説明

配管内部状態検査装置および配管内部状態検査方法

【課題】 内部に流体が充溢している状態にあることが通常とされる配管内に気泡等の異物が存在するか否かを検査する。
【解決手段】 本発明に係る配管内部状態検査装置は、超音波送受信器20を備えている。この超音波送受信器20は、内部が冷却水8によって満水状態にある配管7の外面に密着される。そして、配管7内に向けて超音波を発射すると共に、当該超音波の反射波を受信する。この超音波送受信器20による受信信号110には、配管7の内面による2つの反射像120および130が現れる。また、配管7内に気泡9,9,…が発生している場合には、これら2つの反射像120および130の間に、当該気泡9,9,…による第3の反射像140が現れる。この第3の反射像140が現れることによる受信信号110の信号レベルの変化を捉えることで、気泡9,9,…の有無が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内部状態検査装置および配管内部状態検査方法に関し、特に、超音波を利用して配管の内部の状態を検査する、配管内部状態検査装置および配管内部状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の従来例として、特許文献1に開示されたものがある。この従来技術は、例えば、概略横設された配管を備える蒸気プラントにおいて、当該配管内に滞留しているドレン(凝縮液)の液位を測定するのに、用いられる。具体的には、配管の底部外面に、超音波送受信器が取り付けられる。そして、この超音波送受信器から上方に向けて、つまり配管内に向けて、超音波が発射される。この超音波は、配管内に滞留しているドレン内を伝播し、当該ドレンの液面で反射された後、それまでの伝播経路を戻り、最終的に超音波送受信器によって受信される。このように超音波送受信器が超音波を発射してから当該超音波のドレン液面による反射波を受信するまでに掛かる時間に基づいて、ドレンの液位が求められる。なお、従来技術は、ドレンの液面が揺れていたり波立っていたりする言わば動的状態にあるときにも、ドレンの液位を正確に測定することができるように、所定の工夫が成されたものである。また、従来技術は、配管内が満水状態にあるときに、配管の上部内面によって超音波が反射されることを利用して、当該配管内が満水状態にあるか否かを判断する機能をも、備えている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−28699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸気プラントを含む各種プラントにおいて、例えば、常に内部が満水状態にある配管があり、その配管内の流体が、当該配管の傾斜によって自然に流通するよう設計されている場合がある。このような場合に、何らかの原因によって配管内(流体内)に気泡が発生すると、この気泡が流体の流通を阻害し、ひいてはプラント全体の稼動効率の低下を招く恐れがある。従って、配管内に気泡が発生したときに、これを検知することができれば、例えば配管の内径を大きくしたり(つまり配管による流体の流通量(絶対量)を増大させたり)、或いは配管を長くしたり(つまり配管内の水頭圧(ヘッド)を増大させたり)する等、適確な対策を講ずることができ、プラントの運営上、極めて有益である。しかしながら、上述の従来技術では、配管内が満水状態にあるか否かを判断することはできるものの、配管内に気泡が発生しているか否かを判断することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、内部に流体が充溢している状態にあることが通常とされる配管内に気泡等の異物が存在するか否かを検査することができる配管内部状態検査装置および配管内部状態検査方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明のうちの第1発明に係る配管内部状態検査装置は、内部に流体が充溢している状態にあることが通常とされる配管の外面に密着される送信手段と、この送信手段の近傍または当該送信手段と一体に設けられた受信手段と、を具備する。このうち、送信手段は、配管の内部に向けて超音波を送信し、受信手段は、当該超音波の反射波を受信する。さらに、本第1発明は、受信手段から出力される受信信号に基づいて配管の内部に流体以外の異物が存在するか否かを判定する判定手段をも、具備する。
【0007】
