説明

配線基板の製造方法

【課題】 凹部内に形成された複数の電極間の短絡や電極の断線を抑制できる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1のセラミックグリーンシート1と貫通孔2aを設けて枠状に成形した第2のセラミックグリーンシート2とを準備する工程と、第1および第2のセラミックグリーンシート1,2を積層した際に一端が貫通孔2aの開口内に露出する帯状の電極パターン3を開口に沿って複数形成する工程と、電極パターン3の一端を露出して覆う、開口に沿った帯状の第1の絶縁パターン4を形成する工程と、第1の絶縁パターン4の貫通孔2aの中央側を帯状に露出して覆う第2の絶縁パターン5を帯状に形成する工程と、第2の絶縁パターン5の一部が帯状に露出するように積層体8を作製する工程と、積層体8を焼成する工程とを備えている配線基板の製造方法である。凹部8a内に形成された複数の電極同士の短絡や電極の断線の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を収容して搭載するための配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品を搭載し、電子機器に組み込まれる配線基板に接続するための配線基板としてセラミック製のものが用いられており、上面に電子部品を収容するための凹部を有する形状のものがある。凹部の底面が電子部品搭載領域となり、その周囲(凹部の底面または凹部の周囲の基板の上面)に形成された電極と、電子部品搭載領域に搭載された電子部品の各電極とを半田やボンディングワイヤ等の接続手段を介して電気的に接続することによって、電子部品が凹部内に収容されて外部との接触等による機械的応力から保護された電子装置が作製される。電極には配線導体が接続されており、配線導体は配線基板の外表面まで延長して形成されており、この外表面に露出した配線導体と配線基板の電極とを半田等によって接合することによって、電子部品は配線基板に電気的に接続される。また、配線基板に電子部品を搭載して電気的に接続した後に、金属やセラミックスから成る蓋体をろう材やガラスによって配線基板の上面に取着して気密封止することによって、電子部品を機械的応力のみならず雰囲気から保護することも行なわれる。
【0003】
このようなセラミック製の配線基板は、グリーンシート積層法によって製作される。例えば、セラミック粉末と有機バインダとを主成分とするセラミックグリーンシートを準備し、金属粉末を主成分とする導体ペーストを印刷するなどして配線導体パターンおよび電極パターンを形成した第1のセラミックグリーンシート上に、貫通孔を形成することによって枠状とした第2のセラミックグリーンシートを積層して圧着することによってセラミック生積層体を形成した後、このセラミック生積層体を焼成することによってセラミック製の配線基板が製作される。また、開口の大きさの異なる貫通孔を形成した第2のセラミックグリーンシートを複数準備して、内部に段差のある凹部を有する配線基板とする場合もある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
上記のような配線基板においては、平面視で、電極パターンの一端が第2のセラミックグリーンシートの貫通孔の開口内に露出して他端が前記第2のセラミックグリーンシートと重なるように配置していると、第1のセラミックグリーンシート上に第2のセラミックグリーンシートを積層して圧着した際に、電極パターンが配置された部分と配置されていない部分とに段差があるので、電極パターン間の、第1セラミックグリーンシートと第2セラミックグリーンシートとの間に、第2のセラミックグリーンシートの貫通孔の開口側に、空隙部(口開き)が形成されることがある。特に、電子装置の小型化や高密度化に伴って隣接する電極パターン間の間隔が狭くなると、空隙部が隣接する電極パターン間の全体に渡って形成されることがある。そして、このような積層体を焼成して作製した配線基板表面の電極や配線導体の露出する表面にめっき層を被着するためにめっき液に浸漬した際に、空隙部内にめっき液が入り込んで、めっき液から引き上げた際に空隙部内にめっき液が残留する。そして、残留しためっき液の金属成分が空隙部内に付着し、隣接する電極間にメッキがかかることによって、隣接する電極同士を短絡させてしまうことがある。
【0005】
そこで、電極間に空隙部が生じることを抑制するために、電極の表面を絶縁ペーストによって形成された絶縁層によって被覆するという対策が考えられる。このような絶縁層は、電極パターンを形成した後、この電極パターンを被覆するように、例えば、セラミックスを主成分とする絶縁ペーストからなる絶縁パターンを印刷塗布しておくことによって形成することができる。このように、電極パターンを被覆するように絶縁ペーストを塗布し
ておくことによって、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層する際に、絶縁ペーストが流動して段差を埋めるので、空隙部が生じることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−276910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような絶縁パターンの厚みが薄いと、第1のセラミックグリーンシートの上に第2のセラミックグリーンシートを積層して加圧した際に、絶縁パターンに第2のセラミックグリーンシートの開口に沿ってクラックが発生し、このクラックが電極パターンまで達してしまうことがある。このようなクラックが発生した場合には、配線基板をめっき液に浸漬すると、このクラック内にめっき液が入り込んで、配線基板をめっき液から引き上げた際にクラック内にめっき液が残留して金属成分が付着し、この金属成分を介して隣接する電極同士が短絡してしまうことがあった。
【0008】
