配電部材、ステータ、及びモータ
【課題】コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相の導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な配電部材を得る。
【解決手段】配電部材5は、環状に配列された複数のコイル4を有するステータ3に接続される配電部材であって、複数のコイル4は、各相別に直列接続されており、同相のコイル4同士を接続する複数のバスバー6を各相別に備え、各バスバー6は、導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを有し、異相のコイル4に接続された複数のバスバー6の半導電層12同士が、各バスバー6の少なくとも一カ所において互いに接触する。
【解決手段】配電部材5は、環状に配列された複数のコイル4を有するステータ3に接続される配電部材であって、複数のコイル4は、各相別に直列接続されており、同相のコイル4同士を接続する複数のバスバー6を各相別に備え、各バスバー6は、導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを有し、異相のコイル4に接続された複数のバスバー6の半導電層12同士が、各バスバー6の少なくとも一カ所において互いに接触する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの複数のコイルに電力を供給する配電部材、当該配電部材を用いたステータ、及び当該ステータを用いたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電気自動車等のモータに使用される配電部品が開示されている。当該配電部品においては、フッ素樹脂絶縁体によって被覆された導体が所定の長さに切断されることにより配電パーツが形成され、複数の配電パーツがリング状に組み合わされることによって、U,V,Wの各相の相部品が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3681366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド電気自動車においては、モータの高出力化が求められており、それを実現するための方策の一つとして、ステータのコイルへの印加電圧が高電圧化される傾向にある。
【0005】
コイルへの印加電圧が高電圧化されると、モータの相間電圧は上昇する。そのため、各相のコイルを接続するバスバーにおいても相間電圧は上昇し、異相のコイルに接続されたバスバー間で部分放電が発生しやすくなる。しかしながら、上記特許文献1に開示された配電部品によると、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合に生じる異相の配電部品間での部分放電に対して、何ら対策が施されていない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相の導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な、配電部材、ステータ、及びモータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る配電部材は、環状に配列された複数のコイルを有するステータに接続される配電部材であって、前記複数のコイルは、各相別に直列接続されており、同相のコイル同士を接続する複数の導電性部材を各相別に備え、各前記導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有し、異相のコイルに接続された複数の前記導電性部材の前記半導電層同士が、各前記導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触することを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る配電部材によれば、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る配電部材は、第1の態様に係る配電部材において特に、前記導電性部材は略四角形の断面形状を有し、互いに隣接する複数の前記導電性部材同士が各々の平面同士で接触することを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る配電部材によれば、互いに隣接する複数の導電性部材同士が各々の平面同士で接触する。これにより、接触面積を広げることができるため、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る配電部材は、第1又は第2の態様に係る配電部材において特に、前記導電性部材は、コイルに接続される湾曲形状の接続部を有し、前記湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を前記湾曲形状に接触させることにより、前記接続部と前記コイルとが互いに接続されることを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係る配電部材によれば、湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を湾曲形状に接触させることにより、接続部とコイルとが互いに接続される。これにより、接続部とコイルとを簡易かつ確実に接続することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る配電部材は、第3の態様に係る配電部材において特に、前記接続部は、前記導体の露出部分と、前記半導電層との間に、前記絶縁層の露出部分を有することを特徴とするものである。
