部材接合構造、及び、木柱と木梁との接合構造、並びに、接合具
【課題】時間の経過に伴う木材からなる一方側被接合部材の収縮変形によって両被接合部材の接合部に緩みが生じるのを効果的に抑止する。
【解決手段】少なくとも前端側の外周面にネジ部5aが形成された接合用部材5が、木材からなる一方側被接合部材1に螺着されているとともに、他方側被接合部材2が、一方側被接合部材1と直接的又は間接的に面接触する配置で接合用部材5における一方側被接合部材1との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段6で固定されている。
【解決手段】少なくとも前端側の外周面にネジ部5aが形成された接合用部材5が、木材からなる一方側被接合部材1に螺着されているとともに、他方側被接合部材2が、一方側被接合部材1と直接的又は間接的に面接触する配置で接合用部材5における一方側被接合部材1との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段6で固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材からなる一方側被接合部材と種々の素材からなる他方側被接合部材とを接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、木柱(木材からなる一方側被接合部材の一例)と、木柱に接合される木柱用被接合片部と木梁に接合される木梁用接合片部とを備える金属製の継手部材(前記他方側被接合部材の一例)との接合に関して、以下(1)、(2)に記載のものが知られている。
【0003】
(1)前記木柱1の周側面部に貫通形成された挿通孔1bと前記継手部材の木柱用被接合片部2aに貫通形成された挿通孔2dとにボルト7を挿通するとともに、そのボルト7の先端部に螺合させたナット8を締め付け操作することにより、ボルト7の頭部7aとナット8とで木柱1と木柱用被接合片部2aとを挟み付ける状態で、木柱1と木柱用被接合片部2aとが接合されているもの(図11(a)を参照)。
【0004】
(2)前記継手部材の木柱用被接合片部2aに貫通形成された挿通孔2dを通して、頭付きの木ネジ4の頭部4aで木柱用被接合片部2aを前記木柱1に押し付けるように、木ネジ4のネジ部4bを木柱1に螺入することにより、木柱1と木柱用被接合片部2aとが接合されているもの(図12(a)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、木材は、時間の経過に伴う含水率の低下によってどうしても多少の収縮変形が生じることから、前記(1)の技術では、図11(b)に示すように、時間の経過に伴う一方側被接合部材の収縮変形長さSの範囲で両接合部材が遠近方向に遊動可能な状態に両被接合部材の接合部が緩くなって、そのことで、木柱と木梁との架構の剛性が不十分になる問題がある。
【0006】
また、前記(2)の技術でも、図12(b)に示すように、時間の経過に伴う一方側被接合部材の収縮変形長さSの範囲で他方側被接合部材が一方側被接合部材に対する遠近方向に遊動可能な状態に両被接合部材の接合が緩くなって、やはり、木柱と木梁との架構の剛性が不十分になる問題がある。
【0007】
そして、上記の問題は、例えば、木構造の架構にあっては筋交いを不存とする形態での開口部の大型化を困難にする等、木材の使用用途が制限される重大な要因になっていた。
【0008】
本発明は、上述の如き課題に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、時間の経過に伴う木材からなる一方側被接合部材の収縮変形によって両被接合部材の接合部に緩みが生じるのを効果的に抑止し得る部材接合構造、及び、木柱と木梁との接合構造、並びに、接合具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、部材接合構造に係り、その特徴は、
少なくとも前端側の外周面にネジ部が形成された接合用部材が、木材からなる一方側被接合部材に螺着されているとともに、
他方側被接合部材が、前記一方側被接合部材と直接的又は間接的に面接触する配置で前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段で固定されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、両被接合部材の各々を前記接合用部材の所定部位に別個に固定する形態で両被接合部材を接合するから、木材からなる一方側被接合部材に収縮変形が生じても、接合用部材を介して両被接合部材を相対移動が不能な緩みのない状態(即ち、剛な接合状態)に保つことができる。
【0011】
しかも、一方側被接合部材と接合用部材の前端側との螺着部位は、一方側被接合部材の乾燥収縮に伴う締め付け圧力の増大で一層強固になるから、一方側被接合部材の収縮変形に伴い両被接合部材が接触状態から非接触状態になることによる剛性の低下を効率的に補うことができる。
【0012】
従って、時間の経過に伴い両被接合部材の接合部に緩みが生じる不具合を効果的に抑止することができる。
【0013】
本構成の実施において、前記固定手段は、前記接合用部材に取り付け可能な別部材等から構成されたものに限らず、溶接部や接着剤による接着部等から構成されていてもよい。
【0014】
なお、前記木材とは、無垢材等の純粋な木素材のみからなるものに限らず、木素材を含むもの、或いは、集成材や単板積層材、合板、パーティクルボード、ファイバーボード等の種々の木質素材からなるもの等の総称を云う。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記固定手段が、前記接合用部材の前後中間部に備えられた受け部と、前記接合用部材における前記受け部よりも後端側に備えられ、且つ、受け部との間で接合用部材に対する前後方向での移動を接当規制する状態で前記他方側被接合部材を挟着可能な押さえ部とから構成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、前記受け部と前記押さえ部とによって、接合用部材に対する前後方向での移動が不能な状態で他方側被接合部材を接合用部材に効果的且つ効率的に固定することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記接合用部材の外周面に形成されたネジ部と螺合可能なナットから構成されている点にある。
【0018】
