説明

酢を利用した人参製剤及びこれの製造方法

本発明は、酢を利用した人参製剤及びこれの製造方法に関するものであって、さらに詳細には、人参にpH2〜4の酢を加えた後、0.5〜24時間加熱抽出し、ジンセノシド(ginsenoside)Rgを高濃度に含有する人参製剤を製造することにより、紅参製造時、熱により少量生産される機能性物質であるジンセノシドRg、Rg、Rhを高い濃度で含有して、酢のクエン酸を始めとした多様な有機酸が含有され、従来の加工人参に比べ、優れた薬効を有する人参製剤及びこれの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢を利用した人参製剤及びこれの製造方法に関するものであって、さらに詳細には、人参にpH2〜4の酢を加えた後、0.5〜24時間加熱抽出し、ジンセノシド(ginsenoside)Rgを高濃度に含有する人参製剤を製造することにより、紅参製造時、熱により少量生産される機能性物質であるジンセノシドRg、Rg、Rhを高い濃度で含有して、酢のクエン酸を始めとした多様な有機酸が含有され、従来の加工人参に比べ、優れた薬効を有する人参製剤及びこれの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高麗人参(Panax ginseng)は、神農本草経の上品に収載されており、味が甘くて、温かい性質を有しており、上・中焦、即ち、肺と脾に作用する大補元気薬であって、大韓民国の代表的な特産物である。高麗人参は、生理活性物質であって、抗糖尿作用を有するジンセノシドRbを始めとした30余種の人参サポニン(saponins)、抗癌作用を有するポリアセチレン、抗酸化作用を有するフェノール系化合物、放射線防御作用を有する人参タンパク質、免疫調節作用を有する酸性多糖体などを含有している。特に、高麗人参は、西洋人参(Panax quinquefolium)に比べ、多量のフェノール系化合物、ポリアセチレン及び酸性多糖体成分を含有しているため、より強い生理活性が期待される。高麗人参の主なる薬理成分として知られた人参サポニンは、ジンセノシドと呼ばれるが、東京大学のシバタ(Shibata)らにより、その化学構造が確認された。このように高麗人参に含有されている人参サポニンは30余種であって、西洋人参の14種、田七人参(Panax notoginseng)の15種に比べ、著しく多い。ジンセノシドは、大きくプロトパナキシジオール(protopanaxdiol)群と、プロトパナキシトリオール(protopanaxtriol)群とに分けられるが、プロトパナキシジオール群の主要成分は、ジンセノシドRbであって、これは、中枢神経の抑制作用を示して、プロトパナキシトリオール群の主要成分は、ジンセノシドRgであって、中枢神経の興奮作用を示し、高麗人参のアダプトゲン(adaptogen)活性に有効に寄与すると知られている。
【0003】
高麗人参は、プロトパナキシジオール群とプロトパナキシトリオール群との含量比(ジオール/トリオール)と、ジンセノシドRbとジンセノシドRgとの含量比(Rb/Rg)とが、それぞれ1.96と3.14を示すだめ、過度なる中枢神経抑制作用を示す西洋人参の2.48及び25.96に比べ、均衡的でありながらも、興奮的であるよりは鎮静的な補気作用を示す。したがって、高麗人参は、漢方薬理学的な効能による補元気と共に、安精神作用のジンセノシドRbと益智のジンセノシドRgとが均衡的でありながらも、安精神作用が強化された、真正の意味での現代人の最高の強壮剤であると言える。
【0004】
今まで確認された高麗人参の薬理活性としては、心臓と血管の補強、血液機能の回復、血流改善、動脈硬化及び高血圧の予防、胃腸の調節機能強化、肝機能の促進及び二日酔いの除去効果、抗疲労及び抗ストレス作用、老化防止作用、頭脳活動の促進作用、抗炎活性、アレルギー性疾患の治療、婦人病及び糖尿病の予防及び治療、抗放射線作用、精力増強、抗腫瘍作用、学習能力の向上、酸化脂質の生成抑制、創傷治療の促進、免疫能力の向上、AIDSウイルス増殖抑制効果及びタンパク質合成能力の促進などが報告されている。
【0005】
また、畑で採取した水参を蒸乾したものを紅参、皮と側根を除去した後、日光に自然乾燥したものを白参、側根を自然乾燥したものを尾参という。特に紅参は、熱により生成され少量存在するジンセノシドRg、Rg、Rhのような特異成分が癌予防及び癌転移抑制作用、血圧降下作用及び抗酸化作用をすると認められ、紅参独特の長所として注目を浴びている。
【0006】
以上説明したような高麗人参は、長い間最高のブランドとして認識されてきたが、現在は、世界人参市場で3%程度の市場占有率を占めている実情であって、このような人参産業の革新のためには、高付加価値人参製品の開発が必要である。しかしながら、今までの人参製剤及び紅参製剤は、単純抽出物水準の製剤が主流をなし、強壮剤程度の水準で開発されていた。したがって、より専門的で機能性を有する人参製剤を開発するためには、最も、生理活性が強くて且つ安全性の確保された機能性物質が高濃度に含有された人参製剤を開発することが必須的であると言える。
【0007】
このような理由から、近来、人参成分の中でも優れた効果を有するジンセノシドRgを多量含有した人参製剤を製造するための様々な試みが行われている。
