配電線における送電方向判別装置
【課題】 変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流であるのかを正確に判別する配電線における送電方向判別装置を提供する。
【解決手段】 配電線12に設けた高圧センサー30に無停電時送電方向判別回路42を接続する。該判別回路42は相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内の場合、配電線12の送電方向を順潮流と判別し、範囲外の場合、逆潮流と判別する。逆潮流種別判別回路48により変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源15からの逆潮流かを、相電流変化分の位相差が0°〜45°の範囲内にあるか否かと、相電圧変化分と相電流変化分の位相差が−90°〜90°の範囲内にあるか否かとによって判別する。判別回路48の判別結果が分散型電源15からの逆潮流の場合、予め判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源15からの逆潮流でない場合は、ロックを行わないようにする。
【解決手段】 配電線12に設けた高圧センサー30に無停電時送電方向判別回路42を接続する。該判別回路42は相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内の場合、配電線12の送電方向を順潮流と判別し、範囲外の場合、逆潮流と判別する。逆潮流種別判別回路48により変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源15からの逆潮流かを、相電流変化分の位相差が0°〜45°の範囲内にあるか否かと、相電圧変化分と相電流変化分の位相差が−90°〜90°の範囲内にあるか否かとによって判別する。判別回路48の判別結果が分散型電源15からの逆潮流の場合、予め判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源15からの逆潮流でない場合は、ロックを行わないようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる送電方向変化か分散型電源からの逆潮流による送電方向の変化かを正確に判別することができる配電線における送電方向判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の配電線における送電方向判別装置として、特許文献1に示すものが提案されている。この判別装置は配電線の単相の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段とを備えている。前記送電方向判別手段は、前記相電圧と前記相電流の位相差が−70°〜110°の範囲内にある場合には、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が110°〜290°の範囲内にある場合には、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別するようになっている。
【0003】
上述した位相差の範囲「−70°〜110°」は次のような理由によって設定されたものである。第1に重負荷時には経験上から配電系統の負荷力率は65%、遅れ位相角50°になると考えられている。又、軽負荷時には進相コンデンサの影響から配電系統の進み位相角が90°近くになる。この2つの理由と、送電方向判別装置側の温度特性等による誤差を遅れと進み共に各位相角20°を考慮して、−70°〜110°の範囲に設定されている。
【特許文献1】特開平3−11922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の送電方向判別装置は、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、その逆潮流によって系統の変電所の切り換えをしない場合においても、潮流方向を判定する位相差−70°〜110°の範囲を超えてしまう場合があることが判明した。このため、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流による送電方向の切り換えであるのかを正確に判別することができなかった。従って、例えば地絡事故が生じてから変電所の遮断器をトリップしない無停電時における地絡事故方向判別装置の送電方向判別装置として用いる場合に信頼性に欠けるという問題があった。すなわち、前記位相差−70°〜110°の範囲とした場合、分散型電源と、配電系統及び分散型電源からの双方の供給によって賄われている負荷との間に設置されている送電方向判別装置が潮流方向を誤判定するおそれがあった。この点を図2(a)に基づいて説明する。
【0005】
送電方向判別装置は、図2(a)において、相電圧と相電流の位相差が−70°〜110°の範囲内の時に順潮流(K→L)、範囲外の時に逆潮流(L→K)と判断するようになっているものとする。分散型電源の連系による逆潮流の場合、例えば負荷の大きさが700kVAで分散型電源の出力が300kWの場合には、分散型電源の出力が負荷が消費する容量を下回っているため、変電所側から電源の供給を受ける。このため、相電圧と相電流の位相差のベクトルが矢印Y1で示されるように順潮流の範囲に現われるので問題はない。しかし、負荷の大きさが変化せず、分散型電源が700kWになり、分散型電源の出力が負荷の消費する容量と同等となった場合、変電所側からの供給を受けないために、図2(a)において、相電圧と相電流の位相差のベクトルが矢印Y2で示されるように位相差−90〜−70°の範囲に現れる。このため、実際には順潮流と判断しなければならない場合に逆潮流と判断してしまうことになる。
【0006】
上述の課題を発見したのは、本願発明者が新規な無停電時地絡方向判別装置を開発する過程で、この判別装置に従来と同様の送電方向判別装置を用いたのでは判別精度が低下するという問題に直面したからである。
【0007】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる配電線における送電方向判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配電線の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、同検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを判別するための状態変化判別手段とを備え、前記状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別する逆潮流種別判別手段と、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流である場合には、送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源からの逆潮流でない場合には、ロックを行わないようにする機能を有する送電方向補正手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段であって、該送電方向判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別する機能とを備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の変化分を演算するとともに、それらの演算結果が所定の設定範囲を超えたか否かを判定する相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段であることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、請求項2に記載の前記送電方向判別手段と、請求項3に記載の相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は4において、前記送電方向判別手段は、該送電方向判別手段により判別された送電方向が予め設定された設定時間を継続して変化したか否かを判定する継続時間判定機能を備え、この判定結果によって前記逆潮流種別判別手段の処理動作へ移行するか否かを判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は5において、前記逆潮流種別判別手段は、前記送電方向判別手段により送電方向が変化したと判別された場合、相電流位相差演算手段による演算処理を行い、その演算結果が相電流位相範囲判定手段により設定値を超えたと判定された場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段の演算結果に基づいて、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化分の位相差が所定の設定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が設定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定するとともに、前記相電流位相差演算手段の演算結果が前記相電流位相範囲判定手段により設定値を超えていないと判定された場合には、分散型電源からの逆潮流と判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項3において、前記逆潮流種別判別手段は、前記相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段により判別された相電圧及び相電流の変化分が設定値を超えた場合には、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分と電流変化分の位相差が所定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が所定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は3において、前記送電方向補正手段は、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流であり、前記送電方向判別手段により判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックしている状態において、再度前記送電方向判別手段により判別された送電方向が変化前の状態に戻った場合には、前記ロックを解除するロック解除機能を備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、電源側である変電所の方向を設定するための変電所方向設定手段を備えていることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項6において、前記相電流位相範囲判定手段の所定位相範囲は、0°〜45°であり、前記変化分位相範囲判定手段の所定位相範囲は、−90°〜90°に設定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを状態変化判別手段により判別し、該状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、逆潮流種別判別手段により変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別することができる。このため、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した配電線における事故方向判別装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1に示すように、変電所11Aと変電所11Bは配電線12によって繋がれており、その途中に遮断器13Aが設けられ、この遮断器13Aには転送遮断装置14Aが設けられている。そして、変電所11AのZCT(零相変流器:図示略)及び配電線12に設けたGPT(接地形計器用変圧器:図示略)が配電線12に生じる一線地絡事故の零相電流と零相電圧を検出した時に地絡継電器が動作して前記遮断器13Aをトリップし、変電所11Aから配電線12を切り離すようになっている。前記配電線12の他端には別の変電所11B、遮断器13B、保護継電器14Bが接続され、必要に応じて負荷20へ供給する電力を切り換えることが可能な構成になっている。前記配電線12の途中には分散型電源15が配設され、負荷20に電力を供給するようになっている。分散型電源15には遮断器13C及び転送遮断装置14Cが設けられ、転送遮断装置14Aの信号に基づいて、転送遮断装置14Cが動作する。すると、所定時間後に分散型電源15を遮断するようになっている。前記配電線12の途中には第1表示器21及び第2表示器22が図示しない区分開閉器と対応して装着されている。これらの第1表示器21及び第2表示器22は同様に構成されているので、図1において一つの第1表示器21について説明する。
【0019】
配電線12のR相、S相及びT相には高圧センサー30がそれぞれ設けられている。この高圧センサー30は、各相の相電圧を検出する結合コンデンサ31a,31b,31c、変流器32a,32b,32cにより構成されている。前記結合コンデンサ31a,31b,31cには三相の配電線からの相電圧信号Vr,Vs,Vtに基づいて零相電圧信号V0を出力するための電圧信号処理回路34が接続されている。又、前記変流器32a,32b,32cには、三相の配電線からの相電流信号Ir,Is,Itに基づいて零相電流信号I0を出力するための電流信号処理回路35が接続されている。
【0020】
次に、地絡事故が発生し遮断器13Aが作動する「停電有モード」において地絡事故の判定表示を行うための構成について説明する。
前記結合コンデンサ31a及び変流器32aには停電時の送電方向判別手段としての停電時送電方向判別回路36が並列に接続されている。前記停電時送電方向判別回路36は、常時継続してR相の相電圧Vrと相電流Irの位相差に基づいてR相の配電線の送電方向を判別して記憶するようになっている。この実施形態では、停電時送電方向判別回路36は図2(a)に示すように、R相電圧の位相角0°を基準に遅れ−70°〜進み110°の範囲内に相電流Irの位相が有る場合に、順潮流(K→L)と判別し、無い場合に逆潮流(L→K)と判別する。
【0021】
