説明

部品実装機用のノズル

【課題】回路基板等の反りに応じて、ノズル先端部を360°いずれの方向にも傾動させて、基板面等に対するノズル先端部の片当たりを防止できると共に、ノズル先端部の傾動によるノズル先端部の水平方向の位置ずれ量を低減できるようにする。
【解決手段】部品実装機用のノズル11は、ノズル先端部12を360°いずれの方向にも傾動可能とするフローティング構造13を介してノズル基端部14に支持させている。フローティング構造13は、ノズル基端部14に水平に設けられた円盤状支持部21と、ノズル先端部12に上向きに設けられた円形フランジ部22とを備え、円形フランジ部22を円盤状支持部21の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合すると共に、その嵌合を抜け止めするストッパ23と、ノズル先端部12を下方に付勢するスプリング29とを設けた構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル基端部に対してノズル先端部を360°いずれの方向にも傾動可能に支持させた部品実装機用のノズルに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
部品実装機を用いて、半田、フラックス、接着剤等の粘性流動体を回路基板に転写する場合、部品吸着用のノズルに代えて、図4に示すように、複数の転写ピン1が下向きに突設された転写用のノズル2を部品実装機の装着ヘッドに取り付け、該転写用のノズル2の複数の転写ピン1の下端に粘性流動体3を付着させて回路基板4に転写することが検討されている。
【0003】
この場合、粘性流動体3を転写する回路基板4は、部品実装機内を水平な状態で搬送されるが、回路基板4に反りがあると、図5に示すように、粘性流動体3を転写する基板面が水平面にならなず、傾いた状態になることがある。もし、粘性流動体3を転写する基板面が傾いていると、転写用のノズル2の一部の転写ピン1のみが基板面に接触して他の転写ピン1が接触しない片当たりが発生して、接触しない転写ピン1で粘性流動体3を基板面に転写できない転写不良が発生したり、片当たりする転写ピン1のみに転写時の押圧荷重が集中するため、当該転写ピン1に粘性流動体3が強く押し付けられてこびり付くことがあり、その後の転写工程で転写形状のばらつきが大きくなって転写品質が悪化する原因にもなる。
【0004】
この対策として、特許文献1(特開2001−135649号公報)の技術を転写用のノズルに応用して、図6に示すように、ノズル基端部5に対してノズル先端部6をX,Yの各軸7で傾動可能に支持させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−135649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記構成では、ノズル先端部6と回路基板4との接触点がずれないと、ノズル先端部6が軸7を支点にして傾動することができず、片当たりを解消できない。また、ノズル先端部6と回路基板4との接触点がずれれば、片当たりを解消できるが、回路基板4上の転写位置がずれたり、接触点がずれる部分の転写形状が接触点を引きずった乱れた形状となってしまい、転写品質が悪化する。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、回路基板等の反りに応じて、ノズル先端部を360°いずれの方向にも傾動させて、基板面等に対するノズル先端部の片当たりを防止できると共に、ノズル先端部の傾動によるノズル先端部の水平方向の位置ずれ量を低減できる部品実装機用のノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ノズル先端部を360°いずれの方向にも傾動可能とするフローティング構造を介してノズル基端部に支持させた部品実装機用のノズルであって、前記フローティング構造は、前記ノズル基端部に水平に設けられた円盤状支持部と、前記ノズル先端部に上向きに設けられた円形フランジ部とを備え、前記円形フランジ部を前記円盤状支持部の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合すると共に、その嵌合を抜け止めするストッパと、前記ノズル先端部を下方に付勢する付勢手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
この構成では、ノズル先端部に上向きに設けられた円形フランジ部を、ノズル基端部に設けられた円盤状支持部の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合しているため、ノズル先端部が回路基板等に片当たりすると、ノズル先端部は、基板面等に接触する側のみが付勢手段に抗して押し上げられ、基板面等に接触しない側は、基板面等に接触するまで押し上げられない。これにより、ノズル先端部が基板面等の傾斜に沿って傾動して片当たりが解消される。しかも、ノズル先端部側の円形フランジ部とノズル基端部側の円盤状支持部との間には、前者を後者に上下動可能且つ傾動可能に嵌合するためのクリアランスが存在するだけであるため、ノズル先端部の傾動によるノズル先端部の水平方向の位置ずれ量はクリアランスの範囲内に収まり、ノズル先端部の傾動によるノズル先端部の水平方向の位置ずれ量を低減できる。
