説明

配線チェッカー

【課題】接地極付きコンセント等における中性極Nと接地線極Eの誤配線の有無を、簡易な構成でありながら容易に検査できるようにする。
【解決手段】活電線極Lに接続されるべき電圧側栓刃11,中性極Nに接続されるべき中性極栓刃21および接地線極Eに接続されるべき接地線栓刃31の3つの栓刃を備え、中性極栓刃21と接地線栓刃31との間に電圧計51、電圧側栓刃11と接地線栓刃31との間に可変抵抗素子41からなる抵抗回路40Aをそれぞれ接続し、可変抵抗素子41の抵抗値を変化させたとき、電圧計51の値が変化する場合には正常配線と判定し、電圧計51の値が変化しない場合には誤配線と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源ラインの活電線および中性線、大地に接続される接地線の屋内引き込み配線の配線状態を検査する配線チェッカーに関し、さらに詳しく言えば、接地極付きコンセント等における中性極(N)と接地線極(E)の誤配線の有無を検査するのに好適な簡易な構成の配線チェッカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
社団法人日本電気協会より発行の改訂された内線規程によれば、電気洗濯機,電子レンジ,電気冷蔵庫等の水気を帯びる家電製品の電源コンセントについて、接地極付きコンセント(接地ピンを含む3Pプラグが入るコンセント)の使用が、これまでの勧告的事項から義務的事項に格上げされた。
【0003】
図5(a)に示すように、接地極付きコンセント1は、商用電源ラインに含まれる柱上トランスTRの二次側と接続される活電線極Lおよび中性極Nと、大地に接続される接地線極Eの3つの端子を備えている。この場合、中性極NにはB種接地工事(系統接地)が適用され、接地線極EにはD種接地工事(機器接地)が適用される。
【0004】
図5(b)に示すように、活電線極Lおよび中性極Nは、分電盤2内の漏電ブレーカ3を介して屋内に引き込まれ、接地線極Eは、分電盤2内の集中接地端子4を介して大地に接地されるが、例えば分電盤2から負荷側に至る配線工事において、図5(c)に示すように、中性極Nと接地線極Eとが逆接続(誤配線)、すなわち、中性極NがD種接地され、接地線極EがB種接地されることがある。
【0005】
このような場合、負荷を接続すると往々にして漏電ブレーカ3が落ちる。漏電ブレーカ3が何らかの原因で作動しない場合もしくは漏電ブレーカ3が設置されていない場合には、中性極Nに流れるべき電流が接地線(D種接地)から大地に流れ込み、B種接地より柱上トランスTRに帰還する現象が発生する。
【0006】
このように、大地に電流が流れることで、その大地には電位上昇が発生し、コンセントの結線が正常である近傍に設置されたコンピュータや電気機器の接地線極および水道管やガス管等の金属地中埋設物も同時に電位が上昇するため、誤動作および故障や感電,火災事故等を引き起こすおそれがある。
【0007】
中性極Nと接地線極Eの逆接続を検査する検査機器の一例として、特許文献1に記載されたコンセントテスターや特許文献2に記載された接地極付きコンセントの極性チェック装置がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1のコンセントテスターは、接地極付きコンセントの3つの端子に対応した各ラインごとにそれぞれスイッチが設けられ、まず、すべてのスイッチを開にして零点調整を行ったうえで、各スイッチを所定の順序で開閉するようにしているため、操作が面倒であるばかりでなく、構成が複雑で高価でもある。
【0009】
また、特許文献2の極性チェック装置は、分電盤から活電線極L,中性極N,接地線極Eにそれぞれ異なる信号を注入し、コンセント側でそれらの信号を検出して各極を判別する注入式と呼ばれる方式であり信頼性は高いが、親器と子器とを必要とすることから高価であり、また、作業者を2人必要とするため作業効率がよいとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−273467号公報
【特許文献2】特開2006−38707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、活電線極L,中性極Nおよび接地線極Eを有する接地極付きコンセント等における中性極Nと接地線極Eの誤配線の有無を、簡易な構成でありながら容易に検査できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、商用電源ラインの活電線および中性線、大地に接続される接地線の3線を含む屋内引込配線における上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を検査する配線チェッカーにおいて、上記活電線と接続されるべき第1入力端子,上記中性線と接続されるべき第2入力端子および上記接地線と接続されるべき第3入力端子の3つの入力端子と、上記第2入力端子と上記第3入力端子との間に接続された電圧測定手段と、上記第1入力端子と上記第2入力端子との間もしくは上記第1入力端子と上記第3入力端子との間のいずれか一方に接続される抵抗回路と、上記電圧測定手段により測定された測定電圧値に基づいて上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を判定する判定手段とを備え、上記判定手段は、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたときの上記電圧測定手段の測定電圧値に基づいて、上記屋内引込配線における上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を判定することを特徴としている。
