説明

配管サポート調整加工用治具

【課題】配管サポートの調整加工を容易、かつ、迅速に行えるとともに、作業員の作業時における安全性を確保することができる配管サポート調整加工用治具を提供すること。
【解決手段】ガスタービン燃焼器12に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポート11を、調整加工する際に用いられる配管サポート調整加工用治具30であって、前記冷却配管の外径と同じ外径を有し、かつ、前記配管サポート11を調整加工する際に、その一端部が所定のボス33内に挿入された状態で、前記配管サポート11の円筒部20に挿通された他端部の先端を、少なくとも前記円筒部20の内部に掛け渡すことのできる長さを有するダミー管31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン燃焼器に取り付けられて(固定されて)冷却配管を支持する配管サポートを、調整加工する際に用いられて好適な配管サポート調整加工用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器に冷却用の冷媒(例えば、蒸気や空気)を導く冷却配管、およびガスタービン燃焼器に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポートとしては、例えば、特許文献1の図1に開示された配管101、および配管サポート1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−41005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また近年では、図3に示すような冷却配管10、および配管サポート11が提案されている。
なお、図3中の符号12はガスタービン燃焼器を示している。
【0005】
図4または図5の少なくとも一図に示すように、配管サポート11は、冷却配管10の外径よりもやや大きい内径を有するとともに、その内部に冷却配管10が挿通される筒状部20と、この筒状部20の外周面からガスタービン燃焼器12の側に向かって延びる二本の脚部21と、を備えている。また、各脚部21の先端部(筒状部20と反対の側に位置する自由端側の端部)には、開先(溶接する母材間に設ける溝)のある開先部23が設けられている。
【0006】
脚部21の先端部全体がガスタービン燃焼器12の外周面に接した状態で溶接されるよう、開先部23を調整加工する必要がある。ガスタービン燃焼器12の外周面にライナ13等の突出部がある場合には、先端部に切り欠きを設けて、開先部23全体が接するように調整加工される。図4中の符号24は、溶接ビード(溶接部)を示している。
【0007】
従来、この開先部23の調整加工は次のように行われていた。まず、ガスタービン燃焼器12に実際に取り付ける冷却配管10をガスタービン燃焼器12の表面に設けられたボス内に挿入する。次に、筒状部20内に冷却配管10が挿通された配管サポート11を、溶接接合しようとする箇所に当てて、ガスタービン燃焼器12の外周面から冷却配管10の径方向における中心までの距離、脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との接触状態、開先部23とライナ13の表面および側面との接触状態を確認する。そして、脚部21の先端部をグラインダーで少しずつ削り開先部23がガスタービン燃焼器12に適切に接触するようにしていた。
【0008】
しかしながら、脚部21の先端部をグラインダーで削り落とす際には、長くて重い冷却配管10を一旦取り外し、そして、再び接触状態を確認する際には、冷却配管10を再度所定の位置に取り付けるといった作業を繰り返し行わなければならず、作業効率を悪化させていた。また、冷却配管10を脱着する際、冷却配管10がガスタービン燃焼器12の外周面に取り付けられた(固定された)構成部品や、周囲に置かれた物品(例えば、チェーンブロックや天井クレーンのフック等)に衝突して損傷してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、配管サポートの調整加工を容易、かつ、迅速に行えるとともに、作業員の作業の効率向上を確保することができる配管サポート調整加工用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る配管サポート調整加工用治具は、ガスタービン燃焼器に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポートを、調整加工する際に用いられる配管サポート調整加工用治具であって、前記冷却配管の外径と同じ外径を有し、かつ、前記配管サポートを調整加工する際に、その一端部が所定のボス内に挿入された状態で、前記配管サポートの円筒部に挿通された他端部の先端を、少なくとも前記円筒部の内部に掛け渡すことのできる長さを有するダミー管を備えている。
【0011】
本発明に係る配管サポート調整加工用治具によれば、配管サポートの脚部の先端部をグラインダーで削って調整加工する際に、従来のように長くて重い冷却配管をガスタービン燃焼器に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器から取り外したりする必要がなくなり、短くて軽いダミー管をガスタービン燃焼器に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器から取り外したりするだけでよくなる。
これにより、配管サポートの調整加工を容易、かつ、迅速に行うことができる。
また、配管サポートの脚部の先端部とガスタービン燃焼器の外周面との間や、配管サポートの開先とガスタービン燃焼器の外周面に取り付けられたライナの表面および側面との間に特段の注意を払う必要がなくなり、作業員の作業効率が向上する。
【0012】
上記配管サポート調整加工用治具において、正面視矩形状を呈する板状の部材からなるベースプレートと、その内部に前記ダミー管が接合される半円環状部と、この半円環状部の外周面から前記ベースプレートの表面に向かって延びる脚部と、を備えたステーと、を備えているとさらに好適である。
【0013】
このような配管サポート調整加工用治具によれば、ダミー管の一端部をボス内に挿入し、ベースプレートの背面(下面)をガスタービン燃焼器の外周面と当接させることにより、ガスタービン燃焼器の外周面からダミー管の径方向における中心までの距離を、作業員が容易、かつ、迅速に確認できるようになる。
