説明

酵素又は微生物固定化用担体

【課題】高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化用担体を提供すること。
【解決手段】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)粘土鉱物、及び(e)有機オニウムイオンを含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合又は/及び熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素又は微生物固定化用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素又は微生物の固定化法としては、従来から、包括法、付着法、担体結合法等が行なわれているが、なかでも包括法、付着法は菌体固有の生理、代謝にもとづく反応を効率良く利用できるため、発酵、微生物変換、廃水処理等の分野で注目されている。上記酵素又は微生物を固定化するためには、通常、酵素又は微生物固定化用担体が利用されるが、該固定化用担体として多孔質無機担体を用いた場合、担体への微生物の付着性が悪く、さらに付着後担体上で増殖した菌体が剥離しやすいという欠点を有する。また、無機質担体は一般に水より比重が大きく、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として用いると流動操作が難しいという欠点を有する。
【0003】
一方、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性樹脂、高酸価不飽和アクリル樹脂、不飽和ポリエチレングリコール等の親水性光硬化樹脂は、包括固定化法等に好適な固定化用担体であり、これらの樹脂水溶液や水分散液に微生物菌体を分散して粒状にゲル化させた固定化物粒子は含水ゲル化物のために比重が水の比重に近く、微生物の付着性や増殖性も良好であり、流動層型バイオリアクターの固定化物粒子として提案され、広く利用されている(特許文献1参照)。このようなバイオリアクターでは、槽内部において担体を流動させるために行なわれる攪拌や曝気のエネルギーを最小限に抑えて運用コストを削減するため、反応槽内に部分的に滞留することなく十分に流動できる低比重の担体が求められる場合があり、比重調整用の無機質系中空ビーズ(中空ガラスビーズ又は中空セライト)や中空ポリマー粒子を担体に含有させることが提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これらの親水性樹脂を用いる固定化用担体は含水ゲル化物として使用されるため、機械的強度が弱く、リアクターの操業中に破損しやすく作業性が悪いという欠点があり、また無機質系中空ビーズを担体に含有させる方法では担体の圧縮破壊強度等の物性低下が非常に大きく、これを改善し得る中空ポリマー粒子を用いた場合でもかかる担体の強度向上には限界があった。
【0005】
一方、特許文献4には、微生物を固定化材料中に包括固定した包括固定化担体において、前記固定化材料中に、板状及び/又は針状の結晶構造を有するフィラーを含有したことを特徴とする包括固定化担体が、固定化に関る材料(固定化材料、重合開始剤等)を低濃度化した場合でも、担体強度が高く、かつ、安定した高い微生物活性(硝化活性)を保持する旨記載されている。しかしながら、この手法でも、強度向上効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−19837号公報
【特許文献2】特開平10−168105号公報
【特許文献3】特開2002−265号公報
【特許文献4】特開2007−20437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化用担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、不飽和基含有樹脂、重合開始剤、及び、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることによって得られる酵素又は微生物固定化担体において、水性液状組成物中に粘土鉱物及び有機オニウムイオン、もしくは粘土鉱物に有機オニウムイオンがイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物を配合することにより、担体としての生物活性を低下させることなく、担体の強度を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の担体を提供するものである。
1.(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)粘土鉱物、及び(e)有機オニウムイオンを含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
2.(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(f)粘土鉱物(d)に有機オニウムイオン(e)がイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物を含んでなる水性液状組成物(ii)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
3.重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である上記項1又は2記載の酵素又は微生物固定化用担体。
4.粘土鉱物(d)が2:1型層状粘土鉱物である上記項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
5.有機オニウムイオン(e)が、1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有する有機オニウムイオンである上記項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い生物活性を有し、かつ高い強度を有する酵素又は微生物固定化担体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酵素または微生物固定化用担体は以下の方法(I)又は方法(II)によって製造することができる。
【0012】
方法(I)
本発明の酵素又は微生物固定化用担体は、(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)粘土鉱物、及び(e)有機オニウムイオンを含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造することができる。
【0013】
重合性不飽和基含有樹脂(a)
