説明

配管支持金具の取付具

【課題】配管支持金具を取付金具に取り付ける作業を容易化するとともに、必要以上のナットを用意することなく配管を建物の壁等に取り付けることができるようにする。
【解決手段】この取付金具2は、配管用の支持金具1を、ボルト7及びナット8を用いて建物の壁等に固定するための金具であり、ベース部10と取付部11とを備えている。ベース部10は建物に固定される。取付部11は、ベース部10の表面から突出して設けられ、突出方向に沿ってボルト7が貫通可能な長孔11aを有するとともに、長孔11aと外部とを連通しかつボルト7が通過可能な溝11bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付具、特に、配管用の支持金具を、少なくとも1対のボルト及びナットを用いて建物の壁等に固定するための取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションや戸建ての建物の壁にエアコン等の配管を支持するために、配管支持金具及びその取付具が用いられる(例えば特許文献1)。配管支持金具は、配管の外周を囲むように形成された円形のバンド部と、このバンド部から径方向に突出する締着部と、を備えている。そして、締着部には、例えば2対のボルト及びナットが仮組み付けされており、このボルト及びナットによって締着部、ひいては配管支持金具全体が取付具に固定される。
【0003】
一方で、取付具は、横方向に延びる板状のベース部と、ベース部に直交してベース部表面から突出する取付部を有している。取付部には長孔が形成されており、この長孔に、配管支持金具の2本のボルトを通し、これらのボルトにナットを締め付けることにより、取付部に配管支持金具が固定される。なお、ベース部には、両端部に貫通孔が形成されており、この貫通孔を通過する固定部材により、取付具自体が建物の壁等に固定されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−220647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような配管支持金具及び取付具を建物に固定する場合は、まず、取付具を建物の壁等に固定する。一方で、配管支持金具のボルト及びナットを取り外し、円形のバンド部に配管を通す。そして、この状態で、配管支持金具の締着部を取付具の取付部に当て、ボルト及びナットにより配管及び配管支持金具を取付具に固定する。これにより、配管が建物の壁等に支持されることになる。
【0005】
以上のような作業を行う際に、配管支持金具に当初仮組み付けされていたボルト及びナットをいったん配管支持金具から取り外す必要がある。そして、配管支持金具に配管を通した状態で、これらを取付具が設けられている位置まで持って行き、先のボルト、ナットを再度締め付ける必要がある。
【0006】
しかし、取付具は高所に取り付けられている場合が多く、はしごを使った作業が多いために、配管支持金具の締着部を取付具の取付部に当ててボルトにナットを締め付ける作業が困難になる。このため、特にナットを頻繁に落下させてしまうことになり、必要以上に多数のナットを用意しておく必要がある。
【0007】
本発明の課題は、配管支持金具を取付具に取り付ける作業を容易化するとともに、必要以上のナットを用意することなく配管を建物の壁等に取り付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る取付具は、配管用の支持金具を、少なくとも1対のボルト及びナットを用いて建物の壁等に固定するための金具であり、ベース部と取付部とを備えている。ベース部は建物に固定される。取付部は、ベース部の表面から突出して設けられ、突出方向に沿ってボルトが貫通可能な長孔を有するとともに、長孔と外部とを連通しかつボルトが通過可能な溝が形成されている。
【0009】
この取付具を用いて配管を建物に固定する場合は、まず取付具を建物の壁等に固定しておく。そして、配管支持金具に配管を装着し、この状態で、配管支持金具のボルト及びナットを仮組み付けしておく。そして、配管及び配管支持金具を取付具の位置まで持って行き、ボルトにナットを仮組み付けしたまま、ボルトを取付具の溝を通して取付部の溝に挿入する。その後、ナットを締め込み、配管支持金具及び配管を取付具に強固に固定する。
【0010】
ここでは、取付具の取付部には、外部から長孔に続く溝が形成されているので、配管支持金具のボルト及びナットを仮組み付けしたまま、すなわち、ボルトからナットを取り外すことなく、配管支持金具及び配管を取付具に装着することができる。したがって、取付作業中にナットが落下することはなく、作業が容易になるとともに、必要以上のナットの使用を抑えることができる。
