説明

酒樽および酒樽用表面装飾布

【課題】酒樽の表側となる側面部分に所望の表書き情報内容を少ない作業的および経済的負担で簡単に表示させることができる酒樽を提供する。
【解決手段】酒樽100は、飲料を収容する本体部102が菰を模した包装体103で包装された包装収容体101を備えている。包装収容体101は、縦綱107によって縛られている。包装体103は、筒状に形成されており、その表面に表面装飾布104が縫合されている。表面装飾布104は、包装収容体101の側面部における互いに隣り合う2つの縦縄107a,107bの間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報105が形成されている。表書き情報105は、包装体103の表面の菰形状を模した菰柄情報105a上に文字情報105bおよび図柄情報105cが形成されて構成されている。そして、表面装飾布104は、縦辺104a,104bが縦縄107a,107bの内側に配置されて縫合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面および下面を有した樽状の本体部を菰(こも)などの包装体と縄とを用いて包装した形態の酒樽および酒樽用表面装飾布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、慶事などの鏡開きにおいて用いられる酒樽として、蓋が嵌った有底筒状の本体部を菰(こも)などの包装体と縄とで包装した形態の酒樽が知られている。このような酒樽の本体部を包装する包装体は、藁やマコモをむしろ状に編んだ天然素材製の菰(こも)やポリプロピレンなどの樹脂材をむしろ状に成形した樹脂製の菰が用いられている。そして、この包装体は、表面に商標、銘柄、慶事の対象者名または祝言などの文字や各種図柄からなる表書き情報が形成されており、酒樽の表面を装飾している。
【0003】
従来、菰からなる包装体への表書き情報の形成は、例えば、下記特許文献1,2に示すように、表書き情報が印刷された表示物を包装体表面に貼り付ける方法や、包装体表面自体に表書き情報を熱転写方式により形成する方法によって行われている。これらの場合、包装体の表面の凹凸状の編目部分に精度良く表示物や表書き情報を定着させるために、編目部分を加熱圧縮して平面状に塑性加工したり、表書き情報が形成された多層構造の転写紙を編目部分に加熱加圧したりする加工が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平02−1249号公報
【特許文献2】特開2004−17343号公報
【0005】
しかしながら、上記各特許文献1,2に示された包装体への表書き情報の表示方法においては、包装体表面の塑性加工や多層構造の転写紙の製造および包装体への熱転写工程が煩雑であるという問題がある。この場合、酒樽の側面部において酒樽の表側となる表書き情報の表示部分が側面部全体に占める割合は、全側面部の約1/3〜1/2にも及ぶため、表書き情報の表示部分の前記作業的および経済的負担は極めて大きくなる。このため、結果として酒樽の側面部に表示される表書き情報の内容が無難で汎用性の高い内容となる傾向が強く、個々の慶事内容に応じたオリジナルな表書き情報を表示する酒樽が実質的に製作され難いという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、酒樽の表側となる側面部分に所望の表書き情報内容を少ない作業的および経済的負担で簡単に表示させることができる酒樽および酒樽用表面装飾布を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、上面および下面を有した樽状の本体部を包装体で包装した包装収容体と、包装収容体における上面側と下面側との間を包装収容体の側面部を介して掛けられる少なくとも2つ以上の縦縄と、包装収容体の側面部にて互いに隣り合う2つの前記縦縄の間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報が表された表面装飾布とを備え、表面装飾布は、前記互いに隣り合う2つの縦縄間における包装体上に配置されることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、酒樽は、包装収容体の側面部における互いに隣り合う2つの縦縄の間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報が表された表面装飾布を備えるとともに、同表面装飾布が前記互いに隣り合う2つの縦縄間における包装体上に配置されている。