説明

配列方向検出装置、配列方向検出方法および配列方向検出プログラム

【課題】点群に含まれる点列における複数の点の配列方向を容易かつ高精度に検出する。
【解決手段】配列方向検出装置では、検出対象である配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に長く、かつ、その長さが配列方向に隣接する2つの点811の間の距離の最大値である点間最大距離の3倍以上である略矩形状の領域内に存在する点群8が撮像され、点群8の画像から凸包82が生成される。そして、凸包82の(−X)側の部分凸包821aおよび(+X)側の部分凸包821bにそれぞれ含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分825a,825bとして特定し、方向指示線分825a,825bから、暫定配列方向を基準とする方向の平均値を配列方向として取得することにより、点群8に含まれる点列81における複数の点811の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から配列方向を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物の画像の傾きを求める方法の1つとして、対象物上に目印(いわゆる、アライメントマーク)を設けておき、画像中のアライメントマークの配列の傾きから画像の傾きを求める方法が知られている。
【0003】
また、特許文献1では、走査方向に垂直な方向における位置を変更しつつ画像を走査方向に沿って複数回走査し、各走査において最初に出現する画素の集合である印刷開始点列(例えば、矩形の印刷領域の上辺の画素)を求め、印刷開始点列の傾きから画像の傾きを求める方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、画像上においてセルである単位要素が縦方向および横方向に配列されており、各単位要素の重心位置をパターンマッチング処理により求め、縦方向の位置が近い重心を有する単位要素の集合(すなわち、横方向に並ぶ単位要素の集合であり、以下、「単位要素列」という。)を抽出し、当該単位要素列に含まれる複数の単位要素の重心を通る直線の傾きから画像の傾きを求める方法が開示されている。なお、上記重心を点と捉えた場合、多数の点から一の直線上に配列される複数の点を抽出する方法の1つであるハフ(Hough)変換を用いて単位要素列の複数の重心を通る直線を求めることが考えられるが、ハフ変換ではあらゆる方向を向く直線に対して投票処理を行って適切な直線を求めることになるため、処理時間が多大なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−89063号公報
【特許文献2】特開2005−313215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、対象物にアライメントマークを設けて画像の傾きを求める方法では、対象物に対するアライメントマークの付加が必要となる上、画像中からアライメントマークを抽出する必要もあり、傾き検出に要する演算量が増大してしまう。
【0007】
特許文献1の方法では、上述のように、矩形の印刷領域が設定されている画像の傾きを求めることは可能であるが、印刷領域の輪郭が矩形でない場合(例えば、曲線を含んだり凹凸がある場合)には、画像の傾きを精度良く求めることは困難である。
【0008】
特許文献2の方法では、画像の傾きが少し大きくなると、一の単位要素列に含まれる複数の単位要素の重心位置と、当該単位要素列に隣接する他の単位要素列に含まれる複数の単位要素の重心位置とが縦方向において近接してしまい、隣接する2つの単位要素列を区別することが困難になって画像の傾きを精度良く求めることができなくなってしまう。また、隣接する単位要素列の間の距離が小さい場合にも同様に、隣接する2つの単位要素列に含まれる単位要素が一緒に抽出されてしまい、画像の傾きを精度良く求めることができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、点群に含まれる点列における複数の点の配列方向を容易かつ高精度に検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出装置であって、前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する撮像部と、前記撮像部からの出力に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する凸包生成部と、前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する配列方向取得部とを備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出装置であって、前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する撮像部と、前記撮像部からの出力に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する凸包生成部と、前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する配列方向取得部とを備える。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の配列方向検出装置であって、前記方向指示線分から取得された前記配列方向が仮に決定された配列方向であり、前記撮像部、前記凸包生成部および前記配列方向取得部により、前記点群の前記暫定幅方向の他方側においても前記方向指示線分と同様にもう1つの方向指示線分が特定され、前記配列方向取得部が、前記方向指示線分の方向と前記もう1つの方向指示線分の方向とを用いて最終的な前記配列方向を取得する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の配列方向検出装置であって、前記点群において、各点と少なくとも1つの他の点とが前記配列方向に垂直な幅方向に並ぶ。
