説明

部品の取付構造

【課題】取付作業性を損なうことなく、取付部品の離脱時の移動を確実に規制する。
【解決手段】取付部品1の裏面には、金属製のストッパブラケット10が固定される。ストッパブラケット10は、基板部10から曲折形成される係止板部13を有し、相手パネル2には、ストッパブラケット10に対応して貫通孔19が形成される。反取付方向51への荷重が取付部品1に作用し、係合部と被係合部との係合が解除されて取付部品1が反取付方向51へ移動すると、第1係止片17の先端部が相手パネル2の裏面と当接し、上記荷重の作用によって係止板部13が基板部12に対して傾動変形し、係止板部13の傾動変形によって第2係止片18の先端部が相手パネル2の裏面と当接し、これら第1係止片17及び第2係止片18と相手パネル2の裏面との当接によって反取付方向51への取付部品1の移動が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部品を相手パネルに取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8−121441号公報には、U字状を呈する本体の両側壁に、外方に突出してパネルの取付孔に係合する弾性係合片と、内方に突出して取付部品のボス部に食い込む逆止爪片とを形成した金属製のクリップが記載されている。本体の両側壁の上端部側は、パネルの取付孔の内周面に圧接する圧接部として機能し、各圧接部に、取付部品のボス部に食い込む逆止爪片が一体に形成されている。取付部品の固定状態では、本体の両側壁の各圧接部がパネルの取付孔の内周面に圧接し、逆止爪片がボス部の側面に強固に食い込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−121441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平8−121441号公報に記載されたクリップを使用して取付部品を車室内に取り付けた場合、車両衝突時などにおいて取付部品に離脱方向への荷重が作用すると、取付部品が、パネルの取付孔から離脱して飛び出し、車室内の乗員に当たってしまう可能性がある。
【0005】
また、上記不都合は、パネルの取付孔に対する弾性係合片の係合力を高めることによってある程度回避することができるが、確実に回避することはできず、且つ弾性係合片の係合力を高めると、取付部品の取付作業性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであって、取付作業性を損なわずに、取付部品の離脱時の移動を確実に規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、取付部品の裏面側の係合部を、所定の取付方向に沿って相手パネルの表面側に近接移動させて当該相手パネルの被係合部に係合することにより、当該取付部品を当該相手パネルに取り付ける取付構造であって、金属製のストッパブラケットと貫通孔とを備える。
【0008】
ストッパブラケットは、取付部品の裏面側に固定される固定部と、固定部から上記取付方向に延びて取付部品の裏面側に突出する基板部と、基板部から曲折形成される係止板部とを有する。貫通孔は、ストッパブラケットに対応して相手パネルに形成される。
【0009】
係止板部は、第1係止片と第2係止片とを有する。第1係止片は、基板部の一面側に突出し、取付部品に近接する方向へ延びる。第2係止片は、基板部の他面側に突出し、取付部品から離間する方向へ延びる。第1係止片と第2係止片とは、全体として基板部に対して傾斜する平板状である。
【0010】
係合部は、係止板部が貫通孔を挿通して相手パネルの裏面側に位置した状態で被係合部と係合する。第1係止片の先端部は、係合部と被係合部とが係合した状態で相手パネルの裏面と対向する。
【0011】
相手パネルから離間する反取付方向への荷重が取付部品に作用し、係合部と被係合部との係合が解除されて取付部品が反取付方向へ移動すると、第1係止片の先端部が相手パネルの裏面と当接し、上記荷重の作用によって係止板部が基板部に対して傾動変形し、係止板部の傾動変形によって第2係止片の先端部が相手パネルの裏面と当接し、これら第1係止片及び第2係止片と相手パネルの裏面との当接によって反取付方向への取付部品の移動が阻止される。
【0012】
上記構成では、取付部品を相手パネルに取り付ける場合、取付部品の裏面側を相手パネルの表面側に対向配置し、ストッパブラケットの係止板部を、相手パネルの貫通孔に挿通させて相手パネルの裏面側に位置させた後、取付部品の係合部を、取付方向に沿って相手パネルの表面側に近接移動させて被係合部に係合する。
【0013】
また、相手パネルに取り付けられた取付部品に対して反取付方向への荷重が作用し、係合部と被係合部との係合が解除されて取付部品が相手パネルから反取付方向へ移動すると、第1係止片の先端部が相手パネルの裏面と当接する。作用する荷重が比較的小さい場合、第1係止片の先端部と相手パネルの裏面との当接によって、反取付方向への取付部品の移動が阻止され、相手パネルからの取付部品の離脱が防止される。
【0014】