【0014】
第4の態様に係る配電部材によれば、接続部は、導体の露出部分と、半導電層との間に、絶縁層の露出部分を有する。従って、絶縁層の露出部分の距離によって導体の露出部分と半導電層とを互いに離間することができるため、導体と半導電層とを電気的に絶縁することが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るステータは、環状に配列された複数のコイルと、第1の態様に係る配電部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0016】
第5の態様に係るステータによれば、ステータが第1の態様に係る配電部材を備えることにより、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様に係るモータは、第5の態様に係るステータと、ロータと、を備えることを特徴とするものである。
【0018】
第6の態様に係るモータによれば、モータが第5の態様に係るステータを備えることにより、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相の導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な、配電部材、ステータ、及びモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】モータの使用例を示す図である。
【図3】バスバーの構造の第1の例を示す断面図である。
【図4】バスバーの構造の第2の例を示す断面図である。
【図5】バスバーの端部に施されている端部処理を示す図である。
【図6】バスバーの構造を示す図である。
【図7】バスバーの構造を示す図である。
【図8】バスバーの構造を示す図である。
【図9】バスバーの製造工程を示す図である。
【図10】ステータを側方から眺めた場合のバスバーのレイアウトを平面的に示す図である。
【図11】ステータを側方から眺めた場合のバスバーの他のレイアウトを平面的に示す図である。
【図12】バスバーの製造工程を示す図である。
【図13】バスバーとコイルとを接続する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ1の全体構成を模式的に示す図である。図1に示すようにモータ1は、円環状のステータ3と、ステータ3の円環内に配置されたロータ2とを備えて構成されている。ステータ3は、分割された複数個のコイルが円環に沿って並設された構造(いわゆる分割ステータ)を有している。本実施の形態の例では、ステータ6は、U相の6個のコイル4U1〜4U6と、V相の6個のコイル4V1〜4V6と、W相の6個のコイル4W1〜4W6とを有している。また、ステータ3には、配電部材5が接続されている。配電部材5は、コイル4U1〜4U6に電力を供給するためのバスバー6Uと、コイル4V1〜4V6に電力を供給するためのバスバー6Vと、コイル4W1〜4W6に電力を供給するためのバスバー6Wと、中性点用のバスバー6Nとを有している。なお、本明細書においては、コイル4U1〜4U6,4V1〜4V6,4W1〜4W6を特に区別しない場合、総称して「コイル4」と表記する。また、バスバー6U,6V,6W,6Nを特に区別しない場合、総称して「バスバー6」と表記する。
【0023】
図2は、モータ1の使用例を示す図である。コイル4U1〜4U6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。コイル4V1〜4V6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。コイル4W1〜4W6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。
【0024】
図3は、バスバー6の構造の第1の例を示す断面図である。バスバー6は、円形の断面構造を有しており、中心の導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを含む構造を成している。導体10の材質は、例えば銅である。絶縁層11の材質は、例えばポリアミドイミドである。半導電層12の材質は、例えば、カーボンブラック粉末等の導電性物質が混練されたポリアミドイミドである。但し、各層の材質はこの例に限定されるものではない。半導電層12の表面抵抗率は106Ω/□未満(望ましくは104Ω/□未満)に設定されており、これにより、高い部分放電開始電圧(104Ω/□未満で3800Vp以上)が実現される。
【0025】
図4は、バスバー6の構造の第2の例を示す断面図である。バスバー6は、角部が丸味を帯びた長方形状の断面構造を有しており、図3の例と同様に、中心の導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを含む構造を成している。
【0026】
図5は、バスバー6の端部に施されている端部処理を示す図である。バスバー6の端部においては、半導電層12及び絶縁層11を剥離することによって導体10が露出されるが、その際、半導電層12のみを剥離することによって絶縁層11が露出した領域を、導体10と半導電層12との間に所定の距離だけ残す。これにより、当該領域を間に挟むことによって、導体10と半導電層12とが互いに電気的に分離される。また、導体10はコイル4の巻線に接続されるが、巻線と導体10との接続箇所及びその周辺箇所が、モールド、ポッティング、又は含浸等の処理によって樹脂封止されることにより、絶縁が確保される。
