説明

配線形成方法

【課題】多種多様な基板に対し、低コストで、導電性が高く、高品質な配線パターンを形成することのできる配線形成方法を提供することにある。
【解決手段】配線パターンに応じて、ハロゲン化銀乳剤を基板の少なくとも片側表面上にパターニングして、前記基板の少なくとも片側表面上に前記ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層を形成し、前記パターン化された乳剤層を露光した後、前記露光されたパターン化された乳剤層を現像処理して、パターン化された導電性銀層を前記配線パターンとして形成することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線形成方法に関し、詳しくは、プリント配線基板の配線形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板(電子回路基板)の配線部分(導体部分)のパターンの形成方法には、大別して、サブトラクト法とアディティブ法(セミアディティブ法)とがある。
【0003】
サブトラクト法は、基板上に形成された金属層の不要な部分を除去して必要な部分を残し、配線パターン(導電部)とする方法であり、他方、アディティブ法は、基板上に、配線パターンを形成していく方法である。
【0004】
上記いずれの方法においても、従来、フォトリソグラフィ技術が用いられている。
アディティブ法においては、例えば、無電解メッキによって、基板表面に金属を還元析出させて配線パターンを形成する際に用いるマスクのパターンを形成するために、フォトリソグラフィ技術が用いられている。
【0005】
他方、サブトラクト法においては、例えば、絶縁層と配線用金属の銅箔とを有する銅貼積層板表面に塗布したドライフィルムレジストや液体レジスト等のフォトレジスト(感光性樹脂)に、回路等のパターンが形成されたフォトマスクを通して、紫外線やエキシマレーザ光線等の電磁波を照射して、マスクパターンを露光(転写)、現像することにより、レジストパターンを形成するために用いられている。
このようにして、フォトリソグラフィ技術によって、レジストパターンを形成した後、フォトレジストで被覆されていない銅箔、すなわち、配線用金属を、エッチング処理によって除去して、所望の配線パターンを形成する。
【0006】
上記のような、フォトリソグラフィ技術によってレジストパターンを形成して、所望の配線パターンを形成する方法は、フォトマスクの作成に時間が必要であり、さらに、配線用金属の不要部除去のためのエッチング処理とは別に、レジストパターンを形成するためのレジストの露光現像処理も必要である。そのため、配線パターンを形成するために、時間やコストがかかる。
【0007】
他にも、近年、導電微粒子分散インク方式を用いることにより、プリント配線基板(電子回路基板)の配線部分(導体部分)のパターンを形成する方法が提案されている。
導電微粒子分散インク描画方式は、インクジェット印刷方式を用いて、導電性の微粒子材料を、所望の配線パターンに応じて、直接、基板上にパターンニングすることにより、配線パターンを形成する。
【0008】
この導電微粒子分散インク描画方式は、マスクを作成する必要がないため、フォトリソグラフィ技術によって、レジストパターンを形成して、所望の配線パターンを形成する方法と比較すると製造工程数が少ない。
しかしながら、微粒子材料の導電性を発現させるためには、高温下で長時間の焼成処理が必要であるので、配線パターンを形成可能な基板(基板材料)が限定される上に、ランニングコストが高く、さらに、高温処理のための装置の大型化も避けられない。
【0009】
そこで、これらに対して、近年、感光性材料を露光現像処理することにより、所望の配線パターンを形成する方法が提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、レーザービームによる走査露光方式やフォトマスクを用いて、基板(支持体)全面に銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像することにより、基板上に、導電性パターンを形成し、この導電性パターンにめっき処理を施して導電性を付与して、配線パターンを形成する方法が開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、レーザービームによる走査露光方式やフォトマスクを用いて、基板(支持体)全面に銀塩乳剤を含有する乳剤層が形成されている感光材料を露光し、現像することにより、基板上に、金属銀を形成し、この金属銀に平滑化処理を施して、配線パターンを形成する方法が開示されている。
【0012】
ここで、上記特許文献1および2に開示されているような配線パターンの形成方法について、図10を用いて説明する。
なお、図10は、従来の配線パターンの形成方法を示す図である。
【0013】
まず、図10(a)に示すように、基板S表面全面に、下地膜202を形成した後、例えば、ハロゲン化銀とゼラチンの体積比が2:1の乳剤を、基板S表面全面に塗布して、乳剤層204を形成する。
次いで、図10(b)に示すように、マスク208を用いて、アナログ露光方式で、乳剤層206を露光し、乳剤層204にマスク208のパターンを焼き付ける。
このとき、マスク208を用いずに、レーザ露光直接描画方式を用いて、乳剤層204を露光し、乳剤層204にマスク208のパターンを焼き付けてもよい。
【0014】
図10(c)に示すように、マスク208のパターンを焼き付けた乳剤層204に、現像処理を施して、導電性銀212を生成する。
このとき、乳剤層204の未露光部214にも、ハロゲン化銀が存在するため、乳剤層204に加えられた圧力や基板S搬送時に生じる静電気によって生じたかぶりや現像液中の銀の付着等により、未露光部214に金属銀(黒ポツ)216が生じる場合がある。
【0015】
そこで、図10(d)に示すように、未露光部214のハロゲン化銀を除去して、未露光部214を安定化させるために、定着処理や酸洗処理、圧力かぶり防止剤、帯電防止剤等の添加処理等を行い、さらに、水洗処理や乾燥処理を施す。
次いで、図10(e)に示すように、導電性銀212の導電性を増大させるために、銅電線銀(配線パターン)212に、カレンダー処理等の平滑化処理(圧密化処理)を施す。
【0016】
さらに、導電性銀212の導電性を増大させるために、図10(f)に示すように、めっき処理を施し、導電性銀212上に導電性金属部218を形成する。
【0017】
このようにして、近年、感光性材料を基板表面全面に塗布して、マスクパターンを焼き付け、露光現像処理し、所望の配線パターンを形成している。
【0018】
【特許文献1】特開2006‐352073号公報
【特許文献2】特開2007‐129205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、フォトリソグラフィ技術によって、レジストパターンを形成して、所望の配線パターンを形成する方法と比較すると、レジストパターンの形成工程が不要であり、さらに、図10(b)に示すような露光の際に、レーザ露光直接描画方式を用いれば、マスク208を用いる必要もなくなるので、マスク作成工程が不要になり、そのため、オンデマンド性にも優れている。
【0020】
また、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、導電微粒子分散インク描画方式を用いて配線パターンを形成する方法と比較すると、微粒子材料の導電性を発現させるための焼成処理を行う必要が無いため、耐熱性の低い汎用の樹脂フィルム等の基板にも用いることができる。
【0021】
しかしながら、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、配線パターンを形成する基板が、ハロゲン化銀を含有する乳剤層が全面に形成されているものに限定されるため、市場で流通している配線基板やFPD(Flat Panel Detector)等の基板には適用することができない。そのため、適用範囲が非常に限定されてしまう。
【0022】
また、図10(b)に示すように、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法において、マスク208を用いる場合には、マスクを作成するために多額の費用がかかり、さらに、これにより、オンデマンド性が低くなるので、小ロットの生産や短期間での生産に適用するのが難しくなる場合が多い。
【0023】
他方、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法において、マスク208を用いずに、レーザ露光装置を用いて、レーザ露光による光パターンニング行えば、マスク208が不要になるので、マスクの作成費用が不要になり、さらに、オンデマンド性を付与することができるものの、パターンを形成するように逐次露光しなければならないので、露光に非常に時間がかかり、生産性を向上させるのが難しい。
さらに、この場合には、ハロゲン化銀等の感光性材料の感度を高くする必要もあり、そのための増感色素の選択が難しい上に、必要に応じて、化学増幅処理を行わなければならなくなる。
また、高精細なレーザ露光装置になると、非常に高価なため、配線パターンの形成に非常にコストがかかるようになる。
【0024】
さらに、いずれの方法で露光する場合でも、露光によって、乳剤層のパターニングを行うため、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等の透明基板では、露光時にパターニング光が表裏に透過するため、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、両面に、配線パターンを形成することができない。そのため、実用に用いることが難しくなる。
【0025】
さらに、上述のように、特許文献1および2に開示されている方法で形成した配線パターンには、未露光部214に、ハロゲン化銀が残存するため、特に、微細な配線を形成する際には、上述のように、未露光部214へ圧力が加わることにより、感光してしまったり、搬送中に、静電かぶりを生じたりして、図10(c)に示すように、未露光部214に、黒ポツ216が生じることが多い。そのため、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、これを解決するために、図10(d)に示すような、定着処理や酸洗処理、圧力かぶり防止剤や帯電防止剤の添加処理等が必要となる。
【0026】
また、特許文献1および2に開示されている方法で形成した配線パターンには、未露光部214にゼラチンが残存することにより、ゼラチンが吸湿し、配線パターンの耐圧や絶縁の信頼性(マイグレーション等)を低下させることがある。
また、ゼラチン部分は、経時によって黄変し易い。ゼラチン部分の黄変は、特に、透明配線板の形成に用いる場合に、その光学特性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0027】
また、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、非常に高価な材料にも関らず、銀が、配線パターン以外の部分、すなわち、未露光部214にも用いられているため、ランニングコストを低減することが難しい。
また、特許文献1および2に開示されている配線パターンの形成方法は、光パターニングを行うため、露光および現像処理を施すため、暗室が必要となる。
