説明

部品供給方法及び部品供給ヘッド

【課題】作業装置の作業範囲の拡大化を図ること。
【解決手段】ナット供給方法は、スポット溶接機200にナット800を供給するとき、ナット供給部1のナット収容通路12内の先頭ナット800Aがスポット溶接機200に供給されるたびに、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bをナット供給部1のナット収容通路12の後端部に移送し、マガジン4のナット収容通路41内のナット800が消費され、マガジン4が空状態になったとき、マガジン装着部2により、空状態のマガジン4Bを離脱し、その後、マガジン装着部2により、ナット800が充填された充填状態のマガジン4Aを装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置例えばスポット溶接機に部品例えばナットを供給する部品供給方法、及び、部品供給方法に使用される部品供給ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スポット溶接機にナットを供給するナット供給方法は、パーツフィーダーから送給ホースを介してナット供給ヘッドにナットを補給し、ナット供給ヘッドからスポット溶接機の上部電極又は下部電極にナットを供給するよう構成されている。
【0003】
しかし、従来のナット供給方法によると、パーツフィーダーとナット供給ヘッドとを送給ホースで連結しているため、パーツフィーダーとナット供給ヘッドとを比較的接近させて設置する場合が多くなり、定置式スポット溶接機にナットを供給する場合、定置式スポット溶接機の作業範囲が狭くなるという問題があった。特に、ロボットを用いた自動化設備において定置式スポット溶接機の作業範囲が固定化されることは、ナットが溶接される対象としてのワークを電極にセットするための時間が長くなり、作業効率の低下を招くことになる。なお、本願に先立ち先行技術を調査したところ、特許文献1、2を見出した。
【特許文献1】特許第2533396号公報
【特許文献2】実公平7−37797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のようなナット供給方法のみに限定されるものではなく、広く部品供給方法として適用されるものであるが、上記のような従来技術の問題点を解決し、送給ホースを用いることなく作業装置に部品を供給することで作業装置の作業範囲の拡大化を図ることができる部品供給方法を提供することを目的とする。また、本発明は、作業装置の作業範囲の拡大化を図ることができる部品供給ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部品供給方法は、部品供給ヘッドから部品を1個ずつ作業装置に供給する部品供給方法において、所定個数Mの部品を充填可能な部品収容通路を有するマガジンを備え、かつ、前記部品供給ヘッドは、所定個数Nの部品を収容可能な部品収容通路を有する部品供給部であって、先頭部品から順に部品を1個ずつ前記作業装置に供給する部品供給部と、前記部品供給部の部品収容通路の後端部と前記マガジンの部品収容通路の先端部とが連通状態となるよう、前記マガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部とを備え、前記作業装置に部品を供給するとき、前記部品供給部の部品収容通路内の先頭部品が前記作業装置に供給されるたびに、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を前記部品供給部の部品収容通路の後端部に移送し、前記マガジンの部品収容通路内の部品が消費され、前記マガジンが空状態になったとき、前記マガジン装着部により、前記空状態のマガジンを離脱し、その後、前記マガジン装着部により、部品が充填された充填状態のマガジンを装着することを特徴とする。
【0006】
本発明の部品供給方法によると、部品が充填された充填状態のマガジンを装着した状態で部品供給部から作業装置に部品を供給し、マガジンが空状態になったとき、この空状態のマガジンを離脱し、部品が充填された充填状態のマガジンを装着し、部品供給部から作業装置に部品を供給するようにしたため、従来のように部品供給ヘッドに送給ホースを接続しなくても作業装置に部品を供給できるようになり、このため、作業装置の作業範囲の拡大化を図ることができる。
【0007】
ここで、前記部品は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、前記所定個数Mの部品は、前記マガジンの部品収容通路に縦積み状態で充填され、かつ、前記所定個数Nの部品は、前記部品供給部の部品収容通路に横一列に収容される。このように、小さな高さ寸法の方向に部品を縦積みすることにより、大きな幅寸法の方向に部品を横積みする場合と比べて積み方向の寸法が小さくなり、マガジンの長手方向の寸法が小さくなる。
【0008】
また、前記作業装置及び前記部品供給ヘッドは、可搬式ロボットの可動部に固定されており、前記空状態のマガジンは、前記可搬式ロボットとは別個独立して設置されたマガジン交換機まで搬送され、該マガジン交換機において充填状態のマガジンと交換され、該充填状態のマガジンが前記マガジン装着部により装着される。このように可搬式ロボットが移動してマガジンが交換されるよう構成することにより、空状態のマガジンを部品供給ヘッドからマガジン交換機まで搬送するために、また、充填状態のマガジンをマガジン交換機から部品供給ヘッドまで搬送するために、特別なマガジン搬送装置を別途設けなくて済む。
【0009】
また、前記マガジン交換機は、前記空状態のマガジンに対し所定個数Mの部品を充填する。このようにマガジン交換機において空状態のマガジンから充填状態のマガジンを作り出すことにより、所定個数のマガジンを繰り返し利用して部品供給を連続して行うことができるようになるため、マガジン交換機において充填状態のマガジンを予め複数個準備しておき、空状態のマガジンが搬送されてくるたびに充填状態のマガジンを1個ずつ部品供給ヘッドに搬送する場合と比べ、少ない個数のマガジンで部品供給を連続的に行うことができる。
【0010】
また、前記作業装置は例えばスポット溶接機であり、かつ前記部品は例えば有孔部品である。
【0011】
本発明の部品供給ヘッドは、作業装置に部品を1個ずつ供給する部品供給ヘッドにおいて、所定個数Nの部品が収容される部品収容通路を有し、先頭部品から順に部品を1個ずつ前記作業装置に供給する部品供給部と、所定個数Mの部品が充填される部品収容通路を有するマガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部であって、前記部品供給部の部品収容通路の後端部と前記マガジンの部品収容通路の先端部とが連通状態となるよう、前記マガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部と、前記部品供給部の部品収容通路内の先頭部品が前記作業装置に供給されると、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を前記部品供給部の部品収容通路の後端部に移送する部品補給手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の部品供給ヘッドによると、マガジンを装着し、マガジンから部品供給部に部品を補給するよう構成したため、従来のように部品供給ヘッドに送給ホースを接続しなくても作業装置に部品を供給できるようになり、このため、作業装置の作業範囲の拡大化を図ることができる。
