説明

配線基板の製造方法

【課題】ビルドアップ方式で多層配線基板を製造するような場合において、ラミネートする絶縁樹脂フィルム(絶縁層)の染み出しを抑制し、この染み出しに起因した段部の形成による製品特性の異常を抑制する新規な配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の主面において配線パターンが形成されてなる基板の、前記少なくとも一方の主面上に、前記配線パターンを覆うようにして支持フィルムによって支持されてなる絶縁層を真空加圧プレスによって付着する。次いで、前記支持フィルムを前記絶縁層から剥離した後、前記絶縁層に対して接着防止フィルムを付着させる。次いで、 前記基板及び前記絶縁層に対し、前記接着防止フィルムを介して平坦化プレスを行い、前記絶縁層の平坦化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板の製造方法、特に多層配線基板の製造方法として、主面上に配線層(配線パターン)が形成された耐熱性樹脂板や、繊維強化樹脂板等で構成されたコア基板上に、絶縁樹脂層としてガラスクロス基材にエポキシ樹脂を含浸して半硬化させたプリプレグシートと銅箔とを積層プレスし、スルーホールによって層間導通をとる方法が知られている。しかしながら、この方法ではプリプレグ中の含浸樹脂を熱により再流動させて一定圧力下で硬化させるため、均一に硬化成形させるためには長時間を要し、その結果、多層配線基板の製造時間が長時間化し、タクトタイムが増大してしまうことから、多層配線基板の製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0003】
また、ガラスクロスプリプレグを用いることによる原材料のコストの増大及び多層積層プレスという複雑な操作を行うことに起因して、上述した製造コストのさらなる増大を招いていた。
【0004】
このような問題を解決する方法として、近年、コア基板の配線層上に絶縁層と配線層とを交互に積み上げていくビルドアップ方式の多層配線基板の製造技術が注目されている。この技術は、コア基板の主面上において、当該主面上に形成された配線層を覆うようにして絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱硬化後、粗化剤により主面に凹凸の粗化面を形成し、次いで、この粗化面上に例えばめっき法により配線層を形成するという操作を繰り返すことによって、上記多層配線基板を製造する。
【0005】
このようなビルドアップ方式による多層配線基板の製造方法では、通常、コア基板に絶縁樹脂フィルムを真空加圧ラミネーターによりラミネートして絶縁層を形成し、その後、平坦化プレスを用いた平坦化処理を行って、絶縁層の表面を平坦化する。なお、ビルドアップ方式による多層配線基板の製造方法に用いる装置では、一般的に真空加圧ラミネーター部と平面プレス部とが上下1対の搬送フィルムによって連結された一貫ラインとなっている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上述のようなビルドアップ方式による多層配線基板の製造方法においては、真空加圧ラミネーターによって絶縁樹脂フィルムをラミネートする際に、絶縁樹脂フィルムの一部が、多層配線基板を形成すべき領域、すなわち素子形成領域から染み出してしまい、このはみ出し部分がコア基板上に堆積されて段部を形成するようになる。
【0007】
このような段部が存在すると、絶縁樹脂フィルムのラミネート及び配線層の形成という操作を繰り返して多層配線基板を製造する際に、段部が順次に堆積されて巨大化することになり、多層配線基板の厚みムラによる製品特性の変動を引き起こす場合が生じる。また、多層配線基板の厚みムラに起因してコンタクト露光時の密着が不十分となり、段差近傍の配線層を正確に形成することが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−340594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ビルドアップ方式で多層配線基板を製造するような場合において、ラミネートする絶縁樹脂フィルム(絶縁層)の染み出しを抑制し、この染み出しに起因した段部の形成による製品特性の異常を抑制する新規な配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は、
少なくとも一方の主面において配線パターンが形成されてなる基板の、前記少なくとも一方の主面上に、前記配線パターンを覆うように支持フィルムで支持された絶縁層を真空加圧プレスによって付着させる工程と、