【0010】
この場合、ノズル先端部側の円形フランジ部をノズル基端部側の円盤状支持部に嵌合させただけではノズル先端部が回転してしまう。そこで、請求項2のように、ノズル基端部に対してノズル先端部を所定位置で回り止めする回り止め部を設けるようにすると良い。このようにすれば、ノズル先端部の下面側の形状(転写ピン等の配列)に方向性がある場合に、ノズル基端部に対してノズル先端部を位置決めした状態で回り止めすることができる。
【0011】
また、請求項3のように、ストッパを、リング状に形成してノズル先端部に固定し、該ストッパの内周側の部分を円盤状支持部の外周部上面に係合させることで、該円盤状支持部と円形フランジ部との嵌合を抜け止めするようにしても良い。このようにすれば、ノズル先端部が360°いずれの方向に傾動しても、円盤状支持部に対して円形フランジ部を確実に抜け止めすることができる。
【0012】
本発明は、請求項4のように、ノズル先端部の下面側に、粘性流動体を転写する複数の転写ピン、又は、複数の吸着孔を設けた構成としても良い。ノズル先端部の下面側に複数の転写ピンを設けた場合は、回路基板等の反りに対する転写品質を向上でき、また、ノズル先端部の下面側に複数の吸着孔を設けた場合は、全ての吸着孔に吸着対象物を密着させることができ、吸着性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるノズルの主要部の拡大縦断面図である。
【図2】図2はノズル先端部が基板面の傾斜に沿って傾動した状態を示す拡大縦断面図である。
【図3】図3はノズルの外観斜視図である。
【図4】図4は従来例における反りのない回路基板への転写を説明するものであり、(a)は転写時の状態を示す図、(b)は転写後の状態を示す図である。
【図5】図5は従来例における反りのある回路基板への転写を説明するものであり、(a)は転写時の状態を示す図、(b)は転写後の状態を示す図である。
【図6】図6は比較例におけるノズル先端部の傾動時の挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を図1乃至図3を用いて説明する。
部品実装機用のノズル11は、ノズル先端部12を360°いずれの方向にも傾動可能とするフローティング構造13を介してノズル基端部14に支持させた構成となっている。このノズル11は、部品吸着用のノズルに代えて、部品実装機の装着ヘッド(図示せず)に脱着可能に取り付けられる。図示はしないが、ノズル先端部12の下面には、半田、フラックス、接着剤等の粘性流動体を回路基板に転写する複数の転写ピンが下向きに突設されている。或は、ノズル先端部12の下面部に複数の吸着孔を設け、各吸着孔にそれぞれ吸着対象物(例えば半田ボール)を吸着したり、複数の吸着孔で1つの大型部品を吸着するようにしても良い。
ノズル基端部14の上端部には円形の保持フランジ15(図3参照)が設けられ、この保持フランジ15が部品実装機の装着ヘッドに保持されるようになっている。
【0015】
次に、フローティング構造13の構成を説明する。
図1及び図2に示すように、ノズル基端部14の下部中心には、3段の段付きピン18を固定する固定穴19が下向きに形成され、段付きピン18が固定穴19に下方から圧入、ねじ込み等により取り付けられ、該段付きピン18に形成されたスペーサ部20と円盤状支持部21がノズル基端部14の下端面から下方に突出して、ノズル基端部14の下部に円盤状支持部21が水平に固定された状態となっている。円盤状支持部21は、スペーサ部20よりも径が大きく形成され、スペーサ部20は、段付きピン18のうちの固定穴19に挿入される部分よりも径が大きく形成され、該スペーサ部20の上端面がノズル基端部14の下端面に当接するまで段付きピン18を固定穴19に圧入、ねじ込み等することで、円盤状支持部21の外周部上端面とノズル基端部14の下端面との間にスペーサ部20の厚み分の隙間を確保している。
【0016】
一方、ノズル先端部12の上面側には、ノズル基端部14側の円盤状支持部21に嵌合する円形フランジ部22が上向きに形成され、該円形フランジ部22が円盤状支持部21の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合されている。
【0017】
段付きピン18のスペーサ部20には、リング状のストッパ23が所定のクリアランスを持って挿通されている。このストッパ23の内径が円盤状支持部21の外径より小さく形成され、且つ、該ストッパ23のうちのスペーサ部20との嵌合部分の厚みがスペーサ部20の厚みより所定寸法小さく形成されることで、該ストッパ23が円盤状支持部21の外周部上面側に上下動可能且つ傾動可能に係合保持されている。
【0018】
ノズル先端部12の上面側には、リング状のストッパ23を取り囲むように筒状部24が上向きに形成され、該筒状部24に形成したねじ孔25に外側からねじ26を締め込むことで、該ねじ26の先端部をストッパ23の外周面に形成した凹部27に嵌め込むことで、ノズル先端部12とストッパ23とを固定している。これにより、ノズル先端部12を360°いずれの方向にも傾動可能とするフローティング構造13を介してノズル基端部14に支持させている。
【0019】