【0028】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、多種多様な基板に対し、低コストで、導電性が高く、高品質な配線パターンを形成することのできる配線形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明は、配線パターンに応じて、ハロゲン化銀乳剤を基板の少なくとも片側表面上にパターニングして、前記基板の少なくとも片側表面上に前記ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層を形成し、前記パターン化された乳剤層を露光した後、前記露光されたパターン化された乳剤層を現像処理して、パターン化された導電性銀層を前記配線パターンとして形成することを特徴とする配線形成方法を提供するものである。
【0030】
本発明においては、前記ハロゲン化銀乳剤のパターニングは、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、および、インクジェット印刷法のいずれかを用いて行うものであるのが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、前記インクジェット印刷法は、ピエゾ素子を有するインクジェット記録装置で行うものであるのが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、前記導電性銀層を形成した後、前記導電性銀層に、平滑化処理、蒸気接触処理、および、水洗処理のうちの少なくとも1つの処理を施すのが好ましい。
【0033】
また、本発明においては、前記基板表面上に前記パターン化された乳剤層を形成する前に、前記基板表面に下地処理を施すのが好ましい。
【0034】
また、本発明においては、前記下地処理は、前記基板表面の接触角の調整処理、または、前記基板と前記パターン化された乳剤層との密着力増強処理であるのが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、前記基板と前記パターン化された乳剤層との密着力増強処理は、前記基板表面に、前記パターン化された乳剤層のパターン形状に従って、下地膜を形成するものであるのが好ましい。
【0036】
また、本発明においては、前記下地膜の形成は、インクジェット記録装置を用いて行うものであるのが好ましい。
【0037】
また、本発明においては、前記ハロゲン化銀乳剤は、25℃条件下において、1mPa・s以上40mPa・s以下の粘度を有し、かつ、25℃条件下において、20mN/m〜100mN/mの表面張力を有するものであるのが好ましい。
【0038】
また、本発明においては、前記パターン化された乳剤層を乾燥する工程を有するのが好ましい。
【0039】
また、本発明においては、前記パターン化された乳剤層上に保護層を形成する工程を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤でなる乳剤層を物理的にパターンニングした後に、パターニングされた乳剤層に露光現像処理を施すため、基板の全面に乳剤層が塗布された基板を用いる必要がないので、多種多様な基板に適用することができ、さらに、光パターンニングを行う必要がないので、両面基板にも適用することができる。
【0041】
本発明は、露光処理に、マスクを用いる必要がないので、オンデマンド性が向上し、短納期や少量生産の製品の製造にも、適用可能である。
【0042】
また、本発明は、予めパターニングされた乳剤層に全面一括露光処理を施すため、短時間で露光を実施することができ、露光に用いる照射光も、低照度でよく、生産性が向上する。
さらに、本発明は、光パターニングを行わないので、全ての処理を、明室で行うことができるため、特別な設備を設ける必要がなく、低コストで生産することができる。
【0043】
また、本発明によって形成した配線パターンには、ハロゲン化銀を有する未露光部が存在しないため、従来、未露光部に存在するハロゲン化銀を除去するために行っていた定着処理等を行う必要がなくなり、生産性が向上する。
さらに、非配線部に乳剤が存在しないことにより、非配線部に残存した材料が、黄色等の有色に変色することがなくなるので、本発明を適用して製造した製品は、透過率が極めて高くなるので、PDP(Plasma display panel)や電磁波シールドフィルムの製造にも適用することができる。又、非配線部にゼラチン等の材料が残存しないので、耐圧、耐マイグレーション性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の配線形成方法を詳細に説明する。
【0045】
図1は、本発明の配線形成方法を実施可能な配線形成装置の一実施例を概念的に示す図である。
【0046】
配線形成装置10(以下、単に装置10ともいう)は、図示しない画像情報入力手段から入力した配線パターンの情報に応じて、フィルムFの片側表面に、ハロゲン化銀乳剤を物理的にパターニングして、ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層を形成し、形成されたパターン化された乳剤層を露光した後、露光されたパターン化された乳剤層に現像処理を施して、パターン化された導電性銀層を配線パターンとして形成するものである。
図示例において、装置10は、パターンニング部12と、プロセサ部14とで構成されている。なお、特に説明はしないが、フィルムFは、搬送ローラ対等の公知の搬送手段によって、各部位に搬送される。
【0047】
図示例の装置10において、パターニング部12は、フィルム供給部16と、下地処理部17と、パターン形成部18と、露光部19とを有する。
【0048】
フィルム供給部16は、所望のサイズにフィルムFを切断して、パターン形成部18に供給する部位であり、図示例では、2つのマガジン20と、カッタ21とを有する。
なお、本発明におけるフィルム(基板、支持体)Fについては、後に詳述する。
【0049】
マガジン22は、フィルムFを巻回してなるフィルムロール22を収容するものである。
カッタ21は、マガジン20から引出されたフィルムFを、所望のサイズに切断するものであり、公知のカッタが用いられる。
【0050】
下地処理部17は、フィルムF表面に、パターン化された乳剤層を形成する前に、フィルムFの表面に下地処理を施す部位であり、図示例においては、接触角調整部23、密着力増強部24、および、乾燥部25を有する。
【0051】
接触角調整部23は、フィルムF表面の濡れ性によって、後に形成する乳剤層のパターン形状の精度が変化するのを防止するために、フィルムFの表面に、大気圧プラズマ処理等を施して、フィルムF表面の接触角を調整するものである。
【0052】
密着力増強部24は、フィルムFと後に形成するパターン化された乳剤層との密着力(密着性)を向上させるために、下地膜を形成するものである。
ここでは、密着力増強部24は、例えば、インクジェット記録装置を用いて、後に形成するパターン化された乳剤層のパターン形状に従い下地膜を形成するのが好ましい。
このように形成すると、フィルムF全面に下地膜を形成する場合と比較して、材料の使用量を削減することができ、さらに、配線パターンを形成しない部分の絶縁信頼性が高く保たれる。
なお、形成する下地膜については、後に詳述する。
【0053】
乾燥部25は、フィルムF表面に形成した下地膜を乾燥させるものであり、公知の手段が利用可能であるが、フィルムFの乳剤層がパターニングされる面(以下、単に、フィルムFのパターニング面ともいう)とは、非接触とするのが好ましい。
【0054】
図示例においては、乾燥部25は、フィルムFの裏面側(非パターン面側)に設けられているヒートローラ30と、フィルムFのパターン面側に設けられている温風ノズルを有する温風ヒータ31とで構成されている。
【0055】
上記のような乾燥部25を設けることにより、フィルムF表面に形成された下地膜に接触することなく、フィルムF表面の熱効率を向上させることができるので、形成した下地膜を短時間で乾燥させることができる。
【0056】
パターン形成部18は、フィルムFの下地膜上に、ハロゲン化銀乳剤をパターニングして、下地膜上にパターン化された乳剤層を形成し、フィルムFを露光部19に供給する部位であり、図示例においては、インクジェット記録部32と、乾燥部26と、断熱遮風部28,29と、保護層形成部27とを有する。
【0057】
インクジェット記録部32(以下、単に、記録部32ともいう)は、フィルムFの表面に形成した下地膜上に、ハロゲン化銀乳剤をパターニングし、下地膜上にパターン化された乳剤層を形成するものである。
なお、記録部32については、後に詳述する。
【0058】
乾燥部26は、フィルムF表面に形成したパターン化された乳剤層を乾燥させるものであり、乾燥部25と同様のものを用いることができる。
【0059】
図示例においては、乾燥部26も、乾燥部25と同様に、フィルムFの裏面側(非パターン面側)に設けられているヒートローラ30と、フィルムFのパターン面側に設けられている温風ノズルを有する温風ヒータ31とで構成されている。
【0060】
上記のような乾燥部26を設けることにより、フィルムF表面に形成したパターン化された乳剤層に接触することなく、フィルムF表面の熱効率を向上させることができるので、形成したパターン化された乳剤層を短時間で乾燥させることができる。
【0061】
保護層形成部27は、乾燥処理されたパターン化された乳剤層上に、乳剤層の擦り傷防止や力学特性改良のために、ゼラチンや高分子ポリマー等のバインダーからなる保護層を形成するものである。
保護層の形成方法には、特に限定はなく、公知の方法で形成することができる。
なお、形成する保護層の厚みは、0.2μm以下が好ましい。
【0062】
断熱遮風部28(29)は、上記乾燥部25(26)と記録部32とを互いに、断熱し、かつ、遮風するものであり、記録部32の乳剤をパターンニングする部位に、乾燥部25,26から、高湿度の空気が流入するのを防止し、記録部32の乳剤を吐出するノズル(後に述べる吐出ノズル)が乾燥し、ノズル詰まりを生じるのを防止するものである。
【0063】
なお、図が煩雑になるため、図示していないが、パターン形成部18は、ワイプ、吸引式のメンテナンス手段、アライメント手段、不吐検出補正手段等、フィルムF上にパターンニングを形成する際に用いられる公知の手段を具備しているのは、勿論である。
【0064】
露光部19は、パターン形成部18において形成された、パターン化された乳剤層に、可視光線、紫外線などの光やX線などの放射線等の電磁波を照射して、全面露光を行うものである。
【0065】
上記電磁波を照射する光源には、特に限定はなく、波長分布を有する光源を用いてもよいし、特定波長を有する光源を用いてもよく、蛍光管、冷陰極管、紫外線ランプ、g線、水銀ランプのi線等を照射する水銀ランプ、あるいは、レーザ等を用いることができる。
なお、乳剤層のパターンニングの一部に、インクジェット記録部32で描画できないような高解像度のパターンが含まれる場合には、記録部32より高解像度のレーザを用いて、走査露光するのが好ましい。
【0066】
冷陰極管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体を用いるものがあるが、発光体としては、例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種または2種以上が混合されて用いられ、スペクトル領域には、上記の赤色、緑色および青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。
冷陰極管を用いる場合には、特に、上記の発光体を混合して白色に発光する陰極線管を用いるのが好ましい。