これにより、従来技術における包装体の塑性加工や多層構造の転写紙の製造および包装体への熱転写工程が不要であり、簡単に所望する表書き情報を酒樽の側面部に表示させることができる。そして、この場合、表面装飾布は、互いに隣り合う2つの縦縄の間隔に対応する長さに形成されているため、表面装飾布の両端部が包装体と前記2つの縦縄との間に位置する。すなわち、表面装飾布の両端部が2つの縦縄の下に隠れる。これにより、包装体上に配置される表面装飾布の両端部を目立たなくすることができ、酒樽の美観を損なうことなく表面装飾布を配置できる。また、包装体における表面装飾布の配置部分は、同表面装飾布によって覆われるため、同部分の成形を必要最小限の簡易なものとすることができる。これらの結果、酒樽の表面となる側面部分に所望する表書き情報を少ない作業的および経済的負担で簡単に表示させることができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記酒樽において、表面装飾布は、前記互いに隣り合う2つの縦縄側および包装体側のうちの少なくとも一方にそれぞれ接合されていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、表面装飾布は、前記互いに隣り合う2つの縦縄側および包装体側のうちの少なくとも一方にそれぞれ取り付けられる。これにより、表面装飾布と包装体との取り付け部分が縦縄に隠れて外部から視認し難くなるため酒樽の美観を損ねることがない。なお、この場合、表面装飾布を縦縄に取り付けることにより、縦縄の位置ずれにより表面装飾布の端部が露出することが防止できるとともに、包装収容体から縦縄を外した際、外した縦縄とともに表面装飾布を包装収容体から取り外すことができ、鏡開きなどにより表面装飾布が汚損されることを防止できる。また、表面装飾布を包装体に取り付けることにより、包装収容体から縦縄を外しても表面装飾布が包装体に残るため、鏡開きにおいても酒樽の装飾を維持させることもできる。また、さらに、表面装飾布を包装体および縦縄にそれぞれ取り付けることにより、包装体と縦縄とが表面装飾布を介して一体となるため、包装体、表面装飾体および縦縄の相互の位置ずれが防止でき美観を維持できるとともに、縦縄を解いた場合であっても縦縄が包装収容体から外れることがなく縦縄を散乱させることなく酒樽の美観を維持することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記酒樽において、包装収容体の側面部には、前記少なくとも2つ以上の縦縄を互いに繋ぐ横縄が設けられており、表面装飾布は、横縄が貫通可能な2つの切欠き部が前記互いに隣り合う2つの縦縄の間隔より短い間隔を介してそれぞれ形成されていることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、酒樽は、包装収容体の側面に前記少なくとも2つ以上の縦縄を互いに繋ぐ横縄が設けられており、表面装飾布は横縄が貫通可能な2つの切欠き部が前記互いに隣り合う2つの縦縄の間隔より短い間隔を介してそれぞれ形成されている。これにより、表面装飾体に設けた2つの切欠き部に包装収容体の側面に周方向に沿って設けられた横縄を通すことにより、表面装飾体を横縄の外側に配置することができる。すなわち、横縄の存在を考慮することなく自由な大きさおよび配置で表面装飾体の表面に表書き情報を形成することができる。この結果、従来にない斬新なデザインの酒樽を製作することができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記酒樽において、表面装飾布に表される表書き情報は、包装体の表面を模した図柄が含まれていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、酒樽は、表面装飾布の表面に包装体の表面を模した図柄が形成されている。これにより、表面装飾布と包装体との一体感がより向上して酒樽の美観を損ねることがない。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記酒樽において、表面装飾布は、包装体に縫合されていることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、酒樽は、表面装飾布が包装体に縫合されている。これにより、酒樽の開封後に表面装飾布を損傷することなく包装体から容易に分離することができる。したがって、包装体から分離した表面装飾布を慶事の記念品として残すことができるとともに、衣服の一部や壁掛けに加工して付加価値の高い記念品にすることもできる。なお、表面装飾布を縫合する糸を表面装飾布の色と同色または同系の色を用いることにより、表面装飾布の包装体への縫合線を目立たなくすることができる。