前記支持フィルムを前記絶縁層から剥離し、前記絶縁層に対して接着防止フィルムを付着させる工程と、前記基板及び前記絶縁層に対し、前記接着防止フィルムを介して平坦化プレスを行い、前記絶縁層を平坦化する工程と、
を備えることを特徴とする、配線基板の製造方法に関する。
【0011】
一般に、例えばビルドアップ方式によって多層配線基板を製造する際に使用する絶縁樹脂フィルム(以下、“絶縁層”という場合がある)をラミネートして付着させる場合において、当該絶縁層は支持フィルム上に支持された状態で付着すべき対象物(例えば基板の主面上に形成された配線層)上に供給される。そして、真空加圧プレスによって絶縁層が対象物に対して付着された後、支持フィルムが絶縁層の対象物との付着面と相対向する面に付着した状態で平坦化工程に供され、平坦化プレスによって平坦化されることになる。
【0012】
したがって、上記真空加圧プレスによって絶縁層が多層配線基板の形成領域、すなわち素子形成領域から染み出すことによって形成される段部は、その高さが絶縁層及び支持フィルムの厚さの合計よりも大きくなって、その上部が支持フィルムの上面に露出する場合においても、上記平坦化プレスによって、絶縁層及び支持フィルムの厚さの合計とほぼ等しい高さにまで低減されて平坦化されることになる。しかしながら、支持フィルムは平坦化プレス後において絶縁層より剥離してしまうので、結果として、残存した段部は、支持フィルムの厚さに相当する部分だけ絶縁層の上方に突出してしまうことになる。
【0013】
結果として、このような工程を繰り返して多層配線基板を製造しようとすると、従来のように、残存した段部が順次に堆積されて巨大化し、多層配線基板の厚みムラによる製品特性の変動を引き起こす場合が生じる。また、多層配線基板の厚みムラに起因してコンタクト露光時の密着が不十分となり、段差近傍の配線層を正確に形成することが困難になる。
【0014】
しかしながら、本発明においては、絶縁層を支持フィルムで支持された状態で付着すべき対象物、例えば、ビルドアップ方式によって多層配線基板を製造する際の最初の工程である、配線パターンが形成された基板(コア基板)に供給し、真空加圧プレスによって、絶縁層を基板上の配線パターンが形成された領域に付着させた後、上記支持フィルムを絶縁層より剥離し、その後に接着防止フィルムを介して平坦化プレスに供するようにしている。
【0015】
したがって、真空加圧プレスによって絶縁層が素子形成領域外に染み出して段部を形成した場合においても、この段部は接着防止フィルムを介した平坦化プレスによって、その高さが付着させた絶縁層の厚さと同程度にまで低減され、絶縁層の上方に突出するようなことがない。この結果、本発明の工程を繰り返し、例えばビルドアップ方式によって多層配線基板を製造する際において、残存した段部が順次に堆積されて巨大化したとしても、その高さは層間に位置する絶縁層の厚さと同程度となるので、多層配線基板の厚みムラを抑制することができ、製品特性の変動を抑制することができる。また、多層配線基板の厚みムラに起因したコンタクト露光時の密着不十分を回避することができ、段差近傍の配線層を正確に形成することが可能となる。
【0016】
また、上記接着防止フィルムを介して平坦化プレスを行っているので、絶縁層が平坦化プレスに付着するのを防止することができる。
【0017】
本発明の一態様においては、接着防止フィルムの、絶縁層と接触する側の主面の表面粗さRaを0.2μm以上とすることができる。接着防止フィルムは、多層配線基板などのような素子の構成要素ではないので、上述のようにして平坦化プレスを実施した後は、絶縁層から剥離することになるが、上述のような表面粗さRaで規定されるように、絶縁層と接触する側の主面を粗しておくことにより、接着防止フィルムの、絶縁層からの剥離を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明の一態様においては、接着防止フィルムの、絶縁層と接触する側の主面に離型コーティングが施すことができる。この場合においても、上記同様に、接着防止フィルムの、絶縁層からの剥離を容易に行うことができる。
【0019】
