説明

還流式紙幣処理装置

【課題】金種別に複数の還流式紙幣収納部を備えた紙幣処理装置において、紙幣収納部の他に格別の回収専用カセットを装備することによる装置の大型化、高コスト化を招くことなく、小型化を積極的に図りつつ、終業時等において最短時間で各紙幣収納部から紙幣を一箇所に回収することができ、更に釣銭として使用する五千円、二千円等の紙幣の取扱性にも優れた還流式紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】第1の紙幣収納部20内の第1の紙幣を一枚ずつ送出して第1の一時保留部30に所定枚数堆積させた後で、該一時保留部内の第1の紙幣束を第2の紙幣収納部25内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、第1の紙幣収納部内に収容された全ての第1の紙幣を第2の紙幣収納部に移送し、更に入金取込部4から第3の紙幣が投入された場合に、第2の一時保留部31に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば貨幣を入出金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の貨幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、詳細には金種別に紙幣を収容する還流式紙幣収納部を複数備えた還流式紙幣処理装置において、終業時等に全紙幣を一つの紙幣収納部等に回収する作業を迅速化するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等に装備されており、この紙幣処理装置には始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に保管するための紙幣収納部が装備されている。
この種の紙幣処理装置において、終業時等に装置本体内に残った全ての紙幣を回収する際に、金種別の紙幣収納部内に夫々収容された紙幣束を機外に個別に取り出すとすれば、全ての紙幣収納部をカセット式に構成して機外に出入れ自在にする必要があるが、このように構成すると紙幣収納部の大型化を招くばかりでなく、回収作業が繁雑化、長時間化する。
【0003】
上記の如き不具合に対処するために、従来例えば千円紙幣、五千円紙幣、及び一万円紙幣を取り扱う還流式紙幣処理装置において、各紙幣の金種毎に対応する還流式紙幣収納部を備え、且つ、紙幣の補充・回収のための紙幣アクセスを行う機能を千円紙幣収納部に担わせたものがある。
なお、還流式の紙幣収納部とは、始業時に予め収納しておいた紙幣のみならず、装置の稼働中に利用者が投入した紙幣を一旦収納する一方で、この紙幣を釣銭等とするために外部へ繰り出す(排出する)機能を備えたタイプの紙幣収納部を指称する。また、還流式の紙幣収納部にはループ方式とスイッチバック方式がある。ループ方式は紙幣の入口(受入れ方向)と出口(繰り出し方向)を異ならせた方式であり、スイッチバック方式とは同じ出入り口から紙幣の受け入れと繰り出しを行う方式である。
【0004】
図3は従来のスイッチバック方式の還流式紙幣処理装置の構成を示す。
この紙幣処理装置101は、還流式の紙幣処理機構102と、この紙幣処理機構を内部に収容する外装体103と、から概略構成されている。
紙幣処理機構102は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、又は一枚ずつ受入れ可能な入金取込部104と、入金取込部104から受け入れられた紙幣を装置内に搬送する搬送経路105と、搬送経路105に沿って紙幣を搬送するための駆動力を生成、伝達するローラ、ベルト、分岐ゲート、モータ、ソレノイド等から成る搬送機構110と、入金取込部104の直下流側の搬送経路上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種を判定する識別装置115と、搬送経路105と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣(例えば、一万円紙幣)を出入れ自在に収容する還流式の第1の紙幣収納部120と、搬送経路105と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣(例えば、千円紙幣)を出入れ自在に収容する還流式の第2の紙幣収納部121と、紙幣を釣銭等として装置外に排出すると共に複数枚の紙幣を堆積させて保留する機能を有した出金保留部130と、これらを制御する制御手段140と、を備えている。