【0017】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記酒樽において、表面装飾布は、表面装飾布は、包装収容体の側面部における上縁部から上面側および下縁部から下面側のうちの少なくとも一方の範囲内で包装体に接合されていることにある。
【0018】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、酒樽は、表面装飾布の縁部が包装収容体における側面部の縁部から上面および/または下面を覆う包装体に取り付けられている。これにより、酒樽を正面視した場合、表面装飾布と包装体との上側および/または下側の境界部分が目立たなくなるため酒樽の美観を損なうことを防止することができる。
【0019】
また、本発明は、酒樽の発明として実施できるだけでなく、酒樽用表面装飾布の発明としても実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る酒樽の全体構成を概略的に示した平面図である。
【図2】図1に示す酒樽の全体構成を概略的に示した正面図である。
【図3】図1に示す酒樽を構成する本体部の全体構成を概略的に示した斜視図である。
【図4】図1に示す酒樽を構成する表面装飾布の全体構成を概略的に示した正面図である。
【図5】図4に示す表面装飾布を用いたタペストリー全体構成を概略的に示した正面図である。
【図6】本発明の変形例に係る酒樽を構成する表面装飾布の全体構成を概略的に示した正面図である。
【図7】図6に示す表面装飾布で構成される酒樽の全体構成を概略的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る酒樽の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明に係る酒樽100の全体構成を概略的に示しており、図1は酒樽100の平面図であり、図2は酒樽100の正面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この酒樽100は、酒などの各種飲料を収容する収容体となる本体部が菰(こも)や縄で包装された構成の容器であり、慶事などの鏡開きにおいて広く用いられるものである。
【0022】
(酒樽100の構成)
酒樽100は、包装収容体101を備えている。包装体収容体101は、樽状に形成された本体部102と、同本体部102を包装する包装体103とで構成されている。本体部102は、図3に示すように、酒などの飲料を収容するための樹脂製の容器であり、上面が開放された有底円筒状に形成されている。この本体部102の下部には、本体部102の内部を底上げするための台座102aが形成されている。台座102aは、本体部102の外径より小さい外径の略円柱状に形成されている。
【0023】
また、本体部102における開放された上面には、蓋体102bが嵌め込まれている。蓋体102bは、本体部102の内部を塞ぐための円板状の樹脂製部材である。この蓋体102bは、酒樽100の鏡開きの際に木槌で叩かれることにより半分に割れるように構成されている。なお、本実施形態における酒樽100(本体部102)は、1斗樽(18リットル)を想定しているが、1斗樽より小さい大きさまたは大きい大きさで構成することもできる。
【0024】
包装体103は、本体部102を包装するための樹脂製の筒状部材であり、藁(わら)やマコモをむしろ状に編んだ菰(こも)を模して成形されている。具体的には、柔軟な樹脂製(例えば、ポリプロピレン樹脂)のシート材の表面を凸凹のむしろ状に成形するとともに同シート材を筒状に成形して構成されている。この包装体103は、本体部102を内部に収容した状態で上側開口部および下側開口部が樹脂製の締め縄103a(下側開口部は図示せず)によってそれぞれ絞られている。
【0025】
酒樽100の正面を構成する包装体103の表面には、表面装飾布104が設けられている。表面装飾布104は、図4に示すように、酒樽100の側面部のうち正面となる部分を装飾するための方形状の布部材である。本実施形態においては、表面装飾布104は、ちりめん素材で構成されている。なお、表面装飾布104は、ちりめん素材以外の絹織物のほか、各種植物繊維(例えば、麻、葛、木綿)や各種化学繊維からなる織物および不織布などで構成されていてもよい。この表面装飾布104は、縦辺104a,104b間である横の長さが本体部102の側面部に配置される後述する2つの縦縄107a,107b間の同側面部上での間隔(弧の長さ)に等しい長さに形成されるとともに、縦辺104a,104bに直交する縦の長さが本体部102の上面から台座102aの略中間部までの長さに形成されている。そして、この表面装飾布104の表面には、表書き情報105が形成されている。
