説明

遺伝的に改変された生物を栽培または培養することによるケトカロテノイドの調製方法

本発明は、野生型と比較して改変されたケトラーゼ活性を有する遺伝的に改変された生物を栽培または培養することによりケトカロテノイドを調製する方法、該遺伝的に改変された生物、食物および動物飼料としてのその使用、ならびにケトカロテノイド抽出物を製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生型と比較して改変されたケトラーゼ活性を有する遺伝的に改変された生物を栽培または培養することによりケトカロテノイドを調製する方法、該遺伝的に改変された生物、ヒトおよび動物の食物としてのその使用、ならびにケトカロテノイド抽出物を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケトカロテノイドは主に細菌および少数の真菌中、および二次カロテノイドとして緑色藻中に存在する。β-カロテンの4-モノケト誘導体であるエキネノンに加えて、対応する対称性のジケト化合物であるカンタキサンチンの生成も存在する。さらに、上述の生物群のうち、アスタキサンチン(3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジケト-β-カロテン)が生合成の最終生成物(対応する中間体を少量伴う)として存在しうる少数の生物種が知られている(Goodwin, T.W. (1980) The Biochemistry of the Carotenoids, Vol. 1: Plants, 2nd edn. Chapman & Hall, New York.;Johnson, E.A. & An G.-H. (1991)「微生物源からのアスタキサンチン」(astaxanthin from microbial sources.)Critical Rev. Biotechnol. 11, 297-326.;3. Lorenz, R.T. & Cysewski, G.R. (2000)「微細藻類ヘマトコッカスの天然アスタキサンチン源としての商業上の可能性」(Commercial potential for Haematococcus microalgae as a natural source of astaxanthin.) Trend Biotechn. 18, 160-167)。
【0003】
その着色性のために、ケトカロテノイド、特にアスタキサンチンは家畜の飼料中で、特にマス、サケ、エビの養殖において、着色料として用いられる。
【0004】
アスタキサンチンは現在、大部分が化学合成法により調製されている。例えば天然アスタキサンチンのような天然ケトカロテノイドは、現在、バイオテクノロジーの手法により少量が入手されており、該手法は例えばHaematococcus pluvialisのような藻類の培養によって、または遺伝学的に最適化された微生物の発酵とそれに続く単離によるものである。
【0005】
したがって、天然ケトカロテノイドを調製するための経済的なバイオテクノロジーの手法は、非常に重要である。
【0006】
crtW型の特定のケトラーゼ遺伝子は、以下の生物からクローニングされ、機能的に同定されている:細菌Agrobacterium aurantiacum(EP 735 137、受託番号D58420)、Paracoccus marcusii(受託番号Y15112)、およびcDNAとしてヘマトコッカス属 (Haematococcus pluvialis Flotow em. WilleおよびHaematoccus pluvialis, NIES-144 (EP 725137、WO 98/18910およびLotanら, FEBS Letters 1995, 364, 125-128、受託番号X86782およびD45881))。
【0007】
また、アミノ酸相同性ゆえにケトラーゼ遺伝子と呼ばれている他の生物由来のORFが存在する。例えば以下の生物由来のケトラーゼをコードする核酸である:Alcaligenes sp. PC-1(EP 735137、受託番号D58422)、Synechocystis sp. strain PC6803 (受託番号NP_442491)、Bradyrhizobium sp.( 受託番号AF218415)、Nostoc sp. PCC 7120(Kanekoら, DNA Res. 2001, 8(5), 205-213;受託番号AP003592, BAB74888)およびBrevundimonas aurantiaca (WO 02079395)。
【0008】
A. aurantiacumおよびアルカリゲネス(Alcaligenes spec.)のケトラーゼのみが、生化学的に同定されている(Fraser P.D., Shimada H. & Misawa N.(1998)「アスタキサンチン形成経路に関する反応の酵素的立証:直接的な基質を用いたin vitroアッセイによる解明」(Enzymic confirmation of reactions involved in routes to astaxanthin formation, elucidated using a direct substrate in vitro assay.) Eur. J. Biochem. 252, 229-236.)。さらなるタイプのβ-カロテンケトラーゼ遺伝子がある。それはシアノバクテリアであるシネコシスティス(Synechocystis)のcrtOであり、この遺伝子はcrtWとは類似性がなく、細菌のデサチュラーゼと関係がある(Fernandez-Gonzalez, B., Sandmann, G. & Vioque, A (1997)「非対称的に作用する新しいタイプのβ-カロテンケトラーゼがシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803でのエキネノン合成に必要である」(A new type of asymmetrically acting β-carotene ketolase is required for the synthesis of echinenone in the cyanobacterium Synechocystis sp. PCC 6803.) J. Biol. Chem. 272, 9728-9733.)。
【0009】
全ての公知のケトラーゼは、β-カロテンの4位にケト基を導入することができる。crtO遺伝子は、β-カロテンから、最終生成物としてエキネノンを形成するモノケトラーゼをコードしている。crtW遺伝子ファミリー(ヘマトコッカス由来のbktもこれに属する)はジケトラーゼをコードしており、この酵素はβ-カロテンをカンタキサンチンにまで変換する。この反応は、アスタキサンチンに向けた最初の修飾段階であると思われ、その後に3位の水酸化が続く。その後、同様の連続反応が2番目のイオノン環(9)においても行われる。3-ヒドロキシ-β-カロテン誘導体は、4位ではわずかにしかケト化され得ないという酵素学的証拠もある。同様に、ある種の細菌のヒドロキシラーゼ、例えばErwinia uredovora (Breitenbach, J., Misawa, N., Kajiwara, S. & Sandmann, G. (1996) 「Haematococcus pluvialis 由来のカロテンケトラーゼの大腸菌における発現およびその性質」(Expression in Escherichia coli and properties of the carotene ketolase from Haematococcus pluvialis.)FEMS Microbiol. Lett. 140, 241-246)またはA. aurantiacum由来のヒドロキシラーゼのみが、ケト化された中間体を変換できることが判明している。シアノバクテリアの構造的に異なるヒドロキシラーゼにはこれが可能でない(Albrecht, M., Steiger, S. & Sandmann, G. (2001)「ケトラーゼ遺伝子の発現はシネココッカスにおけるカンタキサンチン合成を仲介し、色素の光分解に対する耐性および光合成のUV-B感受性をもたらす」(Expression of a ketolase gene mediates the synthesis of canthaxanthin in Synechococcus leading to resistance against pigment photodegradation and UV-B sensitivity of photosynthesis.) Photochem. Photobiol. 73, 551-555)。このタイプのヒドロキシラーゼがケトラーゼと連携して働くことはなく、大量のアスタキサンチンが得られることはない。
【0010】
EP 735 137は、Agrobacterium aurantiacumまたはAlcaligenes sp. PC-1由来のケトラーゼ遺伝子(crtW)を微生物に導入することによる、例えば大腸菌のような微生物でのキサントフィルの調製について記載している。
【0011】
EP 725 137、WO 98/18910、Kajiwaraら(Plant Mol. Biol. 1995, 29, 343-352)およびHirschbergら(FEBS Letters 1995, 364, 125-128)は、Haematococcus pluvialis由来のケトラーゼ遺伝子(crtW、crtOまたはbkt)を大腸菌に導入することによるアスタキサンチンの調製について開示している。
【0012】
Hirschbergら(FEBS Letters 1997, 404, 129-134)は、Haematococcus pluvialis由来のケトラーゼ遺伝子(crtO)を導入することによる、シネココッカス(Synechococcus)でのアスタキサンチン調製について記載している。Sandmannら(Photochemistry and Photobiology 2001, 73(5), 551-55)は類似の方法を記載しているが、この方法はカンタキサンチンの調製に至るものの、痕跡量のアスタキサンチンしか得られない。
【0013】
WO 98/18910およびHirschbergら(Nature Biotechnology 2000, 18(8), 888-892)は、Haematococcus pluvialis由来のケトラーゼ遺伝子(crtO)をタバコに導入することによる、タバコ花の蜜腺でのケトカロテノイド合成について記載している。
【0014】
WO 01/20011は、種子特異的プロモーターおよびHaematococcus pluvialis由来のケトラーゼを用いて、ケトカロテノイド(特にアスタキサンチン)をアブラナ、ヒマワリ、大豆、カラシナのような脂肪種子作物の種子において産生させるためのDNA構築物について記載している。
【0015】
ケトカロテノイドを調製するための先行技術に記載された全ての方法、特にアスタキサンチンを調製するための記載された方法には、トランスジェニック生物が、少量のアスタキサンチンのみしか提供しないという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、上述した先行技術の欠点がわずかであるかまたは皆無である、遺伝的に改変された生物を培養することによるケトカロテノイドの調製方法を提供すること、ならびに、ケトカロテノイドを産生する遺伝的に改変された生物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記の課題が、野生型と比較して改変されたケトラーゼ活性を有する、遺伝的に改変された生物を培養することによりケトカロテノイドを調製する方法によって達成されることを見出した。該改変されたケトラーゼ活性は、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼによって生じるものである。
【0018】
本発明の生物は、例えば微生物や植物のようなものであり、好ましくは出発生物として、生来的に、例えばβ-カロテンやゼアキサンチンのようなカロテノイドを産生する能力があるものであり、または遺伝的改変(例えば代謝経路の再調節または補完)により、例えばβ-カロテンやゼアキサンチンのようなカロテノイドを産生することが可能になるものでありうる。
【0019】
いくつかの生物は既に、出発または野生型生物として、例えばアスタキサンチンやカンタキサンチンのようなケトカロテノイドを産生することができる。それらの生物、例えばHaematococcus pluvialis、Paracoccus marcusii、Xanthophyllomyces dendrorhous、Bacillus circulans、Chlorococcum、Phaffia rhodozyma、Adonis sp.、Neochloris wimmeri、Protosiphon botryoides、Scotiellopsis oocystiformis、Scenedesmus vacuolatus、Chlorela zofingiensis、Ankistrodesmus braunii、Euglena sanguinea、Bacillus atrophaeus、Blakesleaは、出発または野生型生物として、既にケトラーゼ活性を有している。
【0020】
したがって、本発明の方法の1つの実施形態においては、使用される出発生物は、野生型または出発生物としてケトラーゼ活性を既に有するものである。この実施形態においては、遺伝的改変が、野生型または出発生物と比較してケトラーゼ活性の増大をもたらすものである。
【0021】
ケトラーゼ活性とは、ケトラーゼの酵素活性を意味する。
【0022】
ケトラーゼとは、カロテノイドのβ-イオノン環(場合により置換されていてもよい)にケト基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0023】
ケトラーゼとは、特にβ-カロテンをカンタキサンチンに変換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0024】
したがって、ケトラーゼ活性とは、ケトラーゼタンパク質によって一定期間内に変換されたβ-カロテンの量、またはケトラーゼタンパク質によって一定期間内に生成されたカンタキサンチンの量を意味する。
【0025】
よって、ケトラーゼ活性が野生型と比較して増大しているときには、一定期間で変換されたβ-カロテンの量または生成されたカンタキサンチンの量が、野生型と比較してケトラーゼタンパク質によって増加している。
【0026】
このケトラーゼ活性の増大は、好ましくは野生型のケトラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも300%、さらに好ましくは少なくとも500%、特に好ましくは少なくとも600%である。
【0027】
「野生型」という用語は、本発明にしたがえば、対応する出発生物を意味する。
【0028】
「生物」という用語は、状況によっては、本発明における出発生物(野生型)もしくは遺伝的に改変された生物、またはその両者を意味しうる。
【0029】
「野生型」は、好ましくは、特に生物または野生型を明確に規定することができないときには、それぞれの場合にケトラーゼ活性を増大または発生させる、後述するようなヒドロキシラーゼ活性を増大させる、後述するようなβ-サイクラーゼ活性を増大させる、およびケトカロテノイド含有量を増大させるための基準生物を意味する。
【0030】
野生型として既にケトラーゼ活性を有する微生物の基準生物は、好ましくは緑藻Haematococcus pluvialisである。
【0031】
野生型としてケトラーゼ活性を持たない微生物の基準生物は、好ましくは真菌Blakesleaである。
【0032】
野生型として既にケトラーゼ活性を有する植物の基準生物は、好ましくはAdonis aestivalis(ナツザキフクジュソウ)、Adonis flammeusまたはAdonis annuus、特に好ましくはAdonis aestivalis(ナツザキフクジュソウ)である。
【0033】
野生型としてケトラーゼ活性を持たない植物の生物は、好ましくはTagetes erecta(マリーゴールド)、Tagetes patula、Tagetes lucida、Tagetes pringlei、Tagetes palmeri、Tagetes minutaまたはTagetes campanulata、特に好ましくはTagetes erecta(マリーゴールド)である。
【0034】
本発明の遺伝的に改変された生物、ならびに野生型および基準生物におけるケトラーゼ活性の測定は、好ましくは以下の条件において行われる:
植物または微生物材料のケトラーゼ活性の測定は、Frazerらの方法 (J. Biol. Chem. 272(10): 6128-6135, 1997) に基づく。植物または微生物抽出物におけるケトラーゼ活性は、基質β-カロテンおよびカンタキサンチンを用いて、脂質(大豆レシチン)および界面活性剤(コール酸ナトリウム)の存在下で測定される。ケトラーゼアッセイからの基質/生成物比は、HPLCを用いて測定する。
【0035】
ケトラーゼ活性を増大させるのに、種々の方法を用いることができる。例えば、翻訳もしくはタンパク質レベルで抑制的調節機構をスイッチオフすることによる方法、または例えば活性化因子によってケトラーゼ遺伝子を誘導するか、もしくはケトラーゼをコードする核酸を生物に導入することにより、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を野生型と比較して増加させることによる方法を用いることができる。
【0036】
ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることはまた、この実施形態において、本発明にしたがえば、生物自身の内在性ケトラーゼの発現を操作することを意味する。これは例えばケトラーゼをコードする遺伝子のプロモーターDNA配列を改変することにより実現可能である。そのような改変は、少なくとも1つの内在性ケトラーゼ遺伝子の発現率を改変し、好ましくは増大させるものであり、DNA配列の欠失または挿入により達成されうる。
【0037】
上述のように、外的刺激を加えることにより少なくとも1つの内在性ケトラーゼの発現を改変することが可能である。これは特定の生理学的条件、すなわち外来物質の添加により達成可能である。
【0038】
少なくとも1つの内在性ケトラーゼ遺伝子の発現の増加を達成するためのさらなる可能性は、野生型生物には存在しないか、またはそれら遺伝子のプロモーターと相互作用するように改変される、制御タンパク質によってである。
【0039】
