説明

配管のライニング装置と既設配管のライニング工法

【課題】配管にエルボ管が含まれていても、エルボ管を含む配管の全長にわたって、その一側方から配管内面にライニング処理を行うことのできるライニング装置と、そのライニング装置を使用して既設配管の内面をライニング処理する既設配管のライニング工法。
【解決手段】先端側ピグ1、基端側ピグ2、および、押し込み用ピグ3が、この順番で一連に連結され、押し込み用ピグ3に押し引き用の操作部材6が連結されていて、基端側ピグ2と押し込み用ピグ3を可撓性を有する基端側スプリングワイヤ5により連結し、先端側ピグ1と基端側ピグ2を基端側スプリングワイヤ5よりも柔らかく、かつ、可撓性を有する先端側スプリングワイヤ4により連結してある配管のライニング装置と、そのライニング装置を使用することにより、エルボ管P2を有して宅地C内に引き込まれた都市ガス用の既設配管P1の内面にライニング材Lを塗布するライニング工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端側ピグ、基端側ピグ、および、押し込み用ピグが、先端から基端側に向けて記載順に一連に連結され、前記押し込み用ピグに押し引き用の操作部材が連結されて構成され、前記先端側ピグを配管内に挿入し、かつ、前記基端側ピグと押し込み用ピグの間にライニング材を介在させた状態で、前記操作部材を押し込み操作することによって、前記押し込み用ピグにより前記ライニング材を配管内に押し込んだ後、前記操作部材を引き抜き操作することによって、前記基端側ピグおよび先端側ピグにより前記ライニング材を配管の内面に塗布可能な配管のライニング装置と、そのライニング装置を使用して既設配管の内面をライニング処理する既設配管のライニング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したようなライニング装置としては、従来、基端側ピグと押し込み用ピグを天然ゴムなどの柔軟性を有する材料からなる中空パイプにより連結し、先端側ピグと基端側ピグを短連結管により連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3943943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載のライニング装置では、先端側ピグと基端側ピグが、ほとんど弾性変形も不可能な短連結管により連結され、さらに、基端側ピグと押し込み用ピグが、多少の弾性変形は可能であっても、例えば、90°の角度で彎曲することなど不可能な中空パイプにより連結されているので、例えば、ライニング処理の対象となる既設配管に90°の角度で彎曲するエルボ管が含まれる場合、先端側ピグをエルボ管の手前まで押し込むことはできるものの、エルボ管の先にまで押し込むことは不可能である。
したがって、上記特許文献に記載のライニング装置では、ライニング処理の対象となる既設配管にエルボ管が含まれる場合、既設配管の一側方からエルボ管を含む既設配管の全長にわたって、その内面にライニング材を塗布してライニング処理することができないという欠点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえライニング処理の対象となる配管にエルボ管が含まれていても、エルボ管を含む配管の全長にわたって、その配管の一側方から配管内面にライニング材を塗布してライニング処理を行うことのできる配管のライニング装置と、そのライニング装置を使用して既設配管の内面をライニング処理する既設配管のライニング工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、先端側ピグ、基端側ピグ、および、押し込み用ピグが、先端から基端側に向けて記載順に一連に連結され、前記押し込み用ピグに押し引き用の操作部材が連結されて構成され、前記先端側ピグを配管内に挿入し、かつ、前記基端側ピグと押し込み用ピグの間にライニング材を介在させた状態で、前記操作部材を押し込み操作することによって、前記押し込み用ピグにより前記ライニング材を配管内に押し込んだ後、前記操作部材を引き抜き操作することによって、前記基端側ピグおよび先端側ピグにより前記ライニング材を配管の内面に塗布可能な配管のライニング装置であって、前記基端側ピグと押し込み用ピグを可撓性を有する基端側スプリングワイヤにより連結し、前記先端側ピグと基端側ピグを前記基端側スプリングワイヤよりも柔らかく、かつ、可撓性を有する先端側スプリングワイヤにより連結してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、基端側ピグと押し込み用ピグを可撓性を有する基端側スプリングワイヤにより連結し、さらに、先端側ピグと基端側ピグを基端側スプリングワイヤよりも柔らかく、かつ、可撓性を有する先端側スプリングワイヤにより連結してあるので、たとえライニング処理の対象となる配管にエルボ管が含まれていても、押し引き用の操作部材を押し込み操作することによって、先端側ピグと基端側ピグは、先端側スプリングワイヤと基端側スプリングワイヤの彎曲によりエルボ管を通過してエルボ管の先まで押し込むことができ、また、押し込み用ピグにより押し込まれるライニング材も、エルボ管の先まで押し込むことが可能となる。
したがって、その後、押し引き用の操作部材を引き抜き操作することによって、エルボ管を含む配管の全長にわたって、その配管の一側方から配管内面にライニング材を塗布してライニング処理を行うことができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、上記第1の特徴構成を備えたライニング装置において、前記押し引き用の操作部材がスプリングワイヤであるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、押し引き用の操作部材がスプリングワイヤであるから、押し引き用の操作部材は、必要に応じて彎曲されながら使用することができる。
したがって、例えば、押し引き用の操作部材が彎曲不可能な棒材などであれば、その棒材などを押し引き操作するだけの長い空間を必要とするが、そのような長い空間がなくても、スプリングワイヤからなる操作部材を彎曲させながら操作することにより、所望どおりの押し引き操作が可能となる。
その結果、たとえ小さな作業空間しかなくても、所望どおりの押し引き操作ができ、ライニング処理の対象となる配管が地中に埋設された既設配管であれば、比較的少量の土壌を掘削するだけですみ、作業の効率化を図ることができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、地中に埋設された本管から分岐され、かつ、エルボ管を有して敷地内に引き込まれたガス用の既設配管において、上記第1または第2の特徴構成を備えたライニング装置を使用して、前記本管側から、本管からみてエルボ管を越えた位置から前記本管に向かって前記既設配管の内面にライニング材を塗布するところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、地中に埋設された本管から分岐され、かつ、エルボ管を有して敷地(例えば宅地)内に引き込まれた既設配管において、上述したライニング装置を使用して、本管側から既設配管の内面にライニング材を塗布するので、敷地内に引き込まれた既設配管にエルボ管が含まれているにもかかわらず、敷地外から敷地内の既設配管の内面にライニング材を塗布してライニング処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による配管のライニング装置と既設配管のライニング工法につき、その実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明のライニング装置は、図1に示すように、先端側ピグ1、基端側ピグ2、および、押し込み用ピグ3の3つのピグを有し、先端側ピグ1と基端側ピグ2が、可撓性を有する先端側スプリングワイヤ4により互いに連結され、基端側ピグ2と押し込み用ピグ3が、可撓性を有する基端側スプリングワイヤ5により互いに連結されている。
つまり、先端側ピグ1、基端側ピグ2、および、押し込み用ピグ3が、この順番で先端側と基端側のスプリングワイヤ4,5により一連に連結され、さらに、押し込み用ピグ3には、押し引き用の操作部材としての操作用スプリングワイヤ6が連結されて構成されている。
【0013】
先端側ピグ1は、図4を参照して後に説明するように、主として他のピグ2,3などを既設配管P1内へ誘導し、かつ、その既設配管P1の内面にライニング材Lを塗布する機能を有し、そのため、スポンジなどの弾性を備えた軟質材料によりほぼ球状に形成され、その直径が既設配管P1の内径と同じかやや小径に設定されている。