上記構成によれば、前記接合用部材に対する前後方向において前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方の位置調整が可能になるから、その位置調整によって一方側被接合部材や他方側被接合部材の厚みの変化に応じた適切な接合状態を現出することができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記受け部が、前記接合用部材の前後中間部に一体形成された受け片部から構成されている点にある。
【0020】
上記構成によれば、例えば、前記受け片部が接合用部材の前後方向に沿って位置移動可能な別部材から構成されている場合に比べ、他方側被接合部材の固定作業の能率化を図ることができるとともに、部材点数を削減することができて、構造の簡素化も図ることができる。
【0021】
また、前記受け片部と前記一方側被接合部材との接当によって一方側被接合部材とネジ部との螺着長さを所定長さに規制することができるから、一方側被接合部材とネジ部との螺着長さ螺着長さを大きく採りすぎることによって他方側被接合部材の固定が不十分になる不具合も防止することができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ネジ部が、木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているとともに、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記木ネジ部に螺合可能な木ネジ用ナットから構成されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、前記ネジ部が木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているから、前記ネジ部が前記一方側被接合部材に埋め込み固定されたナットに螺合するボルトネジ部から構成する場合に比べ、構造の簡素化と構築コストの低廉化を図ることができる。
【0024】
また、前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が木ネジ用ナットから構成されているから、市販のボルトネジ用のナットと螺合するボルトネジ部を接合用部材の一部に別途形成する場合に比べて構造の簡素化を図ることができる。
【0025】
本発明の第6特徴構成は、木柱と木梁との接合構造に係り、その特徴は、
前記一方側被接合部材が、木柱から構成されているとともに、
前記他方側被接合部材が、前記木柱と接合される木柱用被接合片部と、木梁と接合される木梁用被接合片部とを備える継手部材から構成され、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合、及び、前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合の一方又は両方に、第1〜第5特徴構成のいずれかに記載の部材接合構造が採用されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、前述した部材接合構造によって木構造の架構の剛性を効果的且つ効率的に高めることができ、これにより、木構造の設計の自由度を大幅に高めることができる。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記木柱用被接合片部が前記木柱の周側面部における前記木梁に対向する側の面部に接合され、且つ、前記木梁用被接合片部が木梁の周側面部に接合されるように、木柱用被接合片部と木梁用被接合片部とが直交又は略直交する状態で前記継手部材に備えられ、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合には、前記部材接合構造が採用されているとともに、
前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合には、木ネジのネジ頭部で前記木梁用被接合片部を木梁に押し付けるように、木梁用被接合片部に形成した挿通孔を通して木ネジのネジ部を木梁に螺入する接合構造が採用されている点にある。
【0028】
つまり、前記木柱と前記木柱用被接合片部との接合部では、前記接合用部材の前後方向(つまり、ネジ部の軸心方向)に沿って大きな荷重が作用するために高い接合強度を要するが、前記木梁と前記木梁用被接合片部との接合部では、接合用部材の左右幅方向に沿って大きな荷重が作用することからそれほど高い接合強度を要しない。
【0029】
このことから、木柱用被接合片部と木柱との接合には前記部材接合構造が採用され、且つ、木梁用被接合片部と木梁との接合には木ネジによる接合構造が採用されている上記構成によれば、剛性の高い木構造の架構を一層効率的に構成することができる。
【0030】
本発明の第8特徴構成は、接合具に係り、その特徴は、
木材からなる一方側被接合部材に螺着可能なネジ部が少なくとも前端側の外周面に形成された接合用部材と、
前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位と他方側被接合部材とを両被接合部材の対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定手段とが備えられている点にある。
【0031】
上記構成によれば、時間の経過に伴い両被接合部材の接合に緩みが生じる不具合を効果的に抑止し得る前述の部材接合構造を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態における木構造の架構の一部を示す説明断面図
【図2】第1実施形態における要部の分解斜視図
【図3】第1実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図4】第1実施形態における接合具の分解図
【図5】第1実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図6】第2実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図7】第2実施形態における接合具の分解図
【図8】第3実施形態における接合具の分解図
【図9】その他の実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図10】その他の実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図11】従来の部材接合構造の説明断面図
