説明

配管肉厚測定装置

【課題】ボイラを構成している配管群のように配管群が密集して配置された環境の中で、被検管となる或配管のベンド部の配管肉厚測定を行うことができる配管肉厚測定装置を提供する。
【解決手段】配管肉厚測定装置10は、Z軸方向(第1方向)に長尺な操作棒11と、操作棒11の先端部11aに結合部13を介して連結された測定ヘッド12とを備えている。測定ヘッド12は、Y軸方向(第2方向)に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接面141a,141b(当接部位)を各々有しX軸方向(第3方向)に離間している一対の位置決め部材14と、一対の位置決め部材14のX軸方向間に位置している超音波探触子21を一体的に備えている。そして、測定ヘッド12は、超音波探触子21の超音波発振方向99がZ軸方向と略平行となる姿勢からZ軸方向と略直交する姿勢まで、X軸方向に延びる第1軸49回りに回動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等が備える配管の肉厚を、超音波探触子(プローブ)により測定する配管肉厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種ごみを焼却処理するごみ焼却プラントなどの熱回収プラントには、熱回収のためのボイラが付設されている。このボイラは、ごみなどの燃料を燃焼したときに発生する燃焼ガスから熱を回収するものであり、例えば、発電用の蒸気の発生等に利用される。ごみ燃焼時に発生する燃焼ガスには塩素系ガス等の腐食性成分が含まれることがあり、このような燃焼ガスに曝露されるボイラを構成している配管群(水管や過熱器管等)や金属製構成部品に腐食が生じる。また、高温環境下にさらされる配管群では徐々に摩耗が生じる。このように配管に摩耗や腐食が生じて配管の肉厚が低下(減肉)すれば、配管の内部を流通する流体が漏出する事故につながるような、配管の噴破が生じる可能性が高くなる。そこで、ボイラを構成している配管群の肉厚は定期的に計測されて管理されている。配管群の肉厚(減肉)を計測するための手段として、一般に、超音波探傷が用いられている。
【0003】
ところが、ボイラを構成している配管群は密集して炉内に配置されていることが多く、このような場合は、超音波探傷検査のために通常十分とされる作業空間を確保することが困難である。したがって、検査技術者の手の届く範囲の配管のみについて、手探傷(検査技術者の手動の走査による超音波探傷)による検査がもっぱら行われている。加えて、手探傷または自動探傷を問わず、操作棒の先端に検査装置が取り付けられて成る検査装置を用いて、検査技術者の手の届かない範囲の配管に対しても配管肉厚測定が行われている。
【0004】
また、上向きに流れる燃焼ガスの中に置かれた配管は、直管部とベンド部にかかわらず、配管の周面直下部ではなく、ここから上方へずれた周面側部であって水平方向に対して45°傾斜した部位を中心とした領域が最も腐食する現象が見られることがある。そこで、従来、配管の周面側部の肉厚を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、操作棒と、操作棒の長尺方向から45°傾くように操作棒の先端に設けられた超音波探触子と、超音波探触子の上下両側において配管の周面上を吸着されながら転動するマグネットローラとを備えたパイプの部分摩耗検査器が開示されている。この部分摩耗検査器では、配管の周面側部であって水平方向に対して45°傾斜した部位を中心とした領域の管厚を測定することができる。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、被検管の隙間に挿入する伸縮自在な操作軸、当該操作軸の先端に回動可能に取り付けられた検査機構本体、当該検査機構本体に搭載された被検管の肉厚測定手段および外観検査手段、前記検査機構本体を被検査部に支持するクランプ機構、前記肉厚測定手段からの情報を肉厚値として表示する超音波肉厚測定装置、前記外観検査手段で得られた映像情報を表示するモニタを備える管群の検査装置が開示されている。
【0006】
ところで、ボイラを構成している配管群は、つづら折れ状に蛇行して炉内に設置されていることがある。一般的な配管の折り曲げ構造は、管軸方向が直線状である直管により形成された直管部と、管軸方向が曲線状である曲がり管により形成されたベンド部とが、接続されて成る。配管のベンド部は、曲げ加工時に母材が伸ばされるために直管部よりも肉厚が薄くなっている。このため、ボイラを構成している配管群では、直管部よりもベンド部が先にボイラの圧力に耐えられない肉厚に到達する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−10524号公報
【特許文献2】特開2005−201664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した従来の技術では、配管の直管部の配管肉厚を測定することはできても、ベンド部の配管肉厚を適切に測定することは困難となっている。
【0009】
まず、特許文献1に開示のパイプの部分摩耗検査器は、配管の直管部の配管肉厚を測定することはできるが、配管のベンド部の特に管軸方向が略垂直となる領域の配管肉厚を測定することができない。
【0010】
また、特許文献2に開示の管群の検査装置は、伸縮自在の操作軸の先端に検査機構が設けられている構成を有するので、使用者が操作軸を操作して、被検管近くまで検査機構本体を挿入することができる。しかし、配管のベンド部の断面は楕円状に変形しているため、クランプ機構で検査機構本体を配管のベンド部に対して適切に位置決めすることができない。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ボイラの過熱器管等のように密集した状態で配される管群に対して配管肉厚測定を行うための配管肉厚測定装置であって、配管のベンド部の管軸方向が略水平でない領域においても配管肉厚測定が可能であるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る配管肉厚測定装置は、
第1方向に長尺な操作棒と、
第2方向に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を各々有し前記第1方向および前記第2方向と略直交する第3方向に離間している一対の位置決め部材、および、前記一対の位置決め部材の前記第3方向間に位置している超音波探触子を一体的に備えた測定ヘッドと、
前記操作棒に対し前記測定ヘッドを、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる姿勢から前記第1方向と略直交する姿勢まで、前記第3方向と略平行な第1軸回りに回動可能に連結している結合部とを備えているものである。
【0013】
