説明

配線方法およびドナー基板

【課題】配線の自由度が高く、高密度実装が可能で、かつ省スペース化及びパッケージング工程の短縮化を図ることが可能な配線方法およびドナー基板を提供する。
【解決手段】配線導体13による第1〜第4の配線群14A〜14Dが設けられたドナー基板20A,20Bと、ソケットの本体となる樹脂パッケージ10を真空雰囲気中で清浄化した後、ドナー基板20Aを樹脂パッケージ10の上方に位置決めし、ドナー基板20Aと樹脂パッケージ10を加圧接触させ、配線導体13を樹脂パッケージ10の表面に常温接合により接合する。その後、ドナー基板20Aを引き離して退避させ、次にドナー基板20Bによる位置決め及び転写をドナー基板20Aと同様に行って、樹脂パッケージ10に第1〜第4の配線群14A〜14Dを常温接合で接合することにより、ソケット1を完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、ソケット等の被接合体における配線導体を形成し、あるいは2点間を接続するための配線方法およびドナー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の半導体装置は、故障確率が非常に低くなったほか、半導体装置を高密度に実装するために、半導体装置を直接基板に半田付けする実装方法が主流になっている。しかし、電子部品の中でも故障確率が高く交換が必要なものは、ソケットに実装することが望ましい。
【0003】
しかし、半導体装置を実装するためのソケットは、外部との接続のためにリード端子(又は、金属ピン)が必要なため、高密度化することが難しく、現状では、端子ピッチは0.35mm程度が限界である。また、ソケットのフレーム部は樹脂であるため、樹脂成型技術の限界が、ソケットの微細化を阻む原因になっている。
【0004】
また、高密度実装を妨げるその他の原因には、はんだ接続があり、そのはんだ接続を用いずに電気的な接続を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この方法は、両端に互いに逆方向に延びるテーパを有し、さらに両先端を中央部に平行になるようにしたカンチレバー状の接触要素を用い、その中央部を固定することによって両端に弾性力を持たせ、その一端を半導体チップ等の電極に接触させる構成の電子接触構造をリソグラフィ技術により作製する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−232809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の構造によると、カンチレバー状の接触要素をソケットに適用しようとしても、ソケットピンのような基板垂直方向の構造物の作製は難しく、従って、ソケットへの応用は困難である。
【0007】
従って、本発明の目的は、配線の自由度が高く、高密度実装が可能で、かつ省スペース化及びパッケージング工程の短縮化を図ることが可能な配線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の配線方法およびドナー基板を提供する。
【0009】
[1]表面に所定のパターンの配線導体が形成されたドナー基板と、前記配線導体が接合される被接合体とを準備する準備工程と、前記ドナー基板と前記被接合体とを加圧接触させ、前記ドナー基板上の前記配線導体と前記被接合体とを接合する接合工程と、前記ドナー基板と前記被接合体とを離間させて前記ドナー基板上の前記配線導体を前記被接合体に転写する離間工程とを有することを特徴とする配線方法。
【0010】
上記構成によれば、リソグラフィや電鋳を用いて基板上に微細で任意の配線導体のパターンを得ることができるため、配線の自由度が高くなり、高密度実装および省スペース化が可能となる。また、接合工程、離間工程によって複数の配線導体を一括して転写することができるので、パッケージング工程の短縮化を図ることができる。上記配線導体には、Cu、Cu−Ni合金、Au、Ag等が含まれる。
【0011】
[2]前記接合工程は、常温接合によって行うことを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。常温接合によれば、配線導体や被接合体に熱変形が生じないため、高い形状精度が得られる。常温接合とは、室温で原子同士を直接接合することをいう。配線導体を接合する前に、接合面に中性原子ビーム、イオンビーム等を照射して表面を清浄化するのが好ましい。清浄化により表面が活性化して強固な接合が得られる。
【0012】
[3]前記被接合体は、前記配線導体に接触する導体部を有する電気・電子部品が着脱可能な電気的接続部品であることを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。電気・電子部品には、半導体装置、回路素子、バッテリ、ヒューズ、コネクタ等が含まれる。
