説明

配合物

本発明は、一般的に、抗HIV−1抗体を誘導する際に使用するのに適した配合物に、そして特に、リポソームに連結されたHIV−1エンベロープgp41のプレヘアピン中間体型を含む配合物に関する。本発明はまた、こうした配合物を用いて広域(broadly)中和抗HIV−1抗体を誘導する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が本明細書に援用される、2009年4月3日出願の米国仮出願第61/166,648号に優先権を請求する。
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号第AI 067854号のもとに米国政府の援助を受けて作成された。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的に、抗HIV−1抗体を誘導する際に使用するのに適した配合物に、そして特に、リポソームに連結されたHIV−1エンベロープgp41のプレヘアピン中間体型を含む配合物に関する。本発明はまた、こうした配合物を用いて広域(broadly)中和抗HIV−1抗体を誘導する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
HIV−1感染は、一般的に、ビリオン表面上の唯一の抗原である、エンベロープ糖タンパク質[三量体(gp160)、切断されて(gp120/gp41)になる]に対する強い抗体反応を誘導する。しかし、誘導される抗体の大部分は、感染防止に無効であり、これは、これらが非中和性であるかまたは狭い単離体特異性を有するかいずれかであり、そしてウイルスが非常に迅速に複製するため、中和耐性突然変異体の選択が進行する間に、ウイルス進化が高アフィニティ抗体産生の「先を行く」ことが可能になるためである(Weiら, Nature 422:307−312(2003))。さらに、抗体反応の多くは、gp120およびgp41の再編成されたまたは解離した型に対するものである可能性があり、こうした型では、優性エピトープは、超可変ループ中にあるか、またはビリオン由来エンベロープ三量体上に閉鎖された位置にあるかいずれかの可能性もある。稀に、エンベロープタンパク質上の3つの比較的保存された領域:CD4結合部位(mAb b12)(Burtonら, Science 266:1024−1027(1994));外部gp120表面上の炭水化物(mAb 2G12)(Trkolaら, J Virol. 70. 1100−1108(1996));およびしばしば「膜近位外部領域」(MPER)と称される、ウイルス膜に隣接するgp41外部ドメインのセグメント(mAb 2F5および4E10)(Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005); Ofekら, J Virol. 78:10724−10737(2004))の1つを認識する、「広域(broadly)中和」抗体が検出されてきている。
【0004】
ウイルスおよびターゲット細胞膜の融合が、HIV−1感染を開始する。受容体(CD4)および共受容体(例えばCCR5またはCXCR4)への結合に付随するgp120のコンホメーション変化によって、gp120はgp41から解離し、そしてgp41では、一連の再フォールディング事象が導かれる(Harrison, Adv Virus Res. 64:231−259(2005))。これらの再編成経過中、gp41のN末端融合ペプチドは転位置し、そしてターゲット細胞膜内に挿入される。こうして融合ペプチドが挿入されて、そして膜貫通アンカーがなおウイルス膜中にある、gp41外部ドメインの提唱される伸長したコンホメーションは、「プレヘアピン中間体」と称されてきた(Chanら, Cell 93:681−684(1998))。これは、最初に認可された融合阻害抗ウイルス薬であるT−20/エンフビルチド(Kilbyら, N Eng J Med. 348:2228−2238(2003))を含む多様な融合阻害剤のターゲットであり、そして中間体の特性は、これらの阻害剤の特性からまたは短いgp41断片による模倣から推測されてきている(Eckertら, Cell 99:103−115(1999))。続く、中間体からgp41の融合後状態への再編成は、3つの鎖各々のヘアピン様コンホメーションへの逆フォールディングを伴い、2つの逆平行αらせんがジスルフィド含有ループによって連結される。このプロセスは、融合ペプチドおよび膜貫通アンカーを、そしてしたがって2つの膜を、再フォールディングされたタンパク質の同じ端に一緒に近づける。
【0005】
提示される疑問には、この一連の事象において、中和抗体介入がどこで起こるのか、そしてこうした抗体いずれかが狭い範囲の単離体以上のものを中和可能であるのかが含まれる。これらの疑問に答えるための最初の工程は、定義されるそして均質な抗原特性を持つHIVエンベロープ糖タンパク質の生化学的に均質な型の調製であり、これには、gp41外部ドメインの主要な状態各々:融合前、プレヘアピン中間体、および融合後コンホメーションが含まれる。本明細書に開示するのは、適切な状態の三量体HIV−1エンベロープタンパク質の安定で均質な調製である。本発明は、少なくとも部分的に、MPER抗体2F5および4E10のエピトープが、プレヘアピン中間体を模倣するよう設計されたエンベロープ・タンパク質型上でのみ曝露されていることを立証する研究から生じる。これらの結果は、2F5および4E10様抗体反応が稀であることを説明するのに役立ち、そしてこうした反応を誘発するのに使用可能な免疫原設計に関する見識を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Weiら, Nature 422:307−312(2003)