また、絶縁パターンの厚みを厚くすると、第1のセラミックグリーンシートの上に第2のセラミックグリーンシートを積層して加圧した際に、上記したようなクラックを防ぐことはできるが、絶縁パターンの端部に電極パターンに加わる圧力が集中しやすいので、絶縁パターンの端部に沿って電極パターンにクラックが発生してしまうことがある。このようなクラックが発生すると、配線基板の電極が断線してしまい、電極から配線基板内の配線導体へ電気的に接続できなくなることがあった。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、凹部内に形成された複数の電極同士の短絡や電極の断線を抑制することができる配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配線基板の製造方法は、第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記第2のセラミックグリーンシートを、中央部に貫通孔を設けて枠状に成形する工程と、前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、前記第2のセラミックグリーンシートを積層したときに、平面視で、その一端が前記貫通孔の開口内に露出して他端が前記第2のセラミックグリーンシートと重なるように導体ペーストを印刷して帯状の電極パターンを前記貫通孔の開口に沿った並びに形成する工程と、前記電極パターンの前記一端を露出させて複数の前記電極パターンおよび該電極パターン間を覆うように、セラミックペーストを印刷して前記貫通孔の開口に沿って帯状の第1の絶縁パターンを形成する工程と、前記第1の絶縁パターンの前記第1のセラミックグリーンシートの中央側の一部を帯状に露出させて前記第1の絶縁パターンを覆うように、セラミックペーストを印刷して第2の絶縁パターンを前記第1の絶縁パターンに沿って帯状に形成する工程と、前記第2の絶縁パターンの一部が前記貫通孔の開口内に帯状に露出するように、前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、枠状の前記第2のセラミックグリーンシートを積層して加圧することによって積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成する工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、第2のセラミックグリーンシートを、中央部に貫通孔を設けて枠状に成形する工程と、第1のセラミックグリーンシートの上面に、
第2のセラミックグリーンシートを積層したときに、平面視で、その一端が貫通孔の開口内に露出して他端が第2のセラミックグリーンシートと重なるように導体ペーストを印刷して帯状の電極パターンを貫通孔の開口に沿った並びに形成する工程と、電極パターンの一端を露出させて複数の電極パターンおよび電極パターン間を覆うように、セラミックペーストを印刷して貫通孔の開口に沿って帯状の第1の絶縁パターンを形成する工程と、第1の絶縁パターンの第1のセラミックグリーンシートの中央側の一部を帯状に露出させて第1の絶縁パターンを覆うように、セラミックペーストを印刷して第2の絶縁パターンを第1の絶縁パターンに沿って帯状に形成する工程と、第2の絶縁パターンの一部が貫通孔の開口内に帯状に露出するように、第1のセラミックグリーンシートの上面に、枠状の第2のセラミックグリーンシートを積層して加圧することにより積層体を作製する工程とを備えることにより、第2のセラミックグリーンシートの開口に沿った部分では、第1の絶縁パターンの厚みと第2の絶縁パターンの厚みとの合計の厚みを十分に厚くすることができる。従って、絶縁パターンに第2のセラミックグリーンシートの開口に沿った電極パターンを露出させるようなクラックが発生することを抑制することができる。また、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層して加圧しても、平面視で第1の絶縁パターンの端部と第2の絶縁パターンの端部との位置がずれていることから、圧力が第2のセラミックグリーンシートの開口内に位置する第1の絶縁パターンの端部と第2の絶縁パターンの端部とに分散するので、積層して加圧することによって電極パターンにクラックが発生することを抑制することができる。よって、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層して加圧した際に生じる絶縁パターンへのクラックや電極パターンへのクラックを抑制することができる。従って、隣接する電極同士の短絡や電極の断線の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図3】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図4】(a)は図3(a)のA部を拡大して示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の他の例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図6】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の他の例を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面を示す断面図である。
【図7】(a)は本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の他の例を示す平面図であり、(b)は(a)に第2のセラミックグリーンシートが積層される前の本発明の配線基板の製造方法の実施の形態の一工程の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の配線基板の製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1乃至図7において、1は第1のセラミックグリーンシート、2は第2のセラミックグリーンシート、2aは貫通孔、3は電極パターン、4は第1の絶縁パターン、5は第2の絶縁パターン、6は貫通導体パターン、7は配線導体パターン、8は積層体、8aは凹部である。また、図2乃至図5および図7においては、電極パターン3の第1絶縁パターン4および第2絶縁パターン5ならびに第2のセラミックグリーンシート2に覆われた部分の様子を破線で透視して示している。