【0008】
1966年発表されたシバタ(Shibata)論文によると、サポニンを酢酸などの弱酸により加水分解すると、C−20のグルコシド結合(ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd)のみが加水分解されて、プロサポゲニン(20(R&S)−ジンセノシドRg)が得られるということが発表されたが、これは、単なる標準品を製造することに止まった。これと共に、他の研究者らは、ジンセノシドRgを多量含有した人参製剤を製造するために、物理的な反応である高温処理、あるいは生化学的な反応である酵素処理をする方法などを使用している。
【0009】
高温処理する方法としては、例えば、人参を高温で加熱処理することにより、薬効の増強された加工人参を製造する方法であって、人参を120〜180℃の高温で0.5〜20時間加熱処理し、ジンセノシド(Rg3+Rg5)/(Rc+Rd+Rb1+Rb2)の比率が1以上になるように薬効成分を増加させた加工人参製品及びこの加工食品を含有する飲料組成物に関する特許(大韓民国特許第192678号)と、サポニングルコシド分解酵素を利用して、人参サポニンの糖基を加水分解し、希少な抗癌サポニン(Rh1、Rh2)を製造する方法に関する特許(大韓民国特許第329259号)などが挙げられて、現在市販される製品としては、仙参と信参がある。しかしながら、この方法は、薬効は増加されるが、製造時間がたくさんかかるか、高圧加熱機などの特殊装備が必要であり、特に、通常の加工温度より高温で加熱処理しなければならないため、大量製造時、人参が炭化されることが発生するなど、製造工程上の不具合がある。
【0010】
ジンセノシドRg及び/またはRgの製造方法(大韓民国特許第228510号)と、血管弛緩剤組成物(大韓民国特許第201585号)では、高温で加熱処理する代わりに、穏やかな条件下で、例えば薄い鉱酸、またはアセト酸、酒石酸、シュウ酸などのような低級有機酸で酸処理して行う場合も、高温で加熱処理する場合と同様に、Rgなどのような有効成分が生成されると記載されているが、アセト酸、クエン酸のような低級有機酸を使用して実験した結果、Rg及びRgが含有された人参製剤の製造が難しく、成分分析の結果、多量の不純物が含有されていることが確認された。
【0011】
一方、酢は、穀類、果実類、酒類などを原料として発酵させて製造した醸造酢と、氷酢酸または酢酸を飲用水で希釈し製造した合成酢とに分類する(食品公典)。このような酢は、酸い味を有し、味覚の刺激や食欲の増進に必要であり、酸味成分には、無機酸と有機酸がある。
【0012】
酢は、Acetobacto aceti、Acetobacter acetosus、Acetobacter shuzenbachii、Acetobacter pasteurianumなどのように、生育及び酸の生成速度が速く、収得率が高くて、耐酸性である菌を使用し、静置培養法、速醸酢法、深部発酵法などにより製造される。
【0013】
酢の効果は、長い間、絶え間なく研究されて、多様な結果をもたらしたが、その中で、1953年イギリスのクレブス博士とアメリカのリップマン博士との研究による、酢を飲むと2時間内に疲労が去って、濁った小便も清くなるという理論がある。人間が肉体的または精神的な仕事をして疲れるか、その他の病の原因となる仕事をすると、人間の体内に老化の原因となる乳酸が生成されるが、酢がこの乳酸の発生を防止または解消する。
【0014】
また、1964年アメリカのブロッホ(Bloch)博士とドイツのリネン(Lynen)博士は、酢酸とその他の酢成分(クエン酸、タンパク質、各種のビタミンとミネラル)とが合作し副腎皮質ホルモンを作るという理論でノーベル賞を受賞した。このように、酢の様々な成分が加勢、協力して、疲労要素である乳酸の発生を防止または解消し、副腎皮質ホルモンも生成する。
【0015】
そして、酢が有する栄養的特性と価値は、クレブス博士のクレブス回路理論を通じてよく引用されるが、クレブスサイクルまたはTCAサイクルは、栄養素が人間の体内で分解される過程を説明したものであって、摂取した飲食の中で炭水化物や脂肪は、消化吸収されて焦性ブドウ糖となり、この焦性ブドウ糖は、代謝が円滑になされるとクエン酸に変わって、このクエン酸を起点に様々な酸に代謝され、最後は水と炭酸ガスとに分解される。この際発生する熱量を、人間は活動に利用することになる。これがクレブスサイクルの概略であるが、このサイクルが円滑に進行されると満足する健康状態を維持することができるが、疲労やストレスがたまった状態では、焦性ブドウ糖は、乳酸という新しい疲労物質を生成する。この際、酢酸やクエン酸が体内に入ると、そのまま吸収され代謝されて、このように代謝が旺盛になされると、内臓での代謝が円滑になり、乳酸などの疲労素が取り除かれる。
【0016】