【非特許文献2】Burtonら, Science 266:1024−1027(1994)
【非特許文献3】Trkolaら, J Virol. 70. 1100−1108(1996)
【非特許文献4】Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005)
【非特許文献5】Ofekら, J Virol. 78:10724−10737(2004)
【非特許文献6】Harrison, Adv Virus Res. 64:231−259(2005)
【非特許文献7】Chanら, Cell 93:681−684(1998)
【非特許文献8】Kilbyら, N Eng J Med. 348:2228−2238(2003)
【非特許文献9】Eckertら, Cell 99:103−115(1999)
【発明の概要】
【0007】
一般的に、本発明は、抗HIV−1抗体を誘導する際に使用するのに適した配合物に関する。より具体的には、本発明は、リポソームに連結されたHIV−1エンベロープgp41のプレヘアピン中間体型を含む配合物に関する。本発明はまた、こうした配合物を用いて、広域反応性中和抗HIV−1抗体を誘導する方法にも関する。
【0008】
本発明の目的および利点は、以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】HIV−1 gp41のプレヘアピン中間体構築物(gp41中間体、Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008))。HIV−1 Envタンパク質のセグメントは、以下のように設計される: HR1−7つ組反復1、HR2−7つ組反復2、C−Cループ−ジスルフィド結合を含む免疫優性ループ、MPER−膜近位外部領域、His6−6ヒスチジンタグ、fd−フォルドン(foldon)三量体化タグ、GCN4−ロイシンジッパー三量体化ドメイン。
【図2】リポソームとともに配合されたTLRアゴニストの構造。免疫原設計の模式図は、アジュバントとしてTLRアゴニストを含有するペプチド−リポソームを示す;TLR4(リピドA);TLR9(oCpG)およびTLR7(R848)。
【図3】アジュバントを含むおよび含まない合成リポソームへのgp41中間体タンパク質のコンジュゲート化。c末端にヒスチジン残基の短い配列(His6)を含むHIV−1 gp41中間体を、脂質分子(DOGS、1,2ジオレオイル−sn−グリセロール−3−スクシニル−NTA−Ni)に共有結合したニッケルキレート基(N”,N”−ビス[カルボキシメチル]−L−リジン;ニトリロ酢酸、NTA)を含有する合成リポソーム上に固定した。下部の図は、2つの異なるTLRリガンドを含むgp41中間体リポソームの設計例である。
【図4】図4A〜4C。TLRアジュバントにコンジュゲート化されたMPERペプチド−リポソームと2F5 mAbの相互作用。図4Aは、リピドA(200μg用量当量)を含むgp41 MPERリポソーム構築物への2F5 mabの強い結合を示す。図4Bは、oCpG(50μg用量当量)コンジュゲート化gp41 MPERリポソームへの2F5 mAbの結合を示す。図4Cは、R848コンジュゲート化gp41 MPER含有リポソームに対する2F5 mAbの結合を示す。TLRアジュバントのみを含む対照リポソームに比較して、gp41 MPER−アジュバント・リポソーム構築物各々に対する、強い2F5 mAb結合が観察された。MPER二重エピトープ(MPER656−NEQELLELDKWASLWNWFNITNWLWYIK)構築物には、2F5および4E1 mAb両方の結合エピトープが含まれる。
【図5】2F5(Ofekら, J. Virol., 78:10724(2004))および4E10(Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005))の結晶構造、ならびに脂質およびHIV−1ウイルス膜への結合を排除するためのCDR H3ループ中の突然変異設計。
【図6】図6Aおよび6B。4E10(図6A)および2F5(図6B)CDR H3ループの疎水性残基を置換すると、脂質結合が妨害され、そして両mAbがHIV−1を中和する能力が抑止される。
【図7】複数のTLRリガンドを持つMPER gp41プレヘアピン中間体−リポソームの設計。TLRリガンドの2つの組み合わせを示し、一方の構築物は、TLR4+TLR9を含み、そして第二のものはTLR9+TLR7/8を含む。これらの構築物は、二重TLR誘発を通じて、B細胞反応において相乗作用を提供する潜在能力を有する。
【図8】gp41中間体およびTLRリガンドを含むリポソーム内へのインターフェロン・アルファ(IFNα)の被包。可溶性IFNαが被包されたリポソームを構築するために、図5に示すTLRリガンドの組み合わせのいずれを用いてもよい。