このタイプの制御因子は、例えばWO 96/06166に記載されているような、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインからなるキメラタンパク質でありうる。
【0040】
好ましい実施形態においては、ケトラーゼ活性は、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることにより、野生型と比較して増大している。
【0041】
さらなる好ましい実施形態においては、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸を生物に導入することにより、増大している。
【0042】
したがって、この実施形態においては、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする少なくとも1つのさらなるケトラーゼ遺伝子が、野生型と比較して本発明のトランスジェニック生物中には存在する。
【0043】
したがって、この実施形態では、本発明の遺伝的に改変された生物は、ケトラーゼをコードする少なくとも1つの外因性(=異種)核酸を有するか、またはケトラーゼをコードする少なくとも2つの内在性核酸を有し、ここでケトラーゼは配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むものである。
【0044】
本発明の方法についての別の好ましい実施形態においては、出発生物として用いられる生物が野生型としてはケトラーゼ活性を持たない。
【0045】
この好ましい実施形態においては、遺伝的改変が該生物においてケトラーゼ活性を生じさせる。したがって、本発明の遺伝的に改変された生物は、この実施形態においては、遺伝的に改変されていない野生型と比較してケトラーゼ活性を有し、かつ好ましくはケトラーゼのトランスジェニック発現が可能である。このケトラーゼは配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むものである。
【0046】
この好ましい実施形態においては、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現の上述した増加と同様に、好ましくは出発生物へのケトラーゼをコードする核酸の導入により起こる。ここでケトラーゼは配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むものである。
【0047】
両方の実施形態において、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする全ての核酸が、原理上この目的に用いられうる。
【0048】
ケトラーゼをコードする本発明の核酸の使用は、驚いたことに、先行技術で用いられているケトラーゼ遺伝子を利用した場合と比較して、本発明の方法においてケトカロテノイド(特にアスタキサンチン)のより高い収量をもたらす。
【0049】
本明細書に記載されている全ての核酸は、例えば、RNA、DNAまたはcDNA配列でありうる。
【0050】
真核生物由来のイントロンを含むゲノムケトラーゼ配列の場合であって、当該ケトラーゼを宿主生物が発現できないかまたは宿主生物において発現可能にさせることができない場合には、既にプロセシングされた核酸配列(例えば、対応するcDNA)を用いることが好ましい。
【0051】
ケトラーゼをコードする核酸、ならびに配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含む対応するケトラーゼの例であって、本発明の方法において好都合なものは、例えば以下の配列である:
Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 38、核酸:登録番号NZ AABC01000195、塩基対55,604-55,392 (配列番号1);タンパク質:登録番号ZP 00111258 (配列番号2) (推定上のタンパク質であるとの注釈あり)、または
Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 148、核酸:登録番号NZ AABC01000196、塩基対140,571-139,810 (配列番号3)、タンパク質(配列番号4) (注釈なし)、
またはこれらの配列に由来するケトラーゼ配列。
【0052】
さらに図1は、藍藻Nostoc punctiforme由来のORF 38およびORF 148の核酸配列を示している。
【0053】
アスタキサンチンの調製においては、Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 148のケトラーゼ、核酸:登録番号NZ AABC01000196、塩基対140,571-139,810 (配列番号3)、タンパク質(配列番号4)、またはこの配列に由来する配列を用いることが特に好ましい。
【0054】
本発明の方法に用いることができる天然由来のケトラーゼまたはケトラーゼ遺伝子のさらなる例は、例えばゲノム配列が知られている種々の生物から、アミノ酸配列またはデータベースからの対応する逆翻訳核酸配列と、上記の配列番号2または配列番号4の配列との同一性比較によって、容易に見出すことが可能である。
【0055】
天然由来のケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる例はさらに、上記の核酸配列から出発して、特に配列番号1または配列番号3の配列から出発して、ゲノム配列が不明である種々の生物から、それ自体公知の方法によるハイブリダイゼーション技術を用いて容易に見出すことが可能である。
【0056】
ハイブリダイゼーションは、温和な(低ストリンジェンシーの)条件、または好ましくはストリンジェントな(高ストリンジェンシーの)条件で行うことが可能である。
【0057】
これらのタイプのハイブリダイゼーションの条件は、例えば以下の文献に記載されている:Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, pp. 9.31-9.57、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6。
【0058】
例えば、洗浄段階の条件は、低ストリンジェンシー(50℃にて2X SSCを用いる)および高ストリンジェンシー(50℃、好ましくは65℃にて0.2X SSCを用いる)(20X SSC:0.3Mクエン酸ナトリウム、3M塩化ナトリウム、pH 7.0)の条件により制限される範囲の条件から選択することが可能である。
【0059】
さらなる可能性は、洗浄段階における温度を、室温(22℃)での温和な条件から、65℃でのストリンジェントな条件にまで上げることである。
【0060】
両方のパラメータ(塩濃度および温度)は同時に変えることができ、また2つのパラメータのうち一方を一定に保って、他方のみを変えることも可能である。例えばホルムアミドやSDSのような変性剤をハイブリダイゼーションの際に用いることも可能である。50%ホルムアミド存在下でのハイブリダイゼーションは、42℃で行うのが好ましい。
【0061】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄段階の条件のいくつかの例を以下に示す:
(1) ハイブリダイゼーションの条件の例
(i) 4X SSC、65℃
(ii) 6X SSC、45℃
(iii) 6X SSC、100mg/ml変性魚精子DNA、68℃
(iv) 6X SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性断片化サケ精子DNA、68℃
(v) 6X SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性断片化サケ精子DNA、50%ホルムアミド、42℃
(vi) 4X SSC、50%ホルムアミド、42℃
(vii) 50%(容量/容量)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、50mMリン酸ナトリウムバッファー、pH 6.5、750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム、42℃
(viii)2Xまたは4X SSC、50℃(温和な条件)
(ix) 30〜40%ホルムアミド、2Xまたは4X SSC、42℃(温和な条件)
(2)それぞれ10分間の洗浄段階の例
(i) 0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS、50℃
(ii) 0.1X SSC、65℃
(iii) 0.1X SSC、0.5%SDS、68℃
(iv) 0.1X SSC、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃
(v) 0.2X SSC、0.1%SDS、42℃
(vi) 2X SSC、65℃(温和な条件)。
【0062】
本発明の方法の好ましい実施形態においては、ケトラーゼをコードする核酸の導入が行われ、該ケトラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%の同一性を有する配列を含むものである。
【0063】
加えて、ケトラーゼ配列は、上記のように他の生物由来の配列の同一性比較により見出される天然の配列、あるいは配列番号2の配列から出発して人工的な変異(例えばアミノ酸の置換、挿入または欠失)により改変された人工的な配列とすることが可能である。
【0064】
「置換」という用語は、本明細書においては、1個または数個のアミノ酸を、1個または数個のアミノ酸で置換することを意味する。好ましくは、いわゆる保存的置換が行われ、これは置き換えられたアミノ酸が元のアミノ酸と類似した性質を有している場合であり、例えばGluからAspへの、GlnからAsnへの、ValからIleへの、LeuからIleへの、またはSerからThrへの置換である。
【0065】
欠失は1個のアミノ酸を直接的な連結で置き換えることである。好ましい欠失の位置は、ポリペプチドの末端および個々のタンパク質ドメイン間の連結部である。
【0066】
挿入は、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の導入であり、直接的な連結を1個または数個のアミノ酸で形式的に置き換えることである。
【0067】
2つのタンパク質同士の同一性とは、それぞれのタンパク質の全長にわたるアミノ酸の同一性を意味し、特にInformax (USA)より供給されているvector NTI suite 7.1 ソフトウェアを使用し、clustal法(Higgins DG, Sharp PM. 「マイクロコンピューターでの高速・高感度の多重配列アライメント」(Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.)Comput Appl. Biosci. 1989 Apr; 5(2):151-1)を用いて、以下のパラメータを設定することにより比較することから計算される同一性を意味する:
マルチプルアライメントパラメータ(Multiple alignment parameter):
ギャップオープニングペナルティ(Gap opening penalty) 10
ギャップエクステンションペナルティ(Gap extension penalty) 10
ギャップセパレーションペナルティレンジ(Gap separation penalty range) 8
ギャップセパレーションペナルティ(Gap separation penalty) off
アライメント遅延の同一性%(% identity for alignment delay) 40
残基特異的ギャップ(Residue specific gaps) off
親水性残基ギャップ(Hydrophilic residue gap) off
トランジッションウエイト(Transition weight) 0
ペアワイズアライメントパラメータ(Pairwise alignment parameter):
FASTアルゴリズム(FAST algorithm) on
K-タプルサイズ(K-tuple size) 1
ギャップペナルティ(Gap penalty) 3
ウィンドウサイズ(Window size) 5
最適な対角線数(Number of best diagonals) 5
さらに、アミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有するケトラーゼとは、特に上記のプログラムアルゴリズムを上記のセットのパラメータと共に使用して、ケトラーゼの配列と配列番号2の配列とを比較したとき、少なくとも42%の同一性を有するケトラーゼを意味する。
【0068】
例えば、上記のプログラムアルゴリズムを上記のセットのパラメータと共に使用すると、Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 148由来のケトラーゼの配列(配列番号4)は、Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 38由来のケトラーゼの配列(配列番号2)に対して64%の同一性を示す。
【0069】
好ましい核酸配列は、例えばポリペプチド配列の遺伝子コードにしたがった逆翻訳によって得ることができる。
【0070】
この目的に好適に用いられるコドンは、生物特異的なコドン使用頻度にしたがって頻繁に用いられるものである。コドン使用頻度は、関係する生物の他の既知遺伝子をコンピュータ解析することにより容易に見出すことができる。
【0071】
特に好ましい実施形態においては、配列番号1または配列番号3を含む核酸が、生物に導入される。
【0072】
上記の全てのケトラーゼ遺伝子は、それ自体公知の方法によって、ヌクレオチド単位からの化学合成によっても調製することが可能であり、該化学合成は、例えば二重らせんの個々の重複する相補的核酸単位の断片縮合によるものである。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えばホスホルアミダイト法による公知の方法で行うことができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pp. 896-897)。合成オリゴヌクレオチドの付加、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを用いたギャップの埋め合わせ、ライゲーション反応、および一般的なクローニング手法は、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0073】
Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 38由来のケトラーゼ配列(配列番号2)と、先行技術の方法で用いられたケトラーゼ配列との同一性を以下に示す:38%(Agrobacterium aurantiacum (EP 735 137)、登録番号D58420)、38%(Alcaligenes sp. PC-1 (EP 735137)登録番号D58422)および19〜21%(Haematococcus pluvialis Flotow em. WilleおよびHaematoccus pluvialis, NIES 144 (EP 725137、WO 98/18910およびLotanら, FEBS Letters 1995, 364, 125-128)、登録番号X86782およびD45881)。
【0074】
好ましい実施形態においては、野生型と比較したとき、増大したケトラーゼ活性に加えて、増大したヒドロキシラーゼ活性および/または増大したβ-サイクラーゼ活性を有する生物が栽培される。
【0075】
ヒドロキシラーゼ活性とは、ヒドロキシラーゼの酵素活性を意味する。
【0076】
ヒドロキシラーゼとは、カロテノイドの場合により置換されたβ-イオノン環に水酸基を導入するという酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0077】
特に、ヒドロキシラーゼとは、β-カロテンをゼアキサンチンに変換するか、あるいはカンタキサンチンをアスタキサンチンに変換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0078】
したがって、ヒドロキシラーゼ活性とは、ヒドロキシラーゼタンパク質によって、変換されたβ-カロテンもしくはカンタキサンチンの量、または生成されたゼアキサンチンもしくはアスタキサンチンの量を意味する。
【0079】
よって、ヒドロキシラーゼ活性が野生型と比較して増大しているときには、一定期間でヒドロキシラーゼタンパク質によって変換されたβ-カロテンもしくはカンタキサンチンの量、または生成されたゼアキサンチンもしくはアスタキサンチンの量が、野生型と比較して増加している。
【0080】
このヒドロキシラーゼ活性の増大は、野生型のヒドロキシラーゼ活性の好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、さらに一層好ましくは少なくとも500%、特に好ましくは少なくとも600%である。
【0081】
β-サイクラーゼ活性とは、β-サイクラーゼの酵素活性を意味する。
【0082】
β-サイクラーゼとは、末端の直鎖状リコペン残基を、β-イオノン環に変換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0083】
特に、β-サイクラーゼは、γ-カロテンをβ-カロテンに変換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0084】
したがって、β-サイクラーゼ活性とは、β-サイクラーゼタンパク質によって一定期間に変換されたγ-カロテンの量または生成されたβ-カロテンの量を意味する。
【0085】
よって、β-サイクラーゼ活性が野生型と比較して増大しているときには、一定期間においてβ-サイクラーゼタンパク質によって変換されたリコペンもしくはγ-カロテンの量、またはリコペンから生成されたγ-カロテンの量もしくはγ-カロテンから生成されたβ-カロテンの量が、野生型と比較して増加している。
【0086】
このβ-サイクラーゼ活性の増大は、好ましくは野生型のβ-サイクラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、なおのこと好ましくは少なくとも500%、特に好ましくは少なくとも600%である。
【0087】
本発明の遺伝的に改変された生物におけるヒドロキシラーゼ活性、ならびに野生型および基準生物におけるヒドロキシラーゼ活性は、好ましくは以下の条件で測定される:
