説明

配管洗浄ノズル用支持具及び配管洗浄方法

【課題】簡素な構造で壊れにくく、安価に製造できるにもかかわらず、それまでの配管洗浄ノズルを用いて配管内の洗い残しを防ぐとともに、洗い落とした付着物が確実に後方へ流されるようにすることも可能な配管洗浄ノズル用支持具を提供する。
【解決手段】洗浄ホース10の先端に接続されて洗浄ホース10により供給される水を後方に射出する際の反力により前方へ自走しながら配管内を洗浄する配管洗浄ノズル20を配管内における所定高さで支持するための配管洗浄ノズル用支持具30を、複数の円形フレームα,α,β,βを組み合わせることによって概略球形とされた球状フレーム体31と、球状フレーム体31の中心付近で配管洗浄ノズル20をその軸回りに回転可能な状態で保持するノズル保持部32とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄ホースの先端に接続されて該洗浄ホースにより供給される水を後方に射出する際の反力により前方へ自走しながら配管内を洗浄する配管洗浄ノズルを配管内における所定高さで支持するための配管洗浄ノズル用支持具と、該配管洗浄ノズル用支持具を用いた配管洗浄方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の敷地内には、各種の配管が敷設されている。これらの配管は、使用を重ねるうちに、その内面にスラッジなどの付着物が堆積していき、そのうち、配管としての機能を発揮できなくなるおそれがある。このため、配管内は、定期的に洗浄する必要がある。ところが、人が入ることができない、あるいは無理な姿勢をとらなければ人が入ることができないような小さな径(具体的には内径が150cm以下)の配管の洗浄作業は容易ではない。
【0003】
このため、従来は、図5に示すように、先端に配管洗浄用ノズル20を接続した洗浄ホース10を配管40内に導入し、洗浄ホース10で供給される水50を配管洗浄用ノズル20から斜め後方へ射出しながら配管40の内面の付着物60を洗浄することが行われている。配管洗浄ノズル20は、水50を斜め後方へ射出する際の反力により、配管40内を前方(図5の矢印Aの向き)へ自走していく。この自走式の配管洗浄ノズル20を用いると、人が入ることのできないような小さな径の配管40内であっても洗浄することができる。
【0004】
しかし、この種の自走式の配管洗浄ノズル20でも、配管40の内径によっては、配管40の天井面付近に洗い残し(図5の符号61)が発生するおそれがあった。というのも、この種の自走式の配管洗浄ノズル20は、配管40の内面における最下部(底面)を移動するようになるため、配管洗浄ノズル20から射出された水50は、配管洗浄ノズル20から近い場所にある配管40の底面付近には強く当たるものの、配管洗浄ノズル20から遠い場所にある配管40の天井面には強く当たらないからである。配管洗浄ノズル20の寸法や、それから射出される水50の圧力によっても異なるが、配管40の内径が80cm以上である場合に、このような洗い残し61が発生しやすくなる。
【0005】
ところで、これまでには、配管の内面の周方向に沿って回転しながら前方へ自走していく配管洗浄ノズルも提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、特許文献1の配管洗浄ノズルは、配管の中心方向に水を射出する際の反力により、配管洗浄ノズルを配管の内面に押し付けるようになっており、配管洗浄ノズルから射出された水は、配管洗浄ノズルから遠い場所に当たるようになる。したがって、配管の天井面付近に限らず、洗い残しが発生するおそれがある。また、付着物によって配管の内面に大きな凹凸が形成されているような場合には、配管洗浄ノズルがその凹凸に引っ掛かるおそれもある。
【0006】
また、これまでには、自走台車と、該自走台車に積載された多関節式アームと、該多関節式アームに支持された配管洗浄ノズル(洗浄手段)とを備えた配管洗浄装置も提案されている(例えば、特許文献2)。この種の配管洗浄装置では、多関節式アームを遠隔操作することにより、配管洗浄ノズルの向きを制御することが可能であり、洗い残しを防ぐことも可能である。しかし、この種の配管洗浄装置には、部品点数が多く、高価である、という欠点がある。また、多関節式アームなど、複雑な機構や、それを制御するための制御手段など、電子部品を備えるものであるため、壊れやすいという欠点もある。さらに、洗い落とされた付着物は、その回収口付近まで配管内を流さなければならないが、この種の配管洗浄装置では、洗い落とされた付着物が自走台車の部分に引っ掛かって配管内を流れにくくなるという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−314081号公報