【0014】
請求項5に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出方法であって、a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する工程と、b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程とを備える。
【0015】
請求項6に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出方法であって、a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する工程と、b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程とを備える。
【0016】
請求項7に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出プログラムであって、前記配列方向検出プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する工程と、b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程とを実行させる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出プログラムであって、前記配列方向検出プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する工程と、b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程とを実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、点群に含まれる点列における複数の点の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係る配列方向検出装置を示す図である。
【図2】点群の画像を示す図である。
【図3】演算部の構成を示す図である。
【図4】演算部の機能を示すブロック図である。
【図5】配列方向の検出の流れを示す図である。
【図6】点群の画像を示す図である。
【図7】点群の画像を示す図である。
【図8】点群の画像を示す図である。
【図9】シリコン基板上の複数のチップの画像を示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る配列方向検出装置による配列方向の検出の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る配列方向検出装置1の構成を示す図である。配列方向検出装置1は、図2にその一部を示す対象物9の画像80中の複数の点列81からなる点群8から、点列81における複数の点811の配列方向を検出する装置である。図2では、図の理解を容易にするために、各点列81を二点鎖線にて囲む。点群8では、複数の点列81のそれぞれは、図2中のxy平面上において所定の配列方向(図2中におけるy方向であり、x方向およびy方向は点群8に対して固定された座標軸である。)に複数の点811が直線状に配列された点列であり、複数の点列81は、当該配列方向に垂直な幅方向(すなわち、x方向)において互いに重なっている。換言すれば、点群8では、図2中のy方向に平行に伸びる互いに平行な複数の点列81がx方向に配列されている。
【0021】
図1に示す配列方向検出装置1は、対象物9をガラス面上に保持する保持部13、対象物9を撮像する撮像部11、および、撮像部11により取得された画像を受け付けて所定の演算を行う演算部12を備える。撮像部11は、印刷された面を下側((−Z)側)に向けて保持部13に保持された対象物9の下方に配置され、対象物9の印刷された面の画像を取得する。
【0022】
撮像部11は、対象物9上において図1中のX方向に伸びる線状領域を撮像するラインセンサ111、対象物9上におけるラインセンサ111の撮像領域に光を照射する光照射部112、並びに、ラインセンサ111および光照射部112をX方向に垂直なY方向に移動するセンサ移動機構113を備える。本実施の形態では、ラインセンサ111は、線状に配列された複数のCCD(Charge Coupled Device)素子を備え、ラインセンサ111の線状の撮像領域は対象物9のX方向の全幅に亘る。
【0023】
ここで、図1中のX方向およびY方向は、配列方向検出装置1に対して固定された既知の座標軸であり、XY平面と図2中のxy平面とは平行である。図2中のx方向およびy方向はそれぞれ、X方向およびY方向におよそ平行であることは判明しているものの未知の座標軸であり、配列方向検出装置1では、既知のY方向に対するy方向の傾きが求められることにより、点列81における複数の点811の配列方向が検出される。以下の説明では、複数の点811の配列方向であるy方向(すなわち、配列方向検出装置1の検出対象)におよそ平行なY方向を「暫定配列方向」といい、Y方向に垂直なX方向を「暫定幅方向」という。
【0024】