【0013】
請求項2に係る発明は、上記請求項1において、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第3入力端子との間に接続された可変抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記可変抵抗素子の抵抗値を変化させたとき、上記測定電圧値が変化する場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化しない場合には誤配線と判定することを特徴としている。
【0014】
請求項3に係る発明は、上記請求項1において、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第2入力端子との間に接続された可変抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記可変抵抗素子の抵抗値を変化させたとき、上記測定電圧値が変化しない場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化する場合には誤配線と判定することを特徴としている。
【0015】
請求項4に係る発明は、上記請求項1において、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第3入力端子との間にスイッチを介して接続された抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記スイッチをオフとしたときとオンとしたときとで、上記測定電圧値が変化する場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化しない場合には誤配線と判定することを特徴としている。
【0016】
請求項5に係る発明は、上記請求項1において、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第2入力端子との間にスイッチを介して接続された抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記スイッチをオフとしたときとオンとしたときとで、上記測定電圧値が変化しない場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化する場合には誤配線と判定することを特徴とている。
【0017】
請求項6に係る発明は、上記請求項2または4において、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記抵抗回路が接続される一方の端子側に接続するとともに、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の他方の端子側に接続する第1切替モードと、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記他方の端子側に接続するとともに、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記一方の端子側に接続する第2切替モードとを選択できる切替回路をさらに備え、上記判定手段は、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化し、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化しなければ正常配線と判定し、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化せず、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化すれば誤配線と判定することを特徴としている。
【0018】
請求項7に係る発明は、上記請求項3または5において、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記抵抗回路が接続される一方の端子側に接続するとともに、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の他方の端子側に接続する第1切替モードと、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記他方の端子側に接続するとともに、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記一方の端子側に接続する第2切替モードとを選択できる切替回路をさらに備え、上記判定手段は、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化せず、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化すれば正常配線と判定し、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化し、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化しなければ誤配線と判定することを特徴としている。