【特許文献2】実登第3027120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素な構造で壊れにくく、安価に製造できるにもかかわらず、配管内の洗い残しを防ぐことができ、洗い落とした付着物が確実に後方へ流れるようにすることができるとともに、それまで使用していた配管洗浄ノズルを切り替えることなくそのまま使用することも可能な配管洗浄ノズル用支持具を提供するものである。また、この配管洗浄ノズル用支持具を備えた配管洗浄方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、洗浄ホースの先端に接続されて該洗浄ホースにより供給される水を後方に射出する際の反力により前方へ自走しながら配管内を洗浄する配管洗浄ノズルを配管内における所定高さで支持するための配管洗浄ノズル用支持具であって、複数の円形フレームを組み合わせることによって概略球形とされた球状フレーム体と、該球状フレーム体の中心付近で配管洗浄ノズルをその軸回りに回転可能な状態で保持するノズル保持部とを備えたことを特徴とする配管洗浄ノズル用支持具を提供することによって解決される。
【0010】
これにより、配管洗浄ノズルを配管内で所定高さに保つことができるので、配管の天井面にも水が強く当たるようにすることが可能になり、洗い残しを防ぐことが可能になる。また、配管洗浄ノズルがノズル保持部に回転可能な状態で保持されるようにしたことに加えて、その全体を概略球形としたため、配管洗浄ノズル用支持具は、倒れることなく安定して配管内を自走することが可能である。さらに、球状フレーム体は、配管内の水流を遮りにくいので、洗い落とされた付着物を確実に後方へ送ることも可能になる。また、球状フレーム体は、配管の内面と滑らかに接触するため、配管洗浄ノズル用支持具が自走する際の抵抗力を低減することも可能である。
【0011】
ここで、「円形」とは、完全な円形だけでなく、楕円形など、円を押し潰したような形状をも含む概念であるものとする。したがって、「球形」には、回転楕円体(ラグビーボール形)など、球体を押し潰したような形状も含まれる。また、「概略球形」における「概略」とは、球状フレーム体を構成する各円形フレームがある共通の球面に一致するように配されていることをいう。この際、各円形フレームの厚みに相当する程度の誤差や、各円形フレームを接合するために必要な寸法の誤差は無視して考える。
【0012】
本発明の配管洗浄ノズル用支持具において、球状フレーム体の具体的な構造は、特に限定されない。しかし、球状フレーム体が、左右方向に所定間隔を隔てて略平行に配された少なくとも一対の円形フレームα,αと、前後方向に所定間隔を隔てて略平行に配された少なくとも一対の円形フレームβ,βとを組み合わせることによって概略球形とされたものであると好ましい。これにより、構造の簡素さと、強度とを両立することが可能である。
【0013】
このとき、円形フレームα,αを、円形フレームβ,βに対して外接した状態で固定すると好ましい。円形フレームα,αは、配管洗浄ノズル用支持具の自走方向に沿って配されるのであるが、この円形フレームα,αが円形フレームβ,βよりも外側に配されるようにすることにより、配管洗浄ノズル用支持具が配管内を自走する際に配管の底面から受ける抵抗を低減することが可能になるからである。
【0014】
また、上記課題は、上述した本発明の配管洗浄ノズル用支持具に配管洗浄ノズルを支持させて配管内を洗浄する配管洗浄方法を提供することによっても解決される。本発明の配管洗浄方法は、工場内の配管だけでなく、ビルや家屋における各種配管や、上下水管など、様々な配管を洗浄する際に使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、簡素な構造で壊れにくく、安価に製造できるにもかかわらず、配管内の洗い残しを防ぐことができ、洗い落とした付着物が確実に後方へ流れるようにすることができるとともに、それまで使用していた配管洗浄ノズルを切り替えることなくそのまま使用することも可能な配管洗浄ノズル用支持具を提供することが可能になる。また、この配管洗浄ノズル用支持具を備えた配管洗浄方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】洗浄ホースに取り付けられた配管洗浄ノズルを本発明の配管洗浄ノズル用支持具に支持させた状態を示した斜視図である。
【図2】洗浄ホースに取り付けられた配管洗浄ノズルを本発明の配管洗浄ノズル用支持具に支持させた状態を示した正面図である。