血液は、身体各部位に栄養分を流して、老廃物を除去運搬するための重要な役割を担当しており、人間の血液は、92%が水であり、残りの8%がアミノ酸、脂肪酸、ブドウ糖、各種ビタミン、無機質などから構成されている。これらの中で、血液のアルカリ性を維持するに作用するものは、無機質、即ちカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、燐酸などである。そして酸性を維持するものは、タンパク質や炭水化物から生成される代謝物質である。これらの物質が血液を酸性に偏らせて、強い刺激があるため、そのまま体内に留まっていると、胃潰瘍、膀胱炎、便秘などを誘発するようになると知られている。このような有害物質を無くすには、二つの方法がある。その一つは、カルシウムのような無機質で中和、無力化させることであり、もう一つは、水と炭酸ガスとに分解させることである。この中で、後者に大きく役に立つのが酢であると知られている。
【0017】
このように有用な効果のある酢は、単純にその酸い味と香りを利用するため、酢に含有されているクエン酸などの有用な成分は、ほとんど考慮されていない。従来、酢を使用した技術としては、人参及び紅参と酢とを混合した紅参酢の製造方法(大韓民国特許第244849号)、人参酢の製造方法(大韓民国特許第344949号)があるが、これは、ただ、微量の人参または紅参を酢に混合して酢を生産することに目的があるものであって、人参から特定成分を抽出する方法とは根本的に相異なる方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のような点に鑑みて、本発明者らは、ジンセノシドRgのような機能性物質を高濃度に含有する人参製剤を製造するために鋭意研究した結果、高温で人参を加熱処理する加工方法とは違う、即ち、人参にpH2〜4の酢を加えた後、0.5〜24時間加熱抽出することにより、ジンセノシド(ginsenoside)Rg、Rg、Rhを高濃度に含有して、酢のクエン酸を含有した人参製剤を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
したがって、本発明は、既存の人参に比べ薬効が著しく増強された、ジンセノシドRgをジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し5〜100%の高い濃度で含有する人参製剤と、これを経済的に製造する方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、人参または人参エキスにpH2〜4の酢を加えて、0.5〜24時間加熱抽出し、ジンセノシドRgが、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgの総合に対し、5〜100%含有されて、Rg+Rg+Rhが1〜15%含有されるように製造する人参製剤の製造方法をその特徴とする
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は、高濃度ジンセノシドRg含有人参製剤の製造方法に関するものであって、酢を利用し、機能性物質であるジンセノシドRg、Rg、Rhを高濃度に含有して、且つ、酢のクエン酸も複合的に含有する、新しい概念の人参製剤に関するものである。
【0023】
このように、本発明は、酢を利用し、人参内の有効成分の変化及び人参の希少成分の含量を極大化すると同時に、酢中の有効成分が人参加工物に残存することにより、効力の増強及び補助役割までも果たすようにしたことにその特徴がある。
【0024】
以下、本発明による人参製剤の製造方法についてさらに具体的に説明する。
【0025】
人参または人参エキスに、pH2〜4の酢を人参に対し5〜15倍量加えて、70〜150℃で0.5〜24時間加熱抽出し、人参製剤を得る。前記加熱時、温度が70℃未満であると、最終の収得製品において目的とする有効成分が十分得られなく、150℃を超過すると、同じく有効成分の含量が低下し、且つ、製造工程上の不具合が生じる。また、加熱時間が0.5時間未満であると、最終の収得製品において目的とする有効成分が十分得られなく、24時間を超えると、最終の収得製品において目的とするジンセノシドRg、Rgが分解される可能性がある。そして、本発明による最終抽出物は、液相または粉末などのいかなる形態であってもよい。
【0026】
特に、人参または人参エキスにpH2.0〜3.0の酢を加えて、90〜120℃で2〜24時間抽出すると、ジンセノシドRgを、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し、50〜100%含有することにより、血液循環改善、勃起不全改善、疲労回復、高血圧、動脈硬化、抗血栓、脳卒中の治療に有用に使用することができる。また、人参に、pH2.0〜3.0の酢を加え70〜90℃未満で0.5〜6時間抽出するか、pH3.0〜4.0の酢を加え90〜120℃で0.5〜6時間抽出すると、ジンセノシドRgをジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し5〜50%含有することにより、高血圧、動脈硬化、抗血栓、脳卒中の予防及び脳機能改善の用途に使用することができる。
【0027】
本発明において、どの部分から採取した人参を使用するのかは、本発明の効果を左右する重要因子とはされない。したがって、本発明で人参というのは、高麗人参(Panax ginseng)を始めとした西洋人参(Panax quinquefolium)、田七人参(Panax notoginseng)、竹節三七(Panax japonicum)、またはベトナム人参(Panax vietnamensis)のような人参属植物の地下または地上部の生薬、例えば、尾参、白参、紅参、水参、太極参、人参の葉、人参の実、及びこれらを加工処理したものも含むものであり、これは、人参に関わる反復的な実験から確認された事実に基づくことである。
