説明

酵素処理したコーヒー豆を被覆した食品

【課題】コーヒー本来の風味を残しながら食した際に口内への粉残りを著しく減じ、食べ易さをより向上させたコーヒー含有食品を提供すること。
【解決手段】コーヒー豆を酵素処理して得られる処理物と、該処理物に対して、植物油脂及びチョコレートを少なくとも1種含む油脂層と、糖類及び糖アルコール類を少なくとも1種含む糖衣層とを有する食品。前記処理物はコーヒー豆を酵素処理した後に焙煎処理を施したものであることが好ましい。得られた食品は食した際に口内で溶け残る成分が減じられているため、触感の点で優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素処理したコーヒー豆を被覆した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、適度に焙煎したピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、胡桃などの木の実又は種子に対してチョコレートを被覆した食品が存在する。これらの食品は中心部に用いられる木の実や種子が適度な硬度を有しており、チョコレート菓子として非常に人気の高い商品として知られている。
【0003】
また、特許文献1においては上記で示した木の実類のみならず、焙煎したコーヒー豆を中心部としてチョコレートを被覆したコーヒー豆のチョコレート被覆構造体の製造方法が示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ピーナッツやアーモンドなどを中心部とした被覆物とは異なり、コーヒー豆を中心部として作成したチョコレート被覆複合体では、食した際に中心部が適度な硬度を有しているものの口内への粉残りが多く、食べづらくなる。この原因として、アーモンドなどの木の実類を構成する栄養成分が水に易溶解性であるのに対して、コーヒー豆を構成する栄養成分中に難溶性成分として知られるヘミセルロース、リグニン及びその複合体が含まれ、焙煎を行うことによりその含有量が増加するためであることが知られている(非特許文献1参照)。
【0005】
これまでに、コーヒー抽出後の残渣を用いて堆肥や土壌改良剤を製造することを目的として、ヘミセルロース及びリグニンを分解するために多くの研究がなされている。特許文献2においてはリグニン分解菌、油脂分解菌、タンパク質分解菌などが混在する発酵槽中にコーヒー抽出後の残渣を添加した後に発酵処理を行い、堆肥化させる方法が示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、非特許文献2においてはヘキサン抽出にて疎水性成分を除去したコーヒー生豆および焙煎コーヒー豆の粉砕物を分解する方法として、0.1Mの水酸化ナトリウム溶液中で煮沸後にトリコデルマ(Toricoderma)属細菌由来のセルラーゼにて処理し、それに引き続いて0.1Mの水酸化ナトリウム溶液にて加圧煮沸を行い、再度セルラーゼにて処理をする方法が示されている(非特許文献2参照)。
【0007】
上記で示したようにコーヒー豆を構成する難溶性成分を分解する方法については検討・研究が行われているものの、これらの方法はコーヒー豆の残渣を完全に分解することを目的としたものであり、コーヒー豆の食感を改良するためのものではない。加えて、処理を行う際にコーヒー豆を粉砕物にする必要があり、表面積の増加に伴いコーヒー豆の有する香気成分が空気中へ拡散してしまうという欠点があった。
【0008】
ところで、チョコレート製品の多くは夏期や熱帯地方においては温度の上昇により、チョコレートに含まれるカカオバターが製品表面に溶け出して白い結晶が浮き出る現象(ファットブルーム)が見受けられる。このような現象が発生すると製品の外観が損なわれるだけでなく風味や口どけが悪くなる。また、最外層をチョコレートのみで構成する食品においては食する際に手の中で溶けてしまうなどの欠点が存在する。このような現象を回避する方法としてチョコレート被覆物の最外層に糖衣層を形成することにより、ファットブルームや手の中での溶け出しを抑制する方法が知られている。
しかしながら、一般的に温度上昇に伴うチョコレートの溶け出しを防止するための糖衣は食感を維持するために非常に薄いものである。また、いくつかの例を除いては糖類、澱粉類、増粘剤から構成されたシロップを用いて形成されたものであり、香りを有する糖衣層のおいしさを味わうものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−292508号公報
【特許文献2】特開平6−100391号広報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】中林敏郎監修 「コーヒーの科学」,(財)科学技術教育協会,1988年
