説明

配線シート付き配線体、半導体装置、およびその半導体装置の製造方法

【課題】製造工程を簡略化することのできる配線シート付き配線体、半導体装置、およびその半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1主面11にソース電極14およびゲート電極15が形成されかつ第2主面12にドレイン電極13が形成されたスイッチング素子10と、ドレイン電極13に接続された導電層積層基板80とを備える半導体装置1に対して、配線シート付き配線体30は、上側配線構造体として用いられる。配線シート付き配線体30は、ソース電極14に接続される配線体40と、ゲート電極15に接続されるゲート端子が設けられた配線シート60とを備える。配線体40の外面41Bに配線シート60が貼り付けられている。配線シート60のうち少なくとも先端部60Cは可撓性を有し、かつ先端部60Cのうちゲート端子を含む端子部62Bは配線体40から外側に突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子に接続される配線シート付き配線体、半導体装置、およびその半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用の半導体装置の一種として片側冷却構造の半導体装置が知られている。この種の半導体装置は、スイッチング素子と、スイッチング素子が配置される導電層積層基板と、配線構造体とを備える。配線構造体は、スイッチング素子の第1主面の第1電極に接続される配線体と、制御電極に接続される配線体とを備えている。
【0003】
電力制御用のスイッチング素子としては、シリコン(Si)系のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が主に用いられている。なお、近年、Siに比べて高耐圧・低損失が可能なワイドバンドギャップ半導体材料により形成された素子も採用され始めている。例えば、炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等により形成された電界効果トランジスタ、SiC系のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、GaN系のMESFETが用いられている。
【0004】
特許文献1に記載されている技術では、スイッチング素子の第1電極(エミッタ電極)に接続される配線体としてリードフレームを用いている。リードフレームと第1電極との間はワイヤで接続されている。一方、スイッチング素子の制御電極(ゲート電極)に接続される配線体としてはフレキシブル基板が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−332579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の製造工程の効率化の要求から配線構造体の構造検討が行われている。
特許文献1の技術の場合、スイッチング素子とリードフレームとの間の接続は複数のワイヤを用いている。このような構造の場合、半導体装置内に実装するスイッチング素子の個数が多いときワイヤ数も多くなり、接続工程時間が長くなる。このような実情から製造工程を簡略化することのできる半導体装置の構造が要求されている。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造工程を簡略化することのできる配線シート付き配線体、半導体装置、およびその半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1に記載の発明は、第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続された導電層積層基板と、前記第1電極および前記制御電極に接続された配線構造体とを備える半導体装置について、前記半導体装置の前記配線構造体として用いられる配線シート付き配線体であって、前記第1電極に接続される配線体と、前記制御電極に接続される制御端子が設けられた配線シートとを備え、前記配線体において前記第1電極が接続される内面とは反対側の外面に、前記配線シートが取り付けられ、前記配線シートのうち少なくとも先端部は可撓性を有し、かつ前記先端部のうち前記制御端子を含む端子部は前記配線体から外側に突出することを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、従来構造のワイヤ接続に代えて、ワイヤを用いずに配線体と第1電極とを接続する。これにより、従来構造のように多数のワイヤ接続作業を行う必要がないため、製造工程を簡略化することができる。
【0010】
ところで、上記構造によれば、次のことが懸念される。すなわち、半導体装置において、配線体に配線シートを取り付けた構造すなわち配線構造体をモジュール化しているため、配線体に対する配線シートの移動が制限される。このことから次のことが予想される、スイッチング素子に対して配線シート付き配線体を配置する場合において、配線シートの制御端子とスイッチング素子の制御電極とが互いに対向せずに位置ずれがあったときは、両者の接続が困難になる。
【0011】
本発明においては、配線シートのうち少なくとも先端部に可撓性をもたせ、かつ制御端子を含む端子部を配線体から外側に突出させる。このような構成によれば、スイッチング素子に対して配線シート付き配線体を配置するとき、先端部を曲げて配線シートの制御端子とスイッチング素子の制御電極とを互いに接続することができる。このため、制御端子と制御電極とが精確に対向していない場合においても容易に位置調整をすることができるため、接続作業の困難性は殆ど生じない。すなわち、配線シート付き配線体を用いることにより、接続作業の困難性を増大させることなく、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0012】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線シート付き配線体において、前記配線体の周囲であって前記配線シートの前記先端部の基部に対向する部分が、前記配線体の前記外面から前記内面に向けて斜めに形成されていることを要旨とする。