【0019】
また、本発明には、請求項8に記載されているように、検査する配線対象が上記活電線,中性線および接地線が接続される接地極付きコンセント内の配線であり、上記第1ないし第3入力端子として、上記コンセントに差し込まれる栓刃が用いられる態様も含まれる。
【0020】
また、別の態様として、本発明には、請求項9に記載されているように、検査する配線対象が上記活電線,中性線および接地線の各引き込み配線が接続される分電盤であり、上記第1ないし第3入力端子として、上記分電盤内の配線と接触するテストプローブもしくはテストクリップの接触端子が用いられる態様も含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に必要とされる基本的な構成要素は、上記した可変抵抗素子もしくはスイッチを有する抵抗素子からなる抵抗回路と、電圧測定手段(例えば、電圧計)でよく、いずれも安価で手軽に入手できることから、簡易な構成で安価な配線チェッカーを提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、基本的に抵抗回路の抵抗値を変化させるだけの操作により、中性極Nと接地線極Eの逆接続(誤配線)の有無を容易に検査することができる。
【0023】
また、請求項6,7に記載の発明によれば、スイッチを4回切り替え4通りの電圧値を測定することになるが、チェッカーの内部で中性極Nと接地線極Eの逆接続状態を作り出しているため、より高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係り、(a)正常配線時,(b)逆接続配線時の各検査状態を示す模式図。
【図2】上記第1実施形態を発展させた本発明の第2実施形態を示す模式図。
【図3】(a)本発明の第3実施形態を示す模式図、(b)本発明の第3実施形態を示す模式図。
【図4】本発明の第4実施形態に係り、(a)正常配線時,(b)逆接続配線時の各検査状態を示す模式図。
【図5】内線規程による接地極付きコンセントの(a)正常配線状態を示す模式図,(b)屋内への引き込み配線状態を示す模式図,(c)逆接続の配線状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図1ないし図4により、本発明の各実施形態について説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
なお、各実施形態ともに検査対象は、先の図5で説明した柱上トランスTRの二次側と接続される活電線極LおよびB種接地の中性極Nと、D種接地により大地に接続される接地線極Eの3つの端子を備えている接地極付きコンセント1である。
【0027】
また、説明の便宜上、B種接地抵抗,D種接地抵抗およびその間の大地抵抗を合算して、その抵抗値をREとしているが、接地(大地)抵抗REの抵抗値は、概ね10〜500Ω程度である。
【0028】
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態について説明すると、この第1実施形態に係る配線チェッカー10Aは、活電線極Lに接続されるべき第1入力端子としての電圧側栓刃11,中性極Nに接続されるべき第2入力端子としての中性極栓刃21および接地線極Eに接続されるべき第3入力端子としての接地線栓刃31の3つの栓刃11,21,31を備えている。
【0029】
このうちの電圧側栓刃11と中性極栓刃21との間には、抵抗素子44が接続され、電圧側栓刃11と接地線栓刃31との間には、抵抗回路40Aが接続されている。また、中性極栓刃21と接地線栓刃31との間には、電圧測定手段としての電圧計51が接続されている。
【0030】
この実施形態において、抵抗回路40Aは可変抵抗素子41からなる。抵抗素子44の抵抗値はMΩオーダー,可変抵抗素子41の抵抗値の範囲は1MΩ〜10kΩ程度とされる。なお、本発明において、電圧側栓刃11と中性極栓刃21との間に接続される抵抗素子44は任意的な構成要素であり、場合によっては省略されてもよい。
【0031】
電圧計51にて測定された電圧は、判定回路52に与えられる。判定回路52は、その測定電圧に基づいて、中性極Nと接地線極Eとに対する配線が正常(中性極NがB種接地で、接地線極EがD種接地の状態)であるか、逆接続(中性極NがD種接地で、接地線極EがB種接地の状態)であるかどうかを判定し、その判定結果を報知手段53により作業者に知らせる。
【0032】
判定回路52には、CPUやマイクロコンピュータ等のデジタル判定回路もしくはコンパレータを有するアナログ判定回路のいずれが用いられてもよいが、デジタル判定回路の場合には、その入力段にA/D変換器を必要とする。この実施形態では、判定回路52をCPU等のマイクロプロセッサとしている。また、報知手段61には、ランプやブザーもしくは表示パネル等が用いられてよい。
【0033】
次に、この第1実施形態に係る配線チェッカー10Aの動作の一例について説明する。
