.
28. Stallings RL, Trends Genet, 2007, 23:278-283.
29. Auer et al. BMC Genomics, 2007, 8:111.
30. Gao et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2007, 104:8995-9000.
31. Cigudosa et al. Blood, 1998, 91 3007-3010.
32. Gutierrez et al. Blood, 2004, 104:2661-2666.
33. Houldsworth J, Chaganti RS, Am J Pathol, 1994, 145:1253-1260.
34. Walker et al. Blood, 2006, 108:1733-1743.
35. Carrasco et al. Cancer Cell, 2006, 9:313-325.
36. Barlogie et al. N Engl J Med, 2006, 354:1021-1030.
37. Zhan et al. Blood, 2002, 99:1745-1757.
38. Shaughnessy et al. Blood, 2000, 96:1505-1511.
39. Zhan et al. Blood, 2007, 109:4995-5001.
40. Yang et al. Nucleic Acids Res 2002, 30:e15.
41. Venkatraman ES, and Olshen AB, Bioinformatics, 2007, 23:657-663.
42. Irizarry et al. Biostatistics 2003, 4:249-264.
43. Ylstra et al. Nucleic Acids Res 2006, 34:445-450.
44. Mohamed et al. Am J Hematol, 2007, 82:1080-1087.
45. Chen et al. Exp Oncol 2007, 29:116-120.
46. Bergsagel Kuehl WM, Oncogene, 2001, 20:5611-5622.
47. Fonseca et al. Blood, 2003, 102:2562-2567.
48. Zhang et al. Cytogenet Genome Res 2006, 115:205-214.
49. Calin GA and Croce CM, Oncogene, 2006, 25:6202-6210.
50. Calin GA and Croce CM, J Clin Invest, 2007, 117:2059-2066.
51. Liu et al. Science 2004, 305:1437-1441.
52. O'Carroll et al. Genes Dev, 2007, 21: 1999-2004.
53. Diederichs S and Haber DA, Cell, 2007, 131:1097-1108.
54. Martinez J and Busslinger M, Genes Dev, 2007, 21:1983-1988.
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
当国際出願は、2008年4月24日付係属中出願米国通番第12/148,985号に係る合衆国法典第35巻第120条による先行利益を請求する。
【0002】
連邦資金の説明
当発明の一部は、国立ガン研究所研究補助金CA55819およびCA97513の下、連邦政府からの資金により創出された。その結果、合衆国政府は当発明中に関する一定の権利を有する。
【0003】
当発明は、概括的にはガン研究の分野に関係する。より具体的には、本発明は、臨床転帰および生存の予測に有用な、高リスク多発性骨髄腫に特異的なゲノム署名を特定するための、体細胞DNAコピー数の異常および遺伝子発現プロファイリングに関する情報の統合に関係する。
【背景技術】
【0004】
ゲノム不安定性は、ガンの特徴である。比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)(1)の最近の進歩に伴い、体細胞DNAコピー数異常(CNAs)の疾患生物学における相関関係がより深く理解されるに至った(2−5)。特筆すべきことに、最近DNAコピー数異常がヒト個体群内において生殖細胞系列DNA中に発見されており、その様なコピー数異常の遺伝は疾病に罹患し易くすることを示唆している(6−9)。
【0005】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄にホーミングしそこで拡張する末梢分化B細胞(プラズマ細胞)の腫瘍であり、溶骨性骨破壊、高カルシウム血症、免疫抑制、貧血症および末端器官の損傷を含む一群の疾病徴候を引き起こす(10)。多発性骨髄腫は、米国において非ホジキンリンパ腫に次いで2番目に発生頻度の高い血液ガンであり、2007年の新規症例19000、現在生存する罹患者約50000人と推定されている。疾患の臨床管理における新規薬剤および治療戦略の最適統合に起因する臨床転帰の有意な改善にも拘らず、多くの多発性骨髄腫患者は再発し、病死する(11)。重要なことに、遺伝子発現プロファイルによって定義される高リスク疾患の一部は、現在の治療行為の恩恵を受けない(12)。高リスク疾患の完全な定義は、患者の階層化および臨床試験のより良い手法を与えるであろうし、さらに、新規治療設計のための枠組みも与えるであろう。
【0006】
殆どの悪性血液疾患と異なり、多発性骨髄腫患者のゲノムは、上皮腫瘍様の構造および数の再編成を含む複雑な染色体異常をしばしば特徴とする(13)。機能性イムノグロブリン遺伝子の作成のためにB細胞中で機能している正常な遺伝子再編機構におけるエラーは、イムノグロブリン遺伝子座と他の染色体上のガン遺伝子との間の染色体転座を引き起こす。これらの再編はおそらく発癌イニシエーションを示し、強力なイムノグロブリンエンハンサー遺伝子素の影響下になる常在ガン遺伝子の構成的発現に至る。多発性骨髄腫においては、CCND1, CCND3, MAF, MAFBおよびFGFR3/MMSET遺伝子の関与する再発性転座が腫瘍の約40%を占め(13)、疾患の分子サブタイプを定義する(14)。典型的には未知のメカニズムによる第3、5、7、9、11、15、および19染色体の獲得を伴う超2倍性が多発性骨髄腫の残りの60%を定義する。それに加えて1pおよび13染色体の喪失および1q21染色体の獲得を含むコピー数変化も、多発性骨髄腫プラズマ細胞の特徴であり、疾病の病因および予後に影響する重要な因子である(15、16)。第1染色体長腕(1q)の獲得は、ミエローマにおいて最も一般的な遺伝子異常のひとつである(17)。セントロメア辺縁ヘテロクロマチンの脱凝縮に起因する1q染色体バンドの直列重複および跳躍分節重複は、疾病の進行に頻繁に伴う。くすぶり型ミエローマ患者由来のプラズマ細胞から分離したDNAのアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを用いて、顕在型疾患への転換リスクは1q21の獲得および第13染色体の喪失とリンクしていることが示された。これらの知見は分裂間期蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析によって確認された。さらに、症候性ミエローマにおける1q21の獲得は低生存率と関連しており、再発時さらに増幅していることが示された(18)。これらの異常の多くが良性プラズマ細胞疾患である意義未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)において観察され得るという認識は、治療を要する顕在型症候性疾患の進行には他のゲノム変化を要することを示唆している。
【0007】
コピー数異常が、疾病の進行における重要な事象であるかもしれないということは推測されている。多発性骨髄腫における倍数性の変化は主として、超顕微鏡的変化を見逃す可能性がありDNA切断点を正確に定義することができない分裂中期G-バンディング染色体分析のような低解像度手法、または、染色体上の2−3の予め定義された小さな特定領域に特化した分裂間期または分裂中期蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のような遺伝子座特異的研究によって観察されてきた。アレイに基づく比較ゲノムハイブリダイゼーションは、全ゲノムにわたってコピー数異常を高解像度で同時分析することを可能にする、最近開発された技法である(19−21)。この新興技法の力により、研究者らは既知の異常を確認するとともに、種々のガンにおける新規なゲノム異常をも発見した。それらの新たに発見された異常の中には、良性のものもあれば、疾病の発生または進行に関連したものもある。いわゆる「ドライバー」および「パッセンジャー」と呼ばれるこれら2種の病変は、疾病病理生物学および臨床診断および予後に係るメカニズムの探索に使用される以前に区別される必要がある(22)。
【0008】
DNAコピー数の細胞表現型への直接効果は、遺伝子用量に影響すること、遺伝子配列を分断すること、または、プロモーターまたはエンハンサー領域中のcis−エレメントを混乱されることのいずれかによって遺伝子発現に影響を及ぼすことである(23−30)。コピー数異常は、正常人群における遺伝子発現変動の約17%に関与し、単一ヌクレオチド多型(SNPs)の寄与とは殆ど重複しないことが示されている(28)。加えて、高増幅遺伝子の半分以上は、乳ガンにおいて中程度または高度に亢進した遺伝子発現を示すことが実証された(25)。従って、多発性骨髄腫細胞における多数のコピー数異常を考慮すると、コピー数異常は疾病の発生及び進行において極めて重要な役割を果たしている可能性が高い。
【0009】
Cigudosaら(31)、Gutierrezら(32)、およびAvet-Loiseauら(17)は、最初古典的ゲノムハイブリダイゼーション手法を応用し(33)、多発性骨髄腫における染色体不安定性の特性に関する我々の知識を拡張した。Walkerら(34)は、この疾患におけるDNAコピー数とヘテロ接合性消失(LOH)の検討に単一ヌクレオチド多型(SNP)に基づくマッピングアレイを応用した。以前、分裂間期蛍光in situハイブリダイゼーション分析は、400以上の新規診断症例に使用され、1qの獲得は、意義未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症には見られないが、くすぶり型多発性骨髄腫に存在したときには顕在型多発性骨髄腫への進行リスクの上昇に随伴し、新規に診断された症候性疾患に存在したときには自家幹細胞移植後のよくない結果と相関することを示した(18)。重要なことに、この集団に関する長期研究は、1q獲得細胞のパーセンテージは任意の患者において経時的に上昇することを明らかにし、この事象が疾病の進行とクローン進化と関係していることを示唆している。67症例の小規模集団に対してアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを使用して、非負行列因子分解技法は、超2倍体疾患の2種のサブタイプ、1q獲得の証拠のあるもの、および、この型の超2倍体疾患がより短い無イベント生存に伴っていることを特定した(35)。これらのデータと一致して、遺伝子発現プロファイリングに関して、1q染色体にマップされる遺伝子の発現上昇および1pにマップされる遺伝子の発現低下を主とする高リスク疾患の遺伝子発現署名を特定することが報告された。
【0010】
多発性骨髄腫細胞におけるゲノム不安定性の可能なメカニズムも調べられた。その研究の結果は、1qおよび1p染色体におけるコピー数異常が遺伝子発現変化と強く相関しており、その変化は疾患の進行による死亡リスク、遺伝子発現に基づく増殖指数、および最近述べられた遺伝子発現に基づく高リスク指数と強く相関していることを明らかにした。重要なことに、コピー数増幅および、8q24にマップされマイクロRNAの発現と成熟の主要調節因子として専ら機能するタンパク質をコードする遺伝子であるAGO2の発現上昇もまた転帰と有意に相関していた。
【0011】
従って、疾病の進行に寄与し、高リスク疾患の特定に使用でき、治療処置をガイドするような、多発性骨髄腫の生存と関連した明確で予後上有用なゲノム署名を特定するためのコピー数異常及び遺伝子発現プロファイリングに関して、先行技術は不十分である。先行技術は、処置後再発を起こす患者の特定に使用できる遺伝子発現パターンと相関している第1および第8染色体上のDNA欠損または付加の特定においても不十分である。本発明は、この長期にわたる技術上の需要と要求を満足させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pinkel D and Albertson DG, Annu Rev Genomics Hum Genet, 2005a, 6:331-354.