さらに、本発明の一態様において、接着防止フィルムはキャリアフィルムとして機能させることができる。すなわち、上述した真空加圧プレスや平坦化プレスを行うべく、これら装置内に、絶縁層が付着した基板を導入する際に使用するキャリアフィルムを接着防止フィルムとすることができる。これによって、接着防止フィルムを別途準備する必要がないので、本発明の製造方法を実施する際の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ビルドアップ方式で多層配線基板を製造するような場合において、ラミネートする絶縁樹脂フィルム(絶縁層)の染み出しを抑制し、この染み出しに起因した段部の形成による製品特性の異常を抑制する新規な配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図2】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図3】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図4】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図5】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図6】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【図7】同じく、実施形態における配線基板の製造方法における工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1〜図7は、本実施形態の配線基板の製造方法における工程図である。なお、本実施形態では、本実施形態における製造方法の特徴を明確にすべく、各工程で設けられた真空プレス等を収納するユニットについては記載を省略している。
【0024】
最初に、図1に示すように、本実施形態の製造方法に供するための基板11を準備する。この基板11は、例えば、耐熱性樹脂板(たとえばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や、繊維強化樹脂板(たとえばガラス繊維強化エポキシ樹脂)等で構成された板状の基板とすることができる。また、基板11の両主面11A及び11B上には、例えば銅めっき等によって一対の配線パターン12,12(コア配線層)がそれぞれ形成されている。なお、この工程は、図示しない配線層形成ユニット内で行われる。
【0025】
次いで、図2に示すように、上述のようにして配線パターン12,12が形成された基板11は、図示しない搬送ローラによって、配線層形成ユニットと隣接する図示しない絶縁樹脂フィルム付着ユニット内に導入され、基板11の両主面11A及び11B上において、配線パターン12,12を覆うようにして絶縁樹脂フィルム131が付着される。
【0026】
具体的には、基板11の両主面11A及び11Bの上方に設けられた一対のフィルム巻取りロール21に対して、上記絶縁層に相当する絶縁樹脂フィルム131が支持フィルム132上に支持されるとともに、保護フィルム133で被覆されてなる3層構造のフィルム13を巻回させる。次いで、一対の補助ロール22にて3層構造のフィルム13の内、保護フィルム133を巻き取って剥離し、絶縁樹脂フィルム131を露出させる。そして、基板11を図示しない搬送ローラで搬送させながら、絶縁樹脂フィルム131を基板11の主面11A及び11Bにおいて、配線パターン12,12を覆うようにして接触させ、当該領域に絶縁樹脂フィルム131を付着させる。
【0027】
なお、絶縁樹脂フィルム131は、配線基板の絶縁層を構成するものであるため、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂から構成することができる。また、必要に応じて、ガラス繊維等のフィラーを含有させることもできる。また、支持フィルム132及び保護フィルム133は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂から構成することができる。
【0028】
また、絶縁樹脂フィルム131の厚さは、形成すべき配線基板の絶縁層の厚さに依存するが、通常は数十μmのオーダである。また、支持フィルム132及び保護フィルム133の厚さは、数十μmから数百μmのオーダである。
【0029】
次いで、図3に示すように、基板11の主面11A及び11Bに絶縁樹脂フィルム131を付着させた後、絶縁樹脂フィルム131及び支持フィルム132を切断し、図示しない搬送ローラによって、絶縁樹脂フィルム付着ユニットに隣接する、図示しない第1のローダユニット内に搬入する。なお、図3から明らかなように、この段階で、絶縁樹脂フィルム131は基板11の両主面11A及び11Bに接触させることによって付着しているのみであるので、その付着強度は弱く、絶縁樹脂フィルム131は配線パターン12,12の層間に入り込むことなく、その上面に付着しているのみである。また、支持フィルム132は絶縁樹脂フィルム131の、基板11の主面11A及び11Bと相対向する側の面に付着したままである。
【0030】
なお、図3に示す基板11と絶縁樹脂フィルム131及び支持フィルム132との第1の積層体10は、左右の両側においては、上述した切断によって、絶縁樹脂フィルム131と支持フィルム132との端面は一致しているが、紙面の前後における端面は特に一致している必要はなく、例えば支持フィルム132が絶縁樹脂フィルム131よりも外方に突出していてもよい。