【0034】
可変抵抗素子41の抵抗値を高抵抗側として、コンセント1の活電線極L,中性極N,接地線極Eに、各栓刃11,21,31を差し込んだのち、可変抵抗素子41の抵抗値を漸次低い方に変化させる。
【0035】
図1(a)に示すように、中性極Nと接地線極Eとが正常に接続されていれば、絶縁劣化が進行したのと同じ現象により、可変抵抗素子41に流れる電流が漏れ電流として接地抵抗REに流れるため、電圧計51の電圧値が上昇する。
【0036】
これに対して、図1(b)に示すように、中性極Nと接地線極Eとが逆に接続されている場合には、可変抵抗素子41に流れる電流が柱上トランスTR側に帰還され、負荷抵抗が変化することと等価になり、電圧計51の電圧値は変化しない。
【0037】
したがって、判定回路52は、可変抵抗素子41の抵抗値を変化させるに伴って電圧計51の電圧値が上昇すれば正常配線と判定し、電圧計51の電圧値が変化しないときには誤配線と判定し、そのいずれかの結果を報知手段53により作業者に知らせる。
【0038】
なお、正常配線の場合、漏電ブレーカ3(図5(b)参照)が作動するおそれがあるので、可変抵抗素子41の抵抗値を低くするにしても、制限をかけることが好ましい。
【0039】
次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る配線チェッカー10Bついて説明する。
【0040】
この第2実施形態に係る配線チェッカー10Bは、判定の信頼性(判定精度)をより高めるため、上記第1実施形態に係る配線チェッカー10Aの構成に加えて、中性極Nと接地線極Eとを故意的に逆接続状態とする切替回路をさらに備える。
【0041】
すなわち、中性極栓刃21および接地線栓刃31の各栓刃について、それぞれ、内部接点21a,21bと、内部接点31a,31bと、スイッチSW1a,SW1bとが用意され、中性極栓刃21がスイッチSW1aにより内部接点21a,21bのいずれか一方に選択的に接続され、接地線栓刃31がスイッチSW1bにより内部接点31a,31bのいずれか一方に選択的に接続されるようになっている。
【0042】
この場合、各内部接点のうち、内部接点21bと内部接点31aの各々は、電圧計51の抵抗回路40A(可変抵抗素子41)と接続される一方の端子51a側に接続され、これに対して、内部接点21aと内部接点31bの各々は、電圧計51の他方の端子51b側に接続されている。
【0043】
この実施形態において、スイッチSW1a,SW1bは連動型のスイッチであり、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに、内部接点21aと内部接点31a,内部接点21bと内部接点31bのいずれか一方に切り替える。このため、スイッチSW1a,SW1bを総称してスイッチSW1と言うことがある。
【0044】
次に、この第2実施形態に係る配線チェッカー10Bの動作について説明するが、中性極Nと接地線極Eとが、図2の実線で示すように、正常に接続されている場合には、次のように動作する。
【0045】
まず、スイッチSW1により、第1切替モードとして、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21aと内部接点31aとに接続した状態で、可変抵抗素子41の抵抗値を漸次低い方に変化させると、先の図1(a)で説明したのと同じく、可変抵抗素子41に流れる電流が漏れ電流として接地抵抗REに流れるため、電圧計51の電圧値が上昇する。
【0046】
引き続いて、スイッチSW1により、第2切替モードとして、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21bと内部接点31bとに接続する。これにより、図2の鎖線で示し、先の図1(b)で説明したのと同じく、中性極Nと接地線極Eとが逆に接続された状態が作り出されるため、可変抵抗素子41に流れる電流が柱上トランスTR側に帰還され、負荷抵抗が変化することと等価になり、電圧計51の電圧値は変化しない。
【0047】
このように、スイッチSW1により、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21aと内部接点31aとに接続した第1切替モードで、可変抵抗素子41の抵抗値を漸次低い方に変化させたときに電圧計51の電圧値が上昇し、スイッチSW1により、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21bと内部接点31bとに接続した第2切替モードで、可変抵抗素子41の抵抗値を漸次低い方に変化させたときに電圧計51の電圧値が変化しない場合には、判定回路52は、中性極Nと接地線極Eとが正常に接続されていると判定する。
【0048】
これに対して、中性極Nと接地線極Eの配線が、図2の鎖線で示すように、入れ違っている場合には、上記とは反対に、スイッチSW1により、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21aと内部接点31aとに接続した第1切替モードでは、電圧計51の電圧値が変化せず、スイッチSW1により、中性極栓刃21,接地線栓刃31をともに内部接点21bと内部接点31bとに接続した第2切替モードでは、電圧計51の電圧値が上昇する。