【0013】
配線シートの前記先端部の基部に対向する部分が斜めに形成されていない場合は、先端部の基部を配線体側に向けて曲げることができないため、端子部が曲げられて、配線シートの制御端子とスイッチング素子の制御電極とが接続される。
【0014】
一方、本発明では、配線シートの前記先端部の基部に対向する部分が斜め形成されているため、先端部の基部から曲げることができ、これにより、先端部の曲率半径を大きくすることができる。このため、端子部の制御端子とスイッチング素子の制御電極とが接続された状態において、端子部およびスイッチング素子に加わる応力を小さくすることができる。
【0015】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の配線シート付き配線体において、前記制御端子は、前記配線シートにおいて前記配線体が接触する面と同じ面に形成されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、配線シートの先端部をスイッチング素子側に向けて押し曲げることにより、端子部の制御端子とスイッチング素子の制御電極とを互いに接続することができる。
【0017】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の配線シート付き配線体において、前記制御端子は、前記配線シートにおいて前記配線体に接触する面とは反対側の面に形成されていることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、配線シートにおいて配線体に接触する面とは反対側の面がスイッチング素子と対向するように、端子部を反転させることにより、端子部の制御端子とスイッチング素子の制御電極とを接続することができる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の配線シート付き配線体を備えた半導体装置である。
この発明によれば、上記構成の配線シート付き配線体を備えるため半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0020】
(6)請求項6に記載の発明は、第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを備える半導体装置において、前記配線体のうち前記第1電極が接続される内面とは反対側の外面に、前記配線シートが取り付けられ、前記配線シートの先端部が曲げられて前記先端部の制御端子と前記制御電極とが接続されていることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、配線体と配線シートとが一体にされているため、半導体装置の組み立てが容易である。また、配線シートの先端部は曲げられてスイッチング素子の制御電極に接続される構造を有するため、配線シートの制御端子をスイッチング素子の制御電極に対して位置決めすることが容易である。すなわち、上記構造により、スイッチング素子を含む半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0022】
(7)請求項7に記載の発明は、第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを含む半導体装置の製造方法であって、前記導電層積層基板に前記スイッチング素子を配置する工程と、前記配線体と前記配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成する工程と、前記配線シート付き配線体の前記配線体と前記スイッチング素子の前記第1電極とを接続する工程と、前記配線シートの制御端子と前記スイッチング素子の前記制御電極とを接続する工程とを含むことを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、配線体と配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成し、次に、配線シート付き配線体とスイッチング素子とを互いに接続する。すなわち、配線体と配線シートとを一括してスイッチング素子に対して接続するため、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0024】
(8)請求項8に記載の発明は、第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを含む半導体装置の製造方法であって、前記導電層積層基板に前記スイッチング素子を配置する工程と、前記配線体と前記配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成する工程と、前記配線シート付き配線体の前記配線体と前記スイッチング素子の前記第1電極とを接続するとともに、前記配線シートの制御端子と前記スイッチング素子の前記制御電極とを接続する工程とを含むことを要旨とする。
【0025】
この発明は、第1に、配線体と配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成し、次に、配線シート付き配線体とスイッチング素子とを互いに接続するという構成を備える。第2に、配線体と第1電極との接続、および配線シートの制御端子とスイッチング素子の制御電極との接続を同じ工程で行うという構成を備える。第1の構成によれば、配線体と配線シートとを一括してスイッチング素子に対して接続することによる効果、すなわち製造工程の簡略化効果が生じる。第2の構成によれば、配線体と第1電極との接続、および配線シートの制御端子とスイッチング素子の制御電極との接続を別々の工程で行う場合に比べて、製造時間を短縮することができる。すなわち、本発明によれば、製造工程を簡略化することができるとともに、接続工程の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、製造工程を簡略化することのできる配線シート付き配線体、半導体装置、およびその半導体装置の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の半導体装置について、その平面構造を示す平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】配線シートの先端部を拡大した拡大断面図。
