説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】配線パターンのインピーダンスを低減することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属層10上に、接着剤層41を介して高誘電率絶縁層42が形成されている。その高誘電率絶縁層42によって側面および下面が覆われるように配線パターンW1,W2が形成されている。配線パターンW1,W2の上面を覆うように、高誘電率絶縁層42上にベース絶縁層43が形成されている。ベース絶縁層43上に、接着剤層44を介してカバー絶縁層45が形成されている。高誘電率絶縁層42は、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45に比べて高い比誘電率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電子機器の内部には、屈曲可能なフレキシブル配線回路基板(以下、FPC基板と呼ぶ)が用いられる。FPC基板は、例えば、絶縁層の一面に導体からなる配線パターンが形成された構成を有する。また、補強のために絶縁層の他面に金属層が設けられたFPC基板がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−173371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、電子機器の低消費電力化のために、FPC基板の配線パターンのインピーダンスを低くすることが望まれる。上記のように金属層が設けられたFPC基板においては、配線パターンと金属層との距離を小さくすることが困難である。そのため、配線パターンのインピーダンスを低減することができない。
【0004】
本発明の目的は、配線パターンのインピーダンスを低減することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)第1の実施の形態に係る配線回路基板は、導電性を有する導電層と、導電層上に形成される第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に形成される第1の配線パターンと、第1の配線パターンを挟んで第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、第1の絶縁層の比誘電率は第2の絶縁層の比誘電率よりも高く、導電層に対向する第1の配線パターンの一面およびその一面に略垂直な第1の配線パターンの側面が第1の絶縁層により覆われたものである。
【0006】
この配線回路基板においては、導電層に対向する第1の配線パターンの一面および第1の配線パターンの側面が、第2の絶縁層よりも高い比誘電率を有する第1の絶縁層により覆われている。それにより、第1の配線パターンと導電層との間のキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1の配線パターンのインピーダンスが低減される。
【0007】
(2)第1の絶縁層は、樹脂材料にチタン酸バリウムが添加された材料からなってもよい。この場合、第1の絶縁層の比誘電率を容易に調整することができる。
【0008】
(3)配線回路基板は、第1の配線パターンに間隔をおいて第1の絶縁層上に形成される第2の配線パターンをさらに備え、導電層に対向する第2の配線パターンの一面およびその一面に略垂直な第2の配線パターンの側面が第1の絶縁層により覆われ、第1および第2の配線パターンは信号線路対を形成してもよい。
【0009】
この場合、第1および第2の配線パターンの各々と導電層との間のキャパシタンスが大きくなる。その結果、第1および第2の配線パターンの各々のインピーダンスが低減される。
【0010】
(4)配線回路基板は、第1の絶縁層の外側における導電層上の領域に形成される第3の絶縁層と、第1および第2の配線パターンを挟むように第1および第2の配線パターンの外側における第3の絶縁層上の領域に形成される第3および第4の配線パターンとをさらに備え、第3の絶縁層の比誘電率は第1の絶縁層の比誘電率よりも低く、導電層に対向する第3および第4の配線パターンの一面およびその一面に略垂直な第3および第4の配線パターンの側面がそれぞれ第3の絶縁層により覆われてもよい。
【0011】
この場合、第3および第4の配線パターンが、第1の絶縁層よりも低い比誘電率を有する第3の絶縁層により覆われていることにより、第1および第2の配線パターンと第3および第4の配線パターンとの間でクロストークが発生することが防止される。
【0012】
(5)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の絶縁層上に配線パターンを形成する工程と、配線パターンを覆うように第1の絶縁層上に第1の絶縁層より高い比誘電率を有する第2の絶縁層を形成する工程と、第2の絶縁層上に導電性を有する導電層を積層する工程とを備えたものである。
【0013】
その配線回路基板の製造方法によれば、導電層に対向する配線パターンの一面および配線パターンの側面が、第1の絶縁層よりも高い比誘電率を有する第2の絶縁層により覆われる。それにより、配線パターンと導電層との間のキャパシタンスが大きくなる。その結果、配線パターンのインピーダンスが低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線パターンと導電層との間のキャパシタンスが大きくなるため、配線パターンのインピーダンスが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下、本発明の実施の形態に係る配線回路基板として、屈曲性を有するフレキシブル配線回路基板(以下、FPC基板と呼ぶ)の構造およびその製造方法について説明する。