この構成において、例えば、今、配管内に流体が充溢しており、当該配管内(流体内)に気泡等の異物が存在していない状態にある、とする。この場合、送信手段から送信(発射)された超音波は、配管の外面から当該配管の側壁内に入る。そして、この側壁内に入った超音波は、当該側壁内を伝播して、配管の内面に到達する。さらに、この配管の内面に到達した超音波の一部は、当該内面によって反射されて、それまでの伝播経路を戻り、最終的に受信手段によって受信される。これにより、受信手段から出力される受信信号に、配管の内面、厳密には送信手段が位置する側の内面、によって反射された一部の超音波、言わば第1反射波、に基づく第1反射像が、現れる。
【0008】
一方、配管の内面によって反射されなかった残りの超音波は、当該配管内に充溢している流体内に入る。そして、この流体内に入った超音波は、当該流体内を伝播して、配管の反対側の内面、要するに送信手段が位置する側とは反対側の内面、に到達し、当該反対側の内面によって略全反射される。この反対側の内面によって略全反射された超音波、言わば第2反射波、もまた、反射される前の伝播経路を戻り、受信手段によって受信される。これにより、受信手段から出力される受信信号に、当該第2反射波に基づく第2反射像が、現れる。
【0009】
なお、送信手段が超音波を送信してから受信手段が第1反射波を受信するまでの時間は、配管の側壁の肉厚(厚さ)寸法に対応し、一定である。そして、受信手段が第1反射波を受信してから第2反射波を受信するまでの時間、言い換えれば当該受信手段が出力する受信信号に第1反射像が現れてから第2反射像が現れるまでの時間は、配管の送信手段が位置する側の内面からこれとは反対側の内面までの距離(例えば配管が円管である場合には内径寸法)に対応し、やはり一定である。
【0010】
次に、配管内に気泡等の異物が存在する場合について、考える。この場合、配管内(流体内)を送信手段が位置する側からこれとは反対側に向かって伝播する超音波にとって、異物が一種の障害物として作用する。そして、超音波が異物に衝突すると、当該超音波は異物によって反射され、この異物によって反射された超音波、言わば第3の反射波もまた、最終的に受信手段によって受信される。この結果、受信手段から出力される受信信号の第1反射像と第2反射像との間に、当該第3反射波に基づく第3反射像が、現れる。
【0011】
このように、配管内に異物が存在するときには、受信信号の第1反射像と第2反射像との間に第3反射像が現れる。つまり、配管内に異物が存在するときと、そうでないときとで、受信信号の態様が異なる。この点に着目して、本第1発明においては、当該受信信号に基づいて、判定手段が、配管内に異物が存在するか否かを判定する。
【0012】
具体的には、判定手段は、受信信号のうちの第1反射像と第2反射像との間の所定期間における信号レベルに基づいて、判定を行う。即ち、上述の如く、配管内に異物が存在するときには、受信信号の第1反射像と第2反射像との間に第3反射像が現れることから、判定手段は、これら第1反射像と第2反射像との間の所定期間における受信信号の信号レベルを監視することで、当該所定期間中に第3反射像が現れたか否かを判定し、ひいては配管内に異物が存在するか否かを判定する。これにより、配管内に異物が存在するか否かの検査が、可能となる。
【0013】
また、配管内に異物が存在するときに、当該異物によって超音波が反射されると、つまり第3反射波が発生すると、その分、配管の送信手段が位置する側とは反対側の内面に到達する超音波が減少し、つまり第2反射波が減少する。そして、この第2反射波が減少することに伴い、受信信号の第2反射像の信号レベルが小さくなる。これを利用して、判定手段は、第2反射像の信号レベルに基づいて、判定を行うものとしてもよい。なお。第1反射像の信号レベルは変わらない。
【0014】
さらに、異物が大きいほど、第3反射波が増大し、これに伴い、受信信号の第3反射像の信号レベルが大きくなり、ひいては当該第3反射像を含む所定期間における受信信号の信号レベルの変化が大きくなる。このことを利用して、判定手段は、所定期間における受信信号の信号レベルに基づいて、異物の大きさ(サイズ)を、併せて判定するものとしてもよい。
【0015】
その一方で、異物が大きいほど、第2反射波が大きく減少し、これに伴い、受信信号の第2反射像の信号レベルがより小さくなる。従って、判定手段は、この第2反射像の信号レベルに基づいて、異物の大きさを判定してもよい。
【0016】
また、送信手段は、略周期的に超音波を送信し、受信手段は、当該送信手段から超音波が送信されるたびに反射波を受信し、判定手段は、当該受信手段によって反射波が受信されるたびに判定を行うものであってもよい。この場合、超音波が異物に衝突したときは、受信信号に第3反射像が現れ、そうでないときは、当該第3反射像は現れない。そして、異物の量が多いほど、受信信号に第3反射像が現れる頻度が高くなり、言い換えれば、判定手段によって異物が存在すると判定される頻度が高くなる。そこで、本第1発明では、当該判定手段によって異物が存在すると判定される頻度を求める頻度導出手段を、さらに備えてもよい。このようにすれば、頻度導出手段によって求められた頻度から、配管内に存在する異物の量を推測することができる。