【0014】
まず、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とを準
備する。第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2は、作製する配線基板に応じた厚みのものが使用される。
【0015】
第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2は、セラミック粉末に有機バインダおよび溶剤を、また必要に応じて所定量の可塑剤や分散剤を加えてスラリーを得て、これをPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂や紙製の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法またはダイコーター法等の成形方法によって塗布してシート状に成形し、温風乾燥,真空乾燥または遠赤外線乾燥等の乾燥方法によって乾燥することによって作製する。
【0016】
セラミック粉末としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)粉末,窒化アルミニウム(AlN)粉末,ガラスセラミック粉末等が挙げられ、配線基板に要求される特性に合わせて適宜選択される。
【0017】
セラミック粉末が酸化アルミニウム粉末や窒化アルミニウム粉末の場合は、酸化珪素(SiO)や酸化マグネシウム(MgO)等の焼結助剤となる成分の粉末が加えられ、また、着色剤として酸化マンガン(MnO)等の粉末を加えてもよい。
【0018】
ガラスセラミック粉末は、ガラス粉末とフィラー粉末とを10:90乃至99:1、好ましくは40:60乃至80:20の質量比で混合したものである。ガラスセラミック粉末のガラス粉末としては、従来からガラスセラミックスに用いられているものを用いればよく、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す。),SiO−Al−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す。),SiO−B−Al−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである。),SiO−B−M3O系(ただし、M3はLi、NaまたはKを示す。),SiO−B−Al−M3O系(ただし、M3は上記と同じである。),Pb系,Bi系等のガラスの粉末が用いられる。
【0019】
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、従来からガラスセラミックスに用いられているものを用いればよく、例えばAlとSiOとZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiO(クリストバライト,クオーツ)の少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
【0020】
有機バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに用いられているものを用いればよく、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独集合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独共重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量はセラミック粉末によって異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつセラミック粉末が分散され、グリーンシートのハンドリング性や加工性が良好な量であればよく、セラミック粉末に対して10乃至20質量%程度が望ましい。
【0021】
スラリーに含まれる溶剤は、セラミック粉末および有機バインダを分散させ、グリーンシート成形に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類,エーテル類,エステル類,ケトン類,アルコール類等の有機溶剤や水が挙げられる。これらの中で、ト
ルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤は、スラリー塗布後の乾燥工程が短時間で終了できるので好ましい。溶剤の量は、セラミック粉末に対して30乃至100質量%の量で加えることによって、スラリーを良好に支持体上に塗布
することができるような粘度、具体的には3乃至100cps程度となるようにすることが
望ましい。
【0022】
次に、図1に示す例のように、第2のセラミックグリーンシート2を、中央部に貫通孔2aを設けて枠状に形成する。貫通孔2aは、金型やパンチングによる打ち抜き加工またはレーザ加工によって形成することができる。貫通孔2aは、平面視で四角形状等の多角形状,円形状または楕円形状等に形成される。
【0023】
また、図2に示す例のように、第1のセラミックグリーンシート1の上面に、導体ペーストによる電極パターン3を形成する。さらに、図2に示す例では、配線導体として第1のセラミックグリーンシート1の下面に、外部回路基板と接続するための接続パッドとなる配線導体パターン7が形成されている。
【0024】