一方、作用する荷重が過大であると、係止板部が基板部に対して傾動変形し、係止板部の傾動変形によって第2係止片の先端部が相手パネルの裏面と当接し、これら第1係止片及び第2係止片と相手パネルの裏面との当接によって反取付方向への取付部品の移動が阻止され、相手パネルからの取付部品の離脱が防止される。
【0015】
このように、取付部品の取付作業時には、ストッパブラケットの係止板部を貫通孔に挿通させた後に係合部を被係合部に係合するので、ストッパブラケットによって係合作業が阻害されることがなく、作業性が良好である。
【0016】
また、相手パネルに取り付けられた取付部品に対して反取付方向への荷重が作用した場合には、ストッパブラケットの係止板部によって、相手パネルからの取付部品の離脱を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、取付作業性を損なうことなく、取付部品の離脱時の移動を確実に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の取付構造を示す斜視図である。
【図2】図1のストッパブラケットの斜視図である。
【図3】図1の取付構造の要部断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、図中のUPは上方を、FRは車両前方をそれぞれ示す。また、以下の説明において、取付方向50の反対方向が反取付方向51である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態は、車室の前面に配置されるアシストロアカバーなどの取付部品1を、車幅方向に沿って起立する車両本体側の相手パネル2に後方から取り付ける取付構造である。
【0021】
取付部品1の裏面側には、複数の係合部3が設けられ、各係合部3は、クリップ4とパネル連結部5とを有する。パネル連結部5は、取付部品1の裏面から相対向して突出する一対の外側板部6と、外側板部6の中間部同士を連結する板状取付部(図示省略)とを含む。パネル連結部5は、全体としてH状の断面を有し、クリップ4は、板状取付部に保持される。相手パネル2には、パネル連結部5に対応するH状の係合穴(被係合部)4が形成されている。
【0022】
後述するストッパブラケット10の係止板部13が相手パネル2の貫通孔19を挿通して相手パネル2の裏面側に位置した状態で、取付部品1を所定の取付方向50に沿って相手パネル2の表面側に近接移動させ、係合部3を係合穴7に挿入し、取付部品1を取付方向50へ押圧すると、クリップ4が弾性変形して係合穴7を挿通して相手パネル2の裏面側で係合穴7の周縁部と係合する。クリップ4と係合穴7の周縁部との係合によって、相手パネル2から離間する反取付方向51への取付部品1の移動が規制される。また、パネル連結部5と係合穴7との係合によって、上下方向及び左右方向への取付部品1の移動が規制され、これにより、取付部品1が相手パネル2に取り付けられ保持される。
【0023】
図1及び図2に示すように、取付部品1の裏面側において、隣接する2つの係合部3の間には、ストッパブラケット10が設けられている。ストッパブラケット10は、固定部11と基板部12と係止板部13とを有し、金属板をL状に打ち抜いて曲折することによって形成される。
【0024】
固定部11には、車幅方向に離間する2つの嵌合孔14が形成され、取付部品1の裏面には、嵌合孔14に対応する2つの円柱状の嵌合突起15が形成されている。嵌合孔14を嵌合突起15の外周面に嵌合することによって、固定部11が取付部品1の裏面側に固定される。なお、固定部11を取付部品1に固定する方法は、上記に限定されず、例えばボルトによって締結固定するなど、様々な方法が適用可能である。
【0025】
基板部12は、固定部11から曲折されて取付方向50に直線状に延び、取付部品1の裏面から係合部3よりも高く突出する。基板部12の先端側には、切り欠き溝16が形成される。切り欠き溝16は、固定部11側を底とするU状であり、切り欠き溝16の先端側に係止板部13が曲折形成される。
【0026】
係止板部13は、第1係止片17と第2係止片18とを有する。第1係止片17は、切り欠き溝16の両側で基板部12から曲折され、基板部12の一面側(図中下面側)に突出して取付部品1に近接する方向へ延びる。第2係止片18は、切り欠き溝16によって区画された領域であり、第1係止片17を基板部12から曲折することによって起立し、基板部12の他面側(図中上面側)に突出して取付部品1から離間する方向へ延びる。すなわち、第1係止片17と第2係止片18とは、全体として基板部12に対して傾斜する平板状である。
【0027】
図1及び図3に示すように、相手パネル2には、矩形状の貫通孔19がストッパブラケット10に対応して形成されている。貫通孔19の上下方向の幅Dは、基板部12と直交する方向における係止板部13の両端間の距離L1よりも大きく設定され(L1<D)、且つ係止板部13の全長(傾斜方向に沿った長さ)L2よりも小さく設定されている(D<L2)。第1係止片17の先端部(下端)は、係合部3と係合穴7とが係合した状態で相手パネル2の裏面と対向する。すなわち、係合部3と係合穴7とが係合した状態では、第1係止片17の下端から基板部12と平行に延ばした延長線53は、相手パネル2の裏面と交叉する。
【0028】