【図9】gp41中間体リポソームにコンジュゲート化されたCD40リガンド(CD40L)の設計。リポソーム内に被包された可溶性CD40リガンド(上部パネル)または膜結合型CD40Lのいずれを合成リポソーム内に取り込んでもよい。
【図10】固定されたNi−NTAリポソーム上のHisタグ化gp41中間体の捕捉。
【図11】図11Aおよび11B。リポソームに係留されたgp41中間体に対するMPER中和mAb 2F5および4E10の安定結合。
【図12A】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12B】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12C】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12D】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12E】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12F】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12G】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12H】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12I】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12J】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12K】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12L】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12M】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12N】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12O】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12P】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12Q】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12R】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12S】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12T】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12U】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12V】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12W】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12X】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【図12Y】寛容機構による広域中和抗体制御の仮説の状態。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、HIV−1エンベロープgp41のプレヘアピン中間体型を提示する、リポソームに基づくアジュバント・コンジュゲートに、そして該コンジュゲートを用いて、被験体(例えばヒト被験体)において、中和抗HIV−1抗体を誘導する方法に関する。適切な中和抗原には、gp41ヘアピン中間体構築物の形のgp41 MPERエピトープ・ペプチド(またはその変異体(例えばgp41ヘアピン中間体のL669S変異体−米国仮出願第61/166,625号を参照されたい))が含まれる。(Shenら, J. Virology 83:3617−25(2009))。
【0011】
本発明で使用するのに適したリポソームには、限定されるわけではないが、POPC、POPE、DMPA(またはスフィンゴミエリン(SM))、リソホスホリルコリン、ホスファチジルセリン、およびコレステロール(Ch)を含むものが含まれる。最適比を当業者が決定することも可能であるが、例には、45:25:20:10の比のPOPC:POPE(またはPOPS):SM:Ch、あるいはPOPC:POPE(またはPOPS):DMPA:Chが含まれる。使用可能なリポソームの別の配合物には、9:7.5:1のモル比で配合されたDMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(またはリソホスホリルコリン)、コレステロール(Ch)およびDMPG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)が含まれる(Wassefら, ImmunoMethods 4:217−222(1994); Alvingら, G. Gregoriadis(監修), Liposome technology 第2版, vol. Ill CRC Press, Inc., Boca Raton, FL(1993); Richardsら, Infect. Immun. 