【0013】
[4]前記電気的接続部品は、前記電気・電子部品が装着されるソケットであることを特徴とする前記[3]に記載の配線方法。ソケットには、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)によるものが含まれる。
【0014】
[5]前記被接合体は、前記配線導体が接合される導電パターンを有する回路基板であることを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。この構成によれば、導電パターンが複雑で微細であっても、それに応じた配線導体を一括して接合することができる。
【0015】
[6]前記ドナー基板は、基板と、前記基板上に配置され、表面に前記配線導体が形成された弾性体とを備え、前記弾性体の厚みが、前記被接合体に転写された前記配線導体の高低差よりも大きいことを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。この構成によれば、被接合体が凹凸を有する場合に、凹凸に沿って配線導体を折曲形成することが可能となる。
【0016】
[7]前記弾性体は、フッ化ゴムからなることを特徴とする前記[6]に記載の配線方法。フッ化ゴムは、配線導体の剥離を容易とする離型性を有するため、離型層の形成工程を省略することができる。
【0017】
[8]前記弾性体は、前記被接合体に加圧接触した際の応力が最も大きくなる部位を含む位置に、空洞部を有することを特徴とする前記[6]に記載の配線方法。この構成によれば、被接合体が凹凸を有する場合に、弾性体が凹部の底面まで入り込み、配線導体を凹部に接合することができる。
【0018】
[9]前記ドナー基板は、前記配線導体に対して離型性および柔軟性を有するフィルムからなることを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。離型性および柔軟性を有するフィルムを用いることにより、離型層の形成工程を省略することができ、被接合体の表面に凹凸があっても凹凸に沿って配線導体を折曲形成することができる。
【0019】
[10]前記被接合体は、上面に複数の電極を有する半導体チップであり、前記配線導体は、一端が前記電極に接合され、その他の部位が前記半導体チップの表面に接合されたことを特徴とする前記[1]に記載の配線方法。この構成によれば、半導体チップの様々な実装態様に応じることができる。電極には、パッド、バンプ等が含まれる。半導体チップには、IC、メモリ、光素子等が含まれる。
【0020】
[11]前記配線導体の他端は、前記半導体チップの実装面に沿って延伸していることを特徴とする前記[10]に記載の配線方法。
【0021】
[12]前記電極は、バンプであることを特徴とする前記[10]に記載の配線方法。
【0022】
[13]使用時に剥離される配線導体が基板上に形成されたドナー基板であって、前記配線導体は、前記配線導体と接合される被接合体との接合強度よりも低い接合強度で前記基板の表面に接合されていることを特徴とするドナー基板。
【0023】
この構成によれば、配線導体は、リソグラフィ法や電鋳によって基板上に微細で任意のパターンを得ることができるため、配線の自由度が高くなり、高密度実装および省スペース化が可能となる。また、ドナー基板上の配線導体は、被接合体との接合工程、離間工程によって複数の配線導体を一括して転写することができるので、パッケージング工程の短縮化を図ることができる。配線導体は、被接合体との接合強度よりも低い強度で基板上に担持されているため、配線導体の転写を容易に行うことができる。
【0024】
[14]前記基板は、前記配線導体との間に弾性体を備え、前記弾性体の厚みが、前記被接合体に転写される前記配線導体の高低差よりも大きいことを特徴とする前記[13]に記載のドナー基板。この構成によれば、被接合体が凹凸を有する場合に、凹凸に沿って配線導体を折曲形成することが可能となる。
【0025】
[15]前記弾性体は、フッ化ゴムからなることを特徴とする前記[14]に記載のドナー基板。フッ化ゴムは、配線導体の剥離を容易とする離型性を有するため、離型層の形成工程を省略することができる。
【0026】
[16]前記弾性体は、前記被接合体に加圧接触した際の応力が最も大きくなる部位を含む位置に、空洞部を有することを特徴とする前記[14]に記載のドナー基板。この構成によれば、被接合体が凹凸を有する場合に、弾性体が凹部の底面まで入り込み、配線導体を凹部に接合することができる。
【0027】