【非特許文献2】Pinkel D and Albertson DG, Nat Genet, 2005b, 37 Suppl: S11-17.
【非特許文献3】Feuk et al. Hum Mol Genet, 2006, 15 Spec No 1:R57-66.
【非特許文献4】Sharp et al. Nat Genet 2006, 38:1038-1042.
【非特許文献5】Lupski JR and Stankiewicz P, PLoS Genet, 2005,1:e49.
【非特許文献6】Sebat et al. Science, 2004, 305:525-528.
【非特許文献7】Redon et al. Nature, 2006, 444:444-454.
【非特許文献8】Tuzun et al. Nat Genet 2005, 37:727-732.
【非特許文献9】Iafrate et al. Nat Genet, 2004, 36:949-951.
【非特許文献10】Barlogie et al. Plasma cell myeloma. In: Marshall Al Lichtman EB, Kenneth Kaushansky, Thomas J. Kipps, Uri Seligsohn, Josef Prchal, editor. Williams Hematology, 2005, 7 ed. New York: McGraw-Hill Professional.
【非特許文献11】Kumar S and Anderson KC, Nat Clin Pract Oncol, 2005, 2:262-270.
【非特許文献12】Zhan et al. Blood, 2008, 111:968-969.
【非特許文献13】Kuehl WM and Bergsagel PL, Nat Rev Cancer, 2002, 2:175-187.
【非特許文献14】Zhan et al. Blood, 2006, 108:2020-2028.
【非特許文献15】Fonseca et al. Cancer Res, 2004, 64:1546-1558.
【非特許文献16】Liebisch P and Dohner H, Eur J Cancer, 2006, 42:1520-1529.
【非特許文献17】Avet-Loiseau et al. Genes Chromosomes Cancer, 1997, 19:124-133.
【非特許文献18】Hanamura et al. Blood, 2006 108:1724-1732.
【非特許文献19】Barrett et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2004, 101:17765-17770.
【非特許文献20】Pollack et al. Nat Genet 1999, 23:41-46.
【非特許文献21】Pinkel et al. Nat Genet, 1998, 20:207-211.
【非特許文献22】Lee et al. Nat Genet, 2007, 39:S48-54.
【非特許文献23】Phillips et al. Cancer Res, 2001, 61:8143-8149.
【非特許文献24】Platzer et al. Cancer Res, 2002, 62: 1134-1138.
【非特許文献25】Pollack et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002, 99: 12963-12968.
【非特許文献26】Hyman et al. Cancer Res, 2002, 62: 6240-6245.
【非特許文献27】Orsetti et al. Cancer Res, 2004, 64:6453-6460.
【非特許文献28】Stallings RL, Trends Genet, 2007, 23:278-283.
【非特許文献29】Auer et al. BMC Genomics, 2007, 8:111.
【非特許文献30】Gao et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2007, 104:8995-9000.
【非特許文献31】Cigudosa et al. Blood, 1998, 91 3007-3010.
【非特許文献32】Gutierrez et al. Blood, 2004, 104:2661-2666.
【非特許文献33】Houldsworth J, Chaganti RS, Am J Pathol, 1994, 145:1253-1260.
【非特許文献34】Walker et al. Blood, 2006, 108:1733-1743.
【非特許文献35】Carrasco et al. Cancer Cell, 2006, 9:313-325.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、疾病からの生存に関連したゲノム署名を特定するためのコピー数異常および遺伝子発現プロファイリングを検出する方法を目的とする。その方法は、疾病に罹患した人々とその病気に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動の結果は、疾患生存に関連した具体的なゲノム署名を指す。
【0014】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行から高リスク指標および高死亡リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、疾病に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動およびコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾病進行から高リスク指標および高死亡リスクを指す。
【0015】
本発明は、染色体位8q24におけるコピー数異常および遺伝子発現変化と遺伝子アルゴナウテ2(Argonaute 2)(AGO2)の発現上昇とを検出する方法も目的とする。その方法は、多発性骨髄腫に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、アルゴナウテ2遺伝子の発現変動および8q24における獲得の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の高リスク指標および高死亡リスクを指す。
【0016】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行における高リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、その疾患に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、または1pタンパク質発現の喪失の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾患進行における高リスクの指標を指す。
【0017】
本発明は、多発性骨髄腫の疾病進行における高リスクを検出する方法を目的とする。その方法は、その疾患に罹患した人々と多発性骨髄腫に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞中のコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1q染色体DNAの獲得、1q遺伝子発現の獲得、または1qタンパク質発現の獲得の関与するコピー数異常の結果は、多発性骨髄腫の疾患進行における高リスクを指す。
【0018】
本発明は、疾患の診断、予測、または治療マーカーを検出する方法を目的とする。その方法は、疾患に罹患した人々と同疾患に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。プラズマ細胞の核酸は、プラズマ細胞におけるコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するため、比較ゲノムDNAアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズされる。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、疾患候補遺伝子の発現変動および1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、または1pタンパク質発現の喪失、1q染色体DNAの獲得、1q遺伝子発現の獲得、または1qタンパク質発現の獲得、第8染色体DNAの獲得、8q遺伝子発現の獲得、または8qタンパク質発現の獲得の関与するコピー数異常の結果は、疾患の診断、予測、または治療マーカーの検出を指す。
【0019】
本発明は、疾患における生存と相関したゲノム署名を特定するために、コピー数異常および遺伝子発現変化を検出する方法も目的とする。その方法は、疾患に罹患した人々と同疾患に罹患していない人々とからプラズマ細胞を分離することよりなり、核酸がそれらのプラズマ細胞から分離される。核酸は、プラズマ細胞におけるコピー数異常、遺伝子発現レベル、および染色体領域を決定するため分析される。データは、バイオインフォマティクスおよびコンピューター手法を用いて分析され、コピー数異常および遺伝子発現変化の結果は、疾患における生存と相関したゲノム署名を特定する。
【0020】
本発明は、疾患特異的な生存にリンクしたゲノム署名の特定のためのキットをも目的とする。そのようなキットは、プラズマ細胞におけるコピー数異常および遺伝子発現レベルを決定するためのアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションDNAマイクロアレイおよび遺伝子発現DNAマイクロアレイ、および個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し、核酸をDNAマイクロアレイとハイブリダイズするための説明書からなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、分子的に定義された多発性骨髄腫サブグループの原子領域(AR)全ゲノム領域ヒートマップを示す。暗灰色は獲得・増幅を示し、明灰色は喪失・欠損を示す。原子領域は、染色体マップ上p ter位からq ter位へ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と順序付けられている。サンプル(行)は、既述の通り遺伝子発現に基づく分類に従って並べられた(14)。CD-2サブタイプを除く全てのクラスにおける超2倍体性の証拠に留意されたい。さらに、ほぼ全てのサンプルでの、正常B細胞分化においてDNA欠損を引き起こすイムノグロブリン再編成に関係する可能性の高い事象である2qおよび14q染色体における微小欠損の証拠にも留意されたい。
【図2A】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Aは、染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と順序付けられていることを示す。黒色のポイントは、コピー数の増加が悪転帰と相関する原子領域を示す。赤色のポイントは、コピー数の減少が悪転帰と相関する原子領域を示す。上段のパネル(y>1)は、危険率を示し、下段のパネル(y>0)はlogランク検定のlog 10 P値を示す。上の赤色線は1である。下の赤色線は、多重検定のためのボンフェローニ補正に基づく最も厳密な基準を示す−6.3の位置にある。10よりも大きい危険率は全て10とした。
【図2B】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Bは、0.01の統計学的有意度で転帰と相関するDNA長の分布を示す。
【図2C】図2A-Cは、コピー数異常に基づく生存分析を示す。図2Cは、5.4e-07のボンフェローニ補正統計学的有意度で転帰と相関するDNA長の分布を示す。
【図3】図3は、転帰とコピー数変動(CNVs)と重複した原子領域(ARs)およびコピー数変動との重複のない原子領域の間の相関を示す。X-軸は、原子領域のlog-ランク検定P値の対数(logP)である。赤色線は、正常コピー数変動と重複しない原子領域のlogPの確率分布を示す。黒色線は、正常コピー数変動と重複する原子領域のlogPの確率分布を示す。2本の線は明白に異なる分布(p=0.012、片側コルモゴルフ・スミルノフ検定)を持ち、このことは、正常コピー数変動と重複しない原子領域は、正常コピー数変動と重複するものよりも疾患転帰とより相関する傾向にあることを意味している(log-ランク検定におけるより小さいP値)。
