説明

配管長測定装置および配管長測定方法

【課題】 空気調和機などにおける配管の配管長を計測することができる配管長測定装置および配管長測定方法を提供する。
【解決手段】 分岐した複数の配管端末を有する配管の各区間の長さを測定する配管長測定装置であって、配管の所定位置に配置され、配管等に振動を与える送信部9と、配管の所定位置に配置され、配管等の振動を検知する複数の受信部11と、送信部9から振動が発振されてから、振動が複数の受信部11に受信されるまでの複数の時間を計測する時間計測部29と、各受信部11に対応して得られる複数の計測時間に基づいて、配管の各区間の長さを送信部9から受信部11までの距離に係る長さとして算出する演算部7と、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の長さ、特に空気調和装置における配管長を測定する配管長測定装置および配管長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機を正常に動作させるためには、その空気調和機に適正量の冷媒が封入(チャージ)されていることが必要となるため、空気調和機に適正量の冷媒をチャージさせるさまざまな技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平04−347471号公報(第3−4頁、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1においては、真空状態の空気調和機の冷媒回路に、内圧力と内容積とが既知の容器を連通させて、その後のバランス圧力から冷媒配管の容積を求める技術が開示されている。
上述の技術によれば、上記容器内の内圧力および内容積と、冷媒回路内のバランス圧力とから空気調和機における冷媒回路の内容積を求めることができる。そのため、内容積から推定される適正量の冷媒を空気調和機にチャージすることができた。
【0004】
しかしながら、ビル等の空調に用いられるビル用空気調和機などのように、複数の室外ユニットおよび複数の室内ユニットを備えるものについては、上述の技術で内容積を求めるのは困難になるという問題があった。
室内ユニットや室外ユニットなどには、膨張弁などの絞りや冷媒を圧縮する密閉された空間である圧縮室を有する圧縮機などが備えられている。そのため、室内ユニットや室外ユニットが接続された冷媒回路においては、上記容器内の流体が室内ユニットや室外ユニットを通過しにくいため、圧力がバランスするまでに時間がかかっていた。
また、上述のように複数の室外ユニットおよび複数の室内ユニットが接続されている場合には特に時間がかかる、あるいは、バランス圧力に到達しない恐れがあった。そのため、空気調和機における冷凍サイクルの内容積を求めるのに時間がかかる、あるいは、内容積を求めることができないという問題があった。
【0005】
一般に、ビルに設置された古いビル用空気調和機を新しいものに取り替える場合には、室内ユニットおよび室外ユニットのみが取替えられ、配管はそのまま取り替えずに使用されている。そのため、取替え後のビル用空気調和機に適正量の冷媒をチャージするためには、取り替えずに使用される配管の配管長を知る必要があった。
しかしながら、ビル用空気調和機の配管は設計図通りに配置されていない場合があるため、設計図に基づいて配管長を知ることは困難であった。また、配管の配管長を実測することもさまざまな障害物があるため困難であった。
【0006】
空気調和機に適正量の冷媒をチャージさせる他の方法としては、冷媒回路に冷媒を徐々に入れながら空気調和機を運転し、運転状態をみて冷媒量を決定する方法も知られている。
しかしながら、この方法では、冷媒回路に適正量の冷媒をチャージさせるのに長時間の運転が必要になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、空気調和機などにおける配管の配管長を計測することができる配管長測定装置および配管長測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の配管長測定装置は、分岐した複数の配管端末を有する配管の各区間の長さを測定する配管長測定装置であって、前記配管の所定位置に配置され、前記配管または前記配管内部に振動を与える送信部と、前記配管の所定位置に配置され、前記配管または前記配管内部の振動を検知する複数の受信部と、前記送信部から振動が発振されてから、振動が複数の前記受信部に受信されるまでの複数の時間を計測する時間計測部と、前記各受信部に対応して得られる前記複数の計測時間に基づいて、前記配管の各区間の長さを前記送信部から前記受信部までの距離に係る長さとして算出する演算部と、が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、送信部から配管等に与えられた振動が複数の受信部に検知されるまでの複数の時間を時間計測部により計測し、この複数の計測時間に基づいて、演算部は各区間の長さを送信部から受信部までの距離に係る長さとして算出することができる。
【0010】
つまり、振動は所定の速度で配管等を伝搬するため、振動の伝搬速度と上記複数の計測時間と、に基づいて、送信部から各受信部までの配管長を求める複数の方程式を求めることができる。また、この方程式で求められる複数の配管長は、それぞれ複数の区間の和として表すことができ、これらの複数の式を連立することにより、配管の区間長さを上記複数の配管長の関数として表すことができる。
演算部は、送信部から受信部までの距離(配管長)を振動の伝搬速度と計測時間とに基づいて算出するとともに、配管の各区間長さを算出した配管長に基づいて算出することができる。
【0011】
例えば、送信器や受信機を配置する所定位置を配管端末とすることで、配管における全ての区間長さを算出することができる。例えば、測定対象の配管を空気調和機における冷凍サイクルの配管とした場合には、冷凍サイクルの全配管長を算出することができ、空気調和機の冷凍サイクルに適正量の冷媒をチャージさせることができる。
【0012】