【0049】
まとめると、スイッチSW1(SW1a,SW1b)を内部接点21aと内部接点31aとに切り替えた第1切替モードのとき電圧計51の電圧値が上昇し、かつ、スイッチSW1を内部接点21bと内部接点31bとに切り替えた第2切替モードのとき電圧計51の電圧値が変化しなければ、正常配線と判定される。
【0050】
これに対して、スイッチSW1(SW1a,SW1b)を内部接点21aと内部接点31aとに切り替えた第1切替モードのとき電圧計51の電圧値が変化せず、かつ、スイッチSW1を内部接点21bと内部接点31bとに切り替えた第2切替モードのとき電圧計51の電圧値が上昇すれば、誤配線と判定される。
【0051】
これを自動で行うには、判定回路52により、スイッチSW1(SW1a,SW1b)を上記のように切り替え制御するとともに、判定回路52に、それらの切り替え時における電圧計51の電圧値の「上昇」もしくは電圧計51の電圧値が「変化せず」の判定パターンを記憶させておけばよい。
【0052】
次に、図3(a),(b)により、本発明の第3実施形態と、第4実施形態とについて説明する。
【0053】
図3(a)に示す第3実施形態に係る配線チェッカー10Cは、上記第1実施形態に係る配線チェッカー10Aから任意的な構成要素である抵抗素子44を外した態様であり、その他の構成は、第1実施形態に係る配線チェッカー10Aと同一である。
【0054】
したがって、第1実施形態に係る配線チェッカー10Aと同じく、判定回路52は、可変抵抗素子42の抵抗値を変化させるに伴って電圧計51の電圧値が上昇すれば正常配線と判定し、電圧計51の電圧値が変化しないときには誤配線と判定する。
【0055】
図3(b)に示す第4実施形態に係る配線チェッカー10Dにおいても、抵抗素子44が外されているが、その代わりに、電圧側栓刃11と中性極栓刃21との間に、抵抗回路40Aとしての可変抵抗素子41が接続されている。その他の構成は、第1実施形態に係る配線チェッカー10Aと同一であってよい。
【0056】
この第4実施形態に係る配線チェッカー10Dにおいては、正常配線,誤配線の判定は上記第1実施形態と逆で、判定回路52は、可変抵抗素子41の抵抗値を変化させるに伴って電圧計51の電圧値が変化しなければ正常配線と判定し、電圧計51の電圧値が上昇すれば誤配線と判定する。
【0057】
また、この第4実施形態に係る配線チェッカー10Dによれば、正常配線の場合、漏電ブレーカ3(図5(b)参照)が作動するおそれがない。
【0058】
次に、図4を参照して、本発明の第5実施形態に係る配線チェッカー10Eについて説明する。
【0059】
この第5実施形態に係る配線チェッカー10Eでは、電圧側栓刃11と接地線栓刃31との間に抵抗回路40Bが接続される。この抵抗回路40Bは、スイッチSW2と抵抗素子42とを含む直列回路からなり、電圧側栓刃11と接地線栓刃31との間に、スイッチSW2を介して抵抗素子42が接続される。
【0060】
また、上記各実施形態と同じく、中性極栓刃21と接地線栓刃31との間に電圧計51が接続され、電圧計51には判定回路52が接続される。
【0061】
この場合、抵抗素子42には、スイッチSW2をオンにした際に、漏電ブレーカ3が作動しない程度の漏れ電流を発生させる抵抗値を有するものが用いられる。例えば、電源が100V系であるとして、抵抗素子42に20kΩのものを選択すれば、流れる電流は5mAで、通常の漏電ブレーカ3は作動しない。
【0062】
この第5実施形態に係る配線チェッカー10Eの動作について説明する。まず、スイッチSW2をオフとして、コンセント1の活電線極L,中性極N,接地線極Eに、各栓刃11,21,31を差し込んで、電圧計51により、中性極Nと接地線極Eとの間の電圧を測定する。判定回路52は、その測定電圧を初期電圧Viniとして記憶する。
【0063】
その後に、スイッチSW2をオンにする。ここで、図4(a)に示すように、中性極Nと接地線極Eとが正常に接続されていれば、活電線極Lから抵抗素子42を介して接地抵抗REに電流が流れるため、中性極Nと接地線極E間に、初期電圧Viniと比較して数百mVの電圧が発生する。
【0064】
すなわち、スイッチSW2をオンとしたときに電圧計51で測定された電圧をVonとすると、Vini<VonでVini≠Vonとなるため、判定回路52は正常配線と判定する。
【0065】
これに対して、図4(b)に示すように、中性極Nと接地線極Eの配線が入れ違っている逆接続の場合、抵抗素子42は、活電線極Lと中性極Nとの間に接続されたのと等価になる。
【0066】
したがって、抵抗素子42に流れる電流は正常な負荷電流となるため、中性極Nと接地線極E間の電圧は変化せず、電圧計51の読み値は初期電圧Viniのままである。これにより、判定回路52は、誤配線と判定する。
【0067】
この第5実施形態の変形例として、図4(a),(b)に鎖線で示すように、抵抗回路40Bを電圧側栓刃11と中性極栓刃21との間に接続してもよい。
【0068】
この場合には、正誤の判定が上記とは逆に、スイッチSW2をオンとしたときの電圧計51の読み値Vonが初期電圧Viniのまま(Vini=Von)であれば正常配線と判定され、Vini≠Vonであれば誤配線と判定される。
【0069】