【0028】
この際の加工処理は、必要に応じて、公知の方法により抽出し、加工人参抽出物にしてもよい。即ち、人参類を水、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、低級ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、超臨界流体、またはこれらの混合溶媒を利用して抽出した後に濃縮するか、あるいは濃縮された液を乾燥することにより、溶媒を除去し、乾燥された粉末状の加工人参抽出物、即ち、人参を乾燥エキスの形態に製造することができる。
【0029】
また、本発明において特徴的に使用する酢は、上述のように、体内疲労要素である乳酸の発生を防止または解消すると共に、代謝を円滑にして、副腎皮質ホルモンを生成する効果を有するため、このような酢を使用して製造した本発明の人参製剤も同様に、製剤内にクエン酸を3%以上含有し、人参内の有効成分効力の増強及び補助の役割まで果たすようになる。このような酢としては、特に限定されるものではなく、通常の食用酢、例えば、醸造酢またはあらゆる種類の食用発酵酢を選択して適用することができる。前記醸造酢としては、米酢、玄米酢、モルト酢、または酒粕酢などの穀物酢と、柿酢、リンゴ酢、ブドウ酢、梨酢、蜜柑酢、イチゴ酢、または梅酢などの果実酢を使用することができる。
【0030】
本発明は、前記のような方法により製造されたジンセノシドRgを、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し、5〜100%含有するだけではなく、クエン酸を3%以上含有して、遥かに優れた薬理学的効果を奏する人参製剤を含む。このような人参製剤は、血液循環改善、勃起不全改善、疲労回復、高血圧、動脈硬化、抗血栓、脳卒中の治療及び予防、そして脳機能改善の用度に使用することができる。
【0031】
前記のような本発明の方法により製造された人参製剤には、ジンセノシドRgが、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し、5〜100%含有されて、Rg+Rg+Rhが1〜15%の高濃度に含有され、薬効に優れている。特に、機能性物質であるRgが0.5〜7.5%、Rgが0.1〜4.0%、Rhが0.2〜3.5%の高濃度に含有され、薬効に優れている。そして、前記人参製剤は、クエン酸も3%以上含有し、薬効の増強効果を付与する。
【0032】
このように本発明では、従来とは違って、人参を、酢を利用して低い温度で加熱抽出することができて、また、酢のクエン酸と酢酸を始めとした多様な有機酸を含有することにより、人参の薬効を高めると共に、酢中の有効成分が人参加工物に残存することにより、薬効の増強した効果を示す。
【0033】
一方、本発明の人参製剤は、上記成分の他に、アミノ酸、ビタミンなどを含有している。
【0034】
本発明の人参製剤を臨床的な目的で投与する時、単一容量または2〜3回の分離容量として宿主に投与する一日容量は、体重1kg当たり1〜50mgの範囲が好ましいが、特定患者に対する容量水準は、使用する特定化合物、体重、年齢、性、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、薬剤混合及び疾患の重症度により変わる。
【0035】
本発明の化合物は、必要に応じて、注射用製剤または経口用製剤として投与することができる。注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、公知の技術により、適合した分散剤、湿潤剤または懸濁剤を使用して製造することができる。この際、使用できる溶媒として、水、点滴液及び等張性NaCl溶液があり、滅菌固定オイルは、通常、溶媒または懸濁媒質として使用する。モノ−、ジ−グリセリドを含み、いかなる無刺激性固定オイルもこのような目的で使用することができて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用製剤に使用することができる。経口投与用製剤としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤及び液剤が可能であり、特に、カプセル剤と錠剤、液剤が有用である。錠剤及び丸剤は、腸皮剤として製造することが好ましい。固体及び液体投与形態は、活性成分を、スクロース、ラクトース、澱粉などのような一つ以上の不活性希釈剤、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤、CMCカルシウムのような崩壊補助剤、結合剤、芳香剤、安息香酸ナトリウムのような防腐剤、砂糖または果糖のような甘味剤、及び界面活性剤の中から選択された担体と混合させることにより製造する。さらに具体的に説明すると、活性成分の他に、賦形剤として澱粉と乳糖を7:3の比率で入れて、流動性増大のためにマグネシウムステアレートとタルクを3%以内に加えて充填させることにより、カプセル剤を製造することができて、賦形剤として澱粉と乳糖を7:3の比率で入れて、結合剤、及び崩壊補助剤としてCMCカルシウムを加えて打錠することにより、錠剤を製造することができて、芳香剤として果実香、防腐剤として安息香酸ナトリウム、甘味剤として砂糖または果糖、及び界面活性剤を加えることにより、液剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、実施例及び実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0037】