【0016】
(1)第1の実施の形態
(1−1)FPC基板の構造
図1は本発明の第1の実施の形態に係るFPC基板の模式的断面図である。図1に示すように、FPC基板1は、金属層10、接着剤層41、高誘電率絶縁層42、配線パターンW1,W2、ベース絶縁層43、接着剤層44およびカバー絶縁層45を有する。
【0017】
金属層10上に、接着剤層41を介して高誘電率絶縁層42が形成されている。その高誘電率絶縁層42によって側面および下面が覆われるように配線パターンW1,W2が形成されている。配線パターンW1,W2は、信号線路対を構成する。
【0018】
そして、配線パターンW1,W2の上面を覆うように、高誘電率絶縁層42上にベース絶縁層43が形成されている。ベース絶縁層43上に、接着剤層44を介してカバー絶縁層45が形成されている。
【0019】
本実施の形態において、高誘電率絶縁層42は、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45に比べて高い比誘電率を有する。
【0020】
(1−2)FPC基板の製造方法
FPC基板1の製造方法を説明する。図2は、第1の形態に係るFPC基板1の製造工程を示す縦断面図である。
【0021】
初めに、図2(a)に示すように、例えばポリイミド樹脂からなるベース絶縁層43を用意する。そして、図2(b)に示すように、ベース絶縁層43の一面上に接着剤層44を介して例えばポリイミド樹脂からなるカバー絶縁層45を形成する。
【0022】
ベース絶縁層43の厚みは例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。接着剤層44の厚みは例えば3μm以上50μm以下であり、5μm以上30μm以下であることが好ましい。カバー絶縁層45の厚みは例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45の比誘電率は例えば2.3以上5.0以下であり、2.8以上4.0以下であることが好ましい。
【0023】
ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45としては、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂を用いてもよい。また、接着剤層44および後の工程で用いられる接着剤層41としては、ポリイミド系接着剤およびエポキシ系接着剤等を用いることができる。
【0024】
次に、図2(c)に示すように、カバー絶縁層45を下側に向け、ベース絶縁層43の他面上に例えば銅(Cu)からなる配線パターンW1,W2を形成する。
【0025】
配線パターンW1,W2は、例えばセミアディティブ法を用いて形成してもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成してもよい。
【0026】
配線パターンW1,W2の厚みは例えば3μm以上40μm以下であり、6μm以上25μm以下であることが好ましい。また、配線パターンW1,W2の幅は例えば10μm以上500μm以下であり、15μm以上300μm以下であることが好ましい。また、配線パターンW1,W2の間隔は例えば10μm以上500μm以下であり、15μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0027】
配線パターンW1,W2としては、銅に限らず、金(Au)、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0028】
次に、図2(d)に示すように、配線パターンW1,W2を覆うように、ベース絶縁層43上に高誘電率絶縁層42を形成する。高誘電率絶縁層42は、例えばポリイミド樹脂等の樹脂材料に高い比誘電率を有するチタン酸バリウムを添加して分散させることにより形成する。ポリイミド樹脂へのチタン酸バリウムの添加量を調整することにより、高誘電率絶縁層42の比誘電率を調整することができる。
【0029】
高誘電率絶縁層42の比誘電率は、例えば3.0以上60以下であり、4.0以上50以下であることが好ましい。高誘電率絶縁層42には、ポリイミド樹脂に代えてエポキシ樹脂を用いてもよい。また、チタン酸バリウムに代えて、チタン酸鉛等の他のチタン酸塩、ジルコン酸バリウム等のジルコン酸塩、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の他の高誘電率物質を用いてもよい。
【0030】
高誘電率絶縁層42の厚みT1は例えば10μm以上50μm以下であり、15μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0031】
そして、図2(e)に示すように、接着剤層41を介して高誘電率絶縁層42上に例えばアルミニウム(Al)からなる金属層10を貼り合わせる。これにより、FPC基板1が完成する。なお、図2(e)には、図1のFPC基板1の上下を逆にした状態が示される。
【0032】
接着剤層41の厚みは例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。金属層10の厚みは例えば100μm以上3000μm以下であり、200μm以上2000μm以下であることが好ましい。金属層10としては、アルミニウムに代えてステンレス鋼等の他の金属を用いてもよい。また、金属層10の代わりに、合金等の他の導電性材料からなる導電体層を形成してもよい。