電極パターン3は、搭載される電子部品の各電極とワイヤボンディングやフリップチップ実装によって電気的に接続される電極となるものであり、電極は貫通導体を介して他の配線導体に接続されるので、第1のセラミックグリーンシート1には、貫通導体となる貫通導体パターン6および配線導体となる配線導体パターン7が形成される。配線導体には、半田等の接合材を介して外部回路基板へ接続するための接続パッドや基板内で引き回される内部配線層がある。
【0025】
電極パターン3および配線導体パターン7は、例えば、第1のセラミックグリーンシート1にパンチングや金型による打ち抜き加工やレーザ加工によって貫通導体パターン6用の貫通孔を形成し、この貫通孔に貫通導体パターン6用の導体ペーストをスクリーン印刷法やプレス充填によって埋め込んで貫通導体パターン6を形成し、第1のセラミックグリーンシート1の上面または下面の貫通導体パターン6が露出した部分の上に電極パターン3および配線導体パターン7用の導体ペーストをスクリーン印刷法またはグラビア印刷法等の印刷法によって所定パターン形状で印刷することによって、5乃至20μm程度の厚みで形成される。
【0026】
導体ペーストは、金属粉末に適当な有機バインダおよび溶剤を加えてボールミルやプラネタリーミキサー等の混練手段によって均質に分散させて混練した後、溶剤を必要量添加することによって、印刷や貫通孔の充填に適した粘度に調整することによって作製される。
【0027】
この金属粉末は、後の焼成工程において第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2との同時焼成によって焼結する金属の粉末であり、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),金(Au),銀(Ag),銅(Cu),パラジウム(Pd),白金(Pt)等の1種または2種以上が挙げられる。2種以上の場合は混合,合金,コーティング等のいずれの形態であっても構わない。
【0028】
導体ペーストの有機バインダとしては、従来から導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系,アルキド系の有機バインダがより好ましい。また、有機バインダの添加量と
しては、金属粉末によって異なるが、焼成時に分解・除去されやすく、かつ金属粉末を分散できる量であればよく、金属粉末に対して外添加で5乃至20質量%程度の量であることが望ましい。
【0029】
導体ペーストに用いる溶剤としては、金属粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。印刷後の形成性および乾燥性を考慮して、低沸点溶剤を用いることが好ましい。溶剤は金属粉末に対して4乃至15質量%の量で加えられ、これらの導体ペーストを良好に形成できる程度の粘度となるように、具体的には、電極パターン3や配線導体パターン7用の導体ペーストでは500乃至40000cps程度、貫通導体パターン6用の導体ペーストでは15000乃至40000cps程度となるように調整される。
【0030】
導体ペーストには、焼成時の第1のセラミックグリーンシート1または第2のセラミックグリーンシート2の焼成収縮挙動や収縮率と合わせるため、または焼成後の配線導体の接合強度を確保するために、ガラスやセラミックスの粉末を添加してもよい。
【0031】
次に、図2に示す例のように、第1のセラミックグリーンシート1の上面に、電極パターン3の一端を露出させて複数の電極パターン3および電極パターン3間を覆うように、セラミックペーストを印刷して貫通孔2aの開口に沿って帯状の第1の絶縁パターン4を形成し、さらに、第1の絶縁パターン4の第1のセラミックグリーンシート1の中央部の一部を帯状に露出させて第1の絶縁パターン4を覆うように、セラミックペーストを印刷して第2の絶縁パターン5を第1の絶縁パターン4に沿って帯状に形成する。
【0032】
第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5は、焼成後に絶縁層となるものである。第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5として用いられるセラミックペーストは、第1のセラミックグリーンシート1または第2のセラミックグリーンシート2を作製するのに用いるセラミック粉末に適当な有機バインダおよび溶剤を加えてボールミルまたはプラネタリーミキサー等の混練手段によって均質に分散させて混練した後、溶剤を必要量添加して粘度を調整することによって作製したセラミックペーストを使用することができる。第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5は、それぞれ、10乃至20μm程度の厚みに形成する。
【0033】
また、第1の絶縁パターン4を印刷塗布し、第1の絶縁パターン4の表面を加圧して平坦にした後、第2の絶縁パターン5を印刷塗布しても構わない。このようにすると、空隙の発生をより良好に低減できるとともに、第2の絶縁パターン5をより良好に印刷することができる。
【0034】
次に、図3に示す例のように、第1のセラミックグリーンシート1の上面に第2のセラミックグリーンシート2を積層して加圧することによって、凹部8aを備えた積層体8を作製する。このとき、電極パターン3,第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5と枠状のセラミックグリーンシート2の貫通孔2aの開口縁とが平面視で重なるように積層される。このときの加圧は必要に応じて加熱しながら行なう。加圧および加熱の条件は用いる有機バインダ等の種類や量によって異なるが、概ね2乃至20MPaの圧力および30乃至100℃の温度である。また、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミッ
クグリーンシート2との接着性を向上させるために、溶剤と有機バインダや可塑剤等とを混合した接着剤を用いてもよい。積層体8の凹部8aの形状に対応するゴム等から成る弾性体を積層したセラミックグリーンシートの上に配置して加圧してもよい。
【0035】
