説明

配線基板

【課題】 発熱部品が倒れるということをあらかじめ想定しておき、発熱部品が倒れた場合であっても、その発熱部品が非発熱部品に接触したり近接し過ぎたりして部品性能などが損なわれるという事態を起こらなくする。
【解決手段】 発熱部品であるサーミスタ2と非発熱部品である円柱状の電解コンデンサ4とを備える配線基板Aにおいて、電解コンデンサ4に、発熱部品受止め部材6の環部61を嵌着してその突出片部62をサーミスタ2に対向させておく。サーミスタ2が電解コンデンサ4側に倒れ込んだときに、突出片部62がサーミスタ2を受け止めて電解コンデンサ4に接触しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板、特に、テレビジョン受像機に用いる配線基板のように、サーミスタのような発熱部品と電解コンデンサのような非発熱部品とが近接配備されている配線基板において、発熱部品が非発熱部品側に倒れ込んで部品性能などが損なわれるという事態の起こることを防ぐ対策が講じられた配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配線基板では、発熱部品や非発熱部品のレイアウトに工夫を講じることによって両部品間に要求される離間距離を確保していたけれども、近時のように配線基板の小サイズ化による部品実装の高密度化が促進されてくると、レイアウトの工夫だけで必要な離間距離を確保することが困難である。そこで、発熱部品と非発熱部品との間に仕切り機能を備えるコネクタなどを配備するという対策や、発熱部品にゴムチューブを被せるという対策などを講じることがあった。
【0003】
一方、従来より、配線基板に搭載した電子部品などを倒れにくくすることについての様々な対策が提案されている(たとえば特許文献1〜5参照)。これらの特許文献1〜5によって提案されているものの中で、特許文献1に記載のものは、半導体装置に絶縁ブッシュを被せることによって部品同士の直接的な接触を防ぐというものであり、特許文献2に記載のものは、発熱素子のリード線を固定具で支えるというものであり、特許文献3に記載のものは、パワーICを板金製の取付金具によって支えるというものであり、特許文献4に記載のものは、電子部品の規律姿勢を電子部品用ベースによって保持するものであり、特許文献5に記載のものは、プリント基板を取り付けたシャーシの突起を配線基板の上方へ突出させ、その突起によって配線基板に搭載したLEDの起立姿勢を保持するものである。
【特許文献1】実開昭58−196849号公報
【特許文献2】実開昭63−12873号公報
【特許文献3】特開平5−67891号公報
【特許文献4】特開平8−83968号公報
【特許文献5】特開平8−191192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した発熱部品と非発熱部品との間に仕切り機能を備えるコネクタなどを配備するものでは配線基板の回路パターンを変更する必要があり、発熱部品にゴムチューブを被せるものではゴムチューブが比較的高価であるためにコスト高になる。また、上掲の各特許文献に記載されている対策は、いずれも電子部品などの起立姿勢を保つことによってそれらの電子部品が倒れないようにすることを意図している。
【0005】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、発熱部品が倒れるということをあらかじめ想定しておき、発熱部品が倒れた場合であっても、その発熱部品が非発熱部品に接触したり近接し過ぎたりして部品性能などが損なわれるという事態を起こらなくすることを、部品レイアウトを変更するという手段に頼らずに可能にした配線基板を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、配線基板が樹脂製シャーシに取り付けられている場合に、基本的なコストアップを来さずに上記目的を達成することのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配線基板は、発熱部品と非発熱部品とが混載されている配線基板において、近接配備されている発熱部品と非発熱部品とのうちの非発熱部品に、発熱部品を受け止めてその発熱部品が非発熱部品側に倒れ込んで非発熱部品に接触することを阻止する発熱部品受止め手段が非発熱部品に装着されているというものである。
【0008】
この構成を採用すると、非発熱部品側に倒れ込んだ発熱部品が、非発熱部品に装着されている発熱部品受止め手段により受け止められて非発熱部品に接触することが阻止される。そのため、発熱部品が非発熱部品側に倒れ込んだとしても、発熱部品が非発熱部品に接触して部品性能などが損なわれるという事態の起こる余地がなくなる。また、発熱部品受止め手段を非発熱部品に装着するだけで済むために部品レイアウトを変更する必要がない。