【0027】
図6は、バスバー6Uの構造を示す図である。バスバー6Uは、複数のバスバー6U1〜6U6を有している。バスバー6U1は、外部接続端子20Uとコイル4U1の入力端子(つまりコイルの巻線の入力端)とを接続する。バスバー6U2は、コイル4U1の出力端子(つまりコイルの巻線の出力端)とコイル4U2の入力端子とを接続する。バスバー6U3は、コイル4U2の出力端子とコイル4U3の入力端子とを接続する。バスバー6U4は、コイル4U3の出力端子とコイル4U4の入力端子とを接続する。バスバー6U5は、コイル4U4の出力端子とコイル4U5の入力端子とを接続する。バスバー6U6は、コイル4U5の出力端子とコイル4U6の入力端子とを接続する。
【0028】
図7は、バスバー6Vの構造を示す図である。バスバー6Vは、複数のバスバー6V1〜6V6を有している。バスバー6V1は、外部接続端子20Vとコイル4V1の入力端子とを接続する。バスバー6V2は、コイル4V1の出力端子とコイル4V2の入力端子とを接続する。バスバー6V3は、コイル4V2の出力端子とコイル4V3の入力端子とを接続する。バスバー6V4は、コイル4V3の出力端子とコイル4V4の入力端子とを接続する。バスバー6V5は、コイル4V4の出力端子とコイル4V5の入力端子とを接続する。バスバー6V6は、コイル4V5の出力端子とコイル4V6の入力端子とを接続する。
【0029】
図8は、バスバー6Wの構造を示す図である。バスバー6Wは、複数のバスバー6W1〜6W6を有している。バスバー6W1は、外部接続端子20Wとコイル4W1の入力端子とを接続する。バスバー6W2は、コイル4W1の出力端子とコイル4W2の入力端子とを接続する。バスバー6W3は、コイル4W2の出力端子とコイル4W3の入力端子とを接続する。バスバー6W4は、コイル4W3の出力端子とコイル4W4の入力端子とを接続する。バスバー6W5は、コイル4W4の出力端子とコイル4W5の入力端子とを接続する。バスバー6W6は、コイル4W5の出力端子とコイル4W6の入力端子とを接続する。
【0030】
図9は、バスバー6Nの構造を示す図である。バスバー6Nは、各コイル4U6,4V6,4W6の出力端子同士を接続する。
【0031】
図10は、ステータ3を側方から眺めた場合のバスバー6U,6V,6Wのレイアウトを平面的に示す図である。各バスバー6U,6V,6Wは、その少なくとも一カ所において、隣接する異相のバスバー6U,6V,6Wと接触している。例えば、U相のバスバー6U3は、V相のバスバー6V2,6V3と接触している。また、V相のバスバー6V2は、U相のバスバー6U2,6U3及びW相のバスバー6W1,6W2と接触している。また、W相のバスバー6W2は、V相のバスバー6V2,6V3と接触している。これにより、バスバー6U,6V,6Wの各半導電層12同士が互いに接触する。
【0032】
隣接するバスバー6U,6V,6W同士は、互いに接触させた状態で、クリップ等の留め具によって互いに固定される。あるいは、留め具を用いる代わりに、粘着テープや紐等を用いて固定してもよい。あるいは、ステータ3の外周面に嵌め込み構造を形成し、当該嵌め込み構造にバスバー6U,6V,6Wを嵌め込むことにより、互いに接触させた状態でバスバー6U,6V,6Wを固定してもよい。また、隣接するバスバー6U,6V,6W同士を確実に接触させるべく、バスバー6U,6V,6Wを撚った状態で固定してもよい。
【0033】
図11は、ステータ3を側方から眺めた場合のバスバー6U,6V,6Wの他のレイアウトを平面的に示す図である。図10に示した例では、バスバー6U,6V,6Wはいずれも直線状であるため、バスバー6Uとバスバー6Wとの間に隙間50が生じる。そして、この隙間50が生じている箇所においては、バスバー6Uとバスバー6Wとが互いに接触していない。そこで、図11に示すように、バスバー6U,6Wの形状を、隙間50を埋めるように部分的に折れ曲がった形状とする。これにより、バスバー6Uとバスバー6Wとを互いに接触させることができる。
【0034】
図12は、バスバー6の製造工程を示す図である。まず、図12の(A)に示すように、図3又は図4に示した構造を有する直線状の巻線を所定の長さに切断する。これにより、直線状のバスバー6が形成される。同様のバスバーを必要数準備する。
【0035】
次に、図12の(B)に示すように、直線状のバスバー6の両端部を同一方向に折り曲げることにより、直線状部分から突出した突出形状の接続部70を形成する。その後、図示は省略するが、異相のバスバー6(例えばバスバー6U1,6V1,6W1)を互いに接触させた状態で、クリップ等の留め具によって互いに固定する。これにより、異相のバスバー6の各半導電層12同士が互いに接触する。なお、留め具を用いる代わりに、粘着テープや紐等を用いて固定してもよい。また、ステータ3の外周面に嵌め込み構造を形成し、当該嵌め込み構造にバスバー6を嵌め込むことにより、互いに接触させた状態でバスバー6を固定してもよい。また、バスバー6同士を確実に接触させるべく、バスバー6を撚った状態で固定してもよい。
【0036】
