説明

還元剤携行用容器の収納装置

【課題】還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして音の発生を防止して、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させることを目的とする。
【解決手段】ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる公害物質を選択還元触媒の利用にて無害化する還元剤の携行用容器収納装置において、外観形状が略扁平形状をなし、該扁平形状の外周縁部に沿って係合用の貫通孔を有した還元剤携行容器2と、シート1下部に配設され、還元剤携行容器2を載置するトレイ4とを備え、トレイ4の開口部に貫通孔と係合して、還元剤携行容器の揺動を規制する突起を配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる公害物質を選択還元触媒の利用によって無害化する排ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携行できるようにした携行容器を車室内に収納する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン(以後「エンジン」と称す)の排気系には、エンジンから排出される排ガスに含まれ、有害物質とされるディーゼル排気微粒子〔以後「PM(Particulate Matter)」と称す〕及びNOx(窒素酸化物)が含まれており、PMはディーゼルパティキュレートフィルタ〔以後「DPF(Diesel Particulate Filter)」と称す〕にて補足されるが、NOxは、尿素水を排ガス中に添加し、尿素水を加水分解してNH(アンモニア)を発生させて、該発生させたNHを使用して、NOxを選択還元浄化する選択還元触媒で、NOxをN(窒素)と、HO(水)に還元して、無害化する排ガス浄化装置によって浄化される。
【0003】
ところが、エンジンの燃料となる軽油は全国の給油サービスステーションにて容易に購入できるが、尿素水はディーゼルエンジンを使用した車両、建設機械及び汎用機械において、前記排ガス浄化装置を搭載している場合に限定されるので、ディーゼルエンジンを使用した機器の販売店以外では購入し難いのが現状である。
その結果、車両の場合、目的地に向かう途中で排ガス中に添加する尿素水がなくなると法律的に車両を動かすことができなくなり、業務に与える影響が大きい。
その対応策として、数リットルの尿素水を入れた緊急用の補給容器を携行することが考えられている。
ところが、尿素水は尿素の規定濃度の維持および、異物混入等の防止管理を適切に行う必要があるが、車室内での適正な保管場所がないのが現状である。
【0004】
先行技術として、実開平7−15443号公報(特許文献1)が開示されている。
この特許文献1の技術の場合、本願添付の図6に示すもので、シートクッション010の下側に収納用トレイ04が前後方向に摺動可能に配設され、シートクッション010の基部060にリトラクタ機構070が固定され、リトラクタ機構070にはシートベルトが巻取り方向に付勢して巻回され、シートベルトが収納用トレイ04に固定されて、収納用トレイ04後方押出し方向に付勢される。
一方、収納用トレイ04には係止ピン05が設けられ、基部060には係止機構06が設けられ、収納用トレイ04の最初の押し込みで係止ピン05が係止機構06係止され、次の押し込みでその係止が解除されるシートアンダトレイが開示されている。
【0005】
また、特開平7−25287号公報(特許文献2)が開示されている。
特許文献2によると、自動車用シートのシートクッションの下方に収納ボックスを配置した物品収納装置において、該ボックスの横側面に物品出入口を形成した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−15443号公報
【特許文献2】特開平7−25287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び、2共に自動車座席シートの下部にシート前後方向に収納ボックスを摺動可能に配置してあり、コストが高くなる。
また、収納スペースを確保しただけなので、かつ、収納物を固定する機能がない。
従って、車両の発進停止、曲がり等による車両の横揺れ等で、収納ボックス内で前後左右にゆれ、内部の尿素水に不要な揺れを与え、尿素水容器と収納ボックスとが当接するため音の発生が大きくなり、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を与える不具合が生ずる。
そこで、本発明はこのような不具合に鑑み成されたもので、還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等を防止すると共に、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止して、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、車両に搭載されるディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)を選択還元触媒の利用によって無害化する排ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携行できるようにした還元剤携行容器の収納装置において、
