説明

避難用梯子装置

【課題】安全性に優れ、展開動作が迅速な避難用梯子装置の提供を目的とする。
【解決手段】建物壁面1に連結されて収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において建物壁面1からほぼ直角に突出する梯子部2と、
前記梯子部2の建物壁面1反対端部から延設されて梯子部2の変化に伴って収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において避難者の建物壁面1および梯子部2から離れる方向への移動を規制する転落防止体3とを有して避難用梯子装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は避難用梯子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、避難時に展開されて使用される避難用梯子装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、避難用梯子装置は、壁面に連結される折畳梯子と、該折畳梯子に連結される折畳補助梯子とを有し、折畳梯子と折畳補助梯子を直角に配置して構成される。上記折畳梯子は固定縦杆と可動縦杆に横桟を枢着して形成されて横桟の回転により固定縦杆が連結される建物壁面に沿うように収納され、上記折畳補助梯子は、折畳梯子の可動縦杆と可動補助縦杆に補助横桟を枢着して形成され、補助横桟の回転により可動縦杆、すなわち壁面に沿うように収納される。
【0003】
また、上記収納状態は、固定縦杆に形成される掛止片に可動縦杆に形成される掛爪を掛け合わせることにより維持され、展開操作は、上記掛爪と掛止片の掛け合いを外した後、可動縦杆や可動補助縦杆を手で引き出すことにより行われる。展開状態において、折畳梯子は壁面からほぼ直角に突出し、折畳補助梯子は壁面に対してほぼ平行になる。
【特許文献1】実開昭51-115796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては安全性が低いという欠点がある。すなわち、横桟を把持したときの避難者の左右方向は建物壁面と折畳補助梯子で塞がれるものの、背面方向が空いているために、避難に焦って手などを滑らせた際に背面方向から落下してしまうおそれがある。
【0005】
また、上記従来例は、掛爪と掛止片の掛け合いを外した後、可動縦杆の引き出し操作をした上で、さらに可動補助縦杆の引き出し操作をしなければならないために、展開動作に手間がかかるという欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、安全性に優れ、展開動作が迅速な避難用梯子装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
建物壁面1に連結されて収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において建物壁面1からほぼ直角に突出する梯子部2と、
前記梯子部2の建物壁面1反対端部から延設されて梯子部2の変化に伴って収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において避難者の建物壁面1および梯子部2から離れる方向への移動を規制する転落防止体3とを有する避難用梯子装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、展開姿勢において建物壁面1からほぼ直角に突出する梯子部2から転落防止体3を延設させ、避難者の建物壁面1および梯子部2から離れる方向への移動を規制することにより、避難時における梯子部2からの滑落を防止することができ、安全性を高めることができる。また、転落防止体3を収納姿勢から展開姿勢へと変化可能に形成することにより、収納効率を高めることができ、上記変化を梯子部2の収納姿勢から展開姿勢への変化に伴わせることにより、単一動作で収納状態の梯子部2と転落防止体3が展開されるために展開動作を迅速にすることができる。
【0009】
梯子部2は、例えば梯子縦杆4に横桟5を回転自在に連結し、建物壁面1に対して横桟5を水平、垂直回転させるなどすれば、構造を簡潔にできる上に収納効率を高めることも可能であり、この場合において、梯子縦杆4に横桟5を垂直回転自在に連結すれば、収納スペースをよりコンパクトにすることが可能となる。また、転落防止体3を梯子部2から延設することにより、梯子部2の展開姿勢と収納姿勢の変化を利用して転落防止体3を収納姿勢にできるため収納効率を容易に高めることができる。
【0010】