上記発明においては、前記送信部には、前記配管に振動を与える振動発生部と、該振動発生部を駆動する駆動部とが設けられていることが望ましい。
本発明によれば、送信部には、配管に振動を与える振動発生部と、振動発生部を駆動する駆動部とが設けられているため、配管に容易に振動を与えることができる。
また、測定者がハンマー等で配管を叩いて配管に振動を与える方法と比較して、一定の振動を配管に繰り返し与えることができるため、配管長の算出精度を向上させることができる。
複数の送信部を用いて配管長を測定する場合には、遠隔操作などにより駆動部を制御することで、複数の送信部から振動を順次に配管に与えることができる。そのため、測定者がハンマー等で配管に振動を与える方法と比較して、配管長の測定時間を短縮することができる。
【0013】
上記発明においては、前記駆動部がソレノイドであり、該ソレノイドに電力を供給する電源が備えられ、該電源は、供給する電力量を変更することができることが望ましい。
本発明によれば、駆動部がソレノイドであり、ソレノイドに電力を供給する電源が備えられているため、ソレノイドは電磁力を発生して振動発生部を駆動することができる。電源は供給する電力量を変更できるため、電力量を制御することによりソレノイドから発生される電磁力を調整して、振動発生部が発生する振動を制御することができる。
【0014】
例えば、振動発生部から発生させる振動を、配管長の計測に必要な最小限の振動に制御することにより、受信部の劣化等を防止して配管長測定装置の長寿命化を図ることができる。また、空気調和機の冷凍サイクルの配管の長さを測定する場合においては、配管に与える振動を最小限にすることで、当該振動に係る室内の騒音を最小限に止めることができる。
【0015】
上記発明においては、前記送信部が、前記配管内の流体に音波を発振するスピーカであり、前記受信部が、前記配管内の流体を伝わってきた音波を検知するマイクであることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、スピーカにより配管内の流体に音波を発振することができるとともに、マイクにより配管内の流体を伝わってきた音波を検知することができるため、時間計測部により音波がスピーカの位置からマイクの位置まで伝わる時間を計測することができる。
また、スピーカがマイクを兼ねるとともに、マイクがスピーカを兼ねることができるため、送信部と受信部とを一体化して小型化することができる。
配管に振動を与える方法と比較して、スピーカおよびマイクを配管に密着させる必要がないため、送信部および受信部の配置が容易となる。
【0017】
上記発明においては、少なくとも前記受信部の周りに防振部材が配置されていることが望ましい。
本発明によれば、少なくとも受信部の周りに防振部材が配置されているため、受信部が外部の振動を、送信部から発せられた振動と誤って検出することを防止することができる。
なお、送信部および受信部がそれぞれスピーカおよびマイクの場合には、防振部材は、音を遮断するのに適した防音部材であることが好ましい。
【0018】
上記発明においては、前記送信部および前記時間計測部に対する制御信号を生成する制御部と、前記制御信号を電波で送信する制御側無線通信部と、電波で送信された前記制御信号を受信する駆動側無線通信部と、が設けられ、前記送信部が受信された前記制御信号に基づいて駆動制御されることが望ましい。
【0019】
本発明によれば、制御側無線通信部および駆動側無線通信部を用いることにより、例えば、制御部と送信部とを配線や信号線などで接続している場合と比較して、上記計測時間の測定精度を向上させることができる。
配線等には浮遊容量などが存在し、この容量により、配線等を伝わる信号に遅れが生じる。そのため、制御信号が送信部に到達するタイミングと、制御信号が時間計測部に到達するタイミングとが異なる恐れがあり、このタイミングのずれにより上記計測時間の測定精度が低下する恐れがあった。
本発明のように制御側無線通信部および駆動側無線通信部により制御信号を送信部に伝えることにより、上述の信号遅れを防止して、上記計測時間の精度を向上させることができる。
【0020】
特に、ビル用空気調和機の場合には、制御部と送信部との距離が長くなり上述の信号遅れが顕著となるため、制御側無線通信部および駆動側無線通信部を用いることにより、計測される時間の精度向上が顕著となる。
また、配線等の接続部から外部のノイズが信号にまぎれることを防止することができるため、上記計測時間の精度を向上させることができる。
【0021】
上記発明においては、前記配管の所定位置に、前記時間計測部と、少なくとも前記時間計測部、前記駆動側無線通信部、前記送信部および前記受信部に電力を供給する電源と、が配置され、前記時間計測部に入力される時間計測の基準となる信号を生成する信号生成部が設けられ、前記信号生成部から入力された前記基準信号が、前記制御側無線通信部から前記駆動側無線通信部へ送信され、前記時間計測部から出力された前記複数の計測時間が、前記駆動側無線通信部から前記制御側無線通信部へ送信されることが望ましい。
【0022】
本発明によれば、電源が配管の所定位置に配置されているとともに、少なくとも時間計測部、送信部および受信部に電力を供給するため、配管の所定位置に配置された時間計測部、送信部および受信部は、他の演算部などから電力的に独立して配置することができる。
【0023】
制御側無線通信部および駆動側無線通信部は、基準信号および上記複数の計測時間を電波で送信できるため、複数の時間計測部と演算部、および、複数の時間計測部と信号生成部とを配線等で接続する必要がない。
そのため、配管の所定位置に配置された時間計測部、駆動側無線通信部、送信部および受信部は、配線などにより、演算部等と接続する必要がなくなる。すると、配管長の測定の際に、配線などを配置する必要がなくなり、測定時の手間が簡略化される。
【0024】
制御側無線通信部および駆動側無線通信部は、基準信号を電波で送信できるため、複数の時間計測部に略同時に基準信号を伝えることができる。そのため、各時間計測部は、同一の時間軸上で上記計測時間を測定できる。つまり、各計測時間の計測開始点を同一にそろえることができ、計測時間の計測精度を向上させることができる。
