説明

配線基板およびその製造方法

【課題】微細な半導体素子接続パッドを含む配線導体を形成することが可能であるとともに、外部接続パッドに剥がれが発生することのない配線基板を提供すること。
【解決手段】絶縁基板1の一方の主面に、半導体素子Sの電極Tに接続される半導体素子接続パッド3aを含む第1の配線導体3が第1の金属箔8を下地としたセミアディティブ法により形成されているとともに、絶縁基板1の他方の主面に外部電気回路基板に接続される外部接続パッド4aを含む第2の配線導体4が第2の金属箔10を下地としたセミアディティブ法により形成されて成る配線基板であって、第1の金属箔8は、絶縁基板1上にプライマー樹脂層2を介して接着されているとともにプライマー樹脂2との接着面のRzが0.3〜1.0μmの平滑面であり、第2の金属箔10は、絶縁基板1上に直接接着されているとともに絶縁基板1との接着面のRzが1.5〜3.0μmの粗化面である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するため等に用いられる配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための配線基板として、多数のスルーホールを有する絶縁基板の上面に半導体素子を搭載するための搭載部を設けるとともに、絶縁基板の上面からスルーホールを介して下面に導出する複数の配線導体を被着させ、この配線導体の一部を搭載部において半導体素子の電極端子に接続するための半導体素子接続パッドとして配置するとともに絶縁基板の下面において外部電気回路基板と接続するための外部接続パッドとして配置してなる配線基板が知られている。
【0003】
半導体素子を搭載するための配線基板においては、半導体素子の小型化、高集積化の流れに伴い、配線導体の微細化および高密度化が要求されている。そこで、配線基板における配線導体の微細化、高密度化を実現するための方法として、図4(a)〜(e)および図5(f)〜(j)に示す方法が用いられている。
【0004】
この方法では、先ず、図4(a)に示すように、ガラスクロスに未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させて成るプリプレグ21Pと、銅箔から成るキャリアシート22の一方の主面に極薄銅箔23およびプライマー樹脂層24を剥離可能に積層して成るキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔25とを準備する。プリプレグ21Pの厚みは30〜200μm程度、キャリアシート22の厚みは12〜35μm程度、極薄銅箔23の厚みは1〜5μm程度、プライマー樹脂層24の厚みは3〜7μm程度である。なお、極薄銅箔23の両主面は10点平均粗さRzで0.3〜1.0μm程度の平滑な面となっている。
【0005】
次に、図4(b)に示すように、プリプレグ21Pの上下面にキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔25を、キャリアシート22が外側となるようにして積み重ねるとともに、これらを上下からプレスおよび加熱してプリプレグ21Pが熱硬化して成る絶縁基板21の上下面にキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔25を積層一体化させる。
【0006】
次に、図4(c)に示すように、絶縁基板21およびキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔25の積層体の上面から下面にかけてスルーホール用の貫通孔26Aを例えばドリル加工により穿孔する。貫通孔26Aの直径は、50〜300μm程度である。
【0007】
次に、図4(d)に示すように、絶縁基板21とキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔25との積層体からキャリアシート22を引き剥がして除去することにより上下面に極薄銅箔23がプライマー樹脂層24を介して積層されているとともに上面から下面にかけて複数のスルーホール26が形成された絶縁基板21を得る。
【0008】
次に、図4(e)に示すように、スルーホール26の内壁および極薄銅箔23の表面に無電解銅めっき層27を被着させる。無電解銅めっき層27の厚みは、0.5〜3.0μm程度である。
【0009】
次に、図5(f)に示すように、上下面の無電解銅めっき層27の表面に、表層配線導体のパターンに対応する開口を有するめっきレジスト層Rを被着形成する。めっきレジスト層Rの厚みは、15〜50μm程度である。
【0010】
次に、図5(g)に示すように、めっきレジスト層Rから露出する無電解銅めっき層27の表面に電解銅めっき層28を被着させる。電解銅めっき層28の厚みは10〜30μm程度である。
【0011】
次に、図5(h)に示すように、めっきレジスト層Rを剥離して除去する。
【0012】
次に、図5(i)に示すように、電解銅めっき層28から露出する無電解銅めっき層27およびその下の極薄銅箔23をエッチング除去することにより、スルーホール26内に無電解銅めっき層27および電解銅めっき層28から成るスルーホール導体29を形成するとともに、上下面に極薄銅箔23および無電解銅めっき層27および電解銅めっき層28から成る表層配線導体30を形成する。
【0013】
そして最後に、図5(j)に示すように、スルーホール16の内部および絶縁基板21の上下面に、スルーホール26内部を充填するとともに上面の表層配線導体30の一部を半導体素子の電極端子に接続される半導体素子接続パッド30aとして露出させるとともに下面の表層配線導体30の一部を外部電気回路基板と接続するための外部接続パッド30bとして露出させるソルダーレジスト層31を形成することにより配線基板を完成させる。