【図4A】図4A-Bは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよびリスクインデックスと増殖インデックスの間の相関を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。赤色のポイント(赤色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)は、図4Aでは遺伝子発現に基づくリスクインデックスと、図4Bでは増殖インデックスと、正の相関のある上位100コピー数異常を示し、緑色のポイントは(緑色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)これらと負の相関のある上位100コピー数異常を示す。1q獲得および1p喪失のリスクインデックスおよび増殖インデックスとの有意な相関に着目されたい。8q24獲得とリスクインデックス間の強度な相関および増殖インデックスとの相関の欠如にも着目されたい。
【図4B】図4A-Bは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよびリスクインデックスと増殖インデックスの間の相関を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。赤色のポイント(赤色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)は、図4Aでは遺伝子発現に基づくリスクインデックスと、図4Bでは増殖インデックスと、正の相関のある上位100コピー数異常を示し、緑色のポイントは(緑色とラベルされた矢印を伴い四角で囲まれている)これらと負の相関のある上位100コピー数異常を示す。1q獲得および1p喪失のリスクインデックスおよび増殖インデックスとの有意な相関に着目されたい。8q24獲得とリスクインデックス間の強度な相関および増殖インデックスとの相関の欠如にも着目されたい。
【図5A】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5B】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5C】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5D】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5E】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5F】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5G】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図5H】図5A-Hは、EIF2C2/AGO2における変化が多発性骨髄腫における生存と有意に相関することを示す。図5A、5C、5Eおよび5Gは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図5B、5D、5Fおよび5Hは、図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図5A、5C、5Eおよび5Gにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、DNAコピー数(図5A-5B)、DNAコピー数データと同じサンプル中のm-RNA発現レベル(図5C-5D)、総治療第2データ群中のmRNA発現レベル(図5E-5F)、および総治療第3データ群中のmRNA発現レベル(図5G-5H)について実施した。
【図6】図6は、多発性骨髄腫における原子領域の事例を示す。染色体は左から右へ、p terからq terへ、最大から最小常染色体へ、そしてXおよびY染色体と並べられている。獲得と相関した原子領域(ARs)の百分率は中央線より上に示し、喪失と相関した原子領域は中央線よりも下に示した。
【図7A】図7A-Bは、MYC座におけるDNAコピー数変化に基づく生存分析を示す。図7AはDNAコピー数変化に基づく異なる閾値におけるlog-ランク検定P値を示し、図7Bは左のパネルで決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図7A中の青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図7Aにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、92の研究症例においてMYC座における2原子領域、すなわちar9837(図7A)およびar9838(図7B)について実施した。
【図7B】図7A-Bは、MYC座におけるDNAコピー数変化に基づく生存分析を示す。図7AはDNAコピー数変化に基づく異なる閾値におけるlog-ランク検定P値を示し、図7Bは左のパネルで決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図7A中の青色線(青色とラベルされた矢印を付した)はシグナルの密度分布を示す。図7Aにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印を付した)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印を付した)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印を付した)は0.001を示す。生存分析は、92の研究症例においてMYC座における2原子領域、すなわちar9837(図7A)およびar9838(図7B)について実施した。
【図8】図8は、MYC DNAコピー数とMYC mRNA発現レベルとの間の相関を示す。2つのMYC原子領域(ar)(ar9837およびar9838)は強い相関を示したが、それらのコピー数変化はMYC発現レベルと無関係であった。
【図9A】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9B】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9C】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9D】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9E】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【図9F】図9A-Fは、MYC mRNA発現レベルに基づく生存分析を示す。図9A、9C、および9Eは、異なる閾値によるlog-ランク検定P値を示し、図9B、9D、および9Fは、図9A、9C、および9Eにおいて決定された最適閾値を用いた総生存のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。閾値はシグナルの5〜95パーセンタイルに亘る。図9A、9C、および9Eにおいて、青色線(青色とラベルされた矢印)はシグナルの密度分布を示す。図9A、9C、および9Eにおいて、3本の水平線は3種の異なる有意度、すなわち黒色(黒色とラベルされた矢印)は0.05、緑色(緑色とラベルされた矢印)は0.01、赤色(赤色とラベルされた矢印)は0.001を示す。生存分析は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによっても分析されたサンプル中の図9A MYC mRNA発現レベル、総治療第2データ群中の図9C MYC mRNA発現レベル、および総治療第3データ群中の図9E MYC mRNA発現レベルについて実施した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、これらのステージ・リスク関連遺伝子と管理なし分子分類において特定された分子サブタイプ・病因関連遺伝子を統合する、定量的RT-PCRに依拠するアッセイを開発し実証することを企図する。これらの遺伝子の発現レベルの評価は、限定的な予後的意味しか持たずに現在用いられており、また創薬ターゲットも欠いている非常に多くの標準可変因子を検査する必要を無くす、簡単かつ強力な分子ベースの予後試験を供する可能性がある。PCRに依拠した方法の使用は蛍光in situハイブリダーゼーションに依拠した分析において費やされる時間と労力を劇的に減ずるばかりでなく、分析に必要な組織の量も大幅に減ずるであろう。これらの遺伝子署名がミエローマ腫瘍細胞に特異的であれば、その様な試験は処置後におそらく検体源として末梢血を用いて最小残留疾患を評価するのに有用であるかもしれない。
【0023】
重要な意味がこれらの観察より導かれる。第1に、変動遺伝子発現パターンはしばしば正常細胞と形質転換組織との本質的的生物学的状態の違いを表すので、高リスク署名は多発性骨髄腫における薬剤耐性や早期再発の生物学的表現型と関係している可能性が高い。従って、このミエローマ表現型は、最も関連の深い経路をより解明したり治療機会を特定したりする目的でさらに研究する価値がある。ここで使用された比較的大きな遺伝子発現データセットは、これらの腫瘍のタイプをより完全に定義する一つの手段を供する。第2に、高リスク分類を日常的に臨床実施するにはいくつかのハードルが残っているが、この仕事は、ある種のミエロ−マ患者は現行の治療からは極僅かな利益しか受けないことを明白にする。その様な患者を特定する実用的方法は、患者治療を顕著に改善するはずである。良好な転帰が予期される患者に対しては標準治療の毒性を最小化する努力が必要であるかもしれないし、悪い転帰が予想される患者は、現行の治療に拘らず、実験的処方の早期投与が考慮されてよい。本発明は、この腫瘍遺伝子発現プロファイリング(GEP)および高リスクアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションモデルが臨床的に実施出来、プロテアソーム阻害薬やIMIDsと標準的抗ミエローマ薬との新しい組み合わせや高用量治療の試験を含む他の前線治療法に有用であるか決定することを企図する。
【0024】
本発明の一実施例においては、以下の手順からなる疾患特異的な生存と相関したゲノム署名を特定するための高解像度全ゲノム長比較ゲノムハイブリダイゼーションおよび遺伝子発現プロファイリングの方法が供される: 一集団内の多発性骨髄腫が疑われる個人群および多発性骨髄腫が疑われない個人群からプラズマ細胞を分離すること、前述のプラズマ細胞をCD138陽性群に分別すること、この分別プラズマ細胞から核酸を抽出すること、コピー数異常を決定するために核酸を比較ゲノムハイブリダイゼーション用DNAマイクロアレイに対してハイブリダイズすること、プラズマ細胞中の遺伝子発現レベルを決定するため前述の核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズすること、および、データより前述の疾患の生存にリンクした固有のゲノム署名の特定に至るよう、バイオインフォマティクスおよび計算機手法を前述のハイブリダイゼーションにより産生されたデータに応用すること。
【0025】
その様な方法はさらに、データ分析、アレイ内標準化、アレイ間標準化、断片化、原子領域の特定、多変数生存分析、遺伝子発現レベルとDNAコピー数の相関分析、配列分析、および遺伝子オントロジー(GO)分析を実施することより成ってよい。
【0026】
加えて、遺伝子は第1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および22染色体にマップされてよく、これらの染色体のpまたはq領域にマップされてよい。その様な遺伝子または遺伝子群の例は、AGL、AHCTF1、ALG14、ANKRD12、ANKRD15、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CHD1L、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNOT7、COG3、COG6、CREB3L4、CSPP1、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DENND2D、DHRS12、DIS3、DNAJC15、EDEM3、EIF2C2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FBXL6、FDPS、FLAD1、FLJ10769、FNDC3A、FOXO1、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、HBXIP、IARS2、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1219、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAPBPIP、MEIS2、MET、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEK2、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、PBX1、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PLEC1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRCC、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RIPK5、RNPEP、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM183A、TMEM9、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF364、およびZNF687を含んでよいが、これらに限定されない。