【0025】
本発明の配管長測定方法は、分岐した複数の配管端末を有する配管の各区間の長さを測定する配管長測定方法であって、配管の一の所定位置に配置された送信部から前記配管または前記配管内部に振動を与えてから、前記配管の複数の他の所定位置に配置された受信部により前記配管または前記配管内部の振動を検知するまでの複数の時間を計測する計測ステップと、前記各受信部に対応して得られる前記複数の計測時間に基づいて、前記配管の各区間の長さを前記送信部から前記受信部までの距離に係る長さとして算出する演算ステップと、を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、送信部から配管等に与えられた振動が複数の受信部に検知されるまでの複数の時間を計測し、この複数の計測時間に基づいて、各区間の長さを送信部から受信部までの距離に係る長さとして算出することができる。
つまり、振動は所定の速度で配管等を伝搬するため、振動の伝搬速度と上記複数の計測時間とに基づいて、送信器から各受信器までの配管長を求める複数の方程式を求めることができる。また、この方程式で求められる複数の配管長は、それぞれ複数の区間の和として表すことができ、これらの複数の式を連立することにより、配管の区間長さを上記複数の配管長の関数として表すことができる。
そのため、送信部から受信部までの距離(配管長)を振動の伝搬速度と計測時間とに基づいて算出するとともに、配管の各区間長さを算出した配管長に基づいて算出することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の配管長測定装置によれば、送信部から配管等に与えられた振動が複数の受信部に検知されるまでの複数の時間を時間計測部により計測し、この複数の計測時間に基づいて、演算部は各区間の長さを送信部から受信部までの距離に係る長さとして算出することができる。そのため、配管の配管長を計測することができるという効果を奏する。
本発明の配管長測定装置および配管長測定方法によれば、送信部から配管等に与えられた振動が複数の受信部に検知されるまでの複数の時間を計測し、この複数の計測時間に基づいて、各区間の長さを送信部から受信部までの距離に係る長さとして算出することができる。そのため、配管の配管長を計測することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明における第1の実施形態に係る配管長測定装置について図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る配管長測定装置の概略構成を説明する模式図である。図2は、図1の配管長測定装置の構成を説明するブロック図である。
【0029】
配管長測定装置1は、図1および図2に示すように、空気調和機51の室外機53,53と室内機55,55,55とを接続する配管57の各配管端末に配置された送受信器3と、送受信器3と信号の送受信を行う計測用インターフェイス5と、配管長測定装置1を制御するとともに計測用インターフェイス5からの出力に基づいて配管57の配管長を算出する制御部(演算部)7と、から概略構成されている。
【0030】
図3は、図1の送受信器の構成を説明する概略図である。
送受信器3は、図3に示すように、配管57に対して振動を与える送信器(送信部)9と、配管57から伝わってきた振動を検出する受信器(受信部)11とから概略構成されている。
受信器11は、略円柱状に形成された受信体13と、受信体13内に配置された加速度ピックアップなどの受信素子15とから構成されている。
受信体13の一方の端部はテーパ状に形成され、配管57の端末に形成されたフレア形状と密着するように形成されている。また、受信体13の円筒面には、配管57の取り付け用ナット59と螺合されるネジ部17が形成されている。受信体13は、振動の伝達の観点から、配管57と同じ材料から形成されていることが望ましい。同じ材料から形成することにより、配管57と受信体13との間での振動の反射等を防止することができるからである。
【0031】
送信器9は、鉄芯(振動発生部)19と、鉄芯19周りに形成されたソレノイド(駆動部)21と、鉄芯19およびソレノイド21を受信器11に取り付ける取付け金具23とから概略構成されている。
鉄芯19およびソレノイド21は、取付け金具23に対して接近離間可能に配置されている。鉄芯19およびソレノイド21が取付け金具23に対して接近した場合には、鉄芯19が取付け金具23と接触するように構成されている。
【0032】
計測用インターフェイス5は、図2に示すように、送信器9のソレノイド21と配線を介して接続された送信回路25と、受信器11の受信素子15と配線を介して接続された受信回路27と、送信回路25や受信回路27と信号等の受け渡し可能に配置された時間計測回路(時間計測部)29と、制御部7との間で情報の受け渡しをする通信回路31と、から概略構成されている。
【0033】
送信回路25および受信回路27は、送信器9および受信器11と1対1に対応するように配置されている。送信回路25は、時間計測回路29が出力した信号に基づいてソレノイド21に対して駆動電力を供給している。受信回路27は、受信素子15が出力した信号に所定の処理を施して時間計測回路29に所定の信号を出力している。
【0034】
時間計測回路29には、所定の時間間隔のクロック信号を生成するクロック回路33が設けられている。時間計測回路29は、送信回路25に信号を出力したタイミングから受信回路27から信号が入力されるタイミングまでの間に、クロック回路33が発信したクロック信号の数(時間)を計測している。通信回路31は、時間計測回路29が計測したクロック信号数などを制御部7に送信するとともに、時間計測回路29へ入力される制御信号などを制御部7から受信している。
【0035】
制御部7には、計測者が配管57の分岐モデルなどの初期条件等を入力する入力部35や、計測用インターフェイス5から入力された信号等に基づいて配管長を算出する演算部37や、計測状況、算出結果などを表示する表示部39などが設けられている。