【0067】
光源として、レーザを用いる場合には、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザ、半導体レーザまたは半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶とを組み合わせた第二高調波発光光源、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー、および半導体レーザ、および、半導体レーザ或いは固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発生光源を用いることができる。
【0068】
具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザ2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザ発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザ、波長約685nmの赤色半導体レーザ日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザ日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0069】
上述した陰極線管は、低コストで、光軸や色の調整も容易なため、操作性が高く、さらに、システムをコンパクトにすることができる等の利点があり、半導体レーザ或いは第二高調波発生光源は、低コストで寿命が長く、さらに、安定性が高く、システムをコンパクトにすることができる等の利点があるので、それぞれの目的にあわせて、光源を選択すればよい。
【0070】
図示例の装置10において、プロセサ部14は、現像処理部40と、水洗処理部41と、乾燥処理部42と、平滑化処理部43と、蒸気接触処理部44とを有する。
【0071】
現像処理部40は、露光部19において、フィルムFのパターニング面に露光を行った後、フィルムFに、現像処理を施し、フィルムF表面に、パターニング化された導電性銀層を形成する部位である。
【0072】
本発明において、現像処理の方法には、特に限定は無いが、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
現像処理に用いる現像液は、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液、KODAK社処方のD85など等のリス現像液等を用いられる。
具体的には、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72などの現像液、またはそのキットに含まれる現像液を用いることができる。
【0073】
さらに、例えば、現像液1リットルの中に、ハイドロキノンを0.037mol/L、N−メチルアミノフェノールを0.016mol/L、メタホウ酸ナトリウムを0.140mol/L、水酸化ナトリウムを0.360mol/L、臭化ナトリウムを0.031mol/L、メタ重亜硫酸カリウムを0.187mol/Lを加えたものを用いてもよい。
【0074】
水洗処理部41は、パターニングされた導電性銀層の導電性を向上させるために、露光部19から供給されたフィルムFに、水洗処理を施し、フィルムFを乾燥処理部42に供給する部位である。
【0075】
図示例の水洗処理部41は、4つの水が満たされた水洗槽45と、フィルムFを搬送するための多数のローラ対とで構成され、さらに、水洗槽45と水洗槽45との間の隔壁には、生産性を向上させるために、夫々、フィルムFの通過を可能にし、水洗液の通過を阻止可能な液通スクイズ部46が設けられている。
さらに、水洗処理部41は、ローラの汚れやフィルムFへの転写を防止するために、水洗液の外側に位置するローラ対を自動で洗浄するための液外搬送部自動洗浄手段(図示せず)を有する。
【0076】
本発明において、水洗処理の方法には、特に限定はなく、水洗槽45に満たされた水に、フィルムFを浸して、ローラ対で搬送する等の一般的な方法を適用すればよく、ここでは、水洗槽45の浴温度および時間は0〜50℃、5秒〜2分であることが好ましい。
【0077】
乾燥処理部42は、水洗処理部41において水洗処理を施したフィルムFの表面、すなわち、フィルムFのパターニング面を乾燥させる部位であり、図示例においては、フィルムFのパターニング面に接触することなく、フィルムFのパターニング面の水洗水を除去して乾燥させる複数の温風ノズルを有する温風ヒータ47と、ローラ48とエンドレスベルト49でなる、フィルムFを搬送する搬送ユニット36とで構成されている。
【0078】
乾燥処理部42は、上記のようなフィルムFのパターニング面に接触しない手段を用いて、フィルムFのパターニング面の水洗水を乾燥させることにより、フィルムF上のパターン化された導電性銀層が、付着または転写するのを防ぐことができる。
【0079】
平滑処理部46は、乾燥処理部42から供給された、フィルムF表面上のパターン化された導電性銀層における金属粒子同士の結合部分を増加させて、パターン化された導電性銀層の導電性を増大させるために、導電性銀層に平滑化処理を施す部位である。
【0080】
本発明において、平滑化処理の方法には、特に限定はないが、一対のローラからなるカレンダーロール37を用いるのが好ましい。
平滑化処理を実施する温度は、10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属配線パターンの画線密度や形状、バインダー種によって異なるが、約10℃(温調なし)〜50℃の範囲である。
【0081】
カレンダーロール37には、特に限定はないが、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミドなどのプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。
フィルムFの両面に乳剤層を有する場合には、金属ロール対を用いるのが好まく、フィルムFの片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせるのが好ましい。
【0082】
例えば、カレンダーロール37として、金属ロール対を用いて、油圧で制御したロールニップを通すことにより、平滑化処理を行う方法や、ヒートロールと、フィルムF搬送と同期して回転する円筒形状の可塑性ジャケットおよび可塑性ジャケットの内部にフィルムF幅方向に渡って配置された加圧シューを有するシュープレスロールとを用いて、可塑性ジャケットを介してシューをフィルムFに所定圧で加圧するシュープレスロールニップを通して、平滑化処理を行う方法が挙げられる。
【0083】
なお、カレンダーロール37の線圧力の下限値は、導電膜の表面抵抗を十分に低減するために、980N/cm(100kg/cm)以上、好ましくは1960N/cm(200kg/cm)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kg/cm)以上とする。
また、線圧力の上限値は、好ましくは6860N/cm(700kgf/cm)以下とする。
ここで、線圧力(荷重)とは、圧密処理されるフィルム試料1cmあたりにかかる力とする。
【0084】
蒸気接触処理部44は、短時間で簡便に導電性を向上させるために、フィルムFのパターン化された導電性銀層に蒸気を接触させる部位であり、図示例においては、フィルムFのパターニング面に接触することなく、フィルムFの導電性銀層に蒸気を接触させる、蒸気ノズルを有する蒸気発生ユニット38と、ローラ33とエンドレスベルト34でなる、フィルムFを搬送する搬送ユニット39とで構成されている。
【0085】
パターン化された導電性銀層(フィルムF)に接触させる蒸気の温度は、80℃以上が好ましい。蒸気の温度は1気圧で100℃以上140℃以下がさらに好ましい。蒸気への接触時間は、使用するバインダーの種類によって異なるが、基板のサイズが60cm×1mの場合、10秒〜5分程度が好ましく、1分〜5分が更に好ましい。
【0086】
ここで、図2を用いて、インクジェット記録部32について、詳述する。
図2は、記録部32の一実施例の概念図である。
【0087】
図2に示した記録部32は、ハロゲン化銀乳剤Q(以下、単に、乳剤Qともいう)を用い、この乳剤Qに圧力を作用させることにより、乳剤Qを吐出するピエゾ方式のインクジェット記録装置である。
なお、乳剤Qについては、後に詳述する。
【0088】
記録部32は、図2に示すように、基本的に、メインタンク52と、乳剤循環ポンプ92と、フィルタ100と、乳剤循環経路58と、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)50と、乳剤補充ユニット90と、洗浄ユニット94とを有する。
なお、記録部32は、図に示す部材以外にも、公知のピエゾ方式のインクジェット記録装置が有する各種の構成要素を有する。
【0089】
メインタンク52は、記録部32の乳剤循環経路58を循環する乳剤を貯留するための密閉型のタンクである。
なお、インクタンク52は、乳剤Qの品質を保持するために、遮光性を有するものであるのが好ましい。
【0090】
図示例のメインタンク52は、乳剤Qの沈降/堆積を防止して、乳剤Qの品質保持、および、吐出ヘッド50のノズル詰まり防止のために、乳剤Qを攪拌する攪拌手段82を有する。他にも、図示していないが、乳剤Qの吐出安定性を向上するために温度調節手段や、系内の乳剤の圧力を制御するために水頭差方式またはダイヤフラム方式の圧力制御手段を有する。
【0091】
乳剤循環ポンプ92は、一端が乳剤循環経路58の共通供給配管60と接続されていて、メインタンク52内の乳剤Qを吸引し、乳剤循環経路58に供給するものである。
乳剤循環ポンプ92は、稼動時に乳剤Qを乳剤循環経路58に供給し、停止時は、乳剤循環経路58内の乳剤Qを保持することなく重力に応じて、メインタンク52内に乳剤Qが回収される非自給式ポンプが好ましく用いられる。
【0092】
フィルタ100は、乳剤循環ポンプ92に接続されていて、吐出ヘッド50および乳剤循環経路58内に混入して異物となる可能性のある大きさの物質を除去するものである。
フィルタ100は、上記物質を除去することができ、かつ、円滑な乳剤の循環を妨げないものであれば、特に限定は無いが、メッシュフィルタが好ましく用いられる。
【0093】
乳剤循環経路58は、メインタンク52の乳剤Qを吐出ヘッド50に供給する乳剤供給経路と、吐出ヘッド50から吐出されなかった乳剤Qを回収する乳剤回収経路とから構成される。
なお、乳剤循環経路58も、乳剤Qの品質を保持するために、遮光性を有するものであるのが好ましい。
【0094】
乳剤循環経路58の乳剤供給経路は、供給サブタンク54、乳剤循環ポンプ92に接続された共通供給配管60、共通供給配管60と供給サブタンク54とを接続する第1供給配管62、共通供給配管60と回収サブタンク56とを接続する第2供給配管64、供給サブタンク54と吐出ヘッド50とを接続する第3供給配管66、及び、供給サブタンク54内のオーバーフロー管54aからオーバーフローした乳剤Qを回収する第3回収配管98から主に構成される。
【0095】
他方、乳剤循環経路58の乳剤回収経路は、回収サブタンク56、吐出ヘッド50と回収サブタンク56とを接続する第1回収配管68、回収サブタンク56内のオーバーフロー管56aからオーバーフローした乳剤を回収する第2回収配管70、第2回収配管70および第3回収配管98によって回収した乳剤をメインタンク52に回収する共通回収配管72から主に構成される。
