説明

配管接続検査装置

【課題】簡易、かつ、確実に消火設備の配管系路の接続状態を検査することができる配管接続検査装置を提供すること。
【解決手段】噴射ノズル5から消火剤貯蔵容器3に貯蔵されている消火剤を噴射する消火設備1の配管系路7の接続状態を検査するもので、検査を行う配管系路7に配設された噴射ノズル5に対向して配置可能とした音波出力手段2Bと、消火剤貯蔵容器3と噴射ノズル5とを接続する配管系路7に設けた検査用開口部40に配置可能とした、音波出力手段2Bから出力された音波を受信し、受信した音波を表示する音波受信表示手段2Aとから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管接続検査装置に関し、特に、消火設備の配管系路の接続状態を検査する配管接続検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、噴射ノズルから消火剤貯蔵容器に貯蔵されている不活性消火剤ガス(窒素、二酸化炭素、ハロン、HFC−227ea、FK−5−1−12、IG−55、IG−541等)等の消火剤を噴射する消火設備において、消火設備の配管系路の接続状態を検査する場合には、実際にガスを放出する通気試験を行うか、目視によって配管を追っていく目視確認が一般的に行われている。
【0003】
ところで、実際にガスを放出して配管系路の接続状態を検査する場合、ガスの放出に手数を要し、コストが嵩むという問題があった。
【0004】
一方、これらの二酸化炭素やハロンガス等の不活性ガスを使用する消火設備は、1つの消火設備に多くの消火対象区画を有する場合が多く、また、配管系路が複雑に入り組んでいたり、配管が天板内に配置されていたりすることが多いため、目視によって配管系路の接続状態を検査する場合、配管が天板を越えているときには、目視によって配管を追うことができない場合があるとともに、配管系路が複雑に入り組んでいるところでは、人的ミスによって、配管系路を間違って認識してしまう問題があった。
【0005】
このほか、ハンマ等の打撃手段によって配管を叩き、発生した打撃音をガスメータ付近に取り付けた音センサによって検知するガス配管の接続確認方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
しかしながら、配管を伝わる打撃音は減衰が大きく、また、打撃音は接触している配管にも伝わるため、確実性に乏しいという問題があった。また、一般的に消火設備の消火剤を噴射する噴射ノズルは、天井面に配設されることが多く、噴射ノズル近傍の配管を叩くとしても作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−365371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の配管接続検査方法が有する問題点に鑑み、簡易、かつ、確実に消火設備の配管系路の接続状態を検査することができる配管接続検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の配管接続検査装置は、消火設備の配管系路の接続状態を検査する配管接続検査装置であって、検査を行う配管系路の一端側に形成された開口部に対向して配置可能とした音波出力手段と、他端側に形成された開口部に配置可能とした、前記音波出力手段から出力された音波を受信し、該受信した音波を表示する音波受信表示手段とからなることを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記音波出力手段に、配管系路に形成された開口部に配設された噴射ノズルを覆うことができる音波出力部を配設することができる。
【0011】
また、前記音波を受信する側の開口部に、消火設備の稼働を検出するための圧力取出口を用いることができる。
【0012】
また、前記音波出力手段から出力する音波の周波数に、1000Hz以下の音波を使用することができる。
【0013】
前記音波受信表示手段が、音波出力手段から出力される音波を選択的に受信する機能を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配管接続検査装置によれば、配管接続検査装置を、検査を行う配管系路の一端側に形成された開口部に対向して配置可能とした音波出力手段と、他端側に形成された開口部に配置可能とした、前記音波出力手段から出力された音波を受信し、該受信した音波を表示する音波受信表示手段とから構成することにより、音波出力手段から出力された音波が音波受信表示手段に表示されることで、簡易、かつ、確実に消火設備の配管系路の接続状態を検査することができるとともに、ガス放出の必要がないから検査コストが嵩むことがなく、また、目視によって配管を追うことができない箇所がある配管系路であっても確実に検査を行うことができる。