【図3】洗浄ホースに取り付けられた配管洗浄ノズルを本発明の配管洗浄ノズル用支持具に支持させた状態を示した側面図である。
【図4】洗浄ホースに取り付けられた配管洗浄ノズルを本発明の配管洗浄ノズル用支持具に支持させて配管内を洗浄している様子を配管の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【図5】従来の自走式の配管洗浄ノズルを用いて配管内を洗浄している様子を配管の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.配管洗浄ノズル用支持具の概要
本発明の配管洗浄ノズル用支持具の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、洗浄ホース10に取り付けられた配管洗浄ノズル20を本発明の配管洗浄ノズル用支持具30に支持させた状態を示した斜視図である。図2は、洗浄ホース10(図1を参照)に取り付けられた配管洗浄ノズル20を本発明の配管洗浄ノズル用支持具30に支持させた状態を示した正面図である。図3は、洗浄ホース10に取り付けられた配管洗浄ノズル20を本発明の配管洗浄ノズル用支持具30に支持させた状態を示した側面図である。図4は、洗浄ホース10に取り付けられた配管洗浄ノズル20を本発明の配管洗浄ノズル用支持具30に支持させて配管40内を洗浄している様子を配管40の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【0018】
本発明の配管洗浄ノズル用支持具30は、図4に示すように、配管洗浄ノズル20を配管40内における所定高さで支持するためのものとなっている。配管洗浄ノズル20は、洗浄ホース10の先端に接続されており、洗浄ホース10により供給される水50を斜め後方に射出する際の反力により、配管40内を前方(矢印Aの向き)へ自走する。この際、配管洗浄ノズル用支持具30も、配管洗浄ノズル20と一体となって前方へ自走する。同時に、配管40の内周壁の付着物60は、配管洗浄ノズル20から射出された水50により、洗い落とされる。配管洗浄ノズル20は、配管洗浄ノズル用支持具30によって、配管40内における所定高さで支持されているため、配管洗浄ノズル20から射出された水50は、配管40の内周壁における低い位置だけでなく、天井などの高い位置にも強く当たるようになっている。このため、付着部60の洗い残しを防ぐことができるようになっている。
【0019】
2.球状フレーム体
配管洗浄ノズル用支持具30を構成する各部のうち、球状フレーム体31は、図1に示すように、複数の円形フレームα,α,β,βを組み合わせることによって概略球形とされたものとなっている。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30において、球状フレーム体31は、左右方向に所定間隔を隔てて略平行に配された一対の円形フレームα,αと、前後方向に所定間隔を隔てて略平行に配された一対の円形フレームβ,βとを組み合わせることによって概略球形とされている。円形フレームα,α,β,βは、楕円形などであってもよいが、本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30においては、真円形となっている。
【0020】
円形フレームα,α,β,βの素材は、配管洗浄ノズル用支持具30を形成するのに必要な剛性を有するものであれば特に限定されない。しかし、耐久性や耐腐食性などを考慮すると、円形フレームα,α,β,βの素材には、通常、金属が用いられる。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30においては、金属製の円形フレームα,α,β,βを互いに溶接して一体化することにより球状フレーム体31を構成している。
【0021】
このとき、配管洗浄ノズル20の自走方向(図4の矢印Aの向き)に垂直に配される円形フレームβ,βは、配管洗浄ノズル20の自走方向に平行に配される円形フレームα,αよりも外側となるように、円形フレームβ,βを円形フレームα,αに対して外接した状態で固定してもよいが、この場合には、配管洗浄ノズル用支持具30が自走する際に配管40の内周壁や付着物60から受ける摩擦抵抗が大きくなるおそれがある。
【0022】