図3は、演算部12の構成を示す図である。演算部12は、通常のコンピュータと同様に、CPU101、RAM102、ROM103、固定ディスク104、ディスプレイ105、および、入力部106等を接続した構成となっており、固定ディスク104内には、演算部12により実行される配列方向検出プログラム1041が記憶される。図4は、演算部12のCPU101等が配列方向検出プログラム1041に従って演算処理を実行することにより実現される機能を示すブロック図であり、図4中の凸包生成部121および配列方向取得部122が、CPU101等により実現される機能に相当する。これらの機能は複数台のコンピュータにより実現されてもよい。
【0025】
図5は、配列方向検出装置1による複数の点811の配列方向検出の流れを示す図である。図1に示す配列方向検出装置1では、まず、撮像部11のラインセンサ111および光照射部112がY方向に走査されることにより、対象物9が撮像されて画像80(図2参照)が演算部12へと送られる(ステップS11)。
【0026】
本実施の形態では、図2に示す画像80中の点群8の全体が、配列方向の検出に利用される対象点群となっている。点群8の複数の点列81のそれぞれでは複数の点811が不等ピッチにて配列されており、複数の点列81において配列方向であるy方向に隣接する2つの点811の間の距離の最大値(以下、「点間最大距離」という。)は既知とされる。対象点群である点群8は、暫定配列方向であるY方向に長い矩形状の領域801(図2において二点鎖線にて示す。)内に存在する。領域801のY方向の長さは、点間最大距離の3倍以上となっている。なお、図2では、図示の都合上、複数の点列81のx方向におけるピッチを実際よりも大きく描いているが、実際には、隣接する点列81の間の距離は点間最大距離よりもかなり小さい。
【0027】
続いて、演算部12の凸包生成部121(図4参照)により、撮像部11(図1参照)からの出力である画像80に基づいて、点群8の最も外側に位置する複数の点811を、図6に示すように直線にて結んで形成される凸包82が生成される(ステップS12)。具体的には、画像80が二値化されて複数の点811が抽出され(すなわち、各点811を周囲の部位から孤立させて切り出し)、各点811の重心の位置が求められ、さらに、複数の点811のそれぞれの重心からグラハム(Graham)の方法等の既知の手法により凸包82が求められる。なお、画像80からの複数の点811の抽出はパターンマッチング等により行われてもよい。
【0028】
次に、配列方向取得部122(図4参照)により、凸包82の暫定幅方向の一方側(すなわち、(−X)側)の部分である部分凸包821aが凸包82から抽出される(ステップS13)。図6では、図の理解を容易にするために、部分凸包821aを二点鎖線にて囲む。そして、部分凸包821aに含まれる複数の線分825のうち最長の線分が方向指示線分825aとして特定され、暫定配列方向であるY方向を基準とする方向指示線分825aの方向(例えば、Y方向と方向指示線分825aとの為す角度)が、各点列81における複数の点811の仮に決定された配列方向(以下、「仮配列方向」という。)として取得される(ステップS14)。
【0029】
また、配列方向取得部122により、凸包82の暫定幅方向の他方側(すなわち、(+X)側)の部分であるもう1つの部分凸包821bが凸包82から抽出され(ステップS15)、上述の方向指示線分825aと同様に、部分凸包821bに含まれる複数の線分825のうち最長の線分が方向指示線分825bとして特定される。そして、Y方向を基準とする方向指示線分825bの方向(例えば、Y方向と方向指示線分825bとの為す角度)が、各点列81における複数の点811のもう1つの仮配列方向として取得される(ステップS16)。
【0030】
その後、方向指示線分825aから取得された仮配列方向と方向指示線分825bから取得された仮配列方向との平均値が、最終的な配列方向として取得される(ステップS17)。これにより、画像80からの点群8の読み取り時に生じる可能性がある読取誤差等による影響を抑制して配列方向を精度良く取得することができる。
【0031】
配列方向取得部122では、必ずしも上記平均値が最終的な配列方向とされる必要はなく、方向指示線分825aの方向および方向指示線分825bの方向である2つの仮配列方向が用いられるのであれば、他の様々な方法により最終的な配列方向が取得されてよい。例えば、凸包82の生成時に対象物9上の汚れ等を誤って点811として認識することにより、一方の方向指示線分の方向と暫定配列方向(Y方向)との為す角度が、他方の方向指示線分の方向と暫定配列方向との為す角度に比べて明らかに大きくなってしまっている場合、Y方向と為す角度が小さい方の方向指示線分の方向が最終的な配列方向として取得されてよい。
【0032】
配列方向検出装置1は、例えば、印刷媒体である対象物9に印刷された暗号情報を示す点群8から暗号情報を読み取る際に利用される。図2に示す点群8では、各点列81が「0」または「1」を示し、8つの点列81により8桁のビット列からなる暗号情報が示される。点群8は、対象物9上の余白領域(すなわち、通常の画像が印刷される領域の周囲の領域)等に印刷される。点群8では、一の点列81が示す値が「0」である場合には、当該点列81における配列方向であるy方向の単位距離中に含まれる点811の個数(以下、「単位ドット数」という。)が所定の個数(以下、「ドット閾値」という。)以下とされ、当該点列81が示す値が「1」である場合には、単位ドット数がドット閾値よりも大きくされる。
【0033】
対象物9から暗号情報が読み取られる際には、既述のように、配列方向検出装置1により、対象物9の画像80の取得、対象点群である点群8の凸包82の生成、凸包82からの部分凸包821aの抽出(すなわち、部分凸包821aの生成)、部分凸包821aに基づく仮配列方向の取得、凸包82からの部分凸包821bの抽出(すなわち、部分凸包821bの生成)、部分凸包821bに基づく仮配列方向の取得、および、2つの仮配列方向に基づく最終的な配列方向の取得(ステップS11〜S17)が行われる。