さらに、転落防止体3は、建物壁面1からほぼ直角に突出する梯子部2における避難者の建物壁面1および梯子部2から離れる方向への移動を規制するために、より具体的には避難者が梯子部2から離れる方向である背面側への移動を規制するために、建物壁面1に対してほぼ直角に突出して形成される必要があるが、梯子部2の展開姿勢と収納姿勢の変化を利用することにより収納効率を比較的容易に高めることが可能となる。この転落防止体3は、例えば上述した二方向への移動を規制するために、L字形状の板や柵などにより形成したり、あるいは上述した従来例における可動縦杆のように回転軸として作用する部材を介してさらに折り畳み可能に形成することも可能である。また、上述したように梯子縦杆4に横桟5を垂直回転自在に連結して梯子部2を形成する場合には、横桟5の回転動作を利用することで、転落防止体3の収納姿勢から展開姿勢への姿勢変化をカム機構により簡単に構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、安全性に優れ、展開動作が迅速な避難用梯子装置を提供することができるために、災害による被害を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1および図2に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において、避難用梯子装置は、比較的低層なビル等の建物に設置され、建物壁面1には、避難用開口となる引き違い戸が装着された窓部11が各階に対応して形成される。
【0013】
図1に示すように、避難用梯子装置は、縦方向に長寸の固定縦杆(梯子縦杆4)に所定ピッチで横桟5を連結して形成される梯子部2を有する。固定縦杆4は、避難対象階における最上階の窓部11から地面付近程度までの長さを有し、例えばアルミニウム材を押し出し加工して形成される。この固定縦杆4は、建物壁面1に接する取り付け板から一対の突片を立ち上げて形成され、取り付け板を貫通して建物壁面1に打ち込まれる図示しないアンカーボルト等により建物壁面1に固定される。
【0014】
横桟5は、断面矩形のアルミニウムからなる角パイプで、上述した突片の間に一端部が挿入される。この横桟5の一端部と突片とは適宜のピン等を介して垂直回転自在に連結され、したがって横桟5は建物壁面1に対して直交面内を回転する。また、横桟5の他端部は、アルミニウム押し出し加工等により上述した固定縦杆4とほぼ同寸に形成される可動縦杆12に対して垂直回転自在に連結され、したがって図2に点線で示すように横桟5を縦姿勢にすることにより、固定縦杆4上に可動縦杆12を重ね合わせるようにして建物壁面1に沿って梯子部2を収納することができ、図1に示すように横桟5を水平姿勢にすることにより、可動縦杆12を建物壁面1から垂直方向に飛び出させて梯子部2を展開することができる。
【0015】
なお、上記可動縦杆12は断面ほぼコ字状に形成され、横桟5の上記他端部が凹部内に挿入されてピン等の適宜の軸体を介して垂直回転自在に連結される。また、上記梯子部2の収納姿勢は、固定縦杆4と可動縦杆12を重ね合わせた位置で拘束する図外のストッパにより維持可能にされ、このストッパは各階の窓部11近傍に配置される図外の操作部により解除操作可能に形成される。
【0016】
また、避難時の安全性を高めるために、以上の梯子部2には落下防止柵(転落防止体3)が連結される。落下防止柵3は高所からの落下事故を防止するもので、梯子部2の高所に対応する部位、例えば図1等に示すように展開姿勢において二階以上に対応する部位に保護ロッド6の複数を並べることにより形成される。
【0017】
保護ロッド6は、長尺部6aと短尺部6bを備えたL字形状の棒状体で、例えばアルミニウムの棒材などを折曲して形成される。上記長尺部6aは梯子部2を利用する避難者の建物反端側を塞ぐためのもので、一端部が梯子部2に連結されて避難者の背中までの長さよりもやや長い程度の長さを有する。また、長尺部6aの梯子部2反対端を基端にして長尺部6aに対して直交方向に延びる短尺部6bは、梯子部2を利用する避難者の背面側を塞ぎ、横桟5よりやや短い程度の長さにすることで、窓部11から梯子部2への移乗を容易にする。
【0018】
以上の落下防止柵3と梯子部2との連結は、長尺部6aの一端部を梯子部2の建物壁面1反対端部に溶接等の適宜手段により固定することによってなされ、図3(a)に示すように可動縦杆12を貫通して横桟5の建物壁面1反対端部に長尺部6aを直交するように固定することにより、長尺部6aが可動縦杆12と横桟5を垂直回転自在に連結する上述した軸体として機能する。また、固定状態において長尺部6aは建物壁面1に対してほぼ横桟5の長さ寸法を隔てて平行に延びるが、長尺部6aに対して直交する短尺部6bは、長尺部6aを横桟5に固定する際に横桟5と平行になるように調節することにより、横桟5とともに回転して梯子部2の展開姿勢において水平姿勢、すなわち建物壁面1に対してほぼ直交し、収納姿勢において垂直姿勢をとって建物壁面1に平行になる。
【0019】
したがってこの実施の形態において、避難用梯子装置が収納状態の場合には、図2に示すように可動縦杆12が固定縦杆4に対して建物壁面1正面側から重なり、さらに、保護ロッド6の短尺部6bも縦姿勢となって建物壁面1にやや沿うような状態となる。この状態において、避難用梯子装置は、建物壁面1からの突出寸法が小さく、邪魔になることはない。また、梯子部2は、横桟5が固定縦杆4と可動縦杆12の間に収容され、窓部11の一側方に折り畳まれて棒状になり、さらに、落下防止柵3は梯子部2の高所に対応する部位にのみ設けられるために、地上から避難用梯子装置を伝って登るなどして上層階の窓部11から不法に侵入されることもない。
【0020】