このため、本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30においては、図1〜3に示すように、円形フレームα,αを円形フレームβ,βに対して外接した状態で固定しており、配管洗浄ノズル20の自走方向に平行に配される円形フレームα,αが、配管洗浄ノズル20の自走方向に垂直に配される円形フレームβ,βよりも外側となるようにしている。図2,3に示すように、円形フレームα,αの最下点は、円形フレームβ,βの最下点よりも下側となるようにしており、配管40の底面には、円形フレームα,αが接触するようにしている。これにより、配管洗浄ノズル用支持具30が自走する際の摩擦抵抗を低減させることができるようになっている。
【0023】
球状フレーム体31の寸法をどの程度にするかは、洗浄を行う配管40の直径や、球状フレーム体31におけるどの場所に配管洗浄ノズル20を支持させるのかや、後述する角度θの大きさや、付着物60の固さや、水50の圧力などによっても異なり、特に限定されない。しかし、球状フレーム体31の寸法を小さくしすぎると、配管洗浄ノズル20を低い位置でしか支持できず、配管洗浄ノズル20から射出された水50が配管40の天井付近に強く当たらないようになるおそれがある。このため、球状フレーム体31は、通常、その高さが10cm以上とされる。球状フレーム体31の高さは、15cm以上であると好ましく、20cm以上であるとより好ましい。
【0024】
一方、球状フレーム体31の寸法を大きくしすぎると、配管洗浄ノズル用支持具30が重くなるおそれがある。また、配管洗浄ノズル用支持具30が配管40内を移動しにくくなるおそれもある。さらに、球状フレーム体31の重量が増大するおそれもある。さらにまた、配管洗浄ノズル20の位置が高くなりすぎて、配管40の底面付近に水が強く当たらなくなり、配管40の底面付近の付着物60が落ちにくくなったり、洗い落とされた付着物60が配管40内を後方へ送られにくくなったりするおそれもある。このため、球状フレーム体31は、通常、その高さが60cm以下とされる。球状フレーム体31の高さは、50cm以下であると好ましく、40cm以下であるとより好ましい。本実施態様の配管洗浄ノズル20において、球状フレーム体31の高さは、約25cmとなっている。球状フレーム体31をこのような寸法に設定しておくと、直径Dが80〜150cmの範囲にあるどの配管40であっても、配管洗浄ノズル20を支持する高さや、角度θの大きさや、水50の圧力を調整することにより、本発明の配管洗浄ノズル用支持具30を好適に使用することが可能である。
【0025】
3.ノズル保持部
ノズル保持部32は、図1に示すように、球状フレーム体31の中心付近で配管洗浄ノズル20をその軸回りに回転可能な状態で保持するものとなっている。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30において、ノズル保持部32は、洗浄ホース10における先端(配管洗浄ノズル20が接続された側の端部)からやや後方をその軸回りに回動可能な状態で保持するためのホース保持パイプ32dと、ホース保持パイプ32dを支持するためのホース支持板32bと、ホース保持パイプ32dをホース支持板32bに連結固定するためのホース固定金具32cと、ホース支持板32bを球状フレーム体31に連結固定するための連結軸32aと、を備えたものとなっている。ホース保持パイプ32dは、洗浄ホース10に直接外嵌してもよいが、洗浄ホース10に外嵌したパイプ(図示省略)に対してさらに外嵌するようにすると好ましい。このように、ホース保持パイプ32dを二重パイプ状とすることにより、洗浄ホース10をホース保持パイプ32dに対してより円滑に回転させることが可能になる。
【0026】
球状フレーム体31に対するノズル保持部32の固定位置は、洗浄を行う配管40の直径や、後述する角度θの大きさや、付着物60の固さや、水50の圧力などによっても異なり、特に限定されない。しかし、ノズル保持部32の位置を低くしすぎると、ノズル20から射出された水50を配管40の天井付近に強く当たりやすくするという本発明の配管洗浄ノズル用支持具30の効果が低減する。このため、ノズル保持部32は、通常、球状フレーム体31の最下点からの高さが5cm以上確保できる位置に固定される。ノズル保持部32の球状フレーム体31の最下点からの高さは、8cm以上であると好ましく、10cm以上であるとより好ましい。
【0027】
一方、ノズル保持部32の位置を高くしすぎると、ノズル20から射出された水50が配管40の底面付近に強く当たらなくなり、配管40の底面付近の付着物60が落ちにくくなったり、洗い落とされた付着物60が配管40内を後方へ送られにくくなったりするおそれがある。このため、ノズル保持部32は、通常、球状フレーム体31の最下点からの高さが30cm以下となる位置に固定される。ノズル保持部32の球状フレーム体31の最下点からの高さは、25cm以下であると好ましく、20cm以下であるとより好ましい。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30においては、高さが約25cmの球状フレーム体31における略中間となる高さにノズル保持部32を設けており、ノズル保持部32の球状フレーム体31の最下点からの高さは、約12.5cmとなっている。
