説明

部品内蔵配線基板及びその製造方法

【課題】コア基板の収容部内に内蔵部品を収容する際、複雑な加工を行うことなく内蔵部品の正確な位置決めが可能な部品内蔵配線基板を提供する。
【解決手段】部品内蔵配線基板10は、コア基板11と、コア基板11を貫通する収容部21と、収容部21に収容された内蔵部品50と、コア基板11の上下に積層形成した配線積層部12、13とを備えている。収容部21は、平面視で方向が異なる第1及び第2の内壁面を含むコア基板11の内壁面20によって画定され、内蔵部品50は、第1及び第2の内壁面のそれぞれと部分的に接した状態で収容部21に収容され、内壁面20と内蔵部品50との間隙部において内蔵部品50が第1及び第2の内壁面と接していない領域に樹脂充填材Fが充填されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア基板の上面及び下面を貫通する収容部に内蔵部品を収容した部品内蔵配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コア基板の上面側と下面側に導体層及び絶縁層を交互に積層してビルドアップ層を形成した配線基板が用いられている。このような配線基板の構造として、コア基板を上下に貫通する収容部を設け、この収容部内に内蔵部品を収容した部品内蔵配線基板が知られている。例えば、部品内蔵配線基板の収容部内に内蔵部品としてのコンデンサを内蔵し、半導体素子に供給される電源電圧の配線にコンデンサを接続することにより、電源電圧の安定化とノイズ低減を実現することができる。このような部品内蔵配線基板を作製する際には、平面視で内蔵部品より外形が大きい収容部を形成し、この収容部の略中央に内蔵部品を位置決めした後、収容部においてコア基板の内壁面と内蔵部品との間隙部に樹脂充填材を充填する手順が一般的である。例えば、内蔵部品がビアアレイ型のコンデンサである場合は、その表面及び裏面に形成された外部電極と上下のビルドアップ層との間で積層方向の電気的接続が形成されることになる。よって、内蔵部品に対し積層方向の電気的接続を確保するには、収容部内で内蔵部品の正確な位置決めを行うことが重要となる。例えば、特許文献1には、基板に設けた収容部を上方に行くほど広くなるテーパ状とし(例えば、図2の挿入孔3の形状)、収容部の上方から内蔵部品を挿入した際、収容部の下側の形状が内蔵部品に合致することによって適切な位置決めを行うことができる配線基板の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−120673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された配線基板の構造においては、収容部をテーパ状に形成するとともに、その下側の形状が内蔵部品に合致するようにしなければならず、コア基板に収容部を開口する際の加工の難易度が高くなる。また、多様な内蔵部品を用いる場合、それぞれの形状に応じて収容部の形状を変更する必要があり煩雑である。また、内蔵部品の形状と収容部の下側の形状に誤差がある場合は、内蔵部品が傾くなどし、正確な位置決めが困難になる。このように、従来の部品内蔵配線基板においては、コア基板を貫通する収容部が平面視で矩形状あっても、あるいはテーパ状であっても、収容部内に内蔵部品を高い精度で位置決めすることは容易でないという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、コア基板の収容部内に内蔵部品を収容する際、複雑な加工を行うことなく正確な位置決めが可能な部品内蔵配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の部品内蔵配線基板は、コア基板と、当該コア基板の上面及び下面を貫通する収容部と、前記収容部に収容された内蔵部品と、前記コア基板の上面側と下面側の少なくとも一方に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部と、を備えた部品内蔵配線基板において、前記収容部は、平面視で互いに異なる方向に延びる第1の内壁面及び第2の内壁面を含む前記コア基板の内壁面によって画定され、前記内蔵部品は、前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面のそれぞれと部分的に接した状態で前記収容部に収容され、前記内壁面と前記内蔵部品との間隙部において、前記内蔵部品が前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面と接していない領域に樹脂充填材が充填されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の部品内蔵配線基板によれば、部品内蔵配線基板のコア基板を貫通する収容部に内蔵部品を収容する際、内蔵部品を収容部の略中央に配置するのではなく、収容部を画定するコア基板の内壁面のうち第1及び第2の内壁面と部分的に接する位置に片寄せして配置し、内蔵部品が接していない側の内壁面との間隙部に樹脂充填材を充填する。