説明

避雷器

【課題】 避雷器の爆発的な破壊による破片の飛散や外部アークの発生で碍子が損傷することを未然に防止する。
【解決手段】 碍子11と対向配置され、非直線性の電流電圧特性を有する限流素子23を絶縁外被体25で被覆した避雷器12であって、限流素子23と絶縁外被体25との間に、碍子11と対向する遮蔽板28を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は避雷器に関し、詳しくは、雷サージ等による異常電圧の発生時、送配電線の周辺機器を雷サージ等から保護する避雷器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高圧や特別高圧の送配電線に設けられた碍子付近への落雷時、雷サージ等による異常電圧が発生した際、送配電線の周辺機器を雷サージ等から保護するため、図6に示すように碍子5の接地側と電線側との間に避雷器1を取り付けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この避雷器1は、サージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子を内蔵した構造を具備する。避雷器1は、電線側端子となる金属製の上部端子電極2と接地側端子となる金属製の下部端子電極3との間に前述の限流素子を電気的かつ機械的に接続し、それら端子電極2,3および限流素子の外周面に、弾性を有するポリマーやEPDM等の絶縁外被体4を被着した構造を有する。
【0004】
前述の構成からなる避雷器1は、電柱の上部に腕金を介して取り付けられた碍子5に付設される。つまり、電柱の腕金は接地されており、その腕金と電気的に接続された碍子5の接地側取付部6に避雷器1の下部端子電極3をねじ止め等により電気的かつ機械的に接続する。これにより起立保持された避雷器1の上部端子電極2には、下部放電電極9が電気的かつ機械的に接続され、送配電線が取り付けられた碍子5の電線側取付部7には、上部放電電極8が電気的かつ機械的に接続され、下部放電電極9と上部放電電極8のそれぞれの先端部は、所定のギャップ長を有する放電ギャップ10が形成されるように対向配置される。
【0005】
この避雷器1では、雷サージによる異常電圧が発生すると、雷サージによる雷電流が上部放電電極8と下部放電電極9との間の放電ギャップ10での放電により限流素子を介して大地へ流れる。このとき、雷サージによる異常電圧に対して限流素子が低抵抗値となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子が高抵抗値となって通常の対地電圧を遮断する。この弁作用により送配電線の周辺機器を雷サージ等から保護している。
【特許文献1】特開平10−247430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、避雷器1の性能を超える直撃雷などの異常電圧が発生すると、限流素子が故障することがあり、その場合、上部端子電極2と下部端子電極3との間で内部アークが発生し、そのアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇する。内部圧力が急激に上昇すると、絶縁外被体4が簡単に破れてアークが外部に放出される。この外部アークを発生させることにより内部アークを消滅させる。これにより、急激な内部圧力の上昇でもって避雷器1が爆発的に破壊されてその破片が周囲へ飛散することを未然に防止するようにしている。
【0007】
しかしながら、限流素子の故障により発生する外部アークの放出位置が定まっていないため、避雷器1の絶縁外被体4が破れて放出される外部アークが、その避雷器1と対向配置された碍子5に当たることがある。この外部アークが碍子5の表面に当たり続けると、碍子5の笠欠けや胴切れなどが発生して碍子5が損傷を受けることになる。
【0008】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、内部圧力の急激な上昇に伴う爆発的な破壊による破片の飛散および絶縁外被体が破れて放出される外部アーク発生により、碍子が損傷することを未然に防止し得る避雷器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、配電機器と対向配置され、非直線性の電流電圧特性を有する限流素子を絶縁外被体で被覆した避雷器であって、限流素子と絶縁外被体との間に、配電機器と対向する遮蔽板を配置したことを特徴とする。なお、前述の配電機器としては、電柱の上部に腕金を介して取り付けられた碍子がある。また、前述の遮蔽板としては、強度的な面でFRP製のものが好適である。
【0010】
避雷器の性能を超える直撃雷などの異常電圧が発生すると、避雷器の限流素子が故障して端子電極間で内部アークが発生し、そのアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇し、その急激な内部圧力の上昇でもって絶縁外被体が破れて外部アークが放出される。このような場合であっても、本発明の避雷器では、限流素子と絶縁外被体との間に、配電機器と対向する遮蔽板を配置したことにより、内部圧力の急激な上昇に伴う爆発的な破壊による破片や避雷器から放出される外部アークが配電機器に当たることを遮蔽板で阻止することができる。