[17]前記基板は、前記配線導体に対して離型性および柔軟性を有するフィルムからなることを特徴とする前記[13]に記載のドナー基板。離型性および柔軟性を有するフィルムを用いることにより、離型層の形成工程を省略することができ、被接合体の表面に凹凸があっても凹凸に沿って配線導体を折曲形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、配線の自由度が高く、高密度実装が可能で、かつ省スペース化及びパッケージング工程の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1の実施の形態]
(ソケットの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置用のソケットを示す。同図中、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【0030】
このソケット1は、サブミクロンサイズで作製されたPLCCパッケージの半導体装置(図示せず)が着脱可能に装着される凹部11、及び凹部11内に形成された開口12を有した枠型の樹脂パッケージ10と、略逆L字形を成して凹部11の内側に設けられた複数の配線導体13とを備えている。
【0031】
凹部11は、樹脂パッケージ10の底部から内側へ突出する台座部11aを有し、この台座部11a上に上記半導体装置が装着される。
【0032】
複数の配線導体13は、帯状を成し、対向する2辺に設けられた第1,第2の配線群14A,14Bと、他の2辺に設けられた第3,第4の配線群14C,14Dとを構成する。第1〜第4の配線群14A〜14Dは、樹脂パッケージ10の上面から凹部11の内面に沿って開口12の内面に至るように布線されている。配線導体13は、導電性を有し、プレスによる折曲加工が容易な、材料からなる。このような材料としては、銅、銅合金等の銅系金属を用いることができる。なお、本実施の形態においては、各配線群は、1辺分が6本の配線導体13からなるものとしたが、任意の数にすることができる。
【0033】
(ソケットの製造方法)
次に、ソケット1の製造方法を、樹脂パッケージ10の作製と、ドナー基板の作製と、ソケット1の作製とに分けて説明する。
【0034】
(1)樹脂パッケージの作製
図2(a)〜(c)は、樹脂パッケージ10の作製工程を示す。まず、金型30とソケット用母材40を準備する。
【0035】
金型30は、図2(a)に示すように、樹脂パッケージ10の外形に相当する部分が空洞31になっているナノインプリント用の金型であり、樹脂パッケージ10の底面に相当する部分が開口されている。
【0036】
ソケット用母材40は、図2(a)に示すように、Si等からなる硬性の高い基材41上に、樹脂パッケージ10の母材となる樹脂部42を接着したものである。なお、基材41は、後述する常温接合の際に配線導体13が基材41の表面に接合しないように、予め表面処理を施しておくことが望ましい。表面処理が不可能な場合、樹脂パッケージ10を基材41からリリースする際に、切断可能な形状に設計しておく。
【0037】
樹脂部42は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができるが、
配線導体13の材料に応じて最適な材料を選択するのが高い接合強度が得られる点で好ましい。例えば、銅系金属からなる配線導体13に対しては、ポリイミド樹脂が好ましい。そして、樹脂部42の厚み(高さ)は、転写後の配線導体13の高低差以上の厚みにする。
【0038】
次に、図2(a)に示すように、金型30をソケット用母材40の上方に位置決めする。
【0039】
その後、図2(b)に示すように、金型30を下降させソケット用母材40の樹脂部42を押圧し、ナノインプリント技術によって成型する。ここで、ナノインプリント技術とは、金型に刻み込んだ寸法が数十nm〜数百nmの凹凸を基板上に塗布した樹脂材料に押し付けて金型の形状を転写する技術をいう。
【0040】
樹脂部42として、熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱硬化性樹脂をガラス転移点以上に熱し、金型30を押圧する。樹脂部42として、熱硬化性樹脂を用いる場合は、熱硬化性樹脂に金型30を押圧しながら硬化温度まで加熱保持して転写する。樹脂部42として、光硬化性樹脂を用いる場合は、光硬化性樹脂に金型30を押圧し、UV照射により硬化させて転写する。
【0041】
所定の時間が経過した後、図2(c)に示すように、金型30をソケット用母材40から引き離せば、図2(c)に示す形状の樹脂パッケージ10が得られる。
【0042】
(2)ドナー基板の作製
図3は、ドナー基板の構成を示し、(a)は、折曲加工前の第1,第2の配線群14A,14Bが形成されたドナー基板20Aの平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図、(c)は、折曲加工前の第3,第4の配線群14C,14Dが形成されたドナー基板20Bの平面図、(d)は、(c)のC−C線断面図である。
