説明

配水制御装置および制御方法

【課題】
自然流下水とポンプ圧送水を合流させる配水システムにおいて、基本配水量未満で配水ポンプを停止させずに、配水圧力の急激な変動を抑えることで、ポンプと配管の寿命を保持できる制御装置、制御方法、制御システムを提供する。
【解決手段】
配水量の変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替える制御判断部を有し、ポンプが圧力一定制御中に、吐出流量の下降が既定継続時間を継続した場合、流量一定制御に切り替え、このときの吐出圧を記憶するとともに、流量一定制御中に、流量一定制御に切替わった時の圧力よりもポンプ吐出圧が既定継続時間を継続した場合に、圧力制御に切り替えることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然流下水と圧送水が合流する配水系統において、配水ポンプを停止することなく安定して給水するための配水制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上水道施設において配水する手段には、配水池からの自然流下を利用するものと、ポンプによる動力を利用して圧送するものがある。
自然流下による流量調整は、電動弁開閉のみで行うことから多くの電気を消費することはないが、使用水量の急変には対応することができない。一方、ポンプによる圧送の場合は、水の需要に応じた回転数制御を行うことができ、応答性に優れている。従って、自然流下水で基本配水量をまかない、一日の変動については、回転数制御によるポンプ圧送を併用することで、きめ細かな配水量制御を実現できる。
従来、2つの配水方式を併用する場合の制御装置は図3のようになっている。
基本配水量は、配水池1からの自然流下水を流量一定制御することで確保する。配水量101が基本配水量未満の場合は、合流点10の圧力が一定になるように、流量に応じて電動弁81を開閉し圧力を確保する。
一方、基本配水量を越える変動流量は配水池2から配水ポンプ4による圧送でまかなう。このとき、末端の給水栓の水圧を一定にするために、推定末端圧制御を行う。推定末端圧制御は、配管網の希望末端圧Peとポンプ吐出揚程と配管管路の損失からポンプの吐出圧力を推定し、配水ポンプ4の回転数を可変速制御するものである。また、配管網の末端に圧力計7を設置して、末端圧制御を行う場合もある。
【特許文献1】特許第2765021号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の自然流下水とポンプ圧送水が合流する場合の配水制御では、基本配水量未満で配水ポンプを停止させ、自然流下水のみで配水流量をまかなう制御を行うが、配水ポンプの起動停止頻度が増えることから、ポンプの寿命を損なうことに加え、配水圧力の変動が大きくなり、老朽化した配管からの漏水を引き起こす原因となっている。
そこで本装置は、少流量時においても配水ポンプを停止せずに安定な水量と圧力を確保し、系統連結の際に既存の設備に機器を追加しないことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するために、
請求項1および5に記載の発明は、流量調整弁で流量を調整しながら自然流下で供給する第1の配水池からの自然流下水と、ポンプの回転数制御によって流量を調整しながら供給する第2の配水池からのポンプ圧送水とを合流させ、前記合流点10や末端での圧力を指標として前記圧送水流量を末端圧制御もしくは推定末端圧制御することにより上水を供給する配水制御方法において、流量変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替える装置および方法とするものである。
また、請求項2および6に記載の発明は、制御指標となる前記合流点10や末端の前記圧力や前記ポンプ流量の閾値を設定する設定部と、前記制御方法を切り替える判断をする制御判断部と、決定された前記制御方法にしたがってポンプを制御する流量制御部および圧力制御部から構成される装置および方法とするものである。
また、請求項3および7に記載の発明は、ポンプを圧力制御中に、ポンプの吐出流量の下降が規定時間継続した場合に、ポンプを流量一定制御に切り替える装置および方法とするものである。
また、請求項4および8に記載の発明は、ポンプを流量一定制御中に、ポンプの吐出圧力の下降が規定時間継続した場合に、ポンプを圧力制御に切り替える装置および方法とするものである。