【0017】
本発明のうちの第2発明は、第1発明に対応する配管内部状態検査方法に関する発明である。即ち、本第2発明は、内部に流体が充溢している状態にあることが通常である配管の外面に密着された送信手段から当該配管の内部に向けて超音波を送信する送信過程と、送信手段の近傍または当該送信手段と一体に設けられた受信手段によって超音波の反射波を受信する受信過程と、受信手段から出力される受信信号に基づいて配管内に流体以外の異物が存在するか否かを判定する判定過程と、を具備する。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明によれば、内部に流体が充溢している状態にあることが通常とされる配管内に気泡等の異物が存在するか否かを検査することができる。これによって、配管を含む設備全体を、より堅固に運営することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の具体的な実施形態を説明する前に、まず、本発明が必要とされる1つの事例を、簡単に説明する。
【0020】
例えば、図1に示すような気化冷却装置1を含むプラントがある、とする。この気化冷却装置1は、垂直断面が概略U字状のジャケット2を備えている。そして、ジャケット2の内側空間である収容部3に、冷却対象となる被冷却物4が収容されている。ジャケット2は、中空の気化冷却室5を有する中空構造とされており、その上部には、当該気化冷却室5と図示しない冷却水供給源とを繋ぐための冷却水供給管6が結合されている。また、ジャケット2の底部には、気化冷却室5と図示しない真空ポンプとを繋ぐための別の配管7が結合されている。なお、これら冷却水供給管6と配管7とは、例えば断面形状が円形の円管である。
【0021】
このように構成された気化冷却装置1によれば、上述の真空ポンプによって気化冷却室5が減圧され、この減圧状態にある気化冷却室5に上述の冷却水供給源から冷却水供給管6を介して冷却水が供給される。この冷却水は、気化冷却室5で気化(蒸発)し、その際の潜熱によって、被冷却物4が冷却される。併せて、気化しきれない冷却水が、図1に8という符号で示されるように、気化冷却室5の下部に溜まる。そして、この気化冷却室5の下部に溜まった冷却水8は、配管7内を落下し、真空ポンプ側へと回収される。
【0022】
ここで、例えば、上述の気化しきれない冷却水8の温度が、比較的に高く、詳しくは気化冷却室5の圧力に応じた飽和温度に近い、とする。すると、配管7内において冷却水8が再蒸発(フラッシュ)して、図2に示すように、当該配管7内に気泡9,9,…が発生することがある。この気泡9,9,…は、冷却水8の落下を妨げ、ひいてはプラント全体の稼動効率の低下を招くため、極めて好ましくない。本発明は、この気泡9,9,…の有無を検査するのに好適であり、その具体的な実施形態は、次の通りである。
【0023】
即ち、図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る配管内部状態検査装置10は、超音波送受信器20と、この超音波送受信器20が接続される装置本体30と、を備えている。このうち、超音波送受信器20は、いわゆる探触子と呼ばれるものであり、内部に、電気信号と超音波とを相互に変換する図示しない変換素子を有している。そして、この超音波送受信器20は、後述するように配管7の外面に密着される。
【0024】
一方、装置本体30は、超音波送受信器20が接続される端子32を備えている。そして、装置本体30内において、端子32は、駆動回路34に接続されており、さらに、駆動回路34は、制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)36に接続されている。また、CPU36には、これに各種命令を入力するための入力手段としての操作キー38と、当該CPU36による処理結果に基づいて各種情報を表示する表示手段としてのディスプレイ40と、CPU36の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている記憶手段としてのメモリ42とが、接続されている。
【0025】