【0005】
入金取込部104は一括投入された複数枚の紙幣を一枚ずつに分離しながら搬送経路105に送り出すための分離給送機構を備えている。
搬送機構110は、入金取込部104から一枚ずつ給送された紙幣を金種別に第1、又は第2の紙幣収納部120、121に送り込む仕分け搬送機能と、第1、又は第2の紙幣収納部120、121から夫々一枚ずつ送り出されてきた紙幣を出金保留部130に搬送する機能と、を併有している。搬送機構110は図示しないローラ、ベルト、第1、及び第2の分岐ゲート111、112と、これらの可動部品を駆動するためのモータ、ソレノイド等から構成されており、制御手段140からの制御によって各ローラ、ベルト、分岐ゲートが駆動されることにより、所定のタイミングにて各搬送機能を実現することができる。
【0006】
第1の紙幣収納部120は、第1の紙幣、例えば一万円紙幣専用であり、搬送経路105を経由して一旦受け入れた一万円紙幣を搬送経路105に一枚ずつ送出する還流機能を有している。
第2の紙幣収納部121は、第2の紙幣、例えば千円紙幣専用であり、搬送経路105を経由して一旦受け入れた千円紙幣を搬送経路105に一枚ずつ送出する還流機能を有している。第2の紙幣収納部121は、機外に引出し可能なカセットタイプになっており、終業時には第1の紙幣収納部120に収納された金種の紙幣を順次第2の紙幣収納部121に送込んで集積することによって、第2の紙幣収納部121を利用して全紙幣を一括して機外に取り出すことができる。
なお、この従来例に係る還流式紙幣処理装置は、可能な限り小型化することを前提とした構成となっているが、分岐ゲート111、112による方向転換部は小さな曲率のU字ターン等の湾曲搬送が困難であるため、分岐ゲートによる方向転換部は大きな曲率の湾曲経路とならざるを得ず、搬送経路105の横幅の減縮に限界がある。
【0007】
この紙幣処理装置を備えた自動販売機の運用が終了した時点で、紙幣収納部120に収納されている紙幣を第2の紙幣収納部121に一枚ずつ自動的に移送した後、作業員は、第2の紙幣収納部121を引き出して売上代金(全ての紙幣)を回収する。
第1の紙幣収納部120から各紙幣を第2の紙幣収納部121に移送、収納する動作としては、例えば、第1の紙幣収納部120に収納されている紙幣束から一万円紙幣1枚を分離して搬送経路105に繰出し、搬送経路上のR点まで移動した後で、逆搬送して分岐ゲート113により経路を変えて第2の紙幣収納部121に移送する。
なお、始業時には釣銭として使用する千円紙幣を所定枚数だけ第2の紙幣収納部121にセットすれば足りるため、作業員による紙幣へのアクセス箇所を一箇所に制限してセキュリティ性を向上させると同時に、作業員の負担を軽減している。
【0008】
しかしながら、上記従来のスイッチバック還流方式の紙幣処理装置にあっては、第1の紙幣収納部120から第2の紙幣収納部121に回収作業を行う際に、第1の紙幣収納部から一枚ずつ搬送経路に送り出した各紙幣をR点で逆転搬送して移送処理する方式を採らざるをえないために、回収時間が長期化するという問題があった。
回収時間を短縮するための改善策としては図4に示したように第2の紙幣収納部121の出入り口に接続した搬送経路分岐点にトリプル分岐ゲート114を設けることで、第1の紙幣収納部120の収納紙幣を、一枚ずつ連続的に第2の紙幣収納部121に移送することができる。
しかしながら、トリプル分岐ゲート114を実際に組み込む場合、紙幣の湾曲搬送にはかなり大きな曲率が必要であり、且つ、極めて複雑、且つ大型の搬送機構となるため、還流式紙幣処理装置の大型化、高コスト化が避けられなかった。
【0009】
特許文献1には、金種別の紙幣収納部と、大容量の補充・回収紙幣収納部と、を備え、終業時には各紙幣収納部内の全紙幣を補充・回収紙幣収納部内に一枚ずつ送り込むことによって、補充・回収紙幣収納部から全紙幣を取り出すことができるようにした紙幣出金機が開示されている。
しかし、この従来例にあっては、各紙幣収納部に収納された多量の紙幣を一枚ずつ補充・回収紙幣収納部に移送する作業が必要となるため、回収作業に長時間を要するという問題がある。また、複数の紙幣収納部とは別個に大型の補充・回収紙幣収納部を装置内に配置する必要があるために、紙幣収納、搬送のための機構が複雑化するばかりでなく、装置が大型化するという欠点があった。また、紙幣の入口と出口を別々に備える金種別紙幣収納部を用いたループ方式の還流式紙幣処理装置であるため、複雑な搬送経路を有した大型の還流式紙幣処理装置となっている。