【0015】
また、前記音波出力手段に、配管系路に形成された開口部に配設された噴射ノズルを覆うことができる音波出力部を配設することにより、形状やサイズの異なる噴射ノズルに合わせた音波出力部を配設した音波出力手段を使って、効率よく、噴射ノズルから音波を配管系路内に出力することができる。
【0016】
また、前記音波を受信する側の開口部に、消火設備の稼働を検出するための圧力取出口を用いることにより、音波受信表示手段の配置を簡単に行うことができ、作業を簡易、かつ、確実に行うことができる。
【0017】
また、前記音波出力手段から出力する音波の周波数に、1000Hz以下の音波を使用することにより、音波の減衰率が低く、長い配管系路であっても確実に検査を行うことができる。
【0018】
また、前記音波受信表示手段が、音波出力手段から出力される音波を選択的に受信する機能を備えるようにすることにより、ノイズの影響を低減し、正確な検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の配管接続検査装置の一実施例を示し、配管接続検査装置を設置した状態の消火設備を有する建造物の概略図である。
【図2】同配管接続検査装置の音波出力手段の音波出力部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】同配管接続検査装置の概略説明図を示す。
【図4】同配管接続検査装置を用いて行う、配管系路の接続状態の検査手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の配管接続検査装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図4に、本発明の配管接続検査装置の一実施例を示す。
図1は、配管接続検査装置2を設置した状態の消火設備1を有する建造物の概略図を示す。
この配管接続検査装置2を使用する消火設備1は、複数本(本実施例においては6本。)の消火剤貯蔵容器3A、3B、・・・、3Fを備え、各消火剤貯蔵容器3には、消火剤貯蔵容器弁30を介して連結管31を接続し、さらに連結管31を1本の集合管70に接続し、この集合管70を複数(本実施例においては3つ。)の消火対象区画8A、8B、8Cまで延設した主配管7A、7B、7Cに接続するようにしている。
主配管7A、7B、7Cには、選択弁4A、4B、4Cを配設し、消火対象区画8A、8B、8Cに配備された火災検知器(図示省略)が検知した火災発生の検知信号に応じて、選択弁4A、4B、4Cに配備した不還弁を付設した選択弁開放装置(図示省略)に、それぞれの選択弁開放装置と対応した、起動用ガスを充填(本実施例においては二酸化炭素を液体状態で充填している。)した起動用ガス容器6A、6B、6Cから起動用ガスを送出し、対応する選択弁4を開放することで、消火対象区画8A、8B、8Cに選択的に不活性消火剤ガスを送るようにしている。
【0022】
そして、消火対象区画8A、8B、8Cまで延設した主配管7A、7B、7Cを、消火対象区画8A、8B、8Cにそれぞれ配設した枝管7a、7b、7c、7dに接続し、この枝管7a、7b、7c、7dを消火対象区画8A、8B、8C内の適所に複数個(本実施例においては4個。)配設した噴射ノズル5に接続し、各消火剤貯蔵容器3から送られる不活性消火剤ガスを各消火対象区画8に放出するようにしている。
【0023】
消火設備1に使用する消火剤は、本実施例においては、不活性消火剤ガスを使用し、不活性消火剤ガスとして、例えば、窒素ガスを使用する。
そして、これを加圧して高圧ガス容器に充填した状態(特に限定されるものではないが、例えば、35℃において、30MPa。)で消火設備内に保管することにより、消火剤貯蔵容器3として利用する。
【0024】