【0034】
続いて、点群8における配列方向であるy方向が、暫定配列方向であるY方向に一致するように、y方向とY方向との為す角度だけ点群8が回転される(具体的には、点群8の各点811のXY座標系における座標が変換される)。そして、複数の点列81のそれぞれの単位ドット数がY方向に沿って計数され、単位ドット数がドット閾値と比較されて各点列81が示す値(「0」または「1」)が取得されることにより、対象物9から暗号情報が読み取られる。上記点群8の回転、各点列81の単位ドット数の計数、および、各点列81が示す値の取得は、配列方向検出装置1により行われてもよく、他の装置により行われてもよい。また、点群8の回転が行われることなく、基準となるY方向(暫定配列方向)と為す角度が既知となった配列方向に沿って各点列81の単位ドット数の計数が行われてもよい。
【0035】
以上に説明したように、配列方向検出装置1では、図2に示す領域801のように、暫定配列方向に長く、かつ、その長さが点間最大距離の3倍以上である略矩形状の領域内に存在する対象点群である点群8が撮像され、点群8の画像から凸包82が生成される。このように、点群8の輪郭が上記の領域801の輪郭におよそ沿ったものとされることにより、点群8の凸包82に含まれる複数の線分825のうち、一の点列81に含まれる点811と他の点列81に含まれる点811とを結ぶ線分よりも、一の点列81に含まれる複数の点811を通る線分(すなわち、配列方向を向く線分)の方が確実に長くなる。このため、凸包82の(−X)側の部分凸包821aおよび(+X)側の部分凸包821bにそれぞれ含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分825a,825bとして特定し、方向指示線分825a,825bのそれぞれの方向を用いて最終的な配列方向を取得することにより、点群8に含まれる点列81における複数の点811の配列方向を高精度に検出することができる。また、点群8を囲む凸包82を利用することにより、ハフ変換のように非常に多数の方向について検討することなく、配列方向を容易に検出することができる。
【0036】
配列方向検出装置1では、必ずしも点群8全体が凸包82の形成に利用される対象点群とされる必要はなく、点群8の一部が対象点群とされてもよい。換言すれば、対象点群は、点群8の少なくとも一部であればよい。点群8の一部が対象点群とされる場合、点群8のうち、図7に示すように、暫定配列方向に長く、かつ、その長さが点間最大距離の3倍以上である略矩形状の領域801a内に存在する対象点群8aが撮像部11(図1参照)により撮像される。このように、対象点群8aの輪郭が上記領域の輪郭におよそ沿ったものとされた状態で、対象点群8aの凸包82a(すなわち、対象点群8aの最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包)の部分凸包821a,821bにて特定された方向指示線分825a,825bのそれぞれの方向を用いて配列方向を取得することにより、上記と同様に、点群8に含まれる点列81(図2参照)における複数の点811の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。
【0037】
配列方向検出装置1では、また、必ずしも部分凸包821a,821bにて特定された方向指示線分825a,825bの双方の方向を用いて配列方向が取得される必要はなく、例えば、方向指示線分825bを特定することなく、方向指示線分825aの方向が最終的な配列方向として取得されてもよい。換言すれば、図5中のステップS15〜S17が省略され、ステップS14にて求められた仮配列方向が最終的な配列方向とされる。この場合、撮像部11(図1参照)では、図8に示すように、点群8の一部であって暫定幅方向の一方側である(−X)側の部位を含む対象点群8bが撮像される。そして、対象点群8bの凸包82bの(−X)側の部分である部分凸包821aが生成され、部分凸包821aにて特定された方向指示線分825aの方向が最終的な配列方向として取得される。これにより、点群8に含まれる点列81(図2参照)における複数の点811の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。なお、配列方向検出装置1は、図2中のx方向に配列された点列の配列方向の検出に用いられてもよい。
【0038】
配列方向検出装置1は、また、図9に示すシリコン基板である対象物9a上の複数のチップ91の画像80aにおけるチップ91の配列方向の検出にも利用されてよい。対象物9a上では、複数のチップ91が対象物9aに固定されたxy座標系のx方向およびy方向に等ピッチにて配列されており、以下では、各チップ91の重心を点811、配列方向であるy方向に配列された複数の点811を点列81、配列方向に垂直な幅方向であるx方向に配列された複数の点列81を点群8と捉えて説明する。点群8では、各点811と少なくとも他の点811とが幅方向に並んでいる。また、画像80aに固定されたXY座標系のY方向を既知の暫定配列方向と呼び、Y方向に垂直なX方向を暫定幅方向と呼ぶ。
【0039】
配列方向検出装置1では、まず、上記と同様に、点群8の(少なくとも)一部であって暫定幅方向の一方側および他方側((−X)側および(+X)側)の部位を含み、かつ、暫定配列方向に長く、その長さが点間最大距離(この場合、y方向における点811のピッチに等しい。)の3倍以上である領域内に存在する対象点群8cが撮像部11(図1参照)により撮像される。図9では、図示の都合上、対象点群8cの一部のみを描いている。続いて、撮像部11からの出力に基づいて、対象点群8cの最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包82cの暫定幅方向の一方側の部分である部分凸包821a、および、他方側の部分であるもう1つの部分凸包(図示省略)が凸包生成部121(図4参照)により生成される。