【0013】
ここで、前記部品は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、前記マガジンは、前記所定個数Mの部品を縦積み状態で部品収容通路に収容し、かつ、前記部品供給部は、前記所定個数Nの部品を横一列に部品収容通路に収容する。このように、小さな高さ寸法の方向に部品を縦積みすることにより、大きな幅寸法の方向に部品を横積みする場合と比べて積み方向の寸法が小さくなり、マガジンの長手方向の寸法が小さくなる。
【0014】
また、前記作業装置は、可搬式ロボットの可動部に固定され、当該部品供給ヘッドは前記可搬式ロボットの可動部に固定されている。このように部品供給ヘッドを可搬式ロボットの可動部に固定することにより、マガジンが空状態になったときに空状態のマガジンを充填状態のマガジンに交換したい場合、可搬式ロボットがマガジン交換機まで移動してマガジンを交換することが可能なため、空状態のマガジンを部品供給ヘッドからマガジン交換機まで搬送すると共に、充填状態のマガジンをマガジン交換機から部品供給ヘッドまで搬送するために、特別なマガジン搬送装置を別途設けなくて済む。
【0015】
また、前記作業装置は例えばスポット溶接機であり、かつ前記部品は例えばナットなど有孔部品である。
【0016】
また、前記部品補給手段は、往復動可能な押込ブロックを備え、前記押込ブロックが後退するとき、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品は、前記部品供給部の部品収容通路の後端部まで案内されて前記部品供給部の部品収容通路内の最後尾部品となり、前記押込ブロックが前進するとき、前記最後尾部品は、前記押込ブロックの前面から押圧力を受け、前記部品供給部の部品収容通路の先端部に向かって部品1個分の距離だけ前進すると共に、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品は、前記押込ブロックの上面で受け止められ、前記マガジンの部品収容通路の先端部に留まる。このように押込ブロックを部品1個分の距離だけ往復動させることによりマガジン内の部品を部品供給部に1個ずつ補給することができる。
【0017】
また、部品供給ヘッドは、部品拘束手段を備え、該部品拘束手段は、前記押込ブロックが前進するとき、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を拘束して該部品収容通路内に留めると共に、前記押込ブロックが後退するとき、前記先頭部品に対する拘束を解除する。このように部品拘束手段によってマガジン内の先頭部品を拘束することによって押込ブロックの前進が円滑に行われる。
【0018】
ここで、前記部品拘束手段は、前記部品が、ナット本体部と該ナット本体部の底部から外方へ突出した複数の溶接脚部とを有するナットであり、かつ、前記マガジンの部品収容通路内での各ナットの収容状態が、前記溶接脚部が前記ナット本体部よりも前記押込ブロックに近い収容形態である場合、先頭ナットのナット本体部の側面を押圧して該先頭ナットを拘束する。このように部品拘束手段が先頭ナットのナット本体部の側面を押圧することにより、先頭ナットは傾いた状態になり、押込ブロックの前進がより一層円滑に行われるようになる。
【0019】
また、部品供給ヘッドは、部品押え手段を備え、該部品押え手段は、前記マガジンの部品収容通路内の最後尾部品を該部品収容通路内の先頭部品に向かう方向へ押圧する。このように部品押え手段がマガジン内の最後尾部品を押圧することにより、マガジン内から部品供給部内へ部品を円滑に移送することができる。
【0020】
ここで、前記マガジンは、部品収容通路の中心線上に、前記有孔部品の孔に挿通可能なガイドピンを備える。このようにガイドピンを設けることにより、マガジン内の各有孔部品の孔にガイドピンが挿通されるようになり、整然とした整列状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る部品供給方法が使用される部品供給システムのブロック構成図、図2は、ナット供給システムの概略構成図、図3は、ナット供給ヘッドの要部側面図、図4は、同ナット供給ヘッドの要部平面図、図5〜図8は、同ナット供給ヘッドの動作説明図、図9は、同ナット供給ヘッドのナット供給部の動作説明図、図10は、スポット溶接機の溶接動作説明図、図11は、マガジン装着部の平面図、図12は、マガジン交換機の構成図、図13は、マガジン交換機のマガジン充填装置の正面部分断面図、図14は、同マガジン充填装置の側面図をそれぞれ示す。
【0023】
図1において、本実施形態に係る部品供給システムは、パーツフィーダー100と作業装置200と部品供給ヘッド300とマガジン交換機400とマガジン充填装置500を備える。
【0024】
パーツフィーダー100は、有孔部品例えばナットを送給するナットフィーダーである。
【0025】
作業装置200は、例えばワークに対してナットを溶接するスポット溶接機であるが、それ以外にかしめ装置などであってもよい。
【0026】
部品供給ヘッド300は、作業装置200に部品を供給するものであり、作業装置200がスポット溶接機である場合、有孔部品としてのナットを供給する。
【0027】
部品供給ヘッド300は、部品供給部1とマガジン装着部2と部品補給手段3を備える。
【0028】
部品供給部1は作業装置200に部品を供給する。部品供給部1は、後述するように、所定個数Nの部品を収容可能な部品収容通路12を有し、部品収容通路12内の先頭部品から順に部品を1個ずつ作業装置200に供給する。
【0029】
マガジン装着部2は、部品供給部1に部品を補給する充填状態のマガジン4つまり充填マガジン4Aを装着し、その後、空状態のマガジンつまり空マガジン4Bを離脱する。マガジン4は、後述するように、所定個数Mの部品が充填される部品収容通路41を有する。
【0030】
部品補給手段3は、マガジン4内の部品を部品供給部1に補給する作業を行うものである。
【0031】
マガジン交換機400は、空マガジン4Bを充填マガジン4Aに交換するものである。
【0032】
マガジン充填装置500は、空マガジン4Bにパーツフィーダー100から送給されてくる部品を充填する作業を行うものである。
【0033】
次に、上記構成の部品供給システムによる部品供給方法を説明する。
【0034】
作業装置200が作業を開始する前、部品供給ヘッド300のマガジン装着部2は、充填マガジン4Aの部品収容通路41の先端部と部品供給部1の部品収容通路12の後端部とが連通状態になるよう、充填マガジン4Aを離脱可能に装着する。
【0035】
その後、作業装置200が作業を開始すると、所定のタイミングで部品供給ヘッド300の部品供給部1から作業装置200に部品が1個ずつ供給され、作業装置200は供給されてきた部品に対して所定の作業例えば溶接作業を行う。
【0036】
部品供給部1の部品収容通路12内の先頭部品が作業装置200に供給されると、部品補給手段3は、マガジン4の部品収容通路41内の先頭部品を部品供給部1の部品収容通路12の後端部に移送して部品を補給し、かつ、上記供給された先頭部品に後続する部品が供給前の上記先頭部品の位置まで移動するよう上記移送された部品を移動する。
