説明

酢酸菌体を含有する生体内抗酸化性組成物

【課題】 生体内酸化により発生する活性酸素、フリーラジカル及び過酸化脂質を消去または低減し、つまり生体内酸化を防止または低減させる。なおかつ、天然に由来し、抗酸化力が高く、また、安価な抗酸化性組成物を提供すること。
【解決手段】 酢酸菌体破砕物及び/又は酢酸菌体の脂溶性有機溶剤拙出物を含有することを特徴とする生体内抗酸化性組成物を提供する。さらに、本発明は前記の脂溶性有機溶剤が酢酸エチル及び/又はアセトンであることを特徴とする生体内抗酸化性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体内抗酸化性組成物に関し、さらに詳しくは、生体内酸化により発生する活性酸素、フリーラジカル及び過酸化脂質の少なくともひとつを消去または低減するために用いられる、つまり生体内酸化を防止または低減するために用いられる、酢酸菌体成分を有効成分とする食品、医薬品などの生体内抗酸化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧風化に伴い、高脂肪食品を摂取する機会が増え、高脂血症、動脈硬化症等の成人病が増加している。この現象は、中高年層のみならず、若年層にまで及んでいる。その結果、生体内脂質の酸化によってさまざまな疾病が招来されることとなった。
【0003】
抗酸化剤には、食品、飼料及び化粧品に添加し、その品質を保持する目的で使用されるものと、その抗酸化剤を生体に投与することにより、生体内酸化により発生する活性酸素、フリーラジカル及び過酸化脂質を消去または低減し、つまり生体内酸化を防止または低減する目的で使用されるものがある。
【0004】
このような目的で、食品、化粧品あるいは医薬品などの分野で用いられている抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)等の天然抗酸化剤や、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)などのフェノール系合成抗酸化剤が知られている。
【0005】
トコフェロールは油脂の抗酸化剤としてよく用いられるが、また肝心の抗酸化力があまり高くないためほかの抗酸化剤と併用するなどの必要があった。
【0006】
アスコルビン酸は、水溶性の抗酸化剤として用いられ油脂へは使用しにくく、また食品に用いる場合にその酸味が付与されることから食品の味を変えてしまい、また合成抗酸化剤と比較してその抗酸化力が劣るという欠点があった。
【0007】
一方、BHAやBHTのような合成抗酸化剤は、その抗酸化力は強いが、その発ガン性や肺・肝臓への悪影響が指摘されていること等、安全性が疑問視されるようになった。
【0008】
以上のごとく、生体内で発生する活性酸素、フリーラジカル、過酸化脂質などを消去または低減可能な、抗酸化力の強い、汎用性の高い、天然の抗酸化組成物の開発が望まれてきた。
【0009】
しかしながら、現在までのところ、目的とするような生体内抗酸化性組成物の開発に成功した例は報告されていない。
【0010】
わずかに、天然由来物ということで、無加工の酢酸菌体を用いて油脂食品の酸化による品質の劣化を防止する方法が知られてはいるが(例えば、特許文献1参照)、使用されている酢酸菌は何も処理されておらず無加工であるし生体内抗酸化作用については何も記載されていない。事実、本発明の実施例からも明らかなように、無加工の酢酸菌の菌体自体には生体内抗酸化作用がほとんど認められないことが実証されている。
【0011】
また、生体内での抗酸化機能を有する物質をスクリーニングするには、赤血球膜ゴースト法などの生体系に近いモデル試験系での評価が必要であるが(例えば、非特許文献1参照)、酢酸菌体においては現在までに生体モデル系での試験が行われておらず、生体内での抗酸化機能については、全く不明の状態であった。ましてや、本発明の骨子をなすところの、酢酸菌体破砕物及び/又はその有機溶媒抽出物による生体内抗酸化作用については、従来全く未知であって、何らの報告もなされていない。
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・アグリカルチャル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)」、35巻、p.808〜812、1987年