この状態から火災等が発生した場合には、各階から上記操作部を操作してストッパを解除すると、可動縦杆12は自重により横桟5の垂直回転を伴って建物壁面1から突出するように斜め下方に移動し、横桟5が水平姿勢に達したときにその下端が地面に接して梯子部2の展開動作が完了する。また、この梯子部2の展開動作に伴い、保護ロッド6は横桟5とともに回転し、短尺部6bは縦姿勢から垂直回転して水平姿勢に移行する。このとき短尺部6bの自由端は展開動作に伴って建物壁面1から離れるように斜め下方に弧を描くように移動するために、窓部11に位置する避難者に衝接してしまうことはない。
【0021】
展開状態において、梯子部2は、窓部11の側縁近傍において建物壁面1に対してほぼ直角に横桟5を突出させており、避難者は、窓部11から身を乗り出すようにして横桟5を掴み、そのまま横桟5を伝って建物壁面1に横向きに、言い換えれば体の左側を向けるようにして地面まで降下することができる。また、いずれかの階で操作部が操作されれば梯子部2が展開し、以後は設置対象階の全ての避難者が展開した梯子部2を利用して同時に避難を進めることが可能となる上に、避難者の荷重は、建物壁面1に固定された固定縦杆4、および下端が地面に接する可動縦杆12により負担されるために、建物壁面1に充分な荷重負担が期待できない老朽化した建物に設置する場合においても、ぐらつきの少ない安全な避難が可能となる。
【0022】
また、高所においては、避難者は、建物壁面1反対側を保護ロッド6の長尺部6aに、背面側を短尺部6bに塞がれているために、安心感を得ることができ、横桟5の握り損ねを引き起こすような焦りも小さくなる上に、万が一横桟5から手を滑らせるようなことがあった場合にも、保護ロッド6や建物壁面1により周囲をほぼ包囲されているために姿勢を大きく崩すようなことはなく、横桟5を掴み直すことが可能となる。さらに、保護ロッド6を横桟5よりも小径の棒状体にすることで、避難者が誤って保護ロッド6を伝って降下することを防止することができる。加えて、図1等に示すように、複数の保護ロッド6、6・・の長尺部6a、6a・・と短尺部6b、6b・・の境界部をリンク体13によって連結しておくことにより、落下防止柵3の強度を高めることができ、バランスを崩した避難者をしっかりと梯子部2近傍に促すことが可能となる。
【0023】
なお、以上においては、保護ロッド6を横桟5に溶接等によって固定することにより梯子部2に落下防止柵3を形成する場合を示したが、図3(b)に示すように、パイプ材をほぼJ字状に折り曲げるなどして横桟5と保護ロッド6を兼ねるように構成することも可能である。この場合において、同図に示すように丸パイプや丸棒などの断面円形の材料を用いることにより、横桟5の可動縦杆12に対する垂直回転移動を確保することができる。また、このように保護ロッド6の強度が高い場合には、上述したリンク体13を省いて落下防止柵3を構成することが可能である。
【0024】
さらに、保護ロッド6は上述したようにカム機構などを介して横桟5の回転に連動させることも可能であり、このように保護ロッド6を横桟5に一体に形成しない場合においても、上述したリンク体13を用いることによりその回転動作を安定させることができる。加えて、保護ロッド先端を回転によって建物壁面1に係止、連結させて避難用梯子装置の安定性を高めたり、あるいは、建物壁面1に固定縦杆4を強固に固定できる場合には、適宜の支持部材を用いて横桟を水平姿勢で支え、可動縦杆12の下端を地面から浮かせるようにして地面上の不測の障害物を避けるように梯子部2を展開可能にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用された避難用梯子装置の展開状態を示す図で、全体斜視図である。
【図2】避難用梯子装置の収納状態を示す図で、全体斜視図である。
【図3】保護ロッドの基端部を説明する図で、(a)は図1に示す避難用梯子装置における要部を示す図、(b)は変形例である。
【符号の説明】
【0026】
1 建物壁面
2 梯子部
3 転落防止体
4 梯子縦杆
5 横桟
6 保護ロッド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁面に連結されて収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において建物壁面からほぼ直角に突出する梯子部と、
前記梯子部の建物壁面反対端部から延設されて梯子部の変化に伴って収納姿勢から展開姿勢へと変わり、展開姿勢において避難者の建物壁面および梯子部から離れる方向への移動を規制する転落防止体とを有する避難用梯子装置。
【請求項2】
前記梯子部は梯子縦杆に横桟を垂直回転自在に連結して建物壁面に沿う収納姿勢から前記展開姿勢へと変化可能に形成され、
前記転落防止体は、L字状の保護ロッドを横桟から延設させて形成され、建物壁面に沿う収納姿勢から回転により前記展開姿勢へと変わる請求項1記載の避難用梯子装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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