【0009】
本発明では、上記発熱部品受止め手段が、当該配線基板が取り付けられる樹脂製シャーシと共に樹脂で分断可能に一体成形されたものであることが望ましい。これによれば、樹脂製シャーシを成形するときにその樹脂製シャーシと共に発熱部品受止め手段が同時に成形され、しかも、成形後に発熱部品受止め手段を樹脂製シャーシから分断して非発熱部品に装着するだけで済むので、発熱部品受止め手段の製作コストが不要になって基本的なコストアップを来さずに発熱部品が非発熱部品に接触して部品性能が損なわれるという事態を防ぐことが可能になる。
【0010】
本発明では、上記発熱部品受止め手段が、非発熱部品に嵌着される環部とその環部から発熱部品側に突き出た突出片部とを備えることが望ましく、これによれば、上記環部の全体を径大に形成して突出片部を省略したものに比べて、発熱部品受止め手段によって占有されるスペースが狭くて済み、それだけ他の部品のレイアウトの自由度が高まって部品の実装密度をさらに高めることが容易になるという利点がある。
【0011】
本発明では、発熱部品がサーミスタであり、非発熱部品が電解コンデンサである、という構成を採用することが可能である。この構成は、特にテレビジョン受像機に用いられる配線基板のように、サーミスタを備えた消磁コイルが一次側回路に介在されていて、そのサーミスタに近接して二次側回路の電解コンデンサが配備されているような配線基板に対して有益である。
【0012】
本発明に係る配線基板は、発熱部品と非発熱部品とが混載されている配線基板において、発熱部品であるサーミスタと非発熱部品である円柱状の電解コンデンサとが、樹脂製シャーシに取り付けられた当該配線基板上で近接配備されていると共に、上記樹脂製シャーシと共に樹脂で分断可能に一体成形されて環部とその環部から突き出た突出片部とを備える発熱部品受止め手段の上記環部を上記非発熱部品に嵌着させてその突出片部を上記発熱部品に対向させることにより、非発熱部品側に倒れ込んだ発熱部品を上記突出片部により受け止めさせてその発熱部品が非発熱部品に接触することを阻止するように構成されており、上記発熱部品受止め手段の上記環部が欠円部を備えて上記電解コンデンサを抱持可能なC字形に形成されている、という構成を採用することによっていっそう具体化されるこの発明の作用は、後述する実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る配線基板は、電解コンデンサなどの非発熱部品に装着した発熱部品受止め手段が、非発熱部品側に倒れ込んだ発熱部品を受け止めて非発熱部品に接触することを阻止するという機能を備えているので、発熱部品が非発熱部品に接触して部品性能、たとえば絶縁距離が保てなくなることによる部品のショートや、非発熱部品の異常温度上昇に伴う破壊などが未然に防止される。したがって、生産者にとっては、部品レイアトウトの変更や回路パターンの変更を行わずに発熱部品の倒れ込みによる部品性能の低下などを防ぐことができ、ユーザ側では発熱部品の倒れ込みによる性能低下や危険が回避されて安全性が向上するという効果が得られる。また、発熱部品受止め手段を樹脂製シャーシと一体に分断可能に成形することによって製作したものでは、基本的なコストアップが生じないという利点かある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る配線基板Aの部分斜視図、図2は本発明の作用を説明するための側面図、図3は図2のIII矢視図である。
【0015】
図1には、ビデオ一体型テレビジョン受像機、DVD一体型テレビジョン受像機といったAV複合機に用いられている配線基板Aを示している。図例の配線基板Aは、樹脂製シャーシ5に重ね合わされて取付ビス51を用いてその樹脂製シャーシ5に取り付けられているものであって、その配線基板Aには一次側回路や二次側回路のパターン(不図示)が形成されている。そして、一次側回路には、当該配線基板Aに搭載されている発熱部品としてのサーミスタ2や消磁コイル(不図示)が接続されるコネクタ3などが介在されているのに対し、二次側回路には、当該配線基板Aに搭載された電解コンデンサ4などが介在されている。
【0016】
サーミスタ2はそのリードピン21が配線基板Aの一次側回路に半田付けされていて、電源投入に伴いたとえば185℃以上に昇温してその電気抵抗値を変化させる機能を備えているにもかかわらず、非発熱部品としての電解コンデンサ4の近接箇所に配備されている。これは、配線基板Aの小サイズ化に伴う部品実装の高密度化が要請されていることによる。一方、電解コンデンサ4は円柱状の外形を有していて、サーミスタ2が接触ないし近接し過ぎた場合には、その部品性能が損なわれたり、場合によっては異常昇温による破裂などを伴ったりするおそれがある。
【0017】
