説明

部屋内音場体験システム

【課題】任意の受音位置で音源の音がどのように聞こえるかを容易に体験することができる部屋内音場体験システムを提供する。
【解決手段】無響室に複数のスピーカーが設置され、そこで特定の部屋内の音場を体験するシステムであって、前記特定の部屋に関する部屋構成、部材情報、音源位置、無響室のスピーカーに対応するスピーカー位置の入力部10,11,13,14が備えられ、更に、同部屋内の音場を計算する部16と、同部屋内における音源位置と各スピーカー位置との間の伝達特性を求める部17と、各スピーカー位置での出力方向を求める部20と、計算結果に基づき各スピーカーに出力情報を割り当てる部21とが備えられ、無響室内の任意の受音位置でその位置における前記音源位置からの音を各スピーカーからの音によって体験できるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋内音場体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体験しようとする部屋、例えばリビングルームやオーディオルーム等の部屋の大きさや家具の配置、部屋内の部材の材質や特性、音源位置、受音位置等を入力し、音場と、音源と受音位置との間の伝達特性とを計算で求めて原音を加工し、受音位置において音源の音がどのように聞こえるかを体験してもらう部屋内音場体験装置は、従来より提供されている。
【特許文献1】特開平11−327568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の部屋内音場体験装置では、音源と受音位置とが特定されていることを前提として計算がなされる構成となっており、そのため、受音位置を変更すると、計算のやり直しが必要になり、非常に厄介であるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、任意の受音位置で音源の音がどのように聞こえるかを容易に体験することができる部屋内音場体験システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、無響室に複数のスピーカーが設置され、該無響室内で特定の部屋内の音場を体験する部屋内音場体験システムであって、
前記特定の部屋内の部屋構成入力部と、
同部屋内の部材情報入力部と、
同部屋内における音源の位置を入力する音源位置入力部と、
前記無響室のスピーカーの位置に対応する同部屋内におけるスピーカー位置を入力するスピーカー位置入力部と、
が備えられ、
同部屋内における吸音特性、音の反射特性、部屋内で発生させる音に基づいて同部屋内の音場を計算する音場計算部と、
同部屋内における音源位置と各スピーカー位置との間の伝達特性を求める伝達特性計算部と、
各スピーカー位置での出力方向を求める出力方向計算部と、
音場計算部、伝達特性計算部及び出力方向計算部で計算した結果に基づき各スピーカーに出力情報を割り当てる出力情報割り当て部と
が備えられ、前記無響室内の任意の受音位置でその位置における前記音源位置からの音を各スピーカーからの音によって体験することができるようになされていることを特徴とする部屋内音場体験システムによって解決される。
【0006】
このシステムでは、伝達特性計算部が部屋内における音源位置と各スピーカー位置との間の伝達特性を求めるようになされていると共に、各スピーカー位置での出力方向を求める出力方向計算部が備えられ、出力情報割り当て部が、音場計算部、伝達特性計算部及び出力方向計算部で計算した結果に基づき各スピーカーに出力情報を割り当て、無響室内の任意の受音位置で、その位置における音源位置からの音を各スピーカーからの音によって体験することができるようになされているので、受音位置の変更に伴う計算のやり直しが必要なく、任意の受音位置で音源の音がどのように聞こえるかを容易に体験することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のとおりのものであるから、任意の受音位置で音源の音がどのように聞こえるかを容易に体験することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
実施形態の部屋内音場体験システムは、図2(ロ)に示すように、スピーカー1〜8が天井側の四隅部と床側の四隅部の合計8箇所に設置された無響室9が備えられていると共に、図1に示すように、部屋構成入力部10と、部材情報入力部11と、対象音入力部12と、音源位置入力部13と、スピーカー位置入力部14とが備えられている。
【0010】
部屋構成入力部10は、図2(イ)に示すような体験しようとする特定の部屋15に関する情報、例えば、部屋15の大きさや、壁、床、天井等の部屋区画部材、窓やカーテンの有無、家具、家電製品の配置などを入力するものであり、
部材情報入力部11は、部屋構成入力部10で入力した部屋15内の各部材に関する情報、例えば、吸音特性、反射特性などを入力するものであり、
対象音入力部12は、体験しようとする特定の部屋15内で聞く音の種類を入力するものであり、
音源位置入力部13は、体験しようとする特定の部屋15内における音源位置Oを入力するものであり、
スピーカー位置入力部14は、体験しようとする特定の部屋15内において、無響室9のスピーカー1〜8の位置に対応する位置(スピーカー位置SP1〜SP8)を入力するものである。
【0011】
更に、音場計算部16と、伝達特性計算部17と、音場加工部18と、対象音録音再生部19と、出力方向計算部20と、出力情報割り当て部21とが備えられている。
【0012】