【0014】
この配線基板によると、極薄銅箔23は、その両主面の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの平滑な面であるため、微細な配線導体を形成することが可能である。
【0015】
しかしながら、この従来の配線基板においては、プライマー樹脂層24により極薄銅箔23と絶縁基板21との接着強度はある程度確保されるものの、外部電気回路基板と接続される外部接続パッド30bにおける絶縁基板21への接着強度は必ずしも十分なものではなかった。そのため、外部接続パッド30bにおいては、外部電気回路基板に接続した際に大きな応力が加わるために剥がれが発生しやすいという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−25835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、微細な半導体素子接続パッドを含む配線導体を形成することが可能であるとともに、外部接続パッドを外部電気回路基板に接続したときに大きな応力が加わったとしても外部接続パッドに剥がれが発生することのない配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の配線基板は、ガラスクロス入りのプリプレグを硬化させて成る絶縁基板の一方の主面に、半導体素子の電極に接続される半導体素子接続パッドを含む第1の配線導体が第1の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されているとともに、前記絶縁基板の他方の主面に外部電気回路基板に接続される外部接続パッドを含む第2の配線導体が第2の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されて成る配線基板であって、前記第1の金属箔は、前記絶縁基板上にプライマー樹脂層を介して接着されているとともに該プライマー樹脂との接着面の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの平滑面であり、前記第2の金属箔は、前記絶縁基板上に直接接着されているとともに該絶縁基板との接着面の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの粗化面であることを特徴とするものである。
【0019】
また本発明の配線基板の製造方法は、ガラスクロス入りのプリプレグを硬化させて成る絶縁基板の一方の主面に、該絶縁基板側の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの第1の金属箔がプライマー樹脂層を介して接着されているとともに、前記絶縁基板の他方の主面に、該絶縁基板側の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの第2の金属箔が直接接着されて成る積層体を準備する工程と、前記一方の主面に半導体素子の電極に接続される半導体素子接続パッドを含む第1の配線導体を前記第1の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成するとともに前記他方の主面に外部電気回路基板に接続される外部接続パッドを含む第2の配線導体を前記第2の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成する工程とを行なうことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配線基板およびその製造方法によれば、半導体素子接続パッドを含む第1の配線導体は、絶縁基板の一方の主面にプライマー樹脂層を介して接着された接着面の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの第1の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されていることから、微細なものとすることができる。また、外部接続パッドを含む第2の配線導体は、絶縁基板上に直接接着された接着面の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの第2の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されていることから、第2の金属箔を介して絶縁基板に極めて強固に密着し外部接続パッドに剥がれが発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の配線基板における実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、図1に示した配線基板を本発明の製造方法により製造する実施形態の一例を説明するための工程毎の概略断面図である。
【図3】(f)〜(j)は、図1に示した配線基板を本発明の製造方法により製造する実施形態の一例を説明するための工程毎の概略断面図である。
【図4】(a)〜(e)は、従来の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の概略断面図である。
【図5】(f)〜(j)は、従来の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の配線基板およびその製造方法について図1〜3を基にして説明する。図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図であり、1は絶縁基板、2はプライマー樹脂層、3は第1の配線導体、4は第2の配線導体、5はスルーホール導体、6はソルダーレジスト層である。