【0036】
次に、上記の構成からなる配管長測定装置1における配管長の測定方法について説明する。
図4は、図1の配管長測定装置における配管長測定方法を説明するフローチャートである。
まず、図1に示すように、配管57の各端末に送受信器3が配置される。
そして、図2に示すように、制御部7により、配管長の測定に用いられる送受信器3の設定(有効送受信器設定)が行われる(ステップS1)。具体的には各送受信器3に番号を設定する。
【0037】
次に、配管57の分岐形態に応じて選択した配管分岐モデルを制御部7の入力部35に入力する(モデル選択ステップ、ステップS2)。配管分岐モデルの選択は、測定者が予め入手した空気調和機51の設計図に基づいて行ってもよいし、配管57の分岐を現場で確認して選択しても良く、特に限定するものではない。
そして、制御部7は、選択された配管分岐モデルに基づいて配管57に対して振動を与える送信器9の番号を設定する(ステップS3)。
【0038】
送信器番号が設定されると、制御部7は、計測用インターフェイス5に計測開始信号を送信する(計測ステップ、ステップS4)。計測開始信号は、通信回路31を介して時間計測回路29に入力される。時間計測回路29は、設定された送信器番号に対応する送信回路25に対してソレノイド21の駆動信号を出力するとともに、クロック信号数のカウントを開始する。送信回路25は、駆動信号に基づいてソレノイド21を駆動する駆動電力を生成し、ソレノイド21に供給する。
【0039】
ソレノイド21は、図3に示すように、送信回路25により供給された駆動電力により取付け金具23に向けて駆動され、鉄芯19が取付け金具23に打ち付けられる。鉄芯19を取付け金具23に打ち付けることにより生成された振動は、取付け金具23から受信体13に伝わり、受信体13から配管57に伝わる。
振動は配管57を所定の速度で伝わり、他の送受信器3が配置された配管57の端末に到達する。端末に到達した振動は受信体13に伝わり、受信素子15に検出される。
受信素子15は受信信号を受信回路27に出力し、受信回路27は所定の信号処理を受信信号に施して受信信号を時間計測回路29に出力する。所定の信号処理としてしては、ノイズの除去等が挙げられるが、特に限定するものではない。
【0040】
時間計測回路29は、ソレノイド21の駆動信号を出力してから各受信器11の受信信号を受取るまでのクロック信号数をそれぞれ計測する。時間計測回路29は、送信器番号が設定された送信器9と同一の送受信器3に設けられた受信器11以外の全ての受信器11から受信信号を受取ると、計測終了信号を制御部7に送信する。
制御部7は計測終了信号を受信すると(ステップS5)、時間計測回路29から計測したデータ(クロック信号数など)を取得する(ステップS6)。
【0041】
取得した計測データは演算部37に入力され、演算部37は配管分岐モデルに沿った計算式を作成する(演算ステップ、ステップS7)。制御部7は、配管分岐モデルに基づいて、次に配管57に対して振動を与える送信器9の番号を設定する(ステップS8)。
そして、制御部7は、配管57の配管長を算出するのに十分な計算式が作成されているか否かにより、計測を終了するか否かを判断する(ステップS9)。
なお、上述の配管分岐モデルに沿った計算式、および、配管長を計算するのに十分な計算式の数については後述する。
【0042】
計測を継続する場合には、ステップS4に戻って、制御部7は計測用インターフェイス5に計測開始信号を送信する。
一方、計測を終了する場合には、演算部37が作成した計算式からなる連立方程式を計算し、解である配管57の配管長を求める(演算ステップ、ステップS10)。ここで、上述の連立方程式の解の有無を判定する(ステップS11)。
解が無いと判定された場合には、計算式の前提となっていた配管分岐モデルが間違っていたとみなして、ステップS2の配管分岐モデルの選択に戻り、新たな配管分岐モデルに基づいて上述の測定を繰り返す。
一方、解があると判定された場合には、得られた解に基づく配管57の配管長を表示部39に表示して(ステップS12)、配管長の計測を終了する。
【0043】
図5は、図2の演算部37における演算を説明する際に用いる配管分岐モデルの一例を示す図である。
次に、演算部37における演算について説明する。ここでは、図5に示すように、1つの分岐点から3方に延びる配管分岐モデルであって、3つの端末を有するものの場合における演算について説明する。
この配管分岐モデルの各端末を端末A,端末B,端末Cとし、端末Aから端末Bまでの配管長をLab,端末Bから端末Cまでの配管長をLbc,端末Cから端末Aまでの配管長をLcaとする。また、端末Aから分岐までの区間の長さをLa,端末Bから分岐までの区間の長さをLb,端末Cから分岐までの区間の長さをLcとする。
ここで、各配管長Lab,Lbc,Lcaと、各区間長La,Lb,Lcとの間には下記の関係が成り立つ。
Lab=La+Lb ・・・(1)
Lbc=Lb+Lc ・・・(2)
Lca=Lc+La ・・・(3)
【0044】
また、配管57の振動の伝搬速度をVsとすると、各配管長Lab,Lbc,Lcaは下記のように表される。
Lab=Vs×Tab ・・・(4)
Lbc=Vs×Tbc ・・・(5)
Lca=Vs×Tca ・・・(6)
ここで、Tabは振動が配管長Labを伝搬する時間であり、Tbcは振動が配管長Lbcを伝搬する時間であり、Tcaは振動が配管長Lcaを伝搬する時間である。
【0045】
上述の式(1)から式(3)を連立方程式として、La,Lb,Lcについて解くと下記の式となる。
La=(Lab−Lbc+Lca)/2 ・・・(7)
Lb=(Lab+Lbc−Lca)/2 ・・・(8)
Lc=(−Lab+Lbc+Lca)/2 ・・・(9)
さらに、図5に示すような3つの配管端末が分岐した配管分岐モデルよりも多くの配管端末が分岐した配管分岐モデルであっても、上述の考え方により、式を拡張することで、配管57の各区間長さを求めることができる。
【0046】