このように構成された配管内部状態検査装置10によれば、図4に示すように、超音波送受信器20(超音波送受信面)が配管7の外面に密着される。そして、超音波送受信器20は、駆動回路34から与えられる駆動信号に従って、超音波送信器として機能し、詳しくは、図5(a)に誇張して示すような概略インパルス状の超音波100を周期的に発射する。なお、この超音波100の発射周期Toは、主に配管7の外径寸法に応じて適宜に決定され、概ねTo=数十[msec]〜数百[msec]の範囲内で決定される。
【0026】
ここで、今、図4に示すように、配管7内に冷却水8が充溢している、つまり配管7内が冷却水8によって満水状態にある、とする。この場合、超音波送受信器20から発射された超音波100は、配管7の外面から当該配管7の側壁内に入る。そして、配管7の側壁内に入った超音波100は、当該側壁内を伝播して、配管7の内面に到達する。配管7の内面においては、当該配管7の側壁の物理的性質と冷却水8の物理的性質との違いにより、超音波100の伝播作用に対する音響インピーダンスが大きく変わる。従って、配管7の内面に到達した超音波100の大半は、ここで反射されて、それまでの伝播経路を逆行し、最終的に超音波送受信器20(超音波送受信面)に入射される。
【0027】
超音波送受信器20は、超音波100を送信するたびに、次の超音波100を送信するまでの間、超音波受信器として機能し、つまり、当該超音波100の反射波(エコー)を受信して、これを電気信号110に変換する。この変換された電気信号、言わば受信信号110には、図5(b)に示すように、超音波100が発射された時点t0から、配管7(側壁)の肉厚寸法に応じた或る時間Taが経過した時点t1で、当該配管7の内面によって反射された超音波100、言わば第1の反射波、に基づく第1の反射像120が、現れる。
【0028】
一方、配管7の内面によって反射されなかった残りの超音波100は、図4に白抜きの矢印200で示すように、当該配管7内に充溢している冷却水8内に入る。そして、この冷却水8内に入った超音波100は、当該冷却水8内を伝播して、配管7の反対側(図4において右側)の内面に到達し、この反対側の内面によって略全反射される。この反対側の内面によって略全反射された超音波100、言わば第2の反射波、もまた、図4に矢印210で示すように、反射される前の伝播経路を逆行し、最終的に超音波送受信器20に入射される。
【0029】
これにより、図5(b)に示す受信信号110には、第1反射像120が現れた時点t1から、さらに配管7の内径寸法に応じた時間Tbが経過した時点t2で、第2反射波に基づく第2反射像130が、現れる。なお、通常は、第1反射波の方が第2反射波よりも大きく、ゆえに、第1反射像120の振幅(ピーク・トゥー・ピーク値)V1の方が第2反射像130の振幅V2よりも大きい(V1>V2)。また、超音波送受信器20が超音波100を発射した時点t0から、当該超音波送受信器20による受信信号110に第1反射像120が現れる時点t1までの時間Taは、当然に一定である。そして、当該受信信号110に第1反射像120が現れた時点t1から第2反射像130が現れる時点t2までの時間Tbもまた、一定である。
【0030】
続いて、図6(a)に示すように、配管7内(冷却水8内)に気泡9,9,…が発生している場合を、考える。この場合、配管7内を同図に矢印200で示す方向に伝播する超音波100にとって、これらの気泡9,9,…は一種の障害物として作用する。そして、超音波100がいずれかの気泡9に衝突すると、当該超音波100は気泡9によって反射される。この気泡9によって反射された超音波100、言わば第3の反射波、もまた、同図に矢印220で示すように、反射される前の伝播経路を逆行し、最終的に超音波送受信器20に入射される。さらに、第3の反射波が発生することで、配管7の超音波送受信器20が位置する側とは反対側(同図において右側)の内面に到達する超音波100が減少する。つまり、同図に矢印210で示すように反射される当該反対側の内面による第2反射波(矢印210)が減少する。
【0031】
この結果、図6(b)に示すように、超音波送受信器20による受信信号110の第1反射像120と第2反射像130との間に、第3の反射波に基づく第3反射像140が、現れる。併せて、第2反射像130の振幅V2が小さくなる。なお、第1反射像120の振幅V1は変わらない。
【0032】
また、気泡9,9,…が大きいほど、第3反射像140の振幅V3が大きくなる。その一方で、第2反射像130の振幅V2はより小さくなる。そして、気泡9,9,…が極端に大きいとき(つまり超音波200よりも気泡9,9,…の方が大きいとき)には、第2反射像130は現れなくなる。
【0033】
さらに、気泡9,9,…は常に流動しているので、当該気泡9,9,…が発生していても、これに超音波100が衝突しないとき(言わばサイクル)には、第3反射像140は現れない。従って、気泡9,9,…の量が多いほど、第3反射像140が現れる頻度が高くなる。また、第1反射像120が現れた時点t1から第3反射像140が現れる時点t3までの時間Tcは、各サイクル間で一定ではなく、常に変動する。
