説明

配信管理装置及びコンテンツ配信方法

【課題】ルータに対するフィルタリング設定等の労力を軽減して地域限定配信を実現する。
【解決手段】管理装置は地域毎に配置され、管理装置3AはIPネットワークNWを介して当該地域Aの受信装置5Aにコンテンツをマルチキャスト配信するサーバ装置1Aに接続される。管理装置3Aは、サーバ装置1Aについてコンテンツの配信に用いられるマルチキャストアドレスをメモリに記憶しておく。管理装置3Aは、受信装置から送信される指定地域を表す情報を含むコンテンツの受信要求を受信すると、指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが記憶されている場合に、要求元の受信装置と当該サーバ装置との間のマルチキャストパスをIPネットワークNW上に確立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IPネットワークを介して放送コンテンツ等をマルチキャスト配信する配信管理装置及びコンテンツ配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークのブロードバンド化が進み、放送コンテンツの映像配信サービスをIPネットワークのマルチキャスト技術を利用して実現しようとするIP再送信システムが検討されている。しかしながらIP再送信を実施する場合、解決すべき問題として免許対象地域内への配信限定の課題(地域限定配信と称す)がある。これは地域を限定しないネットワークを利用して放送コンテンツをIP再送信する場合に、現行の免許対象地域を踏まえた上で配信範囲を特定する技術である。
【0003】
従来は、各地域のエッジルータで受信してよいマルチキャストアドレスのフィルタリングルールを設定することで対応していた。しかしながらこの方法では全てのエッジルータにフィルタリングルールを設定する必要があるとともに、コンテンツのマルチキャストアドレスをネットワークで一意に登録する必要があった。またマルチキャストアドレスが変更となった場合には、全エッジルータの設定変更を実施する必要があった。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献として次のようなものがある(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【特許文献1】特開2004−173209公報
【特許文献2】特開2002−368742公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来は、各地域のエッジルータで受信してよいマルチキャストアドレスのフィルタリングルールを設定することで対応していた。しかしながらこの方法では全てのエッジルータにフィルタリングルールを設定する必要があるとともに、コンテンツのマルチキャストアドレスをネットワークで一意に登録する必要があった。またマルチキャストアドレスが変更となった場合には、全エッジルータの設定変更を実施する必要があった。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ルータに対するフィルタリング設定等の労力を軽減して地域限定配信を実現可能なコンテンツ配信システム及びコンテンツ配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明に係る配信管理装置は、地域毎に配置され、IPネットワークを介して当該地域の受信装置にコンテンツをマルチキャスト配信するサーバ装置に接続される配信管理装置であって、当該地域のサーバ装置について前記コンテンツの配信に用いられるマルチキャストアドレスを記憶する記憶手段と、前記受信装置から送信される指定地域を表す情報を含むコンテンツの受信要求を受信する受信手段と、前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが前記記憶手段に記憶されている場合に、要求元の受信装置と当該サーバ装置との間のマルチキャストパスを前記IPネットワーク上に確立する配信制御手段とを具備する。
【0008】
また、この発明に係るコンテンツ配信方法は、地域毎に配置され、IPネットワークを介して当該地域の受信装置にコンテンツをマルチキャスト配信するサーバ装置に接続される配信管理装置に用いられるコンテンツ配信方法であって、当該地域のサーバ装置について前記コンテンツの配信に用いられるマルチキャストアドレスを記憶し、前記受信装置から送信される指定地域を表す情報を含むコンテンツの受信要求を受信し、前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが前記記憶手段に記憶されている場合に、要求元の受信装置と当該サーバ装置との間のマルチキャストパスを前記IPネットワーク上に確立するものである。
【発明の効果】
【0009】