これにより、収容部内の内蔵部品の位置はコア基板の内壁面によって規制されるので正確な位置決めが可能となり、内蔵部品と配線積層部との間で積層方向の電気的接続の信頼性を高めることができる。また、内蔵部品の各側面の多くの部分が樹脂充填材に接した状態で配置されるので、樹脂充填材の作用によって熱膨張係数の差に起因する変形を吸収することができるとともに、収容部内において内蔵部品を確実に固定することができる。
【0008】
前記収容部を画定する前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面には、一又は複数の凹部からなる座ぐり部を設け、当該座ぐり部のそれぞれの前記凹部に前記樹脂充填材を充填してもよい。このような座ぐり部を設けることにより、座ぐり部の各凹部以外の部分が内蔵部品の側面に接した状態で位置決めをしつつ、座ぐり部の各凹部には樹脂充填材が充填されるので、より確実に内蔵部品を固定することができる。この場合、座ぐり部は、積層方向に沿って形成された複数の溝状凹部を有する構造で形成することができる。また、座ぐり部は、積層方向に沿って形成された複数の溝状凹部に加えて、平面方向に沿って形成された複数の溝状凹部を有する構造で形成することができる。
【0009】
前記収容部及び前記内蔵部品は、当該内蔵部品が第1及び第2の内壁面と部分的に接している限り、平面視で多様な形状に形成することができる。例えば、収容部及び内蔵部品を平面視で略矩形に形成し、内蔵部品を収容部よりも小さい外形としてもよい。この場合、収容部には、第1及び第2の内壁面によって少なくとも1つの角部が形成され、その角部に内蔵部品を配置し、内蔵部品の互いに交差する第1及び第2の側面のうち、第1の側面が第1の内壁面に接し、第2の側面が第2内壁面に接するようにしてもよい。このような形状と配置により、収容部と内蔵部品の各形状を複雑にすることなく、内蔵部品の位置決めを容易に行うことができる。
【0010】
また、前記収容部に配置される前記内蔵部品の個数は1つに限られない。例えば、収容部内において、略矩形の4つの前記角部にそれぞれ配置された4つの内蔵部品を収容してもよい。
【0011】
前記内蔵部品としては多様な部品を用いることができる。例えば、収容部内に内蔵部品としてのコンデンサを収容して電源配線に接続すれば、部品内蔵配線基板における電源電圧の安定化とノイズ低減の効果を得ることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の部品内蔵配線基板の製造方法は、コア基板を準備し、当該コア基板の上面及び下面を貫通するとともに平面視で互いに異なる方向に延びる第1の内壁面及び第2の内壁面を含む前記コア基板の内壁面によって画定される収容部を形成する収容部形成工程と、内蔵部品を準備し、前記コア基板の前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面のそれぞれと部分的に接するように前記内蔵部品を位置決めする位置決め工程と、前記内壁面と前記内蔵部品との間隙部のうち、前記内蔵部品が前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面と接していない領域に樹脂充填材を充填する充填工程と、前記コア基板の上面側と下面側の少なくとも一方に絶縁層及び導体層を交互に積層形成する積層工程と、を含むことを特徴としている。なお、コア基板の第1の内壁面及び前記第2の内壁面に、一又は複数の凹部からなる座ぐり部を形成してもよい。
【0013】
本発明の部品内蔵配線基板の製造方法によれば、本発明の部品内蔵配線基板を製造する際には、複雑な工程を経ることなく本発明の上述の効果を享受することができる。すなわち、上記従来の部品内蔵配線基板のように、収容部を上方に行くほど広くなるテーパ状に形成して中央部に内蔵部品を配置する必要がなく、かつ内蔵部品を収容部内に配置する際は内蔵部品の側面が第1及び第2の内壁面に接するように位置決めすればよいので、製造工程の簡素化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品内蔵配線基板の収容部に内蔵部品を収容する際、コア基板の内壁面と部分的に接するように内蔵部品を片寄せして配置し、内蔵部品が接していない側の内壁面との間隙部に樹脂充填材を充填したので、複雑な加工を要することなく内蔵部品の正確な位置決めが可能となり、電気的接続の信頼性を高めることができる。また、収容部内で内蔵部品が配置されていない領域に充填される樹脂充填材によって熱膨張係数の差に起因する変形を吸収するとともに、収容部内で内蔵部品を確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の部品内蔵配線基板の概略の断面構造図である。
