説明

配線基板

【課題】絶縁層に対して端子部を堅固に固定することが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】導電性のコア材21と、該コア材21の外周面に設けられる絶縁層と、絶縁層の表面に形成される配線パターン14と、長尺状の端子部16aとを備える。そして、端子部16aは、絶縁層に埋設される内装部、及び該内装部から前記絶縁層の外側に突起した露出部からなり、端子部16aの内装部には、長尺形状の長手方向に沿った2個のスルーホール15e,15aが形成される。そして、スルーホールは、貫通孔と連結部材で構成されるので、端子部16aと絶縁層を堅固に固定でき、且つ、2個のスルーホールで固定されるので、横方向にずれが生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材を覆った絶縁層から外側に突起した端子部を備える配線基板に係り、特に、端子部を絶縁層に堅固に固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を実装する配線基板として、平板形状で導電性を有するコア材を絶縁層で覆い、該絶縁層の表面に導体回路層を形成して配線パターンを形成し、更に、コア材と同一の層に、長尺形状で外側に突起する複数の端子部が形成されたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような配線基板を用いることにより、端子部の突起部分をメス型のコネクタに連結することが可能となる。
【0003】
このような配線基板は、複数の端子部に位置ずれが生じると、メス型のコネクタとの間で円滑に連結することができないことが多々発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来における配線基板は、コア材と同一の層から外側に向けて突起する端子部に位置ずれが生じた場合には、他のコネクタとの連結の際に、円滑に連結することができないという問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、絶縁層に対して端子部を堅固に固定することが可能な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、導電性のコア材(21)と、前記コア材の外周面を覆うように配設される絶縁層(41,43)と、前記絶縁層の少なくとも一方の面に積層される導体回路層(14,44)と、前記導体回路層と電気的に接続された長尺形状の端子部(16a〜16d)と、を備え、前記端子部は、前記絶縁層に埋設される内装部、及び該内装部から前記絶縁層の外側に突起した露出部からなり、更に、前記端子部は、前記内装部に、長尺形状の長手方向に沿った少なくとも2個の孔部(51)が形成され、前記各孔部に設けられる連結手段(52)により、前記絶縁層に固定されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記連結手段は、前記孔部に定着された導電性ペースト、銅メッキ、樹脂、若しくは半田、または前記孔部に挿通された導電性ピンで構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記端子部は、前記コア材と一体化されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記端子部に設けられる少なくとも1つの連結手段は、前記導体回路層と電気的に接続されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、端子部の長手方向に沿って少なくとも2個の孔部が形成され、且つ連結手段により固定されるので、端子部に横方向の応力が加えられた場合であっても、位置ずれが生じることを防止できる。
【0012】
請求項2の発明では、連結手段として、導電性ペースト、銅メッキ、樹脂、若しくは半田、または前記孔部に挿通された導電性ピンを用いることにより、絶縁層とコア材との間を堅固に固定することが可能となる。
【0013】
請求項3の発明では、端子部がコア材と一体化されるので、端子部に生じる横方向の位置ずれを防止することが可能となる。
【0014】
請求項4の発明では、連結手段が導体回路層と電気的に接続されないので、導体回路層が存在しない位置に孔部及び連結手段を設けることで、端子部と絶縁層とを固定することのみに孔部及び連結手段を用いることができ、導体パターンの有無に関わらず、端子部に横ずれが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線基板の構成を示す説明図であり、(a)は外観図、(b)は内部構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る配線基板の概略断面図である。
【図3】本発明の第1,第2実施形態に係る配線基板の、スルーホールの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る配線基板の構成を示す説明図であり、(a)は外観図、(b)は内部構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る配線基板の構成を示す説明図であり、(a)は外観図、(b)は内部構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る配線基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板101の構成を示す説明図であり、図1(a)は上面図、(b)は基板内部のコア材21を示す説明図である。また、図2は配線基板101の概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、この配線基板101は、全体が矩形状をなす基板本体11を有しており、該基板本体11の表面にはIC12、及び各種の部品13が実装されている。また、図2に示すように、この基板本体11は多層構造を有しており、中央部には導電性のコア材21(例えば、銅板)が設けられ、その上面(図2に示すコア材21の上側)には絶縁層41が積層され、下面(図2に示すコア材21の下側)には絶縁層43が積層されている。即ち、コア材21の周囲を覆うように絶縁層41,43が積層されている。更に、絶縁層41の上面には配線パターン(導体回路層)14が形成され、絶縁層43の下面には配線パターン(導体回路層)44が形成されている。なお、配線パターン14,44は、必要に応じて配索されるので、配線パターン14,44が存在しない領域も存在し、この領域では図2に示す絶縁層41,43が表面、及び裏面に露出することになる。なお、図2に示す配線パターン14は、理解を促進するために厚さを誇張して記載している。従って、実際には配線パターン14,44の厚さは、絶縁層41,43に対して薄い。
