説明

部品取付用誘導部を備えるプリント基板

【課題】既存の電子部品に特殊な構造を用いることなく、電子部品の傾きや浮き上がりを防ぐことのできるプリント基板を提供する。
【解決手段】電子部品を取り付けるための係止部11及び端子孔12・13を、電子部品の取付脚部や接続端子とほぼ同寸の幅を持つ幅狭部11b、12b、13bと、それより幅広とした誘導部11a、12a、13aを形成し、誘導部に取付脚部や接続端子を挿通し、電子部品をスライドさせて、取付脚部や接続端子を幅狭部により挟持させる。これにより、電子部品のズレや傾きを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の電子部品に特殊な構造を用いることなく、電子部品の傾きや浮き上がりを防ぐことのできる部品取付用誘導部を備えるプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器を構成するプリント基板に対する電子部品の取り付け方法に関して、種々の方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では接続端子金具の脚部に段差のある略コの字型切り欠き部(小)と略コの字型切り欠き部(大)を設け、プリント基板には脚部を挿入する長角孔及び脚部挿入後のスライド用角孔を設けた構造が開示されている。
【0004】
また、図5〜7に示すように、電子部品の1つである接続ジャックを取り付ける係止部や端子孔をプリント基板に穿設し、接続ジャックが備える係合爪が一体形成された取付脚部及びフォーミング加工された接続端子を含む全ての接続端子を対応する係止部や端子孔に挿通すことでプリント基板に、係合爪及びフォーミング加工により屈曲した接続端子を係合させて固定するような構造が一般的に用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−319204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、特殊な接続端子金具を形成し、用いなければならず、製造にかかるコストの増大を招いてしまう。また、図5〜7のような一般的な方法を用いた場合、電子部品の取り付けを容易にしようと係止部や端子孔を広くすると、電子部品が左右にガタつく空間ができてしまい、逆にガタつきを抑えるために係止部や端子孔を狭く形成すると、電子部品の取り付けが困難になってしまう不具合があり、更にフォーミング加工された接続端子の屈曲部により、図7(b)に示すように、プリント基板に対して応力が働き、結果として電子部品に傾きやズレが生じてしまう虞があった。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、電子部品側に特殊な構造を必要とせず、更に電子部品の取り付けが容易で、且つ電子部品のガタ付きや浮き上がりを防ぐことができる部品取付用誘導部を備えるプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、取付脚部と接続端子を有する電子部品と、この電子部品を実装するプリント基板とを備え、プリント基板には前記接続端子と取付脚部を挿入する端子孔と係止部とを形成し、少なくとも前記係止部に挿入される前記取付脚部の先端にはプリント基板に裏面に係止する係止爪を設け、該係止爪によって前記プリント基板に電子部品を抜け止め保持するように構成したプリント基板において、前記端子孔と係止部は、該端子孔と係止部に挿入した前記取付脚部と接続端子とがスライド移動可能な長細状に形成されるとともに、少なくとも前記係止部は取付脚部とほぼ同幅の幅狭部と、この幅狭部から前記係止爪が挿通可能な誘導部を連設して構成され、その誘導部に前記係止部を挿入配置した状態で幅狭部側へとスライドさせて前記係止爪をプリント基板に係止したことを特徴とする。
【0009】
請求項1の構成によれば、プリント基板に電子部品を取り付けるための端子孔及び係止部を形成するにあたり、電子部品の接続端子を取り付ける端子孔を、接続端子をスライド可能にする長細状に形成すると共に、電子部品の取付脚部とほぼ同幅の孔部である係止部を、電子部品の取付脚部が有する係止爪と同幅の誘導部と連設することで、電子部品をプリント基板に取り付ける際、取付脚部を誘導部に挿通すると共に、接続端子を端子孔に挿通し、スライドさせることにより、係止部に取付脚部を挿入し、係止爪によりプリント基板に係止する。
【0010】