次に図12の(C)を参照して、下に向けた状態で接続部70を溶剤48に浸漬する。溶剤48は、例えば、常温浸漬タイプのソルコート#10S等のアルカリ性剥離剤である。なお、強アルカリの高温浸漬タイプの剥離剤を用いることもできるが、この場合は、絶縁層11が溶解しないような条件設定が必要である。この例において、半導電層12の材質は、溶剤48に対して可溶性の材質である。例えば、カーボンブラック、デンカブラック、又はケッチェンブラック等のカーボン微粉末を分散させた、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエーテルサルホン、又はポリエーテルイミド等である。また、絶縁層11の材質は、溶剤48に対して難溶性の材質(例えばポリアミドイミド)である。溶剤48に対して半導電層12は可溶性であり、絶縁層11は難溶性であるため、接続部70を溶剤48に浸漬することにより、図12の(D)に示すように、半導電層12が除去されて絶縁層11が露出する。
【0037】
次に図12の(E)を参照して、露出した絶縁層11の一部(図12の例では下端部分)を、機械的切削又はレーザ照射等によって除去することにより、導体10を露出させる。導体10の露出箇所と半導電層12との間に介在する絶縁層11の距離によって、導体10と半導電層12との絶縁が確保されている。
【0038】
次に図12の(F)を参照して、露出した導体10をU字状に折り曲げることにより、湾曲形状を形成する。また、ステータ3の外周形状に沿ってバスバー6を円弧状に整形する。
【0039】
図13は、バスバー6とコイル4とを接続する工程を示す図である。まず図13の(A)を参照して、コイル4の巻線50の先端部を、U字状の導体10の内周側に挿通する。
【0040】
次に図13の(B)を参照して、巻線50の先端部を折り曲げて、導体10に接触させる。また、U字状の導体10をさらに折り曲げることにより、巻線50と導体10とを固定する。ここで、巻線50の先端部に導体10を複数回巻き付けることにより、巻線50と導体10との接触が確実なものとなる。その後、巻線50と導体10との接続箇所及びその周辺箇所を、モールド、ポッティング、又は含浸等の処理によって樹脂封止することにより、絶縁を確保する。その際、導体10の露出部分の全体を樹脂封止することが望ましい。
【0041】
このように本実施の形態に係る配電部材5によれば、各バスバー6(導電性部材)は、導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを有する。そして、異相のコイル4に接続された複数のバスバー6の半導電層12同士が、各バスバー6の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層12同士は等電位となるため、コイル4への印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイル4に接続されたバスバー6間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0042】
また、図4に示したように略四角形の断面形状を有するバスバー6を採用することにより、互いに隣接する複数のバスバー6同士が各々の平面同士で面接触する。これにより、接触面積を広げることができるため、異相のコイル4に接続されたバスバー6間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
また、図13に示したように、接続部70の湾曲形状の内周側にコイル4の巻線50の端部を挿通して、当該端部を湾曲形状に接触させることにより、接続部70とコイル4とが互いに接続される。これにより、接続部70とコイル4とを簡易かつ確実に接続することが可能となる。
【0044】
また、図5,12,13に示したように、接続部70は、導体10の露出部分と、半導電層12との間に、絶縁層11の露出部分を有する。従って、絶縁層11の露出部分の距離によって導体10の露出部分と半導電層12とを互いに離間することができるため、導体10と半導電層12とを電気的に絶縁することが可能となる。
【0045】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
4U1〜4U6,4V1〜4V6,4W1〜4W6 コイル
5 配電部材
6U1〜6U6,6V1〜6V6,6W1〜6W6,6N バスバー
10 導体
11 絶縁層
12 半導電層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの複数のコイルに電力を供給する配電部材、当該配電部材を用いたステータ、及び当該ステータを用いたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電気自動車等のモータに使用される配電部品が開示されている。当該配電部品においては、フッ素樹脂絶縁体によって被覆された導体が所定の長さに切断されることにより配電パーツが形成され、複数の配電パーツがリング状に組み合わされることによって、U,V,Wの各相の相部品が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3681366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド電気自動車においては、モータの高出力化が求められており、それを実現するための方策の一つとして、ステータのコイルへの印加電圧が高電圧化される傾向にある。
【0005】