上記構成によれば、被測定領域が配管のベンド部の管軸方向が略水平でない周面直下部であるときに、操作棒を配管の側方に位置させ、且つ、測定ヘッドを第1軸回りに回動させて被測定領域の管軸方向に当接部位が連続する方向(これは、測定ヘッドを回動させる前の第2方向であって、当接部位と配管との接触面が連続する方向となる。)を合わせることにより、被測定領域に一対の位置決め部材の当接部位を安定して当接させることができる。これにより、これら一対の位置決め部材の間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0014】
前記配管肉厚測定装置において、前記測定ヘッドを前記第1軸回りに回動させる第1のアクチュエータを備えることができる。かかる構成によれば、密集した管群の狭隘な配管同士の間を通って測定ヘッドを被測定領域の近傍まで移動させてから、測定ヘッドを第3方向と略平行な回動軸回りに回動させて、被測定領域の管軸方向と当接部位が連続する方向とを合わせることができる。
【0015】
さらに、前記配管肉厚測定装置において、前記結合部は、前記操作棒に対し前記測定ヘッドを、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる姿勢から前記第1方向と略直交する姿勢まで、前記第2方向と略平行な第2軸回りに回動可能に連結していることがよい。この場合、前記測定ヘッドを前記第2軸回りに回動させる第2のアクチュエータを備えることもできる。
【0016】
上記構成によれば、被測定領域が配管のベンド部の管軸方向が略水平でない周面直下部から周方向上方へずれた領域であっても、測定ヘッドを第3方向と略平行な回動軸回りに回動させるとともに第2方向と略平行な回動軸回りに回動させることにより、被測定領域の管軸方向に当接部位が連続する方向を合わせることができる。これにより、被測定領域に一対の位置決め部材の当接部位を安定して当接させることができ、これら一対の位置決め部材の間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る配管肉厚測定装置は、
第1方向に長尺な操作棒と、
第2方向に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を各々有し前記第1方向および前記第2方向と略直交する第3方向に離間している一対の位置決め部材、および、前記一対の位置決め部材の前記第3方向間に位置している超音波探触子を一体的に備えた測定ヘッドとを備え、
前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第3方向と略平行な第1軸回りに0°より大きく90°より小さい範囲(特に効果的には、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の角度で傾いているものである。ここで、第1軸は仮想的なものであってよく、操作棒に対し測定ヘッドが可動でない結合部材等により上記のような姿勢で連結されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、被測定領域が配管のベンド部の管軸方向が略水平でない周面直下部であるときに、操作棒を配管の側方に位置させ、測定ヘッドの一対の位置決め部材を被測定領域に下方から当接させることができる。これにより、これら一対の位置決め部材の間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0019】
前記配管肉厚測定装置において、前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第2方向と略平行な第2軸回りに0°より大きく90°より小さい範囲(特に効果的には、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の角度で傾いていることがよい。ここで、第2軸は仮想的なものであってよく、操作棒に対し測定ヘッドが可動でない結合部材等により上記のような姿勢で連結されていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、被測定領域が配管のベンド部の管軸方向が略水平でない周面直下部から周方向上方へずれた領域であるときに、測定ヘッドの一対の位置決め部材を被測定領域に安定して当接させることができる。これにより、これら一対の位置決め部材の間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0021】
前記配管肉厚測定装置において、前記一対の位置決め部材の前記当接部位に前記配管が当接した状態で、前記超音波探触子が前記配管の外面の法線方向に沿って進退可能に設けられていることがよい。さらに、前記配管肉厚測定装置において、前記超音波探触子を前記配管の外面の法線方向に沿って進退移動させる第3のアクチュエータを備えていることがよい。
【0022】
上記構成によれば、位置決め部材が操作棒の先端で折れ曲がったような形状で設けられているため、当該位置決め部材を、密集する管群の隙間に容易に挿入することができる。さらに、前記管群のうち測定対象の配管(被検管)の外面に位置決め部材を当接することによって測定位置を決定し、その後に、アクチュエータによって超音波探触子を進出させて、当該超音波探触子を被検管の外面に法線方向から当接させることができる。これにより、被検管における肉厚の測定位置を適切かつ再現性よく決定することができるとともに、適切な方向および好適な押圧力で超音波探触子を被検管の外面に対して当接させることができる。その結果、例えば、ボイラを構成している配管群等のように密集した状態で配置される配管についての肉厚測定を、迅速かつ容易に行うことができる。
【0023】
前記配管肉厚測定装置において、前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、当該超音波探触子と前記配管の外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を備えていることが好ましい。また、前記配管肉厚測定装置において、前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面に対して、空気流を噴射する空気噴射器を備えていることが好ましい。さらに、前記配管肉厚測定装置において、前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面を撮像する撮像器を備えていることが好ましい。
【0024】
前記各構成によれば、カプラント供給器を備えていれば、位置決め部材を当接させた状態で、被検管における測定位置にカプラントを塗布でき、空気噴射器を備えていれば、前記測定位置に付着する塵埃等を容易に除去することができ、撮像器を備えていれば、位置決め部材の当接前に被検管の外面を観察することができる。これにより、カプラントの供給、塵埃の除去等のために管群から配管肉厚測定装置を毎回引き抜く必要がなく、撮像器を備えていれば、被検管の決定も容易とすることができる。
【0025】