【0033】
上記構成において、ベース絶縁層43と配線パターンW1,W2との間にそれぞれ金属薄膜を形成してもよい。この場合、ベース絶縁層43と配線パターンW1,W2との密着性が向上される。
【0034】
(1−3)効果
本実施の形態に係るFPC基板1においては、配線パターンW1,W2の側面および下面(図2(e)では上面)が、高い比誘電率を有する高誘電率絶縁層42により覆われている。そのため、配線パターンW1,W2と金属層10との間の誘電率が高くなる。それにより、配線パターンW1,W2の各々と金属層10との間のキャパシタンス(静電容量)が大きくなる。その結果、配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスが低減される。
【0035】
(2)第2の実施の形態
図3は、第2の実施の形態に係るFPC基板の一部の模式的断面図である。図3のFPC基板1aについて、図1のFPC基板1と異なる点を説明する。
【0036】
図3に示すFPC基板1aは、配線パターンW1,W2の代わりに一対の配線パターンW11,W12および一対の配線パターンW13,W14を有する。配線パターンW11,W12,W13,W14の側面および下面は、高誘電率絶縁層42により覆われている。そして、配線パターンW11,W12,W13,W14の上面を覆うように、高誘電率絶縁層42上にベース絶縁層43が形成されている。
【0037】
FPC基板1aの製造方法は、配線パターンW1,W2の代わりに配線パターンW11,W12,W13,W14を形成する点を除いて、図2に示したFPC基板1の製造方法と同様である。
【0038】
配線パターンW11,W12,W13,W14の厚みは例えば3μm以上40μm以下であり、6μm以上25μm以下であることが好ましい。また、配線パターンW11,W12,W13,W14の幅は例えば10μm以上300μm以下であり、15μm以上200μm以下であることが好ましい。また、配線パターンW11,W12,W13,W14の間隔は例えば10μm以上300μm以下であり、15μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0039】
本実施の形態に係るFPC基板1aにおいては、配線パターンW11,W12,W13,W14の側面および下面が、高い比誘電率を有する高誘電率絶縁層42により覆われていることにより、配線パターンW11,W12,W13,W14の各々と金属層10との間のキャパシタンスが大きくなる。それにより、配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスが低減される。
【0040】
(3)第3の実施の形態
(3−1)FPC基板の構造
図4は、第3の実施の形態に係るFPC基板の一部の模式的断面図である。図4のFPC基板1bについて、図1のFPC基板1と異なる点を説明する。
【0041】
図4に示すように、金属層10上に、高誘電率絶縁層42および接着剤層46,47が形成されている。接着剤層46,47は、高誘電率絶縁層42を挟むように高誘電率絶縁層42の両側の領域に形成されている。
【0042】
高誘電率絶縁層42によって側面および下面が覆われるように配線パターンW1,W2が形成され、接着剤層46,47によって側面および下面が覆われるように配線パターンG1,G2が形成されている。配線パターンW1,W2の上面、および配線パターンG1,G2の上面を覆うように、高誘電率絶縁層42および接着剤層46,47上にベース絶縁層43が形成されている。
【0043】
本実施の形態において、高誘電率絶縁層42は、ベース絶縁層43、カバー絶縁層45ならびに接着剤層46,47に比べて高い比誘電率を有する。
【0044】
(3−2)FPC基板の製造方法
図4のFPC基板1bの製造方法について、図2に示したFPC基板1の製造方法と異なる点を説明する。図5は、FPC基板1bの製造工程を示す縦断面図である。
【0045】
まず、図2(a)および図2(b)に示したように、ベース絶縁層43の一面上に接着剤層44を介してカバー絶縁層45を形成する。そして、図5(a)に示すように、カバー絶縁層45を下側に向け、ベース絶縁層43の他面上に配線パターンW1,W2を形成するとともに、配線パターンW1,W2の外側に例えば銅からなる配線パターンG1,G2を形成する。
【0046】
配線パターンG1,G2は、例えばセミアディティブ法を用いて形成してもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成してもよい。配線パターンG1,G2の厚みは例えば3μm以上40μm以下であり、6μm以上25μm以下であることが好ましい。また、配線パターンG1,G2の幅は例えば10μm以上300μm以下であり、15μm以上200μm以下であることが好ましい。また、配線パターンG1と配線パターンW1との間隔、および配線パターンG2と配線パターンW2との間隔は例えば10μm以上300μm以下であり、15μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0047】
配線パターンG1,G2としては、銅に限らず、金(Au)、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いてもよい。
【0048】