【図12】従来の部材接合構造の説明断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
図1は、木構造の架構の一部を示し、木柱1(木材からなる一方側被接合部材の一例)の上下中間部分1A及び上方部分1Bの夫々には、金属製の継手部材2(他方側被接合部材の一例)を介して木梁3が接合されている。
【0034】
前記継手部材2は、側面視略横向きT字状の基材を有する第1継手部材2Aと、側面視略横向きL字状の基材を有する第2継手部材2Bの2種がある。木柱1の上下中間部分1Aと木梁3との接合には、一対の第1継手部材2Aが用いられている。一方、木柱1の上方部分1Bと木梁3との接合には、第1、第2継手部材2A、2Bが各1個づつ用いられている。
【0035】
図1、図2に示すように、第1、第2継手部材2A、2Bの各々には、木柱1に接合される木柱用被接合片部2aと木梁3に接合される木梁用被接合片部2bとが直交する状態で備えられている。なお、前記木柱用被接合片部2aはH型鋼のフランジ部から構成され、前記木梁用被接合片部2bはH型鋼のウェブ部から構成されている。
【0036】
そして、木柱1と各木柱用被接合片部2aとは、木柱用被接合片部2aに貫通形成した複数の挿通孔2dを通して後述する接合具Tによって接合されているとともに、木梁3と各木梁用被接合片部2bとは、木梁用被接合片部2bに貫通形成した複数の挿通孔2eを通して頭付きの木ネジ4(接合手段の一例)によって接合されている。
【0037】
図2〜図4に示すように、前記接合具Tは、木柱1に螺着可能なネジ部5aが少なくとも前端側の外周面に形成された金属製の接合用部材5と、木柱1とは別個に構成され、且つ、接合用部材5における木柱1との螺着部位よりも後端側の部位と木柱用被接合片部2aとを、木柱1と木柱用被接合片部2aの対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定部材6(固定手段の一例)とから構成されている。
【0038】
前記ネジ部5aは、木材に対する螺入操作が可能で且つ接合用部材5の前端から後端(後端部の一例)に亘って形成されたスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されている。つまり、本例では、ネジ部5aを有する接合用部材5が頭無しの木ネジから構成されている。また、前記接合用部材5の後端面部には、操作具で木材に対する螺入操作を行うための角筒状の被操作部5bが突出形成されている。
【0039】
前記固定部材6は、接合用部材5の木ネジ部5aと螺合可能な木ネジ用の受けナット6a(受け部の一例)と押さえナット6b(押さえ部の一例)とから構成されており、両ナット6a、6bの間において接合用部材5に対する前後方向での移動を接当規制する状態で木柱用被接合片部2aを挟着可能に構成されている。
【0040】
そして、前記接合用部材5の前端部が木柱1に螺着されているとともに、接合用部材の前後中間部に螺合させた受けナット6aを木柱1に形成された凹部1a(具体的には、受けナット6aの高さ寸法に対応する深さ寸法の凹部)に位置させ、且つ、木柱用被接合片部2aの挿通孔2dを通して接合用部材5における受けナット6aと押さえナット6bとの間に木柱用被接合片部2aを介在させた状態で、接合用部材5の後端部に螺合させた押さえナット6bを締め付け操作することにより、木柱用被接合片部2aと木柱1とが直接的に面接触する配置で木柱用被接合片部2aが接合用部材5の後端部に挟着固定されている。
【0041】
つまり、木柱1と木柱用被接合片部2aとの接合部は、木柱1と木柱用被接合片部2aの各々を接合用部材5の所定部位に別個に固定する構造を採ることによって、図5に示すように、時間の経過に伴い木柱1が長さS分だけ収縮変形した場合でも、接合用部材5を介する形態で木柱1と木柱用被接合片部2aとが相対移動不能な緩みのない状態(つまり、剛な接合状態)に保つことができるように構成されている。
【0042】
なお、前記木梁3と前記木梁用被接合片部2bとの接合部は、木柱1と木柱用被接合片部2aとの接合部ほどの接合強度を要しないことから、前記木ネジ4のネジ頭部4aで木梁用被接合片部2aを木梁3に押し付けるように、木梁用被接合片部2bの挿通孔2eを通して木ネジ4のネジ部4bを木梁3に螺入することにより固定されている。
【0043】
受けナット6aと木柱用被接合片部2aとの間、木柱用被接合片部2aと押さえナット6bとの間には、ワッシャー等の緩み止め手段を適宜に設けてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態では、図6、図7に示すように、前記ネジ部5aが、前記接合用部材5の前端部の外周面に形成されたスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されているとともに、接合用部材5の後端部の外周面には、ボルトネジ部5dが形成され、更に、前記固定部材6が、前記ボルトネジ部5dに螺合可能なボルトネジ用の受けナット6dと押さえナット6eから構成されている。また、前記被操作部5bが接合用部材5の後端面部に窪み形成された六角穴から構成されている。
【0045】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同様であるから、同様の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態では、図8、図9に示すように、前記固定手段が、前記接合用部材5の前後中間部に一体形成された鍔状の受け片部6fと、前記ボルトネジ部5dに螺合可能なボルトネジ用の押さえナット6eから構成されている。
【0047】
当該受け片部6fは、軸心方向視の輪郭形状が六角形状に形成されており、操作具による接合用部材5の木柱1への螺入操作を行うための被操作部5bに兼用構成されている。
【0048】
また、受け片部6fは、接合用部材5の前後中間部において木柱1に対する設定螺入深さ分だけ接合用部材5の前端から後方に移動した位置に形成されており、木柱1に対する螺入操作中に木柱1と接当することで設定深さ以上まで螺入操作を継続することが自動的に防止されるように構成されている。
【0049】