【0023】
絶縁基板1は、例えばガラスクロス基材にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた厚みが30〜200μm程度の単層または多層の絶縁層を熱硬化させた電気絶縁材料から成る。絶縁基板1の上面から下面にかけては直径が50〜300μm程度のスルーホール7が形成されている。
【0024】
絶縁基板1の上面には、プライマー樹脂層2が被着されており、このプライマー樹脂層2を介して第1の配線導体3が被着されている。また、絶縁基板1の下面には第2の配線導体4が直接被着されている。さらにスルーホール7の内壁にはスルーホール導体5が被着されている。
【0025】
絶縁基板1の上面に被着されたプライマー樹脂層2は、例えばエポキシ樹脂から成り、絶縁基板1の上面に第1の配線導体3を接着させるための接着剤として機能する。プライマー樹脂層2の厚みは3〜7μm程度である。
【0026】
絶縁基板1の上面にプライマー樹脂層2を介して被着された第1の配線導体3は、半導体素子Sの電極端子Tが接続される複数の半導体素子接続パッド3aを含んでいる。この半導体素子接続パッド3aは、例えばその幅および間隔が25μm以下の微細なパターンにより形成されている。この第1の配線導体3は、プライマー樹脂層2に接着された第1の銅箔8とその上に被着された電解銅めっき層9とから成り、第1の銅箔8を下地としたセミアディティブ法により形成されている。具体的には、絶縁基板1の上面に第1の銅箔8をプライマー樹脂層2を介して接着した後、第1の銅箔8の上に第1の配線導体3に対応する開口パターンを有するめっきマスクを被着させるとともに開口パターン内の第1の銅箔8上に第1の配線導体3に対応するパターンの電解銅めっき層9を被着させ、しかる後、めっきマスクを除去するとともに電解銅めっき層9から露出する下地の第1の銅箔8をエッチング除去することにより形成されている。
【0027】
ところで、第1の銅箔8は、厚みが1〜5μm程度であり、プライマー樹脂層との接着面が10点平均粗さRzで0.3〜1.0μm程度と平滑な面となっている。そのため微細な第1の配線導体3を形成することができる。第1の銅箔8のプライマー樹脂層2と接着面の10点平均粗さRzが0.3μm未満であると、第1の銅箔8がプライマー樹脂層2の表面に食い込む凹凸が小さいものとなりすぎて両者の間の接着強度を強固に保つことが困難となる傾向にあり、逆に第1の銅箔8のプライマー樹脂層2との接着面の10点平均粗さRzが1.0μmを超えると、第1の配線導体3を微細なパターンで形成することが困難となる。したがって、第1の銅箔8のプライマー樹脂層2との接着面の10点平均粗さRzは0.3〜1.0μmの範囲に特定される。なお、電解銅めっき層9の厚みは5〜20μm程度である。
【0028】
また、絶縁基板1の下面に被着された第2の配線導体4は、外部電気回路基板に接続される複数の外部接続パッド4aを含んでいる。外部接続パッド4aは、直径が100〜500μm程度の円形であり、100〜500μmの間隔で並んでいる。この第2の配線導体4は、絶縁基板1に直接接着された第2の銅箔10とその上に被着された電解銅めっき層9とから成り、第2の銅箔10を下地としたセミアディティブ法により形成されている。具体的には、絶縁基板1の下面に第2の銅箔10を直接接着した後、第2の銅箔10の上に第2の配線導体4に対応する開口パターンを有するめっきマスクを被着させるとともに開口パターン内の第2の銅箔10上に第2の配線導体4に対応するパターンの電解銅めっき層9を被着させ、しかる後、めっきマスクを除去するとともに電解銅めっき層9から露出する下地の第2の銅箔10をエッチング除去することにより形成されている。
【0029】
第2の銅箔10は、厚みが1〜5μm程度であり、絶縁基板1との接着面が10点平均粗さRzで1.5〜3.0μm程度と粗な面となっている。そのため絶縁基板1の表面に食い込む凹凸が大きい。したがって、絶縁基板1に対する接着強度が大きなものとなり、外部接続パッド4aと絶縁基板1との間に剥がれが発生することを有効に防止することができる。このとき、第2の配線導体4には、第1の配線導体3ほどに微細なパターンを要求されないで、十分な精度で第2の配線導体4を形成することが可能である。第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzが1.5μm未満であると、第2の銅箔10が絶縁基板1の表面に食い込む凹凸が小さいものとなりすぎて両者の間の接着強度を強固に保つことが困難となる傾向にあり、逆に第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzが3.0μmを超えると、厚みが1〜5μmの薄い第2の銅箔10を得ることが困難になる。したがって、第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzは1.5〜3.0μmの範囲に特定される。
【0030】
スルーホール7内に被着されたスルーホール導体5は、スルーホール7の内壁に被着された無電解銅めっき層11とその上に被着された電解銅めっき層9とから成る。無電解銅めっき層11の厚みは0.5〜3.0μm程度である。このスルーホール導体5により第1の配線導体3と第2の配線導体4とが電気的に接続されている。
【0031】
さらにスルーホール7の内部および絶縁基板1の上下面にはソルダーレジスト層6が、スルーホール7内を充填するとともに上下面の配線導体3,4における半導体素子接続パッド3aおよび外部接続パッド4aを露出させるようにして被着されている。このソルダーレジスト層6は、第1および第2の配線導体3,4およびスルーホール導体5を保護するためのものである。
【0032】
次に、上述した配線基板を本例の製造方法により製造する方法について図2および図3を基にして説明する。