また、図4に示す例のように、電極パターン3,第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5は、第2のセラミックグリーンシート2の貫通孔2aの開口縁と平面視で重
なるように配置されており、それぞれが凹部8a内に露出される長さは、それぞれに必要な長さに設定されている。例えば、電極パターン3の一端側の凹部8a内に露出する長さL1は、電極が、配線基板に実装される電子部品の各電極とワイヤボンディング実装またはフリップチップ実装によって電気的に接続される際の有効エリアを確保するために必要な長さに設定されており、ワイヤボンディング実装であれば通常0.1mm以上、フリップ
チップ実装であれば通常0.08mm以上が必要である。また、貫通孔2aの開口に沿って帯状に形成された第1の絶縁パターン4が貫通孔2a内に露出される幅の長さL2および第1の絶縁パターン4に沿って帯状に形成された第2の絶縁パターン5が貫通孔2a内に露出される幅の長さL3は、それぞれ0.05乃至0.2mm程度が必要である。
【0036】
上記したような積層体8とすることによって、第2のセラミックグリーンシート2の開口に沿った部分では、第1の絶縁パターン4の厚みと第2の絶縁パターン5の厚みとの合計の厚みを十分に厚くすることができる。よって、絶縁パターンに第2のセラミックグリーンシート2の開口に沿って電極パターン3を露出させるようなクラックが発生することを抑制することができる。また、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とを積層して加圧しても、平面視で第1の絶縁パターン4の端部と第2の絶縁パターン5の端部との位置がずれていることから、圧力が第2のセラミックグリーンシート2の開口内に位置する第1の絶縁パターン4の端部と第2の絶縁パターン5の端部とに分散するので、積層して加圧することによって電極パターン3にクラックが発生することを抑制することができる。従って、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とを積層して加圧した際に生じる絶縁パターンへのクラックや電極パターン3へのクラックを抑制することができる。従って、隣接する電極同士の短絡や電極の断線の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、図3および図4に示す例において、積層体8は、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とをそれぞれ1枚ずつ、合計2枚のセラミックグリーンシートを積層することによって形成されているが、いずれか一方あるいは両方のセラミックグリーンシートを複数枚として、積層体8を3枚以上のセラミックグリーンシートを積層することによって作製してもよい。また、図5に示す例のように、貫通孔2aとは大きさの異なる貫通孔が形成された第1のセラミックグリーンシート1’の上面に、電極パターン3,第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5を形成し、この第1のセラミックグリーンシート1’を他の第1のセラミックグリーンシート1の上面に積層して加圧した後、第1のセラミックグリーンシート1’の上面に第2のセラミックグリーンシート2を積層して加圧することによって、凹部8a内に階段状の段差を備えるとともに、段差の上面に電極パターン3が形成された積層体8を作製しても構わない。図5に示す例においては、積層体8は2段の階段状の段差を備えているが、さらに多くの段差を備えていても構わない。このような、段差を設けることによって、ワイヤボンディングする際のボンディングワイヤの高さを変えて、ワイヤ同士の短絡を抑制できるので、同じ方向に向かって多くのボンディングワイヤによる接合を行なうことができる。
【0038】
また、図3および図5に示す例では、第1のセラミックグリーンシート1の上面にのみ電極パターン3を形成しているが、図6に示す例のように、第2のセラミックグリーンシート2の上面にも電極パターン3を形成しても構わない。第2のセラミックグリーンシート2への電極パターン3,貫通導体パターン6および配線導体パターン7の形成は、上述した第1のセラミックグリーンシート1へ形成した場合と同様の方法によって形成することができる。また、第2のセラミックグリーンシート2の上面に、大きさの異なる貫通孔2aが形成された他の第2のセラミックグリーンシート2を積層して加圧する場合には、第2のセラミックグリーンシート2の上面に形成された電極パターン3上に、上述と同様に、第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5を設けておくことが好ましい。
【0039】
このような積層体8は、第1のセラミックグリーンシート1,下側の第2のセラミックグリーンシート2および上側の第2のセラミックグリーンシート2の順で積層して加圧することによって作製してもよいし、第1のセラミックグリーンシート1と下側の第2のセラミックグリーンシート2とを積層して加圧した後に、上側の第2のセラミックグリーンシート2を積層して加圧することによって作製しても構わない。加圧に際して凹部8aの形状に対応する弾性体を用いる場合には、凹部8aの底面や段差の上面も加圧できることから、第1のセラミックグリーンシート1,2枚の第2のセラミックグリーンシート2を積層して、同時に加圧して積層体8を作製することができるので、生産性,配線基板の寸法精度およびパターンの位置精度の良い積層体8を作製することができる。
【0040】
電極パターン3は、電極パターン3を段差の上面に形成する場合には、第1のセラミックグリーンシート1または第2のセラミックグリーンシート2の貫通孔まで延ばして形成しても構わないが、図5乃至図7に示す例のように、貫通孔から離間させて形成しても構わない。貫通孔を形成してから電極パターン3を形成する場合は、電極パターン3を貫通孔から0.1mm程度離間させて形成することにより、貫通孔の内壁面に導体ペーストが塗