【0043】
ドナー基板20Aは、図3(a),(b)に示すように、基台となるSiウェハ21に弾性体22を接着し、弾性体22上に電鋳により第1,第2の配線群14A,14Bを形成して作製する。
【0044】
ドナー基板20Bは、図3(c),(d)に示すように、ドナー基板20Aと同様にして、基台となるSiウェハ21上に弾性体22を接着し、弾性体22上に電鋳により第3,第4の配線群14C,14Dを形成して作製する。
【0045】
弾性体22は、表面に設けられた配線導体13に対して離型層として機能し、かつ、弾性を有する材料、例えば、フッ化ゴム(具体的には、デュポン社製の「バイトン」)を用い、この表面に電鋳のための表面処理(脱脂・洗浄、表面粗化、触媒付与等)が施されている。離型層の機能とは、配線導体13と樹脂パッケージ10との接合強度よりも配線導体13と弾性体22との接合強度が低く、配線導体13を樹脂パッケージ10に転写可能な機能をいう。
【0046】
配線導体13は、銅系金属の無電解電鋳によって、弾性体22の表面にストライプ状に設けられている。
【0047】
(3)ソケットの作製
図4(a)〜(c)は、ソケット1の作製工程を示す。まず、図2(c)に示した基材41付きの樹脂パッケージ10と図3に示したドナー基板20A,20Bを図示しない真空チャンバに入れ、図4(a)に示すように、樹脂パッケージ10の基台41を図示しない下部ステージに固定し、ドナー基板20Aを図示しない上部ステージに固定し、ドナー基板20Aを樹脂パッケージ10上に位置決めする。次に、配線導体13及び樹脂パッケージ10の表面をFAB(Fast Atom Beam)処理により清浄化する。FAB処理とは、中性原子ビーム、イオンビーム等を高電圧で加速して接合面に照射し、接合面の酸化膜、不純物等を除去する処理をいう。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、所定の押圧力でドナー基板20Aを基材41に押圧する。すなわち、ドナー基板20Aの下面が基材41の上面に接触し、さらに弾性体22が変形するまでドナー基板20Aを下降させる。ドナー基板20Aの弾性体22は、下降する過程で樹脂パッケージ10の外形に応じて変形し、第1,第2の配線群14A,14Bの配線導体13は、樹脂パッケージ10の上面から凹部11の内面に沿って開口12の内面に密着し、常温接合される。
【0049】
所定の時間が経過した後、図4(c)に示すように、上部ステージを上昇させ、ドナー基板20Aを樹脂パッケージ10から引き離すと、第1,第2の配線群14A,14Bの配線導体13が、ドナー基板20Aから剥離されて樹脂パッケージ10に転写される。
【0050】
次に、第1,第2の配線群14A,14Bの配線導体13が接合済みの樹脂パッケージ10上にドナー基板20Bを位置決めし、図4の(a)〜(c)と同様の動作を実施する。この動作により、第3,第4の配線群14C,14Dの配線導体13がドナー基板20Bから樹脂パッケージ10に転写される。最終的に、基材41を除去することにより、図1に示す状態のソケット1が完成する。
【0051】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(イ)段差を有する複雑な形状の樹脂パッケージ10の表面に、弾性体22を用いたプレスにより第1〜第4の配線群14A〜14Dを設けることができるため、配線の自由度が高く、高密度実装及び省スペース化が可能になる。
(ロ)第1〜第4の配線群14A〜14Dが、2回に分けて一括して転写及び接合が行われるため、パッケージング工程の短縮化を図ることができる。また、樹脂パッケージ10の高さが低い場合は、配線導体13の長さが短くなるため、1枚の基板上に第1〜第4の配線群14A〜14Dを配置できるので、ドナー基板を1枚にすることができ、更に、パッケージング工程の短縮化を図ることができる。
(ハ)配線導体13の接合面に凹凸等があっても、弾性体22が変形して追従するため、自由度が高く、かつ非常に小さな回路実装が可能となる。例えば、従来、外形が25×25mm、最小ピッチは0.5mm程度であったが、本実施の形態によれば、外形を2.5×2.5mm、最小ピッチを0.05mmにすることができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置を示す。同図中、(a)は平面図、(b)は(a)D−D線断面図である。この半導体装置5は、図1に示したソケット1に装着することができるものであり、ベアチップ51と、ベアチップ51の片面に設けられた電極部としての複数のバンプ52と、複数のバンプ52に接続された第1〜第4の配線群14A〜14Dとを備えて構成されている。