ヒドロキシラーゼ活性は、in vitroにおいてBouvierらの方法(Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)を用いて測定される。フェレドキシン、フェレドキシン-NADP+ 酸化還元酵素、カタラーゼ、NADPHおよびβ-カロテンが、モノ-およびジガラクトシルグリセリドと共に一定量の生物抽出物に加えられる。
【0088】
ヒドロキシラーゼ活性は、特に好ましくはBouvier、Keller、d'HarlingueおよびCamaraの以下の条件で測定される (「キサントフィル生合成:トウガラシ果実(Capsicum annuum L.)由来のカロテノイドヒドロキシラーゼの分子的および機能的特徴づけ」(Xanthophyll biosynthesis: molecular and functional characterization of carotenoid hydroxylases from pepper fruits (Capsicum annuum L.)); Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328):
in vitroアッセイは、0.250mlの容量で行われる。混合物は、50mMリン酸カリウム(pH 7.6)、ホウレンソウフェレドキシン0.025mg、ホウレンソウフェレドキシン-NADP+ 酸化還元酵素0.5 unit、0.25mM NADPH、β-カロテン0.010mg (Tween 80 0.1mgにて乳化)、0.05mMモノ-およびジガラクトシルグリセリド混合物(1:1)、カタラーゼ1 unit、ウシ血清アルブミン0.2mg、および異なる容量の生物抽出物を含んでなる。該反応混合物を、30℃で2時間インキュベートする。反応産物をアセトンまたはクロロホルム/メタノール(2:1)のような有機溶媒で抽出し、HPLCを用いて測定する。
【0089】
本発明の遺伝的に改変された生物における、ならびに野生型および基準生物におけるβ-サイクラーゼ活性は、好ましくは以下の条件で測定される:
β-サイクラーゼ活性は、in vitroにおいてFraserおよびSandmannの方法(Biochem. Biophys. Res. Comm. 185(1) (1992) 9-15)を用いて測定される。バッファー(pH 7.6)としてリン酸カリウムが、基質としてリコペンが、またパプリカ間質タンパク質(paprika stromal protein)、NADP+、NADPHおよびATPが、一定量の生物抽出物に加えられる。
【0090】
β-サイクラーゼ活性は、特に好ましくはBouvier、d'HarlingueおよびCamaraの以下の条件で測定される(「カロテノイドサイクラーゼ阻害の分子解析」(Molecular Analysis of carotenoid cyclase inhibition); Arch. Biochem. Biophys. 346(1) (1997) 53-64):
in vitroアッセイは、250μlの容量で行われる。混合物は、50mMリン酸カリウム(pH 7.6)、様々な量の生物抽出物、20nMリコペン、パプリカ有色体間質タンパク質250μg、0.2mM NADP+、0.2mM NADPHおよび1mM ATPを含んでなる。NADP/NADPHおよびATPは、インキュベーション媒体に加える直前に、1mgのTween 80を添加したエタノール10mlに溶解する。30℃にて60分間の反応時間後、クロロホルム/メタノール(2:1)を加えることで反応を停止させる。クロロホルム中に抽出された反応生成物を、HPLCを用いて解析する。
【0091】
放射性基質を用いた別のアッセイがFraserおよびSandmannにより記載されている(Biochem. Biophys. Res. Comm. 185(1) (1992) 9-15)。
【0092】
ヒドロキシラーゼ活性および/またはβ-サイクラーゼ活性は、種々の方法により増大させることができ、例えば抑制的制御機構を発現レベルおよびタンパク質レベルでスイッチオフすることにより、またはヒドロキシラーゼをコードする核酸および/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を、野生型と比較して増加させることにより増大させることができる。
【0093】
ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現および/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、同様に様々な方法により野生型と比較して増加させることが可能であり、例えば活性化因子によりヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはβ-サイクラーゼ遺伝子を誘導することにより、あるいは1コピー以上のヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはβ-サイクラーゼ遺伝子を生物に導入することにより、すなわちヒドロキシラーゼをコードする核酸および/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸を少なくとも1つ導入することにより増加させることができる。
【0094】
ヒドロキシラーゼおよび/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸の遺伝子発現の増加とはまた、本発明にしたがえば、生物自体の内在性のヒドロキシラーゼおよび/またはβ-サイクラーゼの発現を操作することを意味する。
【0095】
これは例えば、ヒドロキシラーゼおよび/またはβ-サイクラーゼをコードする遺伝子のプロモーターDNA配列を改変することにより実現可能である。該遺伝子の発現率を増加させるそのような改変は、例えばDNA配列の欠失または挿入により達成されうる。
【0096】
上述のように、外的刺激を加えることにより内在性ヒドロキシラーゼおよび/またはβ-サイクラーゼの発現を改変することが可能である。これは特定の生理学的条件により、すなわち外来物質の添加により達成可能である。
【0097】
内在性ヒドロキシラーゼおよび/またはβ-サイクラーゼ遺伝子の発現の改変または増加を達成するためのさらなる可能性は、トランスフォームされていない生物には存在しない制御タンパク質と、この遺伝子のプロモーターとの相互作用による方法である。
【0098】
このような制御因子は、例えばWO 96/06166に記載されているような、DNA結合ドメインと転写活性化ドメインからなるキメラタンパク質でありうる。
【0099】
好ましい実施形態においては、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現および/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、少なくとも1つのヒドロキシラーゼをコードする核酸および/または少なくとも1つのβ-サイクラーゼをコードする核酸を生物に導入することにより増加させることができる。
【0100】
この目的のためには、基本的には、いかなるヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはいかなるβ-サイクラーゼ遺伝子でも使用可能である。すなわち、ヒドロキシラーゼをコードする核酸および/またはβ-サイクラーゼをコードする核酸はどれも使用することができる。
【0101】
真核生物源からの、イントロンを含むゲノムヒドロキシラーゼもしくはβ-サイクラーゼ核酸配列の場合であって、当該ヒドロキシラーゼもしくはβ-サイクラーゼを宿主生物が発現できないか、または宿主生物において発現可能にさせることができない場合には、対応するcDNAのような、既にプロセシングされた核酸配列を用いることが好ましい。
【0102】
ヒドロキシラーゼ遺伝子の1つの例は、Haematococcus pluvialis由来のヒドロキシラーゼをコードする核酸である(登録番号AX038729、WO 0061764);(核酸:配列番号5、タンパク質:配列番号6)。
【0103】
β-サイクラーゼ遺伝子の1つの例は、トマト由来のβ-サイクラーゼをコードする核酸である(登録番号X86452) ;(核酸:配列番号7、タンパク質:配列番号8)。
【0104】
したがって、この好ましい実施形態においては、少なくとも1つのさらなるヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはβ-サイクラーゼ遺伝子が、野生型と比較して、本発明の好ましいトランスジェニック生物中に存在する。
【0105】
この好ましい実施形態においては、遺伝的に改変された生物は、例えばヒドロキシラーゼをコードする外来性の核酸を少なくとも1つ有するか、あるいはヒドロキシラーゼをコードする内在性の核酸を少なくとも2つおよび/またはβ-サイクラーゼをコードする外来性の核酸を少なくとも1つ有するか、あるいはβ-サイクラーゼをコードする内在性の核酸を少なくとも2つ有する。
【0106】
上記の好ましい実施形態において好適に用いられるヒドロキシラーゼ遺伝子は、配列番号6のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸であるか、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号6に対して少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、なおのこと好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配列を含み、かつヒドロキシラーゼの酵素特性を有するタンパク質をコードする核酸である。
【0107】
ヒドロキシラーゼまたはヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、上述したように、そのゲノム配列が知られている種々の生物から、アミノ酸配列またはデータベースからの対応する逆翻訳核酸配列と、配列番号6の配列との相同性比較によって、容易に見出すことが可能である。
【0108】
ヒドロキシラーゼまたはヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例はまた、それ自体公知の方法で、例えば、上述のように、配列番号5の配列から出発して、そのゲノム配列が不明である種々の生物からハイブリダイゼーションもしくはPCR技術を用いて、容易に見出すことが可能である。
【0109】
さらなる特に好ましい実施形態においては、ヒドロキシラーゼ活性を増大させるために、配列番号6の配列のヒドロキシラーゼのアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を生物に導入する。
【0110】
好適な核酸配列は、例えば遺伝子コードに従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得ることが可能である。
【0111】
この目的に好適に用いられるコドンは、生物特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に用いられるものである。このコドン使用頻度は、関係する生物の他の既知遺伝子をコンピュータ解析することにより容易に見出すことができる。
【0112】
特に好ましい実施形態においては、配列番号5の配列を含む核酸が生物に導入される。
【0113】
上記の好ましい実施形態において好適に用いられるβ-サイクラーゼ遺伝子は、配列番号8のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸であるか、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号8に対して少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、なおのこと好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配列を含み、かつβ-サイクラーゼの酵素特性を有するタンパク質をコードする核酸である。
【0114】
β-サイクラーゼまたはβ-サイクラーゼ遺伝子のさらなる例は、上述したように、そのゲノム配列が知られている種々の生物から、アミノ酸配列またはデータベースからの対応する逆翻訳核酸配列と、配列番号8の配列との相同性比較によって容易に見出すことが可能である。
【0115】
β-サイクラーゼまたはβ-サイクラーゼ遺伝子のさらなる例はまた、それ自体公知の方法によって容易に見出すことができ、例えば配列番号7から始めて、そのゲノム配列が公知でないような種々の生物から上述のようにハイブリダイゼーションもしくはPCR技術を用いて見出すことが可能である。
【0116】
さらなる特に好ましい実施形態においては、β-サイクラーゼ活性を増大させるために、配列番号8の配列のβ-サイクラーゼのアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を生物に導入する。
【0117】
好適な核酸配列は、例えば遺伝子コードに従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得ることが可能である。
【0118】
この目的に好適に用いられるコドンは、生物特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に用いられるものである。このコドン使用頻度は、関係する生物の他の既知遺伝子をコンピュータ解析することにより容易に見出すことができる。
【0119】
特に好ましい実施形態においては、配列番号7の配列を含む核酸が生物に導入される。
【0120】
上記の全てのヒドロキシラーゼ遺伝子および/またはβ-サイクラーゼ遺伝子は、それ自体公知の方法によって、ヌクレオチド単位からの化学合成によっても調製することが可能であり、該化学合成は、例えば二重らせんの個々の重複する相補的核酸単位の断片縮合によるものである。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えばホスホルアミダイト法による公知の方法で行うことができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pages 896-897)。合成オリゴヌクレオチドの付加、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを用いたギャップの埋め合わせ、およびライゲーション反応、ならびに一般的なクローニング手法は、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0121】
本発明の方法において特に好適に用いられる遺伝的に改変された生物は、以下の組み合わせの遺伝的改変を有する:
野生型と比較して、増大したまたは生起されたケトラーゼ活性および増大したヒドロキシラーゼ活性を有する遺伝的に改変された生物、
野生型と比較して、増大したまたは生起されたケトラーゼ活性および増大したβ-サイクラーゼ活性を有する遺伝的に改変された生物、
野生型と比較して、増大したまたは生起されたケトラーゼ活性および増大したヒドロキシラーゼ活性および増大したβ-サイクラーゼ活性を有する遺伝的に改変された生物。
【0122】
これらの遺伝的に改変された生物は、例えば以下に述べるように、個々の核酸構築物(発現カセット)の導入、もしくは2つか3つまでの前記活性を含む多重構築物の導入により作り出すことができる。
【0123】
生物とは、本発明によれば好ましくは、野生型もしくは出発生物として、生来的に、あるいは代謝経路の遺伝的補完および/または再調節によってカロテノイド、特にβ-カロテンおよび/またはゼアキサンチンおよび/またはネオキサンチンおよび/またはビオラキサンチンおよび/またはルテインを産生する能力がある生物を意味する。
【0124】
さらなる好ましい生物は、野生型もしくは出発生物として既にヒドロキシラーゼ活性を有し、したがって野生型もしくは出発生物としてゼアキサンチンを産生する能力があるものである。
【0125】
好適な生物は、植物または、例えば細菌、酵母、藻類もしくは真菌のような微生物である。
【0126】
用いることのできる細菌は、以下の両方の細菌である:カロテノイド産生生物のカロテノイド生合成遺伝子の導入によってキサントフィルを合成しうる細菌、例えばエルビニア(Erwinia)由来のcrt遺伝子を含むエシェリキア(Escherichia)属の細菌、および生来的にキサントフィルを合成しうる細菌、例えばエルビニア属(Erwinia)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、パラコッカス属(Paracoccus)、ネンジュモ属(Nostoc)の細菌またはシネコシスティス属(Synechocystis)のシアノバクテリア。
【0127】
好適な細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、Erwinia herbicola、Erwinia uredovora、Agrobacterium aurantiacum、Alcaligenes sp. PC-1、Flavobacterium sp. strain R1534、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803、Paracoccus marcusiiまたはParacoccus carotinifaciensである。
【0128】
好適な酵母は、カンジダ属(Candida)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)またはファフィア属(Phaffia)である。特に好適な酵母は、Xanthophyllomyces dendrorhousおよびPhaffia rhodozymaである。
【0129】
好適な真菌は、アスペスギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、アシュビア属(Ashbya)、ネウロスポラ属(Neurospora)、ブラケスレア属(Blakeslea)、フィコマイセス属(Phycomyces)、フサリウム属(Fusarium)およびIndian Chem. Engr. Section B. Vol. 37, No. 1, 2 (1995)の15ページ、表6に記載されている他の真菌である。
【0130】
好適な藻類は緑色藻であって、例えばヘマトコッカス属(Haematococcus)、Phaedactylum tricornatum、ボルボックス属(Volvox)またはデュナリエラ属(Dunaliella)である。特に好適な藻類は、Haematococcus pluvialisまたはDunaliella bardawilである。