【0096】
吐出ヘッド50は、本実施形態においては、ピエゾ素子を有し、このピエゾ素子に電圧をかけて、ピエゾ素子を変形させることにより、乳剤Qに圧力を加えて、乳剤Qを吐出するピエゾ方式の吐出ヘッドである。
吐出ヘッド50については、後に詳述する。
【0097】
乳剤補充ユニット90は、消費した乳剤Qをメインタンク52に補充するものであり、基本的に乳剤補充タンク76と、希釈剤補充タンク74と補充用配管102、104,78とを有する。
【0098】
乳剤補充タンク76は、高濃度の乳剤を充填する密閉型のタンクであり、補充用配管102および78によってメインタンク52と接続される。
他方、希釈剤補充タンク74は、乳剤Qを補充する際の高濃度乳剤の希釈剤として用いるキャリア液を充填する密閉型のタンクであり、補充用配管104および78によってメインタンク52と接続される。
【0099】
補充用配管102および104は、それぞれ補充制御用バルブ102aおよび104aを有し、この補充制御用バルブ102aおよび104aを必要に応じて開閉させることで、所定量の乳剤、希釈剤をメインタンク52に補充する。
【0100】
洗浄ユニット94は、洗浄液供給配管86と、洗浄液回収配管84と、三方制御弁86a、84aと、ポンプ96、洗浄液タンク80とを有する。
【0101】
洗浄液供給配管86は、一端が洗浄液タンク80に接続され、他端が共通供給配管60に設けられた三方制御弁86aに接続されている。また、洗浄液供給配管86には、ポンプ96が設けられている。
他方、洗浄液回収配管84は、一端が洗浄液タンク80に接続され、他端は共通回収配管72に設けられた三方制御弁84aに接続されている。
【0102】
ここで、上記構成を有する記録部32の運転時(記録時)の乳剤循環系の動作について説明する。
【0103】
まず、乳剤循環ポンプ92によって、メインタンク52から共通供給配管60、第1供給配管62、第2供給配管64を通じて供給サブタンク54およびに回収サブタンク56に乳剤Qが送液され、供給サブタンク54および回収サブタンク56に乳剤Qが貯留される。
【0104】
供給サブタンク54に貯留された乳剤Qは、供給サブタンク54と吐出ヘッド50の落差のために、第3供給配管66を通じて吐出ヘッド50に流入する。
他方、吐出ヘッド50において吐出に寄与しなかった乳剤Qは、吐出ヘッド50と回収サブタンク56との落差のために、第1回収配管68を通じて回収サブタンク56に供給される。
【0105】
ここで、回収サブタンク56をオーバーフローした乳剤Qは、第2回収配管70、共通回収配管72を通じてメインタンク52に戻される。
このようにして、メインタンク52、供給サブタンク54、吐出ヘッド50、回収サブタンク56を乳剤Qが循環する。
なお、供給サブタンク54をオーバーフローした乳剤Qは、第3回収配管98、共通回収配管72を介してメインタンク52に戻される。
【0106】
次いで、記録部32の洗浄時の動作について説明する。
【0107】
まず、乳剤循環ポンプ92を停止させ、乳剤循環経路58(供給サブタンク54、回収サブタンク56およびそれらを接続する配管)内の乳剤Qをメインタンク52に回収し、三方制御弁86aをメインタンク52側から洗浄液供給配管86側に切り替え、三方制御弁84aもメインタンク52側から洗浄液回収配管84側に切り替える。
【0108】
次いで、ポンプ96により洗浄液タンク80内の洗浄液を洗浄液供給配管86から供給サブタンク54、吐出ヘッド50、回収サブタンク56、それらを接続する配管を循環させ、三方弁84aを通じて洗浄液回収配管84から回収することで、吐出ヘッド50、乳剤循環経路58を洗浄する。
【0109】
上記のようにして経路内の洗浄を行うことで、より確実にメインタンク以外での乳剤の残留を防止することができる。
そのため、記録部32を使用した作業終了後に、上記のような記録部32の洗浄を行って、記録部32(吐出ヘッド50)内を洗浄後の状態で保管すると、特に、粘性の高い乳剤中のゼラチンが残留することによって起こる、吐出ヘッド50のノズルのつまりを防止することができる。
【0110】
次いで、図3〜図6を用いて、吐出ヘッド50について説明する。
図3は、吐出ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4は、その一部の拡大図である。
また、図5は、吐出ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図であり、図6は、1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したユニット)の立体的構成を示す断面図(図3中の123−123線に沿う断面図)である。
【0111】
吐出ヘッド50は、フルライン型のヘッドであり、図3及び図4に示すように、乳剤の吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有する。
このような吐出ヘッド50は、自身の長手方向(フィルム送り方向と直交する方向、以下、直交方向とする)に沿って並ぶように投影されるため、実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0112】
吐出ヘッド50は、図3および図4に示す例に限定されず、図5に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることでフィルムFの直交方向の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッド50’を構成してもよい。
【0113】
圧力室152は、図3および図4に示すように、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。
なお、圧力室152の形状は、特に限定はなく、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0114】
各圧力室152は、図6に示すように、供給口154を介して共通流路155と連通している。
共通流路155は、乳剤の供給源であるメインタンク52と連通しており、メインタンク152から供給される乳剤は共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0115】
圧力室152の一部の面(図6において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたピエゾ素子158が接合されている。
【0116】
個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151から乳剤Qが吐出される。
乳剤吐出後、ピエゾ素子158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しい乳剤Qが圧力室152に充填される。
【0117】
なお、ピエゾ素子158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた素子が好適に用いられる。
【0118】
以下、図7を用いて、上記構成を有する配線形成装置10の作用を説明することにより、本発明の配線形成方法を詳細に説明する。
なお、図7は、本発明の配線形成方法の一実施例を示す図である。
【0119】
まず、フィルム供給部16において、マガジン20に装填されたフィルムロール22を、マガジン20から引き出し、カッタ21で切断して、所望のサイズのフィルムFを作成し、下地処理部17に供給する。
次いで、下地処理部17の接触角調整部23において、後に形成する乳剤層のパターンニングの精度を向上させるために、プラズマ処理等を実施して、フィルムF表面の接触角を調整する。
フィルムF表面の接触角を調整した後、図7(a)に示すように、下地処理部17の密着力増強部24において、フィルムFと乳剤層164との密着力を向上させるために、フィルムFの表面に、後に形成する乳剤層164のパターンに従い、インクジェット記録法(図示せず)を用いて、下地膜162を形成し、乾燥部31において、フィルムFの下地膜162を乾燥させ、フィルムFをパターン形成部18に供給し、次いで、インクジェット記録部32において、予め入力された配線パターニング情報に応じて、フィルムFの下地膜164上に、ハロゲン化銀乳剤をパターニングして、ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層164を形成する。
【0120】
上記のように、下地膜162の形成に、インクジェット記録法を用いることにより、フィルムF全面に下地膜を形成する場合と比較して、使用する材料を削減することができ、さらに、製品の未パターン部の絶縁信頼性を高く保つことができる。
また、パターン化された乳剤層164の形成に、インクジェット記録法を用いることにより、乳剤の使用効率が向上するため、ランニングコストが低下する。また、乾燥処理も容易に行うことができる。さらに、シャトルスキャン方式を用いる場合には、特に、フィルムFの幅による制限が無いため、幅が極めて広いフィルムF(基板)にも、パターン化された乳剤層164を形成することができる。
また、乳剤層164の形成に、インクジェット記録法を用いることにより、フィルムFのパターン面に接触することなく、パターン化された乳剤層164を形成することができるので、コンタミ等の汚染を殆どなくすことができ、さらに、乳剤層形成面が凹凸を有する場合にも、本発明を適用することができる。
【0121】
パターン形成部18において、上記のようにして、基板表面上の下地膜162上に、パターン化された乳剤層164を形成した後、乾燥部31において、フィルムFの乳剤層164形成面、すなわち、フィルムFのパターニング面に、乾燥処理を施し、保護層形成部27に供給し、保護層形成部27において、フィルムF表面に、保護層を形成し、フィルムFを露光部19に搬送する。
【0122】
次いで、露光部19において、図7(b)に示すように、フィルムFのパターニング面に、蛍光管や冷陰極管等を用いて、全面露光を施す。
露光部19において、フィルムFのパターニング面を全面露光した後、現像処理部40にフィルムFを供給し、現像処理部40において、図7(c)に示すように、フィルムFに、現像処理を施す。これにより、フィルムF表面の下地膜162上に、パターン化された導電性銀層168を形成する。
【0123】
上記のようにして、現像処理部40において、パターン化された導電性銀層168を形成した後、フィルムFを水洗処理部41に供給する。
水洗処理部41において、フィルムFに水洗処理を施した後、乾燥処理部42において、フィルムFに、乾燥処理を施し、平滑処理部43に供給する。
次いで、平滑化処理部43において、フィルムFのパターン化された導電性銀層168の導電率を向上させるために、図7(d)に示すように、カレンダーロール13(図7には図示せず)を用いて、フィルムFのパターン化された導電性銀層168に平滑化処理を施す。
【0124】
本発明における平滑化処理は、上述したような、基板上に、未露光部と導電性銀部とからなる層が形成されている基板表面に平滑化処理を施す場合とは異なり、導電性銀層だけに平滑処理を施すことができるので、導電性銀層、すなわち、パターン部に、集中して圧力を付与することができ、上記従来の構成の基板表面に平滑化処理を施す場合と比較して、圧密率や導電率が非常に効率的に向上する。
【0125】
上記のように、平滑処理部43において、フィルムFの導電性銀層168に平滑化処理を施した後、フィルムFを、蒸気接触処理部44に供給し、蒸気接触処理部44において、図7(e)に示すように、フィルムFのパターニング面に、蒸気を接触させる蒸気接触処理を施す。