【0053】
第1〜第4の配線群14A〜14Dの配線導体13は、ベアチップ51の上面及び側面に接合された状態で布線されている。即ち、配線導体13は、一端がバンプ52に接続され、他端はベアチップ51の側面の下縁まで及んでいる。
【0054】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置5の製造方法を、ドナー基板の作製と、半導体装置の作製とに分けて説明する。
【0055】
(1)ドナー基板の作製
図6は、ドナー基板の構成を示し、(a)は、折曲加工前の第1〜第4の配線群14A〜14Dが形成されたドナー基板60の平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
【0056】
ドナー基板60は、Siウェハ21に第1の実施の形態と同様の弾性体22を接着し、弾性体22上に電鋳により第1〜第4の配線群14A〜14Dを形成して作製する。
【0057】
第1〜第4の配線群14A〜14Dを構成する配線導体13は、銅系金属の無電解電鋳によって、弾性体22の表面にストライプ状に設けられ、バンプ52からベアチップ51の側面の下面に達する長さを有する。
【0058】
(2)半導体装置の作製
図7(a)〜(c)は、半導体装置5の作製工程を示す。まず、バンプ52付きのベアチップ51と図6に示したドナー基板60を図示しない真空チャンバに入れ、図7(a)に示すように、ベアチップ51をテーブル(下部ステージ)2に固定し、ドナー基板60を図示しない上部ステージに固定し、ドナー基板60をベアチップ51上に位置決めする。次に、配線導体13及びベアチップ51の表面をFABにより清浄化する。
【0059】
次に、ドナー基板60とベアチップ51とを所定の押圧力で押圧する。すなわち、図7(b)に示すように、ドナー基板60の下面がテーブル2の上面に接触し、さらに弾性体22が変形するまでドナー基板60を下降させる。ドナー基板60の弾性体22は、下降する過程でバンプ52およびベアチップ51の外形に応じて変形し、第1乃至第4の配線群14A〜14Dの配線導体13は、バンプ52の表面からベアチップ51の側面に沿って折曲変形し、バンプ52およびベアチップ51に常温接合される。
【0060】
所定の時間が経過した後、図7(c)に示すように、上部ステージを上昇させ、ドナー基板60をベアチップ51から引き離すと、第1〜第4の配線群14A〜14Dのそれぞれの配線導体13が、ドナー基板60から剥離されてベアチップ51に転写される。配線導体13が転写されたベアチップ51をテーブル2から分離することにより、図5に示す半導体装置5が完成する。
【0061】
(第2の実施の形態の効果)
上述した第2の実施の形態によれば、バンプ52付きのベアチップ51にドナー基板60をプレスするのみで、第1〜第4の配線群14A〜14Dを一斉にベアチップ51側に転写し、半導体装置5を完成させることができるため、パッケージング工程の大幅なスピードアップを図ることができる。
【0062】
[第3の実施の形態]
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置を示す。同図中、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。
【0063】
本実施の形態の半導体装置6は、第2の実施の形態において、第1〜第4の配線群14A〜14Dの先端部を更に実装面に沿って水平に所定長を延伸して延伸部13aを形成したものであり、その他の構成は第2の実施の形態と同様である。すなわち、この半導体装置6は、LOC(Lead On Chip)とQFJ(Quad Flat -J-leaded package)の両方のリード構造を併せ持ち、プリント基板等に実装した際、第1〜第4の配線群14A〜14Dの先端部(自由端)をハンダ付けできるように構成されている。この半導体装置6は、第2の実施の形態と同様に製造される。
【0064】
(第3の実施の形態の効果)
上述した第3の実施の形態によれば、配線導体13に実装面に沿う延伸部13aを設けたことにより、プリント基板等への実装に際して、第1〜第4の配線群14A〜14Dをプリント基板側の端子や導電パターンとのハンダ付けが容易になる。
【0065】
[第4の実施の形態]
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置を示す。同図中、(a)は正面図、(b)は平面図である。本実施の形態は、図8の第3の実施の形態に示した半導体装置6をプリント基板3に実装したものである。そして、別途用意したドナー基板(図示せず)から転写した接合用薄膜導体4により、プリント基板3上の基板配線層3aと第1〜第4の配線群14A〜14Dのそれぞれの配線導体13の端部とを常温接合により接続したものである。この実施の形態で用いるドナー基板としては、前記各実施の形態で用いたドナー基板と同様の構成になるが、配線導体13のパターンは1列になる。