【0131】
本発明の方法を実施するために用いることができるさらなる微生物およびその生産は、例えばDE-A-199 16 140(参照によって本明細書に組み入れられる)において開示されている。
【0132】
特に好適な植物は、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、メギ科(Berberidaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、アサ科(Cannabaceae)、バラ科(Rosaceae)、マメ科(Fabaceae)、アマ科(Linaceae)、ブドウ科(Vitaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、サクラソウ科(Primulaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、ヒユ科(Amaranthaceae)、リンドウ科(Gentianaceae)、フクロソウ科(Geraniaceae)、スイカズラ科(Caprifoliaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ノウゼンハレン科(Tropaeolaceae)、ナス科(Solanaceae)、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、キク科(Asteraceae)、ユリ科(Liliaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、イネ科(Poaceae)、ラン科(Orchidaceae)、アオイ科(Malvaceae)、シキミ科(Illiaceae)またはシソ科(Lamiaceae)より選択される。
【0133】
非常に好適な植物は、マリーゴールド(Marigold)、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)、アカシア属(Acacia)、トリカブト属(Aconitum)、アドニス属(Adonis)、アルニカ(Arnica)、オダマキ属(Aquilegia)、アスター属(Aster)、レンゲ属(Astragalus)、ビグノニア属(Bignonia)、カレンデュラ属(Calendula)、リュウキンカ属(Caltha)、カンパニュラ属(Campanula)、カンナ属(Canna)、セントーレア属(Centaurea)、ケイランサス属(Cheiranthus)、キク属(Chrysanthemum)、ミカン属(Citrus)、クレピス属(Crepis)、サフラン属(Crocus)、カボチャ属(Curcurbita)、エニシダ属(Cytisus)、デロニア属(Delonia)、デルフィニウム属(Delphinium)、ナデシコ属(Dianthus)、ディモルフォセカ属(Dimorphotheca)、ドロニクム属(Doronicum)、ハナビシソウ属(Eschscholtzia)、レンギョウ属(Forsythia)、フレモンチア属(Fremontia)、ガザニア属(Gazania)、ゲルセミウム属(Gelsemium)、ヒトツバエニシダ属(Genista)、リンドウ属(Gentiana)、フクロソウ属(Geranium)、センボンヤリ属(Gerbera)、ダイコンソウ属(Geum)、グレビレア属(Grevillea)、ヘレニューム属(Helenium)、ヒマワリ属(Helianthus)、ミスミソウ属(Hepatica)、ハナウド属(Heracleum)、ハイビスカス属(Hibiscus)、ヘリオプシス属(Heliopsis)、オトギリソウ属(Hypericum)、エゾコウゾリナ属(Hypochoeris)、ツリフネソウ属(Impatiens)、アヤメ属(Iris)、ジャカランダ属(Jacaranda)、ヤマブキ属(Kerria)、キングサリ属(Laburnum)、ラチルス属(Lathyrus)、レオントドン属(Leontodon)、ユリ属(Lilium)、アマ属(Linum)、ハス(Lotus)、トマト属(Lycopersicon)、オカトラノオ属(Lysimachia)、マラチア(Maratia)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ミムラス属(Mimulus)、スイセン属(Narcissus)、マツヨイグサ属(Oenothera)、モクセイ属(Osmanthus)、ペチュニア属(Petunia)、カナメモチ属(Photinia)、ホオズキ属(Physalis)、フィテウマ属(Phyteuma)、キジムシロ属(Potentilla)、トキワサンザシ属(Pyracantha)、キンポウゲ属(Ranunculus)、ツツジ属(Rhododendron)、バラ属(Rosa)、オオハンゴンソウ属(Rudbeckia)、セネシオ属(Senecio)、シレネ属(Silene)、シルフィウム属(Silphium)、シナプシス属(Sinapsis)、ナナカマド属(Sorbus)、レダマ属(Spartium)、テコマ属(Tecoma)、トレニア属(Torenia)、バラモンジン属(Tragopogon)、キンバイソウ属(Trollius)、キンレンカ属(Tropaeolum)、チューリップ属(Tulipa)、フキタンポポ属(Tussilago)、ハリエニシダ属(Ulex)、スミレ属(Viola)またはヒャクニチソウ属(Zinnia)の群より選択され、特に好適なものはマリーゴールド(Marigold)、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)、トマト属(Lycopersicon)、バラ属(Rosa)、カレンデュラ属(Calendula)、ホオズキ属(Physalis)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ヒマワリ属(Helianthus)、キク属(Chrysanthemum)、アスター属(Aster)、チューリップ属(Tulipa)、スイセン属(Narcissus)、ペチュニア属(Petunia)、フクロソウ属(Geranium)、キンレンカ属(Tropaeolum)またはアドニス属(Adonis)の群より選択される。
【0134】
ケトカロテノイドを調製する本発明の方法においては、遺伝的に改変された生物を培養するステップに続いて、好ましくは該生物を回収し、より好ましくはさらに該生物からケトカロテノイドを分離する。
【0135】
前記生物の回収は、当該生物に適した、それ自体公知の方法により行われる。液体栄養培地中で発酵により培養された細菌、酵母、藻もしくは真菌のような微生物または植物細胞は、例えば遠心分離、デカンテーションまたは濾過によって取り出すことができる。植物は栄養培地上で生育され、それ自体公知の方法で適切に収穫される。
【0136】
遺伝的に改変された生物は、好ましくは酸素存在下に、少なくとも約20℃の培養温度、例えば20℃〜40℃のような温度で、また約6〜9のpHで培養される。遺伝的に改変された微生物の場合は、初めに酸素存在下にTBまたはLB培地のような複合培地中で、約20℃以上の培養温度、約6〜9のpHにて、十分な細胞密度に達するまで培養することが好ましい。酸化反応をよりよく制御するためには、誘導可能なプロモーターを用いることが好ましい。培養は、ケトラーゼ発現の誘導後、酸素存在下で例えば12時間から3日間続けられる。
【0137】
ケトカロテノイドは収穫されたバイオマス(biomass)から、それ自体公知の方法で、例えば抽出と、適宜に、沈殿法、結晶化、熱分離(例えば精留法)、もしくは物理的分離(例えばクロマトグラフィー)のような、さらなる化学的または物理的精製方法によって分離される。
【0138】
上述のように、ケトカロテノイドは本発明の遺伝的に改変された植物において特異的に産生させることができ、好ましくは種々の植物組織(例えば種子、葉、果実、花)、特に好ましくは花弁において産生される。
【0139】
ケトカロテノイドは、収穫された花弁から、例えば乾燥とそれに続く抽出のようなそれ自体公知の方法により分離され、適宜、さらなる化学的または物理的精製方法によって分離される。化学的または物理的精製方法は例えば、沈殿法、結晶化、熱分離(例えば精留法)、もしくは物理的分離(例えばクロマトグラフィー)のようなものである。ケトカロテノイドは、例えば好ましくは有機溶媒(アセトン、ヘキサン、エーテルもしくはメチルtert-ブチルエーテルなど)により花弁から分離される。
【0140】
ケトカロテノイドを(特に花弁から)分離するさらなる方法は、例えばEggerおよびKleinig (Phytochemistry (1967) 6, 437-440)およびEgger (Phytochemistry (1965) 4, 609-618)に記載されている。
【0141】
ケトカロテノイドは好ましくはアスタキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、3-ヒドロキシエキネノン、3'-ヒドロキシエキネノン、アドニルビンおよびアドニキサンチンの群より選択される。
【0142】
アスタキサンチンは特に好ましいケトカロテノイドである。
【0143】
用いる生物に応じて、ケトカロテノイドは遊離型または脂肪酸エステルとして得られる。
【0144】
植物花弁においては、ケトカロテノイドは本発明の方法では脂肪酸とのモノ-またはジエステルの形で得られる。検出される脂肪酸のいくつかの例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸およびラウリン酸がある(Kamata and Simpson (1987) Comp. Biochem. Physiol. Vol. 86B(3), 587-591)。
【0145】
ケトカロテノイドは、植物全体において産生させることができるが、好ましい実施形態においては、特に有色体を含む植物組織において産生される。好ましい植物組織の例は、根、種子、葉、果実、花、特に好ましくは蜜腺および花弁である。
【0146】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、花において最も高いケトラーゼ発現率を示す遺伝的に改変された植物が用いられる。
【0147】
これは、好ましくは花特異的プロモーターの制御下におけるケトラーゼ遺伝子の発現により実現される。この目的には、例えば上記の核酸が植物に導入される(詳細については後述する)が、該核酸は花特異的プロモーターと機能的に連結されて核酸構築物中に存在する。
【0148】
本発明の方法の、さらなる特に好ましい実施形態では、果実において最も高いケトラーゼ発現率を示す遺伝的に改変された植物が用いられる。
【0149】
これは、好ましくは果実特異的プロモーターの制御下におけるケトラーゼ遺伝子の発現により実現される。この目的には、例えば上記の核酸が植物に導入される(詳細については後述する)が、該核酸は果実特異的プロモーターと機能的に連結されて核酸構築物中に存在する。
【0150】
本発明の方法の、さらなる特に好ましい実施形態では、種子において最も高いケトラーゼ発現率を示す遺伝的に改変された植物が用いられる。
【0151】
これは、好ましくは種子特異的プロモーターの制御下におけるケトラーゼ遺伝子の発現により実現される。この目的には、例えば上記の核酸が植物に導入される(詳細については後述する)が、該核酸は種子特異的プロモーターと機能的に連結されて核酸構築物中に存在する。
【0152】
有色体を標的とするには、機能的に連結された色素体(プラスチド)トランジットペプチドを使用する。
【0153】
ケトラーゼ活性が増大したまたは生起された遺伝的に改変された植物の作出を、以下に例を挙げて説明する。例えばヒドロキシラーゼ活性および/またはβ-サイクラーゼ活性のような付加的な活性は、ケトラーゼをコードする核酸配列に代えて、ヒドロキシラーゼまたはβ-サイクラーゼをコードする核酸配列を用いることでケトラーゼの場合と同様に増大させることができる。形質転換は、単独での遺伝的改変の組み合わせの形で、もしくは多重構築物によって行うことができる。
【0154】
トランスジェニック植物は、好ましくは核酸構築物による出発植物の形質転換により作出され、該核酸構築物は、植物での転写および翻訳を確実にする1つ以上の制御シグナルと機能的に連結された、上記のケトラーゼをコードする核酸を含むものである。
【0155】
コード核酸が植物での転写および翻訳を確実にする1つ以上の制御シグナルと機能的に連結されている、これらの構築物は、以下においては発現カセットとも呼ばれる。
【0156】
前記制御シグナルは、好ましくは植物での転写および翻訳を確実にする1つ以上のプロモーターを含んでなる。
【0157】
前記発現カセットは、制御シグナル、すなわち、宿主細胞におけるコード配列の発現を制御する制御核酸配列を含んでなる。好ましい実施形態においては、発現カセットは、上流(すなわちコード配列の5'末端)にプロモーター、下流(すなわち3'末端)にポリアデニル化シグナル、適宜に、さらなる制御エレメントを含み、これらは、これらの間に位置づけられた上記遺伝子の少なくとも1つのコード配列と機能的に連結されている。機能的な連結とは、プロモーター、コード配列、ターミネーター、適宜に、さらなる制御エレメントを、各制御エレメントがコード配列の発現において意図されたその機能を果たすことができるような様式で、順次配置することを意味する。
【0158】
植物用の好ましい核酸構築物、発現カセットおよびベクター、トランスジェニック植物を作出する方法、ならびにトランスジェニック植物それ自体を、以下に例を挙げて説明する。
【0159】
機能的連結に好適な(しかしそれに限定されない)配列は、アポプラスト、液胞、色素体、ミトコンドリア、小胞体(endoplasmic reticulum: ER)、細胞核、エライオプラストおよび他のコンパートメントへの細胞内局在を確かにするターゲッティング配列、ならびにタバコモザイクウイルス由来の5'リーダー配列のような翻訳エンハンサーである(Gallieら, Nucl. Acids Res. 15 (1987), 8693-8711)。
【0160】
発現カセットに用いる好適なプロモーターは、植物において外来遺伝子の発現を制御できるものであれば基本的にいかなるプロモーターでもよい。
【0161】
「構成的」プロモーターとは、植物の発育期の比較的長い期間にわたって、好ましくは植物の全発育期を通して、多数の(好ましくは全ての)組織における発現を確実にするプロモーターを意味する。
【0162】
好ましく用いられるのは、特に、植物プロモーターまたは植物ウイルス由来のプロモーターである。特に好ましいものは、カリフラワーモザイクウイルスの35S転写物のCaMVプロモーター(Franckら(1980) Cell 21:285-294; Odellら(1985) Nature 313:810-812; Shewmakerら(1985) Virology 140:281-288; Gardnerら(1986) Plant Mol Biol 6:221-228)、19S CaMVプロモーター(US 5,352,605; WO 84/02913; Benfeyら(1989) EMBO J 8:2195-2202)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のトリオースリン酸輸送体(triose phosphate translocator:TPT)プロモーター(登録番号AB006698、塩基対53242-55281;塩基対55282から始まる遺伝子が「リン酸/トリオースリン酸輸送体」であると注釈されている)、またはゴマノハグサモザイクウイルスの34Sプロモーター(登録番号X16673、塩基対1-554)である。
【0163】
さらなる好適な構成的プロモーターは、以下のものである:pdsプロモーター(Peckerら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci USA 89: 4962-4966)またはルビスコ小サブユニット(rubisco small subunit:SSU)プロモーター(US 4,962,028)、レグミン(legumin)Bプロモーター(GenBank登録番号X03677)、アグロバクテリウムノパリンシンターゼプロモーター、TRデュアルプロモーター、アグロバクテリウムOCS (オクトピンシンターゼ)プロモーター、ユビキチンプロモーター(Holtorf Sら(1995) Plant Mol Biol 29:637-639)、ユビキチン1プロモーター(Christensenら(1992) Plant Mol Biol 18:675-689; Bruceら(1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:9692-9696)、Smasプロモーター、シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(US 5,633,439)、液胞ATPaseサブユニットのプロモーターまたはコムギ由来のプロリンリッチタンパク質のプロモーター(WO 91/13991)、Pnitプロモーター(Y07648.L, Hillebrandら(1998), Plant. Mol. Biol. 36, 89-99, Hillebrandら(1996), Gene, 170, 197-200)、および植物における構成的発現が当業者に公知である遺伝子のさらなるプロモーター。
【0164】
発現カセットは、化学的に誘導可能なプロモーター(総説:Gatzら(1997) Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 48:89-108)を含んでいてもよく、それにより植物におけるケトラーゼ遺伝子の発現を一定の時期に制御することができる。このタイプのプロモーター、例えばPRP1プロモーター(Wardら(1993) Plant Mol Biol 22:361-366)、サリチル酸誘導性プロモーター(WO 95/19443)、ベンゼンスルホンアミド誘導性プロモーター(EP 0 388 186)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら(1992) Plant J 2:397-404)、アブシジン酸誘導性プロモーター(EP 0 335 528)、またはエタノールもしくはシクロヘキサノン誘導性プロモーター(WO 93/21334)を同様に用いることができる。
【0165】