【非特許文献2】Kasai N et al.,J. Agricultural and Food Chemistry 2006,54,6336−6342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、コーヒー本来の風味を残しながら食した際に口内への粉残りを著しく減じ、食べ易さをより向上させたコーヒー含有食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
(1)コーヒー豆を酵素処理して得られる処理物と、該処理物に対して、植物油脂及びチョコレートを少なくとも1種含む油脂層と、糖類及び糖アルコール類を少なくとも1種含む糖衣層とを有する食品、
(2)前記処理物がコーヒー豆を酵素処理した後に焙煎処理を施したものである前記(1)記載の食品、
(3)前記処理物に対して全重量で5倍以上の油脂層を有し、且つ油脂層の外層に前記コーヒー豆の酵素処理物に対し全重量で7倍未満の糖衣層が形成された前記(1)又は(2)記載の食品、
(4)処理に使用する酵素が微生物由来のセルラーゼと、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼおよびガラクトマンナーゼからなる群から選ばれた少なくとも1種である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品、
(5)前記糖衣層中に、結晶状態を有し、その結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲である砂糖を含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載する食品
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、従来のコーヒー含有食品では達成困難であった、食した際の粉残りを著しく減じたコーヒー豆と、それを用いた食べやすい食品を提供することが可能となった。
また、前記コーヒー豆を焙煎することで、香りも保持された食品を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の食品は、中心層がコーヒー豆を酵素処理して得られる処理物であり、該処理物に対して植物油脂及びチョコレートを少なくとも1種含む油脂層と、糖類または糖アルコール類を少なくとも1種含む糖衣層とで被覆されている点に特徴がある。
【0015】
前記のように、コーヒー豆に対して酵素処理を行うことにより、コーヒー豆を構成する難溶性物質を分解し、食した際に口内への粉残りを著しく減じることができる。
【0016】
また、前記のようにコーヒー豆を酵素処理して得られる処理物が、植物油脂又はチョコレートを少なくとも1種を含む油脂層と、糖類又は糖アルコール類を含む糖衣層で被覆されたことにより、食した際の食べやすさを顕著に向上することができる。
【0017】
なお、本発明の食品では、前記コーヒー豆の酵素処理物からなる中心層の表面に前記油脂層が形成され、次いで糖衣層が形成されていることが好ましい。また、本発明の食品は、前記中心部の表面に油脂層が形成され、次いで、糖衣層と油脂層とが複数形成され、最外層が糖衣層であるものでもよい。以下、中心層、次いで油脂類のコーティング層、次いで糖衣層が形成された食品について説明する。
【0018】
前記コーヒー豆としては、市販されているものであれば良い。例えば、アラビカ種及びロブスタ種のいずれも使用することができ、アラビカ種としてはサルバドルなどが挙げられるが原産地、品種などに特に限定はない。
また、コーヒー豆の状態としては、生豆、焙煎処理された豆などのいずれでも良いが、酵素処理の効果が高く、また香りを保ち易い観点から、生豆を用いることが好ましい。なお、生豆を酵素処理する場合には、後述のように焙煎処理を施すことで、コーヒー本来の香りが顕著になるため、好ましい。
また、酵素処理に施されるコーヒー豆の状態としては、豆の形状が保たれているものであれば良いが、粉砕処理を施したものでも良い。
【0019】