演算部37は、ステップS7において、配管分岐モデルに基づいて、上述の式(1)から式(6)を作成するとともに、計測データに基づいて、式(4)から式(6)を演算する。
その後、演算部37は、ステップS10において、上述の式(1)から式(3)の連立方程式を解いて、式(7)から式(9)に示されるような区間長さLa,Lb,Lcを求める。これにより、配管57の全ての配管長が求められたことになる。
【0047】
また、例えば、配管端末がn個に分岐した配管57の場合、1回の配管長測定(ステップS4からステップS5)において、演算部37は最大n−1個の方程式を生成することができる。しかしながら、配管端末がn個に分岐した配管57の各区間長を算出するためには、少なくとも(n−2)×2+1個の方程式が必要となる。そのため、配管長測定は少なくとも2回実施する必要がある。
【0048】
上記の構成によれば、送信器9から配管に与えられた振動が、複数の受信器11に検知されるまでの複数の計測時間が、時間計測回路29により計測される。この計測時間に基づいて、演算部37は、送受信器3が配置された配管57の一の配管端末から配管57の複数の他の配管端末までの間に含まれる各区間の長さを算出することができる。
【0049】
つまり、振動は所定の速度で配管57等を伝搬するため、振動の伝搬速度と複数の計測時間とに基づいて、送信器9から各受信器11までの配管長を求める複数の方程式(例えば、式(4)から式(6))を求めることができる。また、この方程式で求められる複数の配管長は、それぞれ複数の区間の和として表すことができ(例えば、式(1)から式(3))、これらの複数の式を連立することにより、配管の区間長さを上記複数の配管長の関数として表すことができる(例えば、式(7)から式(9))。
演算部は、送信器9から受信器11までの距離(配管長)を振動の伝搬速度と計測時間とに基づいて算出するとともに、配管57の各区間長さを算出した配管長に基づいて算出することができる。
そのため、空気調和機51の全配管長を算出することができ、空気調和機51の冷凍サイクルに適正量の冷媒をチャージさせることができる。
【0050】
送信器9には、配管57に振動を与える鉄芯19と、鉄芯19を駆動するソレノイド21とが設けられているため、配管57に容易に振動を与えることができる。
また、測定者がハンマー等で配管57を叩いて配管57に振動を与える方法と比較して、一定の振動を配管57に繰り返し与えることができるため、配管長の算出精度を向上させることができる。
複数の送信器9を用いて配管長を測定する場合には、遠隔操作などによりソレノイド21を制御することで、複数の送信器9から振動を順次に配管に与えることができる。そのため、測定者がハンマー等で配管57に振動を与える方法と比較して、配管長の測定時間を短縮することができる。
【0051】
なお、上述のように、配管57に振動を与える送信器9に係る送受信器3以外の全ての送受信器3に係る受信器11の信号に基づいて、多元の連立方程式を生成して配管57の各区間長を算出してもよいし、図5に示すような1つの分岐から3つの配管57が延びる配管分岐モデルに基づいて3元の連立方程式を生成し配管57の各区間長を算出してもよい。この場合には、3つの配管57の区間長を算出した後に、新たな送受信器3を1つ追加して、長さが不明な配管57の区間長を算出する。
このような算出方法とすることにより、演算部37における演算プログラムを簡略化することができ、プログラムが作成しやすくなる。また、長い区間においては振動が減衰して受信器11が振動を検出できない恐れがあるが、上述のような直近の2ヶ所で振動を検出することにより、振動の減衰の影響を小さくすることができる。
【0052】
図6は、図1の配管長測定装置における他の配管長測定方法を説明するフローチャートである。
具体的には、図6に示すように、制御部7により、配管長の測定に用いられる送受信器3の設定(有効送受信器設定)が行われる(ステップS1)。
【0053】
次に、制御部7は、配管57に対して最初に振動を与える送信器9の番号を設定する(ステップS21)。
送信器番号が設定されると、制御部7は、計測用インターフェイス5に計測開始信号を送信し(計測ステップ、ステップS4)、配管57に対して振動を与える送信機9に係る送受信器3と、それ以外の複数の送受信器3との間で振動の伝搬時間が計測される。
制御部7は計測終了信号を受信すると(ステップS5)、時間計測回路29から計測したデータ(クロック信号数など)を取得する(ステップS6)。そして、制御部7は、配管分岐モデルに基づいて、次に配管57に対して振動を与える送信器9の番号を設定する(ステップS8)。
【0054】
次に、制御部7は、配管57の配管長を算出するのに十分な計算式が作成されているか否かにより、計測を終了するか否かを判断する(ステップS9)。
計測を継続する場合には、ステップS4に戻って、制御部7は計測用インターフェイス5に計測開始信号を送信する。
一方、計測を終了する場合には、演算部37は図5に示す配管分岐モデルに沿った計算式を作成する(ステップS22)。そして、演算部37が作成した計算式からなる連立方程式を計算し、解である配管57の配管長を求める(ステップS10)。
【0055】
その後、演算部37は次の計算ポイントを指定して(ステップS23)、計算を終了するか否かを判断する(ステップS24)。
計算を継続する場合には、ステップS22に戻って計算式の作成から繰り返す。
一方、計算を終了する場合には、配管57の配管長を表示部39に表示して(ステップS12)、配管長の計測を終了する。
【0056】
図7は、図1の配管長計測装置の他の実施形態を説明するブロック図である。
なお、上述のように、送受信部3のソレノイド21に対して所定の一定な駆動電力が供給されてもよいし、電力量が可変な駆動電力が供給されるように構成されていてもよい。
具体的には、計測用インターフェイス5に、電圧調整器61が設けられ、電圧調整器61には通信回路31を介して制御部7から制御信号が入力されている。電圧調整器61は送信回路25と送受信器3のソレノイド21とを接続する配線と接続され、ソレノイド21に供給される駆動電力の電圧を制御している。