前記電圧信号処理回路34と電流信号処理回路35には地絡検出手段としての地絡検出回路38が接続され、零相電圧V0の電圧値及び零相電流I0の電流値に基づいて地絡事故を検出するようになっている。例えば、6kVの配電線の場合、零相電流のレベルが100mAに、零相電圧のレベルが380Vに供に達した時に地絡事故であると判定するようになっている。前記停電時送電方向判別回路36及び地絡検出回路38には停電時地絡方向判定回路39が接続されている。そして、地絡事故が検出された時、前記送電方向と前記零相電圧V0及び零相電流I0の位相差に基づいて前記地絡事故の方向を判定するようになっている。この実施形態では、図3に示すように、零相電圧の位相角0°を基準に遅れ−30°〜進み150°の範囲内に零相電流I0の位相が有り、かつ、送電方向が順潮流(K→L)と判別されている時に、負荷側の地絡事故と判定する。又、前記位相−30°〜150°の範囲内に零相電流I0の位相が無い状態で、かつ逆潮流(L→K)と判別されている時にも、負荷側の地絡事故と判定する。上述した判定結果は停電時地絡方向判定回路39に設けた記憶手段(図示略)により記憶される。前記停電時地絡方向判定回路39には判定された地絡事故の方向が負荷側である場合にその地絡事故を表示するための表示灯41が接続されている。
【0022】
次に、零相電圧V0及び零相電流I0が発生しても遮断器13Aが作動しない「停電無モード」において零相電圧V0及び零相電流I0が発生した区間の判定表示を行うための構成について説明する。
【0023】
前記結合コンデンサ31a及び変流器32aには常時送電方向を判別して記憶する無停電時送電方向判別手段及び状態変化判別手段としての無停電時送電方向判別回路42が接続されている。又、前記無停電時送電方向判別回路42には、変電所方向設定手段としての変電所方向設定スイッチ43が接続されている。前記変電所方向設定スイッチ43は、配電線12に前記分散型電源15からの逆潮流がある状態で、第1表示器21及び第2表示器22を設置する場合において、前記変電所11A又は変電所11Bの方向を確定するために設けられている。そして、このスイッチ43によって、設定された変電所方向を基準として前記無停電時送電方向判別回路42はR相の相電圧Vrと相電流Irの位相差の基準位相を決定するようになっている。この実施形態では前記変電所方向設定スイッチ43にてK側に変電所があると設定されている。この設定条件においては、図2(b)に示すように、R相電圧の位相角0°を基準に遅れ−90°〜進み90°の範囲内に相電流Irの位相が有る場合に、前記無停電時送電方向判別回路42が順潮流(K→L)と判別し、無い場合には、つまり90°〜270°(−90°)の場合に逆潮流(L→K)と判別する。
【0024】
図1に示すように前記結合コンデンサ31a、変流器32a及び無停電時送電方向判別回路42には相電流位相差演算手段としての相電流位相差変化分の相電流位相差演算回路44が接続されている。この相電流位相差演算回路44によって送電方向が逆潮流に切り換わった時点におけるその前後の相電流の位相差を演算するようになっている。前記相電流位相差演算回路44には相電流位相範囲判定手段としての相電流位相範囲判定回路45が接続され、前記相電流位相差演算回路44によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(0°〜45°)内にあるか否かを判定するようになっている。更に前記相電流位相差演算回路44によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(0°〜45°)外であった場合に用いるための相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段としての相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46が接続されている。この相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46によって送電方向が逆潮流に切り換わった時点におけるその前後の相電圧変化分と相電流変化分の位相差を演算するようになっている。前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46には変化分位相範囲判定手段としての変化分位相範囲判定回路47が接続され、前記位相差演算回路46によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(−90°〜90°)内にあるか否かを判定するようになっている。
【0025】
前記無停電時送電方向判別回路42、相電流位相範囲判定回路45及び前記変化分位相範囲判定回路47には送電方向補正手段としての送電方向補正回路49が接続されている。そして、相電流位相範囲判定回路45及び変化分位相範囲判定回路47の判定結果に基づいて、後述するように送電方向の補正を行うようになっている。前記地絡検出回路38と送電方向補正回路49には無停電時地絡方向判定手段としての無停電時地絡方向判定回路50が接続されている。そして、地絡事故が検出された時、送電方向補正回路49により補正された送電方向と、零相電圧V0と零相電流I0の位相差とに基づいて予め設定された変電所11Aを基準とした負荷側地絡事故か否かを判定するようになっている。無停電時地絡方向判定回路50は前記表示灯41に接続されている。
【0026】
この実施形態では、前記相電流位相差演算回路44と前記相電流位相範囲判定回路45及び前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46と変化分位相範囲判定回路47によって逆潮流種別判別手段としての逆潮流種別判別回路48が構成されている。
【0027】
次に、上述した各回路44、45,46,47,49,50の機能について説明する。
前記相電流位相差演算回路44及び相電流位相範囲判定回路45は、分散型電源15からの逆潮流であるのか、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流なのかを判定する。相電流位相差演算回路44は無停電時送電方向判別回路42からの判別信号(逆潮流の種別は不明)が出力された時、その前後における相電流変化分の位相差Δδを演算する。そして、送電方向が変化した前後の相電流変化分の位相差Δδが図4に示す0°〜45°の所定位相範囲内の場合には、分散型電源15からの逆潮流と判定する。又、前記位相差Δδが0°〜45°の所定位相範囲外の場合には、前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46及び変化分位相範囲判定回路47による判定結果から、分散型電源15からの逆潮流であるのか、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流であるのかを判定する。
【0028】
前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46は、無停電時送電方向判別回路42からの判別信号(逆潮流の種別は不明)が出力された時、その前後における相電圧Vrの変化分ΔVrと、相電流Irの変化分ΔIrとの位相差を演算する。そして、電圧変化分ΔVrが例えば0°にある時の電流変化分ΔIrとの位相差ΔVr−ΔIrが図5に示す−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する。又、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定するようにしている。
【0029】
ところで、変電所11A,11Bの切り換え操作を行う手順の一つであるループ点開閉器(図示略)を投入する場合には、ループ点開閉器の左右の電圧位相差が極力近い状態になった時に行われるように電力会社での運用基準が規定されている。又、分散型電源15においても配電系統へ連系する場合には配電系統の電圧を適正値に維持する必要がある。これらのことから主に自動同期投入装置等を用いて配電系統の電圧位相に分散型電源15の電圧位相を合わせて投入する操作が行われているため、変電所11A,11Bの切り換えもしくは分散型電源15の連系が行われた場合についても電圧には顕著な位相変化が現れない。しかしながら、電流については電圧位相のように同期を取ることを行わないため、送電方向が変化した前後において相電流の位相角に変化が現れる。この時、分散型電源15からの逆潮流では、相電流の位相変化が緩やかであり相電流変化分の位相差Δδは小さくなる。これは、分散型電源15の電源容量が変電所11A(11B)の電源容量に比べ当然のことながら小さいため、連系する配電系統に変電所11A(11B)から供給されている相電流に追従するようにして分散型電源15からの電流は除々に増えるように配電系統へ供給されていくためである。又、変電所11A(11B)の切り換えによる逆潮流では、相電流の位相変化が早く相電流変化分の位相差Δδは大きくなる。これは、切り換えをする変電所11A(11B)の電源容量もその配電系統に供給するために十分な電源容量を備えているため、供給する配電系統に既に流れている相電流に追従せずに電流位相が変化するためである。
【0030】
但し、分散型電源15が連系されている状態の配電系統において、その配電系統から分散型電源15の出力に匹敵するような大容量負荷が脱落した場合には、相電流の位相変化が早く相電流変化分の位相差Δδは大きくなる。
【0031】
従って、相電流変化分の位相差Δδが大きくなった場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流か分散型電源15による逆潮流かを区別するため、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分と相電流変化分の位相差を判断条件に加え、逆潮流の種別を判断することとした。
【0032】
前記相電流変化分の位相差Δδの判定基準となる所定位相範囲を、前述の0°〜45°に設定したのは以下の理由による。即ち、実配電線において、試験して収集したデータをもとに設定したものであって、相電流変化分の位相差Δδが0°〜45°の範囲内にある場合に分散型電源15からの逆潮流と判定しても誤判定にならないことが判明し、それ以外の場合には逆潮流の種別の判定が難しいことが判明したからである。
【0033】
次に、相電流変化分の位相差Δδが大きくなった場合の次の判断条件として用いられる送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分と相電流変化分の位相差と、その位相差に基づいて逆潮流の種別を更に判定する理論を以下に順次説明する。
【0034】
変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流は、図6(a)〜(c)に示す変電所11A,11Bの切り換え時の手順により起こり、切り換え前の状態を示す図6(a)はループ点開閉器(図示略)が開放され、区分開閉器16Aが閉じられ、かつ区分開閉器16Bが開かれて、変電所11Aのみが電源側となっている。ループ状態を示す図6(b)はループ点開閉器(図示略)が投入され、両区分開閉器16A,16Bが閉じられ、変電所11A, 11Bがともに電源側となっている。更に、切り換え後を示す図6(c)はループ点開閉器(図示略)が開放され、区分開閉器16Aが開かれ、かつ区分開閉器16Bが閉じられ、変電所11Bが電源側に切り換えられている。図6(c)に示す変電所11A,11Bの切り換え後の破線部分の等価回路は、図7のように示される。
【0035】
ここで、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIは、図6(c)に示す切り換え後の状態から図6(b)に示すループ状態を引くことによって得られ、次の(1)〜(3)式によって演算される。
<ループ>
【0036】
【数1】
<切り換え後>
【0037】
【数2】
<切り換え後>−<ループ>
【0038】
【数3】
変電所11A,11Bの切り換えによる相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θsは、第1表示器21から切り換えられた変電所11B側を見たインピーダンス(R+jX)によって決定される。このインピーダンスのうち、抵抗分Rは正(R>0)であるため、相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θsは、次の不等式(4)のとおりとなり、|π/2|以内となる。
【0039】
【数4】
図8(a)は分散型電源15からの逆潮流が無い状態を示す。この状態から図8(b)に示すように分散型電源15からの逆潮流が有る状態に変化した時の等価回路は、図9のように示される。
【0040】
ここで、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIは、分散型電源15からの逆潮有の状態から逆潮無の状態を引くことによって得られ、次の(5)〜(7)式によって演算される。
<逆潮無>
【0041】
【数5】
<逆潮有>
【0042】
【数6】
<逆潮有>−<逆潮無>
【0043】
【数7】
分散型電源15からの逆潮流の有無による相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θgは、第1表示器21から変電所11A側を見たインピーダンス(R+jX)によって決定される。このインピーダンスのうち、抵抗分Rは正(R>0)であるため、相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θgは、次の不等式(8)のとおりとなり、|π/2|以上となる。
【0044】
【数8】
よって、電圧変化分ΔVrが0°にある時の電流変化分ΔIrとの位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判定でき、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定できる。
【0045】
そして、相電流位相範囲判定回路45又は変化分位相範囲判定回路47により分散型電源15からの逆潮流と判定された場合には、送電方向補正回路49により、送電方向判別回路42が判別記憶していた変化前の送電方向のままロックし、予め設定された変電所11Aを基準とした正しい送電方向を維持する。なお、変化分位相範囲判定回路47によって変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流と判定された場合には、変電所を基準とした正しい送電方向であるため変化前の送電方向を維持するためのロックは行われない。更に、無停電時地絡方向判定回路50は、送電方向補正回路49によって補正が行われた適正な送電方向と地絡検出回路38により予め判定記憶されていた地絡方向とに基づいて無停電時地絡方向判定回路50において負荷側地絡の有無を判定する。
【0046】
次に、前記のように構成した配電線の地絡方向判別装置についてその動作を説明する。
(停電有モードの場合)
配電線12が停電する状態において動作する「停電有モード」の動作は従来の動作と同様であるため詳しい説明を省略する。概要を述べると停電時送電方向判別回路36、地絡検出回路38及び停電時地絡方向判定回路39により負荷側地絡の有無が判定記憶され、表示灯41により表示される。
(停電無モードの場合)
図10及び図11は、配電系統に分散型電源15が連系され、変電所11A,11Bの切り換えが行われず、分散型電源15による逆潮流により送電方向が変化した場合の送電方向の判別と、その補正動作及び地絡事故時の第1表示器21,第2表示器22の変電所11Aを基準とした負荷側地絡の表示動作を示すタイミングチャートである。又、図12は分散型電源15が連系されていないか解列されていて、変電所11Aが変電所11Bに切り換えられた場合の図10及び図11と同様の表示動作を示すタイミングチャートである。