各種紙幣処理装置に対する小型化の要請が高まる中で、このような大型化をもたらす構成は採用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−260059公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のようにスイッチバック式の紙幣収納部を複数備えた紙幣処理装置にあっては、終業時に各紙幣収納部内に残留した全紙幣を一つの還流式紙幣収納部に一枚ずつ移送する必要があるため、搬送機構が大型化するという問題と、回収時間の短縮化に限界があるという問題があった。回収時間を短縮化するためにトリプル分岐ゲート等の複雑、大型の搬送機構を付加すると更に大型化、高コスト化するという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、金種別に複数の還流式紙幣収納部を備えた紙幣処理装置において、紙幣収納部の他に格別の回収専用カセットを装備することによる装置の大型化、高コスト化を招くことなく、小型化を積極的に図りつつ、終業時等において最短時間で各紙幣収納部から紙幣を一箇所に回収することができる還流式紙幣処理装置を提供することを目的としている。
更に、本発明は五千円紙幣、二千円紙幣のように紙幣処理装置に投入される頻度が比較的低い紙幣を、釣銭として還流して払い出すことができる還流式紙幣処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、前記第1及び第2の紙幣収納部の上流側に配置され且つ該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する第1の一時保留部と、該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出し、且つ前記第1及び第2の紙幣収納部の下流側に配置された第2の一時保留部と、紙幣を前記搬送経路から受け入れて装置外へ払い出す出金保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部内の第1の紙幣を一枚ずつ送出して前記第1の一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該第1の一時保留部内の第1の紙幣束を前記第2の紙幣収納部内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1の紙幣収納部内に収容された全ての第1の紙幣を前記第2の紙幣収納部に移送し、前記入金取込部から第3の金種に係る第3の紙幣が投入された場合に、前記第2の一時保留部に収納することを特徴とする。
【0013】
金種別に紙幣を収容する還流式の紙幣収納部の一方を回収紙幣収納部として兼用することにより、装置全体形状を小型化することが可能となる。更に、一時保留部を利用した紙幣束単位の回収動作を実施できる構成としたことにより、搬送経路、及び搬送機構をシンプル化、小型化することができるため、装置全体形状を更に小型化することができる。
また、回収処理に使用する第1の一時保留部の他に、使用頻度が低い第3の金種に係る第3の紙幣(例えば、五千円、二千円紙幣)を受入れたり、釣銭として払い出すことが可能な第2の一時保留部を並置したので、第3の紙幣の処理手順を単純化することができる。第2の一時保留部は、紙幣一枚ずつの受入れ、紙幣束の受入れと、一括した払出しする単純機能しか有していないため、装置構成が大型、複雑化することはない。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の一時保留部に収納された前記第3の紙幣を前記出金保留部に移送する際に、前記制御手段は、前記第2の一時保留部内に収納された全ての第3の紙幣を一括送出して前記第1の紙幣収納部内に収納してから、該第1の紙幣収納部内の第3の紙幣を一枚ずつ所要枚数だけ前記搬送経路を介して前記出金保留部に移送することを特徴とする。
第2の一時保留部は、一枚ずつ繰り出す機能を有していないため、第2の一時保留部内の第3の紙幣は一旦第1の紙幣収納部に移送され、一枚ずつ繰り出す機能を有した第1の紙幣収納部によって出金保留部に移送される。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2において、前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部内に残留した全ての前記第3の紙幣を前記搬送経路を介して前記第1の一時保留部に移送して一時保留してから、一括して前記第2の保留部に移送することを特徴とする。