尚、その他の構成は、第2実施形態で説明した構成と同様であるから、同様の構成箇所には、第2実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0050】
[その他の実施形態]
(1)前記固定手段は、前述の各実施形態で示した固定部材6に限らず、溶接部や接着剤等からなる接着部から構成されていてもよい。
【0051】
また、例えば、前記固定手段が、前記接合用部材5の後端部に形成したボルトネジ部と、他方側被接合部材の挿通孔の内面に形成した雌ネジ部とから構成してもよい。このようにすれば、接合用部材5の螺入操作によって、一方側被接合部材に対する螺着と他方側被接合部材に対する螺着とを一挙に行うことができる。
【0052】
(2)前述の各実施形態では、前記木柱1と前記木柱用被接合片部2aとが直接的に面接触する状態で接合されている場合を例に示したが、例えば、図9に示すように、木柱1の受け部用凹部1aの深さ寸法を受け部の高さ寸法よりも小さくする等により、木柱1と木柱用被接合片部2aとが他部材(本例では、受け部)を介して間接的に面接触する状態で接合されていてもよい。
【0053】
(3)前述の各実施形態では、木柱1の受け部用の前記凹部1aの深さ寸法が、前記受け部の高さ寸法と同じに構成されている場合を例に示したが、受け部の高さ寸法よりも大に構成されていてもよい。
【0054】
(4)前述の各実施形態では、木柱1に受け部用の凹部1aが形成されている場合を例に示したが、図10に示すように、木柱用被接合片部2aに受け部用の凹部1aが形成されていてもよい。
【0055】
(5)前述の各実施形態では、前記ネジ部5aが、木材に対する螺入操作が可能なスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されている場合を例に示したが、木材に埋設状態で固定したナット等に螺合するボルトネジ部等から構成されていてもよい。
【0056】
(6)前述の各実施形態では、木柱1と前記木柱用被接合片部2aとの接合部に前記接合具Tが用いられている場合を例に示したが、前記木梁3と前記木梁用被接合片部2bとの接合部に接合部Tが用いられていてもよく、或いは、両接合部に接合具Tが用いられていてもよい。
【0057】
(7)一方側被接合部材は、前述の各実施形態で示した木柱1や木梁3等の架構の構成部材に限らず、木製家具や木製工作物等の構成部材等であってもよい。
【0058】
(8)他方側被接合部材も、前述の各実施形態で示した継手部材2等の架構の構成部材に限らず、木製家具や木製工作物等の構成部材等であってもよい。また、他方側被接合部材は、前述の各実施形態で示した金属素材からなるものに限らず、FRP素材や木材や石材等の種々の素材からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 一方側被接合部材(木柱)
2 他方側被接合部材(継手部材)
2a 木柱用被接合片部
2b 木梁用被接合片部
2e 挿通孔
4 木ネジ
5 接合用部材
5a ネジ部
6 固定手段
6a 受け部(受けナット)
6b 押さえ部(押さえナット)
6f 受け部(受け片部)
T 接合具
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材からなる一方側被接合部材と種々の素材からなる他方側被接合部材とを接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、木柱(木材からなる一方側被接合部材の一例)と、木柱に接合される木柱用被接合片部と木梁に接合される木梁用接合片部とを備える金属製の継手部材(前記他方側被接合部材の一例)との接合に関して、以下(1)、(2)に記載のものが知られている。
【0003】
(1)前記木柱1の周側面部に貫通形成された挿通孔1bと前記継手部材の木柱用被接合片部2aに貫通形成された挿通孔2dとにボルト7を挿通するとともに、そのボルト7の先端部に螺合させたナット8を締め付け操作することにより、ボルト7の頭部7aとナット8とで木柱1と木柱用被接合片部2aとを挟み付ける状態で、木柱1と木柱用被接合片部2aとが接合されているもの(図11(a)を参照)。
【0004】
(2)前記継手部材の木柱用被接合片部2aに貫通形成された挿通孔2dを通して、頭付きの木ネジ4の頭部4aで木柱用被接合片部2aを前記木柱1に押し付けるように、木ネジ4のネジ部4bを木柱1に螺入することにより、木柱1と木柱用被接合片部2aとが接合されているもの(図12(a)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、木材は、時間の経過に伴う含水率の低下によってどうしても多少の収縮変形が生じることから、前記(1)の技術では、図11(b)に示すように、時間の経過に伴う一方側被接合部材の収縮変形長さSの範囲で両接合部材が遠近方向に遊動可能な状態に両被接合部材の接合部が緩くなって、そのことで、木柱と木梁との架構の剛性が不十分になる問題がある。
【0006】
また、前記(2)の技術でも、図12(b)に示すように、時間の経過に伴う一方側被接合部材の収縮変形長さSの範囲で他方側被接合部材が一方側被接合部材に対する遠近方向に遊動可能な状態に両被接合部材の接合が緩くなって、やはり、木柱と木梁との架構の剛性が不十分になる問題がある。
【0007】
そして、上記の問題は、例えば、木構造の架構にあっては筋交いを不存とする形態での開口部の大型化を困難にする等、木材の使用用途が制限される重大な要因になっていた。
【0008】
本発明は、上述の如き課題に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、時間の経過に伴う木材からなる一方側被接合部材の収縮変形によって両被接合部材の接合部に緩みが生じるのを効果的に抑止し得る部材接合構造、及び、木柱と木梁との接合構造、並びに、接合具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、部材接合構造に係り、その特徴は、
少なくとも前端側の外周面にネジ部が形成された接合用部材が、木材からなる一方側被接合部材に螺着されているとともに、
他方側被接合部材が、前記一方側被接合部材と直接的又は間接的に面接触する配置で前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段で固定されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、両被接合部材の各々を前記接合用部材の所定部位に別個に固定する形態で両被接合部材を接合するから、木材からなる一方側被接合部材に収縮変形が生じても、接合用部材を介して両被接合部材を相対移動が不能な緩みのない状態(即ち、剛な接合状態)に保つことができる。