【0047】
次に、図10及び図11に関係する図13のフローチャートにより送電方向の補正動作を説明する。
図13のステップS1では変電所方向設定スイッチ43によって変電所方向がK側(変電所11A)にセットされる。ステップS2において、無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。ステップS3において、同じく前記送電方向判別回路42によって送電方向が1秒間継続して変化したか否かが判別され、Yesの場合にはステップS4において相電流位相差演算回路44により送電方向変化前後の相電流変化分の位相差Δδの演算が行われる。そして、ステップS5おいて変化前後の相電流変化分の位相差Δδが45°より大きいか否かが相電流位相範囲判定回路45によって判定される。
【0048】
なお、ステップS5では分散型電源15からの逆潮流か否かが判断され、No、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(K→L)と記憶(セット)される。
【0049】
一方、前述のステップS5において、Yesと判断された場合にはステップS6において相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46により送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差∠(ΔV−ΔI)の演算が行われる。そして、ステップS7において送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差の絶対値| ∠(ΔV−ΔI)| が90°以上か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定される。即ちステップS7によって、最終的に変電所の切り換えによる逆潮流か、分散型電源15からの逆潮流かが判断され、Yes、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、前述したように送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(K→L)として記憶(セット)される。そして、ステップS10において、無停電時送電方向判別回路42により常時送電方向の判別が行われる。ステップS11において、同じく無停電時送電方向判別回路42により送電方向が1秒間継続して変化前の送電方向へ戻ったか否かが判別され、Yesの場合には、ステップS13において、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている変化前の送電方向を維持するためのロックと、順潮流(K→L)の記憶(セット)が解除され、ステップS2において、再び無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。
【0050】
一方、ステップS11において、Noと判定された場合、ステップS12において、変化前後の相電流変化分ΔIの位相差Δδが30°より大きく、かつ変化前後の相電流変化分ΔIの大きさ(電流値)が5A(アンペア)より大きいかを相電流位相範囲判定回路45によって判定し、Yesの場合には、ステップS14において、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている変化前の送電方向を維持するためのロックの解除と、順潮流(K→L)の記憶(セット)が解除され、ステップS6に戻る。一方、ステップS12において、Noと判定された場合には、ステップS10に戻る。
【0051】
一方、前述のステップS7において、Noと判定された場合、つまり変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判断された場合には、ステップS9において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることなく送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が逆潮流(L→K)として記憶(セット)され、その後、ステップS2において、無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。
【0052】
図13に示すフローチャートにより、結論として、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流の場合には、潮流方向は潮流変化後のままでロックする補正が行われず、分散型電源15による逆潮流の場合には潮流方向は変化前の送電方向のままロックされることで、補正が行われることになる。
【0053】
図14は、ステップS1において変電所方向設定スイッチ43によって変電所方向がL側にセットされた場合を示し、図13の動作と同様であるため詳しい説明を省略する。異なる箇所の概要を述べるとステップS7において送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差の絶対値| ∠(ΔV−ΔI)| が90°以下か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定され、Yes、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(L→K)として記憶(セット)される。一方、ステップS7において、Noと判定された場合、つまり変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判断された場合には、ステップS9において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることなく送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が逆潮流(K→L)として記憶(セット)される。
【0054】
次に、上述した送電方向の補正動作と連係して行われる負荷側地絡事故の表示動作を図15のフローチャートに基づいて説明する。
図15のステップS1において地絡検出回路38により地絡事故が発生したか否かが検出され、ステップS2において同じく地絡検出回路38により零相電圧と零相電流の演算が行われる。次にステップS3において図13もしくは図14のフローチャートに基づいて行われた処理において送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている送電方向が無停電時地絡方向判定回路50によって順潮流( K→L) か否かが判断される。Yesの場合にはステップS2において演算した結果、つまり零相電圧と零相電流の位相差が−30°〜150°の位相範囲内の場合には、ステップS4において無停電時地絡方向判定回路50によって負荷側地絡(K→L)と判定し、零相電圧と零相電流の位相差が上記位相範囲外の場合には、電源側地絡(L→K)と判定する。このステップS4においてYesと判断された場合には、ステップS5で表示灯41により負荷側地絡事故の表示が行われる。
【0055】
一方、ステップS3においてNoと判断された場合には、ステップS6において地絡発生位相方向は負荷側地絡(L→K)か否かが無停電時地絡方向判定回路50によって判断され、Yesの場合には、ステップS5において負荷側地絡事故が表示される。又、ステップS6においてNoと判断された場合には、ステップS7に移行し、負荷側地絡事故を表示しない。更に、ステップS4においてNoと判断された場合にも、ステップS7へ移行する。
【0056】
ここで、無停電時送電方向判別回路42の潮流方向を判定する位相範囲を−90°〜90°の範囲に設定した理由を以下に説明する。
分散型電源15からの逆潮流が及ぶ場合と、変電所11A,11Bの切り換え時には有効電力が変化する。有効電力Pは、相電圧V、相電流I、相電圧V及び相電流Iの力率角θとすると、次式で示される。
【0057】
P=3V・Icosθ
上式のcosθは90°もしくは−90°で0となり、θ<90°→θ>−90°又はθ>−90°→θ<90°には、プラス→マイナスの値となり、極性が変化することから判定処理上において明確に潮流方向が変化することが捉えられるので、−90°〜90°の範囲に設定した。又、無停電時送電方向判別回路42の記憶媒体には−90°〜90°の位相範囲であった場合には順潮流(K→L)と記憶(セット)され、それ以外は逆潮流(L→K)と記憶(セット)される。
【0058】
次に、無停電時地絡方向判定回路50によって、変電所を基準とした負荷側地絡を判定する動作を更に説明する。
相電流位相差演算回路44及び相電流位相範囲判定回路45と、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46及び変化分位相範囲判定回路47とにおいてそれぞれ演算が行われる。そして、無停電時地絡方向判定回路50において変電所11Aから変電所11Bの切り換え時には送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化した変電所11B方向と、地絡方向とのアンド条件をもって変電所11Bを基準とした負荷側地絡か否かを判定する。反対に、分散型電源15からの逆潮流の場合には、送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化する前の変電所11A方向としてロックされた送電方向と、地絡方向とのアンド条件をもって変電所11Aを基準とした負荷側地絡か否かを判定する。
【0059】
一例として、分散型電源15の連系によって、有効電力の極性が変化するのは、分散型電源15と該分散型電源15の逆潮流のみによって賄われている負荷20との間に設置されている第2表示器22であって、逆潮流(L→K) を示す範囲に入るからである。一方、第1表示器21については、分散型電源15の潮流が及ばない位置にあり、変電所からの供給によって賄われているため分散型電源15が連系されている場合においても順潮流(K→L) を示す範囲に入り極性は変化せず、分散型電源15からの逆潮流が及んでいるか否かを判別することができる。その後の処理として第2表示器22の送電方向は補正され、送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化する前の変電所方向をロックした送電方向と地絡方向とのアンド条件をもって変電所を基準とした負荷側地絡を判定する。第1表示器21の送電方向は送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化したままの変電所方向をロックしない送電方向と地絡方向とのアンド条件をもって変電所を基準とした負荷側地絡を判定する。
【0060】
上記実施形態の配電線における事故方向判別装置によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記相電圧Vrと相電流Irの位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線12の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧Vrと相電流Irの位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線12の送電方向を逆潮流と判別するようにした。又、相電流位相差演算回路44と相電流位相範囲判定回路45及び相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46と変化分位相範囲判定回路47とからなる逆潮流種別判別回路48を設けた。このため、配電系統に分散型電源15が連系されている場合に、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源15からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、停電無モードにおいて、無停電時送電方向判別回路42の判別結果に基づいて、分散型電源15が連系され、送電方向が変化した場合に、相電流位相差演算回路44により相電流変化分の位相差Δδの演算が行われ、送電方向変化前後の位相差が0°〜45°の範囲内か否かが相電流位相範囲判定回路45により判定され、変化前後の位相差が0°〜45°の範囲内の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定され、一方、変化前後の位相差が0°〜45°の範囲外の場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46により電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差ΔVr−ΔIrの演算が行われる。そして、変化前後の位相差が−90°〜90°の範囲内か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定され、電圧変化分ΔVrと電流変化分ΔIrの位相差ΔVr−ΔIrが図5に示す位相−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判定する。又、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の位相範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定するようにしている。
【0062】
更に、送電方向変化後の送電方向が順潮流(K→L)か否かが送電方向補正回路49に記憶(セット)される。この記憶(セット)された送電方向の補正結果に基づいて無停電時地絡方向判定回路50により負荷側地絡の判定が行われる。従って、無停電時において送電方向が変化しても負荷側地絡か否かを正確に判定することができる。
【0063】
次に、この発明の別の実施形態を図16〜図18に基づいて説明する。図16は送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図、図17,18は図16の回路図に基づく処理動作のフローチャートである。この別の実施形態においては、図16に示すように、前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46の上流側に相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段としての相電圧変化分・相電流変化分演算判定回路51を接続している。この演算判定回路51は、相電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIが設定値を超えたか否かを判断し、かつ相電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差を演算する機能を備えている。