配管接続検査装置2は、噴射ノズル5から消火剤貯蔵容器3に貯蔵されている消火剤を噴射する消火設備1の配管系路7(選択弁4と噴射ノズル5とを接続する主配管7A、7B、7C(枝管7a、7b、7c、7dを含む。))の接続状態(選択弁4と消火対象区画8(噴射ノズル5)との対応関係)を検査するもので、検査を行う配管系路7に配設された噴射ノズル5に対向して配置可能とした音波出力手段2Bと、消火剤貯蔵容器3と噴射ノズル5とを接続する配管系路7に設けた音波を受信する側の開口部40(以下、「検査用開口部」という。)に配置可能とした、音波出力手段2Bから出力された音波を受信し、受信した音波を表示する音波受信表示手段2Aとから構成するようにしている。
【0025】
音波出力手段2Bは、噴射ノズル5を覆うことができる音波出力部23を着脱可能に配設するようにして、形状やサイズの異なる噴射ノズル5に合わせた音波出力部23を配設した音波出力手段2Bを使って、効率よく、音波を噴射ノズル5を介して配管系路7内に出力することができるようにしている。
また、音波出力部23は、図2に示すように、スピーカ23aとスピーカ23aから出力される音波の方向を規制するホーン部23bとスピーカ23a及びホーン部23bを揺動可能に固定するコ字状の支持部材23cとからなり、本実施例においては、脚立等を用いることなく、ホーン部23bの先端周縁を天井面に当接させることによって、天井面に配設される噴射ノズル5をホーン部23bによって簡単に覆うことができるように、支持部材23cを支持棒24の先端に取り付けるようにしている。
そして、スピーカ23aと、音波出力ユニット22aを内接した筐体22とを信号線Lによって接続し、音波出力ユニット22aから出力される音波信号をスピーカ23aから音波として流すようにする。
また、音波出力手段2Bの筐体22には、図3に示すように、供給電源22bを内蔵するとともに、音波出力ユニット22aをオンオフする音波出力スイッチ22cを備えている。この音波出力スイッチ22cは、後述するように、遠隔操作によってオンオフすることができるように構成されている。
【0026】
音波受信表示手段2Aは、検査用開口部40に設置する音波受信部20と、受信した音波を解析し、表示可能なデジタル信号に変換する変換器及びデジタル信号に変換された音波を表示する表示部を備えた筐体21とからなり、両者は信号線によって接続されている。
【0027】
この場合、音波出力手段2Bから出力する音波の周波数に、1000Hz以下(周波数の下限は、スピーカ23aによって出力可能な周波数。)、好ましくは、100〜500Hzの音波を使用するようにしている。
これにより、音波出力手段2Bから出力する音波の減衰率が低く、長い配管系路7であっても確実に検査を行うことができる。
なお、音波出力手段2Bから出力する音波の波形としては、正弦波、矩形波等の任意の波形を用いることができる。
また、トーンバースト信号波等の信号波を用いることによって、より確実に検査を行うことができる。
【0028】
また、この場合、音波受信表示手段2Aは、音波出力手段2Bから出力される音波を選択的に受信する機能、例えば、バンドパスフィルタを備えることによって、音波出力手段2Bから出力される特定の周波数の音波のみを受け入れる機能を備えるようにすることができる。
これにより、ノイズの影響を低減し、正確な検査を行うことができる。
【0029】
また、音波受信表示手段2Aの音波受信部20を配置する配管系路7に設けた検査用開口部40は、選択弁4と噴射ノズル5との対応関係が判別できる箇所に設けるようにするが、通常、消火設備1に配設される選択弁4の圧力取出口40aを利用することができる。
すなわち、選択弁4の2次側(主配管側)には、消火設備1の稼働(選択弁4の開閉)を検知するための圧力スイッチ用の圧力取出口40aが形成されており(この圧力取出口40aは、選択弁4に直接又はその近傍に設けられるのが一般的である。)、この圧力取出口40aを利用することによって、消火設備1に対して、別途、検査用開口部40を形成する必要がなく、音波受信表示手段2Aの配置を簡単に行うことができる。
【0030】
次に、この配管接続検査装置2を使用して、消火剤を噴射する消火設備1の配管系路7の接続状態(選択弁4と消火対象区画8(噴射ノズル5)との対応関係)を検査する手順について、図4に示すフロー図に基づいて説明する。
なお、検査の作業手順として、本実施例においては、音波出力手段2Bの音波出力部23を噴射ノズル5で覆うように対向して設置し、音波受信表示手段2Aを確認する作業者が遠隔操作によって音波出力手段2Bを操作して音波を出力しつつ、音波受信表示手段2Aを確認して、配管系路7の接続状態(選択弁4と消火対象区画8(噴射ノズル5)との対応関係)を検査するようにした作業手順で説明するが、音波出力手段2Bの音波出力部23のホーン部23bで噴射ノズル5を覆って音波を発信する作業者と、発信された音波を受信する音波受信表示手段2Aを確認する作業者同士が無線通信等を利用して連絡を取りながら検査を進めることもできる。