【図2】図1のコンデンサ50の断面構造図である。
【図3】図1の配線基板10のうち収容部21を含む範囲の模式的な平面図である。
【図4】図3において、座ぐり部20aが形成された1つの内壁面20yの表面状態の一例を示す図である
【図5】座ぐり部20aに関する一変形例を示す図である。
【図6】収容部21内のコンデンサ50の配置に関する一変形例を示す平面図である。
【図7】内壁面20の形状に関する変形例を示す平面図である。
【図8】本実施形態の配線基板10の製造方法を説明する第1の断面構造図である。
【図9】本実施形態の配線基板10の製造方法を説明する第2の断面構造図である。
【図10】本実施形態の配線基板10の製造方法を説明する第3の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に述べる実施形態は本発明の技術思想を適用した形態の一例であって、本発明が本実施形態の内容により限定されることはない。
【0017】
以下の実施形態では、本発明を具体化した部品内蔵配線基板の一例について説明する。図1は、本実施形態の部品内蔵配線基板10(以下、単に配線基板10と呼ぶ)の概略の断面構造図を示している。図1に示すように、本実施形態の配線基板10は、例えばガラス繊維を含んだエポキシ樹脂からなるコア基板11と、コア基板11の上面側のビルドアップ層12(配線積層部)と、コア基板11の下面側のビルドアップ層13(配線積層部)とを含む構造を有している。本実施形態の配線基板10の上部には、半導体素子である半導体チップ100が載置されている。
【0018】
コア基板11には、中央領域を平面視で方形状に貫通する収容部21が形成され、この収容部21には、内蔵部品としてのコンデンサ50が埋め込まれた状態で収容されている。収容部21の平面形状は、コア基板11の内壁面20(図1)によって画定される。本実施形態においては、図1に示すように、収容部21内のコンデンサ50が、両側に対向する内壁面20のうちの片側の内壁面20に寄った状態で配置されているが、詳しくは後述する。収容部21において、コア基板11の内壁面20とコンデンサ50との間隙部には、樹脂充填材Fが充填されている。樹脂充填材Fは、例えば熱硬化性樹脂などの高分子材料からなり、樹脂充填材Fの弾性変形により、コア基板11及びコンデンサ50との熱膨張率の差に起因する変形を吸収する作用がある。一方、コア基板11には、外周領域を積層方向に貫通する複数のスルーホール導体22が形成され、スルーホール導体22の内部が例えばガラスエポキシ等からなる閉塞体23で埋められている。
【0019】
コンデンサ50は、正極と負極の間に所定の容量を形成するビアアレイ型の積層セラミックコンデンサである。コンデンサ50は、両面にそれぞれ形成された外部電極層51、52を介して、上下のビルドアップ層12、13の各導体層31、41のそれぞれと電気的に接続される。ここで、図2は、図1のコンデンサ50の断面構造図を示している。本実施形態のコンデンサ50は、例えばチタン酸バリウム等の高誘電率セラミックの焼結体からなり、複数のセラミック誘電体層53を積層形成した構造を有する。図2に示すように、各々のセラミック誘電体層53の間には、内部電極層60と内部電極層61が交互に形成されている。一方の内部電極層60は負極用の電極として機能し、他方の内部電極層61は正極用の電極として機能し、両電極が各セラミック誘電体層53を挟んで対向することで所定の容量が形成される。
【0020】
コンデンサ50には、全てのセラミック誘電体層53を積層方向に貫通する多数のビアホールに導体材料を埋め込んだ複数のビア導体70、71が形成されている。そして、負極用のビア導体70は内部電極層60に接続されるとともに、正極用のビア導体71は内部電極層61に接続される。コンデンサ50の表面の外部電極層51には、負極用の複数の外部電極80と正極用の複数の外部電極81が形成されている。また、コンデンサ50の裏面の外部電極層52には、負極用の複数の外部電極82と正極用の複数の外部電極83が形成されている。これにより、複数のビア導体70は、上端側の外部電極80及び下端側の外部電極82とそれぞれ電気的に接続される。また、複数のビア導体71は、上端側の外部電極81及び下端側の外部電極83とそれぞれ電気的に接続される。図2のコンデンサ50において、負極用のビア導体70及び外部電極80、82と、正極用のビア導体71及び外部電極81、83は、平面視で格子状あるいは千鳥状に配置されている。