【0011】
しかも、一方側被接合部材と接合用部材の前端側との螺着部位は、一方側被接合部材の乾燥収縮に伴う締め付け圧力の増大で一層強固になるから、一方側被接合部材の収縮変形に伴い両被接合部材が接触状態から非接触状態になることによる剛性の低下を効率的に補うことができる。
【0012】
従って、時間の経過に伴い両被接合部材の接合部に緩みが生じる不具合を効果的に抑止することができる。
【0013】
本構成の実施において、前記固定手段は、前記接合用部材に取り付け可能な別部材等から構成されたものに限らず、溶接部や接着剤による接着部等から構成されていてもよい。
【0014】
なお、前記木材とは、無垢材等の純粋な木素材のみからなるものに限らず、木素材を含むもの、或いは、集成材や単板積層材、合板、パーティクルボード、ファイバーボード等の種々の木質素材からなるもの等の総称を云う。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記固定手段が、前記接合用部材の前後中間部に備えられた受け部と、前記接合用部材における前記受け部よりも後端側に備えられ、且つ、受け部との間で接合用部材に対する前後方向での移動を接当規制する状態で前記他方側被接合部材を挟着可能な押さえ部とから構成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、前記受け部と前記押さえ部とによって、接合用部材に対する前後方向での移動が不能な状態で他方側被接合部材を接合用部材に効果的且つ効率的に固定することができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記接合用部材の外周面に形成されたネジ部と螺合可能なナットから構成されている点にある。
【0018】
上記構成によれば、前記接合用部材に対する前後方向において前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方の位置調整が可能になるから、その位置調整によって一方側被接合部材や他方側被接合部材の厚みの変化に応じた適切な接合状態を現出することができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記受け部が、前記接合用部材の前後中間部に一体形成された受け片部から構成されている点にある。
【0020】
上記構成によれば、例えば、前記受け片部が接合用部材の前後方向に沿って位置移動可能な別部材から構成されている場合に比べ、他方側被接合部材の固定作業の能率化を図ることができるとともに、部材点数を削減することができて、構造の簡素化も図ることができる。
【0021】
また、前記受け片部と前記一方側被接合部材との接当によって一方側被接合部材とネジ部との螺着長さを所定長さに規制することができるから、一方側被接合部材とネジ部との螺着長さ螺着長さを大きく採りすぎることによって他方側被接合部材の固定が不十分になる不具合も防止することができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記ネジ部が、木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているとともに、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記木ネジ部に螺合可能な木ネジ用ナットから構成されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、前記ネジ部が木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているから、前記ネジ部が前記一方側被接合部材に埋め込み固定されたナットに螺合するボルトネジ部から構成する場合に比べ、構造の簡素化と構築コストの低廉化を図ることができる。
【0024】
また、前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が木ネジ用ナットから構成されているから、市販のボルトネジ用のナットと螺合するボルトネジ部を接合用部材の一部に別途形成する場合に比べて構造の簡素化を図ることができる。
【0025】
本発明の第6特徴構成は、木柱と木梁との接合構造に係り、その特徴は、
前記一方側被接合部材が、木柱から構成されているとともに、
前記他方側被接合部材が、前記木柱と接合される木柱用被接合片部と、木梁と接合される木梁用被接合片部とを備える継手部材から構成され、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合、及び、前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合の一方又は両方に、第1〜第5特徴構成のいずれかに記載の部材接合構造が採用されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、前述した部材接合構造によって木構造の架構の剛性を効果的且つ効率的に高めることができ、これにより、木構造の設計の自由度を大幅に高めることができる。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記木柱用被接合片部が前記木柱の周側面部における前記木梁に対向する側の面部に接合され、且つ、前記木梁用被接合片部が木梁の周側面部に接合されるように、木柱用被接合片部と木梁用被接合片部とが直交又は略直交する状態で前記継手部材に備えられ、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合には、前記部材接合構造が採用されているとともに、
前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合には、木ネジのネジ頭部で前記木梁用被接合片部を木梁に押し付けるように、木梁用被接合片部に形成した挿通孔を通して木ネジのネジ部を木梁に螺入する接合構造が採用されている点にある。
【0028】
つまり、前記木柱と前記木柱用被接合片部との接合部では、前記接合用部材の前後方向(つまり、ネジ部の軸心方向)に沿って大きな荷重が作用するために高い接合強度を要するが、前記木梁と前記木梁用被接合片部との接合部では、接合用部材の左右幅方向に沿って大きな荷重が作用することからそれほど高い接合強度を要しない。