【0033】
まず、図2(a)に示すように、ガラスクロスに未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させて成るプリプレグ1Pと、銅箔から成るキャリアシート12の一方の主面に第1の銅箔8およびプライマー樹脂層2を剥離可能に積層してなるキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔13と、銅箔から成るキャリアシート14の一方の主面に第2の銅箔10を剥離可能に積層して成るキャリア付銅箔15とを準備する。プリプレグ1Pの厚みは30〜300μm程度、キャリアシート12,14の厚みは12〜35μm程度、第1および第2の銅箔8,10の厚みは1〜5μm程度、プライマー樹脂層2の厚みは3〜7μm程度である。なお、第1の銅箔8のプライマー樹脂層2側の主面の10点平均粗さRzは0.3〜1.0μmであり、第2の銅箔10のキャリアシート14と反対側の主面の10点平均粗さRzは1.5〜3.0μmである。なお、第1の銅箔8と第2の銅箔10とは同じ厚みであることが好ましい。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、プリプレグ1Pの上面にキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔13をキャリアシート12が外側となるようにして積み重ねるとともに、プリプレグ1Pの下面にキャリア付銅箔15をキャリアシート14が外側となるようにして積み重ね、しかる後、これらを上下からプレスおよび加熱してプリプレグ1Pが熱硬化して成る絶縁基板1の上下面にキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔13とキャリア付銅箔15とを積層一体化させる。これにより、第1の銅箔8がプライマー樹脂層2を介して絶縁基板1の上面に接着されるとともに、第2の銅箔10が絶縁基板1の下面に直接接着される。なお、このとき、第1の銅箔8は絶縁基板1の上面にプライマー樹脂層2を介して強固に接着される。他方第2の銅箔10は、絶縁基板1の下面と接着する主面の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmと粗面であることから、この粗面の凹凸が絶縁基板1の下面に大きく食い込むで、極めて強固に接着される。
【0035】
次に、図2(c)に示すように、絶縁基板1およびキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔13およびキャリア付銅箔15の積層体の上面から下面にかけてスルーホール7用の貫通孔7Aを例えばドリル加工により穿孔する。貫通孔7Aの直径は、30〜300μm程度である。なお、貫通孔7Aはレーザ加工により穿孔されてもよい。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、貫通孔7Aの内壁およびキャリアシート12,14の表面に無電解銅めっき層11を被着させる。無電解銅めっき層11の厚みは、0.5〜3.0μm程度である。このとき、第1の銅箔8および第2の銅箔10の表面はそれぞれキャリアシート12,14で覆われているので、第1の銅箔8および第2の銅箔10のキャリアシート12,14で覆われた表面には無電解銅めっき層11が被着されることはない。また、無電解銅めっき層11が被着されるまでは第1の銅箔8および第2の銅箔10の表面がキャリアシート12,14により保護されているので、その分、第1の銅箔8および第2の銅箔10に傷や異物が付く危険性が減り、後述するように、第1の配線導体3および第2の配線導体4における断線やショートの発生を抑制することができる。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、絶縁基板1とキャリアおよびプライマー樹脂付銅箔13とキャリア付銅箔15との積層体からキャリアシート12,14を引き剥がして除去する。これにより上面にプライマー樹脂層2を介して第1の銅箔8が接着されているとともに下面に第2の銅箔10が直接接着され、かつスルーホール7内に無電解銅めっき層11が被着された絶縁基板1を得る。
【0038】
次に、図3(f)に示すように、第1の銅箔8および第2の銅箔10の表面に、第1の配線導体3および第2の配線導体4のパターンに対応する開口を有するめっきレジスト層Rを被着形成する。めっきレジスト層Rの厚みは、15〜50μm程度である。
【0039】
次に、図3(g)に示すように、めっきレジスト層Rから露出する第1の銅箔8の表面および第2の銅箔10の表面および無電解銅めっき層11の表面に電解銅めっき層9を被着させる。電解銅めっき層9の厚みは10〜30μm程度である。
【0040】
次に、図3(h)に示すように、めっきレジスト層Rを剥離して除去する。
【0041】
次に、図3(i)に示すように、電解銅めっき層9から露出する第1の銅箔8および第2の銅箔10をエッチング除去することにより、絶縁基板1の上面にプライマー樹脂層2を介して接着された第1の銅箔8およびその上の電解銅めっき層9から成る第1の配線導体3と、絶縁基板1の下面に直接接着された第2の銅箔10およびその上の電解銅めっき層9から成る第2の配線導体4と、スルーホール7内に無電解銅めっき層11およびその上の電解銅めっき層9から成るスルーホール導体5とを形成する。この場合、第1の配線導体3は、絶縁基板1の一方の主面にプライマー樹脂層2を介して接着された接着面の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの第1の金属箔8を下地としたセミアディティブ法により形成されていることから、半導体素子接続パッド3aを含むパターンを微細なものとすることができる。また、外部接続パッド4aを含む第2の配線導体4は、絶縁基板1上に直接接着された接着面の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの第2の金属箔10を下地としたセミアディティブ法により形成されていることから、第2の金属箔10を介して絶縁基板1に極めて強固に密着し絶縁基板1との間に剥がれが発生することがない。