【0028】
このとき、配管洗浄ノズル用支持具30の重心位置が高くなり、配管洗浄ノズル用支持具30の安定性が低下するおそれがある。このため、ノズル保持部32は、通常、その重心位置が球状フレーム体31の半分の高さを大きく超えない位置となるように固定される。具体的には、ノズル保持部32の重心位置は、球状フレーム体31の高さの2/3以下の位置であると好ましく、3/5以下の位置であるとより好ましく、4/7以下の位置であるとさらに好ましい。ノズル保持部32の重心位置は、球状フレーム体31の高さの1/2以下であると最適である。
【0029】
本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30において、ノズル保持部32は、上述したように、連結軸32aとホース支持板32bとホース固定金具32cとホース保持パイプ32dとで構成しているが、ホース支持板32bの重量によって、ノズル保持部32の重心が低くなるようになっており、洗浄ホース10が球状フレーム体31の丁度真ん中で保持されるようにしても、配管洗浄ノズル用支持具30の重心位置は、球状フレーム体31の半分の高さよりも低くなるようになっている。このことに加えて、配管洗浄ノズル用支持具30は、球状フレーム体31によってその概形が略球形とされているため、配管洗浄ノズル用支持具30が配管40内を自走する際に傾くようなことがあっても、起き上がり子法師のように、元の姿勢へ容易に復帰できるようになっている。
【0030】
4.配管洗浄ノズル
配管洗浄ノズル20は、図4に示すように、洗浄ホース10により供給される水50を斜め後方に放射状に射出するものとなっている。配管洗浄ノズル20から射出された水50は、配管40の内周壁の付着物60を洗い落とすだけでなく、配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30に前方(矢印Aの向き)への推進力を発生させる作用も有している。
【0031】
配管洗浄ノズル20は、配管洗浄ノズル20の進行方向(図4の矢印Aの向き)に対して斜め後方に水50を放射状に射出するものであれば特に限定されない。ここで、「放射状に射出」とは、水50が配管洗浄ノズル20の中心から複数方向(通常、回転対称な複数方向)へ射出されることをいう。水50は、回転対称な3方向以上に射出されると好ましく、4方向以上に射出されるとより好ましい。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30において、配管洗浄ノズル20は、図2に示すように、その中心から4方向へ射出されるようになっている。この場合、水50を各方向へ射出する射出口(図示省略)は、その前後方向の位置が互い違いとなるように配しておくと好ましい。
【0032】
配管洗浄ノズル20から斜め後方に射出される水50の角度(図4の角度θ)は、特に限定されない。しかし、角度θを小さくしすぎると、配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30の推進力は増大するものの、配管洗浄ノズル20から射出された水50が配管40の付着物60が洗い落とされにくくなるおそれがある。特に、付着物60が配管40の内面に固くこびりついている場合には落ちにくくなる。このため、角度θは、通常、30°以上とされる。角度θは、45°以上であると好ましく、60°以上であるとより好ましく、70°以上であるとさらに好ましい。
【0033】
一方、配管洗浄ノズル20から斜め後方に射出される水50の角度(図4の角度θ)を大きくしすぎると、配管40の付着物60は洗い落とされやすくなるものの、配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30の推進力が減少し、配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30が配管40内を自走しにくくなるおそれがある。また、洗い落とされた付着物60が配管40内を後方へ流れにくくなるおそれもある。このため、角度θは、通常、85°以下とされる。角度θは、80°以下であるとより好ましい。本実施態様の配管洗浄ノズル用支持具30において、角度θは、約75°となっている。
【0034】