66(6):285902865(1998))。上記脂質組成物をリピドAと複合体形成させて、そして免疫原として用いて、リン脂質に対する抗体反応を誘導してもよい(Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979))。好ましい配合物は、Schusterら, J. Immunol. 122:900−905(1979)にしたがって、リピドAと複合体形成させた、60:30:10の比のPOPC:POPS:Chを含む。
【0012】
本発明にしたがって、免疫反応増進性TLRリガンド、例えばモノホスホリルリピドA(MPL−A、TLR4リガンド)、オリゴCpG(TLR 9リガンド)およびR−848(TLR 7/8リガンド)を、個々に、または組み合わせて、上述のリポソーム・コンジュゲート内に配合してもよい。TLRアゴニストの好ましい組み合わせは、oCpG(TLR9)(Hemniら, Nature 408:740−745(2004))およびR848(TLR7/8)(Hemniら, Nat. Immunol. 3:196−200(2002))を含む。
【0013】
本発明の構築物のさらなる設計には、サイトカイン、インターフェロン(IFN)−αが被包され、そして被包されたかまたは膜結合性のCD40リガンドを含むMPERプレヘアピン中間体−リポソームが含まれる。2つの広域中和gp41 MPER抗体(2F5、4E10)は、高いアフィニティでgp41プレヘアピン中間体構築物に結合する(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008))。これらの構築物を用いて、B細胞寛容を調節し、広域反応性中和抗体を作製可能な特定のB細胞集団に対してリポソームを向け、そして免疫原性が劣ったHIV−1 gp41 MPERエピトープに対する抗体反応を増進することも可能である。
【0014】
自己反応性B細胞は、B細胞受容体(BCR)およびTLRの二重会合に依存する機構を通じて、TLRリガンドによって活性化可能である(Leadbetterら, Nature 416:603(2002); Marshak−Rothsteinら, Annu. Rev. Immunol. 25:419−41(2007)、Herlandsら, Immunity 29:249−260(2008)、Schlomchik, Immunity 28:18−28(2008))。本発明の好ましい免疫原設計において、可溶性IFN−αは、MPERプレヘアピン中間体−リポソーム構築物内に被包される。IFN−αは、BCR活性化閾値を低下させることによって、自己反応性B細胞に対する選択性を調節し、そして緩和すると報告されてきている(Uccelliniら, J. Immunol. 181:5875−5884(2008))。免疫原設計は、膜結合性MPERエピトープへの結合およびHIV−1の中和の両方に、gp41 MPER抗体の脂質反応性が必要であるという観察から生じる。
【0015】
リポソームがターゲティング可能なB細胞サブセットには、脂質およびMPERプレヘアピン中間体の両方と反応する多重反応性抗体を作製可能であるいかなるB細胞サブセットも含まれる。これらのB細胞サブセットには、限定されるわけではないが、辺縁帯IgM+ CD27+ B細胞サブセット(Weillら, Annu. Rev. Immunol. 27:267−85(2009)、Liら, J. Exp. Med 195:181−188(2002))、ヒトB細胞の移行性集団(Simsら, Blood 105:4390−4398(2005))、およびマウス免疫グロブリン(Ig)軽鎖ラムダXのヒト同等物を発現するB細胞のヒト同等物(Liら, Proc. Natl. Acad. Sci. 103:11264−11269(2006)、Witschら, J. Exp. Med. 203:1761−1772(2006))が含まれる。これらのB細胞サブセットはすべて、多重反応性抗体を作製する能力を有し、そしてしたがって、脂質およびHIV−1 gp41プレヘアピン中間体の両方と反応する特性を有する抗体を作製する能力を有する。リポソームがその内部に脂質およびgp41プレヘアピン中間体型の両方を有する特性を有する結果、これらの免疫原は関心対象のB細胞を選択的にターゲティングするはずである。これらのリポソームを用いて、B細胞の寛容を一過性に破壊するか、または稀なB細胞サブセットをターゲティングすることも可能であるため、以下に記載されるものなどの脱グリコシル化エンベロープ調製物などの他のHIV−1エンベロープ免疫原を、TLR4アゴニスト、TLR 7/8アゴニストおよびIFNαを含有するリポソーム中で配合してもよいことがわかる。
【0016】