【0021】
図1に戻って、一方のビルドアップ層12は、コア基板11の上部の樹脂絶縁層14と、樹脂絶縁層14の上部の樹脂絶縁層15と、樹脂絶縁層15の上部のソルダーレジスト層16とが積層形成されてなる。樹脂絶縁層14の上面には導体層31が形成され、樹脂絶縁層15の上面には複数の端子パッド33が形成されている。樹脂絶縁層14の所定箇所には、スルーホール導体22の上端電極及びコンデンサ50の外部電極層51を、導体層31と積層方向に接続導通する複数のビア導体30が設けられている。また、樹脂絶縁層15の所定箇所には、導体層31と複数の端子パッド33を積層方向に接続導通する複数のビア導体32が設けられている。ソルダーレジスト層16は、複数箇所が開口されて複数の端子パッド33が露出し、そこに複数の半田バンプ34が形成されている。各々の半田バンプ34は、配線基板10に載置される半導体チップ100の各パッド101に接続される。
【0022】
また、他方のビルドアップ層13は、コア基板11の下部の樹脂絶縁層17と、樹脂絶縁層17の下部の樹脂絶縁層18と、樹脂絶縁層18の下部のソルダーレジスト層19とが積層形成されてなる。樹脂絶縁層17の下面には導体層41が形成され、樹脂絶縁層18の下面には複数のBGA用パッド43が形成されている。樹脂絶縁層17の所定箇所には、スルーホール導体22の下端電極及びコンデンサ50の外部電極層52を、導体層41と積層方向に接続導通する複数のビア導体40が設けられている。また、樹脂絶縁層18の所定箇所には、導体層41と複数のBGA用パッド43を積層方向に接続導通する複数のビア導体42が設けられている。ソルダーレジスト層19は、複数箇所が開口されて複数のBGA用パッド43が露出し、そこに複数の半田ボール44が接続される。複数の半田ボール44は、図示されない外部基材と電気的に接続可能な構造を有する。
【0023】
図1の断面構造において、例えば、半導体チップ100に供給される電源電圧とグランド電位のうち、電源電圧がコンデンサ50の正極に接続され、グランド電位がコンデンサ50の負極に接続される。従って、コンデンサ50の上側では、図1の半田バンプ34、端子パッド33、ビア導体32、導体層31、ビア導体30を経由して、半導体チップ100のグランド電位用のパッド101と外部電極80との間、及び、半導体チップ100の電源電圧用のパッド101と外部電極81の間がそれぞれ電気的に接続される。同様に、コンデンサ50の下側では、図1のビア導体40、導体層41、ビア導体42、BGA用パッド43、半田ボール44を経由して、外部電極82と外部基材のグランド電位用の端子の間、及び、外部電極83と外部基材の電源電圧用の端子の間がそれぞれ電気的に接続される。
【0024】
次に、本実施形態の配線基板10において、コア基板11の内壁面20の構造と収容部21内のコンデンサ50の配置について具体的に説明する。図3は、図1の配線基板10のうち、収容部21を含む範囲の模式的な平面図を示している。図3の下部には、便宜上、互いに直交するX方向及びY方向の座標軸を示している。X方向は図1の紙面横方向に一致し、Y方向は図1の紙面奥行き方向に一致する。図3の平面図においては、コア基板11の内壁面20によって画定される方形の収容部21と、収容部21の内部に収容されるコンデンサ50と、内壁面20とコンデンサ50との間隙部に充填された樹脂充填材Fが示されている。なお、実際には図3のコンデンサ50の表面に外部電極層51が存在するが、図示を省略している。
【0025】
図3の内壁面20は平面視で1辺が長さL1の方形に形成され、X方向に延びる2辺に沿う2つの内壁面20xと、Y方向に延びる2辺に沿う2つの内壁面20yと、4つの角部20cとを含んで構成されている。また、内壁面20を構成する1対の内壁面20x、20yには、平面視で収容部21の外周側に向って突出した複数の凹部からなる座ぐり部20aが形成されている。そして、コンデンサ50は平面視で1辺が長さL2の方形に形成され、当該方形のうちの直交する2辺の2つの側面が、座ぐり部20aが形成された2つの内壁面20x、20yに接する状態で配置される。すなわち、コンデンサ50は、その1つの角部が内壁面20の1つの角部20cに合致する位置に配置される。そして、内壁面20x、20yに形成された座ぐり部20aのそれぞれの凹部の内部には樹脂充填材Fが充填されている。
【0026】