さらなる好ましいプロモーターは、生体ストレスまたは非生体ストレスにより誘導されるもので、そのようなものは例えば以下のものである:PRP1遺伝子の病原体誘導性プロモーター(Wardら(1993) Plant Mol Biol 22:361-366)、熱誘導性トマトhsp70またはhsp80プロモーター(US 5,187,267)、寒冷誘導性ジャガイモα-アミラーゼプロモーター(WO 96/12814)、光誘導性PPDKプロモーターまたは傷害誘導性pinIIプロモーター(EP375091)。
【0166】
病原体誘導性プロモーターは、病原体による攻撃の結果として誘導される遺伝子のプロモーターを含み、そのような遺伝子は例えば以下のものである: PRタンパク質、SARタンパク質、β-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼ等の遺伝子(例えばRedolfiら(1983) Neth J Plant Pathol 89:245-254; Uknesら(1992) The Plant Cell 4:645-656; Van Loon (1985) Plant Mol Viral 4:111-116; Marineauら(1987) Plant Mol Biol 9:335-342; Mattonら(1987) Molecular Plant-Microbe Interactions 2:325-342; Somssichら(1986) Proc Natl Acad Sci USA 83:2427-2430; Somssichら(1988) Mol Gen Genetics 2:93-98; Chenら(1996) Plant J 10:955-966; Zhang and Sing (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:2507-2511; Warnerら(1993) Plant J 3:191-201; Siebertzら(1989) Plant Cell 1:961-968 (1989))。
【0167】
傷害誘導性プロモーターとして、以下のような遺伝子のプロモーターもまた含まれる:pinII遺伝子(Ryan (1990) Ann Rev Phytopath 28:425-449; Duanら(1996) Nat Biotech 14:494 498)、wun1およびwun2遺伝子(US 5,428,148)、win1およびwin2遺伝子(Stanfordら(1989) Mol Gen Genet 215:200-208)、システミン(systemin)遺伝子(McGurlら(1992) Science 255:1570-1573)、WIP1遺伝子(Rohmeierら(1993) Plant Mol Biol 22:783-792; Ekelkampら(1993) FEBS Letters 323:73-76)、MPI遺伝子(Corderokら(1994) The Plant J 6(2):141-150)および同様のもの。
【0168】
さらなる好適なプロモーターの例は、例えばトマト果実成熟特異的プロモーター(WO 94/21794, EP 409 625)のような、果実成熟特異的プロモーターである。発育依存的プロモーターには、いくつかの組織の形成はもともと発育に依存するので、組織特異的プロモーターの一部が含まれる。
【0169】
さらなる特に好ましいプロモーターは、例えばケトカロテノイドまたはその前駆体の生合成がおこなわれる植物の組織または一部における発現を確実にするものである。好適な例は、葯、子房、花弁、萼片、花、葉、茎、種子および根、ならびにそれらの組み合わせに対して特異性を有するプロモーターである。
【0170】
塊茎、貯蔵根または根に特異的なプロモーターの例は、パタチン(patatin)プロモータークラスI(B33)またはジャガイモカテプシンDインヒビタープロモーターである。
【0171】
葉特異的プロモーターの例は、ジャガイモ細胞質FBPaseのプロモーター(WO 97/05900)、ルビスコ(リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ)SSU(小サブユニット)プロモーターまたはジャガイモST-LSIプロモーター(Stockhausら(1989) EMBO J 8:2445-2451)である。
【0172】
花特異的プロモーターの例は、フィトエンシンターゼプロモーター(WO 92/16635)またはP-rr遺伝子のプロモーター(WO 98/22593)、シロイヌナズナAP3プロモーター(実施例5を参照)、CHRCプロモーター(Cucumis sativus由来の有色体特異的カロテノイド結合タンパク質(chromoplast-specific carotenoid-associated protein:CHRC)遺伝子プロモーター、登録番号AF099501、塩基対1-1532)、EPSPシンターゼプロモーター(Petunia hybrida由来の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ遺伝子プロモーター、登録番号M37029、塩基対1-1788)、PDSプロモーター(Solanum lycopersicumのフィトエンデサチュラーゼ遺伝子プロモーター、登録番号U46919、塩基対1-2078)、DFR-Aプロモーター(Petunia hybrida由来のジヒドロフラボノール4-リダクターゼ遺伝子Aプロモーター、登録番号X79723、塩基対32-1902)、またはFBP1プロモーター(Petunia hybridaの花結合タンパク質1(floral binding protein 1)遺伝子プロモーター、登録番号L10115、塩基対52-1069)である。
【0173】
葯特異的プロモーターの例は、5126プロモーター(US 5,689,049, US 5,689,051)、glob-Iプロモーターまたはg-zeinプロモーターである。
【0174】
種子特異的プロモーターの例は、ACP05プロモーター(アシルキャリアータンパク質遺伝子、WO 9218634)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)AtS1およびAtS3プロモーター(WO 9920775)、Vicia faba LeB4プロモーター(WO 9729200およびUS 06403371)、Brassica napusナピン(napin)プロモーター(US 5608152; EP 255378; US 5420034)、Vicia faba SBPプロモーター(DE 9903432)、またはトウモロコシEnd1およびEnd2プロモーター(WO 0011177)である。
【0175】
植物における発現のためのさらなる好適なプロモーターは、Rogersら(1987) Meth in Enzymol 153:253-277; Schardlら(1987) Gene 61:1-11およびBergerら(1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:8402-8406に記載されている。
【0176】
本発明の方法において特に好適なものは、構成的、種子特異的、果実特異的、花特異的、特に花弁特異的プロモーターである。
【0177】
本発明はそれゆえ、特に、機能的に連結された、花特異的(特に花弁特異的)プロモーター、および配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸、を含んでなる核酸構築物に関する。
【0178】
好ましくは、発現カセットは、好適なプロモーターを、ケトラーゼをコードする上記の核酸に、好ましくはプロモーターと核酸配列の間に挿入されかつ色素体特異的トランジットペプチドをコードする核酸に、およびポリアデニル化シグナルに融合させることにより作製されるものであり、例えば以下の文献に記載されるような通常の組換えおよびクローニング技術により作製される:T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)およびT.J. Silhavy, M.L. Berman, L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M.ら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1987)。
【0179】
好適に挿入される、色素体トランジットペプチドをコードする核酸は、色素体(特に、有色体)への局在化を確実にする。
【0180】
ケトラーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列を有する発現カセットを用いることも可能であり、ここで融合タンパク質の一部はポリペプチドの移動を制御するトランジットペプチドである。トランジットペプチドは有色体に特異的であり、また有色体へのケトラーゼの移動後に、酵素的にケトラーゼ部分から切断される。
【0181】
特に好ましいトランジットペプチドは、タバコ(Nicotiana tabacum)色素体トランスケトラーゼに由来するか、または他のトランジットペプチド(例えば、イソペンテニル-ピロリン酸イソメラーゼ2、ならびにルビスコ小サブユニット(rbcS)またはフェレドキシンNADP+酸化還元酵素のトランジットペプチド)もしくはそれと機能的に同等のものである。
【0182】
特に好適なものは、タバコ色素体トランスケトラーゼの色素体トランジットペプチドの3つのカセットの核酸配列(3つのリーディングフレームに対応し、NcoI切断サイトにATGコドンを有するKpnI/BamHI断片として存在する)である:
pTP09
KpnI_GGTACCATGGCGTCTTCTTCTTCTCTCACTCTCTCTCAAGCTATCCTCTCTCGTTCTGTCCCTCGCCATGGCTCTGCCTCTTCTTCTCAACTTTCCCCTTCTTCTCTCACTTTTTCCGGCCTTAAATCCAATCCCAATATCACCACCTCCCGCCGCCGTACTCCTTCCTCCGCCGCCGCCGCCGCCGTCGTAAGGTCACCGGCGATTCGTGCCTCAGCTGCAACCGAAACCATAGAGAAAACTGAGACTGCGGGATCC_BamHI
pTP10
KpnI_GGTACCATGGCGTCTTCTTCTTCTCTCACTCTCTCTCAAGCTATCCTCTCTCGTTCTGTCCCTCGCCATGGCTCTGCCTCTTCTTCTCAACTTTCCCCTTCTTCTCTCACTTTTTCCGGCCTTAAATCCAATCCCAATATCACCACCTCCCGCCGCCGTACTCCTTCCTCCGCCGCCGCCGCCGCCGTCGTAAGGTCACCGGCGATTCGTGCCTCAGCTGCAACCGAAACCATAGAGAAAACTGAGACTGCGCTGGATCC_BamHI
pTP11
KpnI_GGTACCATGGCGTCTTCTTCTTCTCTCACTCTCTCTCAAGCTATCCTCTCTCGTTCTGTCCCTCGCCATGGCTCTGCCTCTTCTTCTCAACTTTCCCCTTCTTCTCTCACTTTTTCCGGCCTTAAATCCAATCCCAATATCACCACCTCCCGCCGCCGTACTCCTTCCTCCGCCGCCGCCGCCGCCGTCGTAAGGTCACCGGCGATTCGTGCCTCAGCTGCAACCGAAACCATAGAGAAAACTGAGACTGCGGGGATCC_BamHI
色素体トランジットペプチドのさらなる例は、シロイヌナズナ色素体イソペンテニル-ピロリン酸イソメラーゼ2(IPP-2)のトランジットペプチドおよびエンドウ由来のリブロース二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(rbcS)のトランジットペプチドである(Guerineau, F, Woolston, S, Brooks, L, Mullineaux, P (1988)「外来性タンパク質を有色体にターゲティングするための発現カセット」(An expression cassette for targeting foreign proteins into the chloroplasts.)Nucl. Acids Res. 16: 11380)。
【0183】
本発明の核酸は、合成的に調製されるか、天然から得られるか、または合成核酸成分と天然核酸成分の混合物を含んでなることが可能であり、また、異なる生物の種々の異種遺伝子断片から構成することが可能である。
【0184】
好ましいものは、上記のように、植物に好適なコドンを有する合成ヌクレオチド配列である。これらの植物に好適なコドンは、対象の植物種の大部分において発現される、最高のタンパク質頻度を有するコドンから特定することが可能である。
【0185】
発現カセットを用意するために、正しい方向で適切に読まれ、かつ正しいリーディングフレームで配置されたヌクレオチド配列を得るように、種々のDNA断片を操作することが可能である。DNA断片を互いに連結するために、アダプターまたはリンカーを該断片に付加することができる。
【0186】
プロモーターおよびターミネーター領域を、当該配列を挿入するための1つ以上の制限サイトを有するリンカーまたはポリリンカーと共に、転写方向で供給することが可能であり、適切である。一般に、該リンカーは1〜10、通常は1〜8、好ましくは2〜6の制限サイトを有する。該リンカーは一般的には100bp未満、通例60bp未満のサイズであるが、5bp以上のサイズを有し、調節領域の内側にある。プロモーターは、宿主植物に固有の、または同種のものであってもよいし、外来性の、または異種のものであってもよい。発現カセットは、好ましくは転写方向の5'から3'に向かって、プロモーター、コード核酸配列または核酸構築物、および転写終結領域を含んでなる。種々の終結領域を、所望の通りに相互交換することができる。
【0187】
ターミネーターの例は、35Sターミネーター(Guerineauら(1988) Nucl Acids Res. 16: 11380)、nosターミネーター(Depicker A, Stachel S, Dhaese P, Zambryski P, Goodman HM.「ノパリンシンターゼ:転写産物マッピングおよびDNA配列」(Nopaline synthase: transcript mapping and DNA sequence.)J Mol Appl Genet. 1982;1(6):561-73)またはocsターミネーター(Gielen, J, de Beuckeleer, M, Seurinck, J, Debroek, H, de Greve, H, Lemmers, M, van Montagu, M, Schell, J (1984)「Agrobacterium tumefaciensプラスミドpTiAch5のTL-DNAの完全配列」(The complete sequence of the TL-DNA of the Agrobacterium tumefaciens plasmid pTiAch5.) EMBO J. 3: 835-846)である。
【0188】
さらに、適切な制限切断サイトを供給するための、または余分なDNAもしくは制限切断サイトを欠失させるための操作を行うことが可能である。挿入、欠失または置換(例えば転位や塩基転換)に関して、in vitro突然変異誘発、プライマー修復(primer repair)、制限切断またはライゲーションを用いることが可能である。
【0189】
断片のライゲーションのための相補的末端を得るためには、例えば、制限切断、突出末端の削り取りまたは埋め合わせによる平滑末端化などの適当な操作を用いることにより可能である。
【0190】
好ましいポリアデニル化シグナルは植物のポリアデニル化シグナルであり、好ましくはAgrobacterium tumefaciens由来のT-DNAポリアデニル化シグナルに本質的に対応するものであり、特に好ましくはTiプラスミドpTiACH5(Gielenら, EMBO J. 3 (1984), 835 ff)のT-DNAの遺伝子3(オクトピンシンターゼ)のもの、またはそれと機能的に同等のものである。
【0191】
植物のゲノムに外来遺伝子を導入することは、形質転換と呼ばれる。
【0192】
この目的には、一過性または安定した形質転換のための、それ自体公知の植物の形質転換方法および植物組織または植物細胞からの植物の再生方法を用いることが可能である。
【0193】
植物を形質転換する好適な方法は、ポリエチレングリコール誘導DNA取り込みによるプロトプラスト形質転換、遺伝子銃を用いたバイオリスティック(biolistic)法(いわゆる粒子射撃法(particle bombardment method))、エレクトロポレーション、DNA含有水溶液中での乾燥胚のインキュベーション、微量注入および、上記のアグロバクテリウムを介した遺伝子導入である。前記方法は、例えば以下の文献に記載されている:B. Jenesら, 「遺伝子導入の技術」(Techniques for Gene Transfer): Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, S.D. Kung and R. Wu編集, Academic Press (1993), 128-143およびPotrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225。
【0194】
発現される構築物は、好ましくはAgrobacterium tumefaciensを形質転換するのに適したベクターにクローニングされるが、該ベクターは例えばpBin19 (Bevanら, Nucl. Acids Res. 12 (1984), 8711)であり、または特に好ましくはpSUN2、pSUN3、pSUN4およびpSUN5 (WO 02/00900)である。
【0195】
発現プラスミドにより形質転換されたアグロバクテリアは、植物を形質転換する公知の方法に用いることができる。該方法とは例えば、アグロバクテリアの溶液に、傷つけた葉もしくは葉の小片を浸漬し、続いて適当な培地中で培養することである。
【0196】
遺伝的に改変された植物(以下ではトランスジェニック植物とも呼ばれる)の好適な作製のためには、ケトラーゼを発現する融合発現カセットを、Agrobacterium tumefaciensを形質転換するのに適したベクター、例えばpBin19、特にはpSUN5またはpSUN3、にクローニングする。そのようなベクターで形質転換されたアグロバクテリアは、その後、植物、特に作物植物を形質転換する公知の方法に用いることができ、該方法は、アグロバクテリアの溶液に傷つけた葉もしくは葉の小片を浸漬し、続いて適当な培地中で培養することによる。
【0197】