【0040】
そして、配列方向取得部122(図4参照)により、2つの部分凸包にそれぞれ含まれる複数の線分825のうち最長の線分が、方向指示線分825aおよびもう1つの方向指示線分(図示省略)として特定され、方向指示線分825aの方向ともう1つの方向指示線分の方向とを用いて最終的な配列方向が取得される。この場合も、上記と同様に、点群8に含まれる点列81における複数の点811の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る配列方向検出装置について説明する。第2の実施の形態に係る配列方向検出装置は、図1に示す配列方向検出装置1と同様の構成を備えており、以下の説明では、第2の実施の形態に係る配列方向検出装置の各構成に、図1、図3および図4に示す配列方向検出装置1の対応する構成と同符号を付す。第2の実施の形態に係る配列方向検出装置では、演算部12の固定ディスク104に、図3に示す配列方向検出プログラム1041とは異なる配列方向検出プログラムが記憶されるが、以下の説明では、第1の実施の形態と同様に、符号1041を付す。
【0042】
図10は、第2の実施の形態に係る配列方向検出装置による配列方向検出の流れを示す図である。配列方向検出装置では、上述のステップS11(図5参照)と同様に、撮像部11(図1参照)により対象物9が撮像されて、図2に示す画像80が演算部12へと送られる(ステップS21)。対象物9は、撮像部11による撮像よりも前に予め粗い姿勢調整(いわゆる、プリアライメント)が行われており、点811の配列方向であるy方向は暫定配列方向であるY方向におよそ平行となっている。
【0043】
続いて、演算部12が配列方向検出プログラム1041(図3参照)に従って演算処理を実行することにより、凸包生成部121(図4参照)により、対象点群である点群8から図6に示す凸包82が生成され、配列方向取得部122(図4参照)により、凸包82の(−X)側の部分である部分凸包821aが抽出される(ステップS22,S23)。
【0044】
本実施の形態では、上述のように、対象物9に対するプリアライメントが行われているため、一の点列81上の複数の点811を結ぶ直線の方向は、一の点列81上の点811と他の点列81上の点811とを結ぶ直線の方向よりもY方向に近くなる。そこで、配列方向取得部122により、部分凸包821aに含まれる複数の線分825のうち暫定配列方向(すなわち、図6中のY方向)と為す角度が最も小さい線分が方向指示線分825aとして特定され、暫定配列方向であるY方向を基準とする方向指示線分825aの方向(例えば、Y方向と方向指示線分825aとの為す角度)が、各点列81における複数の点811の仮配列方向として取得される(ステップS24)。
【0045】
また、凸包82の(+X)側の部分である部分凸包821bが抽出され(ステップS25)、部分凸包821bに含まれる複数の線分825のうち暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分が方向指示線分825bとして特定され、暫定配列方向を基準とする方向指示線分825bの方向が、各点列81における複数の点811のもう1つの仮配列方向として取得される(ステップS26)。その後、第1の実施の形態と同様に、方向指示線分825aから取得された仮配列方向と方向指示線分825bから取得された仮配列方向とを用いて、最終的な配列方向が取得される(ステップS27)。
【0046】
第2の実施の形態に係る配列方向検出装置では、第1の実施の形態と同様に、点群8に含まれる点列81における複数の点811の配列方向を容易かつ高精度に検出することができる。配列方向検出装置では、点群8の少なくとも一部が撮像部11に撮像される対象点群とされていればよく、また、部分凸包821a,821bのうちの一方のみが生成され、当該部分凸包にて特定された方向指示線分の方向が最終的な配列方向として取得されてもよい。さらに、第1の実施の形態と同様に、図9に示すように、x方向およびy方向に等ピッチにて配列された複数の点811を有する点群8の配列方向の検出に利用されてもよい。
【0047】
また、第1の実施の形態に係る配列方向検出プログラム、および、第2の実施の形態に係る配列方向検出プログラムが一の配列方向検出装置の演算部12の固定ディスク104に記憶され、両配列方向検出プログラムのうちの一方が選択的に用いられて配列方向の検出が行われてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0049】
配列方向検出装置では、撮像部11により点群8のうちの対象点群の画像(点群8全体の画像であってもよい。)が取得されるのであれば、必ずしも対象物9の全体の画像が取得される必要はない。また、撮像部11では、ラインセンサ111に代えて、例えば、2次元CCDカメラが設けられてもよい。
【0050】
また、配列方向検出装置では、配列方向の検出精度を向上するために、一の対象物に対して上述の配列方向の検出が繰り返し行われてもよい。配列方向検出装置は、上述のような暗号情報を示す点群やシリコン基板上の複数のチップの重心に対応する点群の配列方向を検出する以外にも、様々な点群の配列方向を求める際に利用されてよい。
【符号の説明】
【0051】
1 配列方向検出装置
8 点群
8a〜8c 対象点群
11 撮像部
81 点列
82,82a〜82c 凸包
121 凸包生成部
122 配列方向取得部
801,801a 領域
811 点
821a,821b 部分凸包
825 線分
825a,825b 方向指示線分