ここで、図4は、図3において座ぐり部20aが形成された1つの内壁面20yの表面状態の一例を示している。図4の例においては、一方の内壁面20yに、Z方向(積層方向)に延びる5個の溝状凹部からなる座ぐり部20aが示されている。座ぐり部20aを構成する各々の溝状凹部は、XY面内で半円状の断面形状を有している。また、座ぐり部20aの5本の溝状凹部は同一形状であって、均等な間隔で並列に配置されている。各溝状凹部は、例えば、直径100μmの半円形状に形成される。他方の内壁面20xの側の座ぐり部20aについても同様の5個の溝状凹部から構成されている。なお、図4の例に限られることなく、座ぐり部20aの溝状凹部の個数を加工可能の範囲内で増やしてもよい。
【0027】
図3に戻って、収容部21において樹脂充填材Fが充填された間隙部は幅Wであり、収容部21及びコンデンサ50のサイズに対し、L1=L2+Wの関係がある。間隙部の幅Wは、樹脂充填材Fの変形吸収作用と配線基板10全体のサイズに応じて適宜に設定される。コンデンサ50の四方の各側面に着目すると、間隙部に面する2つの側面は全ての部分が樹脂充填材Fに接しているのに対し、内壁面20に面する2つの側面は部分的に座ぐり部20a内の樹脂充填材Fに接している。この場合、コンデンサ50の各側面のうち内壁面20に面する2つの側面の面積に対して、座ぐり部20a内の樹脂充填材Fに接する面積の比率は特に制約されないが、コンデンサ50を内壁面20に十分に固定できる程度の比率に設定される。
【0028】
本実施形態においては、図3の構造を採用することにより、コンデンサ50を収容部21内に配置する際の位置決め精度を高めることができる。すなわち、仮にコンデンサ50を片側に寄った位置ではなく、収容部21の中央位置に配置する場合を想定すると、図3の例ではコンデンサ50の4つの側面がそれぞれ対向する内壁面20と均等な間隔W/2だけ離して配置する必要がある。しかし、コンデンサ50及び収容部21はともに小型化するほど高い位置決め精度が要求されることになり、コンデンサ50を収容部21の中央位置に正確に配置することが困難になる。その結果、コンデンサ50の位置ずれに起因して、上下の外部電極80、81、82、83とビア導体30、40との間の電気的接続に不具合を生じる恐れがある。これに対し、図3の構造では、コンデンサ50の1つの角部を挟んだ2つの側面を、2つの内壁面20x、20yと間隔を置かずに配置すればよいので、工程の負荷をかけることなく必然的に高い位置決め精度を確保でき、コンデンサ50をコア基板11と概ね同じ位置精度で配置することができる。よって、コンデンサ50の位置ずれに起因する電気的接続の不具合を有効に防止することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、収容部21及びコンデンサ50がいずれも平面視で方形である場合を示したが、方形には限られず、より複雑な多角形であってもよい。すなわち、収容部21を画定する内壁面20のうち、少なくとも隣接する2つの内壁面の部分がコンデンサ50の側面に接する限り、収容部21及びコンデンサ50の形状は制約されない。また、内壁面20の角部20cの形状は、図3の例に限られず、平面視でR面取りやC面取り等の面取り加工を施してもよい。
【0030】
本実施形態において、コア基板11の内壁面20に形成される座ぐり部20aは図3及び図4の構造に限られず、多様な変更が可能である。図5は、座ぐり部20aに関する一変形例を示す図であって、図4と同様の内壁面20yの表面状態に対応している。図5の内壁面20yには、図4と同様のZ方向(積層方向)に延びる複数の溝状凹部に加えて、Y方向(水平方向)に延びる複数の溝状凹部を含む座ぐり部20aが形成されている。すなわち、Y方向に延びる各凹部はXZ面内で半円状の断面形状を有し、Z方向に延びる各凹部と互いに直交している。図5の例では、積層方向の5本の溝状凹部と水平方向の2本の溝状凹部が組み合わされているが、それぞれの本数や間隔は適宜に設定することができる。図5の変形例を採用することにより、図4と比べると、座ぐり部20aの各溝状凹部が相互に連結されているため内部に樹脂充填材Fを円滑に充填することができ、かつ樹脂充填材Fの部分の面積を容易に増やすことができ、内壁面20に面するコンデンサ50を確実に固定することができる。
【0031】
また、本実施形態において、コア基板11に設けた収容部21におけるコンデンサ50の配置に関しても、図3の平面図の例に限られず、多様な変更が可能である。図6は、収容部21内のコンデンサ50の配置に関する一変形例を示す平面図である。図6の変形例においては、収容部21内に4個のコンデンサ50が配置されている。すなわち、コア基板11の内壁面20の4つの角部20cのそれぞれに各1個のコンデンサ50が配置されている。そして、図3と同様の長さL1を用いて、収容部21は平面視で1辺が長さL1の方形であり、各コンデンサ50は平面視で1辺が長さL3の方形である。また、各コンデンサ50の間隙部は幅Wであって、樹脂充填材Fが充填された部分のトータルの面積は図3と等しくなっている。この場合、L1=2×L3+Wの関係があるので、図6のコンデンサ50の1辺の長さL3は、図3の長さL2の半分である。図6の変形例を採用することにより、複数のコンデンサ50を小型化して1つの収容部21内に効率的に配置しつつ、それぞれのコンデンサ50の位置決め精度を高めることができる。なお、コア基板11の収容部21に4個のコンデンサ50を配置する場合に限られず、収容部21内の2つ又は3つの角部20cに2個又は3個のコンデンサ50を配置してもよい。