【0026】
表書き情報105は、主として、酒樽100の内容物に関する事項の表示および酒樽100の正面部を装飾するためのものであり、商標、銘柄、慶事の対象者名または祝言などの文字や各種図柄から構成されている。本実施形態においては、表書き情報105は、菰柄情報105a、「祝」の文字からなる文字情報105bおよび花の図柄からなる図柄情報105cによって構成されている。これらのうち、菰柄情報105aは、前記包装体103の表面に形成された菰を模した図柄であり、文字情報105bおよび図柄情報105cを除く表面装飾布104の表面の全面に形成されている。この表面装飾布104は、4つの各縁(辺)がそれぞれ縫合糸106a,106b(図示左右の各縦辺104a,104bを縫合する縫合糸は図示せず)によってそれぞれ包装体103に縫合されている。この場合、縫合糸106a,106bは、表面装飾布104に形成された菰柄情報105aと同色で構成されている。
【0027】
表面装飾布104が縫合された包装体103で包装された本体部102、すなわち、包装収容体101は、縦縄107によって縛られている。縦縄107は、本体部102の表面に包装体103を固定するとともに、同包装体103によって包装された本体部102を持ち運びする際に用いる樹脂製の紐状部材である。本実施形態においては、縦縄107は、ポリプロピレン樹脂材を縄状に成形して構成されている。
【0028】
この縦縄107は、1本の縦縄107を2つに折った2本の束を包装収容体101の上面および底面にてクロスさせつつ同包装収容体101の側面部を介して縦方向に4回掛け回すことにより包装収容体101の周囲を縛っている。この場合、包装収容体101の側面部にて縦方向に沿って配置される4つの縦縄107a〜107dのうち、酒樽100の正面となる側面部に位置する2つの互いに隣り合う縦縄107a,107bは、前記正面となる側面部が正面視にて広く現れるように同側面部における正面視両端部側に寄せて配置されている。そして、包装収容体101の側面部上におけるこれら2つの縦縄107a,107bの間隔は、前記したように、表面装飾布104の縦辺104a,104b間の長さの設定基準となる。
【0029】
包装収容体101の側面部の上部および下部には、同側面部の周方向に沿って横縄108a,108bが巻き付けられている。これらの横縄108a,108bは、包装収容体101を縛る縦縄107a〜107dの位置ずれを防止するための樹脂製の紐状部材であり、各縦縄107a〜107dに巻き付けられながら包装収容体101の側面部上に巻き付けられている。本実施形態においては、横縄108a,108bは、縦縄107と同様のポリプロピレン樹脂材を縦縄107より細い縄状に成形して構成されており、包装収容体101および縦縄107a〜107dの各外周部をそれぞれ3周ずつ巻き付けられている。
【0030】
(酒樽100の製造)
次に、このように構成された酒樽100の製造過程について説明する。まず、作業者は、表面装飾布104の生地となるちりめん素材(図示せず)を用意して、表書き情報105を表面装飾布104の表面に印刷する。具体的には、作業者は、ちりめん素材を図示しない印刷機にセットして、表書き情報105のうち菰柄情報105aを印刷する。これにより、ちりめん素材の表面の全面に包装体103の表面を模した菰柄が形成される。次に、作業者は、前記印刷機を用いて、ちりめん素材表面に形成した菰柄情報105aの上から表書き情報105のうちの文字情報105bおよび図柄情報105cをそれぞれ印刷する。これにより、ちりめん素材の表面には、菰柄情報105a上に文字情報105bおよび図柄情報105cが印刷された表書き情報105が形成される。
【0031】
なお、ちりめん素材(表面装飾布104の表面)への表書き情報105の印刷は、菰柄情報105a、文字情報105bおよび図柄情報105cを一度の印刷処理によってまとめて印刷するようにしてもよい。また、ちりめん素材(表面装飾布104の表面)に形成する文字情報105bおよび図柄情報105cは、酒樽100の使用者が所望する文字(例えば、名前や名称(個人名、社名、地域名など)、祝い文字、願い事、商標や生年月日など)や図柄(例えば、各種絵柄、マーク、写真や家紋など)を単体でまたはこれらを適宜組み合わせたもので構成されていればよい。なお、作業者は、表書き情報105の印刷作業に先立って、表書き情報105を構成する菰柄情報105a、文字情報105bおよび図柄情報105cの内容や配置である表書き情報105のデザインを予め用意しておくことが必要である。
【0032】