脱グリコシル化JRFL gp140 Envタンパク質およびCD4結合部位突然変異体gp140(JRFL APA)が以前の出願に記載されてきている(例えばWO2008/033500を参照されたい)。膜貫通ドメインを取り込むことによって、脱グリコシル化envおよび免疫抑制性でないようにCD4に結合しないよう突然変異させたEnvを、リポソーム中に係留してもよく、そして界面活性剤中で可溶化した後、合成リポソーム内に再構成してもよい。あるいは、Env gp140のHisタグ化(c末端)型を、HIV−1のgp41中間体型(gp41中間体)に関して記載されるように、リポソーム内に係留してもよい。
【0017】
多重反応性抗体を作製可能な多くのB細胞サブセットが、哺乳動物DNAにも結合することを考慮すると、リポソームへのDNAの添加を用いて、免疫原を反応性B細胞にターゲティングすることも可能である。
【0018】
本発明のリポソーム含有配合物を、例えば筋内、静脈内、腹腔内または皮下注射によって投与してもよい。さらに、配合物を鼻内経路によって、あるいは座薬様ビヒクルとして直腸内または膣に投与してもよい。一般的に、リポソームを生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水pH7.0などの水溶液中に懸濁する。最適投薬措置は、当業者によって容易に決定可能である。
【0019】
本発明の特定の側面が、以下の限定しない実施例に、より詳細に記載されうる。公開PCT出願第WO 2006/110831号および第WO 2008/127651号、米国公開出願第2008/0031890号および第2008/0057075号、米国仮出願第60/960,413号、ならびに米国出願第11/918,219号もまた参照されたい(また、2009年4月3日出願の米国仮出願第61/166,625号および“Mouse Model”と題される関連出願(代理人整理番号01579−1431)もまた参照されたい)。
【実施例】
【0020】
実施例1
gp41 MPERペプチド−gp41プレヘアピン中間体コンジュゲートの説明:
図1は、合成リポソームにコンジュゲート化可能なHIV−1 gp41 MPERのプレヘアピン中間体型を示す(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008))。さらなるコンホメーションの生化学的に均質な型を産生するため、伸長したプレヘアピン中間体コンホメーションのgp41を捕捉するよう設計された2つの構築物を作製した。図1に示すように、gp41中間体は、以下の配列を有する:(HR2)−リンカー−[HR1−CCループ−HR2−MPER]−(三量体化タグ)、ここで、HR1およびHR2は、gp41中の第一および第二の「7つ組反復」(ヘアピンの融合後三量体において、らせんを形成するセグメント)であり、そして角括弧中の配列は、融合ペプチドを除いて、本質的に完全gp41外部ドメインである。「リンカー」は、セリンおよびグリシンの短く柔軟なコネクターである。gp41中間体鎖が三量体化する際、N末端HR2セグメントは、HR1セグメントと6らせん束を形成する;三量体化タグによって拘束されるC末端HR2セグメントは、6らせん束を形成できない。この構築物のコンホメーションを、T−20などのHR2ペプチドによって捕捉されたプレヘアピン中間体として描写することも可能である。それぞれ、フォルドンおよび三量体GCN4とともに、2つの単離体:92UG037.8およびHXB2由来の配列を用いることによって、gp41中間体が発現された。どちらの場合でも、タンパク質を大腸菌(Escherichia coli)中で発現させて、そしてin vitroで再フォールディングさせてもよい。対照によって、細菌で発現されたタンパク質の再フォールディングには、そして昆虫細胞から可溶性の分泌タンパク質を得るには、N末端HR2セグメントが必要であることが示された(データ未提示)。SIVmac32Hのgp41配列および三量体タグとして大腸菌アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼの触媒サブユニットを含む類似の構築物(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008))もまた、昆虫細胞から分泌タンパク質として得ることが可能であり(データ未提示)、これによって、全体の設計が頑強であり、そしてC末端三量体化要素の選択からは独立であることが示された(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008)、米国仮出願第61/032,732号)。
【0021】
精製92UG−gp41中間体は単分散三量体であり、複数周期のゲルろ過クロマトグラフィー後、安定である。CDスペクトルによって、二次構造混合物であることが示唆される。ネガティブ染色電子顕微鏡は、長さ150オングストロームおよび幅≒45オングストロームのロッド様粒子を示す。N末端6らせん束およびC末端フォルドンの予期される長さは、それぞれ、75および28オングストロームである。≒100残基の介在セグメント(C−Cループ、HR2、およびMPER)は、比較的コンパクトな折り目を有し、軸方向距離がわずか45〜50オングストロームに渡るものでなければならない(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008))。
【0022】