【0027】
さらに、ここで述べる方法は、臨床転帰および個人の生存を予測するかもしれない、罹患した個人のための治療選択に有効であるかもしれない、個人の処置後再発リスクおよび生存を予測するかもしれない、疾患の分子分類をリスクグループを定義するゲノム署名と関連付けるかもしれない、またはこれらの組み合わせを可能にするかもしれない。分子分類はCD1であってよく、高リスク多発性骨髄腫のゲノム署名と相関してよい。CD1分類は、MMSET、MAF/MAFB、PROLIFERATION署名、またはこれらの組み合わせの上昇した発現から成ってよい。または、分子分類はCD2であってよく、低リスク多発性骨髄腫のゲノム署名と関連してよい。CD2分類は、HYPERDIPLOIDY、LOW BONE DISEASE、CCND1/CCND3 転位、CD20発現、またはこれらの組み合わせより成ってよい。加えて、その様な方法を使用してゲノム署名を特定される疾患型は、症候性多発性骨髄腫または多発性骨髄腫を含んでよいが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の別の実施例では、疾患特異的な生存にリンクしたゲノム署名の特定のための以下よりなるキットが供される: DNAマイクロアレイおよび個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズするための説明書。その様なキット中のDNAマイクロアレイは、第1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21および22染色体にマップされる遺伝子のmRNAに相補的な核酸プローブから成ってよく、これらの染色体のpまたはq領域にマップされてよい。遺伝子の例は、上述のものを含んでよいが、それらに限定されない。
【0029】
加えて、キットが使用される疾患は、無症候性多発性骨髄腫、症候性多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、再発多発性骨髄腫、またはこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。
【0030】
(原文において)"a"または"an"は一またはそれ以上を意味する場合がある。ここで使用される通り、請求項において、「より成る("comprising")」なる語と組み合わせて用いられるとき、"a"または"an"なる語は一または一以上を意味することがある。ここで使用される通り、「別の("another")」または「他の("other")」は、最低第2のまたはそれ以上の同じまたは異なる請求事項またはその構成物を意味する場合がある。
【0031】
以下の例は、発明の種々の実施例を例示する目的で供するものであり、本発明をいかなる様態においても制限することを意図しない。当業者は、本発明が目的を達するよう良く適応されていることを容易に認識し、述べられた範囲と有利性、および内在する目的、範囲および有利性を取得するであろう。請求項の範囲によって定義される本発明の精神の中にある変更および別の使用は当業者に起こりうる。
【実施例1】
【0032】
研究材料
骨髄吸引物は、92人の新規に診断され引き続き国立衛生研究所出資の臨床試験において処置された多発性骨髄腫患者より得た。処置プロトコルは、導入療法に続くメファランによるタンデム末梢血幹細胞自家移植、地固め化学療法、および維持療法を使用した(36)。患者は施設内審査委員会によって認可されたインフォームドコンセントの元で供与し、記録はファイルに残された。多発性骨髄腫プラズマ細胞(PC)は、ヘパリン処理した骨髄吸引物からCD138によるイムノマグネティックビーズ選択によってMiltenyi社AutoMacs装置(Miltenyi社、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を使用して、以前述べた通り分離した(37)。
【実施例2】
【0033】
DNA分離およびアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション
高分子量ゲノムDNAは、CD138濃縮プラズマ細胞からQIAmp DNAミニキット(Qiagenサイエンス社、ジャーマンタウン、メリーランド州)を使用して分離された。腫瘍および性別を一致した参照ゲノムDNA(Promega社、マディソン、ウィスコンシン州)はAgilent 244Kアレイに対し製造者の説明書に従ってハイブリダイズした(Agilent社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)。
【実施例3】
【0034】
分裂期間蛍光in situハイブリダイゼーション
多発性骨髄腫プラズマ細胞におけるコピー数変化は、染色体座の3色分裂期間蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を用いて既述の通り検出した(38)。13q14 (D13S31)、1q21 (CKS1B)、1p13 (AHCYL1)および11q13 (CCND1)に特異的な 細菌人工染色体(BAC)クローンは、BACPACリソースセンター(オークランド、カリフォルニア州)から入手し、スペクトラム・レッドまたはスペクトラム・グリーンとコンジュゲートしたヌクレオチドによりニックトランスレーションにより標識した(Vysis社、ダウナーズグローブ、イリノイ州)。
【実施例4】
【0035】
RNA精製およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
RNA精製、cDNA合成、cRNA調製、およびヒトゲノムU95Av2およびU133Plus2.0 GeneChipマイクロアレイ(Affymetrix社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)に対するハイブリダイゼーションは、以前に述べた通りに実施した(14、38-39)。
【実施例5】
【0036】
データ分析
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)データは、改変Lowessアルゴリズムによって標準化した(40)。統計学的に変化した領域は、サーキュラー・バイナリ・セグメンテーション(CBS)アルゴリズムを用いて特定した(41)。「原子領域(AR)」は、隣接プローブからのシグナル間のピアソン分布係数を適応することによって定義した。ゲノム不安定性が動的過程であることを踏まえれば、DNAブレイクポイントの強度は、コホート内での症例の割合に相関しており、またある症例中の腫瘍細胞のパーセンテージはある特定のブレイクポイントを持つと定義された。ブレイクポイントの有意性はR =1 - 相関係数と定義された。強ブレイクポイント(高パーセンテージの症例およびブレイクポイントを持つ症例内で高パーセンテージの細胞)はR > = 0.4 を持つとされた。R中のRMA(42)パッケージは、Affymetrixジーンチップ U133Plus2.0発現データの要約化、標準化を実施するために用いた。転帰との有意な関連は、生存のlog-ランク検定を用いて決定した。危険度は、Cox比例モデルを使用して計算した。多変数生存分析は、転帰と最も有意に関連した独立特性を選択するために応用した。全ての統計学的分析は、www.r-project.orgより無償供与される統計ソフトウェアR(バージョン2.6.2)およびwww.bioconductor.orgより無償供与されるBioConductorプロジェクトによって開発されたRパッケージを用いて実施した。データ分析方法の詳細な記述は実施例6-13に示す。さらに、もう2つの公共遺伝子発現マイクロアレイデータセットが我々の発見をさらに検証するために利用された。2つのデータセットは、各々、総治療2に参加した新規診断された多発性骨髄腫患者340名および総治療3試験において新規診断された多発性骨髄腫患者206名を示す。データセットはNIH GEOから受入番号GSE2658を用いてダウンロードできる。ここで述べた92症例を用いて産生されたアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータおよび遺伝子発現データは、ドナD.およびドナルドM.ランバートミエローマ遺伝学研究所ウェブサイト www.myeloma.uams.edu/lambertlab/software.asp, ftp://ftp.mirt.uams.edu/download/data/aCGHよりダウンロードできる。
【実施例6】
【0037】
アレイ内標準化
アレイ内標準化の目的は、2チャンネルマイクロアレイプラットフォームにおける異なる蛍光団と異なる濃度のDNAサンプルの使用に特有の性質により導入される系統的バイアスを除去することである。Loessアルゴリズムは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションの生データを標準化するために用いられ(1)、Cy5チャンネルのCy3チャンネルに対する対数比を概算する。対数比は、試験および参照DNA間の異なるDNA濃度の度合いを示す。我々の経験によればLoess標準化法は殆どのケースで強固であるが、Loess標準化後著しい偏向したシグナルは見出されなかった。これは、おそらくミエローマプラズマ細胞にはあまりにも多くのゲノム変化があること、およびその変化が有意に非対称である(DNA喪失よりもずっと多くのDNA獲得)という事実によるのかもしれない。そこで、Lowess標準化シグナルを得た後、発見的プロセスがこの問題を処理するために導入された。
【0038】
次に、各染色体は2つの特性、シグナルの中央値および中央値絶対偏差(MAD)によって特徴付けられた。中央値および中央値絶対偏差は、ロバストネスの向上のために平均値および分散に代えて用いられた。中央値絶対偏差は、MAD(s) = 中央値(|si - 中央値|)(si はプローブiのシグナルを現す)と定義される。
【0039】
第2に、典型的に全染色体獲得を示す第3、5、7、9、11染色体および2つの性染色体は除かれた。それから、その他全ての染色体を2つの特性を用いて4つのサブグループに分類するためにK-平均値クラスタリングが応用された:獲得、喪失、正常、異常。K-平均値に対するほとんどの染色体は獲得または喪失を示さないはずであるから、最大サイズのグループは正常染色体とみなされる。
【0040】
第3に、正常染色体の全てのシグナルの中央値および中央値絶対偏差が計算された。アレイ上の全てのシグナルから中央値を減じた後、アレイ内標準化シグナルが得られた。
【実施例7】
【0041】
アレイ間標準化
マイクロアレイ間で著しいスケール差が頻繁に見られた。その差は、スキャナーの光増倍管のセッティング変化、または他の未確定の理由によって起こり得る(1)。これに留意し、アレイ間のシグナルを標準化する必要がある。従って、データは全てのアレイが同一スケールであることを保証するよう変換された。使用した計算は、
【0042】
【化1】
であり、siはプローブiのアレイ内標準化シグナルを現す(median:中央値、MAD:中央値絶対偏差)。
【実施例8】
【0043】
セグメント化
セグメント化は2つの目的がある;ブレイクポイントを特定すること、および定常領域のシグナルを平均化することによってシグナルから雑音除去することである。OlshenとVenkatraman(2、41)によって開発されたサーキュラー・バイナリ・セグメンテーション(CBS)アルゴリズムが、単一セグメント内のすべてのDNAが同じ含量となるように全長染色体を連続するセグメントに断片化するために応用された。簡単に述べると、アルゴリズムは、あるDNA断片(1段階目は全長染色体)を2または3のサブセグメントに切断し(アルゴリズムが自動的に2か3かを決断する)、2つの両側セグメントとことなる平均値をもつ中間セグメントが存在するか否かをチェックする。もしあると、差を最大化する切断ポイントを決定し、この手順が全てのブレイクポイントを特定するよう再帰的に適用される。
【実施例9】
【0044】
原子領域
「原子領域(AR)」は、全てのミエローマ症例由来のプラズマ細胞のゲノムブレイクポイントによって挟まれるDNA連続スチレッチである。ARsの定義に使用された手順は以下の通りである:あるプローブとその隣接プローブのピアソン分布係数(cc)を計算し、各染色体の第1ポイントの相関係数を0とする。(上位および下位1%は、ロバストネスのために、cc計算から除外した)特定の閾値より小さい相関係数をもつポイントを「0ポイント」とし、閾値より大きい場合は「1ポイント」とする。全ての「0ポイント」とそれにギャップなく続く「1ポイント」を併せて、1原子領域とする。
【0045】