前記酵素処理で使用できる酵素としては、微生物由来のセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及びガラクトマンナーゼなどが挙げられるが、活性を有するものであれば粉末品、液体品などどのようなものでも使用することが可能である。例えば糸状菌(アクレモニウム セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus),アスペルギルス アクレアタス( Aspergillus aculeatus),アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori),アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger),フミコラ インソレンス(Humicola insolens),トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum),トリコデルマ インソレンス(Trichoderma insolens),トリコデルマ コニンギ(Trichoderma koningii),トリコデルマ ロンギブラチアタム(Trichoderma longibrachiatum),トリコデルマ リーゼイ(Trichoderma reesei),トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride))、担子菌(コルチシウム(Corticium),インペックス(Irpex),ピクノポラス コシネウス(Pycnoporus coccineus))、放線菌(アクチノマイセス(Actinomyces),ストレプトマイセス(Streptomyces))もしくは細菌(バシルス サーキュランス(Bacillus circulans),バシルス サチルス(Bacillus subtillis))由来のものなどが挙げられる。
本発明ではヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及びガラクトマンナーゼはセルラーゼと共に1種類を添加して使用しても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
次に、本発明における、上記コーヒー豆を処理する方法について説明する。
まず、酵素処理を効率よく行うために1〜3%の酵素を含む水溶液を用意し、水溶液重量の10%程度の重量のコーヒー豆を処理することが好ましい。水溶液量に対してコーヒー豆の量が多い場合には、酵素がコーヒー豆のセルラーゼを十分量分解するまでの時間が長くなり、効率が下がってしまう。原料を酵素処理する場合、従来公知の発酵方法が使用でき得に限定されない。
【0021】
酵素処理の際の温度、時間、pHなどの処理条件は使用する各種酵素により適宜設定可能であり特に限定されない。また、酵素処理時の条件としては攪拌処理、振盪処理、または静置処理のいずれでも行うことができる。
得られた酵素処理後の混合物からは、濾過、遠心分離などで固形物を取り出すことで酵素処理したコーヒー豆を酵素処理して得られた処理物を回収することができる。
【0022】
このようにして得られた酵素処理物は、従来法に則って焙煎を行うことができる。焙煎の度合いとしてはあまり焙煎していない浅煎りから焙煎度合いの非常に高い深煎りのものまでを後述する被覆した食品の作成に使用することができるが、食した際に粉残りを感じさせないためにより好ましいのは浅煎りから深煎りの中間から深煎りのものである。
本発明では、前記のようにコーヒー豆の酵素処理物を焙煎処理することにより、コーヒー豆が持つ本来の香りを顕著に保つことが可能になるため好ましい。
【0023】
本発明で酵素処理したコーヒー豆のコーティングに使用する植物油脂及びチョコレートは、常温にて固形化するものであればどのようなものでも使用することが可能であり、特にチョコレートにおいては例としてカカオマスを含まないホワイトチョコレート、カカオマスを多量に含むビターチョコレート、さらにはホワイトチョコレートに各種フレーバーや粉末果汁を添加したフレーバーチョコレートなどを使用することができる。また、植物油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、アマニ油、菜種油、コーン油、大豆油、ごま油、ひまわり種子油、オリーブオイルなどが使用できる。
なお、前記油脂類によるコーティング層(油脂層)には前記植物油脂、チョコレートをそれぞれ単独で使用した単層としたり、2種以上の単層を積層したり、2種以上の油脂類を混合した層としても良い。
【0024】
本発明の好ましい態様としては、コーヒー豆の酵素処理物に対して形成する植物油脂又はチョコレートを含む油脂によるコーティング層の重量は好ましくは全重量で5倍以上であり、より好ましくは5倍以上且つ6倍未満である。得られる食品において植物油脂及びチョコレートを含む油脂類で5倍未満のコーティング層を有しているものでは、口内への若干の粉残りが生じる傾向がある。
【0025】
油脂類のコーティング方法としては、前記コーヒー豆の酵素処理物に、溶融させた油脂類を接触させて行えばよく、接触手段については特に限定はない。例えば、前記コーヒー豆の酵素処理物をコーティングパンにて油脂類でコーティングする方法が挙げられる。
【0026】