そこで、この実施形態では、発熱部品としてのサーミスタ2のリードピン21が折れ曲がって非発熱部品としての電解コンデンサ4側に倒れ込むという事態をあらかじめ想定しておき、仮にサーミスタ2が電解コンデンサ4側に倒れ込んだとしても、サーミスタ2が電解コンデンサ4に対して接触したり近接し過ぎたりしないような対策を講じることによって電解コンデンサ4を保護し、その電解コンデンサ4の部品性能が損なわれたり破裂したりしないようにしてある。
【0018】
すなわち、図1のように、円柱状の外形を有する電解コンデンサ4に、環部61とその環部61の周方向1箇所から突き出た突出片部62とを一体に備えた樹脂製の発熱部品受止め部材(発熱部品受止め手段の一例)6の環部61を装着してその突出片部62をサーミスタ2に対峙させてある。こうしておけば、サーミスタ2のリードピン21が折れ曲がってそのサーミスタ2が電解コンデンサ4側に倒れ込んだとしても、サーミスタ2が図2に仮想線で示したように、発熱部品受止め部材6の突出片部62に当たって位置規制されるので、サーミスタ2が電解コンデンサ4に接触したり近接し過ぎたりするという事態は起こり得なくなり、電解コンデンサ4の部品性能が損なわれたり、電解コンデンサ4が異常昇温して破裂したりするという事態が未然に防止される。すなわち安全性が確保される。
【0019】
図3に示したように、発熱部品受止め部材6の環部61は、周方向の1箇所に欠円部を備えたC字形に形成されていて、その環部61を円柱状の外形を有する電解コンデンサ4に嵌め込むと、その環部61が電解コンデンサ4を弾圧状態で抱持するようになっている。また、この発熱部品受止め部材6は、図1又は図2に示した樹脂製シャーシ5を成形するときに、それと共に分断可能に一体成形されたものであり、成形後に、樹脂製シャーシ5から分断して電解コンデンサ4に装着されている。
【0020】
この実施形態では、発熱部品としてサーミスタ2を選択し、非発熱部品として電解コンデンサ4を選択してあるけれども、この点は、発熱部品としてサーミスタ2以外の抵抗素子などを選択し、非発熱部品として電解コンデンサ4やその他の電子素子を選択することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る配線基板の部分斜視図である。
【図2】本発明の作用を説明するための側面図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【符号の説明】
【0022】
A 配線基板
2 サーミスタ(発熱部品)
4 電解コンデンサ(非発熱部品)
5 樹脂製シャーシ
6 発熱部品受止め部材(発熱部品受止め手段)
61 環部
62 突出片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と非発熱部品とが混載されている配線基板において、
発熱部品であるサーミスタと非発熱部品である円柱状の電解コンデンサとが、樹脂製シャーシに取り付けられた当該配線基板上で近接配備されていると共に、上記樹脂製シャーシと共に樹脂で分断可能に一体成形されて環部とその環部から突き出た突出片部とを備える発熱部品受止め手段の上記環部を上記非発熱部品に嵌着させてその突出片部を上記発熱部品に対向させることにより、非発熱部品側に倒れ込んだ発熱部品を上記突出片部により受け止めさせてその発熱部品が非発熱部品に接触することを阻止するように構成されており、上記発熱部品受止め手段の上記環部が欠円部を備えて上記電解コンデンサを抱持可能なC字形に形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
発熱部品と非発熱部品とが混載されている配線基板において、
近接配備されている発熱部品と非発熱部品とのうちの非発熱部品に、発熱部品を受け止めてその発熱部品が非発熱部品側に倒れ込んで非発熱部品に接触することを阻止する発熱部品受止め手段が非発熱部品に装着されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
上記発熱部品受止め手段が、当該配線基板が取り付けられる樹脂製シャーシと共に樹脂で分断可能に一体成形されたものである請求項2に記載した配線基板。
【請求項4】
上記発熱部品受止め手段が、非発熱部品に嵌着される環部とその環部から発熱部品側に突き出た突出片部とを備える請求項2又は請求項3に記載した配線基板。
【請求項5】
発熱部品がサーミスタであり、非発熱部品が電解コンデンサである請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載した配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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