次に、図5(b)に示すように、セパレータ46aが貼り合わされた接着剤層46を、配線パターンG1を覆うようにベース絶縁層43上に接合する。また、セパレータ47aが貼り合わされた接着剤層47を、配線パターンG2を覆うようにベース絶縁層43上に接合する。
【0049】
接着剤層46,47としては、ポリイミド系接着剤およびエポキシ系接着剤等を用いることができる。接着剤層46,47の厚みT2は例えば5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0050】
次に、図5(c)に示すように、接着剤層46,47および配線パターンW1,W2を覆うように、ベース絶縁層43上にベース絶縁層43よりも高い比誘電率を有する高誘電率層48を形成する。
【0051】
次に、図5(d)に示すように、接着剤層46,47に貼り合わされたセパレータ46a,47aをセパレータ46a,47a上に形成された高誘電率層48の部分とともに取り除く。これにより、接着剤層46,47の間において配線パターンW1,W2を覆うように高誘電率絶縁層42が形成される。そして、高誘電率絶縁層42に硬化処理を施す。
【0052】
その後、図5(e)に示すように、接着剤層46,47により金属層10を高誘電率絶縁層42上に貼り合わせる。これにより、FPC基板1bが完成する。なお、図5(e)には、図4のFPC基板1bの上下を逆にした状態が示される。
【0053】
(3−3)効果
本実施の係るFPC基板1bにおいては、配線パターンW1,W2の側面および下面(図5(e)では上面)が、高い比誘電率を有する高誘電率絶縁層42により覆われている。そのため、配線パターンW1,W2の各々と金属層10との間のキャパシタンスが大きくなる。それにより、配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスが低減される。
【0054】
また、配線パターンW1,W2の外側に配置される配線パターンG1,G2が、高誘電率絶縁層42に比べて低い比誘電率を有する接着剤層46,47により覆われている。そのため、配線パターンW1,W2と配線パターンG1,G2との間のクロストークの発生が抑制される。
【0055】
(4)実施例および比較例
(4−1)実施例1および実施例2
実施例1および実施例2として、図1に示したFPC基板1を作製した。なお、金属層10の材料としてアルミニウムを用い、配線パターンW1,W2の材料として銅を用い、接着剤層41,44としてエポキシ樹脂を用いた。また、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45の材料としてポリイミドを用い、高誘電率絶縁層42としてポリイミド樹脂にチタン酸バリウムを添加して分散させた材料を用いた。
【0056】
また、金属層10の厚みを400μmとし、接着剤層41の厚みを25μmとし、高誘電率絶縁層42の厚みT1(図2)を23μmとし、配線パターンW1,W2の厚みを18μmとし、ベース絶縁層43の厚みを25μmとし、接着剤層44の厚みを23μmとし、カバー絶縁層45の厚みを12.5μmとした。また、配線パターンW1,W2の間隔を40μmとした。
【0057】
また、実施例1では、高誘電率絶縁層42の比誘電率を10とし、実施例2では、高誘電率絶縁層42の比誘電率を40とした。また、実施例1および実施例2において、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45の比誘電率を3.1とした。
【0058】
(4−2)実施例3および実施例4
実施例3および実施例4として、図3に示したFPC基板1aを作製した。なお、金属層10の材料としてアルミニウムを用い、配線パターンW11,W12,W13,W14の材料として銅を用い、接着剤層41,44としてエポキシ樹脂を用いた。また、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45の材料としてポリイミドを用い、高誘電率絶縁層42としてポリイミド樹脂にチタン酸バリウムを添加して分散させた材料を用いた。
【0059】
また、金属層10の厚みを400μmとし、接着剤層41の厚みを25μmとし、高誘電率絶縁層42の厚みT1(図2)を23μmとし、配線パターンW11,W12,W13,W14の厚みを18μmとし、ベース絶縁層43の厚みを25μmとし、接着剤層44の厚みを23μmとし、カバー絶縁層45の厚みを12.5μmとした。また、配線パターンW11,W12,W13,W14の間隔を40μmとした。
【0060】
また、実施例3では、高誘電率絶縁層42の比誘電率を10とし、実施例4では、高誘電率絶縁層42の比誘電率を40とした。また、実施例3および実施例4において、ベース絶縁層43およびカバー絶縁層45の比誘電率を3.1とした。
【0061】
(4−3)比較例1
図6は、比較例1〜3のFPC基板を示す模式的断面図である。比較例1として、図6(a)に示すFPC基板1cを作製した。図6(a)のFPC基板1cが図1のFPC基板1と異なるのは次の点である。
【0062】
FPC基板1cにおいては、金属層10上に接着剤層41を介してベース絶縁層43が形成されている。ベース絶縁層43上に配線パターンW1,W2が形成されている。配線パターンW1,W2を覆うように、ベース絶縁層43上に接着剤層44を介してカバー絶縁層45が形成されている。
【0063】
なお、金属層10の厚みを400μmとし、接着剤層41の厚みを25μmとし、ベース絶縁層43の厚みを25μmとし、配線パターンW1,W2の厚みを18μmとし、接着剤層44の厚みT3を23μmとし、カバー絶縁層45の厚みを12.5μmとした。また、配線パターンW1,W2の間隔を40μmとした。