【0042】
なお、第1の銅箔8のプライマー樹脂層2との接着面の10点平均粗さRzが0.3μm未満であると、第1の銅箔8がプライマー樹脂層2の表面に食い込む凹凸が小さいものとなりすぎて両者の間の接着強度を強固に保つことが困難となる傾向にあり、逆に第1の銅箔8のプライマー樹脂層2との接着面の10点平均粗さRzが1.0μmを超えると、第1の配線導体3を微細なパターンで形成することが困難となる。したがって、第1の銅箔8のプライマー樹脂層2との接着面の10点平均粗さRzは0.3〜1.0μmの範囲に特定される。
【0043】
また、第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzが1.5μm未満であると、第2の銅箔10が絶縁基板1の表面に食い込む凹凸が小さいものとなりすぎて両者の間の接着強度を強固に保つことが困難となる傾向にあり、逆に第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzが3.0μmを超えると、厚みが1〜5μmの薄い第2の銅箔10を得ることが困難になる。したがって、第2の銅箔10の絶縁基板1との接着面の10点平均粗さRzは1.5〜3.0μmの範囲に特定される。
【0044】
さらに、第1の銅箔8および第2の銅箔10の表面には無電解銅めっき層11が存在しないので、電解銅めっき層9から露出する第1の銅箔8および第2の銅箔10の除去に必要な時間だけエッチングを行なえばよい。したがって、第1の配線導体3および第2の配線導体4を形成するためのエッチング時間を短縮することができるとともに、第1の配線導体3および第2の配線導体4に対するサイドエッチングも小さくなるので、第1の配線導体3および第2の配線導体4の更なる微細化が可能となる。また、前述したように、無電解銅めっき層11が被着されるまでは第1の銅箔8および第2の銅箔10の表面がキャリアシート12,14により保護されており、第1の銅箔8および第2の銅箔10に傷や異物が付く危険性が少ないことから、そのような傷や異物に起因する第1の配線導体3および第2の配線導体4における断線やショートの発生を有効に抑制することができる。
【0045】
そして最後に、図3(j)に示すように、スルーホール7の内部および絶縁基板1の上下面に、スルーホール7内部を充填するとともに上下面における半導体素子接続パッド3aおよび外部接続パッド4aを露出させるソルダーレジスト層6を形成することにより図1に示した配線基板が完成する。
【符号の説明】
【0046】
1 絶縁基板
2 プライマー樹脂層
3 第1の配線導体
3a 半導体素子接続パッド
4 第2の配線導体
4a 外部接続パッド
8 第1の銅箔
10 第2の銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロス入りのプリプレグを硬化させて成る絶縁基板の一方の主面に、半導体素子の電極に接続される半導体素子接続パッドを含む第1の配線導体が第1の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されているとともに、前記絶縁基板の他方の主面に外部電気回路基板に接続される外部接続パッドを含む第2の配線導体が第2の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成されて成る配線基板であって、前記第1の金属箔は、前記絶縁基板上にプライマー樹脂層を介して接着されているとともに該プライマー樹脂との接着面の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの平滑面であり、前記第2の金属箔は、前記絶縁基板上に直接接着されているとともに該絶縁基板との接着面の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの粗化面であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
ガラスクロス入りのプリプレグを硬化させて成る絶縁基板の一方の主面に、該絶縁基板側の10点平均粗さRzが0.3〜1.0μmの第1の金属箔がプライマー樹脂層を介して接着されているとともに、前記絶縁基板の他方の主面に、該絶縁基板側の10点平均粗さRzが1.5〜3.0μmの第2の金属箔が直接接着されて成る積層体を準備する工程と、前記一方の主面に半導体素子の電極に接続される半導体素子接続パッドを含む第1の配線導体を前記第1の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成するとともに前記他方の主面に外部電気回路基板に接続される外部接続パッドを含む第2の配線導体を前記第2の金属箔を下地としたセミアディティブ法により形成する工程とを行なうことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−99586(P2012−99586A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244843(P2010−244843)
【出願日】平成22年10月30日(2010.10.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】