コイルへの印加電圧が高電圧化されると、モータの相間電圧は上昇する。そのため、各相のコイルを接続するバスバーにおいても相間電圧は上昇し、異相のコイルに接続されたバスバー間で部分放電が発生しやすくなる。しかしながら、上記特許文献1に開示された配電部品によると、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合に生じる異相の配電部品間での部分放電に対して、何ら対策が施されていない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相の導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な、配電部材、ステータ、及びモータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る配電部材は、環状に配列された複数のコイルを有するステータに接続される配電部材であって、前記複数のコイルは、各相別に直列接続されており、同相のコイル同士を接続する複数の導電性部材を各相別に備え、各前記導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有し、異相のコイルに接続された複数の前記導電性部材の前記半導電層同士が、各前記導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触することを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る配電部材によれば、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る配電部材は、第1の態様に係る配電部材において特に、前記導電性部材は略四角形の断面形状を有し、互いに隣接する複数の前記導電性部材同士が各々の平面同士で接触することを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る配電部材によれば、互いに隣接する複数の導電性部材同士が各々の平面同士で接触する。これにより、接触面積を広げることができるため、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る配電部材は、第1又は第2の態様に係る配電部材において特に、前記導電性部材は、コイルに接続される湾曲形状の接続部を有し、前記湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を前記湾曲形状に接触させることにより、前記接続部と前記コイルとが互いに接続されることを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係る配電部材によれば、湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を湾曲形状に接触させることにより、接続部とコイルとが互いに接続される。これにより、接続部とコイルとを簡易かつ確実に接続することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る配電部材は、第3の態様に係る配電部材において特に、前記接続部は、前記導体の露出部分と、前記半導電層との間に、前記絶縁層の露出部分を有することを特徴とするものである。
【0014】
第4の態様に係る配電部材によれば、接続部は、導体の露出部分と、半導電層との間に、絶縁層の露出部分を有する。従って、絶縁層の露出部分の距離によって導体の露出部分と半導電層とを互いに離間することができるため、導体と半導電層とを電気的に絶縁することが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るステータは、環状に配列された複数のコイルと、第1の態様に係る配電部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0016】
第5の態様に係るステータによれば、ステータが第1の態様に係る配電部材を備えることにより、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様に係るモータは、第5の態様に係るステータと、ロータと、を備えることを特徴とするものである。
【0018】
第6の態様に係るモータによれば、モータが第5の態様に係るステータを備えることにより、各導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有する。そして、異相のコイルに接続された複数の導電性部材の半導電層同士が、各導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層同士は等電位となるため、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイルに接続された導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コイルへの印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相の導電性部材間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能な、配電部材、ステータ、及びモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】モータの使用例を示す図である。
【図3】バスバーの構造の第1の例を示す断面図である。
【図4】バスバーの構造の第2の例を示す断面図である。
【図5】バスバーの端部に施されている端部処理を示す図である。