【0019】
また、図1に示すように、IC12は、接続端子17aを介して配線パターン14aに接続されており、該配線パターン14aにはスルーホール15eが穿設されている。更に、基板本体11には、配線パターン14bが形成され、該配線パターン14bにはスルーホール15aが穿設され、且つ、部品13を介して配線パターン14eに接続されている。
【0020】
従って、基板本体11の表面に形成された配線パターン14aは、スルーホール15eを介してコア材21、及び裏面側の配線パターン44と電気的に接続されることになる(図3(a)参照)。同様に、配線パターン14bは、スルーホール15aを介してコア材21、及び裏面側の配線パターン44と電気的に接続される。
【0021】
更に、IC12は、接続端子18aを介して配線パターン14cに接続され、該配線パターン14cにはスルーホール15bが穿設されている。また、接続端子18bを介して配線パターン14dに接続され、該配線パターン14dにはスルーホール15dが穿設されている。
【0022】
また、図1(b)に示すように、コア材21は、その一部が長尺形状とされ、この先端が端子部16aとして基板本体11の外側に突起している。この際、スルーホール15a,15eは共に端子部16aの長尺方向に沿って形成されている。即ち、長尺形状の端子部16aは、その一部が絶縁層41で覆われる内装部とされ、その他の部分が基板本体11の外側に突起する露出部とされている。
【0023】
更に、コア材21と同一の材質で構成され、且つ、コア材21と電気的に分離された3個の端子部16b,16c,16dが設けられ、これらの一部は絶縁層41で覆われる内装部とされ、その他の部分が基板本体11の外側に突起する露出部とされている。そして、各端子部16b,16c,16dの内装部にはそれぞれスルーホール15b,15c,15dが穿設されている。
【0024】
図3(a)は、スルーホール15eの断面図であり、図示のようにスルーホール15eは基板本体11の表面から裏面に貫通する貫通孔(孔部)51を有し、更に、該貫通孔51の内周面に連結部材(連結手段)52が設けられている。連結部材52としては、貫通孔51の内周面に定着された導電性ペースト、銅メッキ、樹脂、若しくは半田、または貫通孔51に挿通された導電性ピンで構成することができる。また、スルーホール15aについてもスルーホール15eと同様の構成を備える。従って、配線基板101にスルーホール15e,15aが形成されることにより、コア材21、及び絶縁層41,43が堅固に固定されることになる。また、図1に示すスルーホール15b〜15dについても同様の構成を備えるので、各端子部16b〜16dは絶縁層41,43に対して堅固に固定されることになる。
【0025】
そして、本実施形態では、図1に示すように、端子部16aに対して、その長手方向に向く直線上(図1中、上下に向く直線上)に2個のスルーホール15e,15aが存在するので、コア材21と絶縁層41,43が堅固に固定されるばかりでなく、端子部16aに横方向の応力(図1中、左右方向に向く応力)が加えられた場合でも、端子部16aに位置ずれが発生することを防止できる。
【0026】
このようにして、第1実施形態に係る配線基板101では、端子部16aの内装部(基板本体11の内部)に2個のスルーホール15e,15aを穿設し、各スルーホール15e,15aはそれぞれ端子部16aの長手方向に沿って設けられているので、端子部16aに位置ずれが発生することを防止でき、端子部16a〜16dをメス型のコネクタ(図示省略)に差し込んで連結する際に、円滑に連結操作を行うことができる。
【0027】
なお、第1実施形態では、絶縁層41の上面、及び絶縁層43の下面にそれぞれ配線パターン(導体回路層)を積層する例について説明したが、各絶縁層41,43の少なくとも一方の表面(例えば、絶縁層41の表面のみ)に配線パターンを設けるようにしても良い。
【0028】
また、第1実施形態では、端子部16aの長手方向に沿って2個のスルーホール15e,15aを設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、端子部16aの長手方向に沿って3個以上のスルーホールを設ける構成としても良い。この場合には、横方向の応力に対してより堅固に固定することが可能となる。
【0029】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係る配線基板102の構成を示す説明図であり、図4(a)は上面図、(b)は基板内部のコア材21を示す説明図である。第2実施形態では、前述した第1実施形態と比較して、図1に示したスルーホール15eの代わりに、図4に示すスルーホール15fを穿設している点で相違する。即ち、第2実施形態に係る配線基板102では、配線パターン14aが存在しない位置にスルーホール15fが設けられている。
【0030】
図3(b)は、スルーホール15fの断面図であり、図示のようにスルーホール15fは、基板本体11の表面から裏面に貫通する貫通孔(孔部)51を有し、更に、該貫通孔51の内周面に連結部材(連結手段)52が設けられている。連結部材52は、前述した第1実施形態と同様に、貫通孔51の内周面に定着された導電性ペースト、銅メッキ、樹脂、若しくは半田、または貫通孔51に挿通された導電性ピンで構成することができる。従って、配線基板102にスルーホール15fが形成され、且つ、スルーホール15aが形成されることにより、コア材21、及び絶縁層41,43を堅固に固定することができる。
【0031】