次に、作業者は、表書き情報105が形成されたちりめん素材を裁断機を用いて酒樽100の仕様に応じて裁断する。本実施形態においては、ちりめん素材は、縦の長さが包装収容体101の上面から台座102aの略中間部までの長さで、かつ横の長さが包装収容体101の側面部に配置される2つの縦縄107a,107b間の同側面部上での長さの長方形状に裁断される。これにより、表書き情報105が形成された方形状の表面装飾布104が形成される。次に、作業者は、表面装飾布104を包装体103に縫合する。この場合、作業者は、予め別工程にて製作された包装体103と縫合糸106a,106bとをそれぞれ用意する。
【0033】
そして、作業者は、包装体103上における所定位置に表面装飾布104を配置してこれらを互いに縫合する。具体的には、作業者は、酒樽100の正面となる包装体103の中心部分に表面装飾布104の中心部を配置するとともに、同包装体103における本体部102の側面部の図示上側縁部が位置する部分に表面装飾布104の図示上側縁部を位置決めした状態で表面装飾布104の4つの各縁部をそれぞれ縫合する。この場合、作業者は、表面装飾布104の表面に印刷した菰柄情報105aと同色の縫合糸106a,106b(図示左右の各縦辺104a,104bを縫合する縫合糸は図示せず)を用いて表面装飾布104を包装体103の表面に縫合する。これにより、表面装飾布104上で縫合糸106a,106bを目立たなくすることができる。なお、縫合糸106a,106bは、表面装飾布104に形成された菰柄情報105aと同系色で構成されていれば表面装飾布104上で目立たなくすることができる。
【0034】
次に、作業者は、包装体103によって本体部102を包装する。この場合、作業者は、予め別工程にて製作された本体部102を用意するとともに、この用意した本体部102内に酒などの飲料を充填しておく。そして、作業者は、筒状に形成された包装体103内に本体部102を挿入するとともに、包装体103の上側開口部および下側開口部にそれぞれ設けられた締め縄103a(下側開口部は図示せず)をそれぞれ締める。これにより、包装体103の上側開口部および下側開口部が絞られた状態で本体部102が包装体103によって包装されて包装収容体101が形成される。また、この場合、包装体103に縫合した表面装飾布104の上側縁部の縫合部分が本体部102の側面部の上側縁部に位置するため、同縫合部分を含む表面装飾布104の上側縁部を目立たなくすることができる。また、包装体103に縫合した表面装飾布104の下側縁部の縫合部分が本体部102より小径の台座102aの側面部に位置するため、同縫合部分を含む表面装飾布104の下側縁部を目立たなくすることができる。
【0035】
次に、作業者は、本体部102が包装体103で包装された包装収容体101を縦縄107によって縛る。具体的には、作業者は、予め別工程にて製作された1本の縦縄107を2つに折った2本の束を包装収容体101の上面および底面にてクロスさせつつ同包装収容体101の側面部を介して縦方向に4回掛け回すことにより包装収容体101を縛る。この場合、作業者は、酒樽100の正面となる側面部に位置する2つの互いに隣り合う縦縄107a,107bを同側面部における正面視両端部側であって表面装飾布104の縦辺104a,104b上に配置させる。これにより、酒樽100の正面側となる側面部が広く現れて表書き情報105の露出部分が広く確保されるとともに、表面装飾布104の両端部である縦辺104a,104bを縦縄107a,107bによって隠すことができる。
【0036】
次に、作業者は、包装収容体101を横縄108a,108bによって縛る。具体的には、作業者は、予め別工程にて製作された横縄108a,108bを各縦縄107a〜107dにそれぞれ巻き付けられながら包装収容体101の側面部上にそれぞれ巻き付ける。これにより、包装収容体101の側面部上において縦縄107a〜107dの位置ずれが防止された状態で酒樽100が完成する。なお、本実施形態においては、横縄108a,108bを包装収容体101の側面部における上部および下部にそれぞれ3周ずつ巻き付けるようにしたが、縦縄107の位置ずれの心配がない場合や位置ずれが無視できる場合などには、横縄108a,108bを省略することもできる。
【0037】
(酒樽100の使用)
次に、上記のように構成した酒樽100の使用について説明する。この酒樽100は、結婚式や各種記念式典などの各種慶事会場において、人目に付き易い壇上などに表書き情報105を表側として配置される。この場合、表面装飾布104は、縦辺104a,104bが縦縄107a,107bによって覆われて隠されていること、上側縁部が本体部102の側面部の上側縁部に位置すること、および包装体103の表面の菰を模した菰柄情報105aが形成されていることにより包装体103と違和感無く一体物として見える。また、表書き情報105は、布地で構成された平面状の表面装飾布104上に形成されているため、凸凹のむしろ状に形成された包装体103や紙製の表示物に形成された表書き情報105に比べてシワや割れが生じ難く美観に優れているとともに見やすい。