【図6】バスバーの構造を示す図である。
【図7】バスバーの構造を示す図である。
【図8】バスバーの構造を示す図である。
【図9】バスバーの製造工程を示す図である。
【図10】ステータを側方から眺めた場合のバスバーのレイアウトを平面的に示す図である。
【図11】ステータを側方から眺めた場合のバスバーの他のレイアウトを平面的に示す図である。
【図12】バスバーの製造工程を示す図である。
【図13】バスバーとコイルとを接続する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ1の全体構成を模式的に示す図である。図1に示すようにモータ1は、円環状のステータ3と、ステータ3の円環内に配置されたロータ2とを備えて構成されている。ステータ3は、分割された複数個のコイルが円環に沿って並設された構造(いわゆる分割ステータ)を有している。本実施の形態の例では、ステータ6は、U相の6個のコイル4U1〜4U6と、V相の6個のコイル4V1〜4V6と、W相の6個のコイル4W1〜4W6とを有している。また、ステータ3には、配電部材5が接続されている。配電部材5は、コイル4U1〜4U6に電力を供給するためのバスバー6Uと、コイル4V1〜4V6に電力を供給するためのバスバー6Vと、コイル4W1〜4W6に電力を供給するためのバスバー6Wと、中性点用のバスバー6Nとを有している。なお、本明細書においては、コイル4U1〜4U6,4V1〜4V6,4W1〜4W6を特に区別しない場合、総称して「コイル4」と表記する。また、バスバー6U,6V,6W,6Nを特に区別しない場合、総称して「バスバー6」と表記する。
【0023】
図2は、モータ1の使用例を示す図である。コイル4U1〜4U6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。コイル4V1〜4V6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。コイル4W1〜4W6は、インバータ8と中性点Nとの間で直列に接続されている。
【0024】
図3は、バスバー6の構造の第1の例を示す断面図である。バスバー6は、円形の断面構造を有しており、中心の導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを含む構造を成している。導体10の材質は、例えば銅である。絶縁層11の材質は、例えばポリアミドイミドである。半導電層12の材質は、例えば、カーボンブラック粉末等の導電性物質が混練されたポリアミドイミドである。但し、各層の材質はこの例に限定されるものではない。半導電層12の表面抵抗率は106Ω/□未満(望ましくは104Ω/□未満)に設定されており、これにより、高い部分放電開始電圧(104Ω/□未満で3800Vp以上)が実現される。
【0025】
図4は、バスバー6の構造の第2の例を示す断面図である。バスバー6は、角部が丸味を帯びた長方形状の断面構造を有しており、図3の例と同様に、中心の導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを含む構造を成している。
【0026】
図5は、バスバー6の端部に施されている端部処理を示す図である。バスバー6の端部においては、半導電層12及び絶縁層11を剥離することによって導体10が露出されるが、その際、半導電層12のみを剥離することによって絶縁層11が露出した領域を、導体10と半導電層12との間に所定の距離だけ残す。これにより、当該領域を間に挟むことによって、導体10と半導電層12とが互いに電気的に分離される。また、導体10はコイル4の巻線に接続されるが、巻線と導体10との接続箇所及びその周辺箇所が、モールド、ポッティング、又は含浸等の処理によって樹脂封止されることにより、絶縁が確保される。
【0027】
図6は、バスバー6Uの構造を示す図である。バスバー6Uは、複数のバスバー6U1〜6U6を有している。バスバー6U1は、外部接続端子20Uとコイル4U1の入力端子(つまりコイルの巻線の入力端)とを接続する。バスバー6U2は、コイル4U1の出力端子(つまりコイルの巻線の出力端)とコイル4U2の入力端子とを接続する。バスバー6U3は、コイル4U2の出力端子とコイル4U3の入力端子とを接続する。バスバー6U4は、コイル4U3の出力端子とコイル4U4の入力端子とを接続する。バスバー6U5は、コイル4U4の出力端子とコイル4U5の入力端子とを接続する。バスバー6U6は、コイル4U5の出力端子とコイル4U6の入力端子とを接続する。
【0028】
図7は、バスバー6Vの構造を示す図である。バスバー6Vは、複数のバスバー6V1〜6V6を有している。バスバー6V1は、外部接続端子20Vとコイル4V1の入力端子とを接続する。バスバー6V2は、コイル4V1の出力端子とコイル4V2の入力端子とを接続する。バスバー6V3は、コイル4V2の出力端子とコイル4V3の入力端子とを接続する。バスバー6V4は、コイル4V3の出力端子とコイル4V4の入力端子とを接続する。バスバー6V5は、コイル4V4の出力端子とコイル4V5の入力端子とを接続する。バスバー6V6は、コイル4V5の出力端子とコイル4V6の入力端子とを接続する。
【0029】