なお、前記各部材または機構等の具体的な構成は特に限定されないが、前記一対の位置決め部材は、前記測定ヘッドから着脱可能なVブロックであり、当該VブロックのV溝の内面に前記超音波探触子が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る配管肉厚測定装置によれば、ボイラを構成している配管群のように、密集した状態で配される配管群に対して簡便な操作で、配管のベンド部の管軸方向が略水平でない領域に対しても迅速かつ適切に配管肉厚測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る配管肉厚測定装置をY軸方向から見た図である。
【図2】配管肉厚測定装置をX軸方向から見た図である。
【図3】配管肉厚測定装置をZ軸方向から見た図である。
【図4】図3に示す測定ヘッドのIV−IV矢視断面図である。
【図5】測定ヘッドにおける超音波探触子が進出する動作を示す模式図である。
【図6】測定ヘッドの位置決め部材において当接面の傾斜が異なる構成例を示す模式図である。
【図7】(a)は基準姿勢の測定ヘッド、(b)は基準姿勢から第2軸回りに45°回動した測定ヘッド、(c)は基準姿勢から第1軸回りに45°回動した測定ヘッドをそれぞれ示す模式図である。
【図8】配管肉厚測定装置に接続される配線および配管等の一例と使用環境の一例とを示す模式図である。
【図9】配管肉厚測定装置に接続されるエア配管の構成の一例を示す模式図である。
【図10】測定ヘッドが基準姿勢から第2軸回りに45°回動した配管肉厚測定装置をY軸方向から見た図である。
【図11】測定ヘッドが基準姿勢から第1軸回りに45°回動した配管肉厚測定装置をX軸方向から見た図である。
【図12】測定ヘッドが基準姿勢から第1軸回りに45°回動した配管肉厚測定装置をY軸方向から見た図である。
【図13】測定ヘッドが基準姿勢から第1軸回りに45°回動した配管肉厚測定装置をX−Y方向から見た図である。
【図14】(a)〜(d)は、超音波探触子の肉厚の測定に至るまでの動作を模式的に説明する工程図である。
【図15】測定ヘッドを第1軸回りに駆動するアクチュエータと第2軸回りに駆動するアクチュエータとを備えた配管肉厚測定装置の模式図である。
【図16】(a)〜(c)は、結合部の変形例を示す配管肉厚測定装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
[配管肉厚測定装置の構成]
本実施の形態に係る配管肉厚測定装置の基本的な構成について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る配管肉厚測定装置をY軸方向から見た図であり、図2は配管肉厚測定装置をX軸方向から見た図である。図1,2に示すように、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10は、操作棒11と、操作棒11の先端部11aに結合部13を介して連結された測定ヘッド12とを備えている。続いて、配管肉厚測定装置10の測定ヘッド12および結合部13についてそれぞれ詳細に説明する。なお、以下では、仮想の或XYZ直交座標空間において、操作棒11の長尺方向をZ軸方向とし、図1の紙面左右方向をX軸方向とし、同じく紙面を垂直に貫く方向をY軸方向とする。
【0030】
(測定ヘッド12)
まず、測定ヘッド12の構成から説明する。図3は配管肉厚測定装置をZ軸方向から見た図であり、図4は図3に示す測定ヘッドのIV−IV矢視断面図である。また、図5は測定ヘッドにおける超音波探触子が進出する動作を示す模式図であり、図6は測定ヘッドの位置決め部材において当接面の傾斜が異なる構成例を示す模式図である。
【0031】
図3,4に示すように、測定ヘッド12は、基台20と、基台20に収容されたアクチュエータ22と、基台20から進退可能に設けられた超音波探触子21と、基台20上に取り付けられた位置決め部材14と、図示されない配線および配管等を備えている。
【0032】
基台20は、模式的に直方体状で図示されており、内部に超音波探触子21、アクチュエータ22、カプラント吐出ノズル23、エア噴射ノズル24、および固体撮像素子25等を備えている。また、基台20の上面には、一対のブロック片14a,14bから成る位置決め部材14が取り付けられている。位置決め部材14は、本実施の形態では、断面がV字状となっているVブロックとして構成されている。このV字状の谷間(V溝)に当たる部位に超音波探触子21が設けられており、この超音波探触子21と隣接する位置にアクチュエータ22が設けられている。なお、図1では、超音波探触子21の大部分およびアクチュエータ22は基台20内に収容されているので、図中点線で示している。
【0033】
位置決め部材14についてより詳細に説明すると、図3に示すように、位置決め部材14は、互いに対向してV字状の断面を形成するブロック片14a,14bと、これらブロック片14a,14bを固定する裏板14cとから構成されている。ブロック片14a,14bは、その断面がいずれも直角台形状で、直角台形の傾斜辺に対応する面(V溝の内面)が、それぞれ当接面141a,141bとなっている。ブロック片14a,14bは、これら当接面141a,141bが互いに対向する位置関係で裏板14cに固定されている。当接面141a,141bは各々一方向に沿って連続しており、対向する当接面141a,141bはこの一方向と略直交する方向に離間している。図3,4では、当接面141a,141bはY軸方向に沿って連続しており、対向する当接面141a,141bはX軸方向に離間している。このX軸方向に離間している当接面141a,141bの間には、Y軸方向に沿って延びる谷面(V溝の内面)142が形成され、この谷面142のY軸方向中央部に超音波探触子21が位置している。以下では、測定ヘッド12のうち、位置決め部材14が設けられている面を「測定面」と呼ぶことがあり、裏板14cから見てブロック片14a,14bが設けられており且つ裏板14cと略直交する方向を「測定面の法線方向」と呼ぶことがある。
【0034】
本実施の形態では、一対のブロック片14a,14bは、ウレタン樹脂等の弾性材料で構成されている。これにより、肉厚の測定対象となる配管(以下、「被検管」と呼ぶ)に位置決め部材14を当接させるときに、被検管に対する衝撃が抑制され、また、被検管の微細な外形の相違をブロック片14a,14bの弾性によって吸収することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態では、位置決め部材14は、基台20から着脱可能に構成されている。具体的な構成は特に限定されないが、例えば複数の六角ボルト等の固定部材(図示略)が用いられている。このように、位置決め部材14が基台20から着脱可能であるので、位置決め部材14として、当接面141a,141bの傾斜角が異なる構成のものを複数準備しておき、被検管の外径または外面の状態等に応じて、好適なものを選択して取り付けることもできる。例えば、図6に模式的に示すように、図中実線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が標準的な角度となっている位置決め部材14を「位置決め部材14−0」とすれば、図中一点鎖線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が小さく、外径がより大きい被検管を測定するときに用いられる位置決め部材14−1、あるいは、図中二点鎖線で示すように、当接面141a,141bの傾斜角が大きく、外径が小さい被検管を測定するときに用いられる位置決め部材14−2を、位置決め部材14−0とは別に準備しておき、被検管の径に応じてこれら位置決め部材14−0〜2を、適宜、取り替えて配管肉厚の測定を行うこともできる。