1041 配列方向検出プログラム
S11〜S17,S21〜S27 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出装置であって、
前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する撮像部と、
前記撮像部からの出力に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する凸包生成部と、
前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する配列方向取得部と、
を備えることを特徴とする配列方向検出装置。
【請求項2】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出装置であって、
前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する撮像部と、
前記撮像部からの出力に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する凸包生成部と、
前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する配列方向取得部と、
を備えることを特徴とする配列方向検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配列方向検出装置であって、
前記方向指示線分から取得された前記配列方向が仮に決定された配列方向であり、
前記撮像部、前記凸包生成部および前記配列方向取得部により、前記点群の前記暫定幅方向の他方側においても前記方向指示線分と同様にもう1つの方向指示線分が特定され、
前記配列方向取得部が、前記方向指示線分の方向と前記もう1つの方向指示線分の方向とを用いて最終的な前記配列方向を取得することを特徴とする配列方向検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の配列方向検出装置であって、
前記点群において、各点と少なくとも1つの他の点とが前記配列方向に垂直な幅方向に並ぶことを特徴とする配列方向検出装置。
【請求項5】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出方法であって、
a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する工程と、
b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、
c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程と、
を備えることを特徴とする配列方向検出方法。
【請求項6】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出方法であって、
a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する工程と、
b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、
c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程と、
を備えることを特徴とする配列方向検出方法。
【請求項7】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出プログラムであって、前記配列方向検出プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、
a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含み、かつ、前記暫定配列方向に長く、その長さが前記複数の点列において前記配列方向に隣接する2つの点の間の距離の既知の最大値の3倍以上である領域内に存在する対象点群を撮像する工程と、
b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、
c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち最長の線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程と、
を実行させることを特徴とする配列方向検出プログラム。
【請求項8】
平面上において、それぞれが所定の配列方向に点が配列された点列であり、かつ、前記配列方向に垂直な方向において互いに重なる複数の点列からなる点群から前記配列方向を検出する配列方向検出プログラムであって、前記配列方向検出プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、
a)前記点群の少なくとも一部であって前記配列方向におよそ平行であることが判明している暫定配列方向に垂直な暫定幅方向の一方側の部位を含む対象点群を撮像する工程と、
b)前記a)工程における撮像結果に基づいて前記対象点群の最も外側に位置する点を直線にて結んで形成される凸包の前記暫定幅方向の前記一方側の部分である部分凸包を生成する工程と、
c)前記部分凸包に含まれる複数の線分のうち前記暫定配列方向と為す角度が最も小さい線分を方向指示線分として特定し、前記方向指示線分の方向を前記配列方向として取得する工程と、
を実行させることを特徴とする配列方向検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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