請求項2に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、請求項1に記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板において、前記電子部品が複数の接続端子を備え、少なくとも一部の接続端子の先端側に抜け止め用の突起部を一体形成するとともに、この接続端子を挿入する前記端子孔が前記接続端子が挿入可能な幅狭部と、この幅狭部から少なくとも前記突起部が挿入可能な誘導部を連設して構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の構成によれば、複数の接続端子の内、一部の接続端子をプリント基板からの脱落防止のための抜け止め用突起部を形成した電子部品を取り付けるために、接続端子を挿入可能な幅狭部を有し、この幅狭部に連設して突起部を挿入可能な誘導部を形成することで、突起部により電子部品をプリント基板に係止する。
【0012】
請求項3に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、請求項1又は2に記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板において、複数の前記端子孔の内少なくとも1つに、前記幅狭部と誘導部との間に位置して前記幅狭部側へとスライドさせた前記取付脚部若しくは前記接続端子と係止して前記誘導側への移動を規制する係合突起を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項3の構成によれば、複数の端子孔の内、最低1つの端子孔の幅狭部と誘導部の間に、電子部品をスライドした後、接続端子若しくは取付脚部の内最低1つを係止して固定する係合突起を形成する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、取付脚部と接続端子を有する電子部品と、この電子部品を実装するプリント基板とを備え、プリント基板には前記接続端子と取付脚部を挿入する端子孔と係止部とを形成し、少なくとも前記係止部に挿入される前記取付脚部の先端にはプリント基板に裏面に係止する係止爪を設け、該係止爪によって前記プリント基板に電子部品を抜け止め保持するように構成したプリント基板において、前記端子孔と係止部は、該端子孔と係止部に挿入した前記取付脚部と接続端子とがスライド移動可能な長細状に形成されるとともに、少なくとも前記係止部は取付脚部とほぼ同幅の幅狭部と、この幅狭部から前記係止爪が挿通可能な誘導部を連設して構成され、その誘導部に前記係止部を挿入配置した状態で幅狭部側へとスライドさせて前記係止爪をプリント基板に係止したので、取付脚部及び接続端子の挿通を、誘導部を用いることで容易に行うことができ、そこからスライドさせて幅狭部により挟持することで、取付位置に電子部品を位置決めすることが容易に行うことができる。幅狭部は取付脚部や接続端子とほぼ同幅なので、スライド方向に対して左右方向へのガタつきを防ぐことができる。また、係止部に取付脚部が有する係止爪を係止するので、電子部品に対するスライド方向にかかる押圧力による電子部品の浮き上がりを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、請求項1に記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板において、前記電子部品が複数の接続端子を備え、少なくとも一部の接続端子の先端側に抜け止め用の突起部を一体形成するとともに、この接続端子を挿入する前記端子孔が前記接続端子が挿入可能な幅狭部と、この幅狭部から少なくとも前記突起部が挿入可能な誘導部を連設して構成されているので、接続端子の形状に合わせて取付部を形成することで、フォーミング加工等による接続端子の突起部がプリント基板に当接することで発生する応力による電子部品のズレを防ぐことができる。また、この突起部とほぼ同幅の誘導部と、幅狭部の端子孔とすることで、突起部をプリント基板に係止することができる。
【0016】
請求項3に係る部品取付用誘導部を備えるプリント基板は、請求項1又は2に記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板において、複数の前記端子孔の内少なくとも1つに、前記幅狭部と誘導部との間に位置して前記幅狭部側へとスライドさせた前記取付脚部若しくは前記接続端子と係止して前記誘導側への移動を規制する係合突起を形成するので、誘導部に挿通し、取付脚部と接続端子を端子孔へスライドさせて、最奥まで挿入した状態において、少なくとも1つの取付脚部若しくは接続端子は、係合突起により係止し、誘導部への逆行を防ぐことができ、電子部品の脱落を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例を図1から図4を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0018】