これにより、配管サポートの調整加工をより容易、かつ、より迅速に行うことができる。
【0014】
本発明に係るガスタービン燃焼器に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポートを調整加工する方法は、冷却配管の外径と同じ外径を有するダミー配管をガスタービン燃焼器の表面に設けられたボス内に挿入する工程と、ダミー配管の一端部がボス内に挿入された状態で、ダミー配管の他端部の先端に配管サポートの円筒部を掛け渡す工程と、配管サポートの脚部の先端部をガスタービン燃焼器の表面の溶接接合しようとする箇所に当てる工程と、配管サポートの脚部の先端部とガスタービン燃焼器の表面の接触状態を確認する工程と、ダミー配管を取り外す工程と、接触状態に応じて、配管サポートの脚部の長さを調整または開先部の調整加工する工程と、再びダミー配管をガスタービン燃焼器の元の位置に戻し、ダミー配管に配管サポートを掛け渡す工程と、再び配管サポートの脚部の先端部とガスタービン燃焼器の表面の接触状態を確認する工程と、を備えている配管サポートを調整加工方法である。
【0015】
本発明に係る配管サポートの調整加工方法によれば、配管サポートの開先をグラインダーで削って調整加工する際に、従来のように長くて重い冷却配管をガスタービン燃焼器に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器から取り外す必要がなくなり、短くて軽いダミー管をガスタービン燃焼器に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器から取り外したりするだけでよくなる。
これにより、配管サポートの調整加工を容易、かつ、迅速に行うことができる。
また、配管サポートの脚部の先端面とガスタービン燃焼器の外周面との間や、配管サポートの開先とガスタービン燃焼器の外周面に取り付けられたライナの表面および側面との間に特段の注意を払う必要がなくなり、作業員の作業効率が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管サポートの調整加工を容易、かつ、迅速に行えるとともに、作業員の作業効率の向上という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る配管サポート調整加工用治具の斜視図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る配管サポート調整加工用治具の斜視図である。
【図3】本発明に係る配管サポート調整加工用治具を用いて調整加工された配管サポートを具備したガスタービン燃焼器の上面図である。
【図4】図3中の矢印Aに沿って見た図である。
【図5】図4中の矢印Bに沿って見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る配管サポート調整加工用治具について、図1を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具30は、ダミー管(模擬管)31を備えている。
ダミー管31は、冷却配管10の外径と同じ外径を有する直管である。また、ダミー管31の長さは、配管サポート11を調整加工する際に、一端部がガスタービン燃焼器12の表面に設けられたボス33内に挿入された状態で、配管サポート11の取り付け箇所に十分届く程度の長さ、すなわち、配管サポート11の円筒部20に挿通されたダミー管の先端部が配管サポート11から突出するように設定されている。ダミー管の突出長さは、例えば、20cm程度とすることができる。
【0020】
つぎに、本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具30を用いて、配管サポート11の開先部23を調整加工する方法(配管サポートの調整加工方法)を説明する。
まず、ダミー管31の一端部を所定のボス33内に挿入し、筒状部20内にダミー管31の他端部が挿通された配管サポート11を、溶接接合しようとする箇所に当てる。
つぎに、ガスタービン燃焼器12の外周面からダミー管31の径方向における中心までの距離、配管サポート11の脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との接触状態をみる。また、溶接部にライナ13がある場合には、ライナ13の表面および側面との接触状態を見る。
【0021】
つづいて、接触状態が所望の距離および状態になっていない場合は、配管サポート調整加工用治具30および配管サポート11を一旦取り外し、脚部21の先端部をグラインダーで少し削り落とす。
【0022】
脚部21の先端部をグラインダーで少し削り落としたら、ダミー管31の一端部を所定のボス33内に再度挿入し、筒状部20内にダミー管31の他端部が挿通された配管サポート11を、溶接接合しようとする箇所に当てる。
つぎに、ガスタービン燃焼器12の外周面からダミー管31の径方向における中心までの距離、脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との接触状態、ライナ13の表面および側面との接触状態を見る。
【0023】
つづいて、ガスタービン燃焼器12の外周面からダミー管31の径方向における中心までの距離、脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との接触状態、ライナ13の表面および側面との接触状態が所望の距離および状態になっていたら、脚部21の先端部の調整加工を終了する。
一方、所望の距離および状態になっていなかったら、配管サポート調整加工用治具30および配管サポート11を再度取り外し、脚部21の先端部をグラインダーで少し削り落とす。そして、ガスタービン燃焼器12の外周面からダミー管31の径方向における中心までの距離、脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との接触状態、ライナ13の表面および側面との接触状態が所望の距離および状態になるまで、この作業を繰り返す。
【0024】