蒸気接触処理部44において、フィルムFのパターニング面に蒸気接触処理を施した後は、好ましくは、図7(f)に示すように、図示していないめっき処理部で、フィルムFのパターン化された導電性銀層168上にめっき処理を施し、導電性金属層170を形成する。
【0126】
上記のようにして、フィルムF表面に、パターン化された導電性銀層、すなわち、配線パターンを形成することができる。
【0127】
上記のように、本発明の配線形成方法は、ハロゲン化銀乳剤からなる乳剤層を形成し、基板表面に、ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層を形成するため、全面に乳剤層が塗布されたフィルム(基板)を用いる必要がないので、多種多様な基板に適用することができ、さらに、両面基板にも適用することができる。
また、パターン化された乳剤層に一括露光処理を施すため、露光に用いる照射光は、低照度でよい。
【0128】
さらに、本発明は、パターニングに、マスクを用いる必要がないので、オンデマンド性に優れ、短納期や少量生産の製品の製造にも、適用可能である。
また、本発明は、光パターニングを行わないので、全ての処理を、明室で行うことができるため、特別な設備を設ける必要がなく、低コストで生産することができる。
【0129】
また、本発明の配線形成方法は、上述した従来の配線パターンの形成方法とは異なり、乳剤層に未露光部が存在しないため、従来、未露光部のハロゲン化銀を除去するために行っていた安定化処理等を行う必要がなくなり、生産性が向上する。
さらに、乳剤層に未露光部が存在しないため、未露光部にゼラチン等の材料が残存すること、すなわち、未露光部に残存した材料が、黄色等の有色に変色することがなくなるので、基板上の配線が形成されていない部分の透過率が極めて高いので、PDP(Plasma display panel)や電磁波シールドフィルムの製造にも適用することができる。
【0130】
ここで、本発明で用いるフィルムFについて、詳述する。
本発明に用いるフィルムFについては、特に限定は無いが、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを用いることができ、プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
またアルミなどの金属箔支持体を用いることもできる。
【0131】
ここで、下地膜について、詳述する。
下地膜については、特に限定は無いが、ハロゲン化銀を含まないバインダー層や微少空隙型乳剤受容層が挙げられる。
【0132】
上記バインダー層を形成する材料としてはゼラチンを好適に用いるが、それ以外の親水性コロイドを用いてもよい。
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体のような多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチン加水分解物、ゼラチン酵素分解物も用いることができる。
バインダー層の厚みの範囲は、0.2μm〜2μmが好ましく、さらに、0.5μm〜1μmが好ましい。
【0133】
また、バインダー層を形成する方法にも特に限定は無いが、フィルムF表面に、乳剤層のパターンに従いバインダーを塗布し、例えば、40℃〜100℃の温度条件下で、0.5分〜5分、乾燥硬化させて形成する方法が挙げられる。
【0134】
同様に、微少空隙型乳剤受容層を形成する方法にも、特に限定は無いが、一例としては、フィルムF表面に、例えば、平均粒子径20nm以下の気相法シリカ、PVA(polyvinyl alcohol)等の水溶性樹脂、および、2価異常の水溶性金属を含む液を、乳剤層のパターンに従い塗布し、この塗布と同時、または、後の乾燥処理に入る前に、ホウ酸等の水溶性樹脂を架橋する架橋剤を含む液を、乳剤層のパターンに従い塗布した後、例えば、40℃〜100℃の温度条件下で、0.5分〜5分、乾燥硬化させて形成する方法が挙げられる。
【0135】
ここで、本発明で用いるハロゲン化銀乳剤について、詳述する。
【0136】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀、バインダー、溶媒、好ましくは、染料、帯電防止剤、および、その他の添加剤を含有するハロゲン化銀乳剤であれば、特に限定はなく、公知の製法で生成された公知のハロゲン化銀乳剤を用いることができる。
【0137】
なお、ハロゲン化銀乳剤の粘度は、一般的に25℃において1以上40mPa・s以下、好ましくは1以上30mPa・s以下、さらに好ましくは1以上20mPa・s以下である。
また、その表面張力は動的及び静的表面張力いずれも一般的に25℃において20〜100mN/m、好ましくは20〜70mN/m、さらに好ましくは20〜50mN/mである。
粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整すればよい。
【0138】
<ハロゲン化銀>
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に含有されるハロゲン化銀については、特に限定はないが、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀が好ましく、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれか、または、これらを組み合わせたハロゲン元素を有するハロゲン化銀が例示される。
【0139】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0140】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0141】
尚、ここで、「臭化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この臭化銀を主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0142】
なお、ハロゲン化銀乳剤における沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5mol%であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5mol%とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1mol%以下である。
【0143】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。
尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0144】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また粒子内部或いは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
本発明における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{粒子サイズの標準偏差)/平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0145】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0146】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラストおよび低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物などを含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどや、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾールなど)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
また、高感度化のためにはK4〔FeCN)6〕やK4〔RuCN)6〕、K3〔CrCN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0147】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
これらのロジウム化合物は、水或いは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、或いはハロゲン化アルカリ例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0148】
その他、本発明では、Pd(II)イオンおよび/またはPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0149】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオンおよび/またはPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0150】
本発明では一般のハロゲン化銀写真感光材料と同様に化学増感を施しても、施さなくてもよい。化学増感の方法としては、例えば特開平2000−275770号の段落番号0078以降に引用されている、写真感光材料の感度増感作用のあるカルコゲナイト化合物あるいは貴金属化合物からなる化学増感剤をハロゲン化銀乳剤に添加することによって行われる。本発明の感光材料に用いる銀塩乳剤としては、このような化学増感を行わない乳剤、すなわち未化学増感乳剤を好ましく用いることができる。本発明において好ましい未化学増感乳剤の調製方法としては、カルコゲナイトあるいは貴金属化合物からなる化学増感剤の添加量を、これらが添加されたことによる感度上昇が、0.1以内になる量以下の量にとどめることが好ましい。カルコゲナイトあるいは貴金属化合物の添加量の具体的な量に制限はないが、本発明における未化学増感乳剤の好ましい調製方法として、これら化学増感化合物の総添加量をハロゲン化銀1モルあたり5×10−7モル以下にすることが好ましい。
【0151】
<バインダー>
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に用いるバインダーについては、特に限定はなく、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、かつ、乳剤層とフィルムFとの密着性を補助することができるものであれば、特に限定はなく、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーのいずれを用いることもできるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0152】
具体的には、バインダーとして、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコールPVA)、ポリビニルピロリドンPVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
またゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他アミノ基,カルボキシル基を修飾したゼラチンフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができる。