アグロバクテリアによる植物の形質転換は、特に以下の文献で開示されている:F.F. White,「高等植物への遺伝子導入のためのベクター」(Vectors for Gene Transfer in Higher Plants): Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, S.D. Kung and R. Wu編集, Academic Press, 1993, 15-38ページ。ケトラーゼをコードする核酸を発現させるための発現カセットに組み込まれた遺伝子を含むトランスジェニック植物は、傷つけた葉もしくは葉の小片の形質転換細胞から、公知の方法で再生させることができる。
【0198】
ケトラーゼをコードする核酸で宿主細胞を形質転換するために、発現カセットは組み換えベクターに組み込まれ、挿入される。そのベクターDNAは、例えば複製または組み込みのための配列のような、付加的な機能性制御シグナルを含んでなる。好適なベクターは特に、「Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology」(CRC Press), 6/7章, 71-119ページ(1993)に記載されている。
【0199】
上述の組み換えおよびクローニング技術を用いて、前記発現カセットを、例えば大腸菌内でのその複製を可能にする適当なベクターにクローニングすることができる。好適なクローニングベクターは、とりわけ、pJIT117 (Guerineauら. (1988) Nucl. Acids Res.16 :11380)、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズおよびpACYC184である。大腸菌とアグロバクテリアの両者において複製可能なバイナリーベクターは特に好適である。
【0200】
本発明の遺伝的に改変された生物の作製を、より詳細に以下に記す:
ケトラーゼまたはヒドロキシラーゼまたはβ-サイクラーゼをコードする上記の核酸は、好ましくは、制御核酸配列の制御下に、本発明の酵素をコードする核酸を含む発現構築物に組み込まれ、また、それらの発現構築物の少なくとも1つを含むベクターに組み込まれる。
【0201】
本発明のそのような構築物は、好ましくは、上流(すなわち当該コード配列の5'末端)にプロモーターを、下流(すなわち3'末端)にターミネーター配列を含み、適宜、通常の制御エレメントを、それぞれコード配列に機能的に連結した形でさらに含んでなる。機能的連結とは、プロモーター、コード配列、ターミネーターの連続配置を意味し、また適宜、制御エレメントを、それぞれの制御エレメントがコード配列の発現において意図されたその機能を果たすことができるような様式でさらに連結することである。
【0202】
機能的に連結可能な配列の例は、ターゲッティング配列、翻訳エンハンサーおよびポリアデニル化シグナルなどである。制御エレメントは、選択マーカー、増幅シグナルおよび複製起点などをさらに含む。
【0203】
人工的な制御配列に加えて、天然の制御配列を実際の構造遺伝子の前に存在したままにすることが可能である。この天然の制御は、遺伝的改変によって適宜スイッチオフすることができ、遺伝子の発現を増大させたり、低下させたりすることができる。遺伝子構築物はまた、しかしながら、より単純な構造をしていてもよく、すなわち、構造遺伝子の前に付加的な制御シグナルは一切挿入されておらず、天然のプロモーターがその制御配列を伴って欠失されていない。その代わり、天然の制御配列は、制御がもはや行われないように変異されており、遺伝子発現が増加したり低下したりする。核酸配列は、該遺伝子構築物中に1以上のコピー数で存在しうる。
【0204】
用いることのできるプロモーターの例は、以下のものである:グラム陰性細菌で有効に用いられる、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、lambda-PRまたはlambda-PLプロモーター;およびグラム陽性細菌プロモーター、amyおよびSPO2;または酵母プロモーター、ADC1、MFa、AC、P-60、CYC1、GAPDH。誘導性プロモーターの使用が特に好ましく、そのようなものとしては、例えば、光誘導性、特に、PrPlプロモーターのような温度誘導性プロモーターがある。
【0205】
原理的には、全ての天然のプロモーターをその制御配列とともに使用することが可能である。加えて、合成プロモーターも有効に使用可能である。
【0206】
前記制御配列は、核酸配列の特異的発現およびタンパク質発現を可能にするように意図されている。このことは、宿主生物に依存して、該遺伝子が誘導後にのみ発現または過剰発現されること、または、即時的に発現および/または過剰発現されることを意味する。
【0207】
制御配列または制御因子は、好ましくはさらに、積極的に発現に影響を及ぼす、すなわち発現を増加させるか減少させるものでありうる。したがって、制御エレメントの増強は、プロモーターおよび/またはエンハンサーのような強力な転写シグナルを用いることで、転写の段階で有利に行うことができる。しかしながら、例えばmRNAの安定性を改善することにより、翻訳を高めることも可能である。
【0208】
発現カセットは、適当なプロモーターを、ケトラーゼ、β-ヒドロキシラーゼ、またはβ-サイクラーゼをコードする上記の核酸配列、およびターミネーターシグナルまたはポリアデニル化シグナルと融合させることにより作製される。一般的な組み換えおよびクローニング技術が、上述のようにこの目的に使用され、該技術は例えば以下の文献に記載されている:T. Maniatis, E.F. Fritsch および J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)、T.J. Silhavy, M.L. Berman および L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)ならびにAusubel, F.M.ら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)。
【0209】
適当な宿主生物における発現のために、前記組み換え核酸構築物または遺伝子構築物が宿主特異的ベクターに有効に挿入され、これにより宿主内での最適な遺伝子発現が可能になる。ベクターは当業者に公知であり、例えば「Cloning Vectors」(Pouwels P. H.ら編集, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出すことができる。ベクターとはまた、プラスミドのみを意味するものではなく、当業者に公知の全ての他のベクターをも意味するものである。そのようなものとしては例えば、ファージ、ウイルス(例えばSV40、CMV、バキュロウイルス、およびアデノウイルス)、トランスポゾン、IS因子、ファスミド、コスミドおよび直線状または環状DNAがある。これらのベクターは、宿主生物内で自律複製または染色体複製を行うことができる。
【0210】
以下に好適な発現ベクターの例を挙げる:
一般的な融合発現ベクター、例えばpGEX (Pharmacia Biotech Inc; Smith, D.B. および Johnson, K.S. (1988) Gene 67:31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT 5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)。これらにおいてはそれぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質およびプロテインAが組み換え標的タンパク質に融合される。
【0211】
非融合タンパク質発現ベクター、例えばpTrc (Amannら, (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11d (Studierら Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89)。
【0212】
酵母S. cerevisiaeでの発現のための酵母発現ベクター、例えばpYepSec1 (Baldariら, (1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa (Kurjan および Herskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultzら (1987) Gene 54:113-123)およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)。
【0213】
糸状菌のような他の真菌での使用に好適なベクターおよびベクター構築法は、以下の文献に詳細に記述されているものを含む:van den Hondel, C.A.M.J.J. & Punt, P.J. (1991)「糸状菌への遺伝子導入系およびベクターの開発」(Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi): Applied Molecular Genetics of Fungi, J.F. Peberdyら編集, 1-28ページ, Cambridge University Press: Cambridge。
【0214】
培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smithら, (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklow および Summers (1989) Virology 170:31-39)を含む。
【0215】
原核細胞および真核細胞についてのさらなる好適な発現系は、以下の文献の16章および17章に記載されている:Sambrook, J., Fritsch, E.F. および Maniatis, T., Molecular cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989。
【0216】
本発明の発現構築物またはベクターは、例えば少なくとも1つの本発明のベクターで、形質転換された遺伝的に改変された生物を作製するのに用いることができる。
【0217】
上述した本発明の組み換え構築物は、適当な宿主系に有利に導入されて、発現される。当業者によく知られたクローニング法およびトランスフェクション法(例えば共沈殿法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなど)は、当該発現系中の前記核酸の発現をもたらすために好適に用いられる。好ましい系は例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubelら編集, Wiley Interscience, New York 1997に記載されている。
【0218】
形質転換に成功した生物は、ベクターまたは発現カセット中に同様に存在するマーカー遺伝子によって選択することができる。そのようなマーカー遺伝子の例は、抗生物質耐性遺伝子および、形質転換細胞の着色を引き起こす発色反応を触媒する酵素の遺伝子である。これらはそれゆえに自動セルソーティングで選別することが可能である。
【0219】
ベクターで成功裏に形質転換されており、適当な抗生物質耐性遺伝子(例えばG418またはハイグロマイシン)を保持する微生物は、適当な抗生物質含有培地または栄養培地によって選択可能である。細胞の表面に存在するマーカータンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーによる選別に用いることができる。
【0220】
宿主生物と、該生物に適したベクターの組み合わせは、発現系を形成する。ベクターとは例えばプラスミド、ウイルスまたはファージであって、例えばRNAポリメラーゼ/プロモーター系を含むプラスミド、またはファージ8もしくは他の溶原性ファージもしくはトランスポゾンおよび/または他の有効な制御配列である。
【0221】
本発明はさらに、遺伝的に改変された生物を作製する方法に関するものであり、機能的に連結されたプロモーターと、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸とを含み、適宜にターミネーターをも含む核酸構築物を、出発生物のゲノムに、または染色体外に導入することを含む上記方法に関する。
【0222】
本発明はさらに、遺伝的に改変された生物に関するものであり、ここで該遺伝的改変は、
A 野生型生物が既にケトラーゼ活性を有する場合、野生型と比較してケトラーゼの活性を増大させる、および
B 野生型生物がケトラーゼ活性を持たない場合、野生型と比較してケトラーゼの活性を起こさせる、
ものであり、かつ、Aにおけるように増大させた、またはBにおけるように生起させた該ケトラーゼ活性が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2と少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼによりもたらされる上記生物に関する。
【0223】
上述のように、ケトラーゼ活性の増大または生起は、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現の増加または生起によりもたらされるものであり、該ケトラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含む。
【0224】
さらに好ましい実施形態においては、上述のように、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現の増加または生起は、ケトラーゼをコードする核酸の植物への導入により実現され、したがって好ましくは配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸の過剰発現またはトランスジェニック発現によって実現される。
【0225】
本発明はさらに、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードするトランスジェニック核酸を少なくとも1つ含む、遺伝的に改変された生物に関する。これは、出発生物がケトラーゼ活性を持たないかまたは内在性ケトラーゼを有し、かつトランスジェニックケトラーゼが過剰発現されている場合である。
【0226】
本発明はさらに、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする内在性核酸を少なくとも2つ含む、遺伝的に改変された生物に関する。これは、出発生物が内在性ケトラーゼを有し、かつその内在性ケトラーゼが過剰発現されている場合である。
【0227】
特に好ましい遺伝的に改変された生物は、上述のように、野生型生物と比較して増大したヒドロキシラーゼ活性および/またはβ-サイクラーゼ活性を付加的に有する。さらなる好ましい実施形態は、本発明の方法において上述されている。
【0228】
生物とは、本発明によれば好ましくは、野生型もしくは出発生物として、生来的に、または代謝経路の遺伝的補完および/または再調節によってカロテノイドを産生する能力がある生物、特にβ-カロテンおよび/またはゼアキサンチンおよび/またはネオキサンチンおよび/またはビオラキサンチンおよび/またはルテインを産生する能力がある生物を意味する。
【0229】
さらに好ましい生物は、野生型もしくは出発生物として既にヒドロキシラーゼ活性を有しており、したがって野生型生物もしくは出発生物としてゼアキサンチンを産生しうるものである。
【0230】
好ましい生物は、植物または、例えば細菌、酵母、藻類もしくは真菌のような微生物である。
【0231】
用いることのできる細菌は、以下の両方の細菌である:カロテノイド産生生物のカロテノイド生合成遺伝子の導入によってキサントフィルを合成する能力がある細菌、例えばエルビニア(Erwinia)由来のcrt遺伝子を含む、エシェリキア属(Escherichia)の細菌;および生来的にキサントフィルを合成する能力がある細菌、例えばエルビニア属(Erwinia)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、パラコッカス属(Paracoccus)、ネンジュモ属(Nostoc)またはシネコシスティス属(Synechocystis)のシアノバクテリア。
【0232】
好適な細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、Erwinia herbicola、Erwinia uredovora、Agrobacterium aurantiacum、Alcaligenes sp. PC-1、Flavobacterium sp. 株 R1534、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803、Paracoccus marcusiiまたはParacoccus carotinifaciensである。
【0233】
好適な酵母は、カンジダ属(Candida)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)またはファフィア属(Phaffia)である。特に好適な酵母は、Xanthophyllomyces dendrorhousおよびPhaffia rhodozymaである。
【0234】
好適な真菌は、アスペスギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、アシュビア属(Ashbya)、ネウロスポラ属(Neurospora)、ブラケスレア属(Blakeslea)、フィコマイセス属(Phycomyces)、フサリウム属(Fusarium)およびIndian Chem. Engr. Section B. Vol. 37, No. 1, 2 (1995)の15ページ、表6に記載されている他の真菌である。
【0235】
好適な藻類は緑色藻であって、例えばヘマトコッカス属(Haematococcus)、フェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaedactylum tricornatum)、ボルボックス属(Volvox)またはデュナリエラ属(Dunaliella)である。特に好適な藻類は、Haematococcus pluvialisまたはDunaliella bardawilである。
【0236】
本発明の方法を実施するために用いることができるさらなる微生物およびその生産は、例えばDE-A-199 16 140(参照によって本明細書に組み入れられる)において開示されている。
【0237】