【0066】
上述した第4の実施の形態によれば、接合用薄膜導体4により基板配線層3aと第1〜第4の配線群14A〜14Dの配線導体13とを接続する構成にしたため、例えば、半導体装置6を取り外して、交換或いは解析を行う場合、接合用薄膜導体4にカッターナイフ等によりノッチを入れるのみで、半導体装置6を簡単にプリント基板3から取り外すことができる。
【0067】
[第5の実施の形態]
図10は、本発明の第5の実施の形態に係るソケットの製造方法を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態において、弾性体22の樹脂パッケージ10に当接する部分に空洞部24を設けたドナー基板(ドナー)80を用いたものである。但し、本実施の形態では、樹脂パッケージ10は、開口12を有していない。
【0068】
まず、真空チャンバ内に基材41付きの樹脂パッケージ10およびドナー基板80を入れ、基材41を図示しない下部ステージに固定し、ドナー基板80を図示しない上部ステージに固定し、図10の(a)に示すように、ドナー基板80を樹脂パッケージ10の上方に位置決めする。次に、ドナー基板80及び樹脂パッケージ10の表面をFABにより清浄化する。
【0069】
次に、ドナー基板80を下降させ、配線導体13を樹脂パッケージ10の表面に加圧接触させる。これにより、配線導体13が樹脂パッケージ10の表面に常温接合する。
【0070】
このとき、図10の(b)に示すように、空洞部24は、樹脂パッケージ10の頂面で押し潰されて弾性体22の応力が均一化されるため、弾性体22の空洞部24間の中央部は、容易に樹脂パッケージ10の凹部11の底部に到達する。
【0071】
次に、図10の(c)に示すように、ドナー基板80を樹脂パッケージ10から引き離すと、第1〜第4の配線群14A〜14Dのそれぞれの配線導体13が、ドナー基板80から剥離されて、樹脂パッケージ10の表面に接合、転写される。以上により、ソケット1が完成する。なお、樹脂パッケージ10から引き離された弾性体22は、その弾性力によって押圧前の状態に復元し、従って空洞部24も元の形状に戻される。
【0072】
上述した第5の実施の形態によれば、ターゲット基板である樹脂パッケージ10の凹部11が深い場合でも、弾性体22の中央部が変形し易くなり、プレス加工を容易にすることができる。
【0073】
なお、第5の実施の形態において、空洞部24は、弾性体22に代えて、Siウェハ21側に設けることもできる。
【0074】
[第6の実施の形態]
図11は、本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置を示す。但し、同図では、配線導体の図示を省略している。この半導体装置7は、上面に接続部としてのパッド81を有する半導体チップ8と、半導体チップ8が接着剤によって接合され、半導体チップ8のパッド81と後述する配線導体によって接続される接続部としてのパッド91を有する樹脂やセラミック等の絶縁性材料からなるパッケージ9とを備え、パッド81上面とパッド91上面の間には、高低差L1が生じている。
る。
【0075】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置7の製造方法を、半導体チップ8とパッケージ9との接着、ドナーフィルムの作製と、半導体装置7の作製とに分けて説明する。
【0076】
(1)半導体チップとパッケージとの接着
図12は、半導体チップ8とパッケージ9の接着前の状態を示す斜視図である。半導体チップ8を図12に示すように接着剤によってパッケージ9に接着する。
【0077】
(2)ドナーフィルムの作製
図13は、ドナーフィルムの構成を示し、(a)は、折曲加工前の配線導体が形成されたドナーフィルムの斜視図、(b)は正面図である。
【0078】
ドナーフィルム100は、ドナーフィルム101と、ドナーフィルム101の下面に中心部から放射状に複数の配線導体25を形成して作製する。
【0079】
複数の配線導体25は、図11の半導体装置7のパッド81とパッケージ9のパッド91との間を接続するものである。
【0080】
フィルム101は、配線導体25に対する離型性及び柔軟性を備えた樹脂等によるものであり、その厚みは、図11(b)、図13(b)に示すように、パッド81,91間の高低差L1よりも大きい厚みL2(L2>L1)にしてある。
【0081】
(2)半導体装置の作製