また、上記第2実施形態および第4実施形態の各変形例として、図2,図3(b)の各図に鎖線で示すように、抵抗回路40Aを抵抗回路40Bに置き換えてもよい。この場合にも、上記第5実施形態と同じく、スイッチSW2をオフとしたときの初期電圧Viniと、スイッチSW2をオンとしたときの測定電圧Vonとを比較することにより、中性極Nと接地線極Eの配線状態を判定することができる。
【0070】
また、図3(b)の第4実施形態および第5実施形態の図4(a),(b)に鎖線で示すように、電圧側栓刃11(第1入力端子)と中性極栓刃21(第2入力端子)との間に、抵抗回路40A,40Bが接続されている各態様に、図2の第2実施形態で説明した中性極Nと接地線極Eとを故意的に逆接続状態とする切替回路を付加することもできる。
【0071】
この場合、第1切替モード時には、中性極栓刃21を電圧計51の抵抗回路40A,40Bが接続される一方の端子側に接続するとともに、接地線栓刃31(第3入力端子)を電圧計51の他方の端子側に接続する。
【0072】
これに対して、第2切替モード時には、上記第1切替モードとは反対に、中性極栓刃21を電圧計51の他方の端子に接続するとともに、接地線栓刃31を電圧計51の一方の端子に接続する。すなわち、中性極栓刃21と接地線栓刃31の接続先を入れ替える。
【0073】
そして、判定回路52では、第1切替モードが選択されている状態で、抵抗回路40A,40Bの抵抗値を変化させたとき、電圧計51の測定電圧値が変化せず、かつ、第2切替モードが選択されている状態で、抵抗回路40A,40Bの抵抗値を変化させたとき、電圧計51の測定電圧値が変化すれば正常配線と判定する。
【0074】
これに対して、第1切替モードが選択されている状態で、抵抗回路40A,40Bの抵抗値を変化させたとき、電圧計51の測定電圧値が変化し、かつ、第2切替モードが選択されている状態で、抵抗回路40A,40Bの抵抗値を変化させたとき、電圧計51の測定電圧値が変化しなければ誤配線と判定する。
【0075】
なお、上記各実施形態では、検査対象を接地極付きコンセントとしているが、本発明の配線チェッカーは、分電盤2内の各引き込み配線をも検査することができ、その場合には、電圧側栓刃11,中性極栓刃21,接地線栓刃31に代えて、各入力端子として、テストプローブもしくはテストクリップ等の接触端子を用いればよい。
【0076】
本発明の上記各実施形態に係る配線チェッカーは、チェッカー単体として構成されてもよいが、多機能の電気測定装置にその一機能として組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 接地極付きコンセント
2 分電盤
3 漏電ブレーカ
4 集中接地端子
10A〜10E 配線チェッカー
11 電圧側栓刃(第1入力端子)
21 中性極栓刃(第2入力端子)
31 接地線栓刃(第3入力端子)
40A,40B 抵抗回路
41 可変抵抗素子
42 抵抗素子
51 電圧計
52 判定回路
53 報知手段
E 活電線極
N 中性極
E 接地線極
RE 接地抵抗
SW1,SW2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源ラインの活電線および中性線、大地に接続される接地線の3線を含む屋内引込配線における上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を検査する配線チェッカーにおいて、
上記活電線と接続されるべき第1入力端子,上記中性線と接続されるべき第2入力端子および上記接地線と接続されるべき第3入力端子の3つの入力端子と、
上記第2入力端子と上記第3入力端子との間に接続された電圧測定手段と、
上記第1入力端子と上記第2入力端子との間もしくは上記第1入力端子と上記第3入力端子との間のいずれか一方に接続される抵抗回路と、
上記電圧測定手段により測定された測定電圧値に基づいて上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を判定する判定手段とを備え、
上記判定手段は、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたときの上記電圧測定手段の測定電圧値に基づいて、上記屋内引込配線における上記中性線と上記接地線の配線接続の適否を判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項2】
請求項1に記載の配線チェッカーにおいて、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第3入力端子との間に接続された可変抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記可変抵抗素子の抵抗値を変化させたとき、上記測定電圧値が変化する場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化しない場合には誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項3】