図8は、バスバー6Wの構造を示す図である。バスバー6Wは、複数のバスバー6W1〜6W6を有している。バスバー6W1は、外部接続端子20Wとコイル4W1の入力端子とを接続する。バスバー6W2は、コイル4W1の出力端子とコイル4W2の入力端子とを接続する。バスバー6W3は、コイル4W2の出力端子とコイル4W3の入力端子とを接続する。バスバー6W4は、コイル4W3の出力端子とコイル4W4の入力端子とを接続する。バスバー6W5は、コイル4W4の出力端子とコイル4W5の入力端子とを接続する。バスバー6W6は、コイル4W5の出力端子とコイル4W6の入力端子とを接続する。
【0030】
図9は、バスバー6Nの構造を示す図である。バスバー6Nは、各コイル4U6,4V6,4W6の出力端子同士を接続する。
【0031】
図10は、ステータ3を側方から眺めた場合のバスバー6U,6V,6Wのレイアウトを平面的に示す図である。各バスバー6U,6V,6Wは、その少なくとも一カ所において、隣接する異相のバスバー6U,6V,6Wと接触している。例えば、U相のバスバー6U3は、V相のバスバー6V2,6V3と接触している。また、V相のバスバー6V2は、U相のバスバー6U2,6U3及びW相のバスバー6W1,6W2と接触している。また、W相のバスバー6W2は、V相のバスバー6V2,6V3と接触している。これにより、バスバー6U,6V,6Wの各半導電層12同士が互いに接触する。
【0032】
隣接するバスバー6U,6V,6W同士は、互いに接触させた状態で、クリップ等の留め具によって互いに固定される。あるいは、留め具を用いる代わりに、粘着テープや紐等を用いて固定してもよい。あるいは、ステータ3の外周面に嵌め込み構造を形成し、当該嵌め込み構造にバスバー6U,6V,6Wを嵌め込むことにより、互いに接触させた状態でバスバー6U,6V,6Wを固定してもよい。また、隣接するバスバー6U,6V,6W同士を確実に接触させるべく、バスバー6U,6V,6Wを撚った状態で固定してもよい。
【0033】
図11は、ステータ3を側方から眺めた場合のバスバー6U,6V,6Wの他のレイアウトを平面的に示す図である。図10に示した例では、バスバー6U,6V,6Wはいずれも直線状であるため、バスバー6Uとバスバー6Wとの間に隙間50が生じる。そして、この隙間50が生じている箇所においては、バスバー6Uとバスバー6Wとが互いに接触していない。そこで、図11に示すように、バスバー6U,6Wの形状を、隙間50を埋めるように部分的に折れ曲がった形状とする。これにより、バスバー6Uとバスバー6Wとを互いに接触させることができる。
【0034】
図12は、バスバー6の製造工程を示す図である。まず、図12の(A)に示すように、図3又は図4に示した構造を有する直線状の巻線を所定の長さに切断する。これにより、直線状のバスバー6が形成される。同様のバスバーを必要数準備する。
【0035】
次に、図12の(B)に示すように、直線状のバスバー6の両端部を同一方向に折り曲げることにより、直線状部分から突出した突出形状の接続部70を形成する。その後、図示は省略するが、異相のバスバー6(例えばバスバー6U1,6V1,6W1)を互いに接触させた状態で、クリップ等の留め具によって互いに固定する。これにより、異相のバスバー6の各半導電層12同士が互いに接触する。なお、留め具を用いる代わりに、粘着テープや紐等を用いて固定してもよい。また、ステータ3の外周面に嵌め込み構造を形成し、当該嵌め込み構造にバスバー6を嵌め込むことにより、互いに接触させた状態でバスバー6を固定してもよい。また、バスバー6同士を確実に接触させるべく、バスバー6を撚った状態で固定してもよい。
【0036】
次に図12の(C)を参照して、下に向けた状態で接続部70を溶剤48に浸漬する。溶剤48は、例えば、常温浸漬タイプのソルコート#10S等のアルカリ性剥離剤である。なお、強アルカリの高温浸漬タイプの剥離剤を用いることもできるが、この場合は、絶縁層11が溶解しないような条件設定が必要である。この例において、半導電層12の材質は、溶剤48に対して可溶性の材質である。例えば、カーボンブラック、デンカブラック、又はケッチェンブラック等のカーボン微粉末を分散させた、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエーテルサルホン、又はポリエーテルイミド等である。また、絶縁層11の材質は、溶剤48に対して難溶性の材質(例えばポリアミドイミド)である。溶剤48に対して半導電層12は可溶性であり、絶縁層11は難溶性であるため、接続部70を溶剤48に浸漬することにより、図12の(D)に示すように、半導電層12が除去されて絶縁層11が露出する。
【0037】
次に図12の(E)を参照して、露出した絶縁層11の一部(図12の例では下端部分)を、機械的切削又はレーザ照射等によって除去することにより、導体10を露出させる。導体10の露出箇所と半導電層12との間に介在する絶縁層11の距離によって、導体10と半導電層12との絶縁が確保されている。
【0038】
次に図12の(F)を参照して、露出した導体10をU字状に折り曲げることにより、湾曲形状を形成する。また、ステータ3の外周形状に沿ってバスバー6を円弧状に整形する。
【0039】
図13は、バスバー6とコイル4とを接続する工程を示す図である。まず図13の(A)を参照して、コイル4の巻線50の先端部を、U字状の導体10の内周側に挿通する。
【0040】
次に図13の(B)を参照して、巻線50の先端部を折り曲げて、導体10に接触させる。また、U字状の導体10をさらに折り曲げることにより、巻線50と導体10とを固定する。ここで、巻線50の先端部に導体10を複数回巻き付けることにより、巻線50と導体10との接触が確実なものとなる。その後、巻線50と導体10との接続箇所及びその周辺箇所を、モールド、ポッティング、又は含浸等の処理によって樹脂封止することにより、絶縁を確保する。その際、導体10の露出部分の全体を樹脂封止することが望ましい。