本発明において用いられる重合性不飽和基含有樹脂(a)としては、1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する樹脂であって、一般に300〜30,000、好ましくは500〜20,000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散するのに充分なイオン性又は非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合等を含む親水性の不飽和基含有樹脂が好適に使用される。
【0014】
ここで、本明細書において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフとして「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製、)を使用し、カラムとして「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0015】
重合性不飽和基含有樹脂(a)としては、包括固定化用の固定化担体として既に知られているものを用いることができる(例えば、特公昭55−40号公報、特公昭55−20676号公報、特公昭62−19837号公報等参照)。代表的なものとしては以下に記載するものを挙げることができる。
(i)ポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物:例えば、
(i−1)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類。
【0016】
(i−2)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類。
【0017】
(i−3)分子量400〜6,000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物。
【0018】
(i−4)分子量200〜4,000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2?ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシ化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物、など。
【0019】
(ii)高酸価不飽和ポリエステル樹脂:例えば、不飽和多価カルボン酸を含む多価カルボン酸成分と多価アルコールとのエステル化により得られる酸価が40〜200の不飽和ポリエステルの塩類など。
【0020】
(iii)高酸価不飽和エポキシ樹脂:例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物との付加反応物に残存するヒドロキシル基に酸無水物を付加して得られる酸価40〜200の不飽和エポキシ樹脂など。
【0021】
(iv)アニオン性不飽和アクリル樹脂:例えば、酸基含有重合性不飽和化合物及び(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするモノマー混合物を共重合させて得られるカルボキシル基、リン酸基及び/又はスルホン酸基を含有する共重合体に光重合可能な重合性不飽和基を導入した樹脂など。
【0022】
(v)不飽和ポリアミド:例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとアクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和ヒドロキシ化合物とのイソシアネート基含有付加物をゼラチンなどの水溶性ポリアミドに付加反応させた不飽和ポリアミドなど。
【0023】
以上に例示した如き重合性不飽和基含有樹脂(a)はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0024】
これらの重合性不飽和基含有樹脂(a)のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、前記(i)に該当するポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能な重合性不飽和基を有する化合物であり、代表的なものとしては、「ENT−1000」、「ENT−2000」、「ENT−4000」、「ENTG−2000」、「ENTG−3800」(商品名、関西ペイント社製)等を挙げることができる。
【0025】
重合開始剤(b)
本発明において用いられる重合開始剤(b)としては、光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤を使用することができる。
【0026】
上記光重合開始剤としては、重合性不飽和化合物の重合に有用なものとして従来から知られているものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル?2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロ)−S−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0027】
また、これらの光重合開始剤による光重合反応を促進させるために、光増感促進剤を該光重合開始剤と併用してもよい。併用し得る光増感促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の三級アミン系;トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系;β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。これらの光増感促進剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
また、前記レドックス系熱重合開始剤としては、従来から既知のものを使用することができ、例えば、−10℃〜50℃程度の比較的低温でラジカル重合を行ない得る、酸化剤と還元剤の組み合わせからなる重合開始剤が好適に使用される。
【0029】
上記酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物類;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウムなどのペルオキソ二硫酸塩類;過酸化水素等が挙げられる。これらの酸化剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0030】