このように構成することにより、送信器9のソレノイド21による打撃音を最低限度に抑えることができ、配管長測定時の騒音を抑えることができる。また、測定当初の打撃では配管長の測定が困難な場合には、徐々にソレノイド21による打撃を強くして、配管長の測定を可能にすることができる。
【0057】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図8および図9を参照して説明する。
本実施形態の配管長測定装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、送受信器の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8および図9を用いて送受信器の周辺のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る配管長計測装置の全体構成を説明するブロック図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
配管長測定装置101は、図8に示すように、配管57の各配管端末に配置された送受信器(送信部、受信部)103と、送受信器103と信号の送受信を行う計測用インターフェイス5と、配管長測定装置1を制御するとともに計測用インターフェイス5からの出力に基づいて配管57の配管長を算出する制御部7と、から概略構成されている。
【0059】
図9は、図8の送受信器の構成を説明する概略図である。
送受信器103は、図9に示すように、配管57内の空気に対して音波を発振スピーカの役割を果たすとともに、配管57内の空気から伝わってきた音波を検出するマイクの役割を果たす送受信素子(スピーカ、マイク)115と、送受信素子115が配置された送受信体113と、送受信体113を覆うように配置された防音部材(防振部材)116と、から概略構成されている。
【0060】
送受信体113は略円柱状に形成され、その中心軸線に沿って形成された穴114に送受信素子115が配置されている。送受信体113の配管57と接する一方の端部はテーパ状に形成され、テーパ状に形成された端部に穴114の開口部が形成されている。また、送受信体113の円筒面には、配管57の取り付け用ナット59と螺合されるネジ部17が形成されている。
防音部材116は、例えば、発泡樹脂などの防音性の樹脂から形成されており、発泡スチロールなどを例示することができる。
【0061】
次に、上記の構成からなる配管長測定装置101における配管長の測定方法について説明する。
本実施形態における配管長測定方法は、配管57の配管長を測定する際に、配管57内の空気を伝搬する音波を利用する点が上述の第1の実施形態と異なるだけであるため、その説明を省略する。
【0062】
上記の構成によれば、送受信素子115により、配管57内の空気に音波を発振すると共に、配管57内の空気を伝搬してきた音波を検出することができるため、送受信器103の小型化を図ることができる。
配管57に振動を与える方法と比較して、送受信器103を配管に密着させる必要がないため、送受信器103の配置が容易となる。
【0063】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図10および図11を参照して説明する。
本実施形態の配管長計測装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、送受信器および計測用インターフェイスの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図10および図11を用いて送受信器および計測用インターフェイスの構成の周辺を説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図10は、本実施形態における配管長計測装置の概略構成を説明する模式図である。図11は、図10の配管長計測装置の構成を説明するブロック図である。
なお、第1の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
配管長測定装置151は、図10および図11に示すように、配管57の各配管端末に配置された送受信器153と、送受信器153と信号の送受信を行う計測用インターフェイス155と、配管長測定装置151を制御するとともに計測用インターフェイス155からの出力に基づいて配管57の配管長を算出する制御部7と、から概略構成されている。
【0065】
計測用インターフェイス155には、時間計測回路29からの入力に基づき送受信器153へ送信する電波信号を生成する送信信号発生回路161と、送信信号発生回路161により生成された電波信号を無線送信する無線通信器(制御側無線通信部)163と、が設けられている。
送受信器153には、上述の無線通信器163から無線送信された電波信号を受信する無線通信器(駆動側無線通信部)165が設けられている。送信器9は、無線通信器165が受信した電波信号に基づいて駆動される。
【0066】
次に、上記の構成からなる配管長測定装置101における配管長の測定方法について説明する。
本実施形態における配管長測定方法は、時間計測回路29からソレノイド21に出力される駆動信号の伝達経路が異なるだけであるため、その部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0067】
制御部7により生成されたソレノイド21の駆動信号は、通信回路31および時間計測回路29を介して送信信号発生回路161に入力される。送信信号発生回路161は、入力された駆動信号に基づいて電波信号を生成して、無線通信器163に出力する。無線通信器163は、入力された電波信号に基づいて送受信器153に送る電波を生成する。
送受信器153の無線通信器165は無線通信器163から発せられた電波を受信し、送信器9のソレノイド21は、受信した電波に基づいて制御される。
【0068】
上記の構成によれば、無線通信器163,165を用いることにより、例えば、制御部7と送信器9とを配線や信号線などで接続している場合と比較して、時間計測回路29により計測される計測時間の測定精度を向上させることができる。