【0034】
このように、配管7内に気泡9,9,…が発生しているときと、そうでないときとで、大きく変動する受信信号110は、図3に示した駆動回路34に入力される。駆動回路34は、入力された受信信号110をディジタル信号に変換し、変換されたディジタル受信信号(以下、これについても受信信号110と言う。)は、CPU36に入力される。CPU36は、この受信信号110から、配管7内に気泡9,9,…が発生しているか否かを判定し、さらに、当該気泡9,9,…が発生している場合には、その大きさおよび量をも判定する。
【0035】
具体的には、CPU36は、図7に示すように、受信信号110に第3反射像140が現れているか否かの判定基準となる閾値Vdを設定する。この閾値Vdは、受信信号110に含まれているノイズ成分の振幅Vnよりも大きく、かつ配管7内に気泡9,9,…が発生していないときの第2反射像130の振幅V2(以下、これをV2’という符号で表す。)よりも小さい値(Vn<Vd<V2’)である。なお、閾値Vdは、ノイズ成分の振幅Vnと、いわゆる正常時の第2反射像130の振幅V2’と、に応じてCPU36によって自動的に設定されてもよいし、操作キー38によって言わば手動設定されてもよい。
【0036】
そして、CPU36は、受信信号110の第1反射像120と第2反射像130との間の所定期間Tdにおける信号レベルを監視し、この所定期間Tdにおける当該受信信号110の最大振幅Vmaxを求める。そして、この最大振幅Vmaxと上述の閾値Vdとを比較して、当該最大振幅Vmaxが閾値Vdを超えている(Vmax>Vd)とき、配管7内に気泡9,9,…が発生している、と判定し、そうでないときは、正常である、と判定する。
【0037】
なお、図7においては、所定期間Tdは、第1反射像120が消滅した時点t4から第2反射像130が現れる時点t2までの間に設定されているが、これにマージンを加味してもよい。例えば、第1反射像120が消滅した時点t4よりも少し後の時点から、第2反射像130が現れる時点t2よりも少し前の時点まで、の期間が、当該所定期間Tdとして設定されてもよい。
【0038】
さらに、CPU36は、配管7内に気泡9,9,…が発生している、と判定したとき、上述の最大振幅Vmaxに基づいて、当該気泡9,9,…の大きさをも、判定する。詳しくは、上述の閾値Vdよりも大きい第2の閾値Vd’(Vd’>Vd)を設定すると共に、この第2の閾値Vd’よりもさらに大きい第3の閾値Vd”(Vd”>Vd’)を設定する。そして、最大振幅Vmaxと、これらの閾値Vd,Vd’およびVd”と、を比較する。ここで、例えば、最大振幅Vmaxが言わば第1の閾値Vdよりも大きく、かつ第2の閾値Vd’以下(Vd<Vmax≦Vd’)であるとき、気泡9,9,…は小サイズである、と判定する。そして、最大振幅Vmaxが第2の閾値Vd’よりも大きく、かつ第3の閾値Vd”以下(Vd’<Vmax≦Vd”)であるときには、気泡9,9,…は中サイズである、と判定し、当該最大振幅Vmaxが第3の閾値Vd”よりも大きい(Vmax>Vd”)ときに、気泡9,9,…は大サイズである、と判定する。なお、このサイズの判定は、大中小の3段階に限らず、2段階でも、4段階以上でもよい。
【0039】
また、CPU36は、配管7内に発生している気泡9,9,…の量をも、判定する。詳しくは、超音波送受信器20から所定回数Pの超音波100が発射されるたびに、上述した最大振幅Vmaxが閾値Vdを越える回数Qをカウントする。そして、超音波100の発射回数Pに対する当該カウント値Qの比率R(=Q/P)を求め、この比率Rから、気泡9,9,…の量を、例えば少量,中量および多量という3段階で、判定する。なお、この量の判定についても、3段階に限らず、2段階でも、4段階以上でもよい。また、この気泡9,9,…の量が、例えば少量以上のとき、或いは当該少量とは別の一定量以上のときに初めて、気泡9,9,…が発生しているものと判定してもよい。
【0040】
CPU36によるこれらの判定結果は、ディスプレイ40に表示される。具体的には、図8に示すように、当該ディスプレイ40の画面の上部左側に、気泡9,9,…の有無を表すランプマーク300が表示される。このランプマーク300は、例えば気泡9,9,…が発生していない場合には、緑色で表示され、当該気泡9,9,…が発生している場合には、赤色で表示される。従って、本第1実施形態の配管内部状態検査装置10を取り扱うオペレータは、このランプマーク300の表示色から、配管9内に気泡9,9,…が発生しているか否かを、直感的に認識することができる。