外嵌形状が略扁平形状をなし、該扁平形状の外周縁部に沿って第1係合部を有した前記還元剤携行容器と、
前記車両のシート下部に配設され、前記還元剤携行容器を載置するトレイとを備え、前記トレイの前記還元剤携行容器を出し入れする開口部に前記第1係合部と係合して、前記還元剤携行容器の揺動を規制する第2係合部を配設したことを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、還元剤を車室内の未利用部分に還元剤携行容器を収納することにより、車室内を有効利用できる。
また、還元剤を車室内に収納するので、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等が防止できる。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記第1係合部は厚み方向へ凹部を形成した係合部であり、前記第2係合部は、前記凹部の内周に沿った外形形状を有するとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、車両が前後左右に揺れた時に、トレイと還元剤携行容器との間で相対移動が発生するのを防止して、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止すると共に、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させる。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記トレイは、前記還元剤携行容器の外周形状に沿った収納凹部を有し、且つ前記開口部から奥に向かって下方へ傾斜した載置面を有するとよい。
【0013】
このような構成にすることにより、開口部から奥に向かって下方へ傾斜した載置面を有しているので、還元剤携行容器を開口部から奥に向かって滑らせ、行き止まったところで、還元剤携行容器を手放すと、第1係合部と第2係合部が係合して、車両が前後左右に揺れた時に、トレイと還元剤携行容器との間で相対移動が発生するのをさらに確実に防止する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、還元剤を車室内の未利用部分に収納することにより、車室内を有効利用できると共に、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等が防止できる。
また、車両が左右に揺れた時に、保持部材と容器との間で帯状部材の幅方向に相対移動が発生するのを防止して、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止すると共に、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1(A)】図1(A)は本発明の第1実施形態にかかる還元剤携行容器収納装置の取付状態図を示す。
【図1(B)】図1(B)は還元剤携行容器の取外状態図を示す。
【図2】図2は本発明の第1実施形態にかかる還元剤携行容器収納部の分解図を示す。
【図3】図3は本発明の第1実施形態にかかる還元剤携行容器の着脱状態説明図を示す。
【図4】図4は本発明の第1実施形態にかかる還元剤携行容器の外観図を示す。
【図5】図5は本発明の第2実施形態にかかる還元剤携行容器収納部構造図を示す。
【図6】図6は従来技術における、取付部概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
(第1実施形態)
【0017】
図1(A)は本発明を車両に搭載されたシートに設けた還元剤携行容器収納装置の取付状態図、(B)は還元剤携行容器の取外状態図を車両斜め前方からの鳥瞰図で示す。
1はシートで、シート1には乗員が着座する着座部12と、該着座部12後端部に前後方向に傾動調節可能に背凭れ11が軸着されている。
図2に還元剤携行容器収納部を分解図で示すように、着座部12(図2では省略)の下側には、シート1を車両前後方向に移動可能にするシートスライドLH13とシートスライドRH14が車幅方向に配設されている。
シートスライドLH13及びシートスライドRH14の下側にはシートブラケット3が配設され、さらに、シートブラケット3とフロア5に起立した取付ブラケット51との間にトレイ4が介装されている。
【0018】
そして、図4に示す還元剤携行容器2がトレイ4上に載置される。
還元剤携行容器2は、水平方向の断面が略長方形で、上下方向に長い略扁平状直方体をなし、尿素水が貯溜される空間部(T)を形成するタンク部21と、尿素水を車両側の尿素水タンクに補給する際に使用するノズル24を収納するノズル収納空間部(H)を形成する把持部22が一体的に形成されている。
把持部22は上部の上縁部に沿った貫通孔23(第1係合部)によって形成され、断面が円筒状に形成されている。
上面の長手方向端縁と直交する面の下面側に尿素水をタンク部21に流入又はタンク部21から車両側尿素水タンク(図示省略)へ注入する入出口25が形成されている。
【0019】
トレイ4は、上面が開口し、還元剤携行容器2が載置される底面は着座部12後端側に向け下方へ傾斜θした傾斜面41を有して、全体が凹部形状に形成されている。
そして、少なくとも、該凹部形状の内周部で、トレイ4の奥側(還元剤携行容器2をトレイ4から出入れする側の反対側)は、還元剤携行容器2の外周形状に沿った形状に形成されている。