【0064】
そして、前述した実施形態の図13に示すステップS3において、Noと判断された場合に、図17に示すステップS15〜S17の処理を行うようにしたものである。ステップS15において、前記演算判定回路51によって相電圧と相電流の電圧変化分ΔVが設定値(例えば3V)、電流変化分ΔIが設定値(例えば3A)を超えたか否かが判断され、Yesの場合には、ステップS16において、前記位相差演算回路46によって相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差∠ΔV−ΔIが演算される。次に、ステップS17において、演算された位相差∠ΔV−ΔIが所定位相角(90°)以上か否かが判定されるとともに、この判定結果が予め設定された設定回数を超えたか否かがカウントされる。そして、ステップS17において、Yesと判断された場合には、分散型電源15からの逆潮流と判定し、ステップS8に移行する。反対に、ステップS17において、Noと判断された場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定し、ステップS9に移行する。
【0065】
上述したステップS15〜S17を設けた理由を以下に説明する。
ステップS3において送電方向が1秒間継続して変化した場合には、大方の場合において送電方向が変化したことを判定することができる。しかし、レアケースにおいては、設定された1秒以下の場合においても変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と分散型電源15からの逆潮流の場合が考えられる。すなわち、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えの場合は、例えば変電所11Bからの潮流が分散型電源15の出力の大小によって第1表示器21へ到達したりしなかったりするため、分散型電源15の出力の大小が1秒以内に変動する場合において短時間(1秒以下)に送電方向が切り換わることがある。又、分散型電源15からの逆潮流の場合は、例えば第1表示器21が分散型電源15の連系点と負荷20との間に設置されている場合において、分散型電源15の出力変動ないしは負荷20の電力消費の変化によって短時間(1秒以下)に送電方向が切り換わることがある。従って、所定設定時間の1秒以下の場合においても変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流か分散型電源15からの逆潮流かを判別することにより判別精度を向上することができる。
【0066】
次に、ステップS17において位相差が90°以上となる回数が設定回数を超えたか否かを判定する理由を以下に説明する。
ステップS3でNoとなった場合にはステップS15において電圧変化分ΔVが3V、電流変化分ΔIが3Aを超えるか否かという位相以外の電圧及び電流を判別要素として用いているため、位相差が一定でない状態での相電圧及び相電流から変化分位相範囲判定回路47を用いて位相差ΔV−ΔIが90°以上か否かを演算することとなる。そのために設定回数以上の変化があったか否かを確認することとした。確認する理由としては、ステップS3において送電方向が1秒間継続しておらず、短時間に位相が変化している状態の相電圧及び相電流から位相差∠ΔV−ΔIを判別しようとするために、判別する所定判別時間内(例えば本実施例では変化前後各40ms)において、判定精度を向上するために設定回数を定め、多い回数の条件をセットするようにした。なお、ステップ3において、Yesの場合には送電方向が1秒間継続しているためステップS7において位相差∠ΔV−ΔIが変化することは無いが前述したステップS17と同様の処理を行なってもよい。
【0067】
図18は変電所方向がL側にセットされた場合のフローチャートである。この処理動作は図17の変電所方向がK側にセットされた場合の処理動作のうちステップS7と、S17の判定において所定の設定範囲内であるか否かが逆となる。又、ステップS8,S9においても変電所方向をロックするしないの基準が逆となるが、その他の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
【0068】
次に、この発明のさらに別の実施形態を図19〜図21について説明する。
図19は送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図、図20,21は図16の回路図に基づく処理動作のフローチャートである。図19のブロック回路においては、前記無停電時送電方向判別回路42、位相差演算回路44、相電流位相範囲判定回路45が省略され、前記演算回路46の前に前記演算判定回路51が接続されている。又、この演算判定回路51には前記変電所方向設定スイッチ43が接続されている。
【0069】
この実施形態においては、図20に示すように変電所方向をK側にセットし、その後、図17において説明したステップS15,S16,S17と同様のステップS2,S3,S4に移行する。さらに、前述した図17のステップS8〜S14と同様のステップS5〜S11に移行する。
【0070】
図20においては、図17に示す前述したステップS2〜S7が省略されている。又、図20の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
図21は図20のステップS1において、変電所をL側にセットした場合のフローチャートであって、この処理動作は図20の変電所方向がK側にセットされた場合の処理動作のうちステップS4の判定において所定の設定範囲内であるか否かが逆となる。又、ステップS5,S6においても変電所方向をロックするしないの基準が逆となるが、その他の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
【0071】
この別例においては、配電線に分散型電源15の出力の大小及び負荷20の変動によって、送電方向が一秒間継続して変化しない状態が多く現れる配電系統に用いることができ、回路構成が簡素化されているので、事故方向判別装置の構成を簡素化することができる。
【0072】
なお、前記実施形態は以下のように変更して具体化することができる。
○ 前記変電所方向設定スイッチ43を省略してもよい。この場合には配電線12を変電所11Aからの潮流のみの状態にしておいて、第1及び第2表示器21,22を設置する必要がある。
【0073】
○ 送電方向補正回路49からの信号を前記表示灯41に入力し、この表示灯41により変電所の切り換えによる逆潮流の有無と、分散型電源15からの逆潮流の有無とを表示するようにしてもよい。
【0074】
○ 前記相電流位相範囲判定回路45の所定位相範囲を、0°〜45°に代えて、0°〜40°又は0°〜50°に設定してもよい。
○ 前述した第1表示器21及び第2表示器22の各種の位相範囲、設定値については、変電所からの切り換え信号によって切り換えられるようにしてもよい。
【0075】
前記実施形態から把握される請求項以外の技術思想について説明する。
(1)請求項1〜10のいずれか1項において、送電方向補正手段には変電所の切り換えによる逆潮流の有無と、分散型電源15からの逆潮流の有無とを表示する機能が備えられている配電線における送電方向判別装置。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】配電線における送電方向判別機能を備えた事故方向判別装置を示すブロック回路図。
【図2】(a),(b)は、R相電圧基準に対する送電方向の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図3】地絡事故の方向を判定するための零相電圧基準に対する零相電流の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図4】変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源の逆潮流かを判定する相電流変化分の位相差Δδの判定位相角の範囲を示す説明図。
【図5】変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判定する相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図6】(a),(b),(c)は、変電所が切り換わる時の手順を示す説明図。
【図7】変電所が切り換わった後の等価回路図。
【図8】(a),(b)は、分散型電源からの逆潮流による送電方向の変化状態を示す説明図。
【図9】分散型電源からの逆潮流が有る状態の等価回路図。
【図10】分散型電源が系統に連系された場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図11】分散型電源が系統に連系された場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図12】変電所が切り換えられた場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図13】変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図14】変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図15】負荷側地絡事故の判定表示動作を説明するフローチャート。
【図16】この発明の送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図。
【図17】図16の送電方向判別装置の変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図18】図16の送電方向判別装置の変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図19】この発明の送電方向判別装置のさらに別例を示すブロック回路図。
【図20】図19の送電方向判別装置の変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図21】図19の送電方向判別装置の変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0077】
I,Ir…相電流、V,Vr…相電圧、Δδ,θg,θs,ΔVr−ΔIr,ΔVr−ΔIr…位相差、ΔI…相電流変化分、ΔV…相電圧変化分、11A,11B…変電所、12…配電線、15…分散型電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる送電方向変化か分散型電源からの逆潮流による送電方向の変化かを正確に判別することができる配電線における送電方向判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の配電線における送電方向判別装置として、特許文献1に示すものが提案されている。この判別装置は配電線の単相の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段とを備えている。前記送電方向判別手段は、前記相電圧と前記相電流の位相差が−70°〜110°の範囲内にある場合には、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が110°〜290°の範囲内にある場合には、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別するようになっている。
【0003】
上述した位相差の範囲「−70°〜110°」は次のような理由によって設定されたものである。第1に重負荷時には経験上から配電系統の負荷力率は65%、遅れ位相角50°になると考えられている。又、軽負荷時には進相コンデンサの影響から配電系統の進み位相角が90°近くになる。この2つの理由と、送電方向判別装置側の温度特性等による誤差を遅れと進み共に各位相角20°を考慮して、−70°〜110°の範囲に設定されている。
【特許文献1】特開平3−11922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の送電方向判別装置は、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、その逆潮流によって系統の変電所の切り換えをしない場合においても、潮流方向を判定する位相差−70°〜110°の範囲を超えてしまう場合があることが判明した。このため、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流による送電方向の切り換えであるのかを正確に判別することができなかった。従って、例えば地絡事故が生じてから変電所の遮断器をトリップしない無停電時における地絡事故方向判別装置の送電方向判別装置として用いる場合に信頼性に欠けるという問題があった。すなわち、前記位相差−70°〜110°の範囲とした場合、分散型電源と、配電系統及び分散型電源からの双方の供給によって賄われている負荷との間に設置されている送電方向判別装置が潮流方向を誤判定するおそれがあった。この点を図2(a)に基づいて説明する。
【0005】
送電方向判別装置は、図2(a)において、相電圧と相電流の位相差が−70°〜110°の範囲内の時に順潮流(K→L)、範囲外の時に逆潮流(L→K)と判断するようになっているものとする。分散型電源の連系による逆潮流の場合、例えば負荷の大きさが700kVAで分散型電源の出力が300kWの場合には、分散型電源の出力が負荷が消費する容量を下回っているため、変電所側から電源の供給を受ける。このため、相電圧と相電流の位相差のベクトルが矢印Y1で示されるように順潮流の範囲に現われるので問題はない。しかし、負荷の大きさが変化せず、分散型電源が700kWになり、分散型電源の出力が負荷の消費する容量と同等となった場合、変電所側からの供給を受けないために、図2(a)において、相電圧と相電流の位相差のベクトルが矢印Y2で示されるように位相差−90〜−70°の範囲に現れる。このため、実際には順潮流と判断しなければならない場合に逆潮流と判断してしまうことになる。
【0006】
上述の課題を発見したのは、本願発明者が新規な無停電時地絡方向判別装置を開発する過程で、この判別装置に従来と同様の送電方向判別装置を用いたのでは判別精度が低下するという問題に直面したからである。