【0037】
その後、マガジン4内のM個の部品が全て部品供給部1に補給されマガジン4が空マガジン4Bになると、マガジン装着部2は空マガジン4Bを離脱し、空マガジン4Bはマガジン交換機400に搬送される。そして、空マガジン4Bはマガジン交換機400において充填マガジン4Aと交換される。この充填マガジン4Aは部品供給ヘッド300に搬送され、マガジン装着部2により装着される。以後、作業装置200への部品供給が再開される。なお、マガジン交換機400に搬送されてきた空マガジン4Bには、パーツフィーダー100から送給されてくる部品がマガジン充填装置500によってM個だけ充填され、その後、搬送されてくる別の空マガジン4Bと交換されるまで待機状態とされる。
【0038】
このような部品供給方法によると、充填マガジン4Aを装着した状態で部品供給部1から作業装置200に部品を供給し、マガジン4が空状態になったとき、この空マガジン4Bを離脱し、充填マガジン4Aを装着し、部品供給部1から作業装置200に部品を供給するようにしたため、従来のように部品供給ヘッド300に送給ホースを接続しなくても作業装置200に部品を供給できるようになり、このため、作業装置200の作業範囲の拡大化を図ることができる。
【0039】
図1にブロック構成図として示した部品供給システムは、ナット供給システムとして、図2に具体的に示すように構成される。
【0040】
図2において、ナット供給システムは、作業装置200としてのスポット溶接機と、部品供給ヘッド300としてのナット供給ヘッドと、マガジン交換機400と、パーツフィーダー100としてのナットフィーダーとにより構成される。
【0041】
(i) スポット溶接機200(図2、図3、図6、図10)
スポット溶接機200及びナット供給ヘッド300は可搬式ロボットの可動部(C型ガン)600に配設される。可搬式ロボットの可動部600は、X、Y、Z軸方向に移動可能で、かつ、任意の軸回りに回転可能とされている。
【0042】
スポット溶接機200は、ワーク700がセットされる下部固定電極201と、ナット800を保持しながら下部固定電極201に向かって下降可能な上部可動電極202とを備え、ワーク700にナット800を溶接する。上部可動電極202には、昇降可能なガイドシャフト202aが設けられる。ナット800は、本体部800aと溶接脚部800bからなり、高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されている。
【0043】
また、可搬式ロボットの可動部600には、後述する部品押え手段6としてのナット押え手段が配設されている。
【0044】
(ii) ナット供給ヘッド300(図2〜図11)
ナット供給ヘッド300は、上部可動電極202の側方に位置するよう可搬式ロボットの可動部600に配設される。
【0045】
ナット供給ヘッド300は、上部可動電極202にナット800を供給する部品供給部1としてのナット供給部と、ナット供給部1に離脱可能に装着されるマガジン4と、マガジン4をナット供給部1に装着し、離脱するマガジン装着部2と、マガジン4内のナット800をナット供給部1に補給する部品補給手段3としてのナット補給手段と、ナット補給手段3の作動を補助するためにマガジン4内のナット800を拘束する部品拘束手段5としてのナット拘束手段と、マガジン4内のナット詰まりを防止するための部品押え手段6としてのナット押え手段を備える。
【0046】
ここで、ナット供給部1とマガジン装着部2とナット補給手段3とマガジン4とナット拘束手段5とナット押え手段6との間での相対的位置関係は、マガジン装着部2とナット拘束手段5とナット押え手段6が固定側となり、ナット供給部1とナット補給手段3は、固定側に対して移動可能な可動側となり、かつ、ナット補給手段3は、ナット供給部1に対して移動可能な可動側となる。
【0047】
A. ナット供給部1(図2〜図10)
ナット供給部1は、図4図示のエアシリンダ11によって長手方向aへ往復動可能とされる。ナット供給部1は、所定個数N(本実施形態では、N=5)のナット800を収容する部品収容通路12としてのナット収容通路を有する。ナット収容通路12には、ナット800が横一列に収容され、先頭部品としての先頭ナット800Aから順にナット800が1個ずつ上部可動電極202に供給される。
【0048】
ナット収容通路12の先端は開口しており、この先端開口部の下部は、ゲート機構13の堰部13aによって開閉可能とされる。
【0049】
ゲート機構13は、図9に示すように、ナット供給部1に保持された水平軸13bに装着されたコイルばね13cと、ナット供給ヘッド300の固定側に保持されたローラ13dと当接可能なレバー部13eを備える。コイルばね13cは、水平軸13bを中心とする反時計方向の回動力をレバー部13eに常時加える。
【0050】
レバー部13eは、ナット供給部1が後退位置にあるとき、ローラ13dと当接状態を保ち、堰部13aの時計方向への回動を規制し、堰部13aは、ナット収容通路12の先端開口部の下部を強い閉状態に保つ。また、レバー部13eは、ナット供給部1が前進位置にあるとき、ローラ13dと離間状態を保ち、堰部13aは時計方向への回動規制を受けず、コイルばね13cの弾性力による反時計方向の回動力のみを受けるようになり、堰部13aは、ナット収容通路12の先端開口部を弱い閉状態に保つ。
【0051】
ナット収容通路12の後端部は、マガジン4の先端部と接続可能とされる。
【0052】
また、図4に示すように、ナット収容通路12の先端部の天井部12aは、ガイドシャフト202aの先端部をナット収容通路12内に進入可能にする前後方向の切欠部12bを有している。
【0053】
また、図示しないが、ナット供給部1には、後述するようにナット収容通路12内の先頭ナット800Aをナット収容通路12の外へ取出す際に先頭ナット800Aに後続する次のナット(次ナット)800がナット収容通路12の外へ出ないよう次ナット800を押さえるナット押え機構が設けられている。
【0054】
ナット供給部1及びスポット溶接機200は、図10(A)〜(F)に示すような動作を行う。
【0055】
図10(A)〜(F)において、スポット溶接開始前には、図10(A)に示すように、ナット供給部1は後退位置にあり、かつ、上部可動電極202は上昇位置にある。
【0056】
まず、上部可動電極202にナット800を供給するために、ナット供給部1を、上部可動電極202の真下に先端部が位置する前進位置まで前進させる(図10(B)図示の状態に対応する。)。
【0057】
次に、上部可動電極202の内部のガイドシャフト202aを下降させ、ガイドシャフト202aの先端部をナット収容通路12内の先頭ナット800Aの孔800cに圧入し、先頭ナット800Aを弾性保持する。次に、ナット供給部1を後退位置まで後退させる。この後退時、ガイドシャフト202aに弾性保持された先頭ナット800Aがゲート機構13の堰部13aを押し開き、先頭ナット800Aはナット収容通路12の外へ出る(図10(C)図示の状態に対応する。)。この間に、下部固定電極201にはワーク700をセットし、スポット溶接が開始される。
【0058】
次に、上部可動電極202を下降させ、上部可動電極202と下部固定電極201との間のワーク700及びナット800を加圧しながら通電し、ワーク700にナット800を溶接する(図10(D)図示の状態に対応する。)。