トレイ4の前端縁42(還元剤携行容器2をトレイ4から出入れする側)には、傾斜面41から上方へ突出した突起43(第2係合部)が形成されている。
更に、トレイ4はトレイ4の奥側から突起43までの寸度は、還元剤携行容器2の貫通孔23から把持部22側に対し他側までの寸度と略等しくした形状になっている。
そして、突起43の投影面形状は還元剤携行容器2の貫通孔23の投影面形状に沿った形状をしており、還元剤携行容器2をトレイ4の傾斜面41に載置したときに、貫通孔23に突起43が嵌入して、係合する構造になっている。
また、突起43の裏面側は、突起形状に沿った凹部44形成されており、還元剤携行容器2の着脱の際、把持部22を握り易くなっている。
【0020】
図3に還元剤携行容器2の着脱状態説明図を示す。還元剤携行容器2の貫通孔23(第1係合部)と、トレイ4の突起43(第2係合部)が係合する状態を説明する。
トレイ4の傾斜面41は着座部12後端側に向け下方へ傾斜θした状態で車両のフロア5に取付ブラケット51を介して取付けられている。
還元剤携行容器2を収納部に装着する場合、
(イ)は、尿素水を貯溜した還元剤携行容器2の把持部22を握り、還元剤携行容器2の把持部22側に対して他側の方からトレイ4の傾斜面41に沿って摺動させていく。
(ロ)は、還元剤携行容器2がトレイ4の奥側(還元剤携行容器2をトレイ4から出入れする側の反対側)に到達したら、把持部22を放すと、還元剤携行容器2の貫通孔23(第1係合部)にトレイ4の突起43(第2係合部)が嵌入して、貫通孔23と突起43が係合して、装着が完了する。
還元剤携行容器2を収納部から取出す場合、
(ハ)はトレイ4の突起43は突起形状に沿った凹部44になっているので、把持部22が握り易いようになっており、指先で把持部22を持ち上げて、貫通孔23と突起43との係合を解除させて、手前側に引出せば容易に取出せる。
【0021】
本、実施形態によると、還元剤を車室内の未利用部分に還元剤携行容器2を収納することにより、車室内を有効利用できる。
また、還元剤携行容器2を車室内に収納するので、還元剤の盗難、還元剤への異物混入の悪戯等が防止できる。
さらに、トレイ4の奥側(開口の反対側)は、還元剤携行容器2の外周形状に沿った形状に形成されているので、還元剤携行容器2をトレイ4の傾斜面41に沿って摺動させていき、行き止まったところで、手を放すと、貫通孔23と突起43が係合するようになっているので、着脱が容易である。
また、突起43の外周の投影形状を貫通孔23の内周形状に沿った形状の係合と、トレイ4の奥側を還元剤携行容器2の外周形状に沿った形状に形成したので、車両の前後左右への移動による慣性力に対し、還元剤携行容器2のトレイ4に対する相対移動が規制され、内部の還元剤に不要な揺れを与えないようにして、音の発生を防止すると共に、音による搭乗者への不安(還元剤の漏れ)を減少させる。
(第2実施形態)
【0022】
図5は還元剤携行容器2を車両の側面側から着脱する場合の還元剤携行容器2を省略した図を示す。
構造は、シート1に対しシートブラケット3及びトレイ4の出入れ口側を車両側面側に向けて組み替えたもので、基本的には第1実施形態の各構成部品の構造と同じなので、構造説明は省略する。
【0023】
本、実施形態によると、車両を降りた状態で、還元剤携行容器2の着脱が可能となり、特に、中大型のトラック(ディーゼルエンジン搭載車両)においては、車高(運転席位置)が高いので、還元剤携行容器2を把持しながら乗降するより安全性が高くなる効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
ディーゼルエンジンを搭載する機械の排気系に配設され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス浄化を図る汎用機械、建設機械および、車両等に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
2 還元剤携行容器
3 シートブラケット
4 トレイ
11 背凭れ
12 着座部
13 シートスライドLH
14 シートスライドRH
21 タンク部
22 把持部
23 貫通孔(第1係合部)
41 傾斜面
43 突起(第2係合部)
44 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)を選択還元触媒の利用によって無害化する排ガス浄化装置に用いる液体還元剤を収納して携行できるようにした還元剤携行容器の収納装置において、
外観形状が略扁平形状をなし、該扁平形状の外周縁部に沿って第1係合部を有した前記還元剤携行容器と、
前記車両のシート下部に配設され、前記還元剤携行容器を載置するトレイとを備え、前記トレイの前記還元剤携行容器を出し入れする開口部に前記第1係合部と係合して、前記還元剤携行容器の揺動を規制する第2係合部を配設したことを特徴とする還元剤携行容器の収納装置。
【請求項2】
前記第1係合部は厚み方向へ凹部を形成した係合部であり、前記第2係合部は、前記凹部の内周に沿った外形形状を有することを特徴とする請求項1記載の還元剤携行容器の収納装置。
【請求項3】
前記トレイは、前記還元剤携行容器の外周形状に沿った収納凹部を有し、且つ前記開口部から奥に向かって下方へ傾斜した載置面を有していることを特徴とする請求項2記載の還元剤携行容器の収納装置。

【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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