本発明において、前記糖衣層を構成する糖類としては、砂糖、白双糖、三温糖、黒砂糖などが挙げられる。また、糖アルコールとしてはエリスリトール、パラチニット、マルチトール、キシリトールなどが挙げられる。
中でも、前記糖類として砂糖を用いることが好ましい。砂糖としては、糖衣に使用されているものであれば特に限定はない。砂糖を用いる場合、糖衣層中において砂糖は結晶状態を有することが好ましい。この場合、結晶の平均粒径は、5〜15μmの範囲であることが好ましい。なお、本発明では、砂糖の結晶の平均粒径は、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺の平均粒径とする。
【0027】
前記糖類又は糖アルコールを含む糖衣層は、前記糖類又は糖アルコールの水溶液を塗布することで形成することができる。この時に使用する糖衣液は、糖度60〜90%、好ましくは68〜75%に調整することが好ましい。このような糖度に調整することで、好ましい甘味が得られるとともに、糖衣層形成時に砂糖の結晶化が良好に行われる。なお、糖衣液には、香料、調味料、着色料などの添加物を適宜添加してもよい。
【0028】
また、散布した糖衣液中の糖類の結晶化を促進させるためにコーティングパン内に送風することが望ましい。結晶のコントロールは、乾燥条件と乾燥時間による要因が大きく、乾燥をゆっくりしすぎると結晶が大きくなる傾向があるため、適当な送風条件を糖衣液中の糖類の種類、含有量に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
また、乾燥が速すぎると結晶が大きくならずに、ぼそぼその食感となる。この結晶コントロールは、糖衣液の温度にも左右され、40〜90 ℃ にする必要がある。更に好ましくは、70〜80℃の範囲である。
なお、糖衣層には前記糖類、糖アルコール類をそれぞれ単独で使用した単層としたり、2種以上の単層を積層したり、2種以上の糖類又は糖アルコール類を混合した層としてもよい。
【0030】
また、糖衣層の重量は、中心部を構成するコーヒー豆の酵素処理物に対して全重量で7倍未満であり、より好ましくは6倍以上且つ7倍未満である。コーティング層の外層に中心部に対して全重量で7倍未満の糖衣層を形成したものでは、糖衣層が適度な厚みとなるために植物油脂およびチョコレートを少なくとも1種含む油脂類の滑らかな食感が得られやすくなる。
【0031】
以上の構成を有する本発明の食品は、更に後処理として、艶出しなどのコーティングなどを施してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、実施例は本発明をなんら限定するものではない。
【0033】
(実施例1)
原料コーヒー生豆としてアラビカ種の「サルバドル」を用い、このコーヒー生豆100gあたり、水1000ml及びアスペルギルス(Aspergillus)属細菌(麹菌)由来のセルラーゼ粉末10gを添加し、よく攪拌し、40℃にて5時間攪拌することによりコーヒー豆を形成するセルラーゼを分解した。分解して溶出した糖の還元末端部分をDNS法(ジニトロサリチル酸法)によって測定したところ、セルラーゼによって155mg/gの還元糖が生成されていることが確認された。
【0034】
この酵素処理したコーヒー豆を濾別して回収し、L値16まで焙煎したもの(中心部)に対して、ホワイトチョコレートにて全重量が5倍になるまでコーティング層を形成した。次いで下記表1に示す組成の糖衣液を調製し、これを用いて中心部に対して全重量が7倍になるまで糖衣層を形成した。なお、糖衣液の糖度は70%に調整し、75℃に加温したものを用いた。また、砂糖の層の結晶状態は平均粒径が9μmであった。なお、L値とは焙煎度を示す数値であり、黒を0、白を100とする測色計を用い、各ロースト段階の色の明度を数値に置き換えたものをいう。また、糖度は糖度計で測定し、砂糖の結晶状態は、糖衣層の断面を電子顕微鏡で観察して測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例2)
原料コーヒー生豆としてアラビカ種の「ブラジル」を用い、このコーヒー生豆100gあたり、水1000mlおよびアスペルギルス属細菌由来のセルラーゼ粉末30gとアスペルギルス属細菌由来のヘミセルラーゼ10gを添加し、よく攪拌し、40℃にて2.5時間攪拌することによりコーヒー豆を形成する不溶性画分を分解した。分解して溶出した糖の還元末端部分は実施例1と同様の方法によって測定した。その結果、添加した2種類の酵素により340mg/gの還元糖が生成されていることが確認された。
【0037】