【0059】
次に、上部可動電極202を上昇させる(図10(E)図示の状態に対応する。)。
【0060】
次に、ナット供給部1及び上部可動電極202を上記と同様に動作させ、上部可動電極202に次のナット800(800A)を保持させると共に、ワーク700を次の溶接位置まで移動して下部固定電極201にセットする(図10(F)図示の状態に対応する。)。以後、上記と同様の動作を繰り返し行う。
【0061】
B. マガジン4(図2〜図8、図11)
マガジン4は、マガジン装着部2によってナット供給部1のナット収容通路12の後端部の上方に位置する所定位置に離脱可能に装着され、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部とマガジン4のナット収容通路41の先端部とが連通可能となる。
【0062】
マガジン4は、底部42と上端開口部43とを有する有底筒形状をしている。マガジン4の内部は部品収容通路としてのナット収容通路41を構成し、ナット収容通路41に、所定個数M(本実施形態では、M=7)のナット800が縦一列に縦積み状態で収容される。
【0063】
マガジン4の底部42の上面には、その中央部から上方へガイドピン44が垂直に延設され、ナット800の孔800cにガイドピン44が挿通された状態でナット800はナット収容通路41に収容される。ガイドピン44は、ナット収容通路41の中心線に沿って延びる。
【0064】
ナット800は、上下逆様の状態、つまりナット本体部800aが下側で溶接脚部800bが上側に位置する状態でマガジン4に収容され、また、マガジン4は、上下逆様の状態、つまり底部42が上側で上端開口部43が下側に位置する状態で上記所定位置に装着される。
【0065】
マガジン4の底部42には、ガイドピン44の延設部位を囲むように複数の貫通孔45が設けられている。各貫通孔45は、マガジン4がナット供給部1に装着された状態では上側に位置し、これらの貫通孔45に、マガジン4の上方からナット押え手段6のナット押えピン61が挿通されている。ナット押えピン61は、マガジン4内に収容されているナット800を下方へ押圧し、マガジン4内でのナット詰まりを未然に防止するためのものである。
【0066】
マガジン4の前壁部46には、ナット拘束手段5の拘束レバー51をナット収容通路41内に進入可能にする開口部が設けられている。
【0067】
また、図示しないが、マガジン4の底部42付近には、ナット供給時にマガジン4内の先頭ナット800Bの有無を光電変換方式その他の方式によって検出し、マガジン4が空状態になったことを検知するためのナットセンサが設けられる。
【0068】
C. マガジン装着部2(図4、図11)
マガジン装着部2は、マガジン4をナット供給部1に装着すると共にナット供給部1から離脱させる動作を行う。
【0069】
マガジン装着部2は、固定金具14に固定されたエアシリンダ21と、エアシリンダ21のロッド21aの先端部に固定された直動部材22と、一端部が直動部材22にピン結合され、他端部がナット供給部1にピン結合された「へ」字状部材23と、一端部がナット供給部1にピン結合され、他端部にマガジン押圧部材24が配設された回動部材25と、一端部が「へ」字状部材23の屈曲部23aにピン結合され、他端部が回動部材25の中間部25aにピン結合されたリンク部材26とにより構成される。
【0070】
マガジン装着部2は、エアシリンダ21のロッド21aが前進位置にあるとき、図11に実線で示すような状態を維持し、マガジン4の後面47に押圧力を加え、マガジン4を所定位置に固定する。
【0071】
また、マガジン装着部2は、エアシリンダ21のロッド21aが後退を開始すると、マガジン押圧部材24がマガジン4の後面47から離れ、「へ」字状部材23がナット供給部1のストッパー14と当接したとき、図11に二点鎖線で示すような状態となり、マガジン4を所定位置から離脱させることが可能となる。
【0072】
D. ナット補給手段3(図3〜図8)
ナット補給手段3は、ナット供給部1のナット収容通路12の延長上に配され、前後方向へ往復動可能な押込ブロック31と、ナット供給部1に固定され、押込ブロック31を往復駆動するエアシリンダ32(図3)とを備える。
【0073】
押込ブロック31は、ほぼナット1個分の距離(ナット800の幅寸法に対応する距離)だけ前進することによって、ナット供給部1のナット収容通路12内のナット列をナット1個分の距離だけ堰部13aに向けて移動させ、また、ほぼナット1個分の距離だけ後退することによって、この後退によって生じた空間にマガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bを案内する。この案内された先頭ナット800Bは、ナット供給部1のナット収容通路12内の最後尾ナット800Cとなる。
【0074】
このように、押込ブロック31の移動量は、ほぼナット1個分の距離だけの小さな移動量となる。
【0075】
E. ナット拘束手段5(図3〜図8)
ナット拘束手段5は、前後方向へ往復動可能でマガジン4の前壁部46の開口部に出没可能な拘束レバー51と、ナット供給部1に固定され、拘束レバー51を前後方向へ往復駆動するエアシリンダ52とを備える。
【0076】
拘束レバー51は、マガジン4の前壁部46の開口部に進入した状態にあるとき、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bの本体部800aの側面を押して先頭ナット800Bをナット収容通路41内に留める。ここで、後述するように、先頭ナット800Bに対しナット押え手段6による下方への押下力が作用しているが、ナット拘束手段5は、上記押下力に打ち勝って先頭ナット800Bをナット収容通路41内に留めることができるよう構成されている。なお、拘束レバー51は、本実施形態のように、ナット800がその本体部800aが上側で溶接脚部800bが下側に位置するような姿勢、換言すると、溶接脚部800bがナット本体部800aよりも押込ブロック31に近い姿勢でナット収容通路41に収容される場合に有効に作用し、側面を押された先頭ナット800Bは図5に示すように傾くため、押込ブロック31の前進時に、先頭ナット800Bの溶接脚部800bと押込ブロック31の上面との干渉が発生しにくくなり、押込ブロック31は円滑に前進することができる。
【0077】
F. ナット押え手段6(図2、図3)
ナット押え手段6は、ナット供給部1に上下逆様の状態で装着されたマガジン4の底部42の貫通孔45に挿通可能なナット押えピン61と、可搬式ロボットの可動部600に固定され、ナット押えピン61を上下方向へ往復駆動するエアシリンダ62とを備える。
【0078】
ナット押えピン61は、マガジン4の貫通孔45に挿通された状態にあるとき、エアシリンダ62によりマガジン4内の最後尾ナット800Dの上面を常時下方へ押圧する状態に保持され、マガジン4内の先頭ナット800Bがナット供給部1のナット収容通路41の後端部に円滑に移送(押下)されるように作用する。
【0079】
また、ナット押えピン61は、マガジン4の交換のために空マガジン4Bを所定位置から外し、また、所定位置に充填マガジン4Aを装着する際には、エアシリンダ62によって後退位置(上昇位置)に保持される。
【0080】
(iii) マガジン交換機400(図2、図12〜図14)