【0011】
請求項2に係る取付具は、請求項1の取付具において、取付部の溝は、取付部の突出する側からベース部に向かって斜めに傾斜している。
【0012】
ここでは、建物に取り付けられた取付具の外側(建物から離れている側)から内側に向かって溝が傾斜しているので、配管支持金具のボルトをスムーズに取付具の長孔に導き入れることができる。
【0013】
請求項3に係る取付具は、請求項1又は2の取付具において、取付部の長孔には、配管支持金具を取付部に固定するための2本のボルトが貫通する。そして、取付部に2本のボルトが装着された状態において、長孔の2本のボルトの間には長孔に突出する突起が形成されている。
【0014】
ここでは、2本のボルトを長孔内に挿入した状態で、それらの間には突起が存在している。すなわち、突起が形成された部分の溝幅が他の部分に比較して狭くなっている。このため、長孔内でボルトが移動しにくくなり、締め付け前の状態が安定し、固定のための締め付け作業がより容易になる。
【0015】
請求項4に係る取付具は、請求項1から3のいずれかに記載の取付具において、ベース部及び取付部は、帯状プレート部材を折り曲げ加工により形成されたものである。この場合は、取付具の製造が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明では、配管支持金具に配管を通し、かつ配管支持金具のボルト及びナットを仮組み付けしたままの状態で、配管支持金具を取付具に取り付けることができるので、配管支持金具を取付具に固定するための作業が容易になる。しかも、作業中のナットの落下がなくなるので、必要以上のナットを用意する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に本発明の一実施形態による配管支持金具1及び取付具2を示す。配管支持金具1にはエアコン等の配管が装着され、取付具2は建物の壁等に固定される。
【0018】
配管支持金具1は帯状の板金をプレス加工等により形成されたものである。この配管支持金具1は、ほぼ円形でC字状のバンド部5と、環状両端部から径方向外方に延びる1対の締着部6と、を有している。バンド部5の幅方向中央には、外方に突出する凸部5aがプレス加工により形成されている。1対の締着部6には、それぞれ2つの貫通孔が形成されており、これらの貫通孔には、それぞれボルト7が貫通するとともに、ボルト7にはナット8が仮組み付けされている。
【0019】
取付具2は、図1及び図2に示すように、配管支持金具1と同様に、2枚の帯状の板金を折り曲げ加工し、これらをスポット溶接や接着剤等により固定して形成されたものである。この取付具2は、建物の壁(図示せず)に沿って配置されるベース部10と、ベース部10の表面から、表面に対して直交するように突出して形成された取付部11とを有している。
【0020】
ベース部10には、左右にそれぞれ1つずつの貫通孔10a,10bが形成されており、図示しない固定用のビス等がこの貫通孔10a,10bを貫通し、建物の壁等にねじ込まれる。
【0021】
取付部11には、突出方向に長い長孔11aが形成されている。この長孔11aの長さは配管支持金具1の2本のボルト7のピッチ(間隔)より長く、また長孔11aの幅はボルト7の径より大きく形成されている。また、この取付部11には長孔11aと外部(長孔11aの外)とを連通する溝11bが形成されている。この溝11bはボルト7が通過可能な幅を有している。また、この溝11bは取付部11の先端側からベース部10に向かって傾斜するように形成されている。
【0022】
さらに、この取付部11において、長孔11aと溝11bとの境界部に対向する位置に、突起11cが形成されている。この突起11cは、配管支持金具1が取付具2に装着された状態で、2本のボルト7の間に位置するように配置されている。なお、この突起11cは、長孔11aの縁部から内側に突出しているが、突起11cに対向する部分には溝11bが形成されているので、ボルト7はこの突起11cを越えて長孔11a内に配置されることが可能である。
【0023】
また、取付部11において、溝11bの先端側の壁において、外側縁との境界部11dは曲面になっており、溝11b内にボルト7を挿入するときの引っかかりを少なくしている。さらに、同様に溝11bの先端側の壁において、内側縁との境界部には長孔11a内部に突出する突起11eが形成されている。この突起11eは、後述するが、突起11cと同様の目的で形成されたものである。
【0024】