【0031】
まず、消火対象区画8Aを消火する際に開放する選択弁4を確認するための、配管系路7の検査は、消火対象区画8Aに配設される複数の噴射ノズル5のうちのいずれか一箇所の噴射ノズル5(本実施例においては、枝管7aに配設されている噴射ノズル5)を、音波出力手段2Bの音波出力部23のホーン部23bで覆うようにして設置する。
このとき、スピーカ23a及びホーン部23bを支持部材23c(支持棒24)に対して揺動させ、ホーン部23bの先端周縁を天井面に当接させることによって、ホーン部23bで噴射ノズル5を覆うようにして、噴射ノズル5に対して音波が確実に入射するようにする。
【0032】
次に、作業者は、選択弁4A、4B、4Cのいずれかの圧力取出口40aに音波受信表示手段2Aの音波受信部20を設置する。
【0033】
そして、遠隔操作によって音波出力手段2Bから音波を出力し、音波受信表示手段2Aの筐体21の表示部を確認する。
【0034】
表示部に所定の音波信号が表示されるまで作業を繰り返し、消火対象区画8Aと選択弁4Aとの対応関係を把握し、配管系路7(ここでは、選択弁4と噴射ノズル5とを接続する主配管7A)の接続状態の検査を完了する。
【0035】
以上、本発明の配管接続検査装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、音波出力手段と音波受信表示手段の配置位置を逆に設定するようにしたり、消火設備の配管系路に形成された開口部に噴射ノズルを取り付ける前の施工時や消火剤に液体、泡、粉体等を使用する消火設備における配管系路の接続状態を検査にも適用できる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の配管接続検査装置は、簡易、かつ、確実に配管系路の接続状態を検査することができるという特性を有していることから、消火剤を噴射する消火設備等の各種消火設備の配管系路の接続状態を検査する用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 消火設備
2 配管接続検査装置
2A 音波受信表示手段
2B 音波出力手段
23 音波出力部
3 消火剤貯蔵容器
4 選択弁
5 噴射ノズル
7 配管系路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火設備の配管系路の接続状態を検査する配管接続検査装置であって、検査を行う配管系路の一端側に形成された開口部に対向して配置可能とした音波出力手段と、他端側に形成された開口部に配置可能とした、前記音波出力手段から出力された音波を受信し、該受信した音波を表示する音波受信表示手段とからなることを特徴とする配管接続検査装置。
【請求項2】
前記音波出力手段に、配管系路に形成された開口部に配設された噴射ノズルを覆うことができる音波出力部を配設したことを特徴とする請求項1記載の配管接続検査装置。
【請求項3】
前記音波を受信する側の開口部に、消火設備の稼働を検出するための圧力取出口を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の配管接続検査装置。
【請求項4】
前記音波出力手段から出力する音波の周波数に、1000Hz以下の音波を使用することを特徴とする請求項1、2又は3記載の配管接続検査装置。
【請求項5】
前記音波受信表示手段が、音波出力手段から出力される音波を選択的に受信する機能を備えてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の配管接続検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57588(P2013−57588A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195933(P2011−195933)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000168676)株式会社コーアツ (14)
【Fターム(参考)】