マガジン交換機400は、機台401に固定された支柱402に保持されたマガジン充填装置500と、機台401の軸部401aに固定されたターンテーブル403の上面に設けられたマガジン着脱装置900とを備える。ここで、マガジン着脱装置900は、図2には1つだけ示しているが、ターンテーブル403の上面に複数設けられている。
【0081】
A. マガジン着脱装置900
マガジン着脱装置900は、図12に側面図及び平面図(破線で囲んで示した部分)で示すように受台901を備え、受台901は、マガジン4の底部42の平面形状と一致する四角形状の底面部901aと、平面視L字状の側面部901bとを有し、底面部901aでマガジン4の底部42を受け止めると共に側面部901bでマガジン4の隣り合う2つの側壁部を受け止める。受台901の一方の開放された側壁部は、第1エアシリンダ902によって往復駆動される第1可動プレート903によって開放及び閉塞され、また、受台901の他方の開放された側壁部は、第2エアシリンダ904によって往復駆動される第2可動プレート905によって開放及び閉塞される。
【0082】
マガジン着脱装置900の受台901には、可搬式ロボットの可動部600の動きを制御することによって、ナット供給ヘッド300の所定位置に装着されたマガジン4がナット供給時とは上下逆様に反転されて載置される。そして、第1可動プレート903及び第2可動プレート905がマガジン4に接近し、マガジン4は受台901のL字状の側面部901bと第1、第2可動プレート903、905によって強固に保持される。その後、ナット供給ヘッド300のマガジン装着部2によってマガジン4は所定位置から解放され、ナット供給ヘッド300はマガジン4から離れる。
【0083】
その後、後述するようにマガジン充填装置500によってナット800が充填される。ナット800が充填された充填マガジン4Aは、充填マガジン4Aに接近してきたナット供給ヘッド300のマガジン装着部2によって所定位置に装着された後、第1、第2可動プレート903、905をマガジン4から離すことでマガジン4は受台901から離脱可能となり、その後、可搬式ロボットの可動部600の動きを制御してマガジン4をナット供給時の姿勢に戻す。
【0084】
B. マガジン充填装置500
マガジン充填装置500は、図13及び図14に示すように、エアシリンダ501と、エアシリンダ501によって昇降駆動される昇降部材502と、昇降部材502の昇降動作をガイドするガイド部材503と、昇降部材502の下端部の真下に配され、ナットフィーダー100に接続された送給チューブ101から送られてくるナット800を下方から支持する支持部材504とを備える。
【0085】
昇降部材502は、エアシリンダ501のロッド501aに連結された筒状部502aを備え、筒状部502aの内部に軸合せ部材502b及びばね部材502cが配設されている。
【0086】
筒状部502aは、支持部材504で支持されたナット800の真上に位置し、エアシリンダ501によって昇降部材502が下降するとき、ナット800を下方へ押し下げる作用をする。
【0087】
軸合せ部材502bは、昇降部材502が上昇位置にあるときは、ばね部材502cの付勢力により前進位置に保持されるが、エアシリンダ501によって昇降部材502が下降し、軸合せ部材502bの下端に形成されている嵌合孔502dにマガジン4のガイドピン44の先端部が嵌った後はばね部材502cの付勢力に抗して後退し、ガイドピン44と軸合せ部材502bとの連結状態を維持する作用をする。
【0088】
支持部材504は、昇降部材502が上昇位置にあるときは、図示しない付勢手段によってナット800を下方から支持可能な受部を形成しているが、昇降部材502が下降してナット800に対して筒状部502aの押下力が加わると、付勢手段の付勢力に抗して図14図示破線で示すように押し広げられ、ナット800を下方へ通過させる作用をする。押し広げられた支持部材504を下方へ通過したナット800は、孔800cにガイドピン44が挿通した状態でマガジン4内に収容される。
【0089】
マガジン4内にナット800が充填完了したことは、光反射式又は光透過式などのセンサ505(図2、図12)によって検知される。このセンサ505が充填完了を検知すると、マガジン充填装置500によるナット充填作業を終了する。
【0090】
(iv) ナットフィーダー100(図2)
ナットフィーダー100は、貯留したナット800をマガジン交換機400のマガジン充填装置500に連続して送給し得るよう構成される。ナットフィーダー100は、エスケープメント102を備え、エスケープメント102は、連続して送り出されるナット800を一個ごとに切り離して、フレキシブルな送給チューブ101に供給する。
【0091】
次に、上記のように構成されるナット供給システムによるナット供給方法の一例を順に説明する。
【0092】
(1) ナット供給開始前
マガジン装着部2によって所定位置に充填マガジン4Aが装着されている。ここで、ナット供給部1のナット収容通路12にはN個のナット800が充填され、充填マガジン4Aのナット収容通路41にはM個のナット800が充填されている(図3参照)。
【0093】
ナット供給部1のエアシリンダ11のロッドは前進位置にあり、ナット供給部1は後退位置にあり、ナット供給部1の先端部は上部可動電極の真下から水平方向へ離れている(図3参照)。
【0094】
ナット補給手段3のエアシリンダ32のロッドは前進位置にあり、押込ブロック31は後退位置にあり、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部に最後尾ナット800Cが位置している(図3参照)。
【0095】
ナット拘束手段5のエアシリンダ52のロッドは後退位置にあり、拘束レバー51は後退位置にあり、拘束レバー51は充填マガジン4Aのナット収容通路41内の先頭ナット800Bの側面を押圧しておらず、先頭ナット800Bは、拘束レバー51による拘束を受けていない状態でナット供給部1のナット収容通路12内の最後尾ナット800Cの上に載っている(図8参照)。
【0096】
ナット押え手段6のエアシリンダ62のロッドは前進方向の付勢力を受けており、ナット押えピン61は、マガジン4の底部42の貫通孔45を通りナット収容通路41内の最後尾ナット800D(図3)を下方へ押圧している。
【0097】
スポット溶接機200の下部固定電極201にワーク700がセットされている。
【0098】
(2) ナット供給時
A. ナット供給部1のエアシリンダ11のロッドを後退させ、ナット供給部1を前進させ、ナット収容通路12内の先頭ナット800Aを上部可動電極202の真下に位置させる。このとき、ナット供給部1の前進と共に押込ブロック31も前進し、また、上部可動電極202のガイドシャフト202aは上昇位置にある。
【0099】
B. ガイドシャフト202aを下降させ、ガイドシャフト202aの弾性先端部を先頭ナット800Aの孔800aに挿入する(図5参照)。
【0100】
C. ナット供給部1のエアシリンダ11のロッドを前進させ、ナット供給部1及び押込ブロック31を後退させる。このナット供給部1の後退時、ガイドシャフト202aに弾性保持された先頭ナット800Aがゲート機構13のコイルばね13cの付勢力に抗して堰部13aを開放し、先頭ナット800Aはナット収容通路12の外に出る(図6参照)。堰部13aは、先頭ナット800Aが外へ出た後、コイルばね13cの付勢力により閉状態に戻る。