gp41 MPERプレヘアピン中間体−アジュバント・コンジュゲートの説明:
図2に示すようなToll様受容体リガンドを、gp41 MPERペプチド免疫原またはgp41中間体タンパク質とともに、リポソーム型で配合した(図1および図3(Freyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:3739−3744(2008)))。図2中の構造は、例のみであり、そしてTLRアゴニストの他の型(Takedaら, Annu. Rev. Immunol., 21:335−376(2003))もまた、類似のリポソーム内に取り込み可能である。本構築物で使用するのが好ましいTLRアゴニストの組み合わせは、oCpG(TLR9; Hemniら, 2004, Nature 408:740−745)およびR848(TLR9; Hemniら, Nat. Immunol., 2002)である。
【0023】
リピドAおよびR−848含有MPERペプチド・リポソームの構築には、膜係留アミノ酸配列を有するMPERペプチドおよび合成脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(POPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−リン酸(DMPA)およびコレステロールを、それぞれ、0.216、45.00、25.00、20.00および1.33のモル分率で同時可溶化する方法を利用した(Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007))。適切な量のMPERペプチドをクロロホルム−メタノール混合物(7:3 v/v)中に溶解し、リピドAをクロロホルム中に溶解するかまたはR−848をメタノール中に溶解し、適切な量のリン脂質のクロロホルムストックを窒素流中で乾燥させ、その後、一晩真空乾燥させた。押出し技術を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)中で、乾燥したペプチド−脂質フィルムから、リポソームを作製した。
【0024】
オリゴ−CpG複合体化MPERペプチド・リポソームの構築には、POPCの代わりに、陽イオン性脂質、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(POEPC)を用いた。ペプチド免疫原を含有する陽イオン性リポソームを、望ましい用量に適した量のoCpGストック溶液(1mg/ml)と混合することによって、oCpGのコンジュゲート化を行った。
【0025】
2F5 mAbの、MPER 2F5ペプチド・エピトープ−リポソーム構築物中のそのエピトープに対する結合に関する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって、TLRアジュバントの取り込みまたはコンジュゲート化が、リポソーム中のgp41ペプチドに対するHIV中和抗体2F5の結合に影響を及ぼさないことが明らかになった。図4に記載するペプチド・リポソーム構築物中で、両方のmAb、2F5および4E10の強い結合が観察された。
【0026】
実施例2
自己反応性B細胞は、BCRおよびTLRの二重会合に依存する機構を通じて、TLRリガンドによって活性化可能である(Leadbetterら, Nature 416:603(2002); Marshak−Rothsteinら, Annu. Rev. Immunol. 25:419−41(2007)、Herlandsら, Immunity 29:249−260(2008)、Schlomchik, Immunity 28:18−28(2008))。この免疫原設計において、可溶性IFN−αは、MPER656またはMPER656−L669Sペプチドいずれかにコンジュゲート化されたリポソーム内に被包されている。IFN−αは、BCR活性化閾値を低下させることによって、自己反応性B細胞に対する選択性を調節し、そして緩和すると報告されてきている(Uccelliniら, J. Immunol. 181:5875(2008))。これらの免疫原の設計はまた、膜結合性MPERエピトープへの結合およびHIV−1の中和の両方に、gp41 MPER抗体の脂質反応性が必要であるという観察にも基づく。
【0027】
MPER中和mAb、4E10および2F5の長いCDR H3ループは、ビリオン膜脂質と相互作用すると仮定される疎水性面を有する(Ofekら, J. Virol. 78:10724(2004); Cardosoら, Immunity 22:163−173(2005))。4E10(scFv)および2F5(IgG)のCDRH3突然変異体が構築されてきており(図5)、そして中和MPER mAbの結合が経時的に起こり、そしてgp41の融合前中間体状態への結合前に、ウイルス膜脂質へのmAbの結合によって開始されることが見出されてきている。4E10 scFvは、名目(nominal)エピトープ・ペプチドおよび三量体gp41融合中間体タンパク質の両方に強く結合するが、HIV−1およびSIVビリオンの両方に弱く結合し、そしてしたがって、4E10がウイルス膜脂質に結合するが、gp41の融合前状態には結合しないことが示される。