特に好適な植物は、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、メギ科(Berberidaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、アサ科(Cannabaceae)、バラ科(Rosaceae)、マメ科(Fabaceae)、アマ科(Linaceae)、ブドウ科(Vitaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、サクラソウ科(Primulaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、ヒユ科(Amaranthaceae)、リンドウ科(Gentianaceae)、フクロソウ科(Geraniaceae)、スイカズラ科(Caprifoliaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ノウゼンハレン科(Tropaeolaceae)、ナス科(Solanaceae)、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、キク科(Asteraceae)、ユリ科(Liliaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、イネ科(Poaceae)、ラン科(Orchidaceae)、アオイ科(Malvaceae)、シキミ科(Illiaceae)またはシソ科(Lamiaceae)より選択される。
【0238】
非常に好適な植物は、マリーゴールド(Marigold)、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)、アカシア属(Acacia)、トリカブト属(Aconitum)、アドニス属(Adonis)、アルニカ(Arnica)、オダマキ属(Aquilegia)、アスター属(Aster)、レンゲ属(Astragalus)、ビグノニア属(Bignonia)、カレンデュラ属(Calendula)、リュウキンカ属(Caltha)、カンパニュラ属(Campanula)、カンナ属(Canna)、セントーレア属(Centaurea)、ケイランサス属(Cheiranthus)、キク属(Chrysanthemum)、ミカン属(Citrus)、クレピス属(Crepis)、サフラン属(Crocus)、カボチャ属(Curcurbita)、エニシダ属(Cytisus)、デロニア属(Delonia)、デルフィニウム属(Delphinium)、ナデシコ属(Dianthus)、ディモルフォセカ属(Dimorphotheca)、ドロニクム属(Doronicum)、ハナビシソウ属(Eschscholtzia)、レンギョウ属(Forsythia)、フレモンチア属(Fremontia)、ガザニア属(Gazania)、ゲルセミウム属(Gelsemium)、ヒトツバエニシダ属(Genista)、リンドウ属(Gentiana)、フクロソウ属(Geranium)、センボンヤリ属(Gerbera)、ダイコンソウ属(Geum)、グレビレア属(Grevillea)、ヘレニューム属(Helenium)、ヒマワリ属(Helianthus)、ミスミソウ属(Hepatica)、ハナウド属(Heracleum)、ハイビスカス属(Hibiscus)、ヘリオプシス属(Heliopsis)、オトギリソウ属(Hypericum)、エゾコウゾリナ属(Hypochoeris)、ツリフネソウ属(Impatiens)、アヤメ属(Iris)、ジャカランダ属(Jacaranda)、ヤマブキ属(Kerria)、キングサリ属(Laburnum)、ラチルス属(Lathyrus)、レオントドン属(Leontodon)、ユリ属(Lilium)、アマ属(Linum)、ハス(Lotus)、トマト属(Lycopersicon)、オカトラノオ属(Lysimachia)、マラチア(Maratia)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ミムラス属(Mimulus)、スイセン属(Narcissus)、マツヨイグサ属(Oenothera)、モクセイ属(Osmanthus)、ペチュニア属(Petunia)、カナメモチ属(Photinia)、ホオズキ属(Physalis)、フィテウマ属(Phyteuma)、キジムシロ属(Potentilla)、トキワサンザシ属(Pyracantha)、キンポウゲ属(Ranunculus)、ツツジ属(Rhododendron)、バラ属(Rosa)、オオハンゴンソウ属(Rudbeckia)、セネシオ属(Senecio)、シレネ属(Silene)、シルフィウム属(Silphium)、シナプシス属(Sinapsis)、ナナカマド属(Sorbus)、レダマ属(Spartium)、テコマ属(Tecoma)、トレニア属(Torenia)、バラモンジン属(Tragopogon)、キンバイソウ属(Trollius)、キンレンカ属(Tropaeolum)、チューリップ属(Tulipa)、フキタンポポ属(Tussilago)、ハリエニシダ属(Ulex)、スミレ属(Viola)またはヒャクニチソウ属(Zinnia)の群より選択され、特に好適なものはマリーゴールド(Marigold)、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)、トマト属(Lycopersicon)、バラ属(Rosa)、カレンデュラ属(Calendula)、ホオズキ属(Physalis)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ヒマワリ属(Helianthus)、キク属(Chrysanthemum)、アスター属(Aster)、チューリップ属(Tulipa)、スイセン属(Narcissus)、ペチュニア属(Petunia)、フクロソウ属(Geranium)、キンレンカ属(Tropaeolum)またはアドニス属(Adonis)の群より選択される。
【0239】
特に好ましい遺伝的に改変された植物は、マリーゴールド(Marigold)、アフリカンマリーゴールド(Tagetes erecta)、フレンチマリーゴールド(Tagetes patula)、トマト属(Lycopersicon)、バラ属(Rosa)、カレンデュラ属(Calendula)、ホオズキ属(Physalis)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ヒマワリ属(Helianthus)、キク属(Chrysanthemum)、アスター属(Aster)、チューリップ属(Tulipa)、スイセン属(Narcissus)、ペチュニア属(Petunia)、フクロソウ属(Geranium)、キンレンカ属(Tropaeolum)またはアドニス属(Adonis)の群より選択され、ここで該遺伝的に改変された植物は、ケトラーゼをコードするトランスジェニック核酸を少なくとも1つ含む。
【0240】
本発明はさらに、トランスジェニック植物、それらの繁殖材料、およびそれらの植物細胞、組織もしくは一部分、特にそれらの果実、種子、花および花弁に関する。
【0241】
遺伝的に改変された植物は、上述のように、ケトカロテノイド、とくにアスタキサンチンの生産に用いることができる。
【0242】
ヒトおよび動物が摂取可能な本発明の遺伝的に改変された生物、特に植物もしくは植物の一部(例えば、ケトカロテノイド、特にアスタキサンチンの含有量が増加した花弁)は、直接、またはそれ自体公知の加工の後、ヒトもしくは動物の食物、または栄養補助剤として用いることができる。
【0243】
遺伝的に改変された生物はまた、生物のケトカロテノイド含有抽出物の製造および/または動物およびヒトの栄養補助剤の製造に用いることができる。
【0244】
前記遺伝的に改変された生物は、野生型と比較して増加したケトカロテノイド含有量を有する。
【0245】
増加したケトカロテノイド含有量とは、通常、増加した総ケトカロテノイド含有量を意味する。
【0246】
しかしながら、増加したケトカロテノイド含有量はまた、特には所望のケトカロテノイドの変化した含有量を意味し、総ケトカロテノイド含有量は必ずしも増加していなくてもよい。
【0247】
特に好ましい実施形態においては、本発明の遺伝的に改変された植物は、野生型と比較して増加したアスタキサンチン含有量を有する。
【0248】
増加した含有量とはまた、この場合、生起されたケトカロテノイド(例えばアスタキサンチン)含有量を意味する。
【0249】
本発明はさらに、新規なケトラーゼおよびそれをコードする新規な核酸に関する。
【0250】
本発明は、特には配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配列(ただし、配列番号2のアミノ酸配列は存在しない)、を含むケトラーゼに関する。配列番号2の配列は、上述したように、データベースにおいて推定上のタンパク質であるとの注釈がつけられている。
【0251】
本発明はさらに、配列番号4のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有する配列を含むケトラーゼに関する。配列番号4の配列は、上述したように、データベースにおいて注釈がつけられていない。
【0252】
本発明はさらに、上記のタンパク質をコードする核酸に関する。ただし、前記核酸は配列番号1または3の配列を含まないものである。
【0253】
驚くべきことに、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列、を含むタンパク質は、ケトラーゼとしての特性を有することが見いだされた。
【0254】
それゆえ本発明はまた、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列、を含むタンパク質の、ケトラーゼとしての使用に関する。
【0255】
また驚くべきことに、配列番号4のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号4に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列、を含むタンパク質は、ケトラーゼとしての特性を有することが見いだされた。
【0256】
それゆえ本発明はまた、配列番号4のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号4に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列、を含むタンパク質の、ケトラーゼとしての使用に関する。
【0257】
先行技術の方法と比較して、本発明の方法は大量のケトカロテノイド、特にアスタキサンチンを提供することができる。
【0258】
本発明はここで、以下の実施例により説明されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0259】
藍藻Nostoc punctiforme PCC73102 ORF 38, コンティグ501 (配列番号1)およびORF 148, コンティグ502 (配列番号3)由来のケトラーゼの完全な一次配列をコードするcDNAの増幅
Nostoc punctiformeの細胞を、ライソザイム(2mg/ml)を用いて破壊し、ゲノムDNAを、GenElute 植物ゲノムDNAキット (Sigma)を用いて、製造業者の情報にしたがって単離した。
【0260】
その後、Nostoc punctiformeのゲノムDNAから、ORF148(762bp)を増幅した。増幅は、以下のプライマー:148-Start (配列番号9;5' ATG ATC CAG TTA GAA CAA CCA C -3')および148-End (配列番号10;5' CTA TTT TGC TTT GTA AAT TTC TGG -3')を用いて、アニーリング温度60℃で30サイクルにわたっておこなった。
【0261】
ORF38(789bp)は以下のプライマー:38-Start (配列番号11;5' ATG AAT TTT TGT GAT AAA CCA GTT AG -3')および38-End (配列番号12;5' ACG AAT TGG TTA CTG AAT TGT TG -3')を用いて増幅した。
【0262】
PCR断片は、XcmI切断したベクターpMON 38201 (Borokov, A.Y. および Rivkin, M.I. (1997)「PCR産物の直接クローニングのためのXcmI含有ベクター」(XcmI containing vector for direct cloning of pcr products.)BioTech. 22, 812-814)にサブクローニングした。
【0263】
陽性クローンは、ライゲーション産物でXL1 blue MRF1’を形質転換した後、ブルー-ホワイトスクリーニングを行うことにより選別した。PCRアンプリコンがT突出ベクター(T overhang vector)にクローニングされているかを確認する目的で、単離されたプラスミドDNAをHindIIIで切断した。選択されたクローンの塩基配列決定により、pMONT-148中のORF148、およびpMONT-38中のORF38の方向が、ベクターの読まれる方向と逆であることが示された。該T突出ベクターは、ポリリンカー内に存在するHindIII切断サイトだけでなく、ポリリンカーの挿入の際に生じた2つ目のHindIII切断サイトも有しているので、HindIIIによってインサートを切り出すことが可能であった。
【実施例2】
【0264】
宿主生物内でNostoc punctiforme PCC73102のORF148およびORF38を発現させるための発現ベクターの作製
HindIIIによるpMONT148およびpMONT38の制限切断後、結果として生じたDNAインサートを、同様にHindIIIで切断し、脱リン酸化したpPQE32ベクター(Qiagen, Hilden;以下の文献に記載されるように改変した:Verdoes, J., Krubasik, P., Sandmann, G. & van Ooyen, M. (1999)「Xanthophyllomyces dendrorhous由来の新規なタイプのカロテノイド生合成遺伝子の単離および機能的特性決定」(Isolation and functional characterisation of a novel type of carotenoid biosynthetic gene from Xanthophyllomyces dendrorhous.)Molec. Gen. Genet. 262, 453-461)にクローニングした。
【0265】
XL1MRF1’の形質転換後に得られたクローンを、プライマーQEF (5' CCC TTT CCT CTT CTC -3')および148-endまたは38-endを用いたチェックPCRによって調べた。当該クローンの塩基配列決定によって、ORF148およびORF38はpPQE32ベクターにインフレームでクローニングされていることが示された。この方法で得られたプラスミドを、図2Bおよび2Cに描いてある。図2はpPQE32 (A)から出発するpPQE32-ORF 148 (B)およびpPQE32-ORF 38 (C)の構築を示している。
【実施例3】
【0266】
β-カロテンおよびゼアキサンチンを産生する大腸菌株におけるNostoc punctiforme PCC73102のケトラーゼORF148およびORF38の発現およびカロテノイドプロファイルの分析
3.1 β-カロテン産生大腸菌株におけるNostoc punctiforme PCC73102のケトラーゼORF148およびORF38の発現
ORF148およびORF38により形成された遺伝子産物の機能的特性決定のために、構築物pPQE32-148およびpPQE32-38でβ-カロテン産生大腸菌形質転換体JM101/pACCAR16ΔcrtXを形質転換した(Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T. Ohtani, T. & Miki, W. (1995)「海洋細菌カロテノイド生合成遺伝子クラスターの構造および機能解析ならびに遺伝子レベルで提案されたアスタキサンチン生合成経路」(Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level.)J. Bacteriol. 22, 6575-6584)。
【0267】
形質転換体は、LB培地を含む50ml培養物中で、28℃、暗条件にて16〜48時間培養した。カロテノイドをメタノールで抽出し、50%エーテル/石油エーテルを用いて振盪することにより得られた抽出物を、HPLCを用いて分画した(カラム HypurityC18、移動相:アセトニトリル/メタノール/2-プロパノール85:10:5、温度32℃)。スペクトルは、ダイオードアレイ検出器を用いてオンラインで記録し、カロテノイドは、その吸収極大に基づき、標準品との比較によって同定した。
【0268】
pPQE32-38について図3Aに、pPQE32-148について図3Bに示したように、両方の抽出物において、初期の基質であるβ-カロテンに加えて、ケトカロテノイドであるエキネノンおよびカンタキサンチンを検出することができた(pPQE32-38およびpPQE32-148を含まない対照では、β-カロテンは見出されたが、ケトカロテノイドはまったく見出されなかった)。
【0269】
総カロテノイド含有量における、産生されたカンタキサンチン(ジケト化合物)の割合は、pPQE32-148による補完においては81%、pPQE32-38による補完においては40%であった。エキネノン(モノケト化合物)の割合は、どちらの補完においても約4%であった。
【0270】
3.2 ゼアキサンチン産生大腸菌株におけるNostoc punctiforme PCC73102のケトラーゼORF148およびORF38の発現
ORF148およびORF38によりコードされるケトラーゼがケトカロテノイドであるアスタキサンチンをどの程度合成できるのかを調べる目的で、pPQE32-38(図3C)およびpPQE32-148(図3D)でゼアキサンチン産生大腸菌形質転換体JM101/pACCAR25ΔcrtXを形質転換した(Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T. Ohtani, T. & Miki, W. (1995)「海洋細菌カロテノイド生合成遺伝子クラスターの構造および機能解析ならびに遺伝子レベルで提案されたアスタキサンチン生合成経路」(Structure and functional analysis of a marine bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level.)J. Bacteriol. 22, 6575-6584)。