配線等には浮遊容量などが存在し、この容量により、配線等を伝わる信号に遅れが生じる。そのため、駆動信号が送信器9に到達するタイミングと、駆動信号が時間計測回路29に到達するタイミングとが異なる恐れがあり、このタイミングのずれにより上記計測時間の測定精度が低下する恐れがあった。
そこで、本発明の配管長計測装置151ように無線通信器163,165により駆動信号を送信器9に伝えることにより、上述の信号遅れを防止して、上記計測時間の精度を向上させることができる。
【0069】
特に、ビル用空気調和機の場合には、制御部7と送信器9との距離が長くなり上述の信号遅れが顕著となるため、無線通信器163,165を用いることにより、計測される時間の精度向上が顕著となる。
また、配線等の接続部から外部のノイズが信号にまぎれることを防止することができるため、上記計測時間の精度を向上させることができる。
【0070】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図12および図13を参照して説明する。
本実施形態の配管長計測装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、送受信器および計測用インターフェイスの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図12および図13を用いて送受信器および計測用インターフェイスの構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図12は、本実施形態における配管長計測装置の概略構成を説明する模式図である。図13は、図12の配管長計測装置の構成を説明するブロック図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
配管長計測装置201は、図12および図13に示すように、配管57の各配管端末に配置された送受信器203と、送受信器203と信号の送受信を行う計測用インターフェイス205と、配管長計測装置201を制御するとともに計測用インターフェイス205からの出力に基づいて配管57の配管長を算出する制御部7と、から概略構成されている。
【0072】
計測用インターフェイス205には、制御部7との間で信号等を交換する通信回路231と、通信回路231と電気的に接続された無線通信器(制御側無線通信部)263と、通信回路231と電気的に接続されたクロック回路33と、が設けられている。
【0073】
送受信器203には、無線通信器263と電波による通信が可能な無線通信器(駆動側無線通信部)265と、振動が配管57を伝搬する時間を計測する時間計測回路229と、配管57に振動を与える送信器9と、配管57を伝搬してきた振動を検出する受信器11と、これら無線通信器265、時間計測回路229、送信器9、受信器11を駆動する電力を供給する電源230と、が設けられている。
無線通信器265は、受信した送信器9の駆動信号を時間計測回路229および送信器9に出力するとともに、時間計測回路229の計測結果を受取り、無線通信器263を介して通信回路231に出力する。
【0074】
次に、上記の構成からなる配管長計測装置201における配管長の測定方法について説明する。
本実施形態における配管長測定方法は、送受信器203および計測用インターフェイス205における信号などが処理される位置、および、信号の伝達経路などが異なるだけであるため、その部分のみを説明し、他の部分の説明を省略する。
【0075】
制御部7から配管長の計測開始信号が計測用インターフェイス205に送信されると、通信回路231は、設定された送信器9に対して駆動信号を生成して、無線通信器263に出力する。同時に、通信回路231は、クロック回路(信号生成部)33により生成されるクロック信号(基準信号)を無線通信機263に出力する。無線通信器263は、入力された駆動信号およびクロック信号を電波として送信する。
【0076】
電波として送信された駆動信号およびクロック信号は無線通信器265に受信される。受信された駆動信号およびクロック信号は時間計測回路229に入力され、時間計測回路229は、時間の計測を開始する。また、上述の設定された送信器9に係る無線通信器265に受信された駆動信号は送信器9に入力され、送信器9は入力された駆動信号に基づいて振動を配管57に与える。
【0077】
そして、受信器11は配管57を伝搬してきた振動を検出すると検出信号を時間計測回路229に出力する。時間計測回路229は、検出信号が入力されると時間の計測を止めて振動の伝搬時間である計測時間を求める。この計測時間は、無線通信器265を介して入力されているクロック信号に基づいて計測されている。
時間計測回路229により計測された計測時間は、無線通信器265、無線通信器263および通信回路231を介して演算部37に入力され、演算部37は計測された計測時間に基づいて配管57の各区間の長さを算出する。
【0078】
上記の構成によれば、電源230が送受信器203に配置されているとともに、少なくとも送受信器203に搭載された時間計測回路229、送信器9および受信器11に電力を供給するため、配管端末に配置された送受信器203は、計測用インターフェイス205や制御部7などから電力的に独立することができる。
【0079】
無線通信機263,265は、クロック信号および複数の計測時間を電波で送信できるため、複数の時間計測回路229と演算部37、および、複数の時間計測回路229とクロック回路33とを配線等で接続する必要がない。
そのため、配管の端末に配置された時間計測回路229、無線通信機263,265、送信器9および受信器11を搭載する送受信器203は、配線などにより、計測用インターフェイス205や制御部7と接続する必要がなくなる。すると、配管長の測定の際に、計測用インターフェイス205や制御部7と、複数の送受信器203を接続する配線などを配置する必要がなくなり、測定時の手間が簡略化される。
【0080】