したがってこの発明によれば、ルータに対するフィルタリング設定等の労力を軽減して地域限定配信を実現可能なコンテンツ配信システム及びコンテンツ配信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係るコンテンツ配信システムの一実施形態を示す構成図である。
このシステムは、地域Aの受信装置5Aに対して地域A向けの放送コンテンツの配信を行う送出サーバ1Aと、地域Bの受信装置5Bに対して地域B向けの放送コンテンツの配信を行う送出サーバ1Bとを備える。各地域に設けられた送出サーバ1A、1Bは、ヘッドエンドルータ(以下、HEルータと称する。)2A、2Bのそれぞれを介してインターネットや公衆網等のIPネットワークNWに接続される。受信装置5A、5Bは、例えば、IPTV(Internet Protocol Television)やSTB(Set Top Box)で構成され、エッジルータ4A、4Bを介して上記IPネットワークNWに接続される。
【0011】
さらに、上記IPネットワークNW上には、地域毎にコンテンツ配信を管理するための管理装置3A、3Bが設けられる。管理装置3Aは、地域Aにおいて、送出サーバ1Aによるコンテンツのマルチキャスト配信についてHEルータ2Aとエッジルータ4Aとの間で配信制御を行う。地域Bについても同様に、管理装置3Bは、送出サーバ1Bによるコンテンツのマルチキャスト配信についてHEルータ2Bとエッジルータ4Bとの間で配信制御を行う。
【0012】
なお、地域A及び地域Bに設けられる各装置の構成は同一であるため、送出サーバ1A、1B、ヘッドエンドルータ2A、2B、管理装置3A、3B、エッジルータ4A、4B、及び受信装置5A、5Bの各総称は、送出サーバ1、ヘッドエンドルータ2、管理装置3、エッジルータ4、受信装置5として説明を行う。
【0013】
図2は、管理装置3の内部構成を示す機能ブロック図である。管理装置3は、CPU11、配信制御部12と、アドレス情報メモリ13と、LAN制御部141〜14nとを備える。配信制御部12は、CPU11により実行される制御プログラムで構成される。アドレス情報メモリ13は、RAM又はハードディスクで構成され、当該地域に対してコンテンツ配信を行う送信サーバのマルチキャストアドレスと、当該地域のエッジルータ4のマルチキャストアドレスとが格納される。LAN制御部141〜14nは、通信インタフェースカード等であり、IPネットワークNWを介してHEルータ2やエッジルータ4との間で通信するために用いられる。配信制御部12は、アドレス情報メモリ13に記憶されたアドレス情報を用いて送出サーバ1によるコンテンツのマルチキャスト配信を制御する。
【0014】
図3は、このコンテンツ配信システムの動作を示すシーケンス図である。
(初期登録時)
送出サーバ1は、HEルータ2に対してマルチキャストパケットを配信する(ステップS11)。マルチキャストパケットを受信したHEルータ2は、当該ルータに接続された管理装置3に対してマルチキャストパスを登録する(ステップS12)。この登録によって、管理装置3のCPU11は当該サーバに対応するマルチキャストアドレスをアドレス情報メモリ13に記憶する。また、エッジルータ4は、当該地域の管理装置3に対してマルチキャストパスを登録する(ステップS13)。CPU11は、このエッジルータ4に対応するマルチキャストアドレスをアドレス情報メモリ13に記憶しておく。
【0015】
(受信要求時)
受信装置5から地域を指定したコンテンツの受信要求が送信されると(ステップS21)、エッジルータ4はこの受信要求を管理装置3に送信する(ステップS22)。そうすると、管理装置3はコンテンツの受信要求で指定された地域が当該地域であるか否かを認証する(ステップS23)。すなわち、管理装置3は配信制御部12により、受信要求で指定された地域に対応するサーバ装置1のマルチキャストアドレスがアドレス情報メモリ13に記憶されているか否かを判定する。
【0016】
この認証が成功した場合は、配信制御部12は、アドレス情報メモリ13を参照して、マルチキャスト配信の許可を表す応答をエッジルータ4に送信すると共に、指定地域に対応するサーバ装置1のHEルータ2にマルチキャスト配信を要求する(ステップS24)。上記ステップS24により、HEルータ2とエッジルータ4との間のマルチキャストパスがIPネットワーク上に確立される(ステップS25)。この確立されたマルチキャストパスを介して、送出サーバ1から配信されるコンテンツがエッジルータ4に向けてストリーム配信される(ステップS26)。エッジルータ4は、このストリームを受けて、受信装置5に向けストリーム配信を行う(ステップS27)。
【0017】
例えば、図1において、地域Aの受信装置5Aより送出サーバ1Aから配信される地域Aのコンテンツを要求すると、受信装置5Aが接続されるエッジルータ4Aより、管理装置3Aに受信要求メッセージが送信される。この受信要求により、管理装置3Aは送出サーバ1Aとエッジルータ4Aとの間のマルチキャストパスを確立する。これにより、受信装置5Aは放送コンテンツAを視聴することができる。
