説明

部分的に埋め込まれた緩衝器を有するカウンターウエイト

エレベータのカウンターウエイト(24、34)が、カウンターウエイトとともに昇降路(26)内を移動するように支持された緩衝部材(40)を含む。緩衝部材(40)は、カウンターウエイトの構造体(42)の外側境界内にある第1の部分(52)を含む。緩衝部材(40)の第2の部分(54)は外側境界の外部にある。開示された実施例では、複数の充填材がフレームに支持され、第1の充填材(60)は第1の幅寸法を有し、少なくとも1つの第2の充填材(62)はより小さい幅寸法を有する。第2の充填材(62)は緩衝部材(40)の第1の部分(52)に沿って配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にエレベータシステムに関する。特に、本発明はエレベータシステムに用いられるカウンターウエイトおよび緩衝器の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのエレベータシステムは、ロープまたは、ベルトなどのその他の耐荷重部材で互いに連結されたかごおよびカウンターウエイトを含む。巻上機がかごの移動を制御し、例えばビルディング内の各階の間で乗客に対応する。知られているように、カウンターウエイトとかごとは通常、昇降路内で反対方向に移動する。
【0003】
単一の昇降路内に複数のエレベータかごを含むことが提案されている。このような構成は、例えば乗客に対応する運行が増加または改善されるという利点を提供する。米国特許第1,896,776号は昇降路内に複数のかごを有するエレベータシステムに関する特許の1例である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昇降路内に複数のかごを具備するときは、様々な課題が生じる。例えば、構成部品の数が増加することによって、異なる形式の安全装置の必要性が生じる。米国特許第1,896,776号は、例えば、カウンターウエイトまたはかごの間の衝撃を吸収するために、カウンターウエイトおよびかごにそれぞれ緩衝器をつけることを提示している。このような構成の難点の1つは、緩衝器がカウンターウエイト、かご、またはその両方の、外形寸法を増加させることである。これは貴重な追加の昇降路スペースを占める。さらに、この特許に示される緩衝器の位置は、例えばエレベータかごを隣接する階に配置することを妨げる。
【0005】
緩衝器機能を費用効率およびスペース効率の良い方法で提供するような構成が求められている。本発明はこの要求に対応するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エレベータシステムに用いられる例示的なカウンターウエイトは、カウンターウエイトの外側境界を画定する構造体を含む。緩衝部材は外側境界内に第1の部分を有する。
【0007】
1つの実施例では、緩衝部材は外側境界の外部にある第2の部分を有し、この部分は他のカウンターウエイトとの接触に関連するエネルギーを吸収するために、第1の部分に対して移動可能である。
【0008】
1つの実施例では、構造体はフレームを有し、カウンターウエイトはフレームに支持された複数の充填材を含む。充填材の一部は、緩衝部材の第1の部分の側部に沿って納まるような寸法を有する。これによって、フレームの全幅寸法にわたって伸びる充填材によるものに較べて、より小型のカウンターウエイト設計が可能になる。1つの実施例では、このような大型の充填材が、小型の充填材と組み合わせて用いられる。
【0009】
本発明の様々な特徴および利点は、以下における現在において好ましい実施例の詳細な説明によって、当業者に明らかとなろう。詳細な説明に付属する図面の簡単な説明は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はエレベータシステム20の選択された部分を概略的に示す。第1のエレベータかご22が第1のカウンターウエイトと連結されて、昇降路26内を移動する。図1に図示されていないが、第1のエレベータかご22は第1のカウンターウエイト24に、複数のロープまたはベルトによって公知のように連結されている。第2のエレベータかご32が第1のエレベータかご22の下方に(図面によれば)位置している。第2のエレベータかご32は第2のカウンターウエイト34に、耐荷重部材(図示せず)によって結合され、両者が公知のように昇降路26内を移動する。
【0011】
この実施例では、カウンターウエイト24および34が共通のガイドレール36に沿って走行する。言い換えれば、カウンターウエイト24および34が同じガイドレール36を共有している。
【0012】