布されてしまうことによって複数の電極パターン3同士が接続して電極が短絡してしまう可能性を低減するのに有効である。電極パターン3を形成してから貫通孔2aを形成する場合は、電極パターン3の端部と重なるように第2のグリーンシート2を打ち抜くことによって、貫通孔2aまで延びた電極パターン3とすることができる。
【0041】
電極パターン3は、貫通孔2aの開口に沿った並びに複数形成される。図3,図5および図6に示す例では、四角形状に形成された貫通孔2aの開口の対向する2辺に沿って複数の電極パターン3がそれぞれ12個ずつ並んで形成されている。また、図7(a)に示す例のように、積層体8は、貫通孔2aの開口の4辺のそれぞれに沿って複数の電極パターン3が並んで形成されていても構わない。なお、図7(b)に示す例のように、第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5は、平面視で、四角形状の貫通孔2aの開口の各辺に沿って帯状に形成されており、全体が枠状となるように形成しても構わない。
【0042】
また、平面視で、第1のセラミックグリーンシート1の上面の、第2のセラミックグリーンシート2と重なる領域の全体に、第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5を形成しておいても構わない。この場合、第1のセラミックグリーンシート1の上面の、第2のセラミックグリーンシート2と重なる領域において、電極パターン3および電極パターン3間のみを覆って第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5を形成した場合に比べて、電極パターン3が形成された部分と形成されていない部分との厚みの差が小さいことから、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とを積層して加圧する際に、積層された領域の全体に良好に圧力を加えることができるので、第1のセラミックグリーンシート1と第2のセラミックグリーンシート2とをより良好に密着して積層することができる。
【0043】
そして、このようにして作製した積層体8を焼成することで、配線基板となる。焼成する工程は有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100乃至1000℃程度の温度範囲で積層体8を加熱することによって行ない、有機成分を分解し、揮
発させる。焼結温度はセラミック組成によって異なり、800乃至1600℃程度の範囲内で行
なう。また、焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料によって異なり、大気中あるいは還元雰囲気中あるいは非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために雰囲気中に水蒸気等を含ませてもよい。
【0044】
焼成後の配線基板(図示せず)には、電極および配線導体の露出する表面に、電解めっき法あるいは無電解めっき法によってめっき層が被着される。これによって、配線導体と電子部品との固着、配線導体と外部回路基板の配線導体との接合、および電極とボンディ
ングワイヤとの接合を強固にすることができる。めっき層は、ニッケルおよび金等の耐蝕性に優れる金属から成るものである。例えば、厚さ1乃至10μm程度のニッケルめっき層と厚さ0.1乃至3μm程度の金めっき層とを順次被着させる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、種々の変更は可能である。例えば、貫通孔2aとなる貫通孔が形成された第2のセラミックグリーンシート2を複数枚積層して加圧することにより、貫通孔2aを備えた複数枚からなる第2のセラミックグリーンシート2を準備しても構わない。また、第2のセラミックグリーンシート2に電極パターン3を形成する際、第2のセラミックグリーンシート2に電極パターン3を印刷塗布した後、貫通孔2aを形成しても構わない。また、第1のセラミックグリーンシート1の中央部に、貫通孔2aよりも小さい貫通孔を形成しても構わない。この場合、この配線基板の下面に、銅(Cu),銅(Cu)−タングステン(W)等からなる放熱体を接合させておくことで、電子部品を放熱体上に直接搭載してすることによって、電子部品からの放熱性を高めた放熱性に優れた配線基板とすることができる。また、配線導体として配線基板の側面に形成した溝の内面に導体が形成された、いわゆるキャスタレーション導体を形成しても構わない。また、1つの積層体8の中央部に配線基板となる基板領域を縦横に並べて形成して、いわゆる多数個取り配線基板として製作しても構わない。第1のセラミックグリーンシート1は、貫通孔を備えたものであっても良く、これによって貫通孔を備えた配線基板を形成することができる。
【実施例】
【0046】
本発明の配線基板の実施例1について説明する。なお、この実施例では、31mm×31mm×3.51mmの積層体8の凹部8aの4辺方向にそれぞれ3段の階段状の段差を備えたものである。
【0047】
酸化アルミニウムを91質量%と、焼結助剤として酸化珪素、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを合わせて4質量%と、顔料として二酸化チタンおよび酸化クロムを合わせて5質量%との割合で調合したセラミック粉末100質量%に対して、有機バインダとして
アクリル樹脂を固形分で10質量%と、可塑剤としてジブチルフタレートを1質量%との割合で加え、トルエンを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、セラミックスラリーを調製した。このセラミックスラリーをドクターブレード法によってシート状に成形して、第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2となるセラミックグリーンシートを複数枚作製した。そして、これらのセラミックグリーンシートに以下に示すような加工を施し、第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2を準備した。