【0064】
(4−4)比較例2
比較例2として、図6(b)に示すFPC基板1dを作製した。図6(b)のFPC基板1dが図1のFPC基板1と異なるのは次の点である。
【0065】
FPC基板1dにおいては、金属層10上の接着剤層41により側面および下面が覆われるように配線パターンW1,W2が形成されている。配線パターンW1,W2の上面を覆うように接着剤層41上にベース絶縁層43が形成されている。ベース絶縁層43上に接着剤層44を介してカバー絶縁層45が形成されている。
【0066】
なお、金属層10の厚みを400μmとし、接着剤層41の厚みT4を43μmとし、配線パターンW1,W2の厚みを18μmとし、ベース絶縁層43の厚みを25μmとし、接着剤層44の厚みを23μmとし、カバー絶縁層45の厚みを12.5μmとした。また、配線パターンW1,W2の間隔を40μmとした。
【0067】
(4−5)比較例3
比較例3として、図6(c)に示すFPC基板1eを作製した。図6(c)のFPC基板1eが図3のFPC基板1bと異なるのは次の点である。
【0068】
FPC基板1eにおいては、金属層10上の接着剤層41により側面および下面が覆われるように配線パターンW11,W12,W13,W14が形成されている。配線パターンW11,W12,W13,W14の上面を覆うように接着剤層41上にベース絶縁層43が形成されている。ベース絶縁層43上に接着剤層44を介してカバー絶縁層45が形成されている。
【0069】
なお、金属層10の厚みを400μmとし、接着剤層41の厚みT5を43μmとし、配線パターンW1,W2の厚みを18μmとし、ベース絶縁層43の厚みを25μmとし、接着剤層44の厚みを23μmとし、カバー絶縁層45の厚みを12.5μmとした。また、配線パターンW11,W12,W13,W14の間隔を40μmとした。
【0070】
(4−6)評価
実施例1〜4および比較例1〜3のFPC基板1,1a,1c,1d,1eにおいて、配線パターンW1,W2および配線パターンW11,W12,W13,W14の幅を所定の範囲内で変化させた場合のインピーダンス(差動インピーダンスZdiff)をシミュレーションにより算出した。図7には、シミュレーションの結果が示される。図7において、横軸は配線パターンW1,W2および配線パターンW11,W12,W13,W14のそれぞれの幅を示し、縦軸はインピーダンスを示す。
【0071】
図7に示すように、実施例1〜4および比較例2,3のFPC基板1,1a,1d,1eの配線パターンW1,W2,W11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスは、比較例1のFPC基板1cの配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスに比べていずれも低かった。
【0072】
これにより、ベース絶縁層43の下側に配線パターンW1,W2または配線パターンW11,W12,W13,W14を形成することにより、ベース絶縁層43の上側に配線パターンW1,W2を形成する場合に比べて、配線パターンW1,W2,W11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスが低減されることがわかった。
【0073】
これは、配線パターンW1,W2(配線パターンW11,W12,W13,W14)と金属層10との距離が小さいほど、配線パターンW1,W2(配線パターンW11,W12,W13,W14)の各々と金属層10との間のキャパシタンスが大きくなるためであると考えられる。
【0074】
また、実施例1,2のFPC基板1の配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスは、比較例2のFPC基板1dの配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスに比べていずれも低かった。これにより、配線パターンW1,W2の側面および下面が高い比誘電率を有する高誘電率絶縁層42により覆われることにより、配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスが低減されることがわかった。
【0075】
また、実施例2のFPC基板1の配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスは、実施例1のFPC基板1の配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスに比べて低かった。これにより、高誘電率絶縁層42の比誘電率を40とした場合には、高誘電率絶縁層42の比誘電率を10とした場合に比べて配線パターンW1,W2の各々のインピーダンスが低減されることがわかった。
【0076】
また、実施例3,4のFPC基板1aの配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスは、比較例3のFPC基板1eの配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスに比べていずれも低かった。これにより、配線パターンW11,W12,W13,W14の側面および下面が高い比誘電率を有する高誘電率絶縁層42により覆われることにより、配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスが低減されることがわかった。