図14(a)〜(c)は、半導体装置7の作製工程を示す。まず、パッケージ9付き半導体チップ8とドナーフィルム100を真空チャンバに入れ、図14(a)に示すように、パッケージ9を図示しない下部ステージに固定し、ドナーフィルム100を図示しない上部ステージに固定し、ドナーフィルム100を半導体チップ8上に位置決めする。次に、ドナーフィルム100、半導体チップ8及びパッケージ9の表面をFABにより清浄化する。
【0082】
次に、ドナーフィルム100を下降させ、図14(b)に示すように、配線導体25を半導体チップ8のパッド81とパッケージ9のパッド91に接触させ、折曲変形させる。なお、図14(b)では、フィルム101は透明体として図示している。
【0083】
所定の時間が経過した後、図14(c)に示すように、上部ステージを上昇させ、ドナーフィルム100をパッケージ9から引き離すと、配線導体25が一斉にドナーフィルム100から剥離してパッド81,91に転写され、パッド81,91に常温接合される。このとき、パッド81,91間の高低差L1よりも厚いL2の厚みを有するフィルム101および配線薄膜25が変形することにより、図13の(b)のように、高さの異なるパッド81,91間が接続される。以上により、図13の(c)のような半導体装置7が完成する。
【0084】
(第6の実施の形態の効果)
上述した第6の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(イ)半導体チップ8のパッド81とパッケージ9のパッド91と間の配線が同時に作製できるようになり、パッケージング工程の大幅なスピードアップを図ることができる。
(ロ)従来、1本単位で行っていたワイヤボンディングが、本実施の形態では、本数に関係なく一括して行えるため、大幅に時間を短縮することができる。
(ハ)薄膜導体25は、パッド間の導通が取れさえすればよいため、図15の(a),(b)のようなパッド間の空洞110の有無にかかわらず、フィルム101のヤング率で薄膜導体25の布線具合を制御することができる。また、バンプなしのボンディング(ウェッジボンダ)も同様の方法で可能である。
【0085】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、配線導体を転写するターゲットはソケットであるとしたが、ソケット以外の微小構造体であってもよい。
【0086】
また、配線導体は、曲面や段差を有する部位への接続のほか、平坦面への接合であってもよい。その具体例として、既に配線パターンが形成済みのプリント基板に配線導体を追加する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置用のソケットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る樹脂パッケージの作製工程を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係るドナー基板を示し、(a)は、折曲加工前の第1,第2の配線群が形成されたドナー基板の平面図、(b)は、(a)のB−B線断面図、(c)は、折曲加工前の第3,第4の配線群が形成されたドナー基板の平面図、(d)は、(c)のC−C線断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係るソケットの作製工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係るドナー基板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、第2の実施の形態に係る半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のG−G線断面図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の第5の実施の形態に係るソケットの作製工程を示す断面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は正面図である。
【図12】第6の実施の形態に係る半導体装置の主要部品を示す斜視図である。
【図13】第6の実施の形態に係るドナーフィルムを示し、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図14】(a)〜(c)は、第6の実施の形態に係る半導体装置の作製工程を示す図である。
【図15】(a)は、パッド間を接続する配線導体下部に空洞が生じていない場合を示す図、(b)は、パッド間を接続する配線導体下部に空洞が生じている場合を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ソケット
2 テーブル
3 プリント基板
3a 基板配線層
4 接合用薄膜導体
5 半導体装置
6 半導体装置
7 半導体装置
8 半導体チップ
9 パッケージ
10 樹脂パッケージ
11 凹部