【0041】
このように本実施の形態に係る配電部材5によれば、各バスバー6(導電性部材)は、導体10と、導体10を被覆する絶縁層11と、絶縁層11を被覆する半導電層12とを有する。そして、異相のコイル4に接続された複数のバスバー6の半導電層12同士が、各バスバー6の少なくとも一カ所において互いに接触する。接触することによって半導電層12同士は等電位となるため、コイル4への印加電圧が高電圧化された場合であっても、異相のコイル4に接続されたバスバー6間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0042】
また、図4に示したように略四角形の断面形状を有するバスバー6を採用することにより、互いに隣接する複数のバスバー6同士が各々の平面同士で面接触する。これにより、接触面積を広げることができるため、異相のコイル4に接続されたバスバー6間での部分放電の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
また、図13に示したように、接続部70の湾曲形状の内周側にコイル4の巻線50の端部を挿通して、当該端部を湾曲形状に接触させることにより、接続部70とコイル4とが互いに接続される。これにより、接続部70とコイル4とを簡易かつ確実に接続することが可能となる。
【0044】
また、図5,12,13に示したように、接続部70は、導体10の露出部分と、半導電層12との間に、絶縁層11の露出部分を有する。従って、絶縁層11の露出部分の距離によって導体10の露出部分と半導電層12とを互いに離間することができるため、導体10と半導電層12とを電気的に絶縁することが可能となる。
【0045】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
4U1〜4U6,4V1〜4V6,4W1〜4W6 コイル
5 配電部材
6U1〜6U6,6V1〜6V6,6W1〜6W6,6N バスバー
10 導体
11 絶縁層
12 半導電層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配列された複数のコイルを有するステータに接続される配電部材であって、
前記複数のコイルは、各相別に直列接続されており、
同相のコイル同士を接続する複数の導電性部材を各相別に備え、
各前記導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有し、
異相のコイルに接続された複数の前記導電性部材の前記半導電層同士が、各前記導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する、配電部材。
【請求項2】
前記導電性部材は略四角形の断面形状を有し、
互いに隣接する複数の前記導電性部材同士が各々の平面同士で接触する、請求項1に記載の配電部材。
【請求項3】
前記導電性部材は、コイルに接続される湾曲形状の接続部を有し、
前記湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を前記湾曲形状に接触させることにより、前記接続部と前記コイルとが互いに接続される、請求項1又は2に記載の配電部材。
【請求項4】
前記接続部は、前記導体の露出部分と、前記半導電層との間に、前記絶縁層の露出部分を有する、請求項3に記載の配電部材。
【請求項5】
環状に配列された複数のコイルと、
請求項1に記載の配電部材と、
を備える、ステータ。
【請求項6】
請求項5に記載のステータと、
ロータと、
を備える、モータ。
【請求項1】
環状に配列された複数のコイルを有するステータに接続される配電部材であって、
前記複数のコイルは、各相別に直列接続されており、
同相のコイル同士を接続する複数の導電性部材を各相別に備え、
各前記導電性部材は、導体と、当該導体を被覆する絶縁層と、当該絶縁層を被覆する半導電層とを有し、
異相のコイルに接続された複数の前記導電性部材の前記半導電層同士が、各前記導電性部材の少なくとも一カ所において互いに接触する、配電部材。
【請求項2】
前記導電性部材は略四角形の断面形状を有し、
互いに隣接する複数の前記導電性部材同士が各々の平面同士で接触する、請求項1に記載の配電部材。
【請求項3】
前記導電性部材は、コイルに接続される湾曲形状の接続部を有し、
前記湾曲形状の内周側にコイルの巻線の端部を挿通して、当該端部を前記湾曲形状に接触させることにより、前記接続部と前記コイルとが互いに接続される、請求項1又は2に記載の配電部材。
【請求項4】
前記接続部は、前記導体の露出部分と、前記半導電層との間に、前記絶縁層の露出部分を有する、請求項3に記載の配電部材。
【請求項5】
環状に配列された複数のコイルと、
請求項1に記載の配電部材と、
を備える、ステータ。
【請求項6】
請求項5に記載のステータと、
ロータと、
を備える、モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−55035(P2012−55035A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193563(P2010−193563)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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