【特許文献1】特開平1−157367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、生体内で発生する活性酸素、フリーラジカル、過酸化脂質などを消去または低減可能な、抗酸化力の強い、汎用性の高い、天然の抗酸化組成物の開発に成功した例は、未だ報告されていない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、生体内酸化により発生する活性酸素、フリーラジカル及び過酸化脂質を消去または低減し、つまり生体内酸化を防止または低減させ、なおかつ、天然に由来し、抗酸化力が高く、また、安価な抗酸化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ね、その過程において、本発明者らは、今まで、抗酸化性組成物の原料として使用されていなかった酢酸菌体について検討した結果、脂溶性画分において抗酸化力が強く、また、その物質は発酵醸造用微生物から抽出したもので、食経験もあることから食品に使用しても害がない点にはじめて着目した。
【0015】
そして、その原料となる菌体は、食酢発酵過程において、発酵後に濾過され除かれており大部分は廃棄されているので、多量に入手でき安価に生産できることが期待でき、原料供給の面でも問題がないことを確認した。
【0016】
そこで本発明者らは、酢酸菌について、その生体内抗酸化能を調査するため、赤血球膜ゴースト系を用い、抗酸化能を比較した。この系では、抗酸化剤の膜電位なども考慮しなければならず、その意味でも生体に近いモデル系と考えられている。そのため、この系での有意差が生じた場合に、生体内酸化により発生する活性酸素、フリーラジカル及び過酸化脂質を消去または低減し、つまり生体内酸化を防止または低減することが期待できる。
【0017】
本発明者らは、酢酸菌及びその各種処理物について上記試験法を用いた抗酸化力比較試験をした結果、無加工の菌体に比べ細胞破砕物、有機溶剤による抽出物の方が力価が高いことを見出し本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は酢酸菌体破砕物及び/又は酢酸菌体の脂溶性有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする生体内抗酸化性組成物に関する。更に、本発明は、脂溶性有機溶剤として、酢酸エステル等の脂肪族カルボン酸エステル、メタノールやエタノール等のアルコール、アセトン等のケトン類の使用を包含するだけでなく、生体内抗酸化組成物の製造方法にも関するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって得られる抗酸化性組成物は、抗酸化力が強く、生体内での酸化防止を行える。また、食品に用いた場合においても害がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明において用いられる酢酸菌としては、特に制限はなく、例えば、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、アサイア属(Asaia)またはアシドモナス属(Acidomonas)に属する酢酸菌が例示される。
【0022】
さらに詳細には、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)の酢酸菌としては、グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・インタメデイウス(Gluconacetobacter intermedius)、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)などが例示される。
【0023】
また、グルコノバクター属(Gluconobacter)としては、グルコノバクター・フラトウリ(Gluconobacter frateurii)、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)などが例示される。
【0024】
さらに、アセトバクター属(Acetobacter)の酢酸菌としては、アセトバクター・トロピカリス(Acetobacter tropicalis)、アセトバクター・インドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)、アセトバクター・シジギイ(Acetobacter syzygii)、アセトバクター・シビノンゲンシス(Acetobacter cibinongensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・オルレアネンシス(Acetobacter orleanensis)、アセトバクター・ロバニエンシス(Acetobacter lovaniensis)、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・ポモラム(Acetobacter pomorum)などが例示される。
【0025】
さらに、アサイア属(Asaia)の酢酸菌としては、アサイア・ボゴレンシス(Asaia bogorensis)、アサイア・シアメンシス(Asaia siamensis)などが例示される。
【0026】
また、アシドモナス属(Acidomonas)の酢酸菌は、アシドモナス・メタノリカ(Acidomonas methanolica)などが例示される。