また、請求項9に記載の発明は、配水量の変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替える配水制御装置と、前記合流点10の圧力を計測し該計測データを前記制御判断部へ送付する圧力計と、前記ポンプ圧送水の流量を計測し該計測データを前記制御判断部へ送付する流量計と、前記流量制御部または圧力制御部からの回転数指令により回転数を調整する配水ポンプとを備える配水制御システムとするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1および5に記載の発明によると、少流量になる夜間から朝方までの時間帯において、ポンプを停止させないことから、ポンプの起動停止回数を減らすことができるとともに、他系統からの逆流による締切り運転でポンプが過熱損傷するのを防ぐことができる。
請求項2および6に記載の発明によると、流量制御と圧力制御を自動で切り替えることで、ポンプを停止させないようにすることから、ポンプの起動停止回数を減らすことができる。
請求項3および7に記載の発明によると、圧力制御から流量一定制御に切り替えることで、ポンプを停止させないことから、ポンプの起動停止回数を減らすことができ、他系統からの逆流による締切り運転でポンプが過熱損傷するのを防ぐことができる。
請求項4および8に記載の発明によると、流量一定制御から圧力制御に切り替えることで、配水量が急に増加する場合でも、給水地点で安定した圧力を得ることができる。
請求項9に記載の発明によると、自然流下系には流量計や電動弁がなくとも、合流点10の圧力計と圧送系の流量計だけの信号から配水ポンプを制御する、よりシンプルな自動制御システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の実施例を示す配水制御装置のブロック図である。なお、従来と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる点のみ説明する。
本発明が従来技術と異なる構成は、以下の通りである。
図において配水制御装置9に、制御判断部93と設定部94を付加した点であり、制御判断部93において、圧力制御、流量制御のどちらを行うか判断し、設定部94で流量一定制御に切替わる判断基準となる設定流量Qと判定条件の継続時間M、Nの値を設定する。設定流量Qは、例えばポンプの最低流量とする。また、バイパス弁3を取り除いた点、および自然流下系統の電動弁81を手動の流量調節弁82に置き換えた点も従来と異なる。
次に配水制御装置9の動作を制御フロー(図2)に基づいて具体的に説明する。
配水池1からの自然流下による送水量は、流量調節弁82で任意の開度に調節されており、配水量101の変化に応じた開度の自動調節は行わない。配水池2からのポンプ圧送による送水は、配水ポンプ4の推定末端圧制御により行われるが、このとき推定末端圧の設定値を高くすると、配水池1からの自然流下水を押しのけて送水する可能性があるため、実際には設備高低図などから最適な設定値を決める必要がある。
いま、日中の配水量101が比較的多い時間に推定末端圧制御が行われているとする(図2のS1)。配水ポンプ4は配水量101の変化に応じて回転数制御されることで、末端圧(設定値Pe)が安定的に確保され、自然流下系統の圧力に負けることがない。
配水量101が少なくなる時間帯に近づくにつれ、配水ポンプ4からの配水流量が低下する。配水流量が設定部94で設定した設定流量Q以下を規定継続時間であるM分間継続すると(図2のS2)、制御判断部93が制御を流量一定に切り替える(図2のS3)。このとき設定流量Qになるようにポンプを可変速制御する。同時に、流量一定制御に切替わる直前の配水ポンプ4の吐出圧P0を記憶しておく(図2のS4)。配水量101が少なくなる夜間は、日中に比べ、流量、圧力の変動が少なく、細かく配水ポンプ4を制御する必要がないことから、このように配水ポンプ4の最低流量で運転することで、締切り運転の防止を図る。これにより、積極的に夜間に配水ポンプ4を停止させる必要がなくなるとともに、バイパス弁3を設置する必要がない。
朝方の配水量101が立ち上がる時間帯が近づくと、配水量101の増加により、配水ポンプ4の吐出圧が下降を始める。先に記憶した流量一定制御開始時の圧力P0以下を規定継続時間であるN分間継続すると(図2のS5)、制御判断部93が配水ポンプ4の制御を推定末端圧制御に変更し、朝の配水量の立ち上がりに追従するよう可変速制御を行い、配水圧力を確保する。
【0008】
このように、本発明による配水制御装置は、夜間積極的に配水ポンプを停止させる必要がないことから配水ポンプの延命につながる。また、バイパス弁や自然流下系統にて電動弁による流量の自動制御を行わなくても配水ポンプの過熱損傷を防ぐことができるので、設備を追加せずに系統連結できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の制御フロー図である。