【図4】先端部の位置決め方法を説明する断面図。
【図5】半導体装置の変形例について、その断面構造を示す断面図。
【図6】先端部の位置決め方法を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2を参照して、本発明の半導体装置の一実施形態について説明する。
以下に説明する半導体装置1は、例えば、インバータ等のスイッチング回路に用いられる。
【0029】
半導体装置1は、スイッチング素子10と、フライホイールダイオード20と、配線シート付き配線体30と、導電層積層基板80と、ケース90と、封止樹脂100とを備えている。
【0030】
半導体装置1の回路構成は次の通り。
スイッチング素子10とフライホイールダイオード20とは並列接続されている。すなわち、スイッチング素子10のソース電極14とフライホイールダイオード20のアノード電極とが互いに接続されている。スイッチング素子10のドレイン電極13とフライホイールダイオード20のカソード電極とが互いに接続されている。
【0031】
スイッチング素子10のゲート電極15には信号配線(配線61)が接続されている。なお、フライホイールダイオード20はスイッチング素子10の逆方向に発生する電力を逃すための素子である。これにより過電力がスイッチング素子10に加わることを抑制する。
【0032】
以下、半導体装置1の各構成要素について説明する。
スイッチング素子10は、n型MOSFETにより形成されている。
スイッチング素子10の第1主面11には、ソース電極14(第1電極)と、ゲート電極15(制御電極)と、第1モニタ電極16と、第2モニタ電極17と、第3モニタ電極18と、第4モニタ電極19とが形成されている。スイッチング素子10の第2主面12には、ドレイン電極13(第2電極)が形成されている。
【0033】
第1モニタ電極16は、温度モニタ用としてスイッチング素子10内に形成された温度特性モニタ用ダイオードのアノードに接続されている。第2モニタ電極17は、前記温度特性モニタ用ダイオードのカソードに接続されている。なお、第1モニタ電極16と第2モニタ電極17との間の電位差に基づいてスイッチング素子10の温度が推定される。
【0034】
第3モニタ電極18は、スイッチング素子10内のドレイン層に接続されている。すなわち、ドレイン電流の一部が出力される。例えば、ドレイン電流の1/10000が分流される。
【0035】
第4モニタ電極19は、スイッチング素子10内のソース層に接続されている。なお、スイッチング素子10のゲート電極15に入力される信号は、ソース層の電位すなわち第4モニタ電極19の電位を基準にして形成される。
【0036】
ソース電極14は各電極15〜19よりも大きい。各電極15〜19は、第1主面11の端側に一列に配置されている。これら電極15〜19は、矩形であり、略同じ大きさに形成されている。
【0037】
フライホイールダイオード20はシリコン(Si)により形成されている。
フライホイールダイオード20の第1主面21にはアノード電極(一電極)が形成されている。フライホイールダイオード20の第2主面22にはカソード電極(他電極)が形成されている。
【0038】
ケース90は、スイッチング素子10、フライホイールダイオード20、および配線シート付き配線体30の一部を収容する。ケース90の内側には、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を封止する封止樹脂100が充填されている。封止樹脂100としては、シリコーンゲルまたはエポキシ樹脂等が用いられる。
【0039】
ケース90は、半導体装置1の底壁を構成するヒートシンク板93と、側壁を構成する枠体94とを備えている。枠体94はヒートシンク板93の周囲を囲う。枠体94は耐熱性樹脂により形成されている。枠体94には、第1外部端子91と、第2外部端子92とが取り付けられている。ケース90の底面には導電層積層基板80が取り付けられている。すなわち、導電層積層基板80はヒートシンク板93の上に配置され、両者は半田で接続されている。
【0040】
図2に示すように、導電層積層基板80は、絶縁基板81と、絶縁基板81の一面に形成された第1導電層82Aおよび第2導電層82Bと、絶縁基板81の他面に形成された金属層83とを備えている。
【0041】
絶縁基板81は、窒化アルミニウム等のセラミックスにより形成されている。
第1導電層82Aおよび第2導電層82Bは、銅、アルミニウム等の導電性の高い金属により形成されている。第1導電層82Aと第2導電層82Bとは、電気的に独立している。
【0042】
金属層83は、絶縁基板81の反り抑制のために設けられている。金属層83は、導電層82A,82Bと同等の膨張係数の材料により形成されている。例えば、金属層83は、銅、アルミニウム等により形成される。
【0043】
この種の導電層積層基板80として、DBA(DBA:Direct Brazed Aluminum)、DBC(Direct Bonding Copper)、AMC(Active Metal Brazed Copper)等が用いられる。また、窒化珪素基板(Si)に銅板を接合した基板を用いることもできる。
【0044】
配線シート付き配線体30は、配線体40と、配線シート60とを備えている。
配線体40は、本体部41と、第2導電層82Bに半田接続される接続部42とを備えている。接続部42の先端部分(以下、「接触部42A」)は、第2導電層82Bに半田で接続されている。接触部42Aは平坦に形成されている。
【0045】
本体部41の内面41Aは、スイッチング素子10のソース電極14およびフライホイールダイオード20のアノード電極に半田で接続されている。本体部41の外面41Bには、配線シート60が貼り付けられている。
【0046】