製造例:人参エキスの製造
密閉容器に尾参50gと95%エタノール(酒精)250mlとを入れて、76℃水浴上で4時間ずつ振とうして4回抽出、濾過して収得した人参エキスを減圧乾燥して、人参エキスを製造した。
【0038】
実施例1
尾参50gを10倍量の醸造酢(pH 2.90)を加えて100℃で2時間1回抽出した。濾液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、褐色の抽出物を得た。
【0039】
実施例2
尾参50gを10倍量の醸造酢(pH 2.90)を加えて100℃で24時間1回抽出した。濾液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、褐色の抽出物を得た。
【0040】
前記実施例1及び2で使用した尾参の代わりに、白参、紅参、水参、太極参、人参の葉、人参の実、またはその抽出物を選択して適用してもよい。
【0041】
実施例3
人参エキス10gを、それぞれ8倍量の醸造酢(pH 2.47)に入れて、80℃で3時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0042】
実施例4
人参エキス10gを、それぞれ8倍量の醸造酢(pH 2.47)に入れて、90℃で0.5時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0043】
実施例5
人参エキス10gを、それぞれ8倍量の醸造酢(pH 2.47)に入れて、90℃で3時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0044】
実施例6
人参エキス10gを、それぞれ8倍量の柿酢(pH 3.45)に入れて、90℃で3時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0045】
実施例7
人参エキス10gを8倍量の柿酢(pH 3.45)に入れて、90℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0046】
実施例8
人参エキス10gを8倍量の柿酢(pH 3.45)に入れて、120℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0047】
実施例9
人参エキス10gを8倍量の醸造酢(pH 2.27)に入れて、90℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0048】
比較例1
尾参50gに10倍量の蒸留水を加えて、100℃で2時間1回抽出した。濾液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、褐色の抽出物を得た。
【0049】
比較例2−1
人参エキス10gを8倍量のクエン酸液(pH 5.02)に入れて、90℃で3時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0050】
比較例2−2
人参エキス10gを8倍量の氷酢酸(pH -0.27)に入れて、90℃で3時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0051】
比較例3−1
人参エキス10gを8倍量の柿酢(pH 3.42)に入れて、60℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0052】
比較例3−2
人参エキス10gを8倍量のクエン酸液(pH 5.00)に入れて、60℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0053】
比較例3−3
人参エキス10gを8倍量の氷酢酸(pH -0.27)に入れて、60℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0054】
比較例4−1
人参エキス10gを8倍量のクエン酸液(pH 5.02)に入れて、90℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0055】
比較例4−2
人参エキス10gを8倍量の氷酢酸(pH -0.27)に入れて、90℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0056】
比較例5−1
人参エキス10gを8倍量のクエン酸液(pH 5.02)に入れて、120℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0057】
比較例5−2