4E10のCDR H3ループの疎水性面上の位でのアラニン置換(W100a/W100b/L100cA)は、gp41エピトープへの同様の結合を示したが、同じ置換は、4E10がHIV−1ウイルス膜に結合する能力を妨害した(図6)。gp41中間体タンパク質に結合するが、HIV−1ウイルス膜に結合しない、4E10 CDR H3突然変異体は、HIV−1中和に失敗した。同様に、HIV−1ビリオンへの結合が妨害されるが、gp41エピトープ・ペプチドへの結合が妨害されていない、2F5 CDR H3突然変異体は、HIV−1中和に失敗した(図6)。gp41融合中間体タンパク質による4E10のHIV−1中和活性の遮断によって、4E10がウイルス融合前gp41に結合しないことがさらに示唆された。これらの結果によって、中和MPER mAbの結合が経時的に起こり、そしてgp41の融合前中間体状態への結合前に、ウイルス膜脂質へのmAbの結合によって開始されるというモデルが裏付けられる。この結果の重要な暗示は、HIV−1膜が、4E10および2F5による結合および中和の、さらなる構造構成要素を構成することである。したがって、免疫原が4E10および2F5様抗体反応を誘導するには、脂質構成要素が必要である可能性もある。
【0028】
したがって、この戦略は、B細胞寛容を調節し、免疫原を反応性B細胞サブセットにターゲティングし、そしてリン脂質およびgp41 MPERエピトープに結合する多重反応性B細胞の誘導を可能にする潜在能力を有する。TLRリガンドと組み合わせて用いた際、リポソーム中のIFN−αの送達は、自己反応性プール由来の、そしてgp41 MPERエピトープに対する望ましい特異性を持つB細胞のTLR依存性活性化を可能にする潜在能力を有する。
【0029】
構築物の説明:
HIV−1 gp41 MPER gp41中間体構築物(図1)を、上に概略し、そして先に記載されるように、合成リポソームにコンジュゲート化してもよい。超音波処理したMPER gp41中間体構築物−リポソーム(図7および8)の各々を調製し、そして次いで可溶性IFNαタンパク質と混合し、そして次いで、乾燥させ、そして再水和させて、サイトカインを被包してもよい。短時間ボルテックスした後、被包したIFNαとともに再水和させたリポソームを30分間超遠心することによって、収集してもよい。第一の設計において、リポソームをoCpG(TLR9)、MPL−A(TLR4)またはR848(TLR7/9)のいずれかにコンジュゲート化する(図2および3)。これらのアジュバント化リポソーム構築物各々を、図3に示すようなgp41プレヘアピン中間体の形を用いて調製することも可能である。第二の設計を図7および8に示し、そしてこれには、複数のTLRリガンドが含まれ、TLR9+TLR4およびTLR9+TLR 7/8が同じリポソーム内に取り込まれる。これらの構築物の設計は、TLR誘発において相乗作用を提供し、そして多重反応性B細胞を活性化する際に、TLRリガンドの強度を潜在的に増進することも可能である。さらに、設計される構築物は、図9に示すように、可溶性CD40Lまたは膜結合CD40Lいずれかがgp41中間体リポソームとともに取り込まれるように設計されている。
【0030】
図4に記載するように、2F5および4E10 mAb結合のSPR分析によって、アジュバント化リポソーム構築物上のMPERエピトープ提示の評価を行ってもよい。
実施例3
実験詳細
先に記載される方法(Alamら, J. Immunol. 178:4424−4435(2007))を用いて、それぞれ45、25、5および25のモル分率の合成脂質POPC、POPE、DOGS(1,2ジオレオイル−sn−グリセロール−3−スクシニル−NTA−Ni)から、Ni−NTA(N”,N”−ビス[カルボキシメチル]−L−リジン;ニトリロ酢酸、NTA)リポソームを構築した。表面プラズモン共鳴実験によって、Ni−NTAリポソームへのHisタグ化gp41中間体のコンジュゲート化を検証した。Hisタグ化gp41中間体を、固定されたリポソーム表面上に注入した際、該中間体は、Ni−NTAを欠く対照リポソームに比較して、Ni−NTAリポソームに選択的に結合した。非コンジュゲート化Ni−NTAリポソームのものと、gp41中間体所持Ni−NTAリポソームへの2F5および4E12 mAbの結合を比較することによって、gp41中間体にコンジュゲート化されたリポソーム中のMPER中和抗体エピトープの提示を調べた。2F5および4E10 mAbはどちらも、gp41中間体所持Ni−NTAリポソームに選択的に結合した。
【0031】
結果
図10は、固定されたNi−NTAリポソーム上のHisタグ化gp41中間体の捕捉を示す。c末端にヒスチジン残基(His6)の短い配列を含むHIV−1 gp41中間体(図1に記載)を、脂質分子(DOGS、1,2ジオレオイル−sn−グリセロール−3−スクシニル−NTA−Ni)に共有結合したニッケルキレート基(N”,N”−ビス[カルボキシメチル]−L−リジン;ニトリロ酢酸、NTA)を含有する合成リポソーム上に固定した。SPR結合アッセイによって、gp41中間体がNi−NTAリポソームに特異的に捕捉されるが、Ni−NTAを欠く対照リポソームには捕捉されないことが示される。gp41中間体の緩慢な解離は、gp41中間体がリポソームに安定に固定されている指標となる。
【0032】