【0011】
本発明における避雷器は、限流素子を一対の端子電極間に挟み込んでそれらを同軸上に配列させた構造を具備し、一対の端子電極に遮蔽板を取り付けた構造が望ましい。このように遮蔽板を一対の端子電極に取り付けた構造とすれば、遮蔽板の強固な取り付け構造が実現できるので、限流素子の故障による内部圧力の急激な上昇に対する十分な強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、限流素子と絶縁外被体との間に、配電機器と対向する遮蔽板を配置したことにより、内部圧力の急激な上昇に伴う爆発的な破壊による破片や避雷器から放出される外部アークが配電機器に当たることを遮蔽板で阻止することができる。その結果、破片の飛散や外部アークによる配電機器の損傷を未然に防止することができるので、安全性および信頼性の向上が図れ、長寿命の避雷装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る避雷器の実施形態を以下に詳述する。図1は、配電機器であるLP碍子や引留碍子の電線側と接地側との間に避雷器を取り付けた構造を例示する。なお、本発明は、LP碍子や引留碍子以外の他の配電機器に対しても適用可能である。
【0014】
図1に示す実施形態は、電柱の上部に腕金30を介して起立状態で取り付けられた碍子11と、その碍子11に付設された避雷器12とで構成されている。送配電線13が取り付けられた碍子11の電線側取付部14にアーム15を介して避雷器12の電線側端子となる上部端子電極16を電気的かつ機械的に接続する。
【0015】
一方、避雷器12の接地側端子となる下部端子電極17には、一方の放電電極18が電気的かつ機械的に接続され、碍子11の接地取付部19には、他方の放電電極20が電気的かつ機械的に接続されている。一方の放電電極18と他方の放電電極20のそれぞれの先端部は、所定のギャップ長を有する放電ギャップ21が形成されるように対向配置される。なお、碍子11の電線側取付部14は絶縁カバー22で被覆されている。
【0016】
この避雷器12は、図1〜図5に示すように、サージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子23を内蔵した構造を具備する。
【0017】
避雷器12は、電線側端子となる金属製の上部端子電極16と接地側端子となる金属製の下部端子電極17との間に前述の限流素子23を電気的かつ機械的に接続し、これら複数個の限流素子23を上部端子電極16と下部端子電極17との間に挟み込んでそれらを同軸上に配列させ、その周囲に複数本のFRP製絶縁ロッド24を配置してそれら絶縁ロッド24の両端に上部端子電極16および下部端子電極17を固定する。
【0018】
それら上部端子電極16、下部端子電極17および限流素子23の外周面に、耐候性、絶縁性および耐トラッキング性に優れたシリコーン、EVAやEPゴム等の高分子材料からなる絶縁外被体25を被着する。この絶縁外被体25は、限流素子23の側面に直接的に成形する方法やチューブ状に成形したものを熱収縮や挿入により被着させる方法などにより形成される。
【0019】
なお、複数個の限流素子23同士の接合状態を良好にするため、上部端子電極16と限流素子23との間、および下部端子電極17と限流素子23との間には、ばね性部材(図示せず)を介在させている。また、上部端子電極16と限流素子23との接触面積、および下部端子電極17と限流素子23との接触面積を確保するため、上部端子電極16と限流素子23との間、および下部端子電極17と限流素子23との間には、スペーサ26,27をそれぞれ介在させている。
【0020】
この上部端子電極16と限流素子23との間に介在させたスペーサ26は、限流素子23の故障時に発生する短絡電流によるアークの起点となることから、上部端子電極16の溶損を防止するため、鉄、ステンレス鋼、銅、黄銅などの重金属製とし、かつ、一定以上(例えば6mm以上)の厚さとしている。
【0021】
FRP製絶縁ロッド24の上部端子電極16および下部端子電極17への固定は、加締め、接着あるいはねじ止め等の適宜の手段を用いる。両端に位置する上部端子電極16および下部端子電極17の固定は、FRP製絶縁ロッド24を用いる以外に、ループ状のFRP部材を両端の上部端子電極16および下部端子電極17に引掛けて固定する方法や、上部端子電極16および下部端子電極17および限流素子23の側面に未硬化または半硬化のFRPシートを巻き付けて硬化させる方法がある。
【0022】
この避雷器12では、雷サージによる異常電圧が発生すると、雷サージによる雷電流が放電電極18,20間の放電ギャップ21での放電により限流素子23を介して大地へ流れる。このとき、雷サージによる異常電圧に対して限流素子23が低抵抗値となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子23が高抵抗値となって通常の対地電圧を遮断する。この弁作用により送配電線13の周辺機器を雷サージ等から保護している。