【0027】
酢酸菌としては、上記のほか、寄託菌、市販菌、食酢や種酢に含有されている酢酸菌等も適宜使用可能である。寄託菌としては次のものが非限定的に例示される。
【0028】
アセトバクター・トロピカリス(Acetobacter tropicalis) NBRC 16470、同インドネシエンシス(A.indonesiensis) NBRC 16471、同シジギイ(A.syzygii) NBRC 16604、同シビノンゲンシス(A.cibinongensis) NBRC 16605、同オリエンタリス(A.orientalis) NBRC 16606、同パスツリアヌス(A.pasteurianus) DSM 3509、同オルレアネンシス(A.orleanensis) NBRC 13752、同ロバニエンシス(A.lovaniensis) NBRC 13753、同アセチ(A.aceti)NBRC 14818、同ポモラム(A.pomorum) DSM 11825など。
【0029】
グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobacter hansenii) NBRC 14820、同ジアゾトロフィカス(Ga.diazotrophicus) DSM 5601、同インタメデイウス(Ga.intermedius) DSM 11804、同サッカリ(Ga.sacchari) DSM 12717など、
グルコノバクター・フラトウリ(Gluconobacter frateurii) NBRC 3264、同セリナス(G.cerinus) NBRC 3267など、
アサイア・ボゴレンシス(Asaia bogorensis) NBRC 16594、同シアメンシス(A.siamensis) NBRC 16457など、
アシドモナス・メタノリカ(Acidomonas methanolica) DSM 5432など。
【0030】
これらの酢酸菌は酢酸発酵に用いられ、大量に増殖する。なお、酢酸菌は、ナタデココ、カスピ海ヨーグルト、紅茶きのこなどで食経験があり、また、食酢発酵においては発酵後に廃棄されており安価に入手することができる。
【0031】
本発明においては、これらの酢酸菌の菌体を破砕処理した酢酸菌破砕処理物や、脂溶性有機溶剤を用いて酢酸菌から有効成分を抽出した抽出物を用いて、生体内抗酸化組成物が構成される。したがって、本発明は、酢酸菌体破砕物及び/又は酢酸菌の脂溶性有機溶剤抽出物を有効成分として使用することにより、生体内での酸化を低減ないし防止抑制する生体内抗酸化組成物としてなることを特徴とし、生体内での抗酸化のために用いられるものである旨の表示を付した生体内抗酸化組成物を提供するものであって、生体外での抗酸化作用を有する抗酸化剤とは明確に区別されるものである。
【0032】
酢酸菌の破砕処理は、常法によればよく、例えば、超音波式破砕機や、フレンチプレスなどの高圧式破砕機を用いて実施することができる。
【0033】
本発明で使用される脂溶性有機溶剤としては、アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ケトン等、脂溶性の有機溶剤であればすべてのものが、単用又は2種以上併用される。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等各種低級アルコールが例示され、脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の分枝又は直鎖の飽和脂肪酸のほか、各種の不飽和脂肪酸のアルコールエステル、例えば上記アルコールのエステルが例示される。
【0034】
ケトンとしては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等が例示される。脂溶性有機溶剤としては、有機溶剤のみのほか、上記に例示したような水に溶ける有機溶剤またはそれらを組み合わせた溶剤、またはそれらを含有する水溶液と定義される。これらの中で、好適なものとしては酢酸エチル、アセトンなどをあげることができる。
【0035】
酢酸菌菌体から、有機溶剤を用いて、抗酸化性物質を抽出して抗酸化性組成物を製造するには、常法に従えばよく、例えば、酢酸菌菌体自体又は酢酸菌体を適当に超音波破砕後、有機溶剤溶液で抗酸化性物質を抽出し、得られた抽出液はそのまま抗酸化性組成物として使用することができる。
【0036】
抽出は、湿潤菌体又は乾燥菌体と溶剤とを充分に接触させて行なえばよく、常法が適宜適用される。例えば、乾燥菌体の場合、有機溶剤(必要あれば、その0.1〜10倍、通常はそれと同量程度の水を加え)を菌体1kgに対して0.5〜30リットル、通常は5〜15リットル程度加え、よく混合した後、遠心分離や濾過等の分離処理を行って上層を回収したり、あるいは、ソックスレー抽出器を用いて、乾燥菌体10kgに対して上記と同量のアルコール等の有機溶剤を加えて加熱還流し、得られた抽出液を減圧乾固した後、0.5〜15リットル程度、通常は2〜8リットルのケトン類等の有機溶剤を加えて溶解し、沈澱物を分離した後の濾液(上清)を抽出液として回収すればよい。なお、溶剤の使用量は、有効成分が抽出されればよく、上記範囲を逸脱することもあり得る。