図11は、リポソームに係留されたgp41中間体へのMPER中和mAb、2F5および4E10の安定な結合を示す。gp41中間体タンパク質をNi−NTAリポソームに係留し、そしてその後、2F5 mAb(A、50μg/mL)および4E10 mAb(B、50μg/ml)を注入した。gp41中間体リポソームへの2F5および4E10 mAb両方の強い結合が観察された。対照である、gp41タンパク質を含まないNi−NTAリポソームおよびセンサー表面(ブランクフローセル)へのバックグラウンド結合もまた示す。2F5および4E10 mAb両方の結合は、MPERペプチド−脂質コンジュゲートのものに比較した際、はるかにより緩慢な解離速度を示す。これらのデータは、gp41中間体がNi−NTAリポソームと安定な複合体を形成可能であり、そして三量体gp41中間体上のMPERエピトープが、2F5および4E10 mAbへの高アフィニティ結合のために最適に提示されることを示す。これは、TLRアジュバントおよびサイトカイン(TNF−a)コンジュゲート化リポソームへのgp41中間体タンパク質の係留の基盤となり、そして多重反応性および広域中和MPER mAb誘導のための免疫原として使用される基盤となる。
【0033】
上に引用するすべての文書および他の情報供給源は、その全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成リポソームに連結されたHIV−1エンベロープgp41のプレヘアピン中間体型を含むgp41−脂質構築物を用いて、哺乳動物において、広域中和抗HIV−1抗体を誘導する方法。
【請求項2】
前記リポソームがTLRアゴニストを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記TLRアゴニストがTLR 7/8またはTLR9に特異的である、請求項2の方法。
【請求項4】
前記TLRアゴニストがTLR4またはTLR5に特異的である、請求項2の方法。
【請求項5】
IFNαが前記リポソーム内に取り込まれている、請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図12I】
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【図12J】
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【図12K】
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【図12L】
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【図12M】
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【図12N】
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【図12O】
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【図12P】
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【図12Q】
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【図12R】
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【図12S】
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【図12T】
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【図12U】
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【図12V】
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【図12W】
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【図12X】
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【図12Y】
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【公表番号】特表2012−528790(P2012−528790A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503433(P2012−503433)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/001018
【国際公開番号】WO2010/114629
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511043965)デューク ユニバーシティー (9)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【出願人】(596115687)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (25)
【Fターム(参考)】