図3に示すように、配線体40の周囲でスイッチング素子10の電極15〜19に対する部分には、スイッチング素子10側に向けて斜めに傾斜する傾斜面43が形成されている。傾斜面43には、配線シート60は貼り付いていない。すなわち、配線シート60において傾斜面43に対応する部分は、傾斜面43から離れている。
【0047】
配線体40において、配線シート60が離れる部分(すなわち先端部60Cの根元に対応する部分)から配線体40の先端縁までの長さ(以下、非接着長さL)は、3mm確保されている。好ましくは、非接着長さLは5mmとされる。傾斜面43の傾斜角度は5°〜90°に設定されている。なお、本実施形態では、配線シート60が離れ始める部分と配線体40が傾斜し始める部分とを一致させているが、両者を一致させないように構成してもよい。また、傾斜面43は、平坦面に限られず、曲面であってもよい。
【0048】
配線体40は数100μm厚から数mmまでの厚さを有する良導体により形成されている。スイッチング素子10によっては数10A〜100Aの電流制御が可能なものもあるため、配線体40は上記厚さに設定される。配線体40の表面は、錆防止のため、無電解Ni−Pめっき処理されている。
【0049】
配線体40の材料としては、導電性および熱伝導性の観点から銅が用いられる。例えば、タフピッチ銅、無酸素銅等、純度の高い銅により形成される。なお、軽量化のために、アルミニウムが用いられることもある。
【0050】
図2を参照して、配線シート60について説明する。
配線シート60は、フレキシブルプリント基板により形成されている。具体的には次の構成を有する。
【0051】
配線シート60は、5本の配線61と、配線61の一面を覆う第1ポリイミド層63Aと、配線61の他面を覆う第2ポリイミド層63Bとを備えている。配線61は銅材により形成されている。配線61の厚さは、例えば10〜50μmとされている。
【0052】
第1ポリイミド層63Aは、配線体40と接触する絶縁層である。第1ポリイミド層63Aの厚さは例えば10〜50μmとされる。第1ポリイミド層63Aは3層構造になっている。第1ポリイミド層63Aの中間層は非熱可塑性ポリイミド層であり、この非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が形成されている。すなわち、配線61に接触する面と、配線体40に接触する面とが、熱可塑性ポリイミド樹脂により形成されている。これにより、第1ポリイミド層63Aと配線61との高温密着性、および第1ポリイミド層63Aと配線体40との高温密着性が向上する。
【0053】
第2ポリイミド層63Bは、配線61が形成された第1ポリイミド層63Aに対し非熱可塑性樹脂を塗布することにより形成される。第2ポリイミド層63Bの厚さは例えば10〜50μmとされる。なお、配線シート60の全体の厚さ、すなわち第1ポリイミド層63Aと配線61と第2ポリイミド層63Bとを合計したときの厚さは、例えば30〜100μmとされている。
【0054】
配線シート60は、配線体40に固定される固定部60Aと、配線61を外部に引き出すリード部60Bと、端子67〜71が含まれる先端部60Cとにより区分される。図3に示すように、先端部60Cは、固定部60Aの延長部分である基部62Aと、この基部62Aの延長部分であって配線体40よりも外側に突き出る端子部62Bとを備えている。なお、基部62Aは、傾斜面43に対応する部分であり、傾斜面43には貼り付いていない。
【0055】
端子67〜71は、端子部62Bの内面64に形成されている。なお、内面64は、配線シート60において配線体40と接触する面と同じ面を示す。これに対し外面65は、配線シート60の内面64と反対側の面を示す。
【0056】
端子67〜71は、ゲート端子67(制御端子)と4個のモニタ端子68〜71とにより構成されている。図1に示すように、ゲート端子67はゲート電極15に接続されている。第1モニタ端子68は第1モニタ電極16に接続されている。第2モニタ端子69は第2モニタ電極17に接続されている。第3モニタ端子70は第3モニタ電極18に接続されている。第4モニタ端子71は第4モニタ電極19に接続されている。
【0057】
半導体装置1の各構成要素の接続関係について説明する。
スイッチング素子10とフライホイールダイオード20は、導電層積層基板80の第1導電層82Aの上に配置され、半田で接続されている。第1導電層82Aは、第2接続配線体92Aを介して第2外部端子92に接続されている。
【0058】
スイッチング素子10のソース電極14とフライホイールダイオード20の第1主面21はともに配線体40に接続されている。配線体40の接続部42は第2導電層82Bに接続されている。第2導電層82Bは、第1接続配線体91Aを介して第1外部端子91に接続されている。配線シート60の本体部41は、配線体40に貼り付けられている。端子部62Bの各端子67〜71は、スイッチング素子10の各電極15〜19に接続されている。
【0059】
上記配線シート付き配線体30の構造的特徴について説明する。
配線シート付き配線体30は、半導体装置1の上側配線構造体を構成する。配線シート付き配線体30は、2つの構成すなわち第1構成部と第2構成部とを備えている。第1構成部は、スイッチング素子10のソース電極14とフライホイールダイオード20の第1主面21とを互いに接続させる。第2構成部は、スイッチング素子10の各電極15〜19と配線シート60の各端子67〜71とを互いに接続させる。
【0060】
従来構造では、第1構成部はワイヤ接続により実現されている。スイッチング素子10のソース電極14には大電流が流れるため、ソース電極14とフライホイールダイオード20の第1主面21との接続において、多数のワイヤが用いられる。一方、第2構成部はフレキシブル基板で実現されている。
【0061】
これに対し、本実施形態では、配線シート付き配線体30が第1構成部と第2構成部との機能を有する。すなわち、第1構成部は、配線体40により実現され、第2構成部を配線シート60により実現されている。そして、配線体40と配線シート60とが一体にされている。このため、半導体装置1の製造工程においては、配線体40と配線シート60とを一括してスイッチング素子10に取り付けることができる。