【0036】
なお、当接面141a,141bにより形成される角度は特に限定されず、被検管の種類等に応じて適宜設定される。一般的には、35〜45°の範囲内であればよい。また、位置決め部材14の奥行きの間隔(ブロック片14a,14bの長さ)が小さすぎると、被検管の外面に当接する面積が小さくなりすぎて、肉厚測定のための位置を適切に決定できないおそれがあるので、ある程度の間隔を有していることが望ましい。この間隔も被検管の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、40〜80mmの範囲内、好ましくは50〜70mmの範囲内、より好ましくは60mmを挙げることができる。
【0037】
図3,4に示すように、一対のブロック片14a,14bの間の谷面142には、超音波探触子21に隣接して固体撮像素子25が設けられている。また、ブロック片14bを貫通する形で、超音波探触子21に向かってカプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24が設けられている(特に図3参照)。超音波探触子21および固体撮像素子25には、配線31および配線35がそれぞれ接続され、後述するように、これら配線31および配線35は、電源およびモニタ等に接続されている。また、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24は、それぞれ配管33および配管34に接続され、これら配管33および配管34は、後述するように、エアコンプレッサに直接または間接的に接続されている。
【0038】
図3,4に示す構成では、一方のブロック片14aは操作棒11に近い側に位置し、他方のブロック片14bは、操作棒11から離れた側に位置している。このうち、一方のブロック片14aには、当接面141aの中央に、当該当接面141aを分断するように大切り欠き143が形成されている。この大切り欠き143が形成されることで、後述するように、オフセット金具152およびアクチュエータ22の可動部位を移動可能とするための空間が確保される。また、他方のブロック片14bには、当接面141bの中央かつ谷面142寄りの一部に、小切り欠き144が形成されている。この小切り欠き144は、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24を、谷面142の超音波探触子21に向かって配置させるための開口となっている。
【0039】
超音波探触子21はアクチュエータ22により測定面の法線方向に進退移動可能に構成されている。なお、測定面の法線方向は、超音波探触子21からの超音波発振方向(図1において矢印99で示されている)と平行であるから、換言すれば、超音波探触子21は超音波発振方向99に進退移動可能に構成されている。その具体的構成は特に限定されないが、本実施の形態では、図5に示すように、アクチュエータ22の可動部位と超音波探触子21との間にオフセット金具152を介在させる構成が採用される。
【0040】
具体的には、オフセット金具152は、クランク状の形状を有する金属製の板部材であり、その両端部が横方向に位置し、両端部をつなぐ中央部が縦方向に位置している。オフセット金具152の両端部のうち、外側に位置する一方の端部の内側面には、超音波探触子21の後端が取り付けられているとともに、内側に位置する他方の端部には、アクチュエータ22の可動端153が貫通する形で取り付けられている。
【0041】
この構成によれば、図5における向かって左側に示すように、待機状態では、超音波探触子21は基台20の内部に収容されているが、向かって右側に示すように、測定状態では、アクチュエータ22の動作によって可動端153がZ軸方向に進出し、この可動端153の移動がオフセット金具152を介して超音波探触子21の後端に伝達されることで、超音波探触子21が基台20から進出する。なお、測定状態から待機状態へ戻るときには、この逆の動作が行われる。この点については、測定方法の詳細とともに後述する。
【0042】
以上、測定ヘッド12について詳細に説明したが、測定ヘッド12が備える各機器の具体的な構成は特に限定されない。例えば、超音波探触子21としては、配管の探傷技術の分野で公知のものを好適に用いることができる。また、アクチュエータ22としては、本実施の形態では、エアシリンダが用いられているが、これに限定されず、公知の電磁方式のものあるいは人工筋肉型のもの等であっても好適に用いることができる。また、カプラント吐出ノズル23およびエア噴射ノズル24、並びにこれらに接続される配管33および配管34についても、公知の構成を好適に用いることができる。また、測定ヘッド12における配管33および配管34の位置等についても特に限定されない。さらに、固体撮像素子25についても、公知のCCD(電荷結合素子)イメージセンサまたはCMOSイメージセンサを用いることができるが、これら素子に代えて、他の構成のカメラ機器を用いてもよい。固体撮像素子25は、後述するように、被検管の位置を特定するために用いられるので、この用途に好適な解像度、精度、寸法または耐久性等を備えていれば、どのようなカメラ機器を用いてもよい。
【0043】
(結合部13)
続いて、操作棒11と測定ヘッド12とを連結している結合部13について説明する。図1,2に示すように、操作棒11と連結ブロック41とがZ軸方向に並んでおり、操作棒11の先端部11aに第2関節15を介して連結ブロック41が接続されている。そして、この連結ブロック41と測定ヘッド12の基台20とがX軸方向に並んでおり、連結ブロック41に第1関節16を介して測定ヘッド12が接続されている。このように、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10の結合部13は、第1関節16と第2関節15とを備えている。
【0044】
第1関節16では、連結ブロック41に対して測定ヘッド12が、X軸方向に延びる第1軸49回りに回動可能である。なお、第1軸49は、位置決め部材14の当接面141a,141bが離間している方向と略平行である。第1関節16は、連結ブロック41および測定ヘッド12の基台20をX軸方向に貫くボルト42と、このボルト42と螺合し連結ブロック41と基台20を締結しているナット43とにより構成されている。ボルト42の軸心を第1軸49が通っており、基台20は連結ブロック41に相対してボルト42(第1軸49)を中心として回動することができる。かかる構成により、連結ブロック41と基台20との第1軸49回りの相対角度は可変であり、この相対角度はボルト42およびナット43により固定されている。
【0045】