釣銭払出し後に、第1の紙幣収納部内に残留した第3の紙幣については、一枚ずつ第1の一時保留部に移送してから、一括して第2の保留部に移送するので処理速度を高速化することができる。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記第2の紙幣収納部は、前記装置本体に対して着脱可能なカセットであることを特徴とする。
回収紙幣収納部として利用する紙幣収納部を装置本体に対して着脱、出入れ可能なカセットとすることにより、回収動作を効率化することができる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記第2の紙幣は、前記第1の紙幣よりも使用頻度の高い紙幣であることを特徴とする。
釣銭等として使用される頻度の高い紙幣を収容する第2の紙幣収納部をカセット状に構成する。即ち、運用の終了時には使用頻度の高い紙幣が最も多く収容されていることになり、紙幣の回収時には他の紙幣収納部の紙幣を第2の紙幣収納部に移送することにより、短時間で一括した回収作業を実施することができる。なお、ここでいう紙幣の使用頻度とは、自動販売機等において使用される度合いを指しており、現行紙幣にあっては、千円紙幣>一万円紙幣>五千円紙幣>二千円紙幣 といった順序での使用頻度となる。
【0016】
請求項6の発明は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、前記第1及び第2の紙幣収納部の上流側に配置され且つ該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する第1の一時保留部と、該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出し、且つ前記第1及び第2の紙幣収納部の下流側に配置された第2の一時保留部と、紙幣の回収時に前記第1及び第2の紙幣収納部内の全紙幣を収容する回収紙幣専用カセットと、紙幣を前記搬送経路から受け入れて装置外へ払い出す出金保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、前記制御手段は、前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部、及び第2の紙幣収納部内の各紙幣を一枚ずつ送出して前記一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該一時保留部内の紙幣束を前記回収紙幣専用カセットに一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1及び第2の紙幣収納部内に収容された全ての紙幣を前記回収紙幣専用カセットに移送し、前記入金取込部から第3の金種に係る第3の紙幣が投入された場合に、前記第2の一時保留部に収納することを特徴とする。
装置本体内に容量的な余裕がある場合には、還流式の紙幣収納部とは別個に回収紙幣専用カセットを設けることにより、回収用の収納部の構成をシンプル化することができる。また、紙幣収納部を回収紙幣収納部として兼用する場合には予めその容量を大きめに設定する必要があるが、回収紙幣専用カセットを設けることによりその必要がなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金種別のスイッチバック還流式紙幣収納部を併設した構成において、一方の紙幣収納部に収納されている紙幣を他方の紙幣収納部に回収するに際し、集積機能だけを有したシンプルな構成の一時保留部を介在させた一括搬送を実施するようにしたので、装置の大型化を招くことなく、移送処理時間を短縮することができる。即ち、還流式紙幣収納部よりも構成が簡素な一時保留部を用い、移送すべき収納紙幣を一時保留部へ1枚ずつ連続的に送り込んで所定枚数集積させ、集積した紙幣束をそのまま同じ搬送経路上に繰出して、回収紙幣収納部を兼ねた紙幣収納部に束搬送するようにしたので、紙幣の移送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0018】