【0062】
また、配線シート付き配線体30は次の2つの構造的特徴を有する。
第1の構造は、先端部60Cは可撓性を有すること、および基部62Aが固定されていないことである。そして、基部62Aは、非接着長さLよりも長く、少なくとも3mm以上である。このため、端子部62Bの可動範囲は、基部62Aが固定されている場合に比べて、大きい。
【0063】
第2の構造は、配線体40において、基部62Aに対向する部分には傾斜面43が形成されていることである。このため、先端部60Cの基部62Aの曲率半径は、配線体40に傾斜面43が形成されていない場合に比べて大きい。
【0064】
第1の構造と第2の構造は、互いに独立して、端子部62Bの可動範囲を広くする。このため、上記2つの構造によれば、配線シート60の端子67〜71とスイッチング素子10の各電極15〜19との半田接続おいて、端子部62Bをスイッチング素子10に対して適切な位置により容易に配置することが可能となる。このため、端子67〜71と電極15〜19との半田接続おいて、両者の位置ずれ量が許容範囲よりも大きくなることが抑制される。
【0065】
[半導体装置の製造方法]
半導体装置1の製造方法を説明する。
製造方法としては2つの方法がある。
【0066】
第1の製造方法は、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を導電層積層基板80に配置し、これに配線シート付き配線体30を接続する。そして、配線シート60の端子67〜71とスイッチング素子10の電極15〜19とを接続する。
【0067】
第2の製造方法は、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を導電層積層基板80に配置する。そして、このアセンブリに配線シート付き配線体30を接続するとともに、配線シート60の各端子67〜71とスイッチング素子10の各電極15〜19とを互いに接続する。すなわち、ソース電極14と配線体40との接続、フライホイールダイオード20と配線体40との接続、および電極15〜19と端子67〜71との接続を同一作業工程で行う。
【0068】
以下、各製造方法について説明する。
[第1の製造方法]
第1工程では、配線体40に、配線シート60を貼り付けて配線シート付き配線体30を形成する。具体的には、配線体40と配線シート60を積層し、互いに位置合わせする。そして、真空熱プレス装置を用いて、300℃、3MPaの条件でプレスする。
【0069】
第2工程では、ケース90のヒートシンク板93の上に導電層積層基板80を配置して、両者を半田で接続する。なお、この半田接続に代えて金属フィラ含有のロウ材により両者を接続してもよい。
【0070】
第3工程では、導電層積層基板80の第1導電層82Aに、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を配置する。
第4工程では、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20の上に配線シート付き配線体30を配置する。このとき、配線シート60を配線体40の傾斜面43に沿って曲げたときに配線シート60の各端子67〜71がスイッチング素子10の各電極15〜19に対向するように配線シート付き配線体30を配置する。そして、配線体40の内面41Aとスイッチング素子10のソース電極14とを半田で接続するとともに、配線体40の内面41Aとフライホイールダイオード20の第1主面21とを半田で接続する。
【0071】
第5工程では、配線シート60の先端部60Cをスイッチング素子10側に向けて曲げて、配線シート60の各端子67〜71とスイッチング素子10の各電極15〜19と接触させて、半田接続する。
【0072】
図4を参照して、第5工程の端子部62Bの位置決め方法について説明する。
端子部62Bの各端子67〜71は、端子部62Bの端縁62Cから所定距離のところに形成されている。このことを利用して、位置決め治具200を用いて端子部62Bがスイッチング素子10に対して位置決めする。
【0073】
位置決め治具200は、本体210と、本体210の上側に設けられたガイド部220とを備えている。本体210には、端子部62Bの端縁62Cに接触する第1基準面211と、スイッチング素子10の側面10Aに接触する第2基準面212とが形成されている。なお、端子部62Bの端縁62Cから各端子67〜71までの距離と、スイッチング素子10の側面10Aから各電極15〜19までの距離とが一致するときは、第1基準面211と第2基準面212とは同一平面上に設けられる。
【0074】
端子部62Bの位置決めは次のように行う。
位置決め治具200の第2基準面212をスイッチング素子10の側面10Aに押し当てるとともに、当該位置決め治具200を所定の高さに維持する。次に、端子部62Bの端縁62Cを位置決め治具200の第1基準面211に押し当てる。これにより、端子部62Bの各端子67〜71と各電極15〜19とが精確に位置決めされる。
【0075】
なお、端子部62Bの左右方向すなわち各端子67〜71の並びの方向の位置ずれを考慮する場合は、上記位置決め治具200として次の構成の治具が用いられる。すなわち、第1基準面211と第2基準面212に加えて、本体210に、端子部62Bの側端縁62D(図1参照)に接触する第3基準面と、スイッチング素子10の他の側面10B(図1参照)に接触する第4基準面とが加えられる。この治具の使用方法は上記位置決め治具200と同様である。
【0076】
第6工程では、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20を封止樹脂100で封止する。具体的には、ポッティング機にて封止樹脂100をケース90内に充填し、所定温度で加熱して封止樹脂100を硬化させる。
【0077】
上記に示すように、第1の製造方法では、配線シート60の各端子67〜71とスイッチング素子10の各電極15〜19とを接続するとき、端子部62Bの位置調整を行う。これにより、このような位置調整を手作業で行う場合と比較して、スイッチング素子10の各電極15〜19に対する配線シート60の各端子67〜71の位置ずれのばらつきは小さくなる。