また、第2関節15では、操作棒11に対して連結ブロック41が、Y軸方向に伸びる第2軸48回りに回動可能である。なお、第2軸48は、位置決め部材14の当接面141a,141bの連続方向と略平行である。第2関節15は、操作棒11の先端部11aに延設された板片状の接続部材61と、連結ブロック41に設けられた板片状の接続部材62と、これらの接続部材61,62をY軸方向に貫くボルト63と、このボルト63と螺合し接続部材61,62を締結しているナット64とにより構成されている。ボルト63の軸心を第2軸48が通っており、連結ブロック41は第2軸48を中心として回動することができる。かかる構成により、接続部材61と接続部材62との第2軸48回りの相対角度、すなわち、操作棒11と連結ブロック41との第2軸48回りの相対角度は可変であり、この相対角度はボルト63およびナット64により固定されている。
【0046】
図7(a)は基準姿勢の測定ヘッド、図7(b)は基準姿勢から第2軸回りに45°回動した測定ヘッド、図7(c)は基準姿勢から第1軸回りに45°回動した測定ヘッドをそれぞれ示す模式図である。ここでは、測定ヘッド12の「基準姿勢」は、超音波探触子21の超音波発振方向99が操作棒11の長尺方向と略平行であり、且つ、測定面が操作棒11の後端部11b側へ向いている姿勢をいうこととする。上記のように結合部13を介して操作棒11と接続された測定ヘッド12は、超音波探触子21の超音波発振方向99が、Z軸方向と略平行となる基準姿勢(図7(a)参照)から、Z軸方向に対し傾き(図7(b)参照)、やがてZ軸方向と略直交する姿勢まで、Y軸方向の第2軸48回りに回動可能である。加えて、測定ヘッド12は、超音波探触子21の超音波発振方向99が、Z軸方向と略平行となる基準姿勢(図7(a)参照)から、Z軸方向に対し傾き(図7(c)参照)、やがてZ軸方向と略直交する姿勢まで、X軸方向の第1軸49回りに回動可能である。
【0047】
以上、結合部13について詳細に説明したが、その具体的な構成は特に限定されず、広く機械分野で公知の構成とすることができる。例えば、結合部13は操作棒11と測定ヘッド12とを結合する球関節により構成されていてもよい。
【0048】
[配管肉厚測定装置を用いた肉厚測定]
次に、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10を用いた肉厚の測定の一例について、具体的に説明する。
【0049】
ごみ処理プラントのボイラを構成している配管群は、例えば、つづら折れ状に蛇行して密集している。本実施の形態では、この配管群に減肉が生じていないか否かを判定するために、配管肉厚測定装置10を用いて、配管の肉厚を測定する場合を例示する。
【0050】
初めに、配管肉厚測定装置10で配管肉厚測定を行う前になすべき、配線および配管等の接続について説明する。図8は配管肉厚測定装置に接続される配線および配管等の一例と使用環境の一例とを示す模式図であり、図9は配管肉厚測定装置に接続されるエア配管の構成の一例を示す模式図である。図8に示すように、ボイラ50に設けられる複数の配管のうち一本の配管を被検管51として、配管肉厚測定装置10により当該被検管51の肉厚を測定するものとする。ここで、電源36に2台のケーブルドラム37a,37bを接続し、このうちケーブルドラム37aに、ボイラ50内を照明するための投光器38およびハンドランプ39の電源を接続する。また、ケーブルドラム37bには、さらに延長電源コード37cを接続し、この延長電源コード37cに、配管肉厚測定装置10が備える固体撮像素子25の電源および炉内用モニタ45の電源を接続する。また、ケーブルドラム37bには、炉外用モニタ46の電源も接続する。
【0051】
炉内用モニタ45には、固体撮像素子25のデータ配線35aが接続され、固体撮像素子25で撮像された画像が炉内用モニタ45で表示可能となっている。また、炉内用モニタ45は、炉外用モニタ46とデータ配線35bにより接続されているので、固体撮像素子25で撮像された画像は、炉外用モニタ46でも表示可能となっている。さらに、炉外用モニタ46には、データ配線35cを介してビデオカメラ47も接続されているので、固体撮像素子25で撮像された画像は、ビデオカメラ47で録画可能となっている。
【0052】
また、図8には詳細に図示されないが、配管肉厚測定装置10が備えるカプラント吐出ノズル23、エア噴射ノズル24およびエアシリンダであるアクチュエータ22には、エアが供給される必要がある。そこで、図8に示すように、配管肉厚測定装置10には、エア配管30およびマニホールド302を介してエアコンプレッサ301が接続されている。
【0053】
そして、図9に示すように、コンプレッサ301から繋がるエア配管30は、レギュレータフィルタ303を介して、Y継手304によりエア配管30aおよびエア配管30bに分岐する。エア配管30aは、さらにY継手304により配管32および配管34に分岐する。配管32は、前述したようにエアシリンダであるアクチュエータ22に接続され、当該アクチュエータ22を動作させるためのエアを供給するものであり、手元操作部305に含まれるアクチュエータスイッチ部352において、さらに2つの配管32,32に分岐する。これら配管32,32は、アクチュエータスイッチ部352によってエアの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。この配管32,32は、測定ヘッド12の近傍で、それぞれエルボ管継手321,322(図4参照)に接続される。
【0054】
配管34は、前述したようにエア噴射ノズル24に接続され、エア噴射ノズル24から
噴射されるエアを供給するものである。この配管34も手元操作部305に含まれるエア噴射スイッチ部354によりエアの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。このように、エア噴射ノズル24、配管34、エア噴射スイッチ部354等は、コンプレッサ301、エア配管30等とともに、配管肉厚測定装置10において、被検管の外面に対して空気流を噴射する空気噴射器を構成している。
【0055】
エア配管30bは、カプラントタンク231に接続され、このカプラントタンク231には、配管33が接続されている。配管33は、前述したようにカプラント吐出ノズル23に接続され、カプラントタンク231に貯蔵されているカプラントを、供給されるエアに乗せてカプラント吐出ノズル23まで供給するものである。この配管33も手元操作部305に含まれるカプラント吐出スイッチ部353によって、カプラントの供給および遮断が切り替えられるように構成されている。このように、カプラント吐出ノズル23、配管33、カプラント吐出スイッチ部353、カプラントタンク231等は、コンプレッサ301、エア配管30等とともに、配管肉厚測定装置10において、超音波探触子21と被検管外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を構成している。
【0056】
なお、上述した種々の照明、モニタ、電源、配線および配管、並びに、各種部材または機構等の具体的構成は特に限定されず、配管の探傷技術の分野で公知のものを好適に用いることができる。例えば、空気噴射器またはカプラント供給器は前記の構成に限定されず、独立した空気噴射装置またはカプラント供給装置として構成されてもよいし、手元操作部305を構成する各種スイッチ部としてもさまざまな構成を用いてもよいし、炉外用モニタ46およびビデオカメラ47に代えて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置が用いられてもよい。