11a 台座部
12 開口
13 配線導体
13a 延伸部
14A 第1の配線群
14B 第2の配線群
14C 第3の配線群
14D 第4の配線群
20A ドナー基板
20B ドナー基板
21 Siウェハ
22 弾性体
24 空洞部
25 配線導体
30 金型
40 ソケット用母材
41 基材
42 樹脂部
51 ベアチップ
52 バンプ
60,70,80 ドナー基板
81,91 パッド
100 ドナーフィルム
101 フィルム
101 樹脂パッケージ
110 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に所定のパターンの配線導体が形成されたドナー基板と、前記配線導体が接合される被接合体とを準備する準備工程と、
前記ドナー基板と前記被接合体とを加圧接触させ、前記ドナー基板上の前記配線導体と前記被接合体とを接合する接合工程と、
前記ドナー基板と前記被接合体とを離間させて前記ドナー基板上の前記配線導体を前記被接合体に転写する離間工程とを有することを特徴とする配線方法。
【請求項2】
前記接合工程は、常温接合によって行うことを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項3】
前記被接合体は、前記配線導体に接触する導体部を有する電気・電子部品が着脱可能な電気的接続部品であることを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項4】
前記電気的接続部品は、前記電気・電子部品が装着されるソケットであることを特徴とする請求項3に記載の配線方法。
【請求項5】
前記被接合体は、前記配線導体が接合される導電パターンを有する回路基板であることを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項6】
前記ドナー基板は、基板と、前記基板上に配置され、表面に前記配線導体が形成された弾性体とを備え、前記弾性体の厚みが、前記被接合体に転写される前記配線導体の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項7】
前記弾性体は、フッ化ゴムからなることを特徴とする請求項6に記載の配線方法。
【請求項8】
前記弾性体は、前記被接合体に加圧接触した際の応力が最も大きくなる部位を含む位置に、空洞部を有することを特徴とする請求項6に記載の配線方法。
【請求項9】
前記ドナー基板は、前記配線導体に対して離型性および柔軟性を有するフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項10】
前記被接合体は、上面に複数の電極を有する半導体チップであり、
前記配線導体は、一端が前記電極に接合され、その他の部位が前記半導体チップの表面に接合されたことを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項11】
前記配線導体の他端は、前記半導体チップの実装面に沿って延伸していることを特徴とする請求項10に記載の配線方法。
【請求項12】
前記電極は、バンプであることを特徴とする請求項10に記載の配線方法。
【請求項13】
使用時に剥離される配線導体が基板上に形成されたドナー基板であって、
前記配線導体は、前記配線導体と接合される被接合体との接合強度よりも低い強度で前記基板の表面に担持されていることを特徴とするドナー基板。
【請求項14】
前記基板は、前記配線導体との間に弾性体を備え、前記弾性体の厚みが、前記被接合体に転写される前記配線導体の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項13に記載のドナー基板。
【請求項15】
前記弾性体は、フッ化ゴムからなることを特徴とする請求項14に記載のドナー基板。
【請求項16】
前記弾性体は、前記被接合体に加圧接触した際の応力が最も大きくなる部位を含む位置に、空洞部を有することを特徴とする請求項14に記載のドナー基板。
【請求項17】
前記基板は、前記配線導体に対して離型性および柔軟性を有するフィルムからなることを特徴とする請求項13に記載のドナー基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−194414(P2007−194414A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11314(P2006−11314)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)常温接合を用いた3次元ナノ構造・システム形成技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】