【0048】
まず、第1のセラミックグリーンシート1には、次のような加工を施した。最初に、複数のセラミックグリーンシートの所定の位置に、打ち抜き金型によって直径が0.09乃至0.12mmの貫通導体パターン6用の貫通孔を形成した。そして、貫通導体パターン6用の貫通孔に貫通導体パターン6用の導体ペーストを充填した後、セラミックグリーンシートの所定の面に、スクリーン印刷法で配線導体パターン7用の導体ペーストを印刷塗布した。その後、これらのセラミックグリーンシートを積層して加圧することにより、18層からなる厚さが2.038mmの第1のセラミックグリーンシート1を得た。
【0049】
次に、第2のセラミックグリーンシート2には、次のような加工を施した。複数のセラミックグリーンシートの所定の位置に、打ち抜き金型によって直径が0.09乃至0.12mmの貫通導体パターン6用の貫通孔を形成した。また、これらのセラミックグリーンシートには、寸法が16.651mm×16.651mmの貫通孔2a,17.921mm×17.921mmの貫通孔2a
または19.699mm×19.699mmの貫通孔2aのいずれかを形成した。そして、貫通導体パターン6用の貫通孔に貫通導体パターン6用の導体ペーストを充填した後、セラミックグ
リーンシートの所定の面に、スクリーン印刷法で配線導体パターン7用の導体ペーストを印刷塗布した。その後、貫通孔2aの大きさが同じセラミックグリーンシート同士を積層して加圧することにより、寸法が16.651mm×16.651mmの貫通孔2aを備えた2層からなる厚さが0.406mmのシート(下側の第2のセラミックグリーンシート2ともいう)お
よび寸法が17.921mm×17.921mmの貫通孔2aを備えた2層からなる厚さが0.406mm
のシート(中間の第2のセラミックグリーンシート2ともいう)ならびに寸法が19.699mm×19.699mmの貫通孔2aを備えた2層からなる厚さが0.660mmのシート(上側の第
2のセラミックグリーンシート2ともいう)の、積層して第2のセラミックグリーンシート2となる3種類のセラミックグリーンシートを得た。
【0050】
そして、第1のセラミックグリーンシート1の上面に、スクリーン印刷法で電極パターン3用の導体ペーストを印刷塗布して、幅が約0.09乃至約0.12mmで、下側の第2のセラミックグリーンシート2を積層した際に開口縁からの長さ(L1+L2+L3)が約0.5
mmとなるように、厚さH1が約18μmである電極パターン3を約0.06乃至約0.3mm間
隔で各辺40個ずつの合計160個形成した。
【0051】
また、下側の第2のセラミックグリーンシート2の上面には、寸法が16.651mm×16.651mmの貫通孔2aの開口に沿った並びに、スクリーン印刷法で電極パターン3用の導体ペーストを印刷塗布して、幅が約0.09乃至約0.12mmで、中間の第2のセラミックグリーンシート2を積層した際に開口縁からの長さ(L1+L2+L3)が約0.53mmとなるように、厚さH1が約18μmである電極パターン3を0.06乃至0.3mm間隔で各辺40個ずつ
の合計160個形成した。
【0052】
また、中間の第2のセラミックグリーンシート2の上面には、寸法が17.921mm×17.921mmの貫通孔2aの辺から0.1mm離間した位置に、スクリーン印刷法で電極パターン
3用の導体ペーストを印刷塗布して、幅が約0.09乃至約0.12mmで、上側の第2のセラミックグリーンシート2を積層した際に開口縁からの長さ(L1+L2+L3)が約0.7m
mとなるように、厚さH1が約18μmである電極パターン3を0.1乃至0.3mm間隔で各辺36個ずつの合計144個形成した。
【0053】
また、第1のセラミックグリーンシート1の下面には、スクリーン印刷法で外部回路基板と接続するための接続パッドとなる配線導体パターン7用の導体ペーストを印刷塗布した。
【0054】
なお、電極パターン3用の導体ペーストは、タングステン粉末100質量%に対して、ジ
ブチルフタレート,ジエチレングリコールブチルアセテート,セルロースナイトレート,イソプロピルアルコールおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルを合計で8質量%加えて混合することによって作製した。配線導体パターン7用の導体ペーストは、タングステン粉末100質量%に対して、酸化アルミニウム粉末を3質量
%と、ジブチルフタレート,ジエチレングリコールブチルアセテート,セルロースナイトレート,イソプロピルアルコール,ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルを合計で18質量%とを加えて混合することによって作製した。貫通導体パターン6用の導体ペーストは、モリブデン粉末100質量
%に対して、酸化アルミニウム粉末を20質量%と、ジブチルフタレート,α−テルピネオールおよびポリエチレングリコールステアリルアミンを合計で60質量%とを加えて混合することによって作製した。
【0055】
そして、第1のセラミックグリーンシート1および下側の第2のセラミックグリーンシート2ならびに中間の第2のセラミックグリーンシート2の上面に、スクリーン印刷法で、複数の電極パターン3および電極パターン3間を覆うように、第1の絶縁パターン4用
のセラミックペーストを印刷塗布することによって、下側の第2のセラミックグリーンシート2および中間の第2のセラミックグリーンシート2ならびに上側の第2のセラミックグリーンシート2を積層した際にそれぞれの開口縁からの幅(L2+L3)が約0.15mmとなるように、厚さH2が約18μmである枠状の第1の絶縁パターン4を形成する。さらに、スクリーン印刷法で、第1の絶縁パターン4を覆うように、第2の絶縁パターン5用のセラミックペーストを印刷塗布して、下側の第2のセラミックグリーンシート2および中間の第2のセラミックグリーンシート2ならびに上側の第2のセラミックグリーンシート2を積層した際にそれぞれの開口縁からの幅(L3)が約0.1mmとなるように、厚さ