【0037】
このようにして、得られた抽出液は、そのまま、抗酸化性組成物として使用することができるが、更に、抽出液の処理物も使用することができ、処理物としては、例えば、抽出液の濃縮物、ペースト化物、乾燥物、希釈物が使用できるほか、精製物、例えば、液体クロマトグラフィーや向流分配法などで抗酸化性物質を分離精製し、またそれを採取して、抗酸化性組成物として用いることもできる。
【0038】
酢酸菌体破砕物の場合も同様であって、酢酸菌を破砕して(通常、湿菌体に0.5〜2倍量の水を加えた後に破砕処理する)得られた破砕物をそのまま抗酸化性組成物として使用できるほか、上記と同様に処理して得た各種処理物も抗酸化性組成物として使用することができる。
【0039】
更に、それらの組成物に適当な賦形剤、例えば、アスコルビン酸、ビタミンE、ポリフェノール系天然物、澱粉を添加して本発明の抗酸化性組成物とすることもできる。
【0040】
また、抗酸化性組成物の形態としては、水、またはアルコール、含水アルコールなどに添加して溶液の形態、並びに乾燥して得られる粉末、またはそれを成形して得られる錠剤などの形態として用いることができる。細胞破砕された酢酸菌体もしくは抽出物を含む錠剤、カプセル剤、粉未または液体であってもかまわない。
【0041】
以上述べたように、本発明に係る生体内抗酸化性組成物は、飲食品として使用できるほか、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、散剤、液剤等の剤形に製剤化して、医薬、栄養剤、サプリメント等としても使用することができる。
【0042】
また、本発明によれば、食酢その他酢酸菌含有飲食品を破砕処理したり、酢酸菌を飲食品に添加した後これを破砕処理したり、酢酸菌の破砕処理物(その処理物も含む、以下同じ)を飲食品に添加したり、酢酸菌体又はその破砕処理物の脂溶性有機溶剤抽出物(その処理物も含む、以下同じ)を飲食品に添加したりすることによって、生体内抗酸化性組成物を製造することもできる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
<生体内抗酸化力の測定>
生体モデル試験系である赤血球膜ゴースト法を用いて無加工、フレンチプレス破砕を行った菌体破砕物、有機溶媒を用い抽出した菌体内の脂溶性物質の抗酸化についての力価を比較した。
【0045】
<酢酸菌の培養条件>
酢酸菌(Acetobacter aceti NBRC 14818)のグリセロールストックから、YPG(グルコース30g/l、酵母エキス5g/l、ポリペプトン3g/l)5ml試験管にて前々培養を30℃、48時間行い、その後、そこから100μl植継YPG5ml試験管にて30℃24時間前培養の後、YPG100ml坂口フラスコに3%植菌して、30℃、36時間振とう培養させた。
【0046】
<酢酸菌培養液の回収および酢酸菌の集菌条件>
培養後、8000rpmで遠心後、菌体を50mMTris−HCl(pH7.0)を用いて2度洗浄した後、再集菌した。
【0047】
<酢酸菌の酢酸エチル抽出条件>
酢酸菌体を超音波で破砕後、アセトンと混合する。その後遠心分離を行い、上清を回収し、遠心エバポレーターにて乾固する。その後、滅菌水と酢酸エチルの等量混合物を加え(その添加量は、乾燥菌体を充分に湿潤せしめ、更にその3倍量とした。)、よく混合し遠心し上層を回収し酢酸エチル抽出物とした。
【0048】
<フレンチプレスを用いた細胞破砕>
フレンチプレス圧力式細胞破砕機を用い、10,000psiの破砕圧力で細胞を破砕した。
【0049】
<赤血球膜ゴースト>
ウサギ保存血液100mlに対し、100mlの等張液10mMリン酸緩衝液(NaHPO4/KH2PO4)/15.2mMNaCl(pH7.4)を加え、充分振とうし、3500rpm、4℃、20分遠心、上清を除いた。これを3回繰り返した。
【0050】
得られた赤血球に100ml低張液10mMリン酸緩衝液(NaHPO4/KH2PO4)(pH7.4)を100ml加えよく振とうし、11500rpmで遠心、上清を除いた。
【0051】
タンパク濃度を1.0mgProtein/mlになるように調整した。尚、タンパク濃度の測定は、Bio Rad DC−protein Assay(Bio−Rad Laboratories)を用いた。
【0052】