請求項1に記載の配線チェッカーにおいて、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第2入力端子との間に接続された可変抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記可変抵抗素子の抵抗値を変化させたとき、上記測定電圧値が変化しない場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化する場合には誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項4】
請求項1に記載の配線チェッカーにおいて、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第3入力端子との間にスイッチを介して接続された抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記スイッチをオフとしたときとオンとしたときとで、上記測定電圧値が変化する場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化しない場合には誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項5】
請求項1に記載の配線チェッカーにおいて、上記抵抗回路が上記第1入力端子と上記第2入力端子との間にスイッチを介して接続された抵抗素子からなり、上記判定手段は、上記スイッチをオフとしたときとオンとしたときとで、上記測定電圧値が変化しない場合には正常配線と判定し、上記測定電圧値が変化する場合には誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項6】
請求項2または4に記載の配線チェッカーにおいて、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記抵抗回路が接続される一方の端子側に接続するとともに、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の他方の端子側に接続する第1切替モードと、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記他方の端子側に接続するとともに、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記一方の端子側に接続する第2切替モードとを選択できる切替回路をさらに備え、
上記判定手段は、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化し、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化しなければ正常配線と判定し、
上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化せず、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化すれば誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項7】
請求項3または5に記載の配線チェッカーにおいて、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記抵抗回路が接続される一方の端子側に接続するとともに、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の他方の端子側に接続する第1切替モードと、上記第2入力端子を上記電圧測定手段の上記他方の端子側に接続するとともに、上記第3入力端子を上記電圧測定手段の上記一方の端子側に接続する第2切替モードとを選択できる切替回路をさらに備え、
上記判定手段は、上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化せず、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化すれば正常配線と判定し、
上記第1切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化し、かつ、上記第2切替モードが選択されている状態で、上記抵抗回路の抵抗値を変化させたとき上記測定電圧値が変化しなければ誤配線と判定することを特徴とする配線チェッカー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線チェッカーにおいて、検査する配線対象が上記活電線,中性線および接地線が接続される接地極付きコンセント内の配線であり、上記第1ないし第3入力端子として、上記コンセントに差し込まれる栓刃が用いられることを特徴とする配線チェッカー。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線チェッカーにおいて、検査する配線対象が上記活電線,中性線および接地線の各引き込み配線が接続される分電盤であり、上記第1ないし第3入力端子として、上記分電盤内の配線と接触するテストプローブもしくはテストクリップの接触端子が用いられることを特徴とする配線チェッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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