【0007】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる配電線における送電方向判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、配電線の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、同検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを判別するための状態変化判別手段とを備え、前記状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別する逆潮流種別判別手段と、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流である場合には、送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源からの逆潮流でない場合には、ロックを行わないようにする機能を有する送電方向補正手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段であって、該送電方向判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別する機能とを備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の変化分を演算するとともに、それらの演算結果が所定の設定範囲を超えたか否かを判定する相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段であることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、請求項2に記載の前記送電方向判別手段と、請求項3に記載の相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は4において、前記送電方向判別手段は、該送電方向判別手段により判別された送電方向が予め設定された設定時間を継続して変化したか否かを判定する継続時間判定機能を備え、この判定結果によって前記逆潮流種別判別手段の処理動作へ移行するか否かを判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は5において、前記逆潮流種別判別手段は、前記送電方向判別手段により送電方向が変化したと判別された場合、相電流位相差演算手段による演算処理を行い、その演算結果が相電流位相範囲判定手段により設定値を超えたと判定された場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段の演算結果に基づいて、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化分の位相差が所定の設定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が設定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定するとともに、前記相電流位相差演算手段の演算結果が前記相電流位相範囲判定手段により設定値を超えていないと判定された場合には、分散型電源からの逆潮流と判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項3において、前記逆潮流種別判別手段は、前記相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段により判別された相電圧及び相電流の変化分が設定値を超えた場合には、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分と電流変化分の位相差が所定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が所定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する機能を備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は3において、前記送電方向補正手段は、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流であり、前記送電方向判別手段により判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックしている状態において、再度前記送電方向判別手段により判別された送電方向が変化前の状態に戻った場合には、前記ロックを解除するロック解除機能を備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1において、前記状態変化判別手段は、電源側である変電所の方向を設定するための変電所方向設定手段を備えていることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項6において、前記相電流位相範囲判定手段の所定位相範囲は、0°〜45°であり、前記変化分位相範囲判定手段の所定位相範囲は、−90°〜90°に設定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを状態変化判別手段により判別し、該状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、逆潮流種別判別手段により変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別することができる。このため、配電系統に分散型電源が連系されている場合に、変電所の切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した配電線における事故方向判別装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1に示すように、変電所11Aと変電所11Bは配電線12によって繋がれており、その途中に遮断器13Aが設けられ、この遮断器13Aには転送遮断装置14Aが設けられている。そして、変電所11AのZCT(零相変流器:図示略)及び配電線12に設けたGPT(接地形計器用変圧器:図示略)が配電線12に生じる一線地絡事故の零相電流と零相電圧を検出した時に地絡継電器が動作して前記遮断器13Aをトリップし、変電所11Aから配電線12を切り離すようになっている。前記配電線12の他端には別の変電所11B、遮断器13B、保護継電器14Bが接続され、必要に応じて負荷20へ供給する電力を切り換えることが可能な構成になっている。前記配電線12の途中には分散型電源15が配設され、負荷20に電力を供給するようになっている。分散型電源15には遮断器13C及び転送遮断装置14Cが設けられ、転送遮断装置14Aの信号に基づいて、転送遮断装置14Cが動作する。すると、所定時間後に分散型電源15を遮断するようになっている。前記配電線12の途中には第1表示器21及び第2表示器22が図示しない区分開閉器と対応して装着されている。これらの第1表示器21及び第2表示器22は同様に構成されているので、図1において一つの第1表示器21について説明する。
【0019】
配電線12のR相、S相及びT相には高圧センサー30がそれぞれ設けられている。この高圧センサー30は、各相の相電圧を検出する結合コンデンサ31a,31b,31c、変流器32a,32b,32cにより構成されている。前記結合コンデンサ31a,31b,31cには三相の配電線からの相電圧信号Vr,Vs,Vtに基づいて零相電圧信号V0を出力するための電圧信号処理回路34が接続されている。又、前記変流器32a,32b,32cには、三相の配電線からの相電流信号Ir,Is,Itに基づいて零相電流信号I0を出力するための電流信号処理回路35が接続されている。
【0020】
次に、地絡事故が発生し遮断器13Aが作動する「停電有モード」において地絡事故の判定表示を行うための構成について説明する。
前記結合コンデンサ31a及び変流器32aには停電時の送電方向判別手段としての停電時送電方向判別回路36が並列に接続されている。前記停電時送電方向判別回路36は、常時継続してR相の相電圧Vrと相電流Irの位相差に基づいてR相の配電線の送電方向を判別して記憶するようになっている。この実施形態では、停電時送電方向判別回路36は図2(a)に示すように、R相電圧の位相角0°を基準に遅れ−70°〜進み110°の範囲内に相電流Irの位相が有る場合に、順潮流(K→L)と判別し、無い場合に逆潮流(L→K)と判別する。
【0021】
前記電圧信号処理回路34と電流信号処理回路35には地絡検出手段としての地絡検出回路38が接続され、零相電圧V0の電圧値及び零相電流I0の電流値に基づいて地絡事故を検出するようになっている。例えば、6kVの配電線の場合、零相電流のレベルが100mAに、零相電圧のレベルが380Vに供に達した時に地絡事故であると判定するようになっている。前記停電時送電方向判別回路36及び地絡検出回路38には停電時地絡方向判定回路39が接続されている。そして、地絡事故が検出された時、前記送電方向と前記零相電圧V0及び零相電流I0の位相差に基づいて前記地絡事故の方向を判定するようになっている。この実施形態では、図3に示すように、零相電圧の位相角0°を基準に遅れ−30°〜進み150°の範囲内に零相電流I0の位相が有り、かつ、送電方向が順潮流(K→L)と判別されている時に、負荷側の地絡事故と判定する。又、前記位相−30°〜150°の範囲内に零相電流I0の位相が無い状態で、かつ逆潮流(L→K)と判別されている時にも、負荷側の地絡事故と判定する。上述した判定結果は停電時地絡方向判定回路39に設けた記憶手段(図示略)により記憶される。前記停電時地絡方向判定回路39には判定された地絡事故の方向が負荷側である場合にその地絡事故を表示するための表示灯41が接続されている。
【0022】
次に、零相電圧V0及び零相電流I0が発生しても遮断器13Aが作動しない「停電無モード」において零相電圧V0及び零相電流I0が発生した区間の判定表示を行うための構成について説明する。
【0023】
前記結合コンデンサ31a及び変流器32aには常時送電方向を判別して記憶する無停電時送電方向判別手段及び状態変化判別手段としての無停電時送電方向判別回路42が接続されている。又、前記無停電時送電方向判別回路42には、変電所方向設定手段としての変電所方向設定スイッチ43が接続されている。前記変電所方向設定スイッチ43は、配電線12に前記分散型電源15からの逆潮流がある状態で、第1表示器21及び第2表示器22を設置する場合において、前記変電所11A又は変電所11Bの方向を確定するために設けられている。そして、このスイッチ43によって、設定された変電所方向を基準として前記無停電時送電方向判別回路42はR相の相電圧Vrと相電流Irの位相差の基準位相を決定するようになっている。この実施形態では前記変電所方向設定スイッチ43にてK側に変電所があると設定されている。この設定条件においては、図2(b)に示すように、R相電圧の位相角0°を基準に遅れ−90°〜進み90°の範囲内に相電流Irの位相が有る場合に、前記無停電時送電方向判別回路42が順潮流(K→L)と判別し、無い場合には、つまり90°〜270°(−90°)の場合に逆潮流(L→K)と判別する。
【0024】
図1に示すように前記結合コンデンサ31a、変流器32a及び無停電時送電方向判別回路42には相電流位相差演算手段としての相電流位相差変化分の相電流位相差演算回路44が接続されている。この相電流位相差演算回路44によって送電方向が逆潮流に切り換わった時点におけるその前後の相電流の位相差を演算するようになっている。前記相電流位相差演算回路44には相電流位相範囲判定手段としての相電流位相範囲判定回路45が接続され、前記相電流位相差演算回路44によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(0°〜45°)内にあるか否かを判定するようになっている。更に前記相電流位相差演算回路44によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(0°〜45°)外であった場合に用いるための相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段としての相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46が接続されている。この相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46によって送電方向が逆潮流に切り換わった時点におけるその前後の相電圧変化分と相電流変化分の位相差を演算するようになっている。前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46には変化分位相範囲判定手段としての変化分位相範囲判定回路47が接続され、前記位相差演算回路46によって得られた位相差が予め設定された所定の位相範囲(−90°〜90°)内にあるか否かを判定するようになっている。
【0025】
前記無停電時送電方向判別回路42、相電流位相範囲判定回路45及び前記変化分位相範囲判定回路47には送電方向補正手段としての送電方向補正回路49が接続されている。そして、相電流位相範囲判定回路45及び変化分位相範囲判定回路47の判定結果に基づいて、後述するように送電方向の補正を行うようになっている。前記地絡検出回路38と送電方向補正回路49には無停電時地絡方向判定手段としての無停電時地絡方向判定回路50が接続されている。そして、地絡事故が検出された時、送電方向補正回路49により補正された送電方向と、零相電圧V0と零相電流I0の位相差とに基づいて予め設定された変電所11Aを基準とした負荷側地絡事故か否かを判定するようになっている。無停電時地絡方向判定回路50は前記表示灯41に接続されている。
【0026】
この実施形態では、前記相電流位相差演算回路44と前記相電流位相範囲判定回路45及び前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46と変化分位相範囲判定回路47によって逆潮流種別判別手段としての逆潮流種別判別回路48が構成されている。
【0027】
次に、上述した各回路44、45,46,47,49,50の機能について説明する。
前記相電流位相差演算回路44及び相電流位相範囲判定回路45は、分散型電源15からの逆潮流であるのか、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流なのかを判定する。相電流位相差演算回路44は無停電時送電方向判別回路42からの判別信号(逆潮流の種別は不明)が出力された時、その前後における相電流変化分の位相差Δδを演算する。そして、送電方向が変化した前後の相電流変化分の位相差Δδが図4に示す0°〜45°の所定位相範囲内の場合には、分散型電源15からの逆潮流と判定する。又、前記位相差Δδが0°〜45°の所定位相範囲外の場合には、前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46及び変化分位相範囲判定回路47による判定結果から、分散型電源15からの逆潮流であるのか、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流であるのかを判定する。
【0028】