図1に概略的に示されている実施例のシステム20の他の特徴は、少なくとも1つの緩衝部材40が、カウンターウエイトが互いに接触することに関連する衝撃を吸収するために、カウンターウエイト24または34のうち少なくとも1つに支持されていることである。
【0013】
図2は緩衝部材40を有するカウンターウエイト24の1つの実施例を概略的に示しており、緩衝部材40がカウンターウエイトに支持されて、カウンターウエイトとともに昇降路26内を移動する。この実施例では、カウンターウエイト24がカウンターウエイトの外側境界を画定する構造体42を有する。この実施例では、構造体42が一般に知られている方法で作られたフレームを有する。構造体42によって画定される外側境界は高さ寸法Hおよび幅寸法Wを含む。
【0014】
図示された実施例は、外側境界の外部にあるガイド支持体44を含む。もちろん、ガイド支持体44は、カウンターウエイトの構成によっては外側境界内にあってもよい。ガイド支持体は公知の方法で、ガイドレール36に沿うカウンターウエイトの移動を助けるように作動する。
【0015】
図2の実施例では、緩衝部材40がカウンターウエイトの構造体42の外側境界内にある第1の部分52を有する。第2の部分54が外側境界の外部にある。この実施例では、緩衝部材40の末端部56が、カウンターウエイトの構造体が互いに接触する以前に他のカウンターウエイト(すなわちカウンターウエイト34)に接触するように構成されている。この実施例では、緩衝部材40は協働するシリンダーを有し、これらは公知の方法(すなわち液圧)で作動して、カウンターウエイトが互いに接触するほど接近したときにエネルギー吸収機能を提供する。
【0016】
図2の実施例では、フレーム42が複数の充填材60を支持する。1つの実施例では充填材は公知のようにプレートからなる。充填材60は構造体42の幅Wに相当する横方向の寸法を有する。この説明に用いられる「横方向」という用語は、図面に示される幅Wの方向を意味する。もちろん、フレーム部材の寸法および充填材60の寸法は、カウンターウエイト24の外側境界内に納まる。
【0017】
図2の実施例はまた複数の第2の充填部材62を含み、これらは第2の、より小さい横方向の寸法を有する。この実施例では、横方向で緩衝部材40の第1の部分52の両側に1セットずつ、都合2セットの第2の充填部材62が具備されている。したがって充填部材62は、構造体42の幅と緩衝部材40の第1の部分52の幅との間の差に相当する寸法を有する。
【0018】
図3は2つの緩衝部材40を含む他の実施例を示している。図2および図3の実施例の間の1つの相違は、後者が緩衝部材40の間に位置する1セットの第2の充填材62を含むことである。
【0019】
図2および図3の実施例のいずれにおいても、より小さい第2の充填材62によりカウンターウエイトの高さを増加することなく、所望のカウンターウエイト質量を実現することができる。言い換えれば、緩衝部材40の第1の部分52が占める外側境界内の高さ方向のスペースにも、比較的小さい充填材を設けることができる。
【0020】
プレート型の充填材が示されているが、コンクリートおよびその他の公知の要素のような、他の充填材もまた可能である。
【0021】
図示された実施例では緩衝部材40がカウンターウエイト24上に示されているが、昇降路26内でカウンターウエイト24に対向して設けられる限り、緩衝部材はカウンターウエイト34上にも具備されてよい。付け加えれば、両方のカウンターウエイトが少なくとも1つの緩衝部材を含んでよい。1つまたは複数の緩衝部材の構成および配置は、選択されたローピング方式に部分的に依存する。この説明を読んだ当業者は、その特定の要求に合致する適切な方式を選択することができよう。
【0022】
上記の説明は制限的ではなく例示的な性格のものである。本発明の主旨から必ずしも逸脱しない、開示された実施例に対する変形および改良が、当業者にとって明らかとなろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の請求項を検討することによってのみ判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はカウンターウエイトとともに移動するように支持された緩衝器を有するカウンターウエイトを含むエレベータシステムの、選択された部分の概略図である。
【図2】図2はカウンターウエイトの一実施例の概略図である。
【図3】図3はカウンターウエイトの他の実施例の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターウエイトの外側境界を画定する構造体と、
第1の部分が前記外側境界内に位置し、かつ前記構造体とともに移動するように支持された緩衝部材と、を有することを特徴とする、エレベータシステムに用いられるカウンターウエイト。