本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具30、および本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具30を用いた配管サポート11の調整加工方法によれば、配管サポート11の脚部21の先端部をグラインダーで削って調整加工する際に、従来のように長くて重い冷却配管10をガスタービン燃焼器12に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器12から取り外す必要がなくなり、短くて軽い当該配管サポート調整加工用治具30をガスタービン燃焼器12に取り付けたり、あるいはガスタービン燃焼器12から取り外したりするだけでよくなる。
これにより、配管サポート11の脚部21の先端部の調整加工を容易、かつ、迅速に行って、開先部23を溶接接合することができる。
また、配管サポート11の脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面との間や、配管サポート11の脚部21の先端部とガスタービン燃焼器12の外周面に取り付けられたライナ13の表面および側面との間に特段の注意を払う必要がなくなり、作業員の作業効率が向上する。
【0025】
本発明の他の実施形態に係る配管サポート調整加工用治具について、図2を参照しながら説明する。
図2は本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具の斜視図である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具40は、上述したダミー管(模擬管)31と、支持部材32とを備えている。
支持部材32は、ベースプレート34と、ステー(支柱)35と、を備えている。
ベースプレート34は、平面視すると矩形状を呈する板状の部材であり、その横方向における中央部には、ダミー管31の長手方向軸線(中心軸線)と直交する方向に延びるステー35が取り付けられている。
ステー35は、側面視すると略M字形状を呈する板状または棒状の部材であり、ダミー管31の外径よりもやや大きい内径を有するとともに、その内部にダミー管31が溶接接合される半円環状部36と、この半円環状部36の外周面からベースプレート34の表面に向かって延びる二本の脚部37と、を備えている。
【0027】
本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具40、および本実施形態に係る配管サポート調整加工用治具40を用いた配管サポート11の調整加工方法によれば、ダミー管31の一端部をボス33内に挿入し、ベースプレート34の背面(下面)をガスタービン燃焼器12の外周面と当接させることにより、ガスタービン燃焼器12の外周面からダミー管31の径方向における中心までの距離を、作業員が容易、かつ、迅速に確認できるようになる。
これにより、配管サポート11の調整加工、および、開先部23を整形して、配管サポート11とガスタービン燃焼器12の溶接接合をより容易、かつ、より迅速に行うことができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
【0029】
また、上述した実施形態では、ダミー管31の長さは、配管サポート11を調整加工する際に、一端部が所定のボス33内に挿入された状態で、配管サポート11の円筒部20に挿通された他端部の先端部が配管サポート11の側面からやや突出するように設定されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ダミー管31の長さは、配管サポート11を調整加工する際に、その一端部が所定のボス33内に挿入された状態で、配管サポート11の円筒部20に挿通された他端部の先端を、少なくとも円筒部20の内部に掛け渡すことができるように設定されていれば足りる。
【符号の説明】
【0030】
10 冷却配管
11 配管サポート
12 ガスタービン燃焼器
20 円筒部
30 配管サポート調整加工用治具
31 ダミー管
33 ボス
34 ベースプレート
35 ステー
36 半円環状部
37 脚部
40 配管サポート調整加工用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼器に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポートを、調整加工する際に用いられる配管サポート調整加工用治具であって、
前記冷却配管の外径と同じ外径を有し、かつ、前記配管サポートを調整加工する際に、その一端部が所定のボス内に挿入された状態で、前記配管サポートの円筒部に挿通された他端部の先端を、少なくとも前記円筒部の内部に掛け渡すことのできる長さを有するダミー管を備えていることを特徴とする配管サポート調整加工用治具。
【請求項2】
正面視矩形状を呈する板状の部材からなるベースプレートと、
その内部に前記ダミー管が接合される半円環状部と、この半円環状部の外周面から前記ベースプレートの表面に向かって延びる脚部と、を備えたステーと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の配管サポート調整加工用治具。
【請求項3】
ガスタービン燃焼器に取り付けられて冷却配管を支持する配管サポートを調整加工する方法であって、
前記冷却配管の外径と同じ外径を有するダミー配管をガスタービン燃焼器の表面に設けられたボス内に挿入する工程と、
前記ダミー配管の一端部が前記ボス内に挿入された状態で、前記ダミー配管の他端部の先端に前記配管サポートの円筒部を掛け渡す工程と、
前記配管サポートの脚部の先端部を前記ガスタービン燃焼器の表面の溶接接合しようとする箇所に当てる工程と、
前記配管サポートの脚部の先端部と前記ガスタービン燃焼器の表面の接触状態を確認する工程と、
前記ダミー配管を取り外す工程と、
前記接触状態に応じて、前記配管サポートの脚部の長さを調整または開先部の調整加工する工程と、
再び前記ダミー配管を前記ガスタービン燃焼器の元の位置に戻し、前記ダミー配管に配管サポートを掛け渡す工程と、
再び前記配管サポートの脚部の先端部と前記ガスタービン燃焼器の表面の接触状態を確認する工程と、を備えている配管サポートの調整加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−189115(P2012−189115A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51848(P2011−51848)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】