前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46は、無停電時送電方向判別回路42からの判別信号(逆潮流の種別は不明)が出力された時、その前後における相電圧Vrの変化分ΔVrと、相電流Irの変化分ΔIrとの位相差を演算する。そして、電圧変化分ΔVrが例えば0°にある時の電流変化分ΔIrとの位相差ΔVr−ΔIrが図5に示す−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する。又、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定するようにしている。
【0029】
ところで、変電所11A,11Bの切り換え操作を行う手順の一つであるループ点開閉器(図示略)を投入する場合には、ループ点開閉器の左右の電圧位相差が極力近い状態になった時に行われるように電力会社での運用基準が規定されている。又、分散型電源15においても配電系統へ連系する場合には配電系統の電圧を適正値に維持する必要がある。これらのことから主に自動同期投入装置等を用いて配電系統の電圧位相に分散型電源15の電圧位相を合わせて投入する操作が行われているため、変電所11A,11Bの切り換えもしくは分散型電源15の連系が行われた場合についても電圧には顕著な位相変化が現れない。しかしながら、電流については電圧位相のように同期を取ることを行わないため、送電方向が変化した前後において相電流の位相角に変化が現れる。この時、分散型電源15からの逆潮流では、相電流の位相変化が緩やかであり相電流変化分の位相差Δδは小さくなる。これは、分散型電源15の電源容量が変電所11A(11B)の電源容量に比べ当然のことながら小さいため、連系する配電系統に変電所11A(11B)から供給されている相電流に追従するようにして分散型電源15からの電流は除々に増えるように配電系統へ供給されていくためである。又、変電所11A(11B)の切り換えによる逆潮流では、相電流の位相変化が早く相電流変化分の位相差Δδは大きくなる。これは、切り換えをする変電所11A(11B)の電源容量もその配電系統に供給するために十分な電源容量を備えているため、供給する配電系統に既に流れている相電流に追従せずに電流位相が変化するためである。
【0030】
但し、分散型電源15が連系されている状態の配電系統において、その配電系統から分散型電源15の出力に匹敵するような大容量負荷が脱落した場合には、相電流の位相変化が早く相電流変化分の位相差Δδは大きくなる。
【0031】
従って、相電流変化分の位相差Δδが大きくなった場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流か分散型電源15による逆潮流かを区別するため、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分と相電流変化分の位相差を判断条件に加え、逆潮流の種別を判断することとした。
【0032】
前記相電流変化分の位相差Δδの判定基準となる所定位相範囲を、前述の0°〜45°に設定したのは以下の理由による。即ち、実配電線において、試験して収集したデータをもとに設定したものであって、相電流変化分の位相差Δδが0°〜45°の範囲内にある場合に分散型電源15からの逆潮流と判定しても誤判定にならないことが判明し、それ以外の場合には逆潮流の種別の判定が難しいことが判明したからである。
【0033】
次に、相電流変化分の位相差Δδが大きくなった場合の次の判断条件として用いられる送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分と相電流変化分の位相差と、その位相差に基づいて逆潮流の種別を更に判定する理論を以下に順次説明する。
【0034】
変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流は、図6(a)〜(c)に示す変電所11A,11Bの切り換え時の手順により起こり、切り換え前の状態を示す図6(a)はループ点開閉器(図示略)が開放され、区分開閉器16Aが閉じられ、かつ区分開閉器16Bが開かれて、変電所11Aのみが電源側となっている。ループ状態を示す図6(b)はループ点開閉器(図示略)が投入され、両区分開閉器16A,16Bが閉じられ、変電所11A, 11Bがともに電源側となっている。更に、切り換え後を示す図6(c)はループ点開閉器(図示略)が開放され、区分開閉器16Aが開かれ、かつ区分開閉器16Bが閉じられ、変電所11Bが電源側に切り換えられている。図6(c)に示す変電所11A,11Bの切り換え後の破線部分の等価回路は、図7のように示される。
【0035】
ここで、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIは、図6(c)に示す切り換え後の状態から図6(b)に示すループ状態を引くことによって得られ、次の(1)〜(3)式によって演算される。
<ループ>
【0036】
【数1】
<切り換え後>
【0037】
【数2】
<切り換え後>−<ループ>
【0038】
【数3】
変電所11A,11Bの切り換えによる相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θsは、第1表示器21から切り換えられた変電所11B側を見たインピーダンス(R+jX)によって決定される。このインピーダンスのうち、抵抗分Rは正(R>0)であるため、相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θsは、次の不等式(4)のとおりとなり、|π/2|以内となる。
【0039】
【数4】
図8(a)は分散型電源15からの逆潮流が無い状態を示す。この状態から図8(b)に示すように分散型電源15からの逆潮流が有る状態に変化した時の等価回路は、図9のように示される。
【0040】
ここで、送電方向の変化前と変化後における相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIは、分散型電源15からの逆潮有の状態から逆潮無の状態を引くことによって得られ、次の(5)〜(7)式によって演算される。
<逆潮無>
【0041】
【数5】
<逆潮有>
【0042】
【数6】
<逆潮有>−<逆潮無>
【0043】
【数7】
分散型電源15からの逆潮流の有無による相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θgは、第1表示器21から変電所11A側を見たインピーダンス(R+jX)によって決定される。このインピーダンスのうち、抵抗分Rは正(R>0)であるため、相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差θgは、次の不等式(8)のとおりとなり、|π/2|以上となる。
【0044】
【数8】
よって、電圧変化分ΔVrが0°にある時の電流変化分ΔIrとの位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判定でき、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定できる。
【0045】
そして、相電流位相範囲判定回路45又は変化分位相範囲判定回路47により分散型電源15からの逆潮流と判定された場合には、送電方向補正回路49により、送電方向判別回路42が判別記憶していた変化前の送電方向のままロックし、予め設定された変電所11Aを基準とした正しい送電方向を維持する。なお、変化分位相範囲判定回路47によって変電所11Aから変電所11Bへの切り換えによる逆潮流と判定された場合には、変電所を基準とした正しい送電方向であるため変化前の送電方向を維持するためのロックは行われない。更に、無停電時地絡方向判定回路50は、送電方向補正回路49によって補正が行われた適正な送電方向と地絡検出回路38により予め判定記憶されていた地絡方向とに基づいて無停電時地絡方向判定回路50において負荷側地絡の有無を判定する。
【0046】
次に、前記のように構成した配電線の地絡方向判別装置についてその動作を説明する。
(停電有モードの場合)
配電線12が停電する状態において動作する「停電有モード」の動作は従来の動作と同様であるため詳しい説明を省略する。概要を述べると停電時送電方向判別回路36、地絡検出回路38及び停電時地絡方向判定回路39により負荷側地絡の有無が判定記憶され、表示灯41により表示される。
(停電無モードの場合)
図10及び図11は、配電系統に分散型電源15が連系され、変電所11A,11Bの切り換えが行われず、分散型電源15による逆潮流により送電方向が変化した場合の送電方向の判別と、その補正動作及び地絡事故時の第1表示器21,第2表示器22の変電所11Aを基準とした負荷側地絡の表示動作を示すタイミングチャートである。又、図12は分散型電源15が連系されていないか解列されていて、変電所11Aが変電所11Bに切り換えられた場合の図10及び図11と同様の表示動作を示すタイミングチャートである。
【0047】
次に、図10及び図11に関係する図13のフローチャートにより送電方向の補正動作を説明する。
図13のステップS1では変電所方向設定スイッチ43によって変電所方向がK側(変電所11A)にセットされる。ステップS2において、無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。ステップS3において、同じく前記送電方向判別回路42によって送電方向が1秒間継続して変化したか否かが判別され、Yesの場合にはステップS4において相電流位相差演算回路44により送電方向変化前後の相電流変化分の位相差Δδの演算が行われる。そして、ステップS5おいて変化前後の相電流変化分の位相差Δδが45°より大きいか否かが相電流位相範囲判定回路45によって判定される。
【0048】
なお、ステップS5では分散型電源15からの逆潮流か否かが判断され、No、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(K→L)と記憶(セット)される。
【0049】
一方、前述のステップS5において、Yesと判断された場合にはステップS6において相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46により送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差∠(ΔV−ΔI)の演算が行われる。そして、ステップS7において送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差の絶対値| ∠(ΔV−ΔI)| が90°以上か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定される。即ちステップS7によって、最終的に変電所の切り換えによる逆潮流か、分散型電源15からの逆潮流かが判断され、Yes、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、前述したように送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(K→L)として記憶(セット)される。そして、ステップS10において、無停電時送電方向判別回路42により常時送電方向の判別が行われる。ステップS11において、同じく無停電時送電方向判別回路42により送電方向が1秒間継続して変化前の送電方向へ戻ったか否かが判別され、Yesの場合には、ステップS13において、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている変化前の送電方向を維持するためのロックと、順潮流(K→L)の記憶(セット)が解除され、ステップS2において、再び無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。
【0050】
一方、ステップS11において、Noと判定された場合、ステップS12において、変化前後の相電流変化分ΔIの位相差Δδが30°より大きく、かつ変化前後の相電流変化分ΔIの大きさ(電流値)が5A(アンペア)より大きいかを相電流位相範囲判定回路45によって判定し、Yesの場合には、ステップS14において、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている変化前の送電方向を維持するためのロックの解除と、順潮流(K→L)の記憶(セット)が解除され、ステップS6に戻る。一方、ステップS12において、Noと判定された場合には、ステップS10に戻る。
【0051】
一方、前述のステップS7において、Noと判定された場合、つまり変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判断された場合には、ステップS9において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることなく送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が逆潮流(L→K)として記憶(セット)され、その後、ステップS2において、無停電時送電方向判別回路42によって常時送電方向の判別が行われる。
【0052】
図13に示すフローチャートにより、結論として、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流の場合には、潮流方向は潮流変化後のままでロックする補正が行われず、分散型電源15による逆潮流の場合には潮流方向は変化前の送電方向のままロックされることで、補正が行われることになる。
【0053】
図14は、ステップS1において変電所方向設定スイッチ43によって変電所方向がL側にセットされた場合を示し、図13の動作と同様であるため詳しい説明を省略する。異なる箇所の概要を述べるとステップS7において送電方向変化前後の電圧変化分(ΔV)と電流変化分(ΔI)の位相差の絶対値| ∠(ΔV−ΔI)| が90°以下か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定され、Yes、つまり分散型電源15からの逆潮流の場合には、ステップS8において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることで補正され、送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が順潮流(L→K)として記憶(セット)される。一方、ステップS7において、Noと判定された場合、つまり変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判断された場合には、ステップS9において、送電方向補正回路49により送電方向変化後の送電方向が変化前の送電方向のままロックされることなく送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に送電方向が逆潮流(K→L)として記憶(セット)される。
【0054】
次に、上述した送電方向の補正動作と連係して行われる負荷側地絡事故の表示動作を図15のフローチャートに基づいて説明する。