次に、以上の配管支持金具1及び取付具2を用いて配管を建物の壁等に固定する作業について説明する。
【0025】
まず取付具2を建物の壁等に固定しておく。一方、配管支持金具1のナット8を取り外し、配管を配管支持金具1のバンド部5内に挿入する。なお、ナット8を取り外すことなく配管をバンド部5内に挿入して、配管支持金具1のバンド部5に配管を支持させることも可能である。
【0026】
次に、配管支持金具1のバンド部5内に配管を取り付けた状態で、かつボルト7及びナット8を仮組み付けした状態で、配管支持金具1及び配管を取付具2が固定された場所に持って行く。このとき、配管支持金具1において、1対の締着部6の間に、取付具2の取付部11の厚み以上の隙間を確保しておくことが必要である。
【0027】
以上のような状態で、配管支持金具1の1対の締着部6で取付具2の取付部11を挟むようにして、配管支持金具1の2本のボルト7のうちの先端側(外側)のボルト7を溝11bに挿入する。すなわち、ボルト7のうちの、1対の締着部6の間の部分が溝11bに挿入されることになる。そして、ボルト7を溝11bに沿って長孔11a内に挿入し、長孔11aの奥に押し込む。次に、配管支持金具1のもう一方のボルト7を、溝11aに挿入し、これを長孔11aにおいて、突起11cより先端側に配置する。
【0028】
以上のようにして2本のボルト7が長孔11a内に挿入された状態では、長孔11aの先端側に位置しているボルト7は、突起11c及び11eにより移動が規制される。したがって、ボルト7にナット8を締め付けない状態においても、取付具2に対する配管支持金具1の位置が安定する。
【0029】
次に、ナット8を締め付けて、配管支持金具1の締着部6を取付具2の取付部11に強固に固定する。これにより、配管支持金具1に支持された配管が、取付具2を介して建物の壁等に固定される。
【0030】
[他の実施形態]
(a)前記実施形態では、取付具として、ベース部と取付部とがT字形状に形成されているものを例にとって説明したが、取付具の形状はこれに限定されない。例えば、ベース部から取付部とは逆側にねじ足が形成されているような形状の取付具においても、本発明を適用できる。
【0031】
(b)前記実施形態では、取付具を2枚の帯状の板金を折り曲げ加工して形成したものを例にとって説明したが、取付具はこのような構成に限定されるものではない。例えば、1枚の帯状の板金を折り曲げ加工して取付具を形成しても良い。また、金型による樹脂成型品で取付具を構成してもよい。
【0032】
(c)前記実施形態では、溝11bを長孔11aの上方から斜めに形成したが、溝11bの形状、配置については前記実施形態に限定されない。例えば、長孔11aに沿って、すなわち長孔11aを長孔11aが延びる方向に延長して溝とし、この溝を通して外部と連通するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による配管支持金具及び取付具の外観斜視図。
【図2】前記取付具の側面図。
【符号の説明】
【0034】
1 配管支持金具
2 取付具
6 締着部
7 ボルト
8 ナット
10 ベース部
11 取付部
11a 長孔
11b 溝
11c 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管用の支持金具を、少なくとも1対のボルト及びナットを用いて建物の壁等に固定するための取付具であって、
建物に固定されるベース部と、
前記ベース部の表面から突出して設けられ、突出方向に沿って前記ボルトが貫通可能な長孔を有するとともに、前記長孔と外部とを連通しかつ前記ボルトが通過可能な溝が形成された取付部と、
を備えた配管支持金具の取付具。
【請求項2】
前記取付部の溝は、前記取付部の突出する側から前記ベース部に向かって斜めに傾斜している、請求項1に記載の配管支持金具の取付具。
【請求項3】
前記取付部の長孔には、前記配管支持金具を前記取付部に固定するための2本のボルトが貫通し、
前記取付部に前記2本のボルトが装着された状態において、前記長孔の前記2本のボルトの間には前記長孔に突出する突起が形成されている、
請求項1又は2に記載の配管支持金具の取付具。
【請求項4】
前記ベース部及び前記取付部は、帯状プレート部材を折り曲げ加工により形成されたものである、請求項1から3のいずれかに記載の配管支持金具の取付具。

【図1】
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【図2】
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