【0153】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤で形成される乳剤層に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比率が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。
【0154】
<溶媒>
本発明に係るハロゲン化乳剤に含有される溶媒についても、特に限定はなく、例えば、水、水性溶媒、有機溶媒、例えば、メタノール等アルコール類、アセトンなどケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。
本発明に係るハロゲン化銀乳剤で形成される乳剤層に含有される溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0155】
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
尚、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0156】
<染料>
本発明に係るハロゲン化乳剤に含有される染料についても、特に限定はなく、フィルター染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の効果を有する、固体分散染料等、公知の染料を用いることができる。
本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式FA)、一般式FA1)、一般式FA2)、一般式FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。
また、特開平7−152112号公報記載のII−2)〜II−24)、特開平7−152112号公報記載のIII−5)〜III−18)、特開平7−152112号公報記載のIV−2)〜IV−7)等も好ましく用いられる。
【0157】
<帯電防止剤>
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に含有される帯電防止剤についても、特に限定はなく、
例えば、表面抵抗率が25℃、25%RHの雰囲気下で1012 Ω以下の導電性物質含有層を好ましく用いることができる。
本発明に好ましい帯電防止剤として、下記の導電性物質を好ましく用いることができる。
特開平2−18542号公報第2頁左下13行目から同公報第3頁右上7行目に記載の導電性物質。具体的には、同公報第2頁右下2行目から同頁右下10行目に記載の金属酸化物、および同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物。USP5575957号公報、特開平10−142738号公報段落番号0045〜0043及び特開平11−223901号公法段落番号0013〜0019に記載の針状の金属酸化物等を用いることができる。
【0158】
本発明で用いられる導電性金属酸化物粒子は、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaOおよびMoO3ならびにこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物にさらに異種原子を含む金属酸化物の粒子を挙げることができる。金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、およびMgOが好ましく、さらに、SnO2、ZnO、In23およびTiO2が好ましく、SnO2が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、およびSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物または複合酸化物に充分な導電性を付与することができにくくなり、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため適さない。従って、本発明では導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物または複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0159】
上記異種原子を少量含む導電性金属酸化物微粒子としては、アンチモンがドープされたSnO2粒子が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2粒子が好ましい。
【0160】
本発明に用いる導電性金属酸化物の形状については特に制限はなく、粒状、針状等が挙げられる。また、その大きさは、球換算径で表した平均粒径が0.5〜25μmである。
【0161】
また、導電性を得るためには、例えば、可溶性塩例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第2861056号公報および同第3206312号公報に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3428451号公報に記載のような不溶性無機塩を使用することもできる。
【0162】
このような導電性金属酸化物粒子を含有する帯電防止層はバック面の下塗り層、乳剤層の下塗り層などとして設けることが好ましい。その添加量は両面合計で0.01〜1.0g/mであることが好ましい。
また、感光材料の内部抵抗率は25℃25%RHの雰囲気下で1.0×107〜1.0〜1012Ωであることが好ましい。
【0163】
本発明において、前記導電性物質のほかに、特開平2−18542号公報第4頁右上2行目から第4頁右下下から3行目、特開平3−39948号公報第12頁左下6行目から同公報第13頁右下5行目に記載の含フッ素界面活性剤を併用することによって、更に良好な帯電防止性を得ることができる。
【0164】
<その他の添加剤>
本発明に係るハロゲン化乳剤に含有される各種添加剤に関しては、特に限定はなく、例えば下記公報等に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0165】
1)造核促進剤
上記造核促進剤としては、特開平6−82943号公報に記載の一般式I)、II)、III)、IV)、V)、VI)の化合物や、特開平2−103536号公報第9頁右上欄13行目から同第16頁左上欄10行目の一般式II−m)〜II−p)および化合物例II−1〜II−22、並びに、特開平1−179939号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0166】
2)分光増感色素
上記分光増感色素としては、特開平2−12236号公報第8頁左下欄13行目から同右下欄4行目、同2−103536号公報第16頁右下欄3行目から同第17頁左下欄20行目、さらに特開平1−112235号、同2−124560号、同3−7928号、および同5−11389号各公報に記載の分光増感色素が挙げられる。
【0167】
3)界面活性剤
上記界面活性剤としては、特開平2−12236号公報第9頁右上欄7行目から同右下欄7行目、および特開平2−18542号公報第2頁左下欄13行目から同第4頁右下欄18行目に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0168】
4)カブリ防止剤
上記カブリ防止剤としては、特開平2−103536号公報第17頁右下欄19行目から同第18頁右上欄4行目および同右下欄1行目から5行目、さらに特開平1−237538号公報に記載のチオスルフィン酸化合物が挙げられる。
【0169】
5)ポリマーラテックス
上記ポリマーラテックスとしては、特開平2−103536号公報第18頁左下欄12行目から同20行目に記載のものが挙げられる。
【0170】
6)酸基を有する化合物
上記酸基を有する化合物としては、特開平2−103536号公報第18頁右下欄6行目から同第19頁左上欄1行目に記載の化合物が挙げられる。
7)硬膜剤
上記硬膜剤としては、特開平2−103536号公報第18頁右上欄5行目から同第17行目に記載の化合物が挙げられる。
【0171】
8)黒ポツ防止剤
上記黒ポツ防止剤とは、未露光部に点状の現像銀が発生することを抑制する化合物であり、例えば、米国特許US第4956257号公報および特開平1−118832号公報に記載の化合物が挙げられる。
9)レドックス化合物
レドックス化合物としては、特開平2−301743号公報の一般式I)で表される化合物特に化合物例1ないし50)、同3−174143号公報第3頁ないし第20頁に記載の一般式R−1)、R−2)、R−3)、化合物例1ないし75、さらに特開平5−257239号、同4−278939号各公報に記載の化合物が挙げられる。
10)モノメチン化合物
上記モノメチン化合物としては、特開平2−287532号公報の一般式II)の化合物特に化合物例II−1ないしII−26)が挙げられる。
11)ジヒドロキシベンゼン類
特開平3−39948号公報第11頁左上欄から第12頁左下欄の記載、および欧州特許公開EP452772A号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0172】
12)乾燥防止剤
乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において塗布した物が乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0173】
<浸透促進剤>
浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。前記浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0174】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0175】
<褐色防止剤>
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0176】
<防黴剤>
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0177】
<pH調整剤>
pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10と夏用に添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0178】
<表面張力調整剤>
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0179】
<消泡剤>
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0180】
<高沸点溶剤>
高沸点溶剤としては、特開2004−75742号公報の段落[0114]および[0115]に記載されている添加剤を用いることができる。
【0181】
なお、本発明においては、本発明の配線形成方法を実施可能な配線形成装置は、図1に示すような、フィルムFの片側表面に乳剤層をパターンニングして、パターニングされた導電性銀層を形成する装置に限定はされず、図8に示すような、フィルムFの両面に、乳剤層をパターニングし、パターニングされた導電性金属銀を形成する装置であってもよい。