【0041】
そして、上述のランプマーク300の右横方に、気泡9,9,…の大きさを表す別のランプマーク310が表示される。このランプマーク310は、例えば気泡9,9,…が小サイズのときは、黄色で表示され、気泡9,9,…が中サイズのときは、橙色で表示される。そして、気泡9,9,…が大サイズのときは、当該ランプマーク310は赤色で表示される。従って、オペレータは、このランプマーク310の表示色から、気泡9,9,…の大きさを、直感的に認識することができる。なお、気泡9,9,…が発生していないときには、ランプマーク310は緑色で表示される。
【0042】
さらに、ランプマーク310の右横方に、気泡9,9,…の量を表すランプマーク320が表示される。このランプマーク320は、例えば気泡9,9,…の量が少ないときは、黄色で表示され、気泡9,9,…の量が中程度であるときは、橙色で表示される。そして、気泡9,9,…量が多いときは、当該ランプマーク320は赤色で表示される。従って、オペレータは、このランプマーク320の表示色から、気泡9,9,…の量を、直感的に認識することができる。なお、このランプマーク320もまた、気泡9,9,…が発生していないときには、緑色で表示される。
【0043】
そして、これらのランプマーク300,310および320の下方に、受信信号110を表す波形が、略リアルタイムで表示される。従って、オペレータは、この波形110からも、配管7内の状態を判定することができる。なお、この波形110の表示領域330の横軸に記されている時間の幅(レンジ)は、任意に変更することができる。また、当該表示領域330の縦軸に記されているゲインの幅も、任意に変更することができる。
【0044】
以上のように、本第1実施形態の配管内部状態検査装置10を用いることで、配管7内に気泡9,9,…が発生しているか否かの検査が可能となる。また、当該気泡9,9,…が発生しているときには、それらの大きさおよび量をも、知ることができる。これは、図1に示した気化冷却装置1を含むプラントを運営する上で、極めて有益である。例えば、必要に応じて、配管7の内径を大きくしたり、或いは当該配管7を長くしたりする等の、適宜の対策を講ずることができる。
【0045】
なお、本第1実施形態においては、図7に示した所定期間Tdにおける受信信号110の最大振幅Vmaxと閾値Vdとを比較して、この比較結果から配管7内に気泡9,9,…が発生しているか否かを判定することとしたが、これに限らない。例えば、当該所定期間Tdにおける受信信号110の信号レベルの絶対値を求め、この絶対値の最大値と任意の閾値とを比較し、または当該絶対値の平均値と任意の閾値とを比較し、この比較結果から気泡9,9,…の有無を判定してもよい。勿論、これ以外の判定手法を用いてもよい。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。
【0047】
上述の第1実施形態においては、受信信号110の第1反射像120と第2反射像130との間の所定期間Tdにおける信号レベルを監視することで、配管7内に気泡9,9,…が発生しているか否かを判定したが、本第2実施形態では、第2反射像130の振幅V2を監視することで、当該気泡9,9,…の有無を判定する。
【0048】
即ち、CPU36は、図9に示すように、第2反射像130の振幅V2の比較対象となる閾値Vsを設定する。この閾値Vsもまた、第1実施形態における閾値Vdと同様、受信信号110に含まれているノイズ成分の振幅Vnよりも大きく、かつ正常時の第2反射像130の振幅V2’よりも小さい値(Vn<Vs<V2’)とされる。また、当該閾値Vsは、CPU36によって自動設定されてもよいし、操作キー38によって任意に手動設定されてもよい。ただし、この第2実施形態における閾値Vsは、第1実施形態における閾値Vdよりも大きめ(Vs>Vd)に設定されるのが、好ましい。
【0049】
そして、CPU36は、第2反射像130の振幅V2を監視する。詳しくは、第2反射像130が現れた時点t2から所定の期間Tsにわたって、受信信号110の信号レベルを監視する。なお、図9においては、第2反射像130が現れた時点t2から当該第2反射像130が消滅する時点までが所定期間Tsとされているが、これに適当なマージンを加味してもよい。例えば、第2反射像130が現れた時点t2から、当該第2反射像130が消滅する時点よりも少し後の時点まで、の期間が、当該所定期間Tsとして設定されてもよい。
【0050】