【0032】
また、本実施形態において、コア基板11の内壁面20の平面視の断面形状に関しても、図3の半円状の断面形状の例に限られず、多様な変更が可能である。図7には、内壁面20の座ぐり部20aの断面形状の複数の具体例を示している。例えば、図7(A)に示すように、四角形状の断面形状を有する座ぐり部20aを内壁面20に形成してもよい。また例えば、図7(B)に示すように、三角形状の断面形状を有する座ぐり部20aを内壁面20に形成してもよい。また例えば、図7(C)に示すように、波状の断面形状を有する座ぐり部20aを内壁面20に形成してもよい。なお、図7(C)の例では、内壁面20の断面形状に直線部分が含まれないため、内壁面20とコンデンサ50との接触面積は小さくなるが、コンデンサ50の位置決めには支障がない。以上のように、コンデンサ50の位置決めが可能で、樹脂充填材Fを部分的に充填可能な形状であれば、内壁面20の断面形状を自在に設定することができる。
【0033】
次に、本実施形態の配線基板10の製造方法の概要を説明する。まず、配線基板10に用いるコア基板11の基材を準備する。通常は、複数の配線基板10を多数個取り可能なサイズの基材を用いるが、簡単のため1個の配線基板10の構成部分のみを図示する。図8に示すように、コア基板11となる基材に対して、例えば、ルータを用いた加工を施すことにより、収容部21を画定する内壁面20に沿って貫通孔を形成すればよい。この際、内壁面20に対し同時に座ぐり部20aを形成することができる。例えば、図3に示す座ぐり部20aを形成する際には、2辺に沿う内壁面20x、20yに対しルータによって半円状の断面形状に沿って加工することで複数の溝状凹部を形成すればよい。あるいは、座ぐり部20aの形成位置にドリル機を用いた孔あけ加工を予め施して積層方向の複数の溝状凹部を形成し、その後にコア基板11の上方から打ち抜き加工を施して収容部21を形成してもよい。なお、図5に示すように水平方向に延びる溝状凹部を含む座ぐり部20aを形成する際は、各溝状凹部の両端を貫通する加工ができない。この場合は、水平方向に延びる多層のガラス繊維層を縞状に配置したコア基板11を用い、薬液処理によって内壁面20に露出するガラス繊維層を選択的に溶融させることで、水平方向に延びる複数の溝状凹部を含む座ぐり部20aを形成することができる。
【0034】
一方、図2に示すコンデンサ50を準備する。例えば、セラミックグリーンシートを用いた周知の手法で内部電極層60、61を有する積層体を積層形成した後、積層体に対してビア導体70、71及び外部電極80〜83を形成し、積層体に対する焼成工程を経て、コンデンサ50が完成する。また、図9に示すように、ドリル機を用いた孔あけ加工により、コア基板11のスルーホール導体22の形成位置に貫通孔を形成した後、この貫通孔に対して無電解銅めっき及び電解銅めっきを施すことによりスルーホール導体22を形成する。そして、スルーホール導体22の空洞部にエポキシ樹脂を主成分とするペーストを印刷した後、硬化することにより閉塞体23を形成する。
【0035】
次いで、図9に示すように、コア基板11の底部に、剥離可能な粘着テープ200を密着配置する。この粘着テープ200は支持台201により支持される。この状態で、マウント装置を用いてコンデンサ50をコア基板11の上方から位置決めしつつ、収容部21の所定位置に載置する。このとき、図3の平面図に示すように、コンデンサ50が1つの角部20c及び2つの内壁面20x、20yと部分的に接するように若干の押圧力を加えることで、図3の平面図の状態を保ちつつコンデンサ50の底面を粘着テープ200に貼り付けて仮固定することができる。なお、マウント装置に代え、工程の作業者が直接コンデンサ50を収容部21の所定位置に載置してもよい。
【0036】
次いで、コア基板11の内壁面20とコンデンサ50の側面との間隙部に、ディスペンサ装置を用いて熱硬化性樹脂からなる樹脂充填材Fを充填する。このとき、コンデンサ50が接する内壁面20の座ぐり部20aを構成する各凹部の内部に樹脂充填材Fが侵入する。そして、樹脂充填材Fに加熱処理を施して硬化させることで、収容部21の内部における内壁面20と部分的に接した状態でコンデンサ50が固定される。その後、図10に示すように、コンデンサ50の固定後に粘着テープ200を剥離し、コア基板11の下面とコンデンサ50の裏面の外部電極層52に残存する粘着材は溶剤で除去する。