【0271】
形質転換体の培養、カロテノイド抽出およびHPLC分離は上記3.1に記載したように行った。pPQE32-38による補完から得られた抽出物においては、初期の基質であるゼアキサンチンおよびβ-カロテンのみが検出可能であって、それぞれ総カロテノイド含有量の85%および5%であったが、pPQE32-148による補完においては、主にケトカロテノイドであるエキネノン、カンタキサンチンおよびアスタキサンチンが検出可能であった。総カロテノイド含有量におけるアスタキサンチンの割合は50%であった。アスタキサンチン合成の中間体であるエキネノンおよびカンタキサンチンは、それぞれ総カロテノイドの12%および8%に相当していた。β-カロテンは約30%であった。
【0272】
図3は、pPQE32-38(A)またはpPQE32-148(B)で共形質転換された、β-カロテンバックグラウンドを有する大腸菌において補完から得られたカロテノイドのHPLC分離、およびpPQE32-38(C)またはpPQE32-148(D)で共形質転換された、ゼアキサンチンバックグラウンドを有する大腸菌において補完から得られたカロテノイドのHPLC分離を示している。
【0273】
提示されているカロテノイドは、比較物質との共クロマトグラフィーおよびそれらのスペクトルにより同定されたものである:
1 カンタキサンチン
2 エキネノン
3 β-カロテン
4 ゼアキサンチン
5 アスタキサンチン
6 β-クリプトキサンチン
7 ニューロスポリン(neurosporin)
1'、3'、4'および5'は対応するシス異性体である。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】Nostoc punctiformeのORF 38(配列番号1)およびORF 148(配列番号3)の塩基配列を示している。
【図2】pPQE32 (A)の部分配列およびpPQE32-ORF 148 (B)およびpPQE32-ORF 38 (C)の構造を示している。
【図3】pPQE32-38(A)またはpPQE32-148(B)で共形質転換された、β-カロテンバックグラウンドを有する大腸菌において補完から得られたカロテノイドのHPLC分離、およびpPQE32-38(C)またはpPQE32-148(D)で共形質転換された、ゼアキサンチンバックグラウンドを有する大腸菌において補完から得られたカロテノイドのHPLC分離を示す。
【配列表】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝的に改変された生物を培養することによりケトカロテノイドを調製する方法であって、該遺伝的に改変された生物は野生型と比較して改変されたケトラーゼ活性を有しており、該改変されたケトラーゼ活性は、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼによりもたらされるものである、上記方法。
【請求項2】
野生型として既にケトラーゼ活性を有する生物を使用し、前記遺伝的改変が、野生型と比較してケトラーゼ活性の増大をもたらすものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケトラーゼ活性が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって野生型と比較して増大される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子発現の増加が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸を該生物に導入することによるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
野生型としてケトラーゼ活性を持たない生物を使用し、前記遺伝的改変が野生型と比較してケトラーゼ活性を発生させるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
遺伝子導入により、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼを発現している、遺伝的に改変された生物を使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子発現が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸を該生物に導入することにより起こるものである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
配列番号1の配列を含む核酸が導入される、請求項5または7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物がさらに、ヒドロキシラーゼ活性およびβ-サイクラーゼ活性の群より選択された少なくとも1つの活性について野生型と比較して増大した活性を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記活性をさらに増大させるために、ヒドロキシラーゼをコードする核酸およびβ-サイクラーゼをコードする核酸の群より選択された少なくとも1つの核酸の遺伝子発現が、野生型と比較して増加されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子発現の増加が、ヒドロキシラーゼをコードする核酸およびβ-サイクラーゼをコードする核酸の群より選択された少なくとも1つの核酸を、該生物に導入することによるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒドロキシラーゼをコードする核酸として、配列番号6のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号6に対して少なくとも20%の同一性を有する配列を含むヒドロキシラーゼをコードする核酸が導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
配列番号5の配列を含む核酸が導入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
β-サイクラーゼをコードする核酸として、配列番号8のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号8に対して少なくとも20%の同一性を有する配列を含むβ-サイクラーゼをコードする核酸が導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
配列番号7を含む核酸が導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝的に改変された生物を培養後に回収し、続いて該生物からケトカロテノイドを単離する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
出発生物として、生来的に、または代謝経路の遺伝的補完もしくは再調節によって、カロテノイドを産生する能力がある生物を使用する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
生物として微生物または植物を使用する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
細菌、酵母、藻類、または真菌が微生物として用いられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、エシェリキア属、エルビニア属、アグロバクテリウム属、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属、パラコッカス属、ネンジュモ属、シネコシスティス属のシアノバクテリア、カンジダ属、サッカロマイセス属、ハンセヌラ属、ファフィア属、ピキア属、アスペスギルス属、トリコデルマ属、アシュビア属、ネウロスポラ属、ブラケスレア属、フィコマイセス属、フサリウム属、ヘマトコッカス属、フェオダクチルム・トリコルヌーツム、ボルボックス属またはデュナリエラ属の群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
生物として植物が用いられる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
用いられる植物が、キンポウゲ科、メギ科、ケシ科、アサ科、バラ科、マメ科、アマ科、ブドウ科、アブラナ科、ウリ科、サクラソウ科、ナデシコ科、ヒユ科、リンドウ科、フクロソウ科、スイカズラ科、モクセイ科、ノウゼンハレン科、ナス科、ゴマノハグサ科、キク科、ユリ科、ヒガンバナ科、イネ科、ラン科、アオイ科、シキミ科またはシソ科より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
用いられる植物が、マリーゴールド、アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールド、アカシア属、トリカブト属、アドニス属、アルニカ、オダマキ属、アスター属、レンゲ属、ビグノニア属、カレンデュラ属、リュウキンカ属、カンパニュラ属、カンナ属、セントーレア属、ケイランサス属、キク属、ミカン属、クレピス属、サフラン属、カボチャ属、エニシダ属、デロニア属、デルフィニウム属、ナデシコ属、ディモルフォセカ属、ドロニクム属、ハナビシソウ属、レンギョウ属、フレモンチア属、ガザニア属、ゲルセミウム属、ヒトツバエニシダ属、リンドウ属、フクロソウ属、センボンヤリ属、ダイコンソウ属、グレビレア属、ヘレニューム属、ヒマワリ属、ミスミソウ属、ハナウド属、ハイビスカス属、ヘリオプシス属、オトギリソウ属、エゾコウゾリナ属、ツリフネソウ属、アヤメ属、ジャカランダ属、ヤマブキ属、キングサリ属、ラチルス属、レオントドン属、ユリ属、アマ属、ハス、トマト属、オカトラノオ属、マラチア、ウマゴヤシ属、ミムラス属、スイセン属、マツヨイグサ属、モクセイ属、ペチュニア属、カナメモチ属、ホオズキ属、フィテウマ属、キジムシロ属、トキワサンザシ属、キンポウゲ属、ツツジ属、バラ属、オオハンゴンソウ属、セネシオ属、シレネ属、シルフィウム属、シナプシス属、ナナカマド属、レダマ属、テコマ属、トレニア属、バラモンジン属、キンバイソウ属、キンレンカ属、チューリップ属、フキタンポポ属、ハリエニシダ属、スミレ属またはヒャクニチソウ属より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ケトカロテノイドが、アスタキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、3-ヒドロキシエキネノン、3'-ヒドロキシエキネノン、アドニルビンおよびアドニキサンチンより選択される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
遺伝的に改変された生物であって、該遺伝的改変が
A. 野生型生物が既にケトラーゼ活性を有する場合、野生型と比較してケトラーゼの活性を増大させる、または
B. 野生型生物がケトラーゼ活性を持たない場合、野生型と比較してケトラーゼの活性を発生させる、
ものであり、かつ、Aにおけるように増大させた、またはBにおけるように発生させた該ケトラーゼ活性が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼによりもたらされる、上記生物。
【請求項26】
前記ケトラーゼ活性の増大または発生が、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加または生起させることによってもたらされるものである、請求項25に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項27】
前記遺伝子発現を増加または生起させるために、配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする核酸が、該生物に導入されている、請求項26に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項28】
配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする遺伝子導入核酸を少なくとも1つ含む、遺伝的に改変された生物。
【請求項29】
配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも42%の同一性を有する配列を含むケトラーゼをコードする内在性の核酸を少なくとも2つ含む、遺伝的に改変された生物。
【請求項30】
遺伝的改変により、さらに、ヒドロキシラーゼ活性およびβ-サイクラーゼ活性の群より選択された少なくとも1つの活性が野生型と比較して増大している、請求項25〜29のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項31】
出発生物として、生来的に、もしくは遺伝的補足によって、カロテノイドを産生する能力がある、請求項25〜30のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項32】
微生物または植物の群より選択された、請求項25〜31のいずれか1項に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項33】
前記微生物が、細菌、酵母、藻類、または真菌の群より選択された、請求項32に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項34】
前記微生物が、エシェリキア属、エルビニア属、アグロバクテリウム属、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属、パラコッカス属、ネンジュモ属、シネコシスティス属のシアノバクテリア、カンジダ属、サッカロマイセス属、ハンセヌラ属、ピキア属、アスペスギルス属、トリコデルマ属、アシュビア属、ネウロスポラ属、ブラケスレア属、フィコマイセス属、フサリウム属、ヘマトコッカス属、フェオダクチルム・トリコルヌーツム、ボルボックス属またはデュナリエラ属の群より選択される、請求項33に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項35】
前記植物が、キンポウゲ科、メギ科、ケシ科、アサ科、バラ科、マメ科、アマ科、ブドウ科、アブラナ科、ウリ科、サクラソウ科、ナデシコ科、ヒユ科、リンドウ科、フクロソウ科、スイカズラ科、モクセイ科、ノウゼンハレン科、ナス科、ゴマノハグサ科、キク科、ユリ科、ヒガンバナ科、イネ科、ラン科、アオイ科、シキミ科またはシソ科より選択される、請求項32に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項36】
前記植物が、マリーゴールド、アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールド、アカシア属、トリカブト属、アドニス属、アルニカ、オダマキ属、アスター属、レンゲ属、ビグノニア属、カレンデュラ属、リュウキンカ属、カンパニュラ属、カンナ属、セントーレア属、ケイランサス属、キク属、ミカン属、クレピス属、サフラン属、カボチャ属、エニシダ属、デロニア属、デルフィニウム属、ナデシコ属、ディモルフォセカ属、ドロニクム属、ハナビシソウ属、レンギョウ属、フレモンチア属、ガザニア属、ゲルセミウム属、ヒトツバエニシダ属、リンドウ属、フクロソウ属、センボンヤリ属、ダイコンソウ属、グレビレア属、ヘレニューム属、ヒマワリ属、ミスミソウ属、ハナウド属、ハイビスカス属、ヘリオプシス属、オトギリソウ属、エゾコウゾリナ属、ツリフネソウ属、アヤメ属、ジャカランダ属、ヤマブキ属、キングサリ属、ラチルス属、レオントドン属、ユリ属、アマ属、ハス、トマト属、オカトラノオ属、マラチア、ウマゴヤシ属、ミムラス属、スイセン属、マツヨイグサ属、モクセイ属、ペチュニア属、カナメモチ属、ホオズキ属、フィテウマ属、キジムシロ属、トキワサンザシ属、キンポウゲ属、ツツジ属、バラ属、オオハンゴンソウ属、セネシオ属、シレネ属、シルフィウム属、シナプシス属、ナナカマド属、レダマ属、テコマ属、トレニア属、バラモンジン属、キンバイソウ属、キンレンカ属、チューリップ属、フキタンポポ属、ハリエニシダ属、スミレ属またはヒャクニチソウ属より選択される、請求項35に記載の遺伝的に改変された生物。
【請求項37】
動物またはヒトの食物としての、請求項25〜36に記載の遺伝的に改変された生物の使用。
【請求項38】
ケトカロテノイド含有抽出物を製造するための、または動物もしくはヒトの栄養補助剤を製造するための、請求項25〜36に記載の遺伝的に改変された生物の使用。
【請求項39】
配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつ配列番号2のアミノ酸配列が存在しないという条件においてアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有する配列を含むケトラーゼ。
【請求項40】
配列番号4のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有する配列を含むケトラーゼ。
【請求項41】
配列番号1および配列番号3の配列が存在しないという条件での、請求項39または40に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項42】
配列番号2のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列を含むタンパク質の、ケトラーゼとしての使用。
【請求項43】
配列番号4のアミノ酸配列、または該配列からアミノ酸の置換、挿入、欠失によって誘導され、かつアミノ酸レベルで配列番号4に対して少なくとも65%の同一性を有して、ケトラーゼの特性を有する配列を含むタンパク質の、ケトラーゼとしての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−512914(P2006−512914A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566030(P2004−566030)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014876
【国際公開番号】WO2004/063366
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】