ノズル基端部14の下部には、ノズル先端部12の筒状部24と同一径の筒状部28が形成され、該筒状部28の内周側に装着したスプリング29(付勢手段)によってストッパ23とノズル先端部12が下方に付勢されている。
【0020】
図3に示すように、ストッパ23には、ノズル基端部14に対してノズル先端部12を所定位置で回り止めする凸状の回り止め部31が上向きに形成され、該回り止め部31がノズル基端部14の筒状部28に形成された嵌合溝32に上下動可能に嵌合されている。尚、ストッパ23とノズル先端部12とをねじ26で固定する際に、ストッパ23とノズル先端部12とを位置決めするために、ストッパ23には、位置決め凸部33が下向きに形成され、該位置決め凸部33をノズル先端部12の筒状部24に形成された位置決め溝34に嵌め込むことで、ストッパ23とノズル先端部12とを位置決めできるようになっている。
【0021】
次に、上記構成のフローティング構造13付きのノズル11の作用・効果を説明する。 本実施例のノズル11は、ノズル先端部12の上面側に上向きに設けられた円形フランジ部22を、ノズル基端部14に設けられた円盤状支持部21の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合しているため、図1に示すように、ノズル先端部12が回路基板36等に片当たりすると、図2に示すように、ノズル先端部12は、基板面等に接触する側のみがスプリング29に抗して押し上げられ、基板面等に接触しない側は、基板面等に接触するまで押し上げられない。これにより、ノズル先端部12が基板面等の傾斜に沿って傾動して片当たりが解消される。しかも、ノズル先端部12側の円形フランジ部22とノズル基端部14側の円盤状支持部21との間には、前者を後者に上下動可能且つ傾動可能に嵌合するためのクリアランスが存在するだけであるため、ノズル先端部12の傾動によるノズル先端部12の水平方向の位置ずれ量はクリアランスの範囲内に収まり、ノズル先端部12の傾動によるノズル先端部12の水平方向の位置ずれ量を低減できる。従って、本実施例のノズル11を転写用のノズルとして用いれば、反りのある回路基板36でも転写品質を安定して向上できる。また、本実施例のノズル11を吸着用のノズルとして用いれば、吸着性能を安定して向上できる。
【0022】
しかも、本実施例では、ノズル基端部14に対してノズル先端部12を所定位置で回り止めする回り止め部31を設けるようにしたので、ノズル先端部12の下面側の形状(転写ピン等の配列)に方向性がある場合に、ノズル基端部14に対してノズル先端部12を位置決めした状態で回り止めすることができる利点がある。
【0023】
尚、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、ストッパ23の形状や組付方法等を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
11…部品実装機用のノズル、12…ノズル先端部、13…フローティング構造、14…ノズル基端部、18…段付きピン、19…固定穴、20…スペーサ部、21…円盤状支持部、22…円形フランジ部、23…ストッパ、26…ねじ、29…スプリング(付勢手段)、31…回り止め部、32…嵌合溝、33…位置決め凸部、34…位置決め溝、36…回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル先端部を360°いずれの方向にも傾動可能とするフローティング構造を介してノズル基端部に支持させた部品実装機用のノズルであって、
前記フローティング構造は、前記ノズル基端部に水平に設けられた円盤状支持部と、前記ノズル先端部に上向きに設けられた円形フランジ部とを備え、前記円形フランジ部を前記円盤状支持部の外周側にクリアランスを持って上下動可能且つ傾動可能に嵌合すると共に、その嵌合を抜け止めするストッパと、前記ノズル先端部を下方に付勢する付勢手段とを設けたことを特徴とする部品実装機用のノズル。
【請求項2】
前記ノズル基端部に対して前記ノズル先端部を所定位置で回り止めする回り止め部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装機用のノズル。
【請求項3】
前記ストッパは、リング状に形成されて前記ノズル先端部に固定され、該ストッパの内周側の部分が前記円盤状支持部の外周部上面に係合することで該円盤状支持部と前記円形フランジ部との嵌合を抜け止めすることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機用のノズル。
【請求項4】
前記ノズル先端部の下面側には、粘性流動体を転写する複数の転写ピン、又は、複数の吸着孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機用のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−124234(P2012−124234A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272008(P2010−272008)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】