実施例1と同様の手法によって回収した酵素処理したコーヒー豆をL値14まで焙煎したもの(中心部)に対して、ミルクチョコレートにて全重量が5倍になるまでコーティング層を形成した。次いで下記表1に示す組成の糖衣液を調製し、これを用いて中心部に対して全重量が7倍になるまで糖衣層を形成した。なお、糖衣液の糖度は70%に調整し、80℃に加温したものを用いた。また、砂糖の層の結晶状態は平均粒径が8μmであった。
【0038】
(比較例1)
アラビカ種の「サルバドル」をL値16まで焙煎したもの(中心部)に対して、ホワイトチョコレートにて全重量が5倍になるまでコーティング層を形成した。次いで下記表1に示す組成の糖衣液を調製し、これを用いて中心部に対して全重量が7倍になるまで糖衣層を形成した。なお、糖衣液の糖度は70%に調整し、75℃に加温したものを用いた。また、砂糖の層の結晶状態は平均粒径が8μmであった。
【0039】
(比較例2)
アラビカ種の「ブラジル」をL値14まで焙煎したもの(中心部)に対して、ミルクチョコレートにて全重量が3倍になるまでコーティング層を形成した。次いで下記表1に示す組成の糖衣液を調製し、これを用いて中心部に対して全重量が8倍になるまで糖衣層を形成した。なお、糖衣液の糖度は70%に調整し、80℃に加温したものを用いた。また、砂糖の層の結晶状態は平均粒径が8μmであった。
【0040】
(比較例3)
アラビカ種の「サルバドル」をL値16まで焙煎したもの(中心部)に対して、ホワイトチョコレートにて全重量が5倍になるまでコーティング層を形成した。次いで下記表1に示す組成の糖衣液を調製し、乾燥時に送風せずに中心部に対して全重量が7倍になるまで糖衣層を形成した。なお、糖衣液の糖度は70%に調整し、75℃に加温したものを用いた。また、砂糖の層の結晶状態は平均粒径が22μmであった。
【0041】
実施例1で作製した食品と比較例1で作製した食品を10人のパネラーによる官能試験により比較し、その結果を表2に記載した。また、実施例2で作製した食品と比較例2で作製した食品を10人のパネラーによる官能試験により比較した結果を表3、実施例1で作製した食品と比較例3で作製した食品を10人のパネラーによる官能試験により比較した結果を表4にそれぞれ記載した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表2〜4の結果により、実施例1,2で得られた食品は比較例1〜3のものに比べて、粉残りがなく、食感に優れていることが分かる。
また、実施例1、2で得られた食品はコーヒーの香りの点でも、比較例1〜3のものに比べて有意に感じることができるものであった。
【0046】
また、実施例1、2で得られた食品は、コーヒー豆材料として、生豆のかわりにあらかじめ焙煎処理された豆を使用して酵素処理して得られる食品や、生豆に酵素処理して焙煎処理を施さずに得られる食品に比べて、コーヒーの香りが有意に保たれたものであった。
【0047】
また、実施例1で得られた食品については、油脂層と糖衣層の量を変化させたところ、酵素処理物に対して全重量で5倍以上且つ6倍未満の油脂層を形成するように調整し、さらに酵素処理物に対して全重量で6倍以上且つ7倍未満の糖衣層を形成するように調整した場合に、口内への粉残りが少なく、また、滑らかな食感を得られる点で、より好ましいものとなった。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆を酵素処理して得られる処理物と、該処理物に対して、植物油脂及びチョコレートを少なくとも1種含む油脂層と、糖類及び糖アルコール類を少なくとも1種含む糖衣層とを有する食品。
【請求項2】
前記処理物がコーヒー豆を酵素処理した後に焙煎処理を施したものである請求項1記載の食品。
【請求項3】
前記処理物に対して全重量で5倍以上の油脂層を有し、且つ油脂層の外層に前記コーヒー豆の酵素処理物に対し全重量で7倍未満の糖衣層が形成された請求項1又は2記載の食品。
【請求項4】
処理に使用する酵素が微生物由来のセルラーゼと、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼおよびガラクトマンナーゼからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
前記糖衣層中に、結晶状態を有し、その結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲である砂糖を含有する請求項1〜4のいずれかに記載する食品。

【公開番号】特開2010−172327(P2010−172327A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22031(P2009−22031)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】