サンプルを100μ1に対して、調整した赤血球膜ゴースト850μl加え、さらに脂質過酸化剤である24mMt−ブチルヒドロペルオキシド(t−BuOOH)を50μl加え、よく混合し、37℃で60分静置した。そして、0.4%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)/EtOH溶液10μl、20%トリクロロ酢酸(TCA)500μl、0.67%チオバルビツール酸(TBA)を1ml加えよく混合した。100℃10分で加熱したのち、氷上で冷した。その後、3500rpm15分で遠心し、上清の535nmの吸光度を測定した。
【0053】
なお、脂質の過酸化阻害率は、以下の式により算出した。
【0054】
脂質過酸化阻害率(%)=100−100(A/B)
式中、Aはサンプル吸光度、Bはコントロール吸光度を示す。
【0055】
得られた結果を、表1に示した。その結果、無加工の菌体(コントロール)については、生体内抗酸化能はほとんど期待できないのに対して、サンプルであるところの、フレンチプレスで細胞を破壊したもの、及び、有機溶媒で抽出したものは、コントロールに比して、2.5〜4倍以上という非常に高い生体内抗酸化能を有していることが実証され、5倍以上のものも期待される。したがって、表1に示した結果から、無加工の菌体に比べ、フレンチプレスで細胞を破壊したもの、有機溶媒で抽出したものの方が抗酸化力が高く、より生体内を防止または低減することが行えることが判明した。
【0056】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――
試料(使用酢酸菌乾燥重量) 過酸化阻害率(%)
―――――――――――――――――――――――――――
無加工菌体(10mg) 14.3
細胞破砕物(10mg) 55.1
細胞破砕物(15mg) 57.0
細胞破砕物(20mg) 58.6
酢酸エチル抽出物(10mg) 35.6
酢酸エチル抽出物(15mg) 38.9
酢酸エチル抽出物(20mg) 42.4
―――――――――――――――――――――――――
【0057】
(実施例2)
以下の表2に示す酢酸菌19株を実施例1と同様にして培養し、集菌した後、酢酸エチルを用いて抽出した画分を対照として、実施例1と同様にして赤血球膜ゴースト試験を行い酸化阻害率を測定した。なお、用いた菌体量は各株ともに乾燥重量4mgに相当する量であった。以上の結果を図1に示した。
【0058】
(表2)
――――――――――――――――――――――――――――
試料番号 酢酸菌株
――――――――――――――――――――――――――――
1 Acetobacter aceti NBRC14818
2 Acetobacter cibinongensis NBRC16605
3 Acetobacter indonesiensis NBRC16471
4 Acetobacter lovaniensis NBRC13753
5 Acetobacter orientalis NBRC16606
6 Acetobacteror orleanensis NBRC13752
7 Acetobacter pasteurianus DSM3509
8 Acetobacter pomorum DSM11825
9 Acetobacter syzygii NBRC16604
10 Acetobacter tropicalis NBRC16470
11 Acidomonas methanolica DSM5432
12 Asaia bogorensis NBRC16594
13 Asaia siamensis NBRC16457
14 Gluconacetobacter diazotrophicus DSM5601
15 Gluconacetobacter hansenii NBRC14820
16 Gluconacetobacter intermedius DSM11804
17 Gluconacetobacter sacchari DSM12717
18 Gluconobacter cerinus NBRC3267
19 Gluconobacter frateurii NBRC3264
――――――――――――――――――――――――――――
【0059】
図1に示した結果、評価した全ての菌株で生体内モデル試験での抗酸化を確認できた。
そのため、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、アセトナバクター属(Acetobacter)、アサイア属(Asaia)またはアシドモナス属(Acidomonas)に属する酢酸菌であれば特に酢酸菌の種類は制限されない。
【0060】
(実施例3)
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10Klを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを蒸留水にて洗浄後に大型凍結乾燥機で凍結減圧乾固し、乾燥菌体1.8Kgを得た。
【0061】