原子領域のコンセプトは技術的および生物学的利点を持つ。技術的利点は、次元を244Kプローブから約40Kまたはそれ以下の原子領域に減じ、分析を加速することである。原子領域と最小共通領域とは、最小共通領域が個人レベルで定義されるのに対し、原子領域が集団レベルで定義される点で異なる。その様なものであるから、例えば、サンプル内のある領域のコピー数変化の分布やその他の領域との相関等、集団内の特性の研究における使用がより適切である。原子領域は、反復性ブレイクポイントをより精密に定義することも助ける。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションデータにおいては2つの異なるプローブ由来のシグナルが重複することは一般的である。このノイズによって、ブレイクポイントは精密に定義することがしばしば困難である。現方法は、全集団内の隣接するプローブのシグナルを同時に考慮することによってプローブが属する原子領域を決定し、従ってジョイントプローブを高い信頼度で精密に特定する能力を劇的に向上させる。生物学的観点からは、原子領域は染色体の天然構造単位であるかもしれない。多発性骨髄腫および他のガンにおける原子領域の役割の理解は、なぜがん細胞の多くのブレイクポイントがそれほど一定であるのか、ガンの原子領域は生殖細胞のハロタイプブロックと同様であるのか、虚弱部位のコンセプト、ゲノム不安定性のメカニズム、およびゲノム不安定性の進化の理解を助けるかもしれない。
【実施例10】
【0046】
多変数生存分析
Cox比例危険度回帰モデルは、モデルをデータにフィットするのに用いられた。手順は以下の通りである:ステップ1.全ての一変数モデルをフィットする。その係数のP値が<0.25なら、最も高い有意性(最小P値)を持つ一変数を選択した。ステップ2.最適N変数モデルのための残りの独立変数の段階的プログラム検索は、前段階の(N−1)変数モデルに各変数を一つずつ加えることによって達成した。その係数の補正P値が<0.25なら、最大の補正有意性を持つ変数を選択した。ステップ3.それから、モデル中の全ての変数をサイドチェックした。補正P値>0.1の変数があれば、その変数は除去した。ステップ4.ステップ2および3を変数を加えられなくなるまで繰り返した。
【実施例11】
【0047】
遺伝子発現レベルとDNAコピー数との相関分析
各々の遺伝子に対し、その発現レベルと対応するゲノム座のDNAコピー数との間のピアソン相関係数を計算した。
【0048】
相関の有意度を決定するため、92患者のサンプルラベルを無作為に入れ替えてから、各遺伝子に対して新しい相関係数を計算した。入れ替えを1000回繰り返し、各遺伝子につき1000の異なる相関係数を得、1000のランダム相関係数の95パーセンタイルにて有意度を決定した。
【実施例12】
【0049】
配列分析
全ての分析は、ヒトゲノム配列国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)ビルド35(hg17)に依拠した。ヒトマイクロRNAの位置は、miRBase(microrna.sanger.ac.uk/sequences/)より得た。脆弱部位の位置は、NCBI遺伝子データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)から得た。セグメント重複、セントロメアおよびテロメアの位置はカリフォルニア大学サンタ・クルズ校(UCSC)ゲノムブラウザから得た。例えばhg18からhg17のような別のアセンブリからゲノム座標への変換には、LiftOverなるウェブツール(genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgLiftOver)を使用した。
【実施例13】
【0050】
遺伝子オントロジー(GO)分析
遺伝子オントロジーは、遺伝子を、機能、関与する手順、細胞内局在などの属性に従って異なるカテゴリーに分類する。カテゴリーは管理された語彙によって記述される。ヒト遺伝子用遺伝子オントロジーの注釈はNCBI遺伝子データベースからダウンロードした(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/gene/DATA)。遺伝子対と遺伝子オントロジー用語の関連度は、フィッシャーの直接確率検定によって計算した。
【実施例14】
【0051】
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)データの前処理および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)バリデーション
オリゴヌクレオチドに基づくアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションは高解像度を与えるが、しばしば高ノイズの影響を受ける(43)。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション生データのノイズ補正の不適切な方法は、しばしば不正確な結果を生む。シグナル−ノイズ比を向上させるため、管理標準化および自動セグメンテーションアルゴリズムを含む前処理手法が応用された。Lowess標準化法(40)は、最初2色強度の標準化および各アレイ内の多発性骨髄腫細胞DNAシグナルと正常参照DNAシグナルの対数比シグナルの計算のために用いられた。非常に多くの多発性骨髄腫サンプル中非常に多くのDNA領域が増幅されることから、Lowess法はしばしば総シグナルを過小評価する。従って、管理標準化の第2段階がこの問題の克服のために導入された。このステップにおいては、殆ど変化のない正常染色体領域を特定するためにK-平均クラスタリングが応用された。これらの「正常」領域のシグナルは0平均および1変数の分布にスケールされた(詳細は実施例6参照)。標準化後次に進む前に、以後の全ての分析と推論の基盤となる、前処理付きアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションのシグナルを確認するため、蛍光in situハイブリダイゼーション実験を実施した。50例を選んで、多発性骨髄腫において高頻度でコピー数変化を受ける1q21, 11q13および13q14なる3染色体領域を調査した。前処理アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションシグナルを蛍光in situハイブリダイゼーションの結果と比較することにより、 アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションシグナルは蛍光in situハイブリダイゼーションの結果と相関係数0.76 ± 0.08で一致することが確認された。最後に、単一セグメント中のすべてのDNAプローブが同一シグナルををもつように、全長染色体を連続セグメントにセグメント化するため、サーキュラーバイナリセグメンテーション(CBS)アルゴリズム(41)が応用された。
【実施例15】
【0052】
原子領域の定義
前処理したシグナルは余分なシグナルを含み、2セグメント内のシグナル分布の頻繁な重複のために、2つの連続したセグメント間の正確なブレイクポイントは正確に定義することが困難である。これに留意し、染色体内「原子領域(AR)」のコンセプトが導入された。原子領域は腫瘍サンプル中で常にともに喪失または獲得される連続したDNAの領域である。原子領域の定義には、簡単なピアソン相関に基づく方法が応用された(実施例9参照)。簡単に述べると、いかなる2つの連続したアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションプローブに対しても、サンプル中のそれらの前処理後シグナルの相関係数が特定の閾値よりも大きいなら(厳密な閾値0.99が使用された)、その2者は1原子領域にともにグループ化される。この方法は、多発性骨髄腫の完全長ゲノム内に18506個の原子領域を定義した。特筆すべきことに、ここで定義された原子領域は統計分析にのみ依拠していた。これらの多くは、生物学的な意味での真のブレイクポイントではなくノイズに起因するかもしれない。そうであっても、それらは最も完全な情報を含み、より低厳密性の閾値が必要なときにはフレキシブルであることから、以後の分析はこれらの原子領域に依拠するほうが望ましかった。
【実施例16】
【0053】
多発性骨髄腫におけるゲノム不安定性の概観
第一に、総体的なコピー数異常は92人の患者由来の多発性骨髄腫細胞で評価した(図1)。その結果は、1q染色体の獲得の存在、第3、5、7、9、11、15、17、19および21染色体の全獲得、1p染色体の欠損、第13染色体の全喪失など(44−45)、多発性骨髄腫のコピー数異常に関する現時点での知識と大部分において一致していた。1pにおける異常は遠位領域の獲得・増幅および近位領域の喪失・欠損として存在することが見出された。その発見は、1p染色体は主として欠損により影響されているという現在の認識に対する重要な修正であり、高リスク疾患の70遺伝子モデルにおける近位領域での遺伝子発現の喪失と1pテロメア領域における遺伝子発現上昇を示す、我々の最近の遺伝子発現プロファイリング−リスクモデルによって支持される。6pの獲得や6qの喪失、および第8および14染色体の喪失の様な比較的よく認知されていない事象が、多数の症例において認められた。これらは、常法によってはほとんど報告されていないが、以前の我々のアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション研究において特定された(35)。X染色体の有意なDNA獲得および喪失が観測され、多発性骨髄腫120症例における最近の核型に関する知見と一致していた(44)。その様な性染色体の獲得と喪失は、今では患者の転帰とも関連付けられた(下を参照)。2−3の患者サンプルは第2、4、8、12、16、18および20染色体における有意な異常を示した。
【0054】
全遺伝子発現プロファイリングを用いて、多発性骨髄腫は7種の異なった分子疾患型に分類できることが以前示された(14、46)。4つのクラスは、既知の反復性のIGHを介する転位と関連している。各々FGFR3およびMMSET/WHSC1を活性化するt(11;14)およびt(6;14)は、CD-1サブタイプまたはCD20をともに発現しているときCD-2サブタイプを形成する。それぞれMAFまたはMAFBを活性化するt(14;16)およびt(14;20)は、MFサブタイプを形成する。第3、5、7、9、11、15および19染色体にマップされる遺伝子の発現上昇と関連し、転位スパイクを欠くグループは、超二倍体(HY)サブタイプを形成する。認知可能なゲノム特性が無く特徴的な遺伝子発現署名をもつ低骨疾患を伴う新規疾患クラスは、低骨疾患(LB)サブタイプを形成する。他の各サブタイプからの症例より成る増殖遺伝子上昇も特定され、PRサブタイプと呼ばれた(14、46)。7種の確認された分子クラスに亘るコピー数異常の上昇は、予測通りおよび予測しなかった知見を明らかにした(図1参照)。予測したとおり、超二倍体(HY)タイプミエローマは、第3、5、7、9、11、15、17、19および21染色体の獲得を伴っていた。興味深いことに、ここでの予測しなかった新しい発見は、典型的には非超二倍体性と考えられていた(47)、IGH転位関連グループ(MS、MFおよびCD-1)を含むほとんど全ての他の疾患サブタイプの一部が超二倍体性を有していたことである。CD-2疾患サブタイプは倍数性変化を欠き、この疾患サブタイプと典型的に結びついた良好な転帰を説明するかもしれない。
【実施例17】
【0055】
コピー数異常(CNAs)と臨床転帰との相関
疾患に関連したコピー数異常、または所謂ドライバーコピー数異常を特定するため、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションのデータと臨床情報とを統合し、核原子領域に対して生存分析を適用した。転帰とP<0.01で有意に相関した、全部で〜416Mb(メガ塩基)のDNA配列を含む2929原子領域があった(図2A)。臨床的意義のあるコピー数異常は全ての染色体に存在するが、それらの染色体分布は一様ではなかった。転帰と最も強い相関は第1染色体上のコピー数異常に認められ、自由統計学的有意度P<0.01(図2B)またはより保守的なボンフェローニ補正統計学的有意度P < 5.4 x 10-7(図2C)を示した。1q上のコピー数異常は、1p上のコピー数異常よりもより有意に多発性骨髄腫の転帰と相関し、さらに、1qの増幅は、転帰との相関において1qコピー数異常中最も強かった。他の染色体よりも多くはないが、第8染色体上のコピー数異常は、転帰と2番目に有意に相関していた(図1および図6参照)。
【0056】
臨床上無関係なコピー数異常領域は、多発性骨髄腫における一般的なゲノム不安定性を反映する、またはヒト集団中の良性コピー数変化(CNVs)に相当するパッセンジャー変異とみなす事ができる(48)。ここで「コピー数変化」なる語は、一般的なヒト集団内で定義されるコピー数変化を、多発性骨髄腫患者において検出されたコピー数異常から区別するために使用された。理想的には、各腫瘍サンプルに対応する胚性ゲノムDNAが参照DNAとして使用されるであろう。それに代えて、多発性骨髄腫によって定義された原子領域は、正常人集団における既知のコピー数変化と比較された(48)。結果は、7443の多発性骨髄腫原子領域は対応する正常集団コピー数変化をもつことを明らかにした。それから、正常コピー数変化と重複する多発性骨髄腫原子領域(CNV-ARs)は、転帰と相関する可能性のより高い重複しない領域と比較された(p=0.012、片側コルモゴルフ・スミルノフ検定)(図3)。
【0057】
獲得および喪失を起こすコピー数異常のサイズは予後と相関するかどうか、が検討された。劣悪な転帰と関連したクラス指定(クラス1、コピー数上昇;クラス2、コピー数喪失)に従うと、0.01、0.001、および5.4E-07の異なる有意度レベルを適用した時のクラス1およびクラス2コピー数異常のDNA長比は、各々206Mb:171Mb、101Mb:31Mbおよび5Mb:0Mbであった。これらの結果はクラス1コピー数異常はクラス2コピー数異常よりも大きいことを示し、一般的にコピー数の増加はDNAの喪失よりも劣悪な予後と見かけ上より強く関係していることを示唆する。