【0078】
[第2の製造方法]
第2の製造方法について説明する。
第1工程から第3工程までは、第1の製造方法と同様である。第4工程は、第1の製造方法の第4工程と第5工程とを同時に行う。第5工程は、第1の製造方法の第6工程に相当する。以下、第1の製造方法と異なる工程、すなわち第4工程について説明する。
【0079】
第4工程では、配線体40がスイッチング素子10およびフライホイールダイオード20に対向し、かつ配線シート60の各端子67〜71がスイッチング素子10の各電極15〜19に対向するように、配線シート付き配線体30をケース90に対して配置する。そして、配線シート60の先端部60Cをスイッチング素子10側に向けて曲げて、配線シート60の各端子67〜71とスイッチング素子10の各電極15〜19とを半田を介して接触させる。このとき、互いに対応する端子と電極とが互いに対向するように、端子部62Bをスイッチング素子10に対して位置決めする。
【0080】
このような配線シート付き配線体30の配置は、次の配置治具を用いて行われる。
配置治具は、ケース90を保持するケース保持部と、配線シート付き配線体30の配線体40を保持する配線体保持用チャックと、配線シート60の先端部60Cを保持する端子保持用チャックとを備えている。具体的には、配線体保持用チャックは、配線シート付き配線体30の配線体40を挟み、配線体40をスイッチング素子10およびフライホイールダイオード20に対して位置合わせし、位置合わせした所定位置に配線体40を保持する。端子保持用チャックは、配線シート60の先端部60Cを挟み、先端部60Cをスイッチング素子10の各電極15〜19に対して位置合わせし、位置合わせした所定位置に先端部60Cを保持する。配線体保持用チャックと端子保持用チャックとは独立して動かせることができる。このため、先端部60Cがスイッチング素子10に対して精確に位置決めされる。また、配置治具は耐熱性の部材により形成されている。配置治具は、周囲温度が半田溶融温度に達した状態においても、所定位置に保持した配線体40および所定位置に保持した先端部60Cを当該所定位置から位置ずれさせない構造を備えている。
【0081】
このような配置治具を用いて位置決めされた組み立て品、すなわちケース90と配線シート付き配線体30との組み立て品は配線治具とともにリフロー炉に投入される。このため、リフローによる半田接続において配線シート付き配線体30の位置ずれは殆ど生じない。
【0082】
上記に示すように、第2の製造方法では、配線体40とスイッチング素子10との接続、配線体40とフライホイールダイオード20との接続、および各端子67〜71と各電極15〜19との接続を同時に行う。このため、第1の製造方法よりも、半田接続の工程を1回少なくすることができる。
【0083】
図5を参照して、上記実施形態の半導体装置1の変形例について説明する。
この実施形態では、上記実施形態の半導体装置1に対して次の変更を加えたものとなっている。
【0084】
すなわち、上記実施形態では、端子67〜71は、先端部60Cにおいて内面64に形成されているが、本変形例では、端子67〜71は、先端部60Cにおいて外面65に形成されている。また、内面64において端子部62Bに対応する部分には摘み部66が形成されている。
【0085】
以下、この変更にともない生じる上記実施形態の半導体装置1の構成からの変更について説明する。なお、上記実施形態の半導体装置1と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0086】
配線シート60の固定部60Aは、配線体40の外面41Bに貼り付けられている。
配線シート60の先端部60Cは、基部62Aから端子部62Bに向う途中のところまで上方向(スイッチング素子10から離れる方向)に湾曲し、途中から下方に湾曲し、さらに、端子部62Bの端縁62Cが内側(配線体40側)を向くように湾曲する。端子67〜71は、スイッチング素子10の電極15〜19に半田で接続されている。
【0087】
半導体装置1の構造的特徴を説明する。
上記実施形態において示したように、配線シート60の厚さは30〜100μmとし、撓むように構成されているため、配線シート60は容易に曲げることができる。また、配線シート60を配線体40に対して固定した状態で先端部60Cを反転させて曲げることにより、先端部60Cに弾性力が加わるため、端子67〜71と電極15〜19とが互いに押圧した状態で接続される。半導体装置1の使用上において、封止樹脂100の膨張等により、端子部62Bがスイッチング素子10から離れる方向に力(以下、離反力)が作用する場合がある。離反力は、端子67〜71と電極15〜19とが離れるように力が作用するが、端子67〜71と電極15〜19とは互いに押圧する状態で接続されているため、剥離が生じるほどの力が両者の接続部分に加わることが少なくなる。
【0088】
本変形例の半導体装置1の製造方法は、第1工程から第3工程までは、上記実施形態の第1の製造工程と同様である。端子67〜71と電極15〜19の接続方法が異なる。以下、この点について説明する。
【0089】
図6を参照して、第4工程について説明する。
第4工程では、スイッチング素子10およびフライホイールダイオード20の上に配線シート付き配線体30を配置する。このとき、配線シート60の先端部60Cに設けられた摘み部66を挟持回転治具300により下側から挟み、挟持回転治具300を回転させる。端子部62Bの端縁62Cが内側を向くように先端部60Cを曲げる。そして、端子67〜71と電極15〜19とが対向するように、端子部62Bの位置決めし、半田で両者を接続する。また、配線体40とスイッチング素子10のソース電極14とを半田で接続するとともに、配線体40とフライホイールダイオード20の第1主面21とを半田で接続する。なお、この後の工程は、上記実施形態の第1の製造方法と同様である。また、上記配置治具を用いて第2の製造方法により変形例の半導体装置1を製造することもできる。