【0038】
そして、酒樽100を開封する場合においては、酒樽100の開封者は、包装収容体101の上面における縦縄107の結び目および包装体103の締め縄103aをそれぞれ解いて包装体103の上側開口部を開く。これにより、開封者は、包装体103内に収容された本体部102の上面を露出させることができ、本体部102の蓋部102bを開けることができる。この場合、表面装飾布104は、包装体103に縫合されているため、縦縄107を解いた場合であっても包装収容体101上から外れることがなく酒樽100の装飾を維持することができる。
【0039】
また、酒樽100の使用後においては、表面装飾布104を包装体103から取り外すことができる。すなわち、表面装飾布104を包装体103に縫合する縫合糸106a,106b(図示左右の各縦辺104a,104bを縫合する縫合糸は図示せず)を抜糸することにより表面装飾布104を包装体103から取り外すことができる。これにより、表面装飾布104を慶事の記念品としてそのままの状態でまたは加工して残すことができる。例えば、図5に示すように、表面装飾布104の上下の各縁部に支持軸体111a,111bを設けるとともに、上側の支持軸体111aに紐体112を設けることにより、表面装飾布104を壁掛け型の記念品としてタペストリー110にすることができる。また、表面装飾布104を衣服の記事の一部または装飾部材として用いるもできる。これらの場合、表面装飾布104が布地で構成されているため、表面装飾布104を汚損した場合であっても洗濯および補修により比較的容易に汚損を解消することができる。
【0040】
上記製造作動および使用説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、酒樽100は、包装収容体101の側面部における互いに隣り合う2つの縦縄107a,107bの間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報105が表された表面装飾布104を備えるとともに、同表面装飾布104が前記互いに隣り合う2つの縦縄107a,107b間における包装体103上に配置されている。これにより、従来技術における包装体の塑性加工や多層構造の転写紙の製造および包装体への熱転写工程が不要であり、簡単に所望する表書き情報105を酒樽の側面部に表示させることができる。そして、この場合、表面装飾布104は、互いに隣り合う2つの縦縄107a,107bの間隔に対応する長さに形成されているため、表面装飾布104の両端部である縦辺104a,104bが包装体103と縦縄107a,107bとの間に位置する。すなわち、表面装飾布104の縦辺104a,104bが2つの縦縄107a,107bの下に隠れる。これにより、包装体103上に配置される表面装飾布104の縦辺104a,104bを目立たなくすることができ、酒樽100の美観を損なうことなく表面装飾布104を配置できる。これらの結果、酒樽100の表面となる側面部分に所望する表書き情報105を少ない作業的および経済的負担で簡単に表示させることができる。
【0041】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記各実施形態と同様の構成部分には対応する符号を付して、その説明は省略する。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、包装収容体101の側面部に1本の縦縄107を縦方向に4回掛け回すことにより4つの縦縄107a〜107dで縛るように構成した。しかし、包装収容体101の側面部に配置される縦縄107の本数は、表面装飾布104の縦辺104a,104bの数以上、すなわち、少なくとも2本以上であればよい。また、縦縄107の構成する素材も樹脂に限らず、藁や紙などの植物繊維を用いることもできる。
【0043】
また、上記実施形態においては、表面装飾布104の横方向の長さである縦辺104a,104b間の長さは、包装収容体101の側面部において互いに隣り合う縦縄107a,107bの側面部上での長さに等しい長さに形成した。しかし、表面装飾布104の横方向の長さは、包装収容体101の側面部において互いに隣り合う縦縄107a,107bの側面部上での長さに対応する長さであればよく、必ずしも縦縄107a,107bの側面部上での長さに厳密に合わせる必要はない。すなわち、表面装飾布104の横方向の長さは、表面装飾布104の縦辺104a,104bが縦綱107a,107bによって実質的に隠すことができる長さであればよい。したがって、表面装飾布104の横方向の長さは、縦縄107a,107bの側面部上での長さより多少長くても短くてもよい。