【実施例18】
【0058】
コピー数異常と遺伝子発現由来増殖インデックスおよび高リスクインデックスとの相関
臨床転帰は、遺伝子発現プロファイリング由来増殖インデックスおよびリスクインデックス値に基づいて区別できる。コピー数異常について試験するとき、1pの喪失および1qの獲得が、高増殖インデックスと高リスクインデックスの両方ともっとも有意に相関した。従って、増殖インデックスと正および負に相関した上位100コピー数異常は1p上に位置していた(図4B)。面白いことに、8q24の獲得は、増殖インデックスとは強く関連しないが、リスクインデックスには強く関連していた。あわせると、これらのデータは1qの獲得と1pゲノムDNAの喪失は、多発性骨髄腫における進行性臨床経過と相関する、またはまさにその原因となることを強く示唆している。従って、これらのデータは、1qおよび8qにマップされる遺伝子の発現上昇および1pにマップされる遺伝子の発現低下を特徴とする最近の高リスク疾患遺伝子発現発現モデルが、これらの遺伝子座におけるコピー数異常と強く関係していることを証明しているように見える。興味深いことに、8q24の獲得は、高リスクと強力にリンクしているが、多発性骨髄腫細胞の増殖とは無関係であることが証明されており、このことは、8q24の獲得は高リスク疾患固有の特徴であることを示唆している。これは、遺伝子発現に基づく高リスク署名と増殖インデックスは相関したが、高リスクかつ低増殖の症例は高リスクかつ高増殖の症例と同程度に乏しい相関であり、また重要なことに、低リスクかつ高増殖の症例は高リスクかつ高増殖の症例と同程度によい相関であったことが以前に示されているので重要である。従って、この分析によって定義された高リスクは高増殖性とは異なり、従って、高リスクは細胞増殖とは無関係な固有の生物学的事象に起因しなければならない。これらのデータは、8q24におけるコピー数異常が決定的な差別因子であるかもしれず、疾患進行における8q24獲得の役割に向けたより総合的な研究が望まれることを意味している。
【実施例19】
【0059】
CNAブレイクポイントと染色体構造特性の相関関係
次に、コピー数異常ブレイクポイントの位置と、セグメント重複、セントロメアおよびテロメアのような既知の染色体構造特性との相関関係が評価された。その結果は、コピー数異常ブレイクポイントはセグメント重複およびセントロメアともっとも有意に関連することを明らかにした(表1)。「弱いブレイクポイント」と異なり、高率の症例および症例内の高率の腫瘍細胞にみられるもの(「強いブレイクポイント」)は、テロメア領域には見出されなかった。これは、テロメア近傍のブレイクポイントは選択的増殖優位性を与えない傾向があることを示唆している。既知の不安定部位、染色体不安定性との別の潜在的リンク、およびコピー数異常ブレイクポイントの相関が調査された。コルモゴルフ・スミルノフ検定適用の結果は、多発性骨髄腫の不安定部位とコピー数異常ブレイクポイントは相関しないことを示唆した(表1)。
【0060】
【表1】
【実施例20】
【0061】
遺伝子中の反復コピー数異常ブレイクポイントの定義
コピー数異常ブレイクポイントの大部分は遺伝子間領域に見出されたが(表1)、遺伝子内の強いブレイクポイント(有意な症例数および一症例中有意な細胞数において見出されるもの)が特定され、重要な疾患関連遺伝子を指しているかもしれない。強いブレイクポイントが見出された反復ブレイクポイントおよび対応する遺伝子のリストを供する(表2)。プラズマ細胞は重鎖および軽鎖イムノグロブリン遺伝子の両方において染色体再編を受けた後期B細胞であるから、この遺伝子中心ブレイクポイント特定法は、IGH、IGKおよびIGL座における対象物を明らかにしたことは強調に値する(表2)。イムノグロブリン遺伝子座中の期待ブレイクポイントを特定する能力は、イムノグロブンリン座外の遺伝子中の反復ブレイクポイントが重要な候補疾患遺伝子を指す強力な証拠を与える。それらの意義を実際に決定するには更なる研究を要するであろう。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
有意度>0.4(相関係数<0.6)のブレイクポイントにつきその遺伝子中の位置を調べた。太字のブレイクポイントと遺伝子は第2、14、および22染色体上のイムノグロブリン遺伝子を示す。
【0069】
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション法の限られた解像度によりブレイクポイントの厳密な位置は決定できないので、ブレイクポイントが位置する2つの隣接するプローブ間のギャップをブレイクポイントの指標として使用した。関係の定義は以下の通りである: "belongs_ to"はブレイクポイント領域が遺伝子内にあることを意味する; "contain"はブレイクポイント領域が遺伝子全部を含むことを意味する; "5'_overlaps with_3'"はブレイクポイント領域の5'末端が遺伝子の3'末端と重複することを意味する; "3'_overlaps with_5'"はブレイクポイント領域の3'末端が遺伝子の5'末端と重複することを意味する。
【実施例21】
【0070】
マイクロRNAs(miRNA)に影響するCNAs
マイクロRNA(miRNA)は、mRNA翻訳の抑制またはmRNA分解の促進を介して遺伝子発現を制御することによって成長および分化において重要な役割を演ずる新しいクラスの小分子ノンコーディングRNAsである。蓄積しつつある証明は、腫瘍発生においてmiRNAの無秩序な発現が疑われることを示した。重要なことに、本研究の目的のために、最近の研究はmiRNAはコピー数異常によって変調した遺伝子内に存在することを示した(49-50)。
【0071】
miRNAを標的とするコピー数異常を調べるため、ヒトゲノム全長に亘るmiRNAの染色体分布を最初に決定した。より多くのmiRNAが、偶数染色体(N=179)よりも、超二倍体性多発性骨髄腫において典型的にトリソミ-ーを呈す奇数染色体(N=268)に位置することは指摘するに興味深い(表3)。miRNAは多発性骨髄腫においてコピー数異常を呈す領域に偏在するかどうかを調査した(表4)。これらのデータは、miRNAが獲得および喪失を呈するコピー数異常に偏在するが、miRNAは転帰と有意に関連したコピー数異常にも偏在することを明らかにした(表5)。これらのデータは、miRNAが多発性骨髄腫におけるコピー数異常の標的となり得ることを示唆する。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【実施例22】
【0075】
候補疾患遺伝子の特定
コピー数異常、遺伝子発現データ、および生存情報を総合することにより、次に疾患進行関連領域・遺伝子を調査した。段階的多変数生存分析を実施し、587の原子領域から最大対数ランクP値<0.0001の14原子領域を特定した(表6)。各原子領域・遺伝子につき、92症例を2グループに分ける最適閾値を選択し、対数ランク検定を実施し、Cox比例ハザードモデルを用いて2グループの生存期間における差を比較した。最適閾値は、全ての値を検討することにより選択し、対数ランク検定において最小のP値を与える値を特定した。ここで採用した最適化P値は擬陰性を最小にしたが、擬陽性は有意に増加した。しかし、擬陽性はコピー数異常データが遺伝子発現結果と統合される際に除かれるので、この相殺は受け入れ可能とみなされた。可能性のある候補遺伝子は以下の基準によって定義された: 1)遺伝子発現は転帰と相関しなくてはならない(P<0.01); 2)その遺伝子座におけるコピー数異常は転帰と相関しなくてはならない(P<0.01); および3)その遺伝子座における遺伝子発現とコピー数の相関係数は、サンプルラベルの再採取手法によって決定された0.3よりも大きくなくてはならない(実施例5-13を参照)。これらの基準を用いて、210遺伝子のリストが発見された(表7)。遺伝子オントロジー分析によると、これらの遺伝子は、それらのタンパク質産物がrRNAプロセシング、RNAスプライシング、上皮成長因子受容体情報伝達経路、ユビキチン依存プロテオソーム媒介タンパク質異化過程、mRNA輸送、リン脂質生合成、タンパク質ミトコンドリア移送、および細胞サイクルに関与するものに多い(P<0.01)。特筆すべきことに、210遺伝子中122は、1q領域に位置しており、多発性骨髄腫病理における1q21獲得の中心的役割に対する更なる支持を供する。さらに、第13染色体上に位置する21遺伝子および13q14バンドに位置する17遺伝子が見出された。この分析は、候補疾患遺伝子を表す、多発性骨髄腫における生存に関連したコピー数異常およびコピー数異常常在コピー数感受性遺伝子を特定した。
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
【表16】
【0082】
【表17】
【0083】
【表18】
【0084】
【表19】
【0085】
【表20】
【0086】
【表21】
【0087】
【表22】
【0088】
【表23】
【0089】
【表24】
【0090】
【表25】
【実施例23】
【0091】
8q24におけるコピー数異常はEIF2C2/AGO2コピー数および遺伝子発現を増し、生存に影響する
20の候補遺伝子のひとつであるEIF2C2/AGO2は、miRNAに結合し、その結果mRNA翻訳またはmRNA分解またはその両方(51)、および成熟miRNA産物を制御するもう一つの機能から非常に興味深い(52-53)。重要なことに、最近の研究は、EIF2C2/AGO2がB細胞分化において必須の機能を果たすことを明らかにした(52、54)。EIF2C2/AGO2は、全て同一の原子領域に位置するAgilent 244Kアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションの5つのプローブによって示される。EIF2C2/AGO2はAffymetrix U133Plus2.0 GeneChip(登録商標)中の6プローブも持つが、国立バイオテクノロジー情報センター遺伝子データベースによると、唯一のプローブ225827_atがEIF2C2/AGO2のエクソンに正確にマップし、このプローブがEIF2C2/AGO2の発現評価に用いられた。DNAコピー数とEIF2C2/AGO2発現レベルの相関係数は、0.304であった。対数ランク検定の最適化P値は、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションおよび遺伝子発現データにつき、各々0.00035および0.00068であった(図5A-5D)。次に、もう2種の公的遺伝子発現データセットにおけるEIF2C2/AGO2発現と転帰の関係を調査した(図5E-5H)。EIF2C2/AGO2の発現上昇は、これらのデータセットにおいても劣悪な転帰と関連していた。それから、総治療第2(表8)および総治療第3データセット(表9)中のEIF2C2/AGO2およびその他の一般的予後因子につき多変数分析を実施した。これらの結果は、EIF2C2/AGO2が両データセットにおいて独立した予後変数であることを示唆した。MYCオンコジーンは8q24にマップされ、その脱制御は種々のガンにおいて認められることから、次に、これらのデータセットにおけるコピー数および発現と転帰の関係を検討した。その結果は、MYCはコピー数異常について悪転帰と相関していたものの(図7A-7B)、MYC発現はコピー数異常とは有意に相関せず(図8)、MYC発現は92患者群および両確認遺伝子発現データセットにおける転帰と相関しなかった(P>0.01)(図9A-9F)。
【0092】
【表26】
【0093】
【表27】
【0094】
(参照文献)
1. Pinkel D and Albertson DG, Annu Rev Genomics Hum Genet, 2005a, 6:331-354.
2. Pinkel D and Albertson DG, Nat Genet, 2005b, 37 Suppl: S11-17.
3. Feuk et al. Hum Mol Genet, 2006, 15 Spec No 1:R57-66.
4. Sharp et al. Nat Genet 2006, 38:1038-1042.
5. Lupski JR and Stankiewicz P, PLoS Genet, 2005,1:e49.
6. Sebat et al. Science, 2004, 305:525-528.
7. Redon et al. Nature, 2006, 444:444-454.
8. Tuzun et al. Nat Genet 2005, 37:727-732.
9. Iafrate et al. Nat Genet, 2004, 36:949-951.
10. Barlogie et al. Plasma cell myeloma. In: Marshall Al Lichtman EB, Kenneth Kaushansky, Thomas J. Kipps, Uri Seligsohn, Josef Prchal, editor. Williams Hematology, 2005, 7 ed. New York: McGraw-Hill Professional.