【0057】
次に、配管肉厚測定装置10で配管肉厚測定を行う前になすべき、操作棒11に対する測定ヘッド12の姿勢の調整について説明する。操作棒11に対する測定ヘッド12の姿勢は、被検管51の被測定領域の形状(被測定領域が直管部であるかベンド部であるか、および、被測定領域の法線方向の水平からの傾き)に応じて、以下に説明するように調整される。
【0058】
例えば、被測定領域が被検管51の直管部51Aの周面直下部であって、被測定領域の法線方向の水平からの傾きが0°である場合には、図1,2に示すように、測定ヘッド12は、測定面が操作棒11の後端部11b(図1参照)側へ向いており、且つ、操作棒11の長尺方向と超音波探触子21の超音波発振方向99とが略平行となる姿勢(つまり、基準姿勢)となるように、調整される。
【0059】
また、例えば、被測定領域が被検管51の直管部51Aの周面直下部から周面上方へずれたところであり、被測定領域の法線方向の水平からの傾きが45°である場合には、図10に示すように、測定ヘッド12は、測定面が操作棒11の後端部11b側へ向いており、且つ、基準姿勢から第2軸48回りに45°下方へ回動させた姿勢となるように、調整される。ここでは、被測定領域の法線方向の水平からの傾きが45°であるから、測定ヘッド12を第2軸48回りに45°回動させた姿勢とするが、基本的に、被測定領域の法線方向の水平からの傾きに合わせて測定ヘッド12を第2軸48回りに0°より大きく90°より小さい範囲で下方へ回動させた姿勢とする。なお、ボイラ50に設けられた配管は、周面直下部よりも、ここから上方へずれた水平からの傾きが30°以上60°以下の範囲において他と比較してより減肉する場合があることが知られており、このことから、測定ヘッド12は基準姿勢を0°として第2軸48回りに30°以上60°以下の範囲で回動できれば足りる。
【0060】
また、例えば、被測定領域が被検管51のベンド部51Bの周面直下部であり、被測定領域の法線方向の水平からの傾きが45°である場合には、図11,12,13に示すように、測定ヘッド12は、測定面が操作棒11の後端部11b側へ向いており、且つ、基準姿勢から第1軸49回りに45°下方へ回動させた姿勢となるように、調整される。ここでは、被測定領域の法線方向の水平からの傾きが45°であるから、測定ヘッド12を第1軸49回りに45°回動させた姿勢とするが、基本的に、被測定領域の法線方向の水平からの傾きに合わせて測定ヘッド12を第1軸49回りに0°より大きく90°より小さい範囲で下方へ回動させた姿勢とする。なお、ボイラ50に設けられた配管は、周面直下部よりも、ここから上方へずれた水平からの傾きが30°以上60°以下の範囲において他と比較してより減肉する場合があることが知られており、このことから、測定ヘッド12は基準姿勢を0°として第1軸49回りに30°以上60°以下の範囲で回動できれば足りる。そして、上記のように測定ヘッド12の姿勢が調整されることにより、超音波探触子21の超音波発振方向99は配管の被測定領域の法線方向と略平行となり、当接面141a,141bが連続する方向は被測定領域の法線方向と直交する方向(これは、管軸方向でもある)と略平行となる。
【0061】
以上の通り、配管肉厚測定を行う前に配管肉厚測定装置10の測定ヘッド12の姿勢調整と、配線および配管等の接続が行われた状態で、使用者(測定作業者)はボイラ50の上方に位置し、操作棒11の後端部11bを把持して測定操作を行う。
【0062】
配管肉厚測定装置10の使用者は、操作棒11の先端部11aに設けられている測定ヘッド12を、隣接する配管の間を通して、上方から被検管51の下方へ滑り込ませる。このとき、配管肉厚測定装置10の操作棒11は、被検管51とこれに隣接する配管との間、すなわち、被検管51の側方に位置しており、測定ヘッド12は被検管51の下方に位置している。この時点では、位置決め部材14は被検管51の外面に当接していないので、図14(a)に示すように、図中黒く塗りつぶされて示される超音波探触子21は、測定ヘッド12の内部に収容された状態である。そして、超音波探触子21に隣接して固体撮像素子25が設けられているので、固体撮像素子25により配管の外面を撮像する(図中破線で示す)ことで、複数の配管のうち被検管51を特定することができる。例えば、任意の配管の外面において何らかの変化が生じていることが、固体撮像素子25によって撮像されれば、当該配管を被検管51とする。
【0063】
そして、測定ヘッド12の測定面を被検管51の被測定領域へ下方から押し当て、被検管51の被測定領域へ位置決め部材14を当接させる。位置決め部材14を被検管51に当接させることで、当該被検管51における肉厚の被測定領域を容易に決定できるとともに、この被測定領域に対して、超音波探触子21を適切な姿勢に安定して保持することができる。
【0064】
肉厚の被測定領域が決定されれば、手元操作部305のエア噴射スイッチ部354を操作することで、図14(b)の矢印Fに示すように、被検管51の被測定領域の外面に向かってエアを噴射する。このエアの噴射によって、外面に付着している塵埃、あるいは、前回の肉厚測定時に塗布されたカプラント等を除去することができるので、肉厚測定をより好適な環境下で行うことが可能となる。
【0065】
次に、手元操作部305のカプラント吐出スイッチ部353を操作することで、図14(c)の点線矢印Dに示すように、カプラント吐出ノズル23から被検管51の外面(または超音波探触子21の接触面)に向かってカプラント232を吐出する。カプラント232は、測定面と超音波探触子21との間に空気層が形成されることを防ぐために、測定面または超音波探触子21の表面に塗布される。特に、過熱器は、ボイラ50等の内部に設けられ、且つ、複数の配管(過熱器管)が密集している構成となっているので、当該配管の肉厚測定を行うときに、カプラント232を塗布するだけでも作業に困難性を伴うが、このようにカプラント吐出ノズル23を備えることで、容易にカプラント232を塗布することができる。なお、カプラント232の具体的な種類等は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0066】
続いて、手元操作部305のアクチュエータスイッチ部352を操作することで、図14(d)に示すように、アクチュエータ22を動作させ、超音波探触子21を基台20から進出させる。このとき、位置決め部材14の当接面141a,141b(図3参照)に被検管51が当接した状態では、超音波探触子21の移動方向が、被検管51の外面の法線方向に対応する。そのため、超音波探触子21は、アクチュエータ22によって被検管51の外面の法線方向に沿って進出し、当該外面に当接する。この状態で、超音波探触子21から超音波を発することで、被検管51の肉厚が測定される。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、位置決め部材14およびこれが取り付けられている測定ヘッド12を密集する管群の隙間に挿入し、管群のうち被検管51の外面に位置決め部材14を当接することによって測定位置を決定し、その後に、アクチュエータ22によって超音波探触子21を進出させるだけで、超音波探触子21を被検管51の外面に法線方向から当接させることができる。これにより、被検管51における肉厚の測定位置を適切かつ再現性よく決定することができるとともに、適切な方向および好適な押圧力で超音波探触子21を被検管の外面に対して当接させることができる。その結果、密集する管群についての肉厚測定を、迅速かつ容易に行うことができる。また、位置決め部材14の使用により、作業者の技量に依存することが少ない、安定した肉厚の測定を行うことが可能となる。