H3が約10μmである枠状の第2の絶縁パターン5を形成した。なお、第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5は、各シートの貫通導体パターン6同士の接続を妨げないように、それぞれの貫通導体パターン6が形成される領域に、貫通導体パターン6の大きさよりも大きい直径0.3mm程度の第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5
にパターンの非形成部を設けてある。セラミックペーストは、第1のセラミックグリーンシート1および第2のセラミックグリーンシート2と同様のセラミック粉末100質量%に
対して、ジブチルフタレート,ジエチレングリコールブチルアセテート,α−テルピネオール,セルロースナイトレートおよびイソプロピルアルコールを合計で60質量%を加えて混合することによって作製した。
【0056】
また、比較例1として、第2のセラミックグリーンシート2の開口縁からの長さL2が約0.15mmとなる、厚さH2が約18μmであり、枠状の第1の絶縁パターン4を形成したものを準備した。また、比較例2として、第2のセラミックグリーンシート2の開口縁からの長さL2が約0.15mmとなる、厚さH2が約28μmである枠状の第1の絶縁パターン4を形成したものを準備した。なお、比較例1および比較例2は、第2の絶縁パターンを形成しておらず、第2の絶縁パターンを形成していない点以外は実施例1と同様の材料および方法で作製した。
【0057】
次に、第1のセラミックグリーンシート1の上面に、下側の第2のセラミックグリーンシート2を載置し、加圧(加重:約2000kg)することで積層した後、中間の第2のセラミックグリーンシート2を載置し、加圧(加重:約2000kg)することで積層した。さらに、上側の第2のセラミックグリーンシート2を載置し、加圧(加重:約2000kg)することで積層体8を形成した。積層体8の凹部8a内には、電極パターン3が合計364個(
凹部の底面:160個,1段目の段差の上面:160個,2段目の段差の上面:144個)形成さ
れた。
【0058】
次に、この積層体8を水蒸気を含んだ窒素雰囲気中にて約1000℃の温度で約3時間加熱することによって有機成分を除去した後、水蒸気を含んだ窒素雰囲気中にて約1500℃の温度で約6時間焼成を行ない、配線基板を製作した。そして、配線基板の電極および配線導体の露出する表面に、無電解めっき法にて、約4μmの厚さのニッケルめっき層と約1μmの厚さの金めっき層とを順次被着させた。
【0059】
なお、実施例1および比較例1ならびに比較例2に対して、積層体8の外観検査を行なうとともに、配線基板の電極と配線導体との電気的導通のチェックを行なった。
【0060】
その結果、実施例1では、積層体8の電極パターン3のクラックおよび、第1の絶縁パターン4および第2の絶縁パターン5の電極パターン3に達するクラックは確認されず、配線基板の隣接する電極同士の短絡ならびに電極と配線導体との断線は確認されなかった。これに対して、比較例1では、積層体8の第1の絶縁パターン4の電極パターン3に達するクラックが確認され、配線基板の隣接する電極同士の短絡が確認された。また、比較例2では、積層体8の電極パターン3にクラックが確認され、配線基板の電極と配線導体との断線や抵抗異常等の導通不良が確認された。以上のように、本発明の製造方法によれ
ば、絶縁パターンに生じるクラックによる電極パターン3の露出や電極パターン3に生じるクラックを抑制することができ、隣接する電極同士の短絡や電極の断線の発生を抑制することが確認できた。
【符号の説明】
【0061】
1・・・・・・第1のセラミックグリーンシート
2・・・・・・第2のセラミックグリーンシート
2a・・・・・貫通孔
3・・・・・・電極パターン
4・・・・・・第1の絶縁パターン
5・・・・・・第2の絶縁パターン
6・・・・・・貫通導体パターン
7・・・・・・配線導体パターン
8・・・・・・積層体
8a・・・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記第2のセラミックグリーンシートを、中央部に貫通孔を設けて枠状に成形する工程と、
前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、前記第2のセラミックグリーンシートを積層したときに、平面視で、その一端が前記貫通孔の開口内に露出して他端が前記第2のセラミックグリーンシートと重なるように導体ペーストを印刷して、帯状の電極パターンを前記貫通孔の開口に沿った並びに形成する工程と、
前記電極パターンの前記一端を露出させて複数の前記電極パターンおよび該電極パターン間を覆うようにセラミックペーストを印刷して、前記貫通孔の開口に沿って帯状の第1の絶縁パターンを形成する工程と、
前記第1の絶縁パターンの前記第1のセラミックグリーンシートの中央側の一部を帯状に露出させて前記第1の絶縁パターンを覆うようにセラミックペーストを印刷して、第2の絶縁パターンを前記第1の絶縁パターンに沿って帯状に形成する工程と、
前記第2の絶縁パターンの一部が前記貫通孔の開口内に帯状に露出するように、前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、枠状の前記第2のセラミックグリーンシートを積層して加圧することにより積層体を作製する工程と、
前記積層体を焼成する工程と
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151307(P2011−151307A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13209(P2010−13209)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】