11. Kumar S and Anderson KC, Nat Clin Pract Oncol, 2005, 2:262-270.
12. Zhan et al. Blood, 2008, 111:968-969.
13. Kuehl WM and Bergsagel PL, Nat Rev Cancer, 2002, 2:175-187.
14. Zhan et al. Blood, 2006, 108:2020-2028.
15. Fonseca et al. Cancer Res, 2004, 64:1546-1558.
16. Liebisch P and Dohner H, Eur J Cancer, 2006, 42:1520-1529.
17. Avet-Loiseau et al. Genes Chromosomes Cancer, 1997, 19:124-133.
18. Hanamura et al. Blood, 2006 108:1724-1732.
19. Barrett et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2004, 101:17765-17770.
20. Pollack et al. Nat Genet 1999, 23:41-46.
21. Pinkel et al. Nat Genet, 1998, 20:207-211.
22. Lee et al. Nat Genet, 2007, 39:S48-54.
23. Phillips et al. Cancer Res, 2001, 61:8143-8149.
24. Platzer et al. Cancer Res, 2002, 62: 1134-1138.
25. Pollack et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002, 99: 12963-12968.
26. Hyman et al. Cancer Res, 2002, 62: 6240-6245.
27. Orsetti et al. Cancer Res, 2004, 64:6453-6460.
28. Stallings RL, Trends Genet, 2007, 23:278-283.
29. Auer et al. BMC Genomics, 2007, 8:111.
30. Gao et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2007, 104:8995-9000.
31. Cigudosa et al. Blood, 1998, 91 3007-3010.
32. Gutierrez et al. Blood, 2004, 104:2661-2666.
33. Houldsworth J, Chaganti RS, Am J Pathol, 1994, 145:1253-1260.
34. Walker et al. Blood, 2006, 108:1733-1743.
35. Carrasco et al. Cancer Cell, 2006, 9:313-325.
36. Barlogie et al. N Engl J Med, 2006, 354:1021-1030.
37. Zhan et al. Blood, 2002, 99:1745-1757.
38. Shaughnessy et al. Blood, 2000, 96:1505-1511.
39. Zhan et al. Blood, 2007, 109:4995-5001.
40. Yang et al. Nucleic Acids Res 2002, 30:e15.
41. Venkatraman ES, and Olshen AB, Bioinformatics, 2007, 23:657-663.
42. Irizarry et al. Biostatistics 2003, 4:249-264.
43. Ylstra et al. Nucleic Acids Res 2006, 34:445-450.
44. Mohamed et al. Am J Hematol, 2007, 82:1080-1087.
45. Chen et al. Exp Oncol 2007, 29:116-120.
46. Bergsagel Kuehl WM, Oncogene, 2001, 20:5611-5622.
47. Fonseca et al. Blood, 2003, 102:2562-2567.
48. Zhang et al. Cytogenet Genome Res 2006, 115:205-214.
49. Calin GA and Croce CM, Oncogene, 2006, 25:6202-6210.
50. Calin GA and Croce CM, J Clin Invest, 2007, 117:2059-2066.
51. Liu et al. Science 2004, 305:1437-1441.
52. O'Carroll et al. Genes Dev, 2007, 21: 1999-2004.
53. Diederichs S and Haber DA, Cell, 2007, 131:1097-1108.
54. Martinez J and Busslinger M, Genes Dev, 2007, 21:1983-1988.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患に特異的な生存と関連したゲノム署名を特定する方法であって、
集団内のその疾患に罹患した個人及び集団内の同疾患に罹患していない個人からプラズマ細胞を分離する工程と、
前記プラズマ細胞から核酸を分離する工程と、
プラズマ細胞のコピー数異常及び遺伝子発現レベルを決定するために、比較ゲノムDNAアレイ及び遺伝子発現DNAマイクロアレイに前記核酸をハイブリダイズする工程と、及び
コピー数異常及び疾患候補遺伝子の変化した発現を特定するために、バイオインフォマティクス及びコンピュータ方法論を含むデータ分析を実行する工程とを備え、前記変化した発現が、前記疾患における生存と関連した特異的なゲノム署名を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記候補遺伝子が位置する染色体領域を特定するために、バイオインフォマティクス及びコンピュータ方法論を含むデータ分析を実行する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記染色体領域が染色体1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記個人の前記疾患を処置するための治療標的として、前記ゲノム署名中に変化した発現を有する前記候補遺伝子を特定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
個人の1以上の前記疾患の診断、予測、または治療マーカーとして、1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、1pタンパク質発現の喪失、1q染色体DNAのゲイン、1q遺伝子発現のゲイン、1qタンパク質発現のゲイン、8q染色体DNAのゲイン、8q染色体遺伝子発現のゲイン、または8q染色体タンパク質発現のゲインの1以上を含むゲノム署名を特定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が多発性骨髄腫またはその類型を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
多発性骨髄腫の前記類型が、意義未確定の単クローン性ガンマグロブリン血症、無症候性多発性骨髄腫、症候性多発性骨髄腫、または再発性多発性骨髄腫を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記候補遺伝子であるARGONAUTE 2 (EIF2C2/AGO2)の発現上昇及び8q24染色体でのゲインに関与するコピー数異常を含むゲノム署名の検出が、前記個人の低生存率の可能性を示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、1pタンパク質発現の喪失の1以上を含むゲノム署名の特定が、多発性骨髄腫の疾病進行の高リスクを示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項10】
1q染色体DNAのゲイン、1q遺伝子発現のゲイン、または1qタンパク質発現のゲインの中の1以上を含むゲノム署名の特定が、多発性骨髄腫の疾病進行の高リスクを示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記疾患候補遺伝子の前記変化した発現が、発現ゲイン、発現低下、またはその両方を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記コピー数異常及び変化した遺伝子発現が、分裂中間期蛍光in situハイブリダイゼーション、分裂中期蛍光in situハイブリダイゼーション、PCRに依拠したアッセイ、タンパク質に依拠したアッセイ、またはそれらの組み合わせを含む方法によって検出されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記疾患候補遺伝子が、ADAM5P、AGL、AHCTF1、AKR1C4、ALG14、ALPP、ANK2、ANKRD12、ANKRD15、ANKRD30A、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARHGEF5、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8A1、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BMS1P5、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C6orf118、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAMTA1、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CFH、CHD1L、CHRNB4、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNNM1、CNOT7、COG3、COG6、COL7A1、CREB3L4、CSPP1、CTAGE4、CTGLF1、CTNNA3、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DEFB4、DENND2D、DHRS12、DHX32、DIS3、DNAJC15、DUB4、ECEL1P2、EDEM3、EIF2C2/AGO2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FANK1、FBXL6、FDPS、FFAR3、FLAD1. FLJ10769、FLJ12716、FLJ43276、FLJ45832、FNDC3A、FOXO1、FRMPD2L1、FRMPD2L2、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、GSTM1、GSTM5、HBXIP、HHATL、HLA-DQB1、HLA-DRA、HYDIN、IARS2、ID3、IGH@、IGHA1、IGHG1、IGK@、IGKC、IGKV1-5、IGKV2-24、IGL@、IGLJ3、IGLV3-25、IGLV4-3、IGSF3、IGSF3、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD5、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1211、KIAA1219、KIAA1833、KIAA1920、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LCE1D、LCE1E、LCE3B、LCE3D、LOC200810、LOC441268、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAP1LC3A、MAPBPIP、MEIS2、MET、MLL3、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEBL、NEK2、NET1、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、OR2A1、OR2A20P、OR2A7、OR2A9P、OR4K15、OR52N1、PBX1、PCDHA1、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PIGU、PLEC1、PLEKHA1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRB1、PRCC、PRKG1、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PTPN20A、PTPN20B、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RHCE、RHD、RIPK5、RNPEP、RPAP3、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SIGLEC5、SIRPB1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM11、TMEM183A、TMEM50A、TMPRSS11E、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRBV5-4、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UGT2B15、UPF1、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF267、ZNF364、ZNF488、またはZNF687を含む遺伝子の群からの1以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
疾患に特異的な生存関連ゲノム署名の特定のためのキットであって、該キットは、
染色体1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22の1以上に位置する候補遺伝子のmRNAに相補的な核酸プローブを含む、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション用DNAマイクロアレイ及び遺伝子発現用DNAマイクロアレイ、並びに
個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し、その核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズするための説明書、
を含むことを特徴とするキット。
【請求項15】
前記候補遺伝子が、ADAM5P、AGL、AHCTF1、AKR1C4、ALG14、ALPP、ANK2、ANKRD12、ANKRD15、ANKRD30A、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARHGEF5、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8A1、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BMS1P5、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C6orf118、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAMTA1、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CFH、CHD1L、CHRNB4、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNNM1、CNOT7、COG3、COG6、COL7A1、CREB3L4、CSPP1、CTAGE4、CTGLF1、CTNNA3、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DEFB4、DENND2D、DHRS12、DHX32、DIS3、DNAJC15、DUB4、ECEL1P2、EDEM3、EIF2C2/AGO2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FANK1、FBXL6、FDPS、FFAR3、FLAD1. FLJ10769、FLJ12716、FLJ43276、FLJ45832、FNDC3A、FOXO1、FRMPD2L1、FRMPD2L2、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、GSTM1、GSTM5、HBXIP、HHATL、HLA-DQB1、HLA-DRA、HYDIN、IARS2、ID3、IGH@、IGHA1、IGHG1、IGK@、IGKC、IGKV1-5、IGKV2-24、IGL@、IGLJ3、IGLV3-25、IGLV4-3、IGSF3、IGSF3、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD5、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1211、KIAA1219、KIAA1833、KIAA1920、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LCE1D、LCE1E、LCE3B、LCE3D、LOC200810、LOC441268、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAP1LC3A、MAPBPIP、MEIS2、MET、MLL3、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEBL、NEK2、NET1、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、OR2A1、OR2A20P、OR2A7、OR2A9P、OR4K15、OR52N1、PBX1、PCDHA1、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PIGU、PLEC1、PLEKHA1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRB1、PRCC、PRKG1、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PTPN20A、PTPN20B、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RHCE、RHD、RIPK5、RNPEP、RPAP3、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SIGLEC5、SIRPB1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM11、TMEM183A、TMEM50A、TMPRSS11E、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRBV5-4、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UGT2B15、UPF1、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF267、ZNF364、ZNF488、またはZNF687を含む遺伝子の群からの1以上であることを特徴とする請求項14記載のキット。