【0090】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)上記実施形態の配線シート付き配線体30は次の構成を備えている。すなわち、配線体40の外面41Bに配線シート60が取り付けられている。配線シート60の先端部60Cは可撓性を有し、かつ端子部62Bは配線体40から外側に突出する。
【0091】
すなわち、配線体40とソース電極14とを半田で接続する。これは、従来構造のワイヤ接続に代わる構成である。このような構成によれば、従来構造のように多数のワイヤ接続作業を行う必要がない。
【0092】
しかし、この構造では次のことが懸念される。すなわち、スイッチング素子10に対して配線シート付き配線体30を配置する場合において、配線シート60の端子67〜71とスイッチング素子10の電極15〜19とが互いに対向せずに位置ずれしていたとき、両者の接続が困難になることが予想される。
【0093】
この点、先端部60Cに可撓性をもたせ、かつ端子部62Bを配線体40から外側に突出させている。これにより、端子部62Bを容易に位置決めすることができるため、接続作業の困難性は殆ど生じない。すなわち、配線シート付き配線体30を用いることにより、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。
【0094】
(2)上記実施形態では、配線体40の周囲であって先端部60Cの基部62Aに対向する部分が斜めに形成されている。すなわち、当該部分が傾斜面43とされている。この構成によれば、先端部60Cを基部62Aから曲げることができるため、先端部60Cの曲率半径を大きくすることができる。これにより、端子67〜71が電極15〜19に接続された状態において、端子部62Bおよびスイッチング素子10に加わる応力を小さくすることができる。
【0095】
(3)上記実施形態では、端子67〜71を配線シート60の内面64に形成する。この構成によれば、配線シート60の先端部60Cをスイッチング素子10側に向けて押し曲げることにより、端子67〜71と電極15〜19とを互いに接続することができる。
【0096】
(4)上記実施形態の変形例では、端子67〜71を配線シート60の外面65に形成する。この構成によれば、先端部60Cの外面65がスイッチング素子10と対向するように端子部62Bを反転させることにより、端子67〜71と電極15〜19とを互いに接続することができる。
【0097】
(5)上記実施形態の半導体装置1は、上記構成の配線シート付き配線体30を備えている。従来構造のように多数のワイヤ接続作業を行う必要がないため、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。
【0098】
(6)上記実施形態の半導体装置1では、配線体40の接続部42が第2導電層82Bに接続されている。この構成により、スイッチング素子10の熱が配線体40および導電層積層基板80を通じて放熱される。すなわち、スイッチング素子10は、ドレイン電極13側から冷却されるとともにソース電極14側からも冷却される。このため、スイッチング素子10の過熱が抑制される。
【0099】
(7)上記半導体装置1の第1の製造方法では、配線体40と配線シート60とを一体にして配線シート付き配線体30を形成し、次に、配線シート付き配線体30とスイッチング素子10とを互いに接続する。すなわち、配線体40と配線シート60とを一括してスイッチング素子10に対して接続するため、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。特に、半導体装置1が複数のスイッチング素子10を含む場合、配線体40と配線シート60との一体化により、個々の配線体40の位置決め作業を省略することができるため、製造工程の効率化の効果が大きい。
【0100】
(8)上記半導体装置1の第1の製造方法では、位置決め治具200を用いて、端子部62Bをスイッチング素子10に対して位置決めする。このため、両者を適切な位置関係に配置することが容易となる。
【0101】
(9)上記半導体装置1の第2の製造方法では、第1に、配線体40と配線シート60とを一体にして配線シート付き配線体30を形成し、次に、配線シート付き配線体30とスイッチング素子10とを互いに接続する。第2に、配線体40とスイッチング素子10のソース電極14との接続、および端子67〜71と電極15〜19との接続を同じ工程で行う。第1の構成によれば、配線体40と配線シート60とを一括してスイッチング素子10に対して接続することによる効果、すなわち製造工程の簡略化効果が生じる。第2の構成によれば、配線体40とソース電極14との接続、および端子67〜71と電極15〜19との接続を別々の工程で行う場合に比べて、製造時間を短縮することができる。すなわち、製造工程を簡略化することができるとともに、接続工程の時間を短縮することができる。
【0102】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0103】
・上記実施形態では、スイッチング素子10のドレイン電極13側およびフライホイールダイオード20のカソード電極側に配置される下側配線構造体として、DBA等の導電層積層基板80を用いているが、下側配線構造体は、DBA等のセラミックス基板に限定されない。下側配線構造体としては、導電層を備えること、熱伝導率が高いこと、絶縁層があること、が要件とされる。すなわち、これら要件を満たす基材は下側配線構造体として採用することができる。
【0104】
例えば、DBAに代えて、銅基板とポリイミドシートとの積層板、またはこの積層板にヒートシンク板を積層した積層板等を用いることもできる。また、Cu/Mo/Cu積層板、Cu−Mo合金(Cu−Mo複合材)、Cu−W合金(Cu−W複合材)、Al−SiC合金、コバール(Fe−Ni−Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、42アロイ(Fe−Ni)等の緩衝基材を導電層として採用することもできる。
【0105】
・上記実施形態では、半田で各部材を半田接続しているが、半田接続の形態は限定されない。すなわち、上記半田接続には、半田めっき、半田ペースト、半田プリフォーム等各種の半田接続方法を用いることができる。
【0106】