【0037】
ここで、図8〜図10では、収容部21の内部にコンデンサ50を収容した後に樹脂充填材Fを充填する手順を説明したが、かかる手順を逆にしてもよい。すなわち、コンデンサ50を収容部21内の所定位置に収容するのに先立って、収容部21の内部に予め樹脂充填材Fを充填してもよい。この場合、樹脂充填材Fの粘度が高いとコンデンサ50を収容部21内に載置するのが困難になるので、粘度が低い樹脂充填材Fを用いることが望ましい。上記と同様、樹脂充填材Fに加熱処理を施して硬化させた後は、コンデンサ50を内壁面20に固定することができる。
【0038】
次に図1に戻って、周知の手法に従って、コンデンサ50を収容したコア基板11の上下のビルドアップ層12、13を形成する。すなわち、エポキシ樹脂を主成分とするフィルム状絶縁樹脂材料を積層して加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、コア基板11の上面及び下面に樹脂絶縁層14、17を形成する。次いで、上下の樹脂絶縁層14、17にレーザー加工を施して複数のビアホールを形成し、デスミア処理を施した後に各ビアホール内に複数のビア導体30、40を形成する。そして、樹脂絶縁層14、17の表面にパターニングを施し、導体層31、41を形成する。次いで、樹脂絶縁層14、17の表面に、さらに上記フィルム状絶縁樹脂材料を積層して加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、樹脂絶縁層15、18を形成する。そして、樹脂絶縁層15、18に、上述のビア導体30、40と同様の手法で複数のビア導体32、42を形成する。
【0039】
次に図1に示すように、樹脂絶縁層15の上部に複数の端子パッド33を形成し、樹脂絶縁層18の下部に複数のBGA用パッド43を形成する。次いで、樹脂絶縁層15の上面と樹脂絶縁層18の下面に、それぞれ感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト層16、19を形成する。その後、ソルダーレジスト層16に開口部をパターニングし、複数の端子パッド33に接続される複数の半田バンプ34を形成する。また、ソルダーレジスト層19に開口部をパターニングし、複数のBGA用パッド43に接続される複数の半田ボール44を形成する。以上の手順により本実施形態の配線基板10が完成する。
【0040】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、本実施形態では、コア基板11に設けた収容部21に内蔵部品としてのコンデンサ50を収容した配線基板10について説明したが、例えば、インダクタ等のコンデンサ50以外の内蔵部品を収容部21に収容する場合であっても広く本発明を適用する。また、その他の点についても上記実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、上記実施形態に開示した内容には限定されることなく適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…配線基板
11…コア基板
12、13…ビルドアップ層
14、15、17、18…樹脂絶縁層
16、19…ソルダーレジスト層
20…コア基板の内壁面
20a…座ぐり部
20c…角部
20x…内壁面(X方向)
20y…内壁面(Y方向)
21…収容部
22…スルーホール導体
23…閉塞体
31、41…導体層
30、32、40、42…ビア導体
33…端子パッド
34…半田バンプ
43…BGA用パッド
44…半田ボール
50…コンデンサ
51、52…外部電極層
53…セラミック誘電体層
60、61…内部電極層
70、71…ビア導体
80、81、82、83…外部電極
100…半導体チップ
101…パッド
F…樹脂充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板と、当該コア基板の上面及び下面を貫通する収容部と、前記収容部に収容された内蔵部品と、前記コア基板の上面側と下面側の少なくとも一方に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した配線積層部と、を備えた部品内蔵配線基板において、
前記収容部は、平面視で互いに異なる方向に延びる第1の内壁面及び第2の内壁面を含む前記コア基板の内壁面によって画定され、
前記内蔵部品は、前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面のそれぞれと部分的に接した状態で前記収容部に収容され、