【0031】
次いで、図4に示すように、図3に示す基板11と絶縁樹脂フィルム131及び支持フィルム132とからなる第1の積層体10は、図示しない搬送ローラによって、第1のローダユニットに隣接する真空プレスユニット内に搬送され、当該ユニット内において、真空加圧プレスに供される。
【0032】
本ユニット内において、第1の積層体10は、上下方向において一対の第1のプレス機31,31間に位置するようになるので、当該ユニット内における第1の積層体10の搬送は、プレス機31,31の左右上下に設けた、一対の第1のフィルム送出しロール23に巻回された第1のキャリアフィルム15によって行われるようになる。すなわち、第1のフィルム送出しロール23から送り出された第1のキャリアフィルム15を第1の積層体10の支持フィルム132側と接触及び密着させるとともに、フィルム送出しロール23を回転させることにより、第1の積層体10を当該ユニット内で所定の方向に搬送できるようになっている。
【0033】
なお、必要に応じて、キャリアフィルム15を第1の積層体10に対して加圧密着あるいは加熱密着させるような手段を設け、キャリアフィルム15と第1の積層体10との密着力を向上させるようにすることもできる。
【0034】
次いで、当該ユニット内で第1の積層体10に対して真空加圧プレスを行う。真空加圧プレスは、第1の積層体10が配置された雰囲気を例えば図示しない排気手段によって10−2Pa程度の雰囲気まで減圧した後、プレス機31,31により、数MPaの圧力で第1の積層体10を上下方向から加圧することによって行う。これによって、絶縁樹脂フィルム131は、絶縁層14として基板11の主面11A及び11B上に形成された配線パターン12,12の層間に入り込み、これら基板11の主面11A及び11Bと強固に付着するようになる。
【0035】
一方、上述した真空加圧プレスを行うことにより、絶縁層14が支持フィルム132と共通する端面から外方に染み出し、基板11の主面11A及び11B上において、絶縁層14の染み出し部からなる段部14Aが形成されるようになる。なお、段部14Aの高さは、絶縁層14及び支持フィルム132の合計の厚さとほぼ等しくなる。
【0036】
次いで、図5に示すように、真空加圧プレスユニットに隣接する図示しない第2のローダユニット内に、真空加圧プレス後の第1の積層体10を第1のキャリアフィルム15によって移送した後、絶縁層14上の付着した支持フィルム132を剥離する。この剥離操作は、例えばルーラーによって起点を作りテープで引き上げる自動剥離機によって剥離することができる。
【0037】
支持フィルム132を剥離することにより、図4に示す工程で形成された段部14Aは、その上部が絶縁層14の上方に突出するようになり、基板11及びこの基板11に対して付着した段部14Aを有する絶縁層14からなる第2の積層体20を得る。
【0038】
次いで、図6に示すように、第2のローダユニットに隣接する図示しない平坦化プレスユニット内に、図示しない搬送ローラによって第2の積層体20を搬送し、平坦化プレスに供する。なお、本ユニット内において、第2の積層体20は、上下方向において一対の第2のプレス機32,32間に位置するようになるので、当該ユニット内における第2の積層体20の搬送は、プレス機32,32の左右上下に設けた、一対の第2のフィルム送出しロール24に巻回された第2のキャリアフィルム16によって行われるようになる。
【0039】
すなわち、第2のフィルム送出しロール24から送り出された第2のキャリアフィルム16を第2の積層体20の絶縁層14と接触及び密着させるとともに、フィルム送出しロール24を回転させることにより、第2の積層体20を当該ユニット内で所定の方向に搬送できるようになっている。
【0040】
なお、必要に応じて、キャリアフィルム16を第2の積層体20に対して加圧密着あるいは加熱密着させるような手段を設け、キャリアフィルム16と第2の積層体20との密着力を向上させるようにすることもできる。
【0041】
一方、キャリアフィルム16は、第2の積層体20の、配線基板における層間絶縁層等を構成する絶縁層14と直接密着するようになるので、平坦化プレス終了後において、キャリアフィルム16が第2の積層体20の絶縁層14から容易に剥離できるように、接着防止の機能をも有することが必要である。すなわち、キャリアフィルム16は第2の積層体20の絶縁層14に対する接着防止フィルムから構成することが必要である。この場合、接着防止フィルム及びキャリアフィルムをそれぞれ別途準備する必要がないので、本実施形態の製造方法を実施する際の製造コストを低減することができる。