・上記実施形態では、スイッチング素子10とフライホイールダイオード20とが並列接続する半導体装置1の上側配線構造体に本発明を適用しているが、スイッチング素子10だけを含む半導体装置1の上側配線構造体に本発明を適用することもできる。また、スイッチング素子10の個数は限定されず、複数個のスイッチング素子10を含む半導体装置1の上側配線構造体にも本発明を適用することができる。
【0107】
・上各実施形態では、スイッチング素子10としてn型MOSFETを用いているが、スイッチング素子10の種類は限定されない。すなわち、本発明は、スイッチング素子10を含む半導体装置の配線構造体に適用可能である。スイッチング素子10の他の例としては、例えば、GaN等のIII族窒化物材料を用いたMOSFET、Si−IGBT、SiC−IGBT等が挙げられる。
【符号の説明】
【0108】
1…半導体装置、10…スイッチング素子、10A…側面、10B…側面、11…第1主面、12…第2主面、13…ドレイン電極、14…ソース電極、15…ゲート電極、16…第1モニタ電極、17…第2モニタ電極、18…第3モニタ電極、19…第4モニタ電極、20…フライホイールダイオード、21…第1主面、22…第2主面、30…配線シート付き配線体、40…配線体、41…本体部、41A…内面、41B…外面、42…接続部、42A…接触部、43…傾斜面、60…配線シート、60A…固定部、60B…リード部、60C…先端部、61…配線、62A…基部、62B…端子部、62C…端縁、62D…側端縁、63A…第1ポリイミド層、63B…第2ポリイミド層、64…内面、65…外面、66…摘み部、67…ゲート端子、68…第1モニタ端子、69…第2モニタ端子、70…第3モニタ端子、71…第4モニタ端子、80…導電層積層基板、81…絶縁基板、82A…第1導電層、82B…第2導電層、83…金属層、90…ケース、91…第1外部端子、91A…第1接続配線体、92…第2外部端子、92A…第2接続配線体、93…ヒートシンク板、94…枠体、100…封止樹脂、200…位置決め治具、210…本体、211…第1基準面、212…第2基準面、220…ガイド部、300…挟持回転治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続された導電層積層基板と、前記第1電極および前記制御電極に接続された配線構造体とを備える半導体装置について、前記半導体装置の前記配線構造体として用いられる配線シート付き配線体であって、
前記第1電極に接続される配線体と、前記制御電極に接続される制御端子が設けられた配線シートとを備え、
前記配線体において前記第1電極が接続される内面とは反対側の外面に、前記配線シートが取り付けられ、
前記配線シートのうち少なくとも先端部は可撓性を有し、かつ前記先端部のうち前記制御端子を含む端子部は前記配線体から外側に突出する
ことを特徴とする配線シート付き配線体。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シート付き配線体において、
前記配線体の周囲であって前記配線シートの前記先端部の基部に対向する部分が、前記配線体の前記外面から前記内面に向けて斜めに形成されている
ことを特徴とする配線シート付き配線体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配線シート付き配線体において、
前記制御端子は、前記配線シートにおいて前記配線体が接触する面と同じ面に形成されている
ことを特徴とする配線シート付き配線体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の配線シート付き配線体において、
前記制御端子は、前記配線シートにおいて前記配線体に接触する面とは反対側の面に形成されている
ことを特徴とする配線シート付き配線体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の配線シート付き配線体を備えた半導体装置。
【請求項6】
第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを備える半導体装置において、
前記配線体のうち前記第1電極が接続される内面とは反対側の外面に、前記配線シートが取り付けられ、
前記配線シートの先端部が曲げられて前記先端部の制御端子と前記制御電極とが接続されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを含む半導体装置の製造方法であって、
前記導電層積層基板に前記スイッチング素子を配置する工程と、
前記配線体と前記配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成する工程と、
前記配線シート付き配線体の前記配線体と前記スイッチング素子の前記第1電極とを接続する工程と、
前記配線シートの制御端子と前記スイッチング素子の前記制御電極とを接続する工程とを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1主面に少なくとも第1電極および制御電極が形成されかつ第2主面に第2電極が形成されたスイッチング素子と、前記第2電極に接続されている導電層積層基板と、前記第1電極に接続されている配線体と、前記制御電極に接続されている配線シートとを含む半導体装置の製造方法であって、
前記導電層積層基板に前記スイッチング素子を配置する工程と、
前記配線体と前記配線シートとを一体にして配線シート付き配線体を形成する工程と、
前記配線シート付き配線体の前記配線体と前記スイッチング素子の前記第1電極とを接続するとともに、前記配線シートの制御端子と前記スイッチング素子の前記制御電極とを接続する工程とを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105789(P2013−105789A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246796(P2011−246796)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)