【0029】
このことから、木柱用被接合片部と木柱との接合には前記部材接合構造が採用され、且つ、木梁用被接合片部と木梁との接合には木ネジによる接合構造が採用されている上記構成によれば、剛性の高い木構造の架構を一層効率的に構成することができる。
【0030】
本発明の第8特徴構成は、接合具に係り、その特徴は、
木材からなる一方側被接合部材に螺着可能なネジ部が少なくとも前端側の外周面に形成された接合用部材と、
前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位と他方側被接合部材とを両被接合部材の対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定手段とが備えられている点にある。
【0031】
上記構成によれば、時間の経過に伴い両被接合部材の接合に緩みが生じる不具合を効果的に抑止し得る前述の部材接合構造を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態における木構造の架構の一部を示す説明断面図
【図2】第1実施形態における要部の分解斜視図
【図3】第1実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図4】第1実施形態における接合具の分解図
【図5】第1実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図6】第2実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図7】第2実施形態における接合具の分解図
【図8】第3実施形態における接合具の分解図
【図9】その他の実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図10】その他の実施形態における部材接合構造の説明断面図
【図11】従来の部材接合構造の説明断面図
【図12】従来の部材接合構造の説明断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
図1は、木構造の架構の一部を示し、木柱1(木材からなる一方側被接合部材の一例)の上下中間部分1A及び上方部分1Bの夫々には、金属製の継手部材2(他方側被接合部材の一例)を介して木梁3が接合されている。
【0034】
前記継手部材2は、側面視略横向きT字状の基材を有する第1継手部材2Aと、側面視略横向きL字状の基材を有する第2継手部材2Bの2種がある。木柱1の上下中間部分1Aと木梁3との接合には、一対の第1継手部材2Aが用いられている。一方、木柱1の上方部分1Bと木梁3との接合には、第1、第2継手部材2A、2Bが各1個づつ用いられている。
【0035】
図1、図2に示すように、第1、第2継手部材2A、2Bの各々には、木柱1に接合される木柱用被接合片部2aと木梁3に接合される木梁用被接合片部2bとが直交する状態で備えられている。なお、前記木柱用被接合片部2aはH型鋼のフランジ部から構成され、前記木梁用被接合片部2bはH型鋼のウェブ部から構成されている。
【0036】
そして、木柱1と各木柱用被接合片部2aとは、木柱用被接合片部2aに貫通形成した複数の挿通孔2dを通して後述する接合具Tによって接合されているとともに、木梁3と各木梁用被接合片部2bとは、木梁用被接合片部2bに貫通形成した複数の挿通孔2eを通して頭付きの木ネジ4(接合手段の一例)によって接合されている。
【0037】
図2〜図4に示すように、前記接合具Tは、木柱1に螺着可能なネジ部5aが少なくとも前端側の外周面に形成された金属製の接合用部材5と、木柱1とは別個に構成され、且つ、接合用部材5における木柱1との螺着部位よりも後端側の部位と木柱用被接合片部2aとを、木柱1と木柱用被接合片部2aの対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定部材6(固定手段の一例)とから構成されている。
【0038】
前記ネジ部5aは、木材に対する螺入操作が可能で且つ接合用部材5の前端から後端(後端部の一例)に亘って形成されたスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されている。つまり、本例では、ネジ部5aを有する接合用部材5が頭無しの木ネジから構成されている。また、前記接合用部材5の後端面部には、操作具で木材に対する螺入操作を行うための角筒状の被操作部5bが突出形成されている。
【0039】
前記固定部材6は、接合用部材5の木ネジ部5aと螺合可能な木ネジ用の受けナット6a(受け部の一例)と押さえナット6b(押さえ部の一例)とから構成されており、両ナット6a、6bの間において接合用部材5に対する前後方向での移動を接当規制する状態で木柱用被接合片部2aを挟着可能に構成されている。
【0040】
そして、前記接合用部材5の前端部が木柱1に螺着されているとともに、接合用部材の前後中間部に螺合させた受けナット6aを木柱1に形成された凹部1a(具体的には、受けナット6aの高さ寸法に対応する深さ寸法の凹部)に位置させ、且つ、木柱用被接合片部2aの挿通孔2dを通して接合用部材5における受けナット6aと押さえナット6bとの間に木柱用被接合片部2aを介在させた状態で、接合用部材5の後端部に螺合させた押さえナット6bを締め付け操作することにより、木柱用被接合片部2aと木柱1とが直接的に面接触する配置で木柱用被接合片部2aが接合用部材5の後端部に挟着固定されている。
【0041】
つまり、木柱1と木柱用被接合片部2aとの接合部は、木柱1と木柱用被接合片部2aの各々を接合用部材5の所定部位に別個に固定する構造を採ることによって、図5に示すように、時間の経過に伴い木柱1が長さS分だけ収縮変形した場合でも、接合用部材5を介する形態で木柱1と木柱用被接合片部2aとが相対移動不能な緩みのない状態(つまり、剛な接合状態)に保つことができるように構成されている。
【0042】
なお、前記木梁3と前記木梁用被接合片部2bとの接合部は、木柱1と木柱用被接合片部2aとの接合部ほどの接合強度を要しないことから、前記木ネジ4のネジ頭部4aで木梁用被接合片部2aを木梁3に押し付けるように、木梁用被接合片部2bの挿通孔2eを通して木ネジ4のネジ部4bを木梁3に螺入することにより固定されている。
【0043】