【0023】
避雷器12の性能を超える直撃雷などの異常電圧が発生すると、避雷器12の限流素子23が故障して上部端子電極16と下部端子電極17との間で内部アークが発生し、そのアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇する。内部圧力が急激に上昇すると、絶縁外被体25が簡単に破れてアークが外部に放出され、この外部アークを発生させることにより内部アークを消滅させている。これにより、急激な内部圧力の上昇でもって避雷器12が爆発的に破壊されてその破片が周囲へ飛散することを未然に防止するようにしている。
【0024】
以上の構成からなる避雷器12では、限流素子23と絶縁外被体25との間に、碍子11と対向するFRP製の遮蔽板28を配置している。この遮蔽板28を耐熱性や絶縁性に優れたFRP製で構成することにより、限流素子23の故障による内部圧力の急激な上昇に対する十分な強度を確保している。例えば、遮蔽板28としては、絶縁性繊維を樹脂で含浸・硬化させた単層あるいは積層で、1〜6mm程度の板厚を有するFRP板を使用することが好ましい。なお、遮蔽板28としては、耐熱性、絶縁性および強度を有する素材であれば、前述したFRP以外のものであってもよい。
【0025】
この遮蔽板28は、複数個の限流素子23を同軸上に配列させた上部端子電極16および下部端子電極17にねじ29により取り付けた構造としている。このように遮蔽板28を上部端子電極16および下部端子電極17に取り付けた構造としたことにより、遮蔽板28の強固な取り付け構造が実現できるので、限流素子23の故障による内部圧力の急激な上昇に対する十分な強度を確保することができる。なお、遮蔽板28の上部端子電極16および下部端子電極17への固定は、ねじ以外に加締めや接着などの適宜の手段を採用することが可能である。
【0026】
避雷器12の性能を超える直撃雷などの異常電圧が発生すると、避雷器12の限流素子23が故障して上部端子電極16と下部端子電極17との間で内部アークが発生し、そのアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇する。この内部圧力の急激な上昇により、爆発的な破壊で破片が飛散したり、避雷器12の絶縁外被体25が破れて外部アークが放出されても、この避雷装置では、避雷器12の限流素子23と絶縁外被体25との間に、碍子11と対向する遮蔽板28を配置していることから、避雷器12から放出される破片や外部アークが碍子11に直接的に当たることを遮蔽板28で阻止することができる。その結果、破片の飛散や外部アークによる碍子11の笠欠けや胴切れなどの損傷を未然に防止することができる。
【0027】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る避雷器の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の避雷器を示す縦断面図である。
【図3】図1の避雷器で、図2の左側方から見た縦断面図である。
【図4】図1の避雷器で、図2のA−A線に沿う横断面図である。
【図5】図1の避雷器で、図2のB−B線に沿う横断面図である。
【図6】避雷器の従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0029】
11 配電機器(碍子)
12 避雷器
16 端子電極(上部端子電極)
17 端子電極(下部端子電極)
23 限流素子
25 絶縁外被体
28 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電機器と対向配置され、非直線性の電流電圧特性を有する限流素子を絶縁外被体で被覆した避雷器であって、前記限流素子と絶縁外被体との間に、前記配電機器と対向する遮蔽板を配置したことを特徴とする避雷器。
【請求項2】
前記限流素子を一対の端子電極間に挟み込んでそれらを同軸上に配列させた構造を具備し、前記一対の端子電極に遮蔽板を取り付けた請求項1に記載の避雷器。
【請求項3】
前記遮蔽板がFRP製である請求項1又は2に記載の避雷器。
【請求項4】
前記配電機器は、電柱の上部に腕金を介して取り付けられた碍子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の避雷器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−55869(P2010−55869A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218020(P2008−218020)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000123354)音羽電機工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】