【0018】
一方、地域Bの受信装置5Bより地域Aの放送コンテンツを要求すると、受信装置5Bが接続されるエッジルータ4Bより、管理装置3Bに受信要求メッセージが送信される。しかしながら、管理装置3Bには、地域Aの送出サーバ1Aに対応するマルチキャストアドレスが登録されていないため、エッジルータ4Bと送出サーバ1Aとの間のマルチキャストパスを確立することができない。したがって、受信装置5Bは地域Aの放送コンテンツAを視聴することができない。この場合、配信制御部12は、要求元の受信装置5Bに指定地域のコンテンツを受信できない旨を通知する。
【0019】
以上述べたように、上記実施形態では、コンテンツ配信を限定する地域毎に管理装置を配置し、この管理装置に、放送コンテンツのマルチキャストアドレスと、受信するエッジルータとの間のマルチキャストパスを管理する機能を持たせる。このとき、管理装置は当該地域のマルチキャストアドレスのみを管理する。ある地域のエッジルータが受信した受信要求メッセージは、その地域を管理するマルチキャストパス管理装置にのみ伝達される。受信要求メッセージを受け取った管理装置は、自分の管理するマルチキャストアドレスパスを送出サーバとエッジルータとの間に確立する。一方、他の地域のエッジルータが受信要求メッセージを受け取った場合、別の地域を管理する管理装置にメッセージを伝達することができないため、他の地域から別の地域の放送コンテンツを視聴することはできないことになる。
【0020】
したがって上記実施形態によれば、ルータに対するフィルタリング設定等の労力を軽減して地域限定配信を実現可能なコンテンツ配信システムを提供できる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るコンテンツ配信システムの一実施形態を示す構成図。
【図2】図1に示す管理装置の内部構成を示す機能ブロック図。
【図3】図1のコンテンツ配信システムの動作を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0023】
1A、1B…送出サーバ、2A、2B…ヘッドエンドルータ、3A、3B…管理装置、4A、4B…エッジルータ、5A、5B…受信装置、NW…IPネットワーク、11…CPU、12…配信制御部、13…アドレス情報メモリ、141〜14n…LAN制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域毎に配置され、IPネットワークを介して当該地域の受信装置にコンテンツをマルチキャスト配信するサーバ装置に接続される配信管理装置であって、
当該地域のサーバ装置について前記コンテンツの配信に用いられるマルチキャストアドレスを記憶する記憶手段と、
前記受信装置から送信される指定地域を表す情報を含むコンテンツの受信要求を受信する受信手段と、
前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが前記記憶手段に記憶されている場合に、要求元の受信装置と当該サーバ装置との間のマルチキャストパスを前記IPネットワーク上に確立する配信制御手段と
を具備することを特徴とする配信管理装置。
【請求項2】
前記配信制御手段は、前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが前記記憶手段に記憶されていない場合に、要求元の受信装置に前記指定地域のコンテンツを受信できない旨を通知することを特徴とする請求項1記載の配信管理装置。
【請求項3】
地域毎に配置され、IPネットワークを介して当該地域の受信装置にコンテンツをマルチキャスト配信するサーバ装置に接続される配信管理装置に用いられるコンテンツ配信方法であって、
当該地域のサーバ装置について前記コンテンツの配信に用いられるマルチキャストアドレスを記憶し、
前記受信装置から送信される指定地域を表す情報を含むコンテンツの受信要求を受信し、
前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが前記記憶手段に記憶されている場合に、要求元の受信装置と当該サーバ装置との間のマルチキャストパスを前記IPネットワーク上に確立することを特徴とするコンテンツ配信方法。
【請求項4】
前記指定地域に対応するサーバ装置のマルチキャストアドレスが記憶されていない場合に、要求元の受信装置に前記指定地域のコンテンツを受信できない旨を通知することを特徴とする請求項3記載のコンテンツ配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−148046(P2010−148046A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326220(P2008−326220)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】