無線通信機263,265は、クロック信号を電波で送信できるため、複数の時間計測回路229に略同時にクロック信号を伝えることができる。そのため、各時間計測回路229は、同一の時間軸上で計測時間を測定できる。つまり、各計測時間の計測開始点を同一にそろえることができ、計測時間の計測精度を向上させることができる。
【0081】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、この発明を空気調和機の配管の各区間の長さを測定する配管長計測装置に適応して説明したが、この発明は空気調和機の配管計測に用いられるものに限られることなく、その他各種の機器の配管長の計測に適応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配管長測定装置の概略構成を説明する模式図である。
【図2】図1の配管長測定装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】図1の送受信器の構成を説明する概略図である。
【図4】図1の配管長測定装置における配管長測定方法を説明するフローチャートである。
【図5】図2の演算部における演算を説明する際に用いる配管分岐モデルの一例を示す図である。
【図6】図1の配管長測定装置における他の配管長測定方法を説明するフローチャートである。
【図7】図1の配管長計測装置の他の実施形態を説明するブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る配管長計測装置の全体構成を説明するブロック図である。
【図9】図8の送受信器の構成を説明する概略図である。
【図10】本発明の第3の実施形態における配管長計測装置の概略構成を説明する模式図である。
【図11】図10の配管長計測装置の構成を説明するブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施形態における配管長計測装置の概略構成を説明する模式図である。
【図13】図12の配管長計測装置の構成を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1,101,151,201 配管長測定装置
7 制御部(演算部)
9 送信器(送信部)
11 受信器(受信部)
19 鉄芯(振動発生部)
21 ソレノイド(駆動部)
29,229 時間計測回路(時間計測部)
37 演算部
103 送受信器(送信部、受信部)
115 送受信素子(スピーカ、マイク)
116 防音部材(防振部材)
163,263 無線通信器(制御側無線通信部)
165,265 無線通信器(駆動側無線通信部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐した複数の配管端末を有する配管の各区間の長さを測定する配管長測定装置であって、
前記配管の所定位置に配置され、前記配管または前記配管内部に振動を与える送信部と、
前記配管の所定位置に配置され、前記配管または前記配管内部の振動を検知する複数の受信部と、
前記送信部から振動が発振されてから、振動が複数の前記受信部に受信されるまでの複数の時間を計測する時間計測部と、
前記各受信部に対応して得られる前記複数の計測時間に基づいて、前記配管の各区間の長さを前記送信部から前記受信部までの距離に係る長さとして算出する演算部と、が設けられていることを特徴とする配管長測定装置。
【請求項2】
前記送信部には、前記配管に振動を与える振動発生部と、該振動発生部を駆動する駆動部とが設けられていることを特徴とする請求項1記載の配管長測定装置。
【請求項3】
前記駆動部がソレノイドであり、
該ソレノイドに電力を供給する電源が備えられ、
該電源は、供給する電力量を変更することができることを特徴とする請求項2記載の配管長測定装置。
【請求項4】
前記送信部が、前記配管内の流体に音波を発振するスピーカであり、
前記受信部が、前記配管内の流体を伝わってきた音波を検知するマイクであることを特徴とする請求項1記載の配管長測定装置。
【請求項5】
少なくとも前記受信部の周りに防振部材が配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配管長測定装置。
【請求項6】
前記送信部および前記時間計測部に対する制御信号を生成する制御部と、
前記制御信号を電波で送信する制御側無線通信部と、
電波で送信された前記制御信号を受信する駆動側無線通信部と、が設けられ、
前記送信部が受信された前記制御信号に基づいて駆動制御されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の配管長測定装置。
【請求項7】
前記配管の所定位置に、前記時間計測部と、少なくとも前記時間計測部、前記駆動側無線通信部、前記送信部および前記受信部に電力を供給する電源と、が配置され、
前記時間計測部に入力される時間計測の基準となる信号を生成する信号生成部が設けられ、
前記信号生成部から入力された前記基準信号が、前記制御側無線通信部から前記駆動側無線通信部へ送信され、
前記時間計測部から出力された前記複数の計測時間が、前記駆動側無線通信部から前記制御側無線通信部へ送信されることを特徴とする請求項6記載の配管長測定装置。
【請求項8】
分岐した複数の配管端末を有する配管の各区間の長さを測定する配管長測定方法であって、
配管の一の所定位置に配置された送信部から前記配管または前記配管内部に振動を与えてから、前記配管の複数の他の所定位置に配置された受信部により前記配管または前記配管内部の振動を検知するまでの複数の時間を計測する計測ステップと、
前記各受信部に対応して得られる前記複数の計測時間に基づいて、前記配管の各区間の長さを前記送信部から前記受信部までの距離に係る長さとして算出する演算ステップと、を有することを特徴とする配管長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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