5.配管洗浄方法
続いて、上述した配管洗浄ノズル用支持具30を用いて行う配管洗浄方法について説明する。本発明の配管洗浄方法は、図4に示すように、配管洗浄ノズル用支持具30に配管洗浄ノズル20を支持させて配管40内を洗浄するものとなっている。配管洗浄ノズル20が取り付けられた配管洗浄ノズル用支持具30は、配管40の一方の開口端から入れられ、その後は、配管洗浄ノズル20から射出される水50の反力によって、前方(図4の矢印Aの向き)に自走する。この際、配管40の内周面に付着する付着物60は、水50によって洗い落とされる。本発明の配管洗浄方法を行う配管40の寸法は、特に限定されないが、上述した理由で、直径が80〜150cmの配管40に対して好適に採用することができる。
【0035】
洗浄ホース10に供給する水50の圧力は、特に限定されないが、低くしすぎると、配管40の付着物60に洗い残しが発生しやすくなるだけでなく、配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30の推進力が得られなくなるおそれがある。また、洗い落とされた付着物60が後方へ送られなくなるおそれもある。このため、洗浄ホース10に供給する水50の圧力は、通常、10MPa以上とされる。水50の圧力は、15MPa以上であると好ましい。一方、洗浄ホース10に供給する水50の圧力を高くしすぎると、洗浄ホース10に給水を行う給水装置(図示省略)が大型化するだけでなく、配管洗浄ノズル20が配管40内を速く移動しすぎて、やはり洗い残しが発生するおそれがある。このため、給水ホース10から供給する水50の圧力は、通常、40MPa以下とされる。水50の圧力は、30MPa以下であると好ましい。本実施態様の配管洗浄方法において、給水ホース10から供給する水50の圧力は約18MPaとなっている。
【0036】
配管洗浄ノズル20及び配管洗浄ノズル用支持具30が配管40内における所定位置(所定の挿入距離)に達すると、洗浄ホース10への給水を止め、配管洗浄ノズル20、配管洗浄ノズル用支持具30及び洗浄ホース10を回収する。洗浄ホース10の回収は、洗浄ホース10を引っ張ることにより行う。この場合、配管40の他端側で、洗浄ホース10を配管洗浄ノズル用支持具30から取り外すことができる場合には、洗浄ホース10から配管洗浄ノズル用支持具30や配管洗浄ノズル20から取り外した状態で引っ張ってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 洗浄ホース
20 配管洗浄ノズル
30 配管洗浄ノズル用支持具
31 球状フレーム体
32 ノズル保持部
32a 連結軸
32b ホース支持板
32c ホース固定金具
32d ホース保持パイプ
40 配管
50 水
60 付着物
61 洗い残し
α 円形フレーム
α 円形フレーム
β 円形フレーム
β 円形フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ホースの先端に接続されて該洗浄ホースにより供給される水を後方に射出する際の反力により前方へ自走しながら配管内を洗浄する配管洗浄ノズルを配管内における所定高さで支持するための配管洗浄ノズル用支持具であって、
複数の円形フレームを組み合わせることによって概略球形とされた球状フレーム体と、該球状フレーム体の中心付近で配管洗浄ノズルをその軸回りに回転可能な状態で保持するノズル保持部とを備えたことを特徴とする配管洗浄ノズル用支持具。
【請求項2】
球状フレーム体が、左右方向に所定間隔を隔てて略平行に配された少なくとも一対の円形フレームα,αと、前後方向に所定間隔を隔てて略平行に配された少なくとも一対の円形フレームβ,βとを組み合わせることによって概略球形とされたものである請求項1記載の配管洗浄ノズル用支持具。
【請求項3】
円形フレームα,αが円形フレームβ,βに対して外接した状態で固定された請求項2記載の配管洗浄ノズル用支持具。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の配管洗浄ノズル用支持具に配管洗浄ノズルを支持させて配管内を洗浄する配管洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50858(P2011−50858A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202244(P2009−202244)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(509105879)瀬戸内物流株式会社 (3)
【Fターム(参考)】