CPU36は、この所定期間Tsにおける受信信号110の最大振幅Vmax’を求め、当該所定期間Tsにおける最大振幅Vmax’を第2反射像130の振幅V2とみなす。さらに、CPU36は、この第2反射像130の振幅V2(=Vmax’)と上述の閾値Vsとを比較する。そして、第2反射像130の振幅V2が閾値Vsよりも小さい(V2<Vs)とき、配管7内に気泡9,9,…が発生している、と判定し、そうでないときは、正常である、と判定する。
【0051】
また、CPU36は、配管7内に気泡9,9,…が発生している、と判定したとき、第2反射像130の振幅V2に基づいて、当該気泡9,9,…の大きさをも、判定する。詳しくは、上述の閾値Vsよりも小さい第2の閾値Vs’(Vs’<Vs)を設定すると共に、この第2の閾値Vs’よりもさらに小さい第3の閾値Vs”(Vs”<Vs’)を設定する。そして、第2反射像130の振幅V2と、これらの閾値Vs,Vs’およびVs”と、を比較する。ここで、例えば、第2反射像130の振幅V2が言わば第1の閾値Vsよりも小さく、かつ第2の閾値Vs’以上(Vs’≦V2<Vs)であるとき、気泡9,9,…は小サイズである、と判定する。そして、第2反射像130の振幅V2が第2の閾値Vs’よりも小さく、かつ第3の閾値Vs”以上(Vs”≦V2<Vs’)であるときには、気泡9,9,…は中サイズである、と判定し、第2反射像130の振幅V2が第3の閾値Vs”よりも小さい(V2<Vs”)ときには、気泡9,9,…は大サイズである、と判定する。
【0052】
併せて、CPU36は、第1実施形態のときと同じ要領で、配管7内に発生している気泡9,9,…の量を、3段階で判定する。そして、CPU36は、これらの判定結果を、図8に示したようにディスプレイ40に表示する。
【0053】
このように、本第2実施形態によっても、配管7内に気泡9,9,…が発生しているか否かの検査が可能であり、また、当該気泡9,9,…が発生しているときには、それらの大きさおよび量を知ることができる。
【0054】
なお、本第2実施形態においても、図9に示した所定期間Tsにおける受信信号110の最大振幅Vmax’(V2)に代えて、当該所定期間Tdにおける受信信号110の信号レベルの絶対値を求め、この絶対値の最大値と任意の閾値とを比較し、または当該絶対値の平均値と任意の閾値とを比較し、この比較結果から気泡9,9,…の有無を判定してもよい。勿論、これ以外の判定手法を用いてもよい。
【0055】
次に、本発明の第3実施形態について、説明する。
【0056】
本第3実施形態においては、第1実施形態で説明した受信信号110の第1反射像120と第2反射像130との間の所定期間Tdにおける最大振幅Vmaxと、第2実施形態で説明した第2反射像130の振幅V2(=Vmax’)と、の比K(=Vmax/V2)を求め、この比Kに基づいて、気泡9,9,…の有無を判定する。
【0057】
即ち、配管7内に気泡9,9,…が発生していない正常なとき、つまり受信信号110に第3反射像140が現れていないときは、上述の比Kは、略ゼロ(K≒0)であるが、配管7内に気泡9,9,…が発生して、受信信号110に第3反射像140が現れると、当該比Kは、大きくなる。そこで、CPU36は、この比Kと、所定の閾値と、を比較して、この比較結果から、気泡9,9,…の有無を判定する。
【0058】
そして、配管7内に気泡9,9,…が発生している、と判定したとき、CPU36は、第1実施形態および第2実施形態と同様の手順で、上述の比Kと互いに異なる3つの閾値とを比較して、この比較結果から、気泡9,9,…の大きさを3段階で判定する。さらに、CPU36は、第1実施形態および第2実施形態と同じ要領で、気泡9,9,…の量を3段階で判定する。そして、これらの判定結果を、図8に示したようにディスプレイ40に表示する。
【0059】
なお、以上の各実施形態においては、配管7が、垂直方向に沿って延伸するいわゆる垂直配管である場合について説明したが、これに限らない。即ち、配管7が、水平方向に沿って延伸するいわゆる水平配管である場合や、それ以外の方向に沿って延伸する場合であっても、本発明を適用することができる。また、配管7は、円管に限らず、楕円管や角管等の他の形状のものであってもよい。
【0060】
さらに、気泡9,9,…以外の異物(厳密には流動している異物)の有無を検査する場合にも、本発明を適用することができる。そして、気化冷却装置1を含むプラントに限らず、例えば上述した蒸気プラントにも本発明を適用することができ、さらには油や海水等を流通させるプラント等において砂や砂利等の異物の有無を検査する場合にも本発明を適用することができる。
【0061】
また、図8に示したディスプレイ40の表示画面は、飽くまでも一例であって、これに限定されるものではない。特に、ランプマーク300によって表される気泡9,9,…の有無については、当該ランプマーク300のような視覚的情報に限らず、アラーム音等の聴覚的情報によって表されるようにしてもよい。勿論、他のランプマーク310および320によって表される気泡9,9,…の大きさや量についても、同様の聴覚的情報によって表されるようにしてもよい。