基端側ピグ2は、主として既設配管P1の内面にライニング材Lを塗布する機能を有し、先端側ピグ1と同様に、スポンジなどの弾性を備えた軟質材料によりほぼ球状に形成され、その直径が既設配管P1の内径と同じかやや小径に設定されている。
それに対して、押し込み用ピグ3は、ライニング材Lを既設配管P1内へ押し込む機能を有し、スポンジなどの弾性を備えた軟質材料によりほぼ円柱状に形成されて、その直径が既設配管P1の内径と同じかやや大径に設定されている。
【0014】
先端側スプリングワイヤ4と基端側スプリングワイヤ5は、例えば、ばね鋼などからなる線材を螺旋状に曲げて構成され、両スプリングワイヤ4,5のいずれもが、90°以上の角度で容易に折曲可能な可撓性を備えている。
さらに、両スプリングワイヤ4,5を比較すると、先端側スプリングワイヤ4の線材の方が、基端側スプリングワイヤ5の線材よりも径が細く、その結果、先端側スプリングワイヤ4の方が、基端側スプリングワイヤ5よりも柔らかく、比較的容易に90°以上の角度で折曲し得るように設定されている。
【0015】
押し引き用の操作部材としての操作用スプリングワイヤ6も、例えば、ばね鋼などからなる線材を螺旋状に曲げて構成され、この操作用スプリングワイヤ6は、基端側スプリングワイヤ5と同じかやや硬くなるように、基端側スプリングワイヤ5の線材と同じかやや太い線材が使用されている。
そして、先端側ピグ1、基端側ピグ2、および、押し込み用ピグ3には、図2の(a)、(b)に示すように、それぞれ段付きの貫通孔1a,2a,3aが設けられ、その貫通孔1a,2a,3a内にスプリングワイヤ4,5,6の端部を挿入した状態で、接着剤8により接着されて連結されている。
【0016】
つぎに、上述したライニング装置を使用して、既設配管の内面にライニング材を塗布する工法について説明する。
このライニング工法は、例えば、図3に示すように、道路A下の地中に埋設された都市ガス用の本管Pから分岐されて側溝Bの下を通り、ほぼ90°の角度で彎曲した複数のエルボ管P2を有して宅地C内に引き込まれた都市ガス用の既設配管P1において、宅地Cの境界線Dより道路A側から、既設配管P1の内面にライニング材Lを塗布するのに好適な工法である。
【0017】
この工法の実施に際しては、まず、道路Aの一部を掘削して本管Pと既設配管P1の一部を露出させ、本管Pの近傍において既設配管P1を切断して、図4の(a)に示すように、その切断開口部にライニング材挿入用の治具7を装着するのであり、その治具7は、既設配管P1への接続口7aとライニング装置の挿入口7bを備え、両口7a,7bの中間にはライニング材挿入口7cが設けられている。
そして、既設配管P1の切断開口部に治具7を装着した状態で、ライニング装置の挿入口7bから先端側ピグ1と基端側ピグ2を既設配管P1内に挿入し、ライニング材挿入口7cからライニング材Lを挿入して、ライニング材Lを基端側ピグ2と押し込み用ピグ3の間に充填する。その後、ライニング材挿入口7cをプラグ7dで閉止する。
【0018】
このように基端側ピグ2と押し込み用ピグ3の間にライニング材Lを介在させた状態で、操作用スプリングワイヤ6に人為力を加えて押し込み操作するのであり、それによって、図4の(b)に示すように、ライニング材Lが押し込み用ピグ3により既設配管P1内に押し込まれる。
その際、各ピグ1,2,3に貫通孔1a,2a,3aが設けられているため、それら貫通孔1a,2a,3aがガス抜き用の孔として機能し、たとえ既設配管P1の末端側にガスが残留していても、その残留ガスが各貫通孔1a,2a,3aおよび各スプリングワイヤ4,5,6の内部空間を通って排出されるため、各ピグ1,2,3の挿入をスムースに行うことができる。
【0019】
また、先端側ピグ1と基端側ピグ2が可撓性を有する先端側スプリングワイヤ4により連結され、基端側ピグ2と押し込み用ピグ3も同じく可撓性を有する基端側スプリングワイヤ5により連結されていて、先端側スプリングワイヤ4の方が、基端側スプリングワイヤ5よりも柔らかいので、たとえ既設配管P1にエルボ管P2があっても、両スプリングワイヤ4,5がエルボ管P2に沿って彎曲し、先端側ピグ1と基端側ピグ2はエルボ管P2内をスムースに通過することができる。この点に関しては、本発明者の実験により確認済みである。