【請求項2】
緩衝部材が前記外側境界の外部に位置する第2の部分を有することを特徴とする、請求項1記載のカウンターウエイト。
【請求項3】
第2の部分は、前記外側境界と第2の部分の末端部との間の距離が変動するように第1の部分に対して移動可能であることを特徴とする、請求項2記載のカウンターウエイト。
【請求項4】
第1の部分が前記構造体に対して固定された位置に保たれることを特徴とする、請求項1記載のカウンターウエイト
【請求項5】
前記構造体がフレームを有し、かつフレームに支持された複数の充填材を含むことを特徴とする、請求項1記載のカウンターウエイト。
【請求項6】
少なくとも第1の充填材はフレームの幅寸法に相当する第1の寸法を有し、少なくとも第2の充填材は比較的小さい第2の寸法を有し、この第2の寸法はフレームの幅寸法と緩衝部材の第1の部分の幅寸法との間の差に相当することを特徴とする、請求項5記載のカウンターウエイト。
【請求項7】
第2の充填材が横方向で第1の部分の側部に位置することを特徴とする、請求項6記載のカウンターウエイト。
【請求項8】
第1の部分の両側にそれぞれ第2の充填材を含むことを特徴とする、請求項7記載のカウンターウエイト。
【請求項9】
複数の緩衝部材を含み、かつ第2の充填材が緩衝部材のそれぞれの第1の部分の間に位置することを特徴とする、請求項6記載のカウンターウエイト。
【請求項10】
複数の第1の充填材と複数の第2の充填材とを含むことを特徴とする、請求項6記載のカウンターウエイト。
【請求項11】
充填材がプレートを含むことを特徴とする、請求項5記載のカウンターウエイト。
【請求項12】
昇降路内の第1のエレベータかごと、
外側境界を画定する構造体を有する昇降路内の第1のカウンターウエイトと、
第1のエレベータかごを第1のカウンターウエイトに連結する第1の耐荷重部材と、
昇降路内で第1のエレベータかごの下方にある第2のエレベータかごと、
昇降路内で第1のカウンターウエイトの上方にあり、外側境界を画定する構造体を有する第2のカウンターウエイトと、
第2のエレベータかごを第2のカウンターウエイトに連結する第2の耐荷重部材と、
第1または第2のカウンターウエイトのうちの1つに関連し、関連するカウンターウエイトの外側境界内に支持された第1の部分を含む少なくとも1つの緩衝部材と、を有することを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項13】
緩衝部材は、対応するカウンターウエイトの外側境界の外部に、他方のカウンターウエイトに向かう方向に第2の部分を有し、該第2の部分が、カウンターウエイト同士が互いに接触する以前に他方のカウンターウエイトと接触することを特徴とする、請求項12記載のエレベータシステム。
【請求項14】
第2の部分は、関連するカウンターウエイトの構造体に他方のカウンターウエイトが接触するのを防止することを特徴とする、請求項13記載のエレベータシステム。
【請求項15】
関連するカウンターウエイトの構造体がフレームを有し、かつフレームに支持された複数の充填材を含むことを特徴とする、請求項12記載のエレベータシステム。
【請求項16】
少なくとも第1の充填材はフレームの幅寸法に相当する第1の寸法を有し、少なくとも第2の充填材は比較的小さい第2の寸法を有し、この第2の寸法はフレームの幅寸法と緩衝部材の第1の部分の幅寸法との間の差に相当することを特徴とする、請求項15記載のエレベータシステム。
【請求項17】
第2の充填材は、横方向で第1の部分の側部に位置することを特徴とする、請求項16記載のエレベータシステム。
【請求項18】
第1の部分の両側にそれぞれ第2の充填材を含むことを特徴とする、請求項17記載のエレベータシステム。
【請求項19】
複数の緩衝部材を含み、かつ第2の充填材が緩衝部材のそれぞれの第1の部分の間に位置することを特徴とする、請求項16記載のエレベータシステム。
【請求項20】
複数の第1の充填材と、複数の第2の充填材とを含むことを特徴とする、請求項16記載のエレベータシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−511391(P2009−511391A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535501(P2008−535501)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036654
【国際公開番号】WO2007/046784
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】