また、紙幣回収時に使用する一時保留部(第1の一時保留部)の他に、五千円等の第3の紙幣を収納する収納部として利用する第2の一時収納部を設けることにより、第3の紙幣の受け入れ、収納、及び払出し手順を単純化することができる。第2の一時保留部は還流機能を有しない単純構造であるため、装置の大型化、複雑化を招くことがない。なお、第2の紙幣(例えば、千円紙幣)は釣銭として多数必要となるため、第2の紙幣収納部に収納し、第1の紙幣(例えば、一万円紙幣)は投入される枚数は比較的多いが、釣銭としては使用されないため、第1の紙幣収納部に収納し回収時を除き収納部外へ排出する必要はない。
【0019】
例えば、千円紙幣二枚、五千円紙幣一枚が一括して投入されてきた場合には、千円紙幣二枚は第2の収納部に収納し、五千円は第2の一時保留部に収納する。その後の利用者が一万円を投入して三千円の買い物をしたために七千円の釣りを出したい場合には、第2の紙幣収納部から千円紙幣を二枚払出し、第2の一時保留部から五千円紙幣を一枚払い出す。この際、第2の一時保留部に五千円紙幣が複数枚(例えば五枚)入っていた場合には、五千円紙幣を全て第1の紙幣収納部に一括搬送し、第1の紙幣収納部からから五千円紙幣を一枚払出す。残りの四枚の五千円紙幣は、第1の紙幣収納部から第2の一時保留部に一枚ずつ移送して五千円紙幣の収納状態に戻す。
【0020】
還流機能を有した紙幣収納部は、複雑な収納機構、分離機構が必要となり、装置の大型化につながるため、還流式紙幣収納部の増設は可能な限り避けたい。本発明では、単純構造の一時保留部を追加して使用することにより、全体の装置構成を小型化、単純化しつつ、第3の紙幣の処理を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る紙幣処理装置の構成説明図である。
【図3】従来のスイッチバック方式の還流式紙幣処理装置の構成を示す説明図である。
【図4】他の従来例の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の概略構成図である。
この紙幣処理装置1は、例えば食券等の自動販売機(券売機)に装備されて紙幣の受け入れ、釣銭等としての紙幣の払い出しの処理を行う機能を有する。
紙幣処理装置1は、還流式の紙幣処理機構2と、この紙幣処理機構2を内部に収容する外装体3と、から概略構成されている。
紙幣処理機構2は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、又は一枚ずつ受入れ可能な入金取込部4と、入金取込部4から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路5と、搬送経路5に沿って紙幣を搬送するための駆動力を生成、伝達するためのモータ、ソレノイド、及びローラ、ベルト、ゲートから成る搬送機構10と、入金取込部4の直下流側の搬送経路上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種を判定する識別装置15と、搬送経路5と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部20と、搬送経路5と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部25と、第1及び第2の紙幣収納部の上流側に配置され且つ搬送経路5を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して搬送経路に送出する第1の一時保留部30と、第1の一時保留部30と同様の構成を備えると共に第1及び第2の紙幣収納部の下流側に配置された第2の一時保留部31と、釣銭としての紙幣を装置外に排出する出金保留部35と、これらを制御する制御手段40と、を備えている。
【0023】
入金取込部4は一括投入された複数枚の紙幣を一枚ずつに分離しながら搬送経路5に送り出すための分離給送機構を備えている。
搬送機構10は、入金取込部4から一枚ずつ給送された紙幣を所定のルートにて搬送することにより金種別に第1、又は第2の紙幣収納部20、25に送り込む仕分け搬送機能と、第1、又は第2の紙幣収納部20、25から夫々一枚ずつ繰り出されてきた紙幣を第1の一時保留部30内に順次搬送して堆積させる機能と、第1の一時保留部30から繰り出されてきた紙幣束を回収用の収納部を兼ねた第2の紙幣収納部25に一括して送り込む一括搬送機能と、を併有している。
制御手段40からの制御によって各ローラ、ベルト、ゲート11を切り替え駆動されることにより、所定のタイミングにて上記の各搬送機能を実現することができる。