【0068】
しかも、本実施の形態では、図9に示すように、測定ヘッド12に含まれるアクチュエータ22、カプラント吐出ノズル23、エア噴射ノズル24等を、使用者の手元で操作することができる。さらに、固体撮像素子25によって管群内の被検管51を撮像し、炉内用モニタ45または炉外用モニタ46等で確認することができる。それゆえ、遠隔操作によって肉厚の測定を行うにもかかわらず、容易かつ再現性の高い測定を行うことができる。
【0069】
そして、本実施の形態に係る配管肉厚測定装置10によれば、被検管51の直管部51Aに限らず、ベンド部51Bの配管肉厚測定も行うことができる。つまり、配管肉厚測定装置10では、操作棒11に対して測定ヘッド12を第2軸48回りに0〜90°回動させることができるので、被検管51の直管部51Aの周面直下部から水平方向に対して90°傾斜した周面側部までの配管肉厚測定を行うことが可能である。
【0070】
さらに、配管肉厚測定装置10では、操作棒11に対して測定ヘッド12を第1軸49回りに0〜90°回動させることができるので、被検管51のベンド部51Bの配管肉厚測定を行うことができる。ここで、測定ヘッド12を第1軸49回りに回動させて、被検管51のベンド部51Bの管軸方向の傾きに当接面141a,141bの連続する方向を合わせることで、被検管51の被測定領域に位置決め部材14の当接面141a,141b(当接部位)を安定して当接させることができる。これにより、これらの当接面141a,141bの間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0071】
加えて、配管肉厚測定装置10では、操作棒11に対し測定ヘッド12を第2軸48回りおよび第1軸49回りにそれぞれ0〜90°の範囲内で回動させることができるので、被検管51のベンド部51Bの周面直下部に限らずここから周方向へ移動した領域の配管肉厚も測定することができる。ここで、測定ヘッド12を第1軸49回りおよび第2軸48回りに回動させて、被検管51のベンド部51Bの管軸方向の傾きに当接面141a,141bの連続する方向を合わせることで、被検管51の被測定領域に位置決め部材14の当接面141a,141bを安定して当接させることができる。これにより、これらの当接面141a,141bの間に設けられた超音波探触子が被測定領域に安定して当接することとなり、配管肉厚測定を良好に行うことができる。
【0072】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0073】
例えば、上記配管肉厚測定装置10において、密集した管群の狭隘な配管の間を通って測定ヘッド12を被検管51の下方へ移動させることから測定ヘッド12およびその周辺はコンパクトに構成することが望ましいため、結合部13の第2関節15および第1関節16は、ボルトを回動軸とし、ナットで回り止めをするシンプルな構成としている。但し、結合部13の構成はこれに限定されない。図15は測定ヘッドを第1軸回りに駆動するアクチュエータと第2軸回りに駆動するアクチュエータとを備えた配管肉厚測定装置の模式図である。例えば、図15に示すように、第2関節15に第2軸48回りに41を回動駆動するアクチュエータ58を備え、このアクチュエータ58を使用者の手元に配置された操作具で操作できるようにしてもよい。同様に、第1関節16に第1軸49回りに測定ヘッド12を回動駆動するアクチュエータ59を備え、このアクチュエータ59を使用者の手元に配置された操作具で操作できるようにしてもよい。このように、結合部13の動作を使用者の手元に配置された操作具で操作できるようにすれば、配管の間を通しやすい姿勢で測定ヘッド12を被検管51の下方まで移動させてから、被検管51の被測定領域の形状に応じて測定ヘッド12の姿勢を変化させることもできる。
【0074】
また、例えば、上記配管肉厚測定装置10において、結合部13の構成をより単純化することもできる。図16(a)〜(c)は、結合部の変形例を示す配管肉厚測定装置の模式図である。例えば、図16(a)に示すように、操作棒11に対し測定ヘッド12が、基準姿勢から第2軸48回りに0°より大きく90°より小さい範囲(又は、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の角度で傾くように、操作棒11と測定ヘッド12とを連結する可動でない結合部材57aを、可動性の関節(第2関節15)に代えて設けることができる。同様に、図16(b)に示すように、操作棒11に対し測定ヘッド12が、基準姿勢から第1軸49回りに0°より大きく90°より小さい範囲(又は、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の角度で傾くように、操作棒11と測定ヘッド12とを連結する可動でない結合部材57bを、可動性の関節(第1関節16)に代えて設けることができる。さらに、図16(c)に示すように、操作棒11に対し測定ヘッド12が、基準姿勢から第2軸48回りに0°より大きく90°より小さい範囲(又は、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の第1の角度で傾き、且つ、第1軸49回りに0°より大きく90°より小さい範囲(又は、30°以上60°以下の範囲)に含まれる所定の第2の角度で傾くように、操作棒11と測定ヘッド12とを連結する可動でない結合部材57cを、可動性の関節(第1関節16,第2関節15)に代えて設けることができる。
【0075】
また、例えば、上記配管肉厚測定装置10において、測定ヘッド12に代えて、被検管の外面の付着物を除去する付着物除去ユニットを取り付けることができるようにしてもよい。配管肉厚測定装置10は、結合部13と測定ヘッド12とは、ボルト42およびナット43で接合されており、結合部13から測定ヘッド12を容易に取り外すことができる。よって、配管肉厚測定装置10の測定ヘッド12に代えて、付着物除去ユニットを取り付けることができる。この付着物除去ユニットを用いれば、配管肉厚の測定を行う前に、被検管の外面に付着したスケール等の付着物を除去することができるので、より正確に肉厚を測定することが可能となる。そして、付着物除去ユニットも、測定ヘッド12と同様に、被検管51の被測定領域の形状に合わせて操作棒11に対して姿勢を変化させることができるので、被検管51の直管部51Aおよびベンド部51Bの双方において付着物の除去を良好に行うことができる。