【図3】従来の配水制御装置のブロック図を示す。
【符号の説明】
【0010】
1 配水池1
2 配水池2
3 バイパス弁
4 配水ポンプ
5 流量計(A)
6 流量計(B)
7 圧力計
81 電動弁
82 流量調節弁
9 配水制御装置
91 圧力制御部
92 流量制御部
93 制御判断部
94 設定部
10 合流点
100 配水末端圧Pe
101 配水量
102 配水ポンプ流量信号
103 回転数指令
104 配水圧力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量調整弁で流量を調整しながら自然流下で供給する第1の配水池からの自然流下水と、ポンプの回転数制御によって流量を調整しながら供給する第2の配水池からのポンプ圧送水とを合流させ、前記合流点や末端での圧力を指標として前記ポンプの吐出流量を末端圧制御もしくは推定末端圧制御することにより上水を供給する配水制御装置において、
配水量の変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替えることを特徴とする配水制御装置。
【請求項2】
前記配水制御装置は、制御指標となる前記合流点や末端の前記圧力や前記ポンプ流量の閾値および規定継続時間を設定する設定部と、前記制御方法を切り替える判断をする制御判断部と、決定された前記制御方法にしたがってポンプを制御する流量制御部および圧力制御部から構成されることを特徴とする請求項1に記載の配水制御装置。
【請求項3】
前記配水制御装置において、前記ポンプを圧力制御中に、前記ポンプの吐出流量の下降が前記規定継続時間を継続した場合に、前記制御判断部が前記ポンプを流量一定制御に切り替えることを特徴とした請求項2に記載の配水制御装置。
【請求項4】
前記配水制御装置において、前記ポンプを流量一定制御中に、前記ポンプの吐出圧力の下降が前記規定継続時間を継続した場合に、前記制御判断部が前記ポンプを圧力制御に切り替えることを特徴とした請求項2に記載の配水制御装置。
【請求項5】
流量調整弁で流量を調整しながら自然流下で供給する第1の配水池からの自然流下水と、ポンプの回転数制御によって流量を調整しながら供給する第2の配水からのポンプ圧送水とを合流させ、前記合流点や末端での圧力を指標として前記ポンプの吐出流量を末端圧制御もしくは推定末端圧制御することにより上水を供給する配水制御方法において、
配水量の変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替えることを特徴とする配水制御方法。
【請求項6】
前記配水制御方法は、制御指標となる前記合流点や末端の前記圧力や前記ポンプ流量の閾値および規定継続時間を設定する設定部と、前記制御方法を切り替える判断をする制御判断部と、決定された前記制御方法にしたがってポンプを制御する流量制御部および圧力制御部から構成されることを特徴とする請求項5に記載の配水制御方法。
【請求項7】
前記配水制御方法において、前記ポンプを圧力制御中に、前記ポンプの吐出流量の下降が前記規定継続時間を継続した場合に、前記制御判断部が前記ポンプを流量一定制御に切り替えることを特徴とした請求項5に記載の配水制御方法。
【請求項8】
前記配水制御方法において、前記ポンプを流量一定制御中に、前記ポンプの吐出圧力の下降が前記規定継続時間を継続した場合に、前記制御判断部が前記ポンプを圧力制御に切り替えることを特徴とした請求項5に記載の配水制御方法。
【請求項9】
流量調整弁で流量を調整しながら自然流下で供給する第1の配水池からの自然流下水と、ポンプの回転数制御によって流量を調整しながら供給する第2の配水池からのポンプ圧送水とを合流させ、前記合流点や末端での圧力を指標として前記ポンプの吐出流量を末端圧制御もしくは推定末端圧制御することにより上水を供給する配水制御システムにおいて、
配水量の変動に応じて流量一定制御もしくは圧力一定制御のどちらかに切り替える配水制御装置と、
前記合流点の圧力を計測し該計測データを前記制御判断部へ送付する圧力計と、
前記ポンプ圧送水の流量を計測し該計測データを前記制御判断部へ送付する流量計と、
前記流量制御部または圧力制御部からの回転数指令により回転数を調整する配水ポンプ、とを備えたことを特徴とする配水制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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