前記内壁面と前記内蔵部品との間隙部において、前記内蔵部品が前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面と接していない領域に樹脂充填材が充填されている、
ことを特徴とする部品内蔵配線基板。
【請求項2】
前記収容部を画定する前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面は、一又は複数の凹部からなる座ぐり部を有し、当該座ぐり部のそれぞれの前記凹部に前記樹脂充填材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項3】
前記座ぐり部は、積層方向に沿って形成された複数の溝状凹部を有することを特徴とする請求項2に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項4】
前記座ぐり部は、積層方向に沿って形成された複数の溝状凹部と平面方向に沿って形成された複数の溝状凹部とを有することを特徴とする請求項2に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項5】
前記収容部及び前記内蔵部品は平面視で略矩形に形成され、前記内蔵部品は前記収容部よりも外形が小さく、
前記収容部は、前記第1の内壁面と前記第2の内壁面によって角部が少なくとも1つ形成され、
前記内蔵部品は、当該内蔵部品の互いに交差する第1の側面及び第2の側面がそれぞれ前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面に接するよう前記角部に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項6】
前記収容部には、略矩形の4つの前記角部にそれぞれ配置された4つの前記内蔵部品が収容されていることを特徴とする請求項5に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項7】
前記内蔵部品は、コンデンサであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の部品内蔵配線基板。
【請求項8】
コア基板を準備し、当該コア基板の上面及び下面を貫通するとともに平面視で互いに異なる方向に延びる第1の内壁面及び第2の内壁面を含む前記コア基板の内壁面によって画定される収容部を形成する収容部形成工程と、
内蔵部品を準備し、前記コア基板の前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面のそれぞれと部分的に接するように前記内蔵部品を位置決めする位置決め工程と、
前記内壁面と前記内蔵部品との間隙部のうち、前記内蔵部品が前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面と接していない領域に樹脂充填材を充填する充填工程と、
前記コア基板の上面側と下面側の少なくとも一方に絶縁層及び導体層を交互に積層形成する積層工程と、
を含むことを特徴とする部品内蔵配線基板の製造方法。
【請求項9】
コア基板を準備し、当該コア基板の上面及び下面を貫通するとともに平面視で互いに異なる方向に延びる第1の内壁面及び第2の内壁面を含む前記コア基板の内壁面によって画定される収容部を形成する収容部形成工程と、
前記収容部に樹脂充填材を充填する充填工程と、
内蔵部品を準備し、前記収容部に樹脂充填材を充填した状態で、前記コア基板の前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面のそれぞれと部分的に接するように前記内蔵部品を位置決めした後、前記樹脂充填材を硬化させる位置決め工程と、
前記コア基板の上面側と下面側の少なくとも一方に絶縁層及び導体層を交互に積層形成する積層工程と、
を含むことを特徴とする部品内蔵配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記収容部形成工程では、前記コア基板の前記第1の内壁面及び前記第2の内壁面に、一又は複数の凹部からなる座ぐり部を形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の部品内蔵配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−58619(P2013−58619A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196220(P2011−196220)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】