受けナット6aと木柱用被接合片部2aとの間、木柱用被接合片部2aと押さえナット6bとの間には、ワッシャー等の緩み止め手段を適宜に設けてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態では、図6、図7に示すように、前記ネジ部5aが、前記接合用部材5の前端部の外周面に形成されたスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されているとともに、接合用部材5の後端部の外周面には、ボルトネジ部5dが形成され、更に、前記固定部材6が、前記ボルトネジ部5dに螺合可能なボルトネジ用の受けナット6dと押さえナット6eから構成されている。また、前記被操作部5bが接合用部材5の後端面部に窪み形成された六角穴から構成されている。
【0045】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同様であるから、同様の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態では、図8、図9に示すように、前記固定手段が、前記接合用部材5の前後中間部に一体形成された鍔状の受け片部6fと、前記ボルトネジ部5dに螺合可能なボルトネジ用の押さえナット6eから構成されている。
【0047】
当該受け片部6fは、軸心方向視の輪郭形状が六角形状に形成されており、操作具による接合用部材5の木柱1への螺入操作を行うための被操作部5bに兼用構成されている。
【0048】
また、受け片部6fは、接合用部材5の前後中間部において木柱1に対する設定螺入深さ分だけ接合用部材5の前端から後方に移動した位置に形成されており、木柱1に対する螺入操作中に木柱1と接当することで設定深さ以上まで螺入操作を継続することが自動的に防止されるように構成されている。
【0049】
尚、その他の構成は、第2実施形態で説明した構成と同様であるから、同様の構成箇所には、第2実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0050】
[その他の実施形態]
(1)前記固定手段は、前述の各実施形態で示した固定部材6に限らず、溶接部や接着剤等からなる接着部から構成されていてもよい。
【0051】
また、例えば、前記固定手段が、前記接合用部材5の後端部に形成したボルトネジ部と、他方側被接合部材の挿通孔の内面に形成した雌ネジ部とから構成してもよい。このようにすれば、接合用部材5の螺入操作によって、一方側被接合部材に対する螺着と他方側被接合部材に対する螺着とを一挙に行うことができる。
【0052】
(2)前述の各実施形態では、前記木柱1と前記木柱用被接合片部2aとが直接的に面接触する状態で接合されている場合を例に示したが、例えば、図9に示すように、木柱1の受け部用凹部1aの深さ寸法を受け部の高さ寸法よりも小さくする等により、木柱1と木柱用被接合片部2aとが他部材(本例では、受け部)を介して間接的に面接触する状態で接合されていてもよい。
【0053】
(3)前述の各実施形態では、木柱1の受け部用の前記凹部1aの深さ寸法が、前記受け部の高さ寸法と同じに構成されている場合を例に示したが、受け部の高さ寸法よりも大に構成されていてもよい。
【0054】
(4)前述の各実施形態では、木柱1に受け部用の凹部1aが形成されている場合を例に示したが、図10に示すように、木柱用被接合片部2aに受け部用の凹部1aが形成されていてもよい。
【0055】
(5)前述の各実施形態では、前記ネジ部5aが、木材に対する螺入操作が可能なスクリューネジ形状の木ネジ部から構成されている場合を例に示したが、木材に埋設状態で固定したナット等に螺合するボルトネジ部等から構成されていてもよい。
【0056】
(6)前述の各実施形態では、木柱1と前記木柱用被接合片部2aとの接合部に前記接合具Tが用いられている場合を例に示したが、前記木梁3と前記木梁用被接合片部2bとの接合部に接合部Tが用いられていてもよく、或いは、両接合部に接合具Tが用いられていてもよい。
【0057】
(7)一方側被接合部材は、前述の各実施形態で示した木柱1や木梁3等の架構の構成部材に限らず、木製家具や木製工作物等の構成部材等であってもよい。
【0058】
(8)他方側被接合部材も、前述の各実施形態で示した継手部材2等の架構の構成部材に限らず、木製家具や木製工作物等の構成部材等であってもよい。また、他方側被接合部材は、前述の各実施形態で示した金属素材からなるものに限らず、FRP素材や木材や石材等の種々の素材からなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 一方側被接合部材(木柱)
2 他方側被接合部材(継手部材)
2a 木柱用被接合片部
2b 木梁用被接合片部
2e 挿通孔
4 木ネジ
5 接合用部材
5a ネジ部
6 固定手段
6a 受け部(受けナット)
6b 押さえ部(押さえナット)
6f 受け部(受け片部)
T 接合具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前端側の外周面にネジ部が形成された接合用部材が、木材からなる一方側被接合部材に螺着されているとともに、
他方側被接合部材が、前記一方側被接合部材と直接的又は間接的に面接触する配置で前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段で固定されている部材接合構造。
【請求項2】
前記固定手段が、前記接合用部材の前後中間部に備えられた受け部と、前記接合用部材における前記受け部よりも後端側に備えられ、且つ、受け部との間で接合用部材に対する前後方向での移動を接当規制する状態で前記他方側被接合部材を挟着可能な押さえ部とから構成されている請求項1記載の部材接合構造。
【請求項3】
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記接合用部材の外周面に形成されたネジ部と螺合可能なナットから構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項4】
前記受け部が、前記接合用部材の前後中間部に一体形成された受け片部から構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項5】