人参エキス10gを8倍量の氷酢酸(pH -0.27)に入れて、120℃で6時間反応した後、濾過及び減圧乾燥し、褐色の抽出物を得て、HPLC法に基づき分析した。
【0058】
実験例1:HPLC法によるジンセノシドRg成分分析
1)実験方法
検体をそれぞれ50gずつ取って、エーテルで3回処理した後、水可溶部を水飽和ブタノールで3回処理して、得られたn−ブタノール層を減圧濃縮し、粗(crude)サポニンにした(シバタ法)。得られた粗サポニンをHPLC法により定量して、その結果を表1、2及び3に示した。
2)HPLC分析条件:各人参サポニン成分は、1mg/ml(1000ppm)を基準に検量線を作成して、各試料は、10mg/ml(10000ppm)に調製して注入した。この際、HPLC条件は、次のようである:
HPLC:Gilson305システム
カラム:μ−Bondapak C18(Waters、3.9×150mm)
検出器:Gilson 118UV/ディテクター
温度:室温
移動相:CHCN、17%→33%→60%→80%→17%
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示したように、尾参抽出物(比較例の製剤)及び本発明の方法により得られた人参製剤(実施例の製剤)からシバタ法により得られた粗サポニンを対象に、HPLC法により各種ジンセノシドの含量を分析した結果、尾参抽出物からは紅参特異成分のジンセノシドRgが全く検出されなかったことに対し、本発明の人参製剤では、多量のジンセノシドRgが検出された。特に、実施例1の製剤の場合、ジンセノシドRgの含量が1.477%であって、総サポニン中で71.22%の高い含量比を示し、実施例2の製剤の場合も、ジンセノシドRgの含量が0.557%であって、総サポニン中で92.99%の高い含量比を示した。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果から、実施例5と6でのようにpH2〜4である場合、Rgが重量の1.93%と1.27%であって、pH2以下または4以上である比較例2−1と2−2での結果の0.26%と0.59%に比べ、Rgの生成が大きく増加することが分かる。しかし、比較例2−2の場合、総サポニンの値が他の例に比べ遥かに低いため、絶対的な比較が難しいが、これは、氷酢酸の場合、酸度が強すぎて、却ってRgの生成を妨害するからであると理解される。
【0063】
【表3】

【0064】
表3の結果から、反応温度70℃未満では、比較例3−1、比較例3−2、比較例3−3のように0.19%、0.17%、0.31%であって、Rgの生成が難しく、実施例7、8の場合のように、90℃以上でRgの含量が増加することが分かる。また、pH2〜4の場合、90℃と120℃におけるRg含量の大きな差は見られないが、pH4以上では、温度が高いほどRgの含量が増加することが分かる。このことから、一定な酸度に至らなかった場合、温度がRgの生成にある程度の影響を及ぼすことが分かる。
【0065】
したがって、本発明は、70〜150℃、0.5〜24時間の反応条件下で、酸度(pH)と酢の量を適宜調節することにより、高濃度のRgを含有する人参製剤を製造することができることを確認することができた。
【0066】
実験例2:人参製剤内クエン酸含量分析
前記実施例1〜9による人参製剤と、その対照群として紅参とを使用し、クエン酸含有程度を次のような方法により分析し、その結果を表4に示した。
HPLC分析条件:クエン酸成分は、1mg/ml(1000ppm)を基準に検量線を作成して、各試料は、10mg/ml(10000ppm)に調製して注入した。この際、HPLC条件は、次のようである:
HPLC:Gilson 305システム
カラム:μ−Bondapak C18
検出器:UV 210nm
移動相:(Pump:5mM H2SO4)−Isocratic acid
【0067】
【表4】

【0068】
表4に示したように、実施例において、人参に含有された酢による含有成分の分析時、代表的な成分であるクエン酸が、紅参エキスに比べ、3%以上であって、過量含有されていることを確認した。
【0069】
実験例3
上記実施例から得られた人参製剤に対する成分分析を行った結果、次に示したように、アミノ酸及びビタミンが含有されていることを確認した。したがって、本発明の人参製剤は、アミノ酸とビタミンを含有することが分かる。
【0070】
(試験結果)
ビタミンB1(mg/100g) 未検出
ビタミンB2(mg/100g) 1.1
リシン(mg/100g) 73.8
イソロイシン(mg/100g) 107.9
トリプトファン(mg/100g) 210.3
ヒスチジン(mg/100g) 173.1
アルギニン(mg/100g) 434.5
トレオニン(mg/100g) 113.4
バリン(mg/100g) 137.1
ナイアシン(mg/100g) 6.9
メチオニン+シスチン(mg/100g) 236.7
フェニルアラニン+チロシン(mg/100g) 308.4
【0071】