また、前記還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩類;硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの二価の鉄塩類;N,N−ジメチルアニリン、フェニルモルホリンなどのアミン類;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅などのナフテン酸金属塩類等を挙げることができる。これらの還元剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0031】
これらのレドックス系熱重合開始剤のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、酸化剤がペルオキソ二硫酸塩類又は過酸化水素からなり、還元剤が亜硫酸水素塩類又は二価の鉄塩からなる組み合わせのものである。
【0032】
アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)
本発明において用いられるアルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)は、水溶性であり、水性媒体中でアルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触したときに水に不溶性又は難溶性のゲルに変化する能力のある高分子多糖類である。該高分子多糖類としては、一般に約3,000〜約2,000,000の分子量を有し、また、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンと接触させる前の水溶性の状態で通常少なくとも約10g/L(25℃)の溶解度を示すものが好適に使用される。
【0033】
前記水溶性高分子多糖類(c)の具体例としては、アルギン酸のアルカリ金属塩、カラギーナン等が包含される。
【0034】
これら水溶性高分子多糖類(c)は水性媒体中に溶解した状態で、アルギン酸のアルカリ金属塩の場合は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;或いはアルミニウムイオン、セリウムイオン、ニッケルイオン等の他の多価金属イオン;のうちの少なくとも1種の多価金属イオンと接触するとゲル化しうる。また、カラギーナンの場合は、カリウムイオンまたはナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンと接触するとゲル化しうる。ゲル化が起こるアルカリ金属イオンまたは多価金属イオンの濃度は水溶性高分子多糖類の種類等により異なるが、一般には0.01〜5mol/Lの範囲である。これらの水溶性高分子多糖類は単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0035】
粘土鉱物(d)
本発明において用いられる粘土鉱物(d)としては、粘土の主要構成鉱物であれば従来公知のものを特に制限なく使用でき、天然物、天然物の精製品、天然物の膨潤性を改質したもの又は合成されたものでもよい。なかでも、該粘土鉱物(d)が層状構造を有する層状粘土鉱物であることが好ましい。上記層状構造とは無機結晶層が多数積み重なった積層構造をいう。
【0036】
前記層状粘土鉱物としては例えばカオリナイト、蛇紋石、ハロイサイト、クリソタイル、パイロフィライト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、サポナイトなど)、バーミキュライト、雲母(白雲母、パラゴナイト、イライト、金雲母、黒雲母など)、脆雲母(マーライト、ザンソフィライトなど)、緑泥石(ドンバサイト、スドウ石、クリノクロア、シャモサイトなど)等が挙げられる。
【0037】
上記層状粘土鉱物の結晶構造は、一般に四面体シートと八面体シートからなり、「シート」が組み合わさった複合単位が「層」である。四面体シートは、一般にSi4+を4つのO2−が囲んだ四面体のうち、3つを隣の四面体と共有し、残りの1つの頂点は同じ方向を向いて並び、六角形の網状に広がったもので、[Si2−の組成を持ったフィロケイ酸塩(層状シリケート)である。また、上記八面体シートは、一般にAl3+、Mg2+、Fe2+などの陽イオンを6つの(OH)が囲んだ八面体が稜を共有して2次元的な網状に広がったもので、基本的にはAl(OH)、またはMg(OH)の組成を持っている。
【0038】
1枚の四面体シートと1枚の八面体シートが組み合わさって複合層を作る場合、これを「1:1層」といい、1:1層が繰り返して積み重なることによって作られる構造を「1:1型構造」という。
【0039】
また、2枚の四面体シートが1枚の八面体シートを挟み込んだ3層構造から作られる構造を「2:1型構造」という。
【0040】
1:1型層状粘土鉱物としては、具体的には例えば、カオリナイト、蛇紋石、ハロイサイト、クリソタイル等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0041】
また、2:1型層状粘土鉱物としては、具体的には例えば、パイロフィライト、タルク、スメクタイト(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイトなど)、バーミキュライト、雲母(白雲母、パラゴナイト、イライト、金雲母、黒雲母など)、脆雲母(マーライト、ザンソフィライトなど)、緑泥石(ドンバサイト、スドウ石、クリノクロア、シャモサイトなど)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0042】
ところで、前記カオリナイト、蛇紋石、パイロフィライト、タルクの四鉱物の構造では、1:1型層または2:1型層全体としても、個々のイオンの間でも、電荷は中和してバランスを保っている。しかしながら他の2:1型構造の四面体シートではSi4+の代わりに、わずかにイオン半径の大きいAl3+が入ることがある。また、八面体シートではAl3+の代わりに、わずかにイオン半径の大きいMg2+が入ることがある。これらの場合には、結晶構造には大きな変化はないが、電荷の不足を生じる。該電荷の不足を補うためにアルカリ金属またはアルカリ土類金属が結晶表面あるいは結晶層間に陽イオンとして入り、該陽イオンとしては、K、Na、Ca2+、Mg2+、Hなどが挙げられる。
【0043】
前記結晶層間に入っている層間陽イオンと層状粘土鉱物の単位層表面の負電荷との結合力は弱いため、他の陽イオンを含む溶液と接触すると層間陽イオンと液中の陽イオンは交換反応をおこし、陽イオン交換反応を生じる。
【0044】
本発明では上記粘土鉱物に対して有機オニウムイオンを用いて有機化粘土鉱物を作成する観点から、粘土鉱物(d)としては、陽イオン交換性を有するものが好ましい。
【0045】
上記陽イオン交換性を有する粘土鉱物としては、スメクタイト(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイトなど)、バーミキュライト、雲母等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0046】