【0024】
第1の紙幣収納部20は、第1の紙幣、例えば一万円紙幣専用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた一万円紙幣を搬送経路5に一枚ずつ送出する還流機能を有している。第1の紙幣収納部20から搬送経路5に一枚ずつ送出された第1の紙幣を出金保留部35や第1の一時保留部30に移送する場合にはR点を経由した一方向への搬送が行われる。
第2の紙幣収納部25は、釣銭として多用される第2の紙幣、例えば千円紙幣用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた千円紙幣を搬送経路5に一枚ずつ送出するスイッチバック式の還流機能を有している。第2の紙幣収納部25から搬送経路5に一枚ずつ送出された第1の紙幣を出金保留部35に移送する場合にはR点を経由した一方向への搬送が行われる。
【0025】
第1の一時保留部30は、第1、及び第2の紙幣収納部20、25から夫々一枚ずつ繰り出されてきた紙幣を一枚ずつ受入れて所定の許容枚数だけ積層させる集積機能と、積層された紙幣束を一括して搬送経路5に繰り出す一括送出機能を有している。第1の一時保留部30に保留された紙幣束を第1、又は第2の紙幣収納部20、25に一括移送する際にはR点を経由した経路を介した一方向への搬送が行われる。
第2の一時保留部31は、後述するように入金取込部4から入金された第3の金種に係る第3の紙幣(例えば五千円紙幣)を堆積、収納すると共に、収納した第3の紙幣を釣銭として払い出す場合には、収納した全ての第3の紙幣を搬送経路5を経由して第1の紙幣収納部20に一括移送し、出金保留部35への移送作業は第1の紙幣収納部20が実施する。第2の一時保留部31から第1の紙幣収納部20への一括移送に際しては、紙幣束をR点を通過させた直後に一旦停止させてから逆送することにより、第1の紙幣収納部20に移送する。
【0026】
本発明では、例えば第2の紙幣収納部25をカセット式に着脱自在(出入れ自在を含む)に構成し、第2の紙幣収納部25と対面する外装体3の壁部に設けた図示しないドアを開放することによって第2の紙幣収納部25を取出し、収納された紙幣を回収できるように構成されている。
本発明の特徴は、終業時における紙幣回収作業において作業者が所定の回収スイッチを操作することにより、制御手段40が、第1の紙幣収納部20内の一万円紙幣を一枚ずつ分離しつつ連続的に搬送経路5に送出して搬送機構10によって高速搬送することにより第1の一時保留部30に所定枚数(例えば、15枚)堆積させた後で、一時保留部内の15枚の一万円紙幣束を第2の紙幣収納部25内に束のままで一括搬送する動作を繰り返すことにより、第1の紙幣収納部20内に収容された全ての一万円紙幣を第2の紙幣収納部25に移送するようにした構成にある。第1の一時保留部30に送り込まれる紙幣の枚数は、搬送経路等の適所に配置した通紙センサによって検知された通過情報にもとづいてカウントされる。
【0027】
この実施形態では、第2の紙幣収納部25を回収紙幣収納部として兼用しており、終業時に第2の紙幣収納部25内に第1及び第2の紙幣を全て回収することにより、一括した回収作業を実施することが可能となる。従って、第2の紙幣収納部25は装置本体内から着脱可能、或いは出入れ可能なカセットタイプに構成することが好ましい。利用者によって投入される紙幣としては勿論、釣銭として使用される紙幣としても使用頻度の高い千円紙幣を収容する第2の紙幣収納部25を紙幣回収用の収納部として兼用し、且つ一万円紙幣等の使用頻度の低い紙幣をこの第2の紙幣収納部25に移送する構成とすることにより、回収時間を短縮することが可能となる。
【0028】
第1の一時保留部30は一枚ずつ高速搬送されてくる紙幣を積層状態で集積させると共に、積層した紙幣束を一括して搬送経路に送り出すための構成を有しており、搬送経路に送出された紙幣束は第2の紙幣収納部25内に一括して送り込まれるため回収効率を大幅に高めることができる。つまり、収納枚数が少ない第1の紙幣収納部内の一万円紙幣を第1の一時保留部30に積層して収納した後で紙幣束として一括して第2の紙幣収納部内に移送するため、一枚ずつ回収する従来装置に比して回収時間が大幅に短縮することが明かである。しかも、専用の回収紙幣収納部を別設するわけではないから装置の全体サイズを小さくすることができる。
【0029】