図15のステップS1において地絡検出回路38により地絡事故が発生したか否かが検出され、ステップS2において同じく地絡検出回路38により零相電圧と零相電流の演算が行われる。次にステップS3において図13もしくは図14のフローチャートに基づいて行われた処理において送電方向補正回路49の記憶媒体(図示略)に記憶(セット)されている送電方向が無停電時地絡方向判定回路50によって順潮流( K→L) か否かが判断される。Yesの場合にはステップS2において演算した結果、つまり零相電圧と零相電流の位相差が−30°〜150°の位相範囲内の場合には、ステップS4において無停電時地絡方向判定回路50によって負荷側地絡(K→L)と判定し、零相電圧と零相電流の位相差が上記位相範囲外の場合には、電源側地絡(L→K)と判定する。このステップS4においてYesと判断された場合には、ステップS5で表示灯41により負荷側地絡事故の表示が行われる。
【0055】
一方、ステップS3においてNoと判断された場合には、ステップS6において地絡発生位相方向は負荷側地絡(L→K)か否かが無停電時地絡方向判定回路50によって判断され、Yesの場合には、ステップS5において負荷側地絡事故が表示される。又、ステップS6においてNoと判断された場合には、ステップS7に移行し、負荷側地絡事故を表示しない。更に、ステップS4においてNoと判断された場合にも、ステップS7へ移行する。
【0056】
ここで、無停電時送電方向判別回路42の潮流方向を判定する位相範囲を−90°〜90°の範囲に設定した理由を以下に説明する。
分散型電源15からの逆潮流が及ぶ場合と、変電所11A,11Bの切り換え時には有効電力が変化する。有効電力Pは、相電圧V、相電流I、相電圧V及び相電流Iの力率角θとすると、次式で示される。
【0057】
P=3V・Icosθ
上式のcosθは90°もしくは−90°で0となり、θ<90°→θ>−90°又はθ>−90°→θ<90°には、プラス→マイナスの値となり、極性が変化することから判定処理上において明確に潮流方向が変化することが捉えられるので、−90°〜90°の範囲に設定した。又、無停電時送電方向判別回路42の記憶媒体には−90°〜90°の位相範囲であった場合には順潮流(K→L)と記憶(セット)され、それ以外は逆潮流(L→K)と記憶(セット)される。
【0058】
次に、無停電時地絡方向判定回路50によって、変電所を基準とした負荷側地絡を判定する動作を更に説明する。
相電流位相差演算回路44及び相電流位相範囲判定回路45と、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46及び変化分位相範囲判定回路47とにおいてそれぞれ演算が行われる。そして、無停電時地絡方向判定回路50において変電所11Aから変電所11Bの切り換え時には送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化した変電所11B方向と、地絡方向とのアンド条件をもって変電所11Bを基準とした負荷側地絡か否かを判定する。反対に、分散型電源15からの逆潮流の場合には、送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化する前の変電所11A方向としてロックされた送電方向と、地絡方向とのアンド条件をもって変電所11Aを基準とした負荷側地絡か否かを判定する。
【0059】
一例として、分散型電源15の連系によって、有効電力の極性が変化するのは、分散型電源15と該分散型電源15の逆潮流のみによって賄われている負荷20との間に設置されている第2表示器22であって、逆潮流(L→K) を示す範囲に入るからである。一方、第1表示器21については、分散型電源15の潮流が及ばない位置にあり、変電所からの供給によって賄われているため分散型電源15が連系されている場合においても順潮流(K→L) を示す範囲に入り極性は変化せず、分散型電源15からの逆潮流が及んでいるか否かを判別することができる。その後の処理として第2表示器22の送電方向は補正され、送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化する前の変電所方向をロックした送電方向と地絡方向とのアンド条件をもって変電所を基準とした負荷側地絡を判定する。第1表示器21の送電方向は送電方向補正回路49に記憶(セット)された送電方向が変化したままの変電所方向をロックしない送電方向と地絡方向とのアンド条件をもって変電所を基準とした負荷側地絡を判定する。
【0060】
上記実施形態の配電線における事故方向判別装置によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記相電圧Vrと相電流Irの位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線12の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧Vrと相電流Irの位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線12の送電方向を逆潮流と判別するようにした。又、相電流位相差演算回路44と相電流位相範囲判定回路45及び相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46と変化分位相範囲判定回路47とからなる逆潮流種別判別回路48を設けた。このため、配電系統に分散型電源15が連系されている場合に、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流であるのか分散型電源15からの逆潮流であるのかを正確に判別することができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、停電無モードにおいて、無停電時送電方向判別回路42の判別結果に基づいて、分散型電源15が連系され、送電方向が変化した場合に、相電流位相差演算回路44により相電流変化分の位相差Δδの演算が行われ、送電方向変化前後の位相差が0°〜45°の範囲内か否かが相電流位相範囲判定回路45により判定され、変化前後の位相差が0°〜45°の範囲内の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定され、一方、変化前後の位相差が0°〜45°の範囲外の場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46により電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差ΔVr−ΔIrの演算が行われる。そして、変化前後の位相差が−90°〜90°の範囲内か否かが変化分位相範囲判定回路47によって判定され、電圧変化分ΔVrと電流変化分ΔIrの位相差ΔVr−ΔIrが図5に示す位相−90°〜90°の範囲内の場合には、変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と判定する。又、前記位相差ΔVr−ΔIrが−90°〜90°の位相範囲外の場合には分散型電源15からの逆潮流と判定するようにしている。
【0062】
更に、送電方向変化後の送電方向が順潮流(K→L)か否かが送電方向補正回路49に記憶(セット)される。この記憶(セット)された送電方向の補正結果に基づいて無停電時地絡方向判定回路50により負荷側地絡の判定が行われる。従って、無停電時において送電方向が変化しても負荷側地絡か否かを正確に判定することができる。
【0063】
次に、この発明の別の実施形態を図16〜図18に基づいて説明する。図16は送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図、図17,18は図16の回路図に基づく処理動作のフローチャートである。この別の実施形態においては、図16に示すように、前記相電圧変化分・相電流変化分位相差演算回路46の上流側に相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段としての相電圧変化分・相電流変化分演算判定回路51を接続している。この演算判定回路51は、相電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIが設定値を超えたか否かを判断し、かつ相電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差を演算する機能を備えている。
【0064】
そして、前述した実施形態の図13に示すステップS3において、Noと判断された場合に、図17に示すステップS15〜S17の処理を行うようにしたものである。ステップS15において、前記演算判定回路51によって相電圧と相電流の電圧変化分ΔVが設定値(例えば3V)、電流変化分ΔIが設定値(例えば3A)を超えたか否かが判断され、Yesの場合には、ステップS16において、前記位相差演算回路46によって相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分ΔVと電流変化分ΔIの位相差∠ΔV−ΔIが演算される。次に、ステップS17において、演算された位相差∠ΔV−ΔIが所定位相角(90°)以上か否かが判定されるとともに、この判定結果が予め設定された設定回数を超えたか否かがカウントされる。そして、ステップS17において、Yesと判断された場合には、分散型電源15からの逆潮流と判定し、ステップS8に移行する。反対に、ステップS17において、Noと判断された場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定し、ステップS9に移行する。
【0065】
上述したステップS15〜S17を設けた理由を以下に説明する。
ステップS3において送電方向が1秒間継続して変化した場合には、大方の場合において送電方向が変化したことを判定することができる。しかし、レアケースにおいては、設定された1秒以下の場合においても変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流と分散型電源15からの逆潮流の場合が考えられる。すなわち、変電所11Aから変電所11Bへの切り換えの場合は、例えば変電所11Bからの潮流が分散型電源15の出力の大小によって第1表示器21へ到達したりしなかったりするため、分散型電源15の出力の大小が1秒以内に変動する場合において短時間(1秒以下)に送電方向が切り換わることがある。又、分散型電源15からの逆潮流の場合は、例えば第1表示器21が分散型電源15の連系点と負荷20との間に設置されている場合において、分散型電源15の出力変動ないしは負荷20の電力消費の変化によって短時間(1秒以下)に送電方向が切り換わることがある。従って、所定設定時間の1秒以下の場合においても変電所11A,11Bの切り換えによる逆潮流か分散型電源15からの逆潮流かを判別することにより判別精度を向上することができる。
【0066】
次に、ステップS17において位相差が90°以上となる回数が設定回数を超えたか否かを判定する理由を以下に説明する。
ステップS3でNoとなった場合にはステップS15において電圧変化分ΔVが3V、電流変化分ΔIが3Aを超えるか否かという位相以外の電圧及び電流を判別要素として用いているため、位相差が一定でない状態での相電圧及び相電流から変化分位相範囲判定回路47を用いて位相差ΔV−ΔIが90°以上か否かを演算することとなる。そのために設定回数以上の変化があったか否かを確認することとした。確認する理由としては、ステップS3において送電方向が1秒間継続しておらず、短時間に位相が変化している状態の相電圧及び相電流から位相差∠ΔV−ΔIを判別しようとするために、判別する所定判別時間内(例えば本実施例では変化前後各40ms)において、判定精度を向上するために設定回数を定め、多い回数の条件をセットするようにした。なお、ステップ3において、Yesの場合には送電方向が1秒間継続しているためステップS7において位相差∠ΔV−ΔIが変化することは無いが前述したステップS17と同様の処理を行なってもよい。
【0067】
図18は変電所方向がL側にセットされた場合のフローチャートである。この処理動作は図17の変電所方向がK側にセットされた場合の処理動作のうちステップS7と、S17の判定において所定の設定範囲内であるか否かが逆となる。又、ステップS8,S9においても変電所方向をロックするしないの基準が逆となるが、その他の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
【0068】
次に、この発明のさらに別の実施形態を図19〜図21について説明する。
図19は送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図、図20,21は図16の回路図に基づく処理動作のフローチャートである。図19のブロック回路においては、前記無停電時送電方向判別回路42、位相差演算回路44、相電流位相範囲判定回路45が省略され、前記演算回路46の前に前記演算判定回路51が接続されている。又、この演算判定回路51には前記変電所方向設定スイッチ43が接続されている。
【0069】
この実施形態においては、図20に示すように変電所方向をK側にセットし、その後、図17において説明したステップS15,S16,S17と同様のステップS2,S3,S4に移行する。さらに、前述した図17のステップS8〜S14と同様のステップS5〜S11に移行する。
【0070】
図20においては、図17に示す前述したステップS2〜S7が省略されている。又、図20の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
図21は図20のステップS1において、変電所をL側にセットした場合のフローチャートであって、この処理動作は図20の変電所方向がK側にセットされた場合の処理動作のうちステップS4の判定において所定の設定範囲内であるか否かが逆となる。又、ステップS5,S6においても変電所方向をロックするしないの基準が逆となるが、その他の処理動作は図17の処理動作と同様であるため説明を省略する。
【0071】
この別例においては、配電線に分散型電源15の出力の大小及び負荷20の変動によって、送電方向が一秒間継続して変化しない状態が多く現れる配電系統に用いることができ、回路構成が簡素化されているので、事故方向判別装置の構成を簡素化することができる。
【0072】
なお、前記実施形態は以下のように変更して具体化することができる。
○ 前記変電所方向設定スイッチ43を省略してもよい。この場合には配電線12を変電所11Aからの潮流のみの状態にしておいて、第1及び第2表示器21,22を設置する必要がある。
【0073】
○ 送電方向補正回路49からの信号を前記表示灯41に入力し、この表示灯41により変電所の切り換えによる逆潮流の有無と、分散型電源15からの逆潮流の有無とを表示するようにしてもよい。
【0074】
○ 前記相電流位相範囲判定回路45の所定位相範囲を、0°〜45°に代えて、0°〜40°又は0°〜50°に設定してもよい。