なお、図8に示す配線形成装置180(以下、単に、装置180ともいう)は、フィルムFの両面に、乳剤層をパターニング可能なように、下地処理部186およびパターン形成部182を2つずつ有し、また、パターン形成部182の間に、位置検出ユニット185を有し、パターン形成部182にヒートローラ183およびロール洗浄ユニット184を有する以外は、図1に示す配線形成装置10と同様の部材、手段を有するものである。
そのため、ここでは、ヒートローラ183、ロール洗浄ユニット184、および、位置検出ユニット185についてのみ説明する。
【0182】
ヒートローラ183は、フィルムFを加熱しつつ搬送するものであり、他方、ロール洗浄ユニット184は、ヒートローラ183表面への付着物を洗浄するためのものであり、いずれの公知の手段を用いることができる。
また、位置検出ユニット184は、フィルムFの裏面側のパターンを、フィルムFの表面側のパターンに合わせて形成できるように、フィルムFの表面側のパターンの位置を検出するものであり、公知の位置検出手段を用いることができる。
【0183】
上記構成を有する装置180は、まず、装置10と同様に、フィルム供給部16から、フィルムFを下流側に位置する方の下地処理部186に供給し、フィルムF表面の接触角を調整し、下地膜を形成した後、フィルムFを、下流側に位置する方のパターン形成部182に供給し、フィルムF表面の下地膜上にパターン化された乳化層を形成する。次いで、フィルムFを、上流側に位置する方の下地処理部186に供給し、フィルムFの裏面の接触角を調整し、下地膜を形成した後、さらに、フィルムFを、上流側に位置する方のパターン形成部182に供給して、フィルムFの裏面に形成された下地膜上に、パターン化された乳化層を形成する。
【0184】
上記構成を有する装置180は、上記のようにして、フィルムFの両面に、パターン化された乳化層を形成した後は、装置10と同様に処理をして、フィルムFの両面に配線パターンを形成する。
なお、装置180における露光は、予め、フィルムFの両面にパターン化された乳剤層が形成されているので、両面同時に曝露することができ、非常に効率的である。
【0185】
なお、装置10,180のフィルム搬送手段について、特に限定はないが、水分量が20%以上、好ましくは、2%以上の、パターン化された乳剤層が形成されたフィルムFを搬送する搬送手段は、フィルムFのパターン領域に、搬送手段が接触しないように、例えば、公知のニップロータ等を、フィルムFの幅方向両端に配置するのが好ましい。
【0186】
ここで、上記のように、水分量20%以上の乳剤層がパターニングされたフィルムFを搬送する場合に、フィルムFのパターン領域に接触しないように、搬送手段を配置するのは、水分量20%以上の乳剤層は、流動性を有するため、ローラ等の搬送手段に転写し易く、これにより、乳剤層のパターンが崩れてしまうからである。
【0187】
さらに、水分量2%以上の乳剤層を有するフィルムFを搬送する場合でも、搬送手段を、上記のように配置するのは、水分量が2%以上20%未満の乳剤層は、乳剤層の流動性は小さくなるものの、乳剤層の粘着性が増加するため、ローラ等の搬送手段に、乳剤層が剥離して貼付するからであり、さらには、貼付した乳剤層が乾燥固化し、全てのフィルムFのパターン面を損傷したり汚染したりしてしまうからである。
【0188】
上記のように、搬送手段に、乳剤層が付着すると、様々な不具合が生じるため、装置10,180は、搬送手段、特に、乳剤層が付着する可能性の高い位置にある搬送手段を、自動で洗浄する洗浄手段を有するのが好ましい。
【0189】
また、装置10,180の水洗処理部41については、上記実施形態に限定されず、例えば、多段向流方式(例えば2段、3段など)を用いる構成としてもよい。
上記多段向流方式を本発明に適用した場合、現像後のフィルムFは徐々に正常な方向、即ち現像液で汚れていない処理液の方向に順次接触して処理されていくので、さらに効率のよい水洗がなされる。
【0190】
さらに、上記多段向流方式を用いる場合には、水洗水量を、フィルムF1m2当り、20リットル以下、補充量を、3リットル以下(0も含む、すなわち貯水水洗)にして、水洗処理または安定処理を行うのが好ましい。
これにより、節水処理が可能となるのみならず、自現機設置の配管を不要とすることができる。
このように、水洗を少量の水で行う場合には、水洗安定処理部42は、特開昭63−18350号、同62−287252号各公報などに記載のスクイズローラ、クロスオーバーローラを有することが好ましい。
【0191】
また、水洗処理部41は、少量水洗時に発生し易い水泡ムラ防止および/またはスクイズローラに付着する処理剤成分が処理されたフィルムに転写することを防止するために、水溶性界面活性剤や消泡剤が添加された水洗水を用いてもよいし、少量水洗時に問題となる公害負荷低減のために、種々の酸化剤を添加した水洗水を用いたり、さらに、フィルタ濾過を行う手段を具備したりしてもよい。
また、水洗処理部41においては、還元銀を有するフィルムFから溶出した染料による汚染を防止するために、特開昭63−163456号公報に記載の色素吸着剤を水洗槽に設置してもよい。
【0192】
なお、上記実施形態においては、水洗処理部41において、フィルムFに水洗処理を施したが、本発明においては、これに限定されず、フィルムFの状態を安定化させるために、水洗処理だけでなく、安定化処理を施してもよい。
安定化処理を行う場合には、特開平2−201357号、同2−132435号、同1−102553号、特開昭46−44446号の各公報に記載の化合物を加えた水洗水を、最終水洗槽に使用してもよい。
この際、必要に応じてアンモニウム化合物、Bi、Alなどの金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防かび剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えた水洗水を用いてもよい。
【0193】
水洗水としては水道水のほか脱イオン処理した水やハロゲン、紫外線殺菌灯や各種酸化剤(オゾン、過酸化水素、塩素酸塩など)等によって殺菌された水を使用することが好ましい。
また、特開平4−39652号、特開平5−241309号公報記載の化合物を含む水洗水を使用してもよい。
【0194】
また、上記実施形態においては、乳剤の制御性、乳剤に対する信頼性、および、耐久性が高いため、ピエゾ素子を有するピエゾ式の吐出ヘッド50を用いたが、本発明においては、これに限定されず、静電方式のインクジェットヘッド、サーマル方式のインクジェットヘッド、マイクロマシン等によって乳剤室の振動板振動することにより乳剤を吐出するタイプのインクジェットヘッド等、各種のインクジェットヘッドを用いてもよい。
【0195】
また、上記実施形態においては、ピエゾ素子158の変形によって乳剤を吐出させる方式が用いられているが、本発明においては、これに限定されず、ピエゾ素子158のアクチュエータの変形によって、乳剤を吐出させる方式を用いてもよいし、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用してもよい。
【0196】
なお、上記実施形態においては、フィルムFを所定のサイズにカットしてから配線パターンを形成したが、本発明においては、これに限定されず、フィルムFをロール状搬送しつつ、配線パターンを形成してもよい。
【0197】
また、上記実施形態においては、吐出ヘッド50を遮光していないが、吐出ヘッド50内の乳剤の品質を保持するために、少なくとも吐出ヘッド50近傍を遮光する遮光手段を用いるのが好ましい。
【0198】
また、上記実施形態においては、フルライン型の吐出ヘッド50を用いて、乳剤層のパターニングを実施したが、本発明においては、これに限定されず、シャトルスキャンやシングルパスを用いて、さらに、これらを、搬送方向および搬送方向と直交する方向の2方向に走査して、あるいは、フィルムFを前記2方向に移動させて、乳剤層をパターンニングしてもよい。
【0199】
また、上記実施形態においては、フィルムF表面上にパターン化された乳剤層を形成して、乳剤層を乾燥させた後に、露光を実施したが、本発明においては、これに限定されず、パターン化された乳剤層を形成した後に、露光を実施し、パターン化された乳剤層を乾燥させてもよい。
【0200】
また、上記実施形態においては、露光部19において、フィルムF表面全面に、一様に露光を行ったが、本発明においては、これに限定されず、一部分ずつ、露光を行ってもよい。
ただし、フィルムF表面に、一様に露光を行った方が、処理速度が向上するため、また、低照度で露光を行うことができ、生産性も向上するため、好ましい。
【0201】
また、上記実施形態においては、フィルムFに現像処理を施した後に、水洗安定化処理を施したが、本発明においては、これに限定せれず、現像処理を施した後に、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着化処理を施してもよい。
定着処理については、特に限定はなく、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
ただし、本発明においては、乳剤層全体に露光を行うため、未露光部が殆ど存在しなちため、定着化処理を施さなくても、十分な効果を得ることができる。
【0202】
また、定着処理を施す場合には、水洗処理部41において、水洗槽45に防黴手段を用いて防黴処理を施した水を、処理に応じて補充することによって、水洗槽45からのオーバーフロー液の一部または全部を、特開昭60−235133号公報に記載されているように、定着処理の処理液として利用することもできる。
【0203】
また、上記実施形態においては、フィルムFに現像処理を施した後に、水洗処理を施す構成としたが、本発明においては、これに限定せれず、現像処理を施した後に、フィルムFの金属銀部に、酸化処理を施してもよい。
酸化処理については、特に限定はなく、例えば、FeIIIイオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。
【0204】
また、上記実施形態においては、フィルムFに現像処理を施した後に、水洗処理を施したが、本発明においては、これに限定されず、現像処理を施した後に、導電性を向上させるために、フィルムFを、還元水溶液に浸漬する還元処理を施してもよい。
還元水溶液には、特に限定はなく、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液などを用いることができ、水溶液PHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0205】
上記実施形態においては、フィルムFに、平滑化処理を施した後に、蒸気接触処理を施したが、本発明においては、これに限定されず、蒸気接触処理を施した後に、平滑化処理を施してもよい。
ただし、平滑化処理を行った後に、蒸気接触処理を行った方が、導電性粒子を結合させ蒸気浴により導電性融着させることができ、より効果的に導電性を向上させることができる。
【0206】
上記実施形態においては、フィルムFに、現像処理をした後に、水洗処理、乾燥処理を順に施したが、本発明においては、これに限定されず、現像処理を施した後に、水洗処理を施し、次いで、フィルムF表面の導電性銀に、導電性微粒子を担持させめっき(導電性金属部)を形成するめっき処理を行ってもよい。
上記のようにして、導電性銀層にめっき処理を行うことにより、導電率が向上し、製造する製品の実装性も向上する。
めっき処理としては、公知の無電解めっき技術を適用することができる。
ここで、導電性金属部は、導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0207】