この実施形態に係る紙幣処理装置によれば、金種別のスイッチバック還流式紙幣収納部を併設した構成において、一方の紙幣収納部に収納されている紙幣を他方の紙幣収納部に回収するに際し、一時保留部を介在させた一括搬送を実施するようにしたので、装置の大型化を招くことなく、移送処理時間を短縮することができる。即ち、還流式紙幣収納部よりも構成が簡素な一時保留部を用い、移送すべき収納紙幣を一時保留部へ1枚ずつ送り込んで所定枚数集積させ、集積した紙幣束をそのまま同じ搬送経路上に繰出して、回収紙幣収納部を兼ねた紙幣収納部に束搬送するようにしたので、紙幣の移送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0030】
次に、入金取込部4に対して第3の金種に係る第3の紙幣、例えば五千円紙幣が一枚投入されてきた場合には、搬送経路5を経て第2の一時保留部31に搬送して保留しておく。その後に投入された五千円紙幣についても同様に第2の一時保留部31に搬送して堆積しておく。五千円紙幣が第2の一時保留部31に収納されている枚数は常にカウントされており、制御手段40が把握している。後述するように投入された五千円紙幣の枚数が第2の一時保留部31の許容枚数に達した場合には、例えば一万円札を収納する第1の紙幣収納部20に余剰紙幣を移送して保管する等の措置を講じることができる。
ここで五千円紙幣は、自動販売機等の分野においては、千円紙幣や一万円紙幣に比べてその使用頻度が極端に低い。従って、許容枚数が紙幣収納部より少ない20枚程度の一時保留部であっても五千円紙幣の保管手段としては十分に機能し得る。
第2の一時保留部31に集積された第3の紙幣としての五千円紙幣を釣銭等として出金保留部35に送出する際に、制御手段40は、第2の一時保留部31内に集積された全ての五千円紙幣(例えば、5枚)を一括送出(束搬送)して第1の紙幣収納部20内に収納して一万円紙幣上に堆積させてから、第1の紙幣収納部20内の五千円紙幣を一枚だけ搬送経路5を介して出金保留部35に移送する。なお、第2の一時保留部31内の五千円紙幣束を第1の紙幣収納部20内に移送する際には、紙幣束がR点を超えるまで搬送してから一旦停止させ、その後逆送することにより、第1の紙幣収納部に一括収納する。
【0031】
釣銭として一枚の五千円紙幣を第1の紙幣収納部20から出金保留部35に移送した後、第1の紙幣収納部内には4枚の五千円紙幣が残留する。残留した五千円紙幣は一枚ずつ搬送経路に送出し、第2の一時保留部31に移送する。このようにして次の釣銭としての払い出しまで五千円紙幣を待機させることができる。
終業時に全紙幣を第2の紙幣収納部25に回収する際には、第2の一時保留部31に収納された五千円紙幣(束)を搬送経路に送出し、R点以降において逆送させて第2の紙幣収納部25に収納する。
第2の一時保留部31内に収納可能な枚数に達した後に五千円紙幣が投入されてきた場合には、余剰紙幣については例えば第1の紙幣収納部20に収納すればよい。
【0032】
次に、図2は本発明の他の実施形態に係る紙幣収納装置の構成を示す概略図である。なお、図1の紙幣収納装置と同一部分には同一符号を付しつつ説明する。
この実施形態に係る紙幣処理装置1は、図1に示した実施形態の構成に、更に回収紙幣専用カセットを追加した点において、図1の紙幣処理装置と異なっている。
回収紙幣専用カセット50は、紙幣の繰出し機能を有しておらず、受入れのみを行う簡素な構造となっており、還流式紙幣処理装置に対して着脱可能である。なお、回収紙幣専用カセット50は回収処理時に全ての金種の紙幣を収納するための収納容量を備える。
運用時の動作は、前述の実施形態と同様であり、終業時の回収動作として全紙幣を収集する先が回収紙幣専用カセット50となる点が異なる。
【0033】
このような回収紙幣専用カセットを別に設けて構成することにより、図1の実施形態に比べて、第2の紙幣収納部25の収納容量を第2の紙幣を収納するのに必要な容量に抑えることができる。また、第2の紙幣収納部25は、一枚ずつ紙幣を繰出すための分離機構等を備えているために回収カセットを兼ねた場合に重量物となるが、回収紙幣専用カセット50はこれに比べて軽量であるため、紙幣を回収する作業員の作業負担を軽減することができる。
また、五千円紙幣に加えて二千円紙幣も取扱可能とするためには、第2の一時保留部と同様のものを一つ追加すればよい。
【符号の説明】
【0034】