○ 前述した第1表示器21及び第2表示器22の各種の位相範囲、設定値については、変電所からの切り換え信号によって切り換えられるようにしてもよい。
【0075】
前記実施形態から把握される請求項以外の技術思想について説明する。
(1)請求項1〜10のいずれか1項において、送電方向補正手段には変電所の切り換えによる逆潮流の有無と、分散型電源15からの逆潮流の有無とを表示する機能が備えられている配電線における送電方向判別装置。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】配電線における送電方向判別機能を備えた事故方向判別装置を示すブロック回路図。
【図2】(a),(b)は、R相電圧基準に対する送電方向の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図3】地絡事故の方向を判定するための零相電圧基準に対する零相電流の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図4】変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源の逆潮流かを判定する相電流変化分の位相差Δδの判定位相角の範囲を示す説明図。
【図5】変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判定する相電圧変化分ΔVと相電流変化分ΔIの位相差の判定位相角の範囲を示す説明図。
【図6】(a),(b),(c)は、変電所が切り換わる時の手順を示す説明図。
【図7】変電所が切り換わった後の等価回路図。
【図8】(a),(b)は、分散型電源からの逆潮流による送電方向の変化状態を示す説明図。
【図9】分散型電源からの逆潮流が有る状態の等価回路図。
【図10】分散型電源が系統に連系された場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図11】分散型電源が系統に連系された場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図12】変電所が切り換えられた場合の地絡事故表示動作を示すタイミングチャート。
【図13】変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図14】変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図15】負荷側地絡事故の判定表示動作を説明するフローチャート。
【図16】この発明の送電方向判別装置の別例を示すブロック回路図。
【図17】図16の送電方向判別装置の変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図18】図16の送電方向判別装置の変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図19】この発明の送電方向判別装置のさらに別例を示すブロック回路図。
【図20】図19の送電方向判別装置の変電所方向をK側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【図21】図19の送電方向判別装置の変電所方向をL側にセットした場合の送電方向の補正動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0077】
I,Ir…相電流、V,Vr…相電圧、Δδ,θg,θs,ΔVr−ΔIr,ΔVr−ΔIr…位相差、ΔI…相電流変化分、ΔV…相電圧変化分、11A,11B…変電所、12…配電線、15…分散型電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、
同検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを判別するための状態変化判別手段とを備え、
前記状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別する逆潮流種別判別手段と、
前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流である場合には、送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源からの逆潮流でない場合には、ロックを行わないようにする機能を有する送電方向補正手段と
を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項2】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段であって、該送電方向判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別する機能とを備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項3】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の変化分を演算するとともに、それらの演算結果が所定の設定範囲を超えたか否かを判定する相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段であることを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項4】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、請求項2に記載の前記送電方向判別手段と、請求項に3記載の相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段とを備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項5】
請求項2又は4において、前記送電方向判別手段は、該送電方向判別手段により判別された送電方向が予め設定された設定時間を継続して変化したか否かを判定する継続時間判定機能を備え、この判定結果によって前記逆潮流種別判別手段の処理動作へ移行するか否かを判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項6】
請求項2又は5において、前記逆潮流種別判別手段は、前記送電方向判別手段により送電方向が変化したと判別された場合、相電流位相差演算手段による演算処理を行い、その演算結果が相電流位相範囲判定手段により設定値を超えたと判定された場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段の演算結果に基づいて、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化分の位相差が所定の設定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が設定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定するとともに、前記相電流位相差演算手段の演算結果が前記相電流位相範囲判定手段により設定値を超えていないと判定された場合には、分散型電源からの逆潮流と判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項7】
請求項3において、前記逆潮流種別判別手段は、前記相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段により判別された相電圧及び相電流の変化分が設定値を超えた場合には、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分と電流変化分の位相差が所定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が所定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項8】
請求項2又は3において、前記送電方向補正手段は、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流であり、前記送電方向判別手段により判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックしている状態において、再度前記送電方向判別手段により判別された送電方向が変化前の状態に戻った場合には、前記ロックを解除するロック解除機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項9】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、電源側である変電所の方向を設定するための変電所方向設定手段を備えている配電線における送電方向判別装置。
【請求項10】
請求項6において、前記相電流位相範囲判定手段の所定位相範囲は、0°〜45°であり、前記変化分位相範囲判定手段の所定位相範囲は、−90°〜90°に設定されている配電線における送電方向判別装置。
【請求項1】
配電線の相電圧及び相電流を検出する検出手段と、
同検出手段によって検出された相電圧、相電流及びそれらの位相が変化したか否かを判別するための状態変化判別手段とを備え、
前記状態変化判別手段によって相電圧、相電流及びそれらの位相が所定の設定範囲と判定された場合に、変電所の切り換えによる逆潮流か分散型電源からの逆潮流かを判別する逆潮流種別判別手段と、
前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流である場合には、送電方向を変化前の送電方向のままロックし、分散型電源からの逆潮流でない場合には、ロックを行わないようにする機能を有する送電方向補正手段と
を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項2】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差に基づいて前記配電線の送電方向を判別する送電方向判別手段であって、該送電方向判別手段は、前記相電圧と相電流の位相差が−90°〜90°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を順潮流と判別し、前記相電圧と相電流の位相差が90°〜270°の範囲内にある場合、前記配電線の送電方向を逆潮流と判別する機能とを備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項3】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、前記相電圧と相電流の変化分を演算するとともに、それらの演算結果が所定の設定範囲を超えたか否かを判定する相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段であることを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項4】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、請求項2に記載の前記送電方向判別手段と、請求項に3記載の相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段とを備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項5】
請求項2又は4において、前記送電方向判別手段は、該送電方向判別手段により判別された送電方向が予め設定された設定時間を継続して変化したか否かを判定する継続時間判定機能を備え、この判定結果によって前記逆潮流種別判別手段の処理動作へ移行するか否かを判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項6】
請求項2又は5において、前記逆潮流種別判別手段は、前記送電方向判別手段により送電方向が変化したと判別された場合、相電流位相差演算手段による演算処理を行い、その演算結果が相電流位相範囲判定手段により設定値を超えたと判定された場合には、相電圧変化分・相電流変化分位相差演算手段の演算結果に基づいて、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化分の位相差が所定の設定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が設定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定するとともに、前記相電流位相差演算手段の演算結果が前記相電流位相範囲判定手段により設定値を超えていないと判定された場合には、分散型電源からの逆潮流と判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項7】
請求項3において、前記逆潮流種別判別手段は、前記相電圧変化分・相電流変化分演算判定手段により判別された相電圧及び相電流の変化分が設定値を超えた場合には、変化分位相範囲判定手段により相電圧と相電流の変化前後の電圧変化分と電流変化分の位相差が所定範囲を超えるか否かを判定し、その判定結果が所定範囲を超えた場合は、分散型電源からの逆潮流と判定し、超えていない場合には、変電所の切り換えによる逆潮流と判定する機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項8】
請求項2又は3において、前記送電方向補正手段は、前記逆潮流種別判別手段により判別された結果が分散型電源からの逆潮流であり、前記送電方向判別手段により判別された送電方向を変化前の送電方向のままロックしている状態において、再度前記送電方向判別手段により判別された送電方向が変化前の状態に戻った場合には、前記ロックを解除するロック解除機能を備えたことを特徴とする配電線における送電方向判別装置。
【請求項9】
請求項1において、前記状態変化判別手段は、電源側である変電所の方向を設定するための変電所方向設定手段を備えている配電線における送電方向判別装置。
【請求項10】
請求項6において、前記相電流位相範囲判定手段の所定位相範囲は、0°〜45°であり、前記変化分位相範囲判定手段の所定位相範囲は、−90°〜90°に設定されている配電線における送電方向判別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−246600(P2006−246600A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58229(P2005−58229)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【Fターム(参考)】
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