【0077】
また、実施例4のFPC基板1aの配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスは、実施例3のFPC基板1aの配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスに比べて低かった。これにより、高誘電率絶縁層42の比誘電率を40とした場合には、高誘電率絶縁層42の比誘電率を10とした場合に比べて配線パターンW11,W12,W13,W14の各々のインピーダンスが低減されることがわかった。
【0078】
(5)他の実施の形態
上記第1〜第3の実施の形態においては、本発明をFPC基板に適用した例を示したが、例えばハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられるサスペンション基板等の他の配線回路基板に本発明を適用してもよい。
【0079】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0080】
上記実施の形態においては、金属層10が導電層の例であり、高誘電率絶縁層42が請求項1〜4における第1の絶縁層および請求項5における第2の絶縁層の例であり、ベース絶縁層43が請求項1〜4における第2の絶縁層および請求項5における第1の絶縁層の例であり、配線パターンW1または配線パターンW11が請求項1〜4における第1の配線パターンおよび請求項5における配線パターンの例であり、配線パターンW2または配線パターンW12が第2の配線パターンの例であり、接着剤層46,47が第3の絶縁層の例であり、配線パターンG1,G2が第3および第4の配線パターンの例である。
【0081】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、種々の電気機器または電子機器等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るFPC基板の模式的断面図である。
【図2】第1の形態に係るFPC基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係るFPC基板の一部の模式的断面図である。
【図4】第3の実施の形態に係るFPC基板の一部の模式的断面図である。
【図5】第3の形態に係るFPC基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図6】比較例1〜3のFPC基板を示す模式的断面図である。
【図7】実施例1〜4および比較例1〜3におけるFPC基板の配線パターンのインピーダンスをシミュレーションにより算出した結果が示される。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,1b,1c,1d,1e FPC基板
10 金属層
41,44,46,47 接着剤層
42 高誘電率絶縁層
43 ベース絶縁層
45 カバー絶縁層
G1,G2,W1,W2 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導電層と、
前記導電層上に形成される第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に形成される第1の配線パターンと、
前記第1の配線パターンを挟んで前記第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層とを備え、
前記第1の絶縁層の比誘電率は前記第2の絶縁層の比誘電率よりも高く、
前記導電層に対向する前記第1の配線パターンの一面および前記一面に略垂直な前記第1の配線パターンの側面が前記第1の絶縁層により覆われたことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層は、樹脂材料にチタン酸バリウムが添加された材料からなることを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記第1の配線パターンに間隔をおいて前記第1の絶縁層上に形成される第2の配線パターンをさらに備え、
前記導電層に対向する前記第2の配線パターンの一面および前記一面に略垂直な前記第2の配線パターンの側面が前記第1の絶縁層により覆われ、
前記第1および第2の配線パターンは信号線路対を形成することを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第1の絶縁層の外側における前記導電層上の領域に形成される第3の絶縁層と、
前記第1および第2の配線パターンを挟むように前記第1および第2の配線パターンの外側における前記第3の絶縁層上の領域に形成される第3および第4の配線パターンとをさらに備え、
前記第3の絶縁層の比誘電率は前記第1の絶縁層の比誘電率よりも低く、
前記導電層に対向する前記第3および第4の配線パターンの一面および前記一面に略垂直な前記第3および第4の配線パターンの側面がそれぞれ前記第3の絶縁層により覆われることを特徴とする請求項3記載の配線回路基板。
【請求項5】
第1の絶縁層上に配線パターンを形成する工程と、
前記配線パターンを覆うように前記第1の絶縁層上に前記第1の絶縁層より高い比誘電率を有する第2の絶縁層を形成する工程と、
前記第2の絶縁層上に導電層を積層する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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