【0044】
一方、表面装飾布104における縦方向の長さは、包装収容体101の側面部の高さより長くても短くてもよい。すなわち、表面装飾布104における縦方向の長さは、表書き情報105のデザインに応じて適宜設定されればよい。但し、これらの場合、表面装飾布104は、包装収容体101の側面部における上縁部から上面側および下縁部から下面側のうちの少なくとも一方の範囲内で包装体103に接合されているとよい。これによれば、酒樽100は、表面装飾布104の縁部が包装収容体101における側面部の縁部から上面および/または下面を覆う包装体103に取り付けられている。これにより、酒樽100を正面視した場合、表面装飾布104と包装体103との上側および/または下側の境界部分が目立たなくなるため酒樽100の美観を損なうことを防止することができる。また、表面装飾布104の縦方向の長さを横縄108a,108b間の長さに等しい長さに設定することにより、表面装飾布104の上側縁部および下側縁部を横縄108a,108bで隠すことができ、表面装飾布104の上側縁部および下側縁部を目立たなくすることができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、表面装飾布104は縫合糸106a,106b(図示左右の各縦辺104a,104bを縫合する縫合糸は図示せず)を用いて包装体103に縫合した。しかし、表面装飾布104は、包装体103上に配置されていればよく、必ずしも縫合により接合する必要はない。例えば、糊、接着剤、ピンなどを用いて表面装飾布104を包装体103に接合されてもよい。また、これらの場合、表面装飾布104は、包装体103および縦縄107a,107bのうちの少なくとも一方にそれぞれ接合されていればよい。また、縦縄107a,107bおよび横縄108a,108bと包装体103の表面とで表面装飾布104を挟んで保持するようにすることもできる。
【0046】
また、上記実施形態においては、表面装飾布104に形成される表書き情報105は菰柄情報105aを含んで構成されている。しかし、表書き情報105は、前記したように、酒樽100の使用者の好みに応じて適宜デザインされるものである。したがって、表書き情報105は、必ずしも菰柄情報105aを含んでいる必要はない。例えば、菰柄情報105aとは異なる図柄を表面装飾布104の下地柄として表書き情報105に含めることができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、包装体103における表面装飾布104を配置する部分にもむしろ状に編んだ菰を模した形状を成形した。しかし、包装体103における表面装飾布104を配置する部分は、表面装飾布104が配置されて隠れる部分であるため同部分の成形を必要最小限の簡易なものとすることができる。これにより、包装体103の製造に関する作業的および経済的負担を軽減することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、表面装飾布104は、包装体103と横縄108a,108bとの間に配置した。すなわち、表面装飾布104は、表面装飾布103上に横縄108a,108bが横切った状態で配置されている。このため、表面装飾布103に形成する表書き情報105のデザインが制限されることがある。しかし、表面装飾布104は、包装体103上に設けられる横縄108a,108b上に配置するように構成することもできる。例えば、図6に示すように、表面装飾布104に、横縄108aが貫通可能な2つの切欠き部121a,121bを縦縄107a,107bの間隔より短い間隔でそれぞれ形成しておく。
【0049】
これによれば、図7に示すように、横縄108aを包装収容体101に巻き付ける際、横綱108aを切欠き部121a,121bに通すことにより横綱108aを表面装飾布104の内側に配置することができる。これにより、横縄108aの存在を考慮することなく自由な大きさおよび配置で表面装飾体104の表面に表書き情報105を形成することができる。すなわち、図6および図7に示すように、横縄108aの位置が重なる部分に図柄情報105cを配置することができるとともに、表面装飾布104の全体に大きな文字情報105bを配置することができる。この結果、従来にない斬新なデザインの酒樽100を製作することができる。なお、図6および図7に示す変形例においては、横縄108aのみを表面装飾布104の内側に配置するように構成したが、これに代えてまたは加えて横縄108bに対応する切欠き部121a,121bを設けることにより横縄108bを表面装飾布104の内側に配置するように構成することもできる。