【0101】
D. ナット800A(800)を保持した上部可動電極202を下降させ、下部固定電極201にセットされているワーク700にナット800をスポット溶接する。なお、ガイドシャフト202aは、上部可動電極202の下降時に所定のタイミングで上昇させる。溶接終了後、下部固定電極201よりワーク700を取出す。
【0102】
E. 先頭ナット800Aが外へ出た後、ナット拘束手段5のエアシリンダ52のロッドを前進させて拘束レバー51を前進させ、拘束レバー51がマガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bの側面を押圧することによって先頭ナット800Bの下降を規制した状態にし、この状態でナット補給手段3のエアシリンダ32のロッドを後退させ、押込ブロック31を前進させる。この押込ブロック31の前進により、ナット収容通路12内のナット800は堰部13aに向かって押され、上記先頭ナット800Aの後続ナット800が新たな先頭ナット800Aになる(図7参照)。
【0103】
F. ナット拘束手段5のエアシリンダ52のロッドを後退させて拘束レバー51を後退させ、拘束レバー51による先頭ナット800Bへの押圧を解除すると共に、ナット補給手段3のエアシリンダ32のロッドを前進させ、押込ブロック31を後退させる。この押込ブロック31の後退時、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部に形成される空間にマガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bが進入し、このナットがナット収容通路12内の新たな最後尾ナット800Cになる(図8参照)。このナット収容通路12内への先頭ナット800Bの進入動作は、マガジン4のナット収容通路41内の最後尾ナット800Dがナット押えピン61によって下方へ押圧されているため、円滑に行われる。
【0104】
G. 以後、マガジン4内のナット800が全てナット供給部1に補給し尽されるまで上記A〜Fを繰り返し行う。
【0105】
H. マガジン4が空マガジン4Bになったことが上記ナットセンサにより検知されると、可搬式ロボットの可動部600は、空マガジン4Bをナット供給時とは上下逆様にしてマガジン着脱装置900の受台901に載せる。
【0106】
I. 第1、第2エアシリンダ902、904により第1、第2可動プレート903、905を空マガジン4Bに接近させ、受台901のL字状の側面部901bと第1、第2可動プレート903、905とによって空マガジン4Bを強固に保持する。
【0107】
J. マガジン装着部2のエアシリンダ21のロッド21aを後退させ、マガジン押圧部材24を空マガジン4Bの後面47から離す。これにより空マガジン4Bは所定位置から離脱可能となり、空マガジン4Bを受台901に固定した状態で可搬式ロボットの可動部600を作動してナット供給ヘッド300をマガジン着脱装置900から離す。空マガジン4Bには、マガジン充填装置500によってM個のナット800が充填される。
【0108】
K. 充填マガジン4Aをマガジン装着部2によってナット供給部1の装着位置に装着する。ここで、充填マガジン4Aは、ターンテーブル403上の図示しないマガジン着脱装置900の受台901にセットされた空マガジン4Bに、マガジン充填装置500によってナット800が充填されたものであり、この充填マガジン4Aの装着方法は、上述した空マガジン4Bの離脱方法とは逆の手順で行われる。
【0109】
L. 所定位置に充填マガジン4Aを装着した後、充填マガジン4Aの上下を逆様にし、以後、上記A〜Kを繰り返す。
【0110】
以上説明したように、本実施形態のナット供給方法(部品供給方法)は、ナット供給ヘッド(部品供給ヘッド)300からナット(部品)800を1個ずつスポット溶接機(作業装置)200に供給するナット供給方法において、所定個数Mのナット800を充填可能なナット収容通路(部品収容通路)41を有するマガジン4を備え、かつ、ナット供給ヘッド300は、所定個数Nのナット800を収容可能なナット収容通路(部品収容通路)12を有するナット供給部(部品供給部)1であって、先頭ナット(先頭部品)800Aから順にナット800を1個ずつスポット溶接機200に供給するナット供給部1と、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部とマガジン4のナット収容通路41の先端部とが連通状態となるよう、マガジン4を離脱可能に装着するマガジン装着部2とを備え、スポット溶接機200にナット800を供給するとき、ナット供給部1のナット収容通路12内の先頭ナット800Aがスポット溶接機200に供給されるたびに、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bをナット供給部1のナット収容通路12の後端部に移送し、マガジン4のナット収容通路41内のナット800が消費され、マガジン4が空状態になったとき、マガジン装着部2により、空状態のマガジン4Bを離脱し、その後、マガジン装着部2により、ナット800が充填された充填状態のマガジン4Aを装着するよう構成される。
【0111】
本実施形態のナット供給方法によると、ナット800が充填された充填状態のマガジン4Aを装着した状態でナット供給部1からスポット溶接機200にナット800を供給し、マガジン4が空状態になったとき、この空状態のマガジン4Bを離脱し、ナット800が充填された充填状態のマガジン4Aを装着し、ナット供給部1からスポット溶接機200にナット800を供給するようにしたため、従来のようにナット供給ヘッドに送給ホースを接続しなくてもスポット溶接機にナットを供給できるようになり、このため、スポット溶接機の作業範囲の拡大化を図ることができる。
【0112】
また、ナット800は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、所定個数Mのナット800は、マガジン4のナット収容通路41に縦積み状態で充填され、かつ、所定個数Nのナット800は、ナット供給部1のナット収容通路12に横一列に収容される。このように、小さな高さ寸法の方向にナット800を縦積みすることにより、大きな幅寸法の方向にナット800を横積みする場合と比べて積み方向の寸法が小さくなり、マガジン4の長手方向の寸法が小さくなる。
【0113】
また、スポット溶接機200及びナット供給ヘッド300は、可搬式ロボットの可動部600に固定されており、空状態のマガジン4Bは、可搬式ロボットとは別個独立して設置されたマガジン交換機400まで搬送され、マガジン交換機400において充填状態のマガジン4Aと交換され、充填状態のマガジン4Aがマガジン装着部2により装着される。このように可搬式ロボットが移動してマガジン4が交換されるよう構成することにより、空状態のマガジン4Bをナット供給ヘッド300からマガジン交換機400まで搬送するために、また、充填状態のマガジン4Aをマガジン交換機400からナット供給ヘッド300まで搬送するために、特別なマガジン搬送装置を別途設けなくて済む。
【0114】