図1から図4は、本発明の実施例を示し、図1は係止部及び端子孔の形状を示すプリント基板の一部切り欠き平面図である。図2は図1に示すプリント基板に、接続ジャックを取り付ける前の状態を示す斜視図であり、図3は取り付けた状態を示す斜視図である。図4は図3に示す接続ジャックを取り付けたプリント基板の底面を示す斜視図である。
【0019】
本実施例におけるプリント基板の構造について、図1に基づいて説明する。1は電子機器の筐体内部に固定する電子回路をプリントするプリント基板である。11は後述の電子部品たる接続ジャックの取付脚部を取り付けるための係止部であり、11aは取付脚部を案内する誘導部であり、11bは取付脚部を位置決めする幅狭部である。誘導部11aは、取付脚部の案内を容易とするため、プリント基板1の外形側に開口部を有するよう形成する。12は接続ジャックの接続端子を取り付けるための端子孔であり、12aは接続端子を案内する誘導部、12bは接続端子を位置決めする幅狭部である。13は後述のフォーミング加工された接続端子を取り付けるための端子孔であり、13aは接続端子を案内する誘導部、13bは接続端子を位置決めする幅狭部である。14はフォーミング加工された接続端子を係止するための係合突起である。
【0020】
次に、接続ジャックの構造及び接続ジャックをプリント基板1に取り付ける過程を、図2及び3に基づいて説明する。2は電子部品たる接続ジャックである。21はプリント基板1に取り付けるための取付脚部であり、21aは、取付脚部21をプリント基板1に係合させるための係合爪である。22及び23は接続ジャック2とプリント基板1を電気的に接続するための接続端子であり、24は接続ジャック2の脱落を防止するために接続端子を屈曲させるフォーミング加工したフォーミング加工済み接続端子であり、24aはフォーミング加工により形成される屈曲部である。図2は接続ジャック2を取り付ける前の状態を示している。接続ジャック2が有する取付脚部21を、対応するプリント基板1が備える誘導部11aに挿通する。同様に接続端子22及び23をそれぞれ誘導部12aへ、フォーミング加工済み接続端子24を誘導部13へ挿通し、その後、接続ジャック2を後方、即ちプリント基板1の内側方向にスライドさせることにより、図3のように取付脚部21を幅狭部11bに、接続端子22及び23を幅狭部12bに、フォーミング加工済み接続端子24を幅狭部13bにより、それぞれ挟持させることができる。
【0021】
接続ジャック2をプリント基板1に取り付けた状態を、図4に基づいて説明する。取付脚部21は、幅狭部11bにより隙間無く挟持され、係合爪21aにより係止部11に係合している。これにより接続ジャック2の前方の浮き上がりの防止を行うことができる。また、接続端子22及び23も同様に幅狭部12bと隙間無く挟持されているので、左右にガタつくことが無い。更に屈曲部24aは、誘導部の中心からずらし、迫り出した幅狭部13bと係合することにより、接続ジャック2の後方の浮き上がりを防止することができる。更にフォーミング加工済み接続端子24は、誘導部13a及び幅狭部13bの間に形成される係合突起14との係合により、接続ジャック2の脱落を防ぐことができる。
【0022】
以上のように構成される本実施例において、接続ジャック2は、取付脚部21、接続端子22及び23、フォーミング加工済み接続端子24を、対応する誘導部11a、誘導部12a、フォーミング加工済み接続端子用誘導部13aに、それぞれ挿通してスライドさせ、取付脚部21、接続端子22及び23、フォーミング加工済み接続端子24を、幅狭部11b、幅狭部12b、フォーミング加工済み接続端子用幅狭部13bに挿入して挟持することにより取り付けを行う。全ての幅狭部において、接続ジャック2のスライド方向に対して左右隙間無く取り付けられるため、接続ジャック2が左右にズレることがない。このとき、係合爪21aは係止部11と係合するので、接続ジャック2のスライド方向に対して手前側の浮き上がりを防止すると共に、接続ジャック2のスライド方向への脱落を防ぐことができる。また、フォーミング加工済み接続端子用幅狭部13bは、形成位置を屈曲部24aに合わせているので、屈曲部24aを幅狭部13bに係合させることができるので、屈曲部24aによるプリント基板1に対する応力が発生せず、接続ジャック2のズレや傾きを防止すると共に、接続ジャック2のスライド方向に対して奥側の浮き上がりを防止することができる。更に、フォーミング加工済み接続端子用の誘導部13aと幅狭部13bの間に係合突起14を形成するので、フォーミング加工済み接続端子24が係合突起14に係合し、これによりフォーミング加工済み接続端子24の誘導部13aへの逆行を防ぎ、スライド方向と逆方向への接続ジャック2の脱落を防ぐことができる。即ち、従来からある接続ジャック2に対して特殊な構造等を用いることなく、プリント基板1の接続ジャック2取付部を本実施例のような形状とすることで、取付時のスライド方向に対して、接続ジャック2の前後左右のズレや傾きを防止し、接続ジャック2への図示しないプラグの挿抜時の接続ジャック2の脱落をも防ぐことを、低コストにて実現することができる。
【0023】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、電子部品を接続ジャック2としたが、これに限定せずに、取付脚部及び接続端子を有する電子部品に対して、本発明を適用したとしても何ら問題は無い。また、誘導部11aを、接続ジャック2が有する取付脚部21の案内を容易とするため、外形方向に開口部を有するとしたが、これに限定せずに、取付脚部21が有する係止爪21aが挿通できる大きさを有する孔部としても何ら問題はない。更に、係合突起14をフォーミング加工済み取付部に形成するとしたが、これに限定せずに、他の取付部若しくは全ての取付部に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例における、プリント基板に形成する電子部品の係止部及び端子孔を示す一部切り欠き平面図である。
【図2】同上、プリント基板に対して接続ジャックを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【図3】同上、プリント基板に対して接続ジャックを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】同上、図3に示すプリント基板の底面を示す斜視図である。
【図5】従来一般的に用いられる、プリント基板に形成される係止部や端子孔を示す一部切り欠き平面図である。
【図6】同上、図5に示すプリント基板に接続ジャックを取り付けた状態を示す、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図7】同上、図5に示すプリント基板に接続ジャックを取り付けた状態を示す、(a)は背面図、(b)は接続ジャックが傾いた状態を示す底面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 プリント基板
11 係止部
11a 誘導部
11b 幅狭部
12 端子孔
12a 誘導部
12b 幅狭部
13 フォーミング加工済み接続端子用端子孔(突起部が挿入可能な誘導部)
13a 誘導部
13b 幅狭部
14 係合突起
2 接続ジャック
21 取付脚部
21a 係合爪
22・23 接続端子
24 フォーミング加工済み接続端子(突起部を有する接続端子)
24a 屈曲部(突起部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付脚部と接続端子を有する電子部品と、この電子部品を実装するプリント基板とを備え、プリント基板には前記接続端子と取付脚部を挿入する端子孔と係止部とを形成し、少なくとも前記係止部に挿入される前記取付脚部の先端にはプリント基板に裏面に係止する係止爪を設け、該係止爪によって前記プリント基板に電子部品を抜け止め保持するように構成したプリント基板において、前記端子孔と係止部は、該端子孔と係止部に挿入した前記取付脚部と接続端子とがスライド移動可能な長細状に形成されるとともに、少なくとも前記係止部は取付脚部とほぼ同幅の幅狭部と、この幅狭部から前記係止爪が挿通可能な誘導部を連設して構成され、その誘導部に前記係止部を挿入配置した状態で幅狭部側へとスライドさせて前記係止爪をプリント基板に係止したことを特徴とする部品取付用誘導部を備えるプリント基板。
【請求項2】
前記電子部品が複数の接続端子を備え、少なくとも一部の接続端子の先端側に抜け止め用の突起部を一体形成するとともに、この接続端子を挿入する前記端子孔が前記接続端子が挿入可能な幅狭部と、この幅狭部から少なくとも前記突起部が挿入可能な誘導部を連設して構成されていることを特徴とする請求項1記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板。
【請求項3】
複数の前記端子孔の内少なくとも1つに、前記幅狭部と誘導部との間に位置して前記幅狭部側へとスライドさせた前記取付脚部若しくは前記接続端子と係止して前記誘導側への移動を規制する係合突起を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の部品取付用誘導部を備えるプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−149979(P2007−149979A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342505(P2005−342505)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(390001959)オリオン電機株式会社 (427)
【Fターム(参考)】