得られた乾燥菌体1Kgをエタノール10リットルとともにソックスレー抽出器に仕込み、20時間加熱還流した。得られた抽出液を減圧乾固し、5リットルのアセトンに溶解した。沈殿物をろ過で除去し、ろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、淡黄褐色の抽出物100gを得た。
【0062】
得られた抽出物1g(0.7重量%)、結晶セルロース35g(26.9重量%)、乾燥コーンスターチ67g(51.5重量%)、乳糖22g(16.9重量%)、ステアリン酸カルシウム2g(1.5重量%)、および結合剤としてポリビニルピロリドン3g(2.3重量%)を加え、混合粉末化した後に、ゼラチン硬カプセルに充填して、錠剤を作製した。
【0063】
本錠剤は、生体内抗酸化性組成物として、有効に服用可能であることが期待できる。
【0064】
(実施例4)
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10Klを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを等量の蒸留水に分散させた。分散させた20kgの酢酸菌分散液を高圧ホモジナイザー(20000psi)に3回通過させ細胞破壊処理を施した後に、大型凍結乾燥機で凍結減圧乾固し、乾燥菌体粉末1.5Kgを得た。
【0065】
得られた乾燥菌体粉末8g(0.8重量%)、砂糖250g(25重量%)、カラギーナン1.6g(0.16重量%)、ローカストビーンガム0.8g(0.08重量%)、キサンタンガム0.8g(0.08重量%)を混合均一化し、粉体混合物を得た。鍋に300gの水を計量し、黒糖30g(3.0重量%)を溶解し、さらに還元水あめ150g(15重量%)を混合し、先に得た粉体混合物をダマができないように攪拌しながら、更に混合した。
【0066】
それらを均一に攪拌し、残りの水258.8を加え、加温した。溶液温度が85℃10分間加熱溶解後、流水で冷却し、酢酸菌体含有ゼリー食品を得た。
【0067】
本ゼリーは、生体内抗酸化性組成物として、有効に摂食可能であることが期待できる。
【0068】
(実施例5)
酢酸菌としてAcetobacter aceti NBRC 14818を用い、その酢酸発酵液10KLを高速遠心機器(8000rpm、20分)で集菌し、湿菌体10Kgを得た。得られた湿菌体10Kgを食酢100Lに分散させた。分散させた酢酸菌分散液を高圧ホモジナイザー(20000psi)に3回通過させ細胞破壊処理を施した。
【0069】
その溶液を500ml容の瓶に分注し、75℃まで加温により殺菌し酢酸菌体含有食酢を得た。
【0070】
本食酢は、生体内抗酸化性組成物として、有効に飲用に供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】各種酢酸菌の生体内モデル試験における過酸化阻害率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌体破砕物、又は、酢酸菌体破砕物の脂溶性有機溶剤抽出物を含有してなること、を特徴とする生体内抗酸化性組成物。
【請求項2】
脂溶性有機溶剤が脂肪族カルボン酸エステル、アルコール、ケトンの少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1に記載の生体内抗酸化性組成物。
【請求項3】
脂溶性有機溶剤が酢酸エステル又はアセトンであること、を特徴とする請求項2に記載の生体内抗酸化性組成物。
【請求項4】
該組成物が飲食品、あるいは、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、散剤、液剤の少なくともひとつの剤形に製剤化したものであること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体内抗酸化性組成物。
【請求項5】
酢酸菌含有飲食品を破砕処理すること、を特徴とする生体内抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項6】
酢酸菌を飲食品に添加した後、破砕処理すること、を特徴とする生体内抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項7】
酢酸菌体の破砕処理物を飲食品に添加すること、を特徴とする生体内抗酸化性組成物の製造方法。
【請求項8】
酢酸菌体破砕物の脂溶性有機溶剤抽出物を飲食品に添加すること、を特徴とする生体内抗酸化性組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−199624(P2006−199624A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13356(P2005−13356)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【Fターム(参考)】