前記ネジ部が、木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているとともに、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記木ネジ部に螺合可能な木ネジ用ナットから構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項6】
前記一方側被接合部材が、木柱から構成されているとともに、
前記他方側被接合部材が、前記木柱と接合される木柱用被接合片部と、木梁と接合される木梁用被接合片部とを備える継手部材から構成され、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合、及び、前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合の一方又は両方に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材接合構造が採用されている木柱と木梁との接合構造。
【請求項7】
前記木柱用被接合片部が前記木柱の周側面部における前記木梁に対向する側の面部に接合され、且つ、前記木梁用被接合片部が木梁の周側面部に接合されるように、木柱用被接合片部と木梁用被接合片部とが直交又は略直交する状態で前記継手部材に備えられ、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合には、前記部材接合構造が採用されているとともに、
前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合には、木ネジのネジ頭部で前記木梁用被接合片部を木梁に押し付けるように、木梁用被接合片部に形成した挿通孔を通して木ネジのネジ部を木梁に螺入する接合構造が採用されている請求項6記載の木柱と木梁との接合構造。
【請求項8】
木材からなる一方側被接合部材に螺着可能なネジ部が少なくとも前端側の外周面に形成された接合用部材と、
前記接合用部材における前記一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位と他方側被接合部材とを両被接合部材の対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定手段とが備えられている接合具。
【請求項1】
少なくとも前端側の外周面にネジ部が形成された接合用部材が、木材からなる一方側被接合部材に螺着されているとともに、
他方側被接合部材が、前記一方側被接合部材と直接的又は間接的に面接触する配置で前記接合用部材における一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位に固定手段で固定されている部材接合構造。
【請求項2】
前記固定手段が、前記接合用部材の前後中間部に備えられた受け部と、前記接合用部材における前記受け部よりも後端側に備えられ、且つ、受け部との間で接合用部材に対する前後方向での移動を接当規制する状態で前記他方側被接合部材を挟着可能な押さえ部とから構成されている請求項1記載の部材接合構造。
【請求項3】
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記接合用部材の外周面に形成されたネジ部と螺合可能なナットから構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項4】
前記受け部が、前記接合用部材の前後中間部に一体形成された受け片部から構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項5】
前記ネジ部が、木材に対する螺入操作が可能で且つ前記接合用部材の前端から後端部に亘って形成された木ネジ部から構成されているとともに、
前記押さえ部と前記受け部の一方又は両方が、前記木ネジ部に螺合可能な木ネジ用ナットから構成されている請求項2記載の部材接合構造。
【請求項6】
前記一方側被接合部材が、木柱から構成されているとともに、
前記他方側被接合部材が、前記木柱と接合される木柱用被接合片部と、木梁と接合される木梁用被接合片部とを備える継手部材から構成され、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合、及び、前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合の一方又は両方に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材接合構造が採用されている木柱と木梁との接合構造。
【請求項7】
前記木柱用被接合片部が前記木柱の周側面部における前記木梁に対向する側の面部に接合され、且つ、前記木梁用被接合片部が木梁の周側面部に接合されるように、木柱用被接合片部と木梁用被接合片部とが直交又は略直交する状態で前記継手部材に備えられ、
前記木柱用被接合片部と前記木柱との接合には、前記部材接合構造が採用されているとともに、
前記木梁用被接合片部と前記木梁との接合には、木ネジのネジ頭部で前記木梁用被接合片部を木梁に押し付けるように、木梁用被接合片部に形成した挿通孔を通して木ネジのネジ部を木梁に螺入する接合構造が採用されている請求項6記載の木柱と木梁との接合構造。
【請求項8】
木材からなる一方側被接合部材に螺着可能なネジ部が少なくとも前端側の外周面に形成された接合用部材と、
前記接合用部材における前記一方側被接合部材との螺着部位よりも後端側の部位と他方側被接合部材とを両被接合部材の対向面どうしが直接的又は間接的に接触する配置で固定可能な固定手段とが備えられている接合具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−185190(P2010−185190A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28897(P2009−28897)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(304000836)学校法人 名古屋電気学園 (22)
【出願人】(509040710)有限会社堀内建築研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(304000836)学校法人 名古屋電気学園 (22)
【出願人】(509040710)有限会社堀内建築研究所 (1)
【Fターム(参考)】
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