そして、先端側ピグ1と基端側ピグ2とをエルボ管P2を越えて所定位置まで押し込んだ後、操作用スプリングワイヤ6に人為力を加えて引き抜き操作するのであり、それによって、図4の(c)に示すように、本管P側から、本管Pからみてエルボ管P2を越えた位置から本管Pに向かって、基端側ピグ2および先端側ピグ1がライニング材Lを既設配管P1の内面に塗布してライニングするのである。その後、既設配管P1と本管Pを別の管で接続し、道路Aを埋め戻して作業を終了する。
【0020】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、先端側ピグ1と基端側ピグ2をほぼ球状に形成し、押し込み用ピグ3をほぼ円柱状に形成した例を示したが、例えば、先端側ピグ1と基端側ピグ2を断面形状が楕円形になるように形成したり、押し込み用ピグ3を球状に形成するなど、これらピグ1,2,3の形状については適宜変更が可能である。
また、先端側スプリングワイヤ4と基端側スプリングワイヤ5に関しては、同じ材料の線材を使用し、その線材の径を異ならせることで、先端側スプリングワイヤ4の方が基端側スプリングワイヤ5よりも柔らかくなるように設定した例を示したが、線材の材料を異ならせたり、線材の材料と径を共に異ならせて、先端側スプリングワイヤ4の方が基端側スプリングワイヤ5よりも柔らかくなるように設定することもできる。
【0021】
(2)先の実施形態では、先端側ピグ1、基端側ピグ2、および、押し込み用ピグ3にそれぞれガス抜き用の貫通孔1a,2a,3aを設けた例を示したが、既設配管P1の末端側に残留したガスは、例えば、既設配管P1の末端側から予め排出することも可能であるため、各ピグ1,2,3の貫通孔1a,2a,3aについては必ずしも必要ではない。
また、押し引き用の操作部材6をスプリングワイヤにより構成した例を示したが、押し引き用の操作部材6に関しては、必ずしもスプリングワイヤにより構成する必要はない。つまり、押し引き用の操作部材6によりライニング装置を押し引き操作する際、操作部材6を押し引き操作するに十分な空間があれば、押し引き用の操作部材6を可撓性のない棒材や管材などで構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ライニング装置の一部切欠き側面図
【図2】ライニング装置の要部の断面図
【図3】ライニング工法の対象となる既設配管の説明図
【図4】ライニング工法の工程を示す説明図
【符号の説明】
【0023】
1 先端側ピグ
2 基端側ピグ
3 押し込み用ピグ
4 先端側スプリングワイヤ
5 基端側スプリングワイヤ
6 押し引き用の操作部材としてのスプリングワイヤ
P 都市ガス用の本管
P1 既設配管
P2 エルボ管
L ライニング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側ピグ、基端側ピグ、および、押し込み用ピグが、先端から基端側に向けて記載順に一連に連結され、前記押し込み用ピグに押し引き用の操作部材が連結されて構成され、前記先端側ピグを配管内に挿入し、かつ、前記基端側ピグと押し込み用ピグの間にライニング材を介在させた状態で、前記操作部材を押し込み操作することによって、前記押し込み用ピグにより前記ライニング材を配管内に押し込んだ後、前記操作部材を引き抜き操作することによって、前記基端側ピグおよび先端側ピグにより前記ライニング材を配管の内面に塗布可能な配管のライニング装置であって、
前記基端側ピグと押し込み用ピグを可撓性を有する基端側スプリングワイヤにより連結し、前記先端側ピグと基端側ピグを前記基端側スプリングワイヤよりも柔らかく、かつ、可撓性を有する先端側スプリングワイヤにより連結してある配管のライニング装置。
【請求項2】
前記押し引き用の操作部材がスプリングワイヤである請求項1に記載の配管のライニング装置。
【請求項3】
地中に埋設された本管から分岐され、かつ、エルボ管を有して敷地内に引き込まれたガス用の既設配管において、請求項1または2に記載のライニング装置を使用して、前記本管側から、前記本管からみて前記エルボ管を越えた位置から前記本管に向かって前記既設配管の内面にライニング材を塗布する既設配管のライニング工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−285615(P2009−285615A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143261(P2008−143261)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】