【0042】
このような接着防止フィルムとしては、PETフィルム、シリコーンフィルム、フッ素樹脂系フィルム等から構成することができる。
【0043】
また、キャリアフィルム16の、絶縁層14と接触する側の面の表面粗さRaを0.2μm以上とすることができる。このように絶縁層14と接触する側の面を上記の程度で粗しておくことにより、キャリアフィルム16の、絶縁層14からの剥離を容易に行うことができ、接着防止フィルムとしての機能をより向上させることができる。なお、表面粗さRaの上限は0.3um程度であることが好ましい。これよりも大きいと、絶縁層14と接触した際にその表面を粗してしまい、平坦化プレスによる絶縁層14の平坦化の効果が低減してしまう。
【0044】
なお、キャリアフィルム16の表面を上述した表面粗さRaとなるように加工するには、サンドブラスト法や乾式及び湿式のエッチング法により行うことができる。
【0045】
さらに、キャリアフィルム16の、絶縁層14と接触する側の面に対して、離型コーティングを施すことができる。この場合も、キャリアフィルム16の絶縁層14からの剥離を容易に行うことができ、接着防止フィルムとしての機能をより向上させることができる。離型コーティングとしては、シリコンコーティングやフッ素樹脂コーティングなどを例示することができる。
【0046】
平坦化プレスが終了した後は、図6に示すように、基板11及び段部14Aが平坦化された絶縁層14からなる第3の積層体30を、平坦化プレスユニットに隣接する、図示しない配線基板取出しユニット内に、平坦化プレスユニットの第2のキャリアフィルム16によって移送する。配線基板取出しユニットに移送された第3の積層体30は、基板11の両主面11A及び11B上に配線パターン12,12が形成されるとともに、配線パターン12,12を覆うようにして絶縁層14が形成されているので、適宜追加工等を施すことによって、所定の配線基板として使用することができる(図7参照)。
【0047】
また、第3の積層体30に対して、図1〜図6に示すような工程を繰り返し施すことによって、基板11上に配線パターン及び絶縁層が交互に積層されてなる多層配線基板を、いわゆるビルドアップによって形成することもできる。
【0048】
このように、本実施形態においては、絶縁層14となるべき絶縁樹脂フィルム131を支持フィルム132で支持された状態で付着すべき対象物、例えば、ビルドアップ方式によって多層配線基板を製造する際の最初の工程である、配線パターンが形成された基板(コア基板)に供給し、真空加圧プレスによって、絶縁層14を基板上の配線パターンが形成された領域に付着させた後、支持フィルム132を絶縁層14より剥離し、その後に接着防止フィルム16を介して平坦化プレスに供するようにしている。
【0049】
したがって、真空加圧プレスによって絶縁層14が素子形成領域外に染み出して段部14Aを形成した場合においても、この段部14Aは接着防止フィルム16を介した平坦化プレスによって、その高さが付着させた絶縁層14の厚さと同程度にまで低減され、絶縁層14の上方に突出するようなことがない。この結果、本実施形態の工程を繰り返し、例えばビルドアップ方式によって多層配線基板を製造する際において、残存した段部14Aが順次に堆積されて巨大化したとしても、その高さは層間に位置する絶縁層の厚さと同程度となるので、多層配線基板の厚みムラを抑制することができ、製品特性の変動を抑制することができる。また、多層配線基板の厚みムラに起因したコンタクト露光時の密着不十分を回避することができ、段差近傍の配線層を正確に形成することが可能となる。
【0050】
また、接着防止フィルム16を介して平坦化プレスを行っているので、絶縁層14が平坦化プレスに付着するのを防止することができる。
【0051】
一方、従来の製造方法において、真空加圧プレスによって絶縁層14が染み出して段部14Aを形成した場合、後の平坦化プレスにおいて段部14の高さを絶縁層14及び支持フィルム132の合計の厚さと同程度にまで低減することはできる。しかしながら、支持フィルム132が絶縁層14に付着した状態で平坦化プレスを行い、その後に支持フィルム132を剥離するようにしているので、残存した段部14Aは、支持フィルム132の厚さに相当する部分だけ絶縁層14の上方に突出してしまうことになる。
【0052】
結果として、このような工程を繰り返して例えば多層配線基板を製造しようとすると、残存した段部14Aが順次に堆積されて巨大化し、多層配線基板の厚みムラによる製品特性の変動を引き起こす場合が生じる。また、多層配線基板の厚みムラに起因してコンタクト露光時の密着が不十分となり、段差近傍の配線層を正確に形成することが困難になる。