即ち、前述した第1実施形態では、配線パターン14a,14bを貫通する2個のスルーホール15e,15aにより端子部16aを堅固に固定する構成としたが、第2実施形態では、配線パターンとの間の電気的な接続が必要無い場合であっても、スルーホール15fを設けることにより端子部16a(コア材21)と絶縁層41,43との間を堅固に固定している。従って、前述した第1実施形態と同様に、端子部16aの長手方向に沿って2個のスルーホール15f,15aが設けられるので、端子部16aに横方向の応力が加えられた場合でも、該端子部16aに位置ずれが発生することを防止できる。
【0032】
このようにして、第2実施形態に係る配線基板102では、端子部16aの内装部(基板本体11の内部)に2個のスルーホール、即ち、配線パターン(導体回路層)14bと接続されるスルーホール15aと、配線パターンとは接続されないスルーホール15fを穿設している。そして、各スルーホール15f,15aはそれぞれ端子部16aの長手方向に沿って設けられているので、端子部16aに位置ずれが発生することを防止でき、端子部16a〜16dをメス型のコネクタ(図示省略)に差し込んで連結する際に、円滑に連結操作を行うことができる。
【0033】
[第3実施形態の説明]
次に、第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態に係る配線基板103の構成を示す説明図であり、図5(a)は上面図、(b)は基板内部のコア材21を示す。また、図6は、端子部16bの長手方向に向く断面図である。そして、該第3実施形態では、各端子部16a〜16dに対してそれぞれ2個のスルーホール31a〜31d、32a〜32dを設ける点で、前述した第1,第2実施形態と相違する。
【0034】
即ち、第3実施形態に係る配線基板103は、図5(b)に示すように、端子部16aの内装部(基板本体11の内部)には、該端子部16aの長手方向に沿って2個のスルーホール31a,32aが穿設され、端子部16bの内装部には、該端子部16bの長手方向に沿って2個のスルーホール31b,32bが穿設され、端子部16cの内装部には、該端子部16cの長手方向に沿って2個のスルーホール31c,32cが穿設され、更に、端子部16dの内装部には、該端子部16dの長手方向に沿って2個のスルーホール31d,32dが穿設されている。
【0035】
そして、スルーホール31b,32bは、配線パターン14cに接続され、スルーホール31d,32dは配線パターン14dに接続されている。
【0036】
そして、図6に示すように、端子部16bには、該端子部16bを貫通する2個のスルーホール31b,32bが設けられている。そして、各スルーホール31b,32bにより端子部16bと絶縁層41,43とが堅固に固定される。また、他の端子部16a,16c,16dについても同様である。
【0037】
従って、各端子部16a〜16dは、それぞれが2個のスルーホールにより固定されるので、端子部16a〜16dと絶縁層41,43との間を堅固に固定することができ、また、2個のスルーホールは各端子部16a〜16dの長手方向に沿って設けられているので、端子部16a〜16dに対して横方向に応力が作用した場合であっても、位置ずれを生じることを防止できる。その結果、前述した第1、第2実施形態と同様に、配線基板103をメス型のコネクタ(図示省略)に連結する際には、円滑に連結操作を行うことができる。
【0038】
なお、図5では、一つの端子部に2個のスルーホールを穿設する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、3個以上のスルーホールを設ける構成とすることも可能である。
【0039】
また、上記した第1〜第3実施形態では、孔部として基板本体11の表面から裏面まで貫通する貫通孔を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板本体11の表面からコア材21まで、或いは基板本体の裏面からコア材21まで穿設される孔部とすることも可能である。このような構成においても、上記した実施形態と同様の効果を達成することができる。
【0040】
以上、本発明の配線基板を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、配線基板の外側に突起する端子部の横ずれを防止することに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
11 基板本体
12 IC
13 部品
14,14a〜14e,44 配線パターン
15a〜15f スルーホール
16a〜16d 端子部
17a,18a,18b 接続端子
21 コア材
31a〜31d スルーホール
32a〜32d スルーホール
41,43 絶縁層
51 貫通孔(孔部)
52 連結部材
101,102,103 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のコア材と、
前記コア材の外周面を覆うように配設される絶縁層と、
前記絶縁層の少なくとも一方の面に積層される導体回路層と、
前記導体回路層と電気的に接続された長尺形状の端子部と、を備え、
前記端子部は、前記絶縁層に埋設される内装部、及び該内装部から前記絶縁層の外側に突起した露出部からなり、
更に、前記端子部は、前記内装部に、長尺形状の長手方向に沿った少なくとも2個の孔部が形成され、前記各孔部に設けられる連結手段により、前記絶縁層に固定されることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記連結手段は、前記孔部に定着された導電性ペースト、銅メッキ、樹脂、若しくは半田、または前記孔部に挿通された導電性ピンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記端子部は、前記コア材と一体化されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の配線基板。
【請求項4】
前記端子部に設けられる少なくとも1つの連結手段は、前記導体回路層と電気的に接続されないことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27146(P2013−27146A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159643(P2011−159643)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】