【0050】
また、上記実施形態においては、酒樽100の本体部102内に酒を充填した。しかし、酒樽100の本体部102に充填される飲料の種類は、本発明の本質とするところではない。すなわち、酒樽100の本体部102内に充填される飲料は、酒以外の飲料、例えば、お茶やジュースなどの飲料であってもよいことは当然である。また、本体部102は、必ずしも飲料を充填可能に構成されている必要はない。すなわち、一般に、酒樽においては、本体部内に実際に飲料が充填される酒樽と、本体部に飲料が充填不能な専らディスプレイ用(展示用)の酒樽とがある。これらのうち、ディスプレイ用の酒樽においては、本体部は、例えば、発泡スチロール製の柱状体で構成されている。そして、本発明は、このようなディスプレイ用の酒樽に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…酒樽、101…包装収容体、102…本体部、103…包装体、104…表面装飾布、104a,104b…縦辺、105…表書き情報、105a…菰柄情報、105b…文字情報、105c…図柄情報、106a,106b…縫合糸、107,107a〜107d…縦縄、108a,108b…横縄、
110…タペストリー、111a,111b…支持軸体、112…紐体、
121a,121b…切欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有した樽状の本体部を包装体で包装した包装収容体と、
前記包装収容体における前記上面側と前記下面側との間を前記包装収容体の側面部を介して掛けられる少なくとも2つ以上の縦縄と、
前記包装収容体の側面部にて互いに隣り合う2つの前記縦縄の間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報が表された表面装飾布とを備え、
前記表面装飾布は、前記互いに隣り合う2つの縦縄間における前記包装体上に配置されることを特徴とする酒樽。
【請求項2】
請求項1に記載した酒樽において、
前記表面装飾布は、前記互いに隣り合う2つの縦縄側および前記包装体側のうちの少なくとも一方にそれぞれ接合されていることを特徴とする酒樽。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した酒樽において、
前記包装収容体の側面部には、前記少なくとも2つ以上の縦縄を互いに繋ぐ横縄が設けられており、
前記表面装飾布は、前記横縄が貫通可能な2つの切欠き部が前記互いに隣り合う2つの縦縄の間隔より短い間隔を介してそれぞれ形成されていることを特徴とする酒樽。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した酒樽において、
前記表面装飾布に表される前記表書き情報は、前記包装体の表面を模した図柄が含まれていることを特徴とする酒樽。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した酒樽において、
前記表面装飾布は、前記包装体に縫合されていることを特徴とする酒樽。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した酒樽において、
前記表面装飾布は、前記表面装飾布は、前記包装収容体の側面部における上縁部から前記上面側および下縁部から前記下面側のうちの少なくとも一方の範囲内で前記包装体に接合されていることを特徴とする酒樽。
【請求項7】
上面および下面を有した樽状の本体部を包装体で包装した包装収容体と、
前記包装収容体における前記上面側と前記下面側との間を前記包装収容体の側面部を介して掛けられる少なくとも2つ以上の縦縄とを備えた酒樽の表側を装飾するための表面装飾布であって、
前記表面装飾布は、前記包装収容体の側面部にて互いに隣り合う2つの前記縦縄の間隔に対応する長さの布地の表面に所望の表書き情報が表されていることを特徴とする酒樽用表面装飾布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35875(P2012−35875A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178211(P2010−178211)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(510216131)有限会社あらかわ (1)
【Fターム(参考)】