また、マガジン交換機400は、空状態のマガジン4Bに対し所定個数Mのナット800を充填する。このようにマガジン交換機400において空状態のマガジン4Bから充填状態のマガジン4Aを作り出すことにより、所定個数のマガジン4を繰り返し利用してナット供給を連続して行うことができるようになるため、マガジン交換機400において充填状態のマガジン4Aを予め複数個準備しておき、空状態のマガジン4Bが搬送されてくるたびに充填状態のマガジン4Aを1個ずつナット供給ヘッド300に搬送する場合と比べ、少ない個数のマガジン4でナット供給を連続的に行うことができる。
【0115】
また、本実施形態のナット供給ヘッド300は、スポット溶接機200にナット800を1個ずつ供給するナット供給ヘッド300において、所定個数Nのナット800が収容されるナット収容通路12を有し、先頭ナット800Aから順にナット800を1個ずつスポット溶接機200に供給するナット供給部1と、所定個数Mのナット800が充填されるナット収容通路41を有するマガジン4を離脱可能に装着するマガジン装着部2であって、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部とマガジン4のナット収容通路41の先端部とが連通状態となるよう、マガジン4を離脱可能に装着するマガジン装着部2と、ナット供給部1のナット収容通路12内の先頭ナット800Aがスポット溶接機200に供給されると、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Aをナット供給部1のナット収容通路12の後端部に移送するナット補給手段(部品補給手段)3とを備える。
【0116】
本実施形態のナット供給ヘッド300によると、マガジン4を装着し、マガジン4からナット供給部1にナット800を補給するよう構成したため、従来のようにナット供給ヘッドに送給ホースを接続しなくてもスポット溶接機にナットを供給できるようになり、このため、スポット溶接機の作業範囲の拡大化を図ることができる。
【0117】
また、ナット800は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、マガジン4は、所定個数Mのナット800を縦積み状態でナット収容通路41に収容し、かつ、ナット供給部1は、所定個数Nのナット800を横一列にナット収容通路12に収容する。このように、小さな高さ寸法の方向にナット800を縦積みすることにより、大きな幅寸法の方向にナット800を横積みする場合と比べて積み方向の寸法が小さくなり、マガジン4の長手方向の寸法が小さくなる。
【0118】
また、スポット溶接機200は、可搬式ロボットの可動部600に固定され、ナット供給ヘッド300は可搬式ロボットの可動部600に固定されている。このようにナット供給ヘッド300を可搬式ロボットの可動部600に固定することにより、マガジン4が空状態になったときに空状態のマガジン4Bを充填状態のマガジン4Aに交換したい場合、可搬式ロボットがマガジン交換機400まで移動してマガジン4を交換することが可能なため、空状態のマガジン4Bをナット供給ヘッド300からマガジン交換機400まで搬送すると共に、充填状態のマガジン4Aをマガジン交換機400からナット供給ヘッド300まで搬送するために、特別なマガジン搬送装置を別途設けなくて済む。なお、固定式の溶接機に対してナット供給ヘッド300を設置する場合は、マガジン交換を専用の搬送装置又は人手で行うことになる。
【0119】
また、ナット補給手段3は、往復動可能な押込ブロック31を備え、押込ブロック31が後退するとき、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bは、ナット供給部1のナット収容通路12の後端部まで案内されてナット供給部1のナット収容通路12内の最後尾ナット800Cとなり、押込ブロック31が前進するとき、最後尾ナット800Cは、押込ブロック31の前面から押圧力を受け、ナット供給部1のナット収容通路12の堰部(先端部)13aに向かってナット1個分の距離だけ前進すると共に、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bは、押込ブロック31の上面で受け止められ、マガジン4のナット収容通路41の先端部に留まる。このように押込ブロック31をナット1個分の距離だけ往復動させることによりマガジン4内のナット800をナット供給部1に1個ずつ補給することができる。
【0120】
また、ナット供給ヘッド300は、ナット拘束手段(部品拘束手段)5を備え、ナット拘束手段5は、押込ブロック31が前進するとき、マガジン4のナット収容通路41内の先頭ナット800Bを拘束してナット収容通路41内に留めると共に、押込ブロック31が後退するとき、先頭ナット800Bに対する拘束を解除する。このようにナット拘束手段41によってマガジン4内の先頭ナット800Bを拘束することによって押込ブロック31の前進が円滑に行われる。
【0121】
ナット拘束手段5は、マガジン4のナット収容通路41内に収容されているナット800、つまり、溶接脚部800bがナット本体部800aよりも押込ブロック31に近い状態で収容されているナット800、の本体部800aの側面を押圧して先頭ナット800Bを拘束しているため、先頭ナット800Bは傾いた状態になり、押込ブロック31の前進がより一層円滑に行われるようになる。
【0122】
また、ナット供給ヘッド300は、ナット押え手段(部品押え手段)6を備え、ナット押え手段6は、マガジン4のナット収容通路41内の最後尾ナット800Dをナット収容通路41内の先頭ナット800Bに向かう方向へ押圧する。このようにナット押え手段6がマガジン4内の最後尾ナット800Dを押圧することにより、マガジン4内からナット供給部1内へナット800を円滑に移送することができる。
【0123】
また、マガジン4は、ナット収容通路41の中心線上に、ナット800の孔800cに挿通可能なガイドピン44を備える。このようにガイドピン44を設けることにより、マガジン4内の各ナット800の孔800cにガイドピン44が挿通されるようになり、整然とした整列状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品供給方法が使用される部品供給システムのブロック構成図である。
【図2】ナット供給システムの概略構成図である。
【図3】ナット供給ヘッドの要部側面図である。
【図4】同ナット供給ヘッドの要部平面図である。
【図5】同ナット供給ヘッドの動作説明図である。
【図6】同じく同ナット供給ヘッドの動作説明図である。
【図7】同じく同ナット供給ヘッドの動作説明図である。
【図8】同じく同ナット供給ヘッドの動作説明図である。
【図9】同ナット供給ヘッドの部品供給部の動作説明図である。
【図10】スポット溶接機の溶接動作説明図である。
【図11】マガジン装着部の平面図である。
【図12】マガジン交換機の構成図である。
【図13】マガジン交換機のマガジン充填装置の正面部分断面図である。
【図14】同マガジン充填装置の側面図である。
【符号の説明】
【0125】
1 ナット供給部(部品供給部)
12 ナット収容通路(部品収容通路)
2 マガジン装着部(部品装着部)
3 ナット補給手段(部品補給手段)
31 押込ブロック
4 マガジン
41 ナット収容通路(部品収容通路)
44 ガイドピン
4A 充填マガジン
4B 空マガジン
5 ナット拘束手段(部品拘束手段)
6 ナット押え手段(部品押え手段)
100 ナットフィーダー(パーツフィーダー)
200 スポット溶接機(作業装置)