【実施例】
【0053】
銅めっきにより厚さ15μmの配線パターン12,12が形成されたベース基板11に対して、上述した工程に従って真空加圧プレス(真空排気時間30秒、加圧力1MPa、加圧時間30秒)を行うとともに、平坦化プレス(加圧力3MPa、加圧時間60秒)を行って、基板11の両主面11A及び11Bに対してビスフェノールからなる絶縁層14を厚さ35μmに形成するとともに、絶縁層14に起因した段部14Aの平坦化処理を行った。
【0054】
次いで、絶縁層14に対して粗化処理を行うとともに、コンタクト露光及び現像処理を実施してパターニングを行い、無電解Cuめっき及び電解Cuめっきを順次に行って、パターン内に配線パターンを形成した。なお、支持フィルム132としては、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
【0055】
上述した工程を3回繰り返し、基板11の両主面11A及び11B上に、絶縁層及び配線パターンが交互に3層づつ形成されてなる配線基板を製造した。
【0056】
このようにして得た配線基板に対し、段部14Aに起因した厚みムラの有無及び配線パターンの形成異常を目視にて確認した。また、使用した接着防止フィルム等の種類による、絶縁層を構成する部材の、接着防止フィルムに対する付着の度合いを目視で調べた。結果を表1に示す。接着防止フィルムはPETを使用し、離型コーティングはシリコーンを使用した。
【0057】
なお、表1において、前者の特性は、“段部形成による不備”の欄に不備の有無で記載し、後者の特性は、接着防止フィルムの1cm×1cmの領域において絶縁層を構成する部材が全く付着していない場合を二重丸、前記領域の半分以下の割合で付着している場合を丸、前記領域の半分以上の割合で付着している場合を三角で示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から明らかなように、実験例1で示すように、平坦化プレス前に支持フィルムの剥離を実施しなかった場合においては、段部形成による不備が確認された。また、実験例2〜7に示すように、接着防止フィルムの表面粗さRaが0.2μm以上又は離型コーティングが施されている場合において、接着防止フィルムに付着する絶縁層14の構成部材の量が少なく、特にその両方を満足している実験例8においては、接着防止フィルムには絶縁層14の構成部材がほとんど付着していないことが判明した。
【0060】
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 第1の積層体
11 基板
12 配線パターン
13 3層構造のフィルム
131 絶縁樹脂フィルム
132 支持フィルム
133 保護フィルム
14 絶縁層
14A 段部
15 第1のキャリアフィルム
16 第2のキャリアフィルム(接着防止フィルム)
20 第2の積層体
21 フィルム巻取りロール
22 補助ロール
23 第1のフィルム送出しロール
24 第2のフィルム送出しロール
30 第3の積層体
31 第1のプレス機
32 第2のプレス機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主面において配線パターンが形成されてなる基板の、前記少なくとも一方の主面上に、前記配線パターンを覆うように支持フィルムで支持された絶縁層を真空加圧プレスによって付着させる工程と、
前記支持フィルムを前記絶縁層から剥離し、前記絶縁層に対して接着防止フィルムを付着させる工程と、
前記基板及び前記絶縁層に対し、前記接着防止フィルムを介して平坦化プレスを行い、前記絶縁層を平坦化する工程と、
を備えることを特徴とする、配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記接着防止フィルムの、前記絶縁層と接触する側の主面の表面粗さRaが0.2μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記接着防止フィルムの、前記絶縁層と接触する側の主面に離型コーティングが施されていることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記接着防止フィルムはキャリアフィルムとして機能することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−26456(P2013−26456A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160125(P2011−160125)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】