音場計算部16は、体験しようとする特定の部屋15内における吸音特性、音の反射特性、部屋内で発生させる音に基づいて同部屋15内の音場を計算するものであり、
伝達特性計算部17は、同部屋15内における音源位置Oと各スピーカー位置SP1〜SP8との間の伝達特性を求めるものである。その解析手法には、有限要素法、境界要素法、有限体積法などが利用され、音場計算部16で得られた結果に基づいて、音源位置Oと各スピーカー位置SP1〜SP8の間での減衰性能を表すフィルターが求められる。
【0013】
また、音場加工部18は、伝達特性計算部17で求められた結果に基づき原音を加工し、対象音録音再生部19は、体験しようとする音を録音・再生するものである。
【0014】
そして、出力方向計算部20は、各スピーカー位置SP1〜SP8での出力方向(インテンシティ(ベクトル))を求めるものであり、
出力情報割り当て部21は、音場計算部16、伝達特性計算部17及び出力方向計算部20で計算した結果に基づき、各スピーカー1〜8に出力情報を割り当てるものであって、
無響室9内の任意の受音位置でその位置における音源位置Oからの音を、各スピーカー1〜8からの音によって体験することができるようになされている。
【0015】
なお、各スピーカー位置SP1〜SP8での音の出力方向は逐次変化するので、逐次計算を行うようになされている。また、音場計算部16、伝達特性計算部17及び出力方向計算部20の各計算部における計算は、相前後して順次に行われるようになされていてもよいし、同時的に行われるようになされていてもよい。
【0016】
上記の体験システムでは、部屋構成入力部10で、体験しようとする特定の部屋15に関する情報を入力し、部材情報入力部11で、部屋構成入力部10で入力した部屋15内の各部材に関する情報を入力し、対象音入力部12で、体験しようとする特定の部屋15内で聞く音の種類を入力し、音源位置入力部13で、体験しようとする特定の部屋15内における音源の位置Oを入力し、スピーカー位置入力部14で、スピーカー位置SP1〜SP8を入力すれば、音場計算部16で、同部屋15内の音場が計算され、伝達特性計算部17で、同部屋15内における音源位置Oと各スピーカー位置SP1〜SP8との間の伝達特性が求められ、出力方向計算部20で、各スピーカー位置SP1〜SP8での出力方向(インテンシティ(ベクトル))が求められ、出力情報割り当て部21で、各スピーカー1〜8に出力情報が割り当てられ、それによって、無響室9内の任意の受音位置でその位置における音源位置Oからの音を、各スピーカー1〜8からの音によって体験することができる。
【0017】
従って、受音位置を変更しても、従来のような計算のやり直しをする必要がなく、無響室9内の任意の受音位置で音源位置Oの音がどのように聞こえるかを容易に体験することができる。計算も容易であり、受音位置にこだわる必要もなくて種々の位置で容易に体験することができ、理想とする音場の突き止めを容易にすることもできる。
【0018】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、無響室に8つのスピーカー1〜8を特定の配置で設置した場合を示したが、スピーカーの数や位置については、特段の制限はなく、発明の趣旨に沿うことができる範囲で種々変更されてよい。また、本発明では、闇騒音を考慮したシステム構成にすることも可能であり、それによって、より一層リアルな体験が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図(イ)は体験しようとする部屋内の構成を示す透視斜視図、図(ロ)は体験に用いられる無響室内の正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1〜8…スピーカー
9…無響室
10…部屋構成入力部
11…部材情報入力部
13…音源位置入力部
14…スピーカー位置入力部
15…特定の部屋
16…音場計算部
17…伝達特性計算部
20…出力方向計算部
21…出力情報割り当て部
O…音源位置
SP1〜SP8…スピーカー位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無響室に複数のスピーカーが設置され、該無響室内で特定の部屋内の音場を体験する部屋内音場体験システムであって、
前記特定の部屋内の部屋構成入力部と、
同部屋内の部材情報入力部と、
同部屋内における音源の位置を入力する音源位置入力部と、
前記無響室のスピーカーの位置に対応する同部屋内におけるスピーカー位置を入力するスピーカー位置入力部と、
が備えられ、
同部屋内における吸音特性、音の反射特性、部屋内で発生させる音に基づいて同部屋内の音場を計算する音場計算部と、
同部屋内における音源位置と各スピーカー位置との間の伝達特性を求める伝達特性計算部と、
各スピーカー位置での出力方向を求める出力方向計算部と、
音場計算部、伝達特性計算部及び出力方向計算部で計算した結果に基づき各スピーカーに出力情報を割り当てる出力情報割り当て部と
が備えられ、前記無響室内の任意の受音位置でその位置における前記音源位置からの音を各スピーカーからの音によって体験することができるようになされていることを特徴とする部屋内音場体験システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−157106(P2009−157106A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335217(P2007−335217)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】