300 ナット供給ヘッド(部品供給ヘッド)
400 マガジン交換機
500 マガジン充填装置
600 可搬式ロボットの可動部
800 ナット(部品)
800a 本体部
800b 溶接脚部
800c 孔
800A ナット収容通路12内の先頭ナット(先頭部品)
800B ナット収容通路41内の先頭ナット(先頭部品)
800C ナット収容通路12内の最後尾ナット(最後尾部品)
800D ナット収容通路41内の最後尾ナット(最後尾部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給ヘッドから部品を1個ずつ作業装置に供給する部品供給方法において、
所定個数Mの部品を充填可能な部品収容通路を有するマガジンを備え、かつ、前記部品供給ヘッドは、所定個数Nの部品を収容可能な部品収容通路を有する部品供給部であって、先頭部品から順に部品を1個ずつ前記作業装置に供給する部品供給部と、前記部品供給部の部品収容通路の後端部と前記マガジンの部品収容通路の先端部とが連通状態となるよう、前記マガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部とを備え、
前記作業装置に部品を供給するとき、
前記部品供給部の部品収容通路内の先頭部品が前記作業装置に供給されるたびに、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を前記部品供給部の部品収容通路の後端部に移送し、
前記マガジンの部品収容通路内の部品が消費され、前記マガジンが空状態になったとき、前記マガジン装着部により、前記空状態のマガジンを離脱し、その後、前記マガジン装着部により、部品が充填された充填状態のマガジンを装着する
ことを特徴とする部品供給方法。
【請求項2】
前記部品は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、前記所定個数Mの部品は、前記マガジンの部品収容通路に縦積み状態で充填され、かつ、前記所定個数Nの部品は、前記部品供給部の部品収容通路に横一列に収容されることを特徴とする請求項1に記載の部品供給方法。
【請求項3】
前記作業装置及び前記部品供給ヘッドは、可搬式ロボットの可動部に固定されており、前記空状態のマガジンは、前記可搬式ロボットとは別個独立して設置されたマガジン交換機まで搬送され、該マガジン交換機において充填状態のマガジンと交換され、該充填状態のマガジンが前記マガジン装着部により装着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品供給方法。
【請求項4】
前記マガジン交換機は、前記空状態のマガジンに対し所定個数Mの部品を充填することを特徴とする請求項3に記載の部品供給方法。
【請求項5】
前記作業装置はスポット溶接機であり、かつ前記部品は有孔部品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の部品供給方法。
【請求項6】
作業装置に部品を1個ずつ供給する部品供給ヘッドにおいて、
所定個数Nの部品が収容される部品収容通路を有し、先頭部品から順に部品を1個ずつ前記作業装置に供給する部品供給部と、
所定個数Mの部品が充填される部品収容通路を有するマガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部であって、前記部品供給部の部品収容通路の後端部と前記マガジンの部品収容通路の先端部とが連通状態となるよう、前記マガジンを離脱可能に装着するマガジン装着部と、
前記部品供給部の部品収容通路内の先頭部品が前記作業装置に供給されると、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を前記部品供給部の部品収容通路の後端部に移送する部品補給手段と
を備えることを特徴とする部品供給ヘッド。
【請求項7】
前記部品は高さ寸法が幅寸法よりも小さく設定されており、前記マガジンは、前記所定個数Mの部品を縦積み状態で部品収容通路に収容し、かつ、前記部品供給部は、前記所定個数Nの部品を横一列に部品収容通路に収容することを特徴とする請求項6に記載の部品供給ヘッド。
【請求項8】
前記作業装置は、可搬式ロボットの可動部に固定され、当該部品供給ヘッドは前記可搬式ロボットの可動部に固定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の部品供給ヘッド。
【請求項9】
前記作業装置はスポット溶接機であり、かつ前記部品は有孔部品であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の部品供給ヘッド。
【請求項10】
前記部品補給手段は、往復動可能な押込ブロックを備え、
前記押込ブロックが後退するとき、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品は、前記部品供給部の部品収容通路の後端部まで案内されて前記部品供給部の部品収容通路内の最後尾部品となり、
前記押込ブロックが前進するとき、前記最後尾部品は、前記押込ブロックの前面から押圧力を受け、前記部品供給部の部品収容通路の先端部に向かって部品1個分の距離だけ前進すると共に、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品は、前記押込ブロックの上面で受け止められ、前記マガジンの部品収容通路の先端部に留まる
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の部品供給ヘッド。
【請求項11】
部品拘束手段を備え、該部品拘束手段は、前記押込ブロックが前進するとき、前記マガジンの部品収容通路内の先頭部品を拘束して該部品収容通路内に留めると共に、前記押込ブロックが後退するとき、前記先頭部品に対する拘束を解除することを特徴とする請求項10に記載の部品供給ヘッド。
【請求項12】
前記部品拘束手段は、前記部品が、ナット本体部と該ナット本体部の底部から外方へ突出した複数の溶接脚部とを有するナットであり、かつ、前記マガジンの部品収容通路内での各ナットの収容状態が、前記溶接脚部が前記ナット本体部よりも前記押込ブロックに近い収容形態である場合、先頭ナットのナット本体部の側面を押圧して該先頭ナットを拘束することを特徴とする請求項11に記載の部品供給ヘッド。
【請求項13】
部品押え手段を備え、該部品押え手段は、前記マガジンの部品収容通路内の最後尾部品を該部品収容通路内の先頭部品に向かう方向へ押圧することを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の部品供給ヘッド。
【請求項14】
前記マガジンは、部品収容通路の中心線上に、前記有孔部品の孔に挿通可能なガイドピンを備えることを特徴とする請求項6〜13のいずれかに記載の部品供給ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−302488(P2008−302488A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154259(P2007−154259)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(593038000)矢島技研株式会社 (13)
【Fターム(参考)】