【0076】
付着物除去ユニットの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、付着物除去ユニットは、付着物を削り取って除去する研削器と、配管の外面を撮像する撮像器とを備えることができる。研削器の具体的な構成は特に限定されないが、代表的な例として、グラインダまたはベルトサンダを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ボイラが備える過熱器管等、複数の配管が密集した状態となっている配管群において、個々の配管の肉厚を測定する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 配管肉厚測定装置
11 操作棒
12 測定ヘッド
13 結合部
14 位置決め部材
15 第2関節
16 第1関節
21 超音波探触子
22 アクチュエータ
23 カプラント吐出ノズル(カプラント供給器)
24 エア噴射ノズル(空気噴射器)
25 固体撮像素子(撮像器)
33 配管(カプラント供給器)
34 配管(空気噴射器)
48 第2軸
49 第1軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長尺な操作棒と、
第2方向に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を各々有し前記第1方向および前記第2方向と略直交する第3方向に離間している一対の位置決め部材、および、前記一対の位置決め部材の前記第3方向間に位置している超音波探触子を一体的に備えた測定ヘッドと、
前記操作棒に対し前記測定ヘッドを、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる姿勢から前記第1方向と略直交する姿勢まで、前記第3方向と略平行な第1軸回りに回動可能に連結している結合部とを備えている、
配管肉厚測定装置。
【請求項2】
前記測定ヘッドを前記第1軸回りに回動させる第1のアクチュエータを備えている、請求項1に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項3】
前記結合部は、前記操作棒に対し前記測定ヘッドを、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる姿勢から前記第1方向と略直交する姿勢まで、前記第2方向と略平行な第2軸回りに回動可能に連結している、請求項1又は請求項2に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項4】
前記測定ヘッドを前記第2軸回りに回動させる第2のアクチュエータを備えている、請求項3に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項5】
第1方向に長尺な操作棒と、
第2方向に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を各々有し前記第1方向および前記第2方向と略直交する第3方向に離間している一対の位置決め部材、および、前記一対の位置決め部材の前記第3方向間に位置している超音波探触子を一体的に備えた測定ヘッドとを備え、
前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第3方向と略平行な第1軸回りに0°より大きく90°より小さい範囲に含まれる所定の角度で傾いている、
配管肉厚測定装置。
【請求項6】
第1方向に長尺な操作棒と、
第2方向に沿って肉厚の測定対象である配管の外面に当接する当接部位を各々有し前記第1方向および前記第2方向と略直交する第3方向に離間している一対の位置決め部材、および、前記一対の位置決め部材の前記第3方向間に位置している超音波探触子を一体的に備えた測定ヘッドとを備え、
前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第3方向と略平行な第1軸回りに30°以上60°以下の範囲に含まれる所定の角度で傾いている、
配管肉厚測定装置。
【請求項7】
前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第2方向と略平行な第2軸回りに0°より大きく90°より小さい範囲に含まれる所定の角度で傾いている、
請求項5又は請求項6に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項8】
前記操作棒に対し前記測定ヘッドが、前記超音波探触子の超音波発振方向が前記第1方向と略平行となる状態を0°とし、ここから前記第2方向と略平行な第2軸回りに30°以上60°以下の範囲に含まれる所定の角度で傾いている、
請求項5又は請求項6に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項9】
前記一対の位置決め部材の前記当接部位に前記配管が当接した状態で、前記超音波探触子が前記配管の外面の法線方向に沿って進退可能に設けられている、
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項10】
前記超音波探触子を前記配管の外面の法線方向に沿って進退移動させる第3のアクチュエータを備えている、請求項9に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項11】
前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、当該超音波探触子と前記配管の外面との間にカプラントを供給するカプラント供給器を備えている、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項12】
前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面に対して、空気流を噴射する空気噴射器を備えている、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項13】
前記測定ヘッドの前記超音波探触子に隣接する位置に設けられ、前記配管の外面を撮像する撮像器を備えている、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の配管肉厚測定装置。
【請求項14】
前記一対の位置決め部材は、前記測定ヘッドから着脱可能なVブロックであり、当該VブロックのV溝の内面に前記超音波探触子が設けられている、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の配管肉厚測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−11447(P2013−11447A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142689(P2011−142689)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】