1…紙幣処理装置、2…紙幣処理機構、3…外装体、4…入金取込部、5…搬送経路、10…搬送機構、11…ゲート、15…識別装置、20、25、26…紙幣収納部、30…一時保留部(第1の一時保留部)、31…第2の一時保留部、35…出金保留部、40…制御手段、50…回収紙幣専用カセット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、前記搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する第1及び第2の一時保留部と、紙幣を前記搬送経路から受け入れて装置外へ払い出す出金保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、
前記制御手段は、前記入金取込部から第3の金種に係る第3の紙幣が投入された場合に、前記第2の一時保留部に収納し、紙幣回収時に前記第1の紙幣収納部内の第1の紙幣を一枚ずつ送出して前記第1の一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該第1の一時保留部内の第1の紙幣束を前記第2の紙幣収納部内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1の紙幣収納部内に収容された全ての第1の紙幣を前記第2の紙幣収納部に移送すると共に前記第2の一時紙幣保留部内の第3の紙幣を一括して搬送路に送出して第2の紙幣収納部に移送することを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【請求項2】
前記第2の一時保留部に収納された前記第3の紙幣を前記出金保留部に移送する際に、前記制御手段は、前記第2の一時保留部内に収納された全ての第3の紙幣を一括送出して前記第1の紙幣収納部内に収納してから、該第1の紙幣収納部内の第3の紙幣を一枚ずつ所要枚数だけ前記搬送経路を介して前記出金保留部に移送することを特徴とする請求項1に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部内に残留した全ての前記第3の紙幣を前記搬送経路に一枚ずつ送出して前記第2の一時保留部に移送することを特徴とする請求項2に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項4】
前記第2の紙幣収納部は、前記装置本体に対して着脱可能なカセットであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項5】
前記第2の紙幣は、前記第1の紙幣よりも使用頻度の高い紙幣であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項6】
金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する第1及び第2の一時保留部と、紙幣の回収時に前記第1及び第2の紙幣収納部内の全紙幣を収容する回収紙幣専用カセットと、紙幣を前記搬送経路から受け入れて装置外へ払い出す出金保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、
前記制御手段は、前記入金取込部から第3の金種に係る第3の紙幣が投入された場合に、前記第2の一時保留部に収納し、紙幣回収時に前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部、及び第2の紙幣収納部内の各紙幣を一枚ずつ送出して前記一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該一時保留部内の紙幣束を前記回収紙幣専用カセットに一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1及び第2の紙幣収納部内に収容された全ての紙幣を前記回収紙幣専用カセットに移送すると共に、第2の一時保留部内の紙幣を一括して搬送経路に送出して前記回収紙幣専用カセットに移送することを特徴とする還流式紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−155752(P2012−155752A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105599(P2012−105599)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2006−332631(P2006−332631)の分割
【原出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】