【請求項1】
疾患に特異的な生存と関連したゲノム署名を特定する方法であって、
集団内のその疾患に罹患した個人及び集団内の同疾患に罹患していない個人からプラズマ細胞を分離する工程と、
前記プラズマ細胞から核酸を分離する工程と、
プラズマ細胞のコピー数異常及び遺伝子発現レベルを決定するために、比較ゲノムDNAアレイ及び遺伝子発現DNAマイクロアレイに前記核酸をハイブリダイズする工程と、及び
コピー数異常及び疾患候補遺伝子の変化した発現を特定するために、バイオインフォマティクス及びコンピュータ方法論を含むデータ分析を実行する工程とを備え、前記変化した発現が、前記疾患における生存と関連した特異的なゲノム署名を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記候補遺伝子が位置する染色体領域を特定するために、バイオインフォマティクス及びコンピュータ方法論を含むデータ分析を実行する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記染色体領域が染色体1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記個人の前記疾患を処置するための治療標的として、前記ゲノム署名中に変化した発現を有する前記候補遺伝子を特定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
個人の1以上の前記疾患の診断、予測、または治療マーカーとして、1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、1pタンパク質発現の喪失、1q染色体DNAのゲイン、1q遺伝子発現のゲイン、1qタンパク質発現のゲイン、8q染色体DNAのゲイン、8q染色体遺伝子発現のゲイン、または8q染色体タンパク質発現のゲインの1以上を含むゲノム署名を特定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が多発性骨髄腫またはその類型を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
多発性骨髄腫の前記類型が、意義未確定の単クローン性ガンマグロブリン血症、無症候性多発性骨髄腫、症候性多発性骨髄腫、または再発性多発性骨髄腫を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記候補遺伝子であるARGONAUTE 2 (EIF2C2/AGO2)の発現上昇及び8q24染色体でのゲインに関与するコピー数異常を含むゲノム署名の検出が、前記個人の低生存率の可能性を示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
1p染色体DNAの喪失、1p遺伝子発現の喪失、1pタンパク質発現の喪失の1以上を含むゲノム署名の特定が、多発性骨髄腫の疾病進行の高リスクを示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項10】
1q染色体DNAのゲイン、1q遺伝子発現のゲイン、または1qタンパク質発現のゲインの中の1以上を含むゲノム署名の特定が、多発性骨髄腫の疾病進行の高リスクを示すことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記疾患候補遺伝子の前記変化した発現が、発現ゲイン、発現低下、またはその両方を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記コピー数異常及び変化した遺伝子発現が、分裂中間期蛍光in situハイブリダイゼーション、分裂中期蛍光in situハイブリダイゼーション、PCRに依拠したアッセイ、タンパク質に依拠したアッセイ、またはそれらの組み合わせを含む方法によって検出されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記疾患候補遺伝子が、ADAM5P、AGL、AHCTF1、AKR1C4、ALG14、ALPP、ANK2、ANKRD12、ANKRD15、ANKRD30A、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARHGEF5、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8A1、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BMS1P5、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C6orf118、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAMTA1、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CFH、CHD1L、CHRNB4、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNNM1、CNOT7、COG3、COG6、COL7A1、CREB3L4、CSPP1、CTAGE4、CTGLF1、CTNNA3、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DEFB4、DENND2D、DHRS12、DHX32、DIS3、DNAJC15、DUB4、ECEL1P2、EDEM3、EIF2C2/AGO2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FANK1、FBXL6、FDPS、FFAR3、FLAD1. FLJ10769、FLJ12716、FLJ43276、FLJ45832、FNDC3A、FOXO1、FRMPD2L1、FRMPD2L2、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、GSTM1、GSTM5、HBXIP、HHATL、HLA-DQB1、HLA-DRA、HYDIN、IARS2、ID3、IGH@、IGHA1、IGHG1、IGK@、IGKC、IGKV1-5、IGKV2-24、IGL@、IGLJ3、IGLV3-25、IGLV4-3、IGSF3、IGSF3、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD5、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1211、KIAA1219、KIAA1833、KIAA1920、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LCE1D、LCE1E、LCE3B、LCE3D、LOC200810、LOC441268、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAP1LC3A、MAPBPIP、MEIS2、MET、MLL3、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEBL、NEK2、NET1、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、OR2A1、OR2A20P、OR2A7、OR2A9P、OR4K15、OR52N1、PBX1、PCDHA1、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PIGU、PLEC1、PLEKHA1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRB1、PRCC、PRKG1、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PTPN20A、PTPN20B、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RHCE、RHD、RIPK5、RNPEP、RPAP3、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SIGLEC5、SIRPB1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM11、TMEM183A、TMEM50A、TMPRSS11E、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRBV5-4、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UGT2B15、UPF1、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF267、ZNF364、ZNF488、またはZNF687を含む遺伝子の群からの1以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
疾患に特異的な生存関連ゲノム署名の特定のためのキットであって、該キットは、
染色体1、2、3、5、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22の1以上に位置する候補遺伝子のmRNAに相補的な核酸プローブを含む、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション用DNAマイクロアレイ及び遺伝子発現用DNAマイクロアレイ、並びに
個人のプラズマ細胞から核酸を抽出し、その核酸をDNAマイクロアレイにハイブリダイズするための説明書、
を含むことを特徴とするキット。
【請求項15】
前記候補遺伝子が、ADAM5P、AGL、AHCTF1、AKR1C4、ALG14、ALPP、ANK2、ANKRD12、ANKRD15、ANKRD30A、APH1A、ARHGAP30、ARHGEF2、ARHGEF5、ARNT、ARPC5、ASAH1、ASPM、ATP8A1、ATP8B2、B4GALT3、BCAS2、BLCAP、BMS1P5、BOP1、C13orf1、C1orf107、C1orf112、C1orf19、C1orf2、C1orf21、C1orf56、C20orf43、C20orf67、C6orf118、C8orf30A、C8orf40、CACYBP、CAMTA1、CAPN2、CCT3、CD48、CD55、CDC42BPA、CDC42SE1、CENPF、CENPL、CEP170、CEPT1、CFH、CHD1L、CHRNB4、CKS1B、CLCC1、CLK2、CNNM1、CNOT7、COG3、COG6、COL7A1、CREB3L4、CSPP1、CTAGE4、CTGLF1、CTNNA3、CTSK、CYC1、DAP3、DARS2、DBNDD2、DDR2、DEDD、DEFB4、DENND2D、DHRS12、DHX32、DIS3、DNAJC15、DUB4、ECEL1P2、EDEM3、EIF2C2/AGO2、ELAVL1、ELF1、ELK4、ELL2、ENSA、ENY2、EXOSC4、EYA1、FAF1、FAIM3、FAM20B、FAM49B、FANK1、FBXL6、FDPS、FFAR3、FLAD1. FLJ10769、FLJ12716、FLJ43276、FLJ45832、FNDC3A、FOXO1、FRMPD2L1、FRMPD2L2、GLRX、GNAI3、GON4L、GPATCH4、GPR89B、GSTM1、GSTM5、HBXIP、HHATL、HLA-DQB1、HLA-DRA、HYDIN、IARS2、ID3、IGH@、IGHA1、IGHG1、IGK@、IGKC、IGKV1-5、IGKV2-24、IGL@、IGLJ3、IGLV3-25、IGLV4-3、IGSF3、IGSF3、IL6R、ILF2、ISG20L2、IVNS1ABP、KBTBD5、KBTBD6、KBTBD7、KCTD3、KIAA0133、KIAA0406、KIAA0460、KIAA0859、KIAA1211、KIAA1219、KIAA1833、KIAA1920、KIF14、KIF21B、KIFAP3、KLHDC9、KLHL20、LCE1D、LCE1E、LCE3B、LCE3D、LOC200810、LOC441268、LPGAT1、LRIG2、LY6E、LY9、MANBAL、MAP1LC3A、MAPBPIP、MEIS2、MET、MLL3、MPHOSPH8、MRPL9、MRPS14、MRPS21、MRPS31、MSTO1、MTMR11、MYST3、NDUFS2、NEBL、NEK2、NET1、NIT1、NME7、NOS1AP、NUCKS1、NUF2、NVL、OPN3、OR2A1、OR2A20P、OR2A7、OR2A9P、OR4K15、OR52N1、PBX1、PCDHA1、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCM1、PEX19、PHF20L1、PI4KB、PIGM、PIGU、PLEC1、PLEKHA1、PMVK、POGK、POLR3C、PPM2C、PPOX、PRB1、PRCC、PRKG1、PSMB4、PSMD4、PTDSS1、PTPN20A、PTPN20B、PUF60、PYCR2、RAB3GAP2、RALBP1、RASSF5、RBM8A、RCBTB1、RCOR3、RGS5、RHCE、RHD、RIPK5、RNPEP、RPAP3、RRP15、RTF1、RWDD3、S100A10、SCAMP3、SCNM1、SDCCAG8、SDHC、SETDB1、SETDB2、SF3B4、SHC1、SIGLEC5、SIRPB1、SNRPE、SP1、SPEF2、SPG7、SS18、STX6、SUGT1、TAGLN2、TARBP1、TARS2、TBCE、THEM4、TIMM17A、TIPRL、TMEM11、TMEM183A、TMEM50A、TMPRSS11E、TNKS、TOMM40L、TPM3、TPR、TRAF3IP3、TRBV5-4、TRIM13、TRIM33、TSC22D1、UBAP2L、UBE2T、UCHL5、UCK2、UGT2B15、UPF1、UTP14C、VPS28、VPS36、VPS37A、VPS72、WBP4、WDR47、WDSOF1、YOD1、YWHAB、YWHAZ、ZFP41、ZMYM2、ZNF267、ZNF364、ZNF488、またはZNF687を含む遺伝子の群からの1以上であることを特徴とする請求項14記載のキット。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【公表番号】特表2011−520426(P2011−520426A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506305(P2011−506305)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002552
【国際公開番号】WO2009/131710
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500091885)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アーカンソー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002552
【国際公開番号】WO2009/131710
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500091885)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ アーカンソー (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]