さらに、本発明においては、めっき処理後、平滑化処理後、または、蒸気接触処理後に、フィルムFのパターン化された導電性銀層表面に、ソルダーレジストを被覆するのが好ましい。
【0208】
上記実施形態においては、フィルムFの表面に、現像処理を施した後に、水洗処理を施しているが、本発明においては、これに限定されず、蒸気接触処理を施した後にも、水洗処理を施してもよい。
こうすることにより、蒸気で溶解又は脆くなったバインダーを洗い流すことができ、これにより導電性銀層の抵抗値をさらに下げることができる。
【0209】
上記実施形態においては、インクジェット記録装置を用いて、後に形成する乳剤層のパターン形状に従い下地膜を形成したが、本発明においては、これに限定されず、公知の方法で、フィルムF表面全面に一様に塗布してもよい。
ただし、使用する材料の削減や、乳剤層をパターニングしない部分の絶縁性を向上させるために、乳剤層のパターンに従い下地膜を形成するのが好ましい。
【0210】
上記実施形態においては、インクジェット記録部32において、インクジェット記録法(インクジェット印刷法)で、フィルムF表面に、乳剤層をパターンニングしたが、本発明においては、これに限定されず、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等を用いて、フィルムF表面に、乳剤層をパターンニングしてもよい。
【0211】
以上、本発明の配線形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいことはいうまでもない。
【0212】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の主旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0213】
(乳剤の調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液及び3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。 続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、下記の2液及び3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0214】
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 3g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)およびヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl 20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0215】
・4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0216】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。
具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。
最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。
最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/m、粘度=10mPa・s、表面張力=30mN/mとなった。
【0217】
上記乳剤を生成した後、フィルタリングすることにより、上記乳剤の異物を除去した。
異物を除去した乳剤を、ピエゾ式のインクジェットヘッドに充填して、5枚のポリイミド製のフィルムFにパターン化された乳剤層を形成し、5枚のサンプルとした。
パターニングした乳剤層のAgとバインダーとの体積比は、4:1であった。
【0218】
次いで、5枚のサンプル、それぞれに、Ph=10.5に調整した以下の現像液を用いて、現像処理を施した。
【0219】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
【0220】
(カレンダー処理)
上記のように現像処理したサンプルに、鉄芯にハードクロムメッキを施した直径250mmのロール対でなるカレンダーロールを用いて、1960N/cm(200kgf/cm)、2940N/cm(300kgf/cm)、3920N/cm(400kgf/cm)、5880N/cm(600kgf/cm)、又は6860N/cm(700kgf/cm)の線圧をかけて、カレンダー処理を施した。
【0221】
(水洗処理・蒸気接触処理)
カレンダー処理後、5枚のサンプルを、90°の温水に、約5分間浸漬させた後、90°の水蒸気に約3分間接触させた。
【0222】
以上のようにして得たサンプルの表面抵抗値(Ω/sq)を、ダイアインスツルメンツ社製ロスターGP(型番MCP−T610)直列4深針プローブ(ASP)により、2回ずつ測定した。
結果を、図9に示す。
図9は、サンプルにかけられた線圧と、そのサンプルの表面抵抗との関係を表したグラフである。
【0223】
図9に示すグラフから明らかなように、カレンダー処理(平滑化処理)を実施する際に、サンプルにかける線圧を、1960N/cm(200kgf/cm)以上にすると、表面抵抗が、1.8(Ω/sq)以下のサンプルを得ることができることが分った。
また、サンプルにかける線圧を、6860N/cm(700kgf/cm)を超えると、サンプルの表面抵抗が、グラフに示すように、僅かに上昇することがわかった。
そのため、サンプルにかける線圧の上限は、6860N/cm(700kgf/cm)が好ましいことがわかった。
なお、線圧力とは、圧密処理されるサンプル1cmあたりにかかる力とする。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】本発明を実施可能な配線形成装置の一実施形態の構成概略図である。
【図2】インクジェット記録装置の一実施例の概念図である。
【図3】吐出ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図4】図3に示す吐出ヘッドの一部拡大図である。
【図5】吐出ヘッドの他の構造例を示す平面透視図である。
【図6】1つの液体吐出素子の立体的構成を示す断面図である。
【図7】本発明の配線形成方法の一実施例を示す図である。
【図8】本発明を実施可能な配線形成装置の別の一実施形態の構成概略図である。
【図9】平滑化処理時の線圧と導電性銀層の抵抗値との関係を表わすグラフである。
【図10】従来の配線形成方法の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0225】
10,180 配線形成装置
12 パターニング部
14 プロセサ部
16 フィルム供給部
17 下地処理部
18,182 パターニング形成部
19 露光部
20 マガジン
21 カッタ
22 フィルムロール
23 接触角調整部
24 密着力増強部
25,26 乾燥部
17 保護層形成部
28,29 断熱遮風部
30,183 ヒートローラ
31 温風ヒータ
32 インクジェット記録部
33,48 ローラ
34,49 エンドレスベルト
36,39搬送ユニット
37 カレンダーロール
38 蒸気発生ユニット
40 現像処理部
41 水洗処理部
42 乾燥処理部
43 平滑処理部
44 蒸気接触処理部
45 水洗槽
46 スクイズ部
47 温風ヒータ
50 吐出ヘッド
52 メインタンク
54 供給サブタンク
56 回収サブタンク
58 乳剤循環経路
60 共通供給管
62 第1供給配管
64 第2供給配管
66 第3供給配管
68 第1回収配管
70 第2回収配管
72 共通回収配管
74 希釈剤補充タンク
76 乳剤補充タンク
78,102,104 補充用配管
80 洗浄液タンク
82 攪拌手段
84 洗浄液回収配管
86 洗浄液供給配管
84a,86a 三方制御弁
90 乳剤補充ユニット
92 乳剤循環ポンプ
94 洗浄ユニット
96 ポンプ
98 第3回収配管
100 フィルタ
151 ノズル
152 圧力室
153 ユニット
154 流入口
155 共通流路
156 加圧板
157 個別電極
158 ピエゾ素子
184 ロール洗浄ユニット
185 位置検出ユニット
202 下地膜
204 乳剤層
208 マスク
212 導電性銀
214 未露光部
216 黒ポツ
218 導電性金属部
S 基板
F フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンに応じて、ハロゲン化銀乳剤を基板の少なくとも片側表面上にパターニングして、前記基板の少なくとも片側表面上に前記ハロゲン化銀乳剤からなるパターン化された乳剤層を形成し、
前記パターン化された乳剤層を露光した後、
前記露光されたパターン化された乳剤層を現像処理して、パターン化された導電性銀層を前記配線パターンとして形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化銀乳剤のパターニングは、
グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、および、インクジェット印刷法のいずれかを用いて行うものである請求項1に記載の配線形成方法。
【請求項3】
前記インクジェット印刷法は、ピエゾ素子を有するインクジェット記録装置で行うものである請求項2に記載の配線形成方法。
【請求項4】
前記導電性銀層を形成した後、
前記導電性銀層に、平滑化処理、蒸気接触処理、および、水洗処理のうちの少なくとも1つの処理を施す請求項1〜3のいずれかに記載の配線形成方法。
【請求項5】
前記基板表面上に前記パターン化された乳剤層を形成する前に、前記基板表面に下地処理を施す請求項1〜4のいずれかに記載の配線形成方法。
【請求項6】
前記下地処理は、前記基板表面の接触角の調整処理、または、前記基板と前記パターン化された乳剤層との密着力増強処理である請求項5に記載の配線形成方法。
【請求項7】
前記基板と前記パターン化された乳剤層との密着力増強処理は、前記基板表面に、前記パターン化された乳剤層のパターン形状に従って、下地膜を形成するものである請求項6に記載の配線形成方法。
【請求項8】
前記下地膜の形成は、インクジェット記録装置を用いて行うものである請求項7に記載の配線形成方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化銀乳剤は、25℃条件下において、1mPa・s以上40mPa・s以下の粘度を有し、かつ、25℃条件下において、20mN/m〜100mN/mの表面張力を有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の配線形成方法。
【請求項10】
前記パターン化された乳剤層を乾燥する工程を有する請求項1〜9のいずれかに記載の配線形成方法。
【請求項11】
前記パターン化された乳剤層上に保護層を形成する工程を有する請求項1〜10のいずれかに記載の配線形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−239070(P2009−239070A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84019(P2008−84019)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】