取付部品1を相手パネル2に取り付ける場合、取付部品1の裏面側を相手パネル2の表面側に対向配置し、ストッパブラケット10の係止板部13を、相手パネル2の貫通孔19に挿通させて相手パネル2の裏面側に位置させた後、取付部品1の係合部3を、取付方向50に沿って相手パネル2の表面側に近接移動させて係合穴17に係合する。
【0029】
また、車両衝突時などにおいて取付部品1に反取付方向51への荷重が作用し、係合部3と係合穴7との係合が解除されて取付部品1が相手パネル2から反取付方向51へ移動すると、図4に示すように、第1係止片17の先端部が相手パネル2の裏面と当接する。作用する荷重が比較的小さい場合、第1係止片17の先端部と相手パネル2の裏面との当接によって、反取付方向51への取付部品1の移動が阻止され、相手パネル2からの取付部品1の離脱が防止される。
【0030】
一方、作用する荷重が過大であると、図4中二点鎖線で示すように、係止板部13が基板部12に対して傾動変形し、係止板部13の傾動変形によって第2係止片18の先端部が相手パネル2の裏面と当接する。すなわち、基板部12の両面側で第1係止片17と第2係止片18とがそれぞれ相手パネル2の裏面と当接し、反取付方向51への取付部品1の移動が阻止され、相手パネル2からの取付部品1の離脱が防止される。
【0031】
なお、上記荷重が作用すると、固定部11には基板部12から引っ張り力が作用するが、この引っ張り力は、モーメントとして嵌合穴14と嵌合突起15との嵌合部分に作用するため、両者の嵌合状態は強固に保持され、ストッパブラケット10が取付部品1から離脱することはない。
【0032】
このように、取付部品1の取付作業時には、ストッパブラケット10の係止板部13を貫通孔19に挿通させた後に係合部3を係合穴7に係合するので、ストッパブラケット10によって係合作業が阻害されることがなく、作業性が良好である。
【0033】
また、相手パネル2に取り付けられた取付部品1に対して反取付方向51への荷重が作用した場合には、ストッパブラケット10の係止板部13によって、相手パネル2からの取付部品1の離脱を確実に防止することができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、取付部材1の係合部3と相手パネル2の係合穴7とを係合する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、取付部材1に係合穴7を形成し、相手パネル2に係合部3を設けてもよい。また、係合部3を、クリップ4及びパネル連結部5以外の構成としてもよく、被係合部を係合穴7以外の構成としてもよい。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、取付部品を相手パネルに取り付ける取付構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 取付部品
2 相手パネル
3 係合部
4 クリップ
5 パネル連結部
7 係合穴(被係合部)
10 ストッパブラケット
11 固定部
12 基板部
13 係止板部
17 第1係止片
18 第2係止片
19 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部品の裏面側の係合部を、所定の取付方向に沿って相手パネルの表面側に近接移動させて当該相手パネルの被係合部に係合することにより、当該取付部品を当該相手パネルに取り付ける取付構造であって、
前記取付部品の裏面側に固定される固定部と、当該固定部から前記取付方向に延びて前記取付部品の裏面側に突出する基板部と、当該基板部から曲折形成される係止板部とを有する金属製のストッパブラケットと、
前記ストッパブラケットに対応して前記相手パネルに形成される貫通孔と、を備え、
前記係止板部は、前記基板部の一面側に突出し前記取付部品に近接する方向へ延びる第1係止片と、前記基板部の他面側に突出し前記取付部品から離間する方向へ延びる第2係止片とを有し、
前記第1係止片と前記第2係止片とは、全体として前記基板部に対して傾斜する平板状であり、
前記係合部は、前記係止板部が前記貫通孔を挿通して前記相手パネルの裏面側に位置した状態で前記被係合部と係合し、
前記第1係止片の先端部は、前記係合部と前記被係合部とが係合した状態で前記相手パネルの裏面と対向し、
前記相手パネルから離間する反取付方向への荷重が前記取付部品に作用し、前記係合部と前記被係合部との係合が解除されて前記取付部品が前記反取付方向へ移動すると、前記第1係止片の先端部が前記相手パネルの裏面と当接し、前記荷重の作用によって前記係止板部が前記基板部に対して傾動変形し、当該係止板部の傾動変形によって前記第2係止片の先端部が前記相手パネルの裏面と当接し、これら第1係止片及び第2係止片と前記相手パネルの裏面との当接によって前記反取付方向への前記取付部品の移動が阻止される
ことを特徴とする部品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−252525(P2011−252525A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125678(P2010−125678)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】