上述のように本発明によると、紅参製造時、熱により少量生産される機能性物質であるジンセノシドRg、Rg、Rhを高い濃度で含有し、且つ酢に含有されたクエン酸が複合的に含有されている、優れた効能効果の人参製剤を簡単に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人参または人参エキスにpH2〜4の酢を加えて、0.5〜24時間加熱抽出し、ジンセノシドRgが、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgの総合に対し、5〜100%含有されて、Rg+Rg+Rhが1〜15%含有されるように製造することを特徴とする、人参製剤の製造方法。
【請求項2】
前記人参製剤は、Rgが0.5〜7.5%、Rgが0.1〜4.0%、Rhが0.2〜3.5%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項3】
前記加熱温度は、70〜150℃であることを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項4】
人参は、人参属植物の地下または地上部の生薬またはそれの抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項5】
人参属植物は、高麗人参(Panax ginseng)、西洋人参(Panax quinquefolium)、田七人参(Panax notoginseng)、竹節三七(Panax japonicum)、及びベトナム人参(Panax vietnamensis)から構成された群から選択されるものであることを特徴とする、請求項4に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項6】
人参属植物の地下または地上部の生薬が、尾参、白参、紅参、水参、太極参、人参の葉及び人参の実から構成された群から選択されるものであることを特徴とする、請求項4または5に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項7】
酢が醸造酢であることを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項8】
前記醸造酢が穀物酢または果実酢であることを特徴とする、請求項7に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項9】
前記穀物酢は、米酢、玄米酢、モルト酢及び酒粕酢の中から選択されたものであり、前記果実酢は、柿酢、リンゴ酢、ブドウ酢、梨酢、蜜柑酢、イチゴ酢及び梅酢の中から選択されたものであることを特徴とする、請求項8に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項10】
人参にpH2.0〜3.0の酢を加えて、90〜120℃で2〜24時間抽出することを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項11】
人参にpH2.0〜3.0の酢を加えて、70〜90℃未満で0.5〜6時間抽出することを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項12】
人参にpH3.0〜4.0の酢を加えて、90〜120℃で0.5〜6時間抽出することを特徴とする、請求項1に記載の人参製剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの方法により製造されて、ジンセノシドRgが、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgの総合に対し、5〜100%含有されることを特徴とする、人参製剤。
【請求項14】
前記人参製剤は、Rg+Rg+Rhが1〜15%含有されることを特徴とする、請求項13に記載の人参製剤。
【請求項15】
前記人参製剤は、Rgが0.5〜7.5%、Rgが0.1〜4.0%、Rhが0.2〜3.5%含有されることを特徴とする、請求項13または14に記載の人参製剤。
【請求項16】
前記人参製剤は、クエン酸が3%以上含有されることを特徴とする、請求項13または14に記載の人参製剤。
【請求項17】
ジンセノシドRgを、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し、50〜100%含有することを特徴とする、請求項13または14に記載の人参製剤。
【請求項18】
ジンセノシドRgを、ジンセノシドRb、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRgに対し、5〜50%含有することを特徴とする、請求項13または14に記載の人参製剤。

【公表番号】特表2007−520418(P2007−520418A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507774(P2005−507774)
【出願日】平成15年8月18日(2003.8.18)
【国際出願番号】PCT/KR2003/001660
【国際公開番号】WO2005/016362
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500296882)ユーユー インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】