【0062】
そして、上述の各実施形態を適宜に組み合わせてもよい。このようにすれば、より信頼性の高い検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明が用いられるプラントの一例を示す図解図である。
【図2】図1における一部を拡大して示す図解図である。
【図3】本発明の第1実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態の使用状態を示す図解図である。
【図5】同実施形態における超音波送受信器から発射される超音波と当該超音波送受信器による受信信号とを示す図解図である。
【図6】同実施形態の使用状態を示す図4とは別の図解図である。
【図7】同実施形態の基本的原理を説明するための図解図である。
【図8】同実施形態におけるディスプレイの一表示例を示す図解図である。
【図9】本発明の第2実施形態の基本原理を説明するための図解図である。
【符号の説明】
【0064】
7 配管
8 冷却水
9 気泡
10 配管内部状態検査装置
20 超音波送受信器
30 装置本体
36 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が充溢している状態にあることが通常である配管の外面に密着され該配管の内部に向けて超音波を送信する送信手段と、
前記送信手段の近傍または該送信手段と一体に設けられ前記超音波の反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段から出力される受信信号に基づいて前記配管の内部に前記流体以外の異物が存在するか否かを判定する判定手段と、
を具備する、配管内部状態検査装置。
【請求項2】
前記配管の内部に前記流体が充溢している状態にあるときの前記受信信号は、前記配管の前記送信手段が位置する側の内面によって前記超音波が反射されることによる第1反射像と、該配管の該送信手段が位置する側とは反対側の内面によって該超音波が反射されることによる第2反射像と、を含み、
前記判定手段は前記受信信号のうちの前記第1反射像と前記第2反射像との間の所定期間における信号レベルに基づいて判定を行う、
請求項1に記載の配管内部状態検査装置。
【請求項3】
前記判定手段は前記異物が存在すると判定したとき前記所定期間における前記受信信号の信号レベルに基づいて該異物の大きさをも判定する、
請求項2に記載の配管内部状態検査装置。
【請求項4】
前記配管の内部に前記流体が充溢している状態にあるときの前記受信信号は、前記配管の前記送信手段が位置する側の内面によって前記超音波が反射されることによる第1反射像と、該配管の該送信手段が位置する側とは反対側の内面によって該超音波が反射されることによる第2反射像と、を含み、
前記判定手段は前記第2反射像の信号レベルに基づいて判定を行う、
請求項1に記載の配管内部状態検査装置。
【請求項5】
前記判定手段は前記異物が存在すると判定したとき前記第2反射像の信号レベルに基づいて該異物の大きさをも判定する、
請求項4に記載の配管内部状態検査装置。
【請求項6】
前記送信手段は略周期的に前記超音波を送信し、
前記受信手段は前記送信手段から前記超音波が送信されるたびに前記反射波を受信し、
前記判定手段は前記受信手段によって前記反射波が受信されるたびに判定を行い、
前記判定手段によって前記異物が存在すると判定される頻度を求める頻度導出手段をさらに備える、
請求項1ないし5のいずれかに記載の配管内部状態検査装置。
【請求項7】
前記異物は気泡である、
請求項1ないし6のいずれかに記載の配管内部状態検査装置。
【請求項8】
内部に流体が充溢している状態にあることが通常である配管の外面に密着された送信手段から該配管の内部に向けて超音波を送信する送信過程と、
前記送信手段の近傍または該送信手段と一体に設けられた受信手段によって前記超音波の反射波を受信する受信過程と、
前記受信手段から出力される受信信号に基づいて前記配管の内部に前記流体以外の異物が存在するか否かを判定する判定過程と、
を具備する、配管内部状態検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−101822(P2010−101822A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275324(P2008−275324)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】