また、層間陽イオンと単位層表面の負電荷との結合力が、層間陽イオンと水分子の相互作用エネルギーより弱い層状粘土鉱物では、層間を引き締める力が弱いので水分子が多量に取り込まれ、水膨潤している。
【0047】
本発明では上記粘土鉱物に対して有機オニウムイオンを用いて有機化粘土鉱物を作成する観点から、粘土鉱物(d)としては、層間距離が広いという意味で水膨潤性を有することが好ましい。
【0048】
上記水膨潤性を有する粘土鉱物としては、ハロイサイト、スメクタイト(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイトなど)、バーミキュライト、膨潤性雲母(膨潤性テニオライト、膨潤性四ケイ素雲母、膨潤性合成フッ素雲母など)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0049】
したがって、前記陽イオン交換性、及び水膨潤性といった2つの観点から、本発明方法に用いる粘土鉱物(d)としては、スメクタイト系粘土鉱物(ソーコナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイトなど)、バーミキュライト、及び膨潤性雲母(膨潤性テニオライト、膨潤性四ケイ素雲母、膨潤性合成フッ素雲母など)が好ましい。
【0050】
また、上記モンモリロナイトを主成分とする粘土であるベントナイトも上記粘土鉱物(d)として使用することができる。これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0051】
前記粘土鉱物(d)は、市販されているものを使用することができ、市販されているスメクタイト系粘土鉱物としては、例えば、「クニピアシリーズ」、「スメクトンシリーズ」(クニミネ工業株式会社)、「ポーラゲルシリーズ」、「ヘクタブライトシリーズ」、「ヘクタライトシリーズ」(ボルクレイジャパン社製)、「ラポナイトシリーズ」(ロックウッド社製)、「ルーセンタイトシリーズ」(コープケミカル社製)、「ベントンシリーズ」(エレメンティス社製)、「NHTシリーズ」(トピー工業株式会社)、「ビーガムシリーズ」(バンダービルト社製)などが挙げられる。
【0052】
また、市販されている膨潤性雲母としては、例えば「NTSシリーズ」(トピー工業株式会社)、「ソマシフシリーズ」(コープケミカル株式会社)などが挙げられる。さらに、市販されているベントナイトとしては、「ベンゲルシリーズ」(日本有機粘土社製)、「ベンクレイシリーズ」(水澤化学工業社製)などが挙げられる。いずれの市販品も、結晶構造、陽イオン交換容量や比表面積等その性質に応じて種々のグレードがあるが,本発明ではいずれも用いることができる。
【0053】
前記粘土鉱物(d)は有機化粘土鉱物の安定性および強度向上性の観点から平均粒子径が10〜8000nm、好ましくは20〜7000nmの範囲内であることが好適である。
【0054】
また、アスペクト比は有機化粘土鉱物の安定性および強度向上性の観点から50〜3000、好ましくは100〜2000、の範囲内であることが好適である。
【0055】
また、陽イオン交換容量(CEC)は、特に限定されないが、層間陽イオンと有機オニウムイオンとのイオン交換のしやすさから50〜200ミリ等量/100g、さらに好ましくは60〜150ミリ等量/100gであることが好ましい。
【0056】
また、膨潤力は特に限定されないが、層間陽イオンと有機オニウムイオンとのイオン交換のしやすさから20mL/2g以上、さらに好ましくは20〜70mL/2gであることが好ましい。
【0057】
本発明で規定する「陽イオン交換容量」は、メチレンブルーの吸着量測定により求めることで測定される。
【0058】
本発明で規定する「膨潤力」は、第13改正日本薬品局方に定められたベントナイトの試験方法を準用し、粘土鉱物2gの膨潤体積(mL)で表される。具体的には、粘土鉱物2.0gをとり、水100mLを入れた100mLのメスシリンダーに10回に分けて加え、これを24時間放置したときの器底の塊の見かけ容積を目盛りから読み取る。なお、粘土鉱物を10回に分けて水に加えるとき、先に加えた試料がほとんど沈着した後、次の試料を加えることとする。
【0059】
有機オニウムイオン(e)
本発明において用いられる有機オニウムイオン(e)としては、粘土鉱物の交換無機イオンと置換されるものであれば従来公知のものを制限なく使用できる。
【0060】
上記有機オニウムイオン(e)としては例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられる。なかでも、入手容易性、安定性等の観点からアンモニウムイオン、好ましくは4級アンモニウムイオンを好適に使用することができる。
【0061】
上記4級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等の同一のアルキル基を有する4級アンモニウム;
トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルエイコサニルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム、トリメチルラウリルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム;
トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム;
トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム;
ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム;
ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム;
ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム;
メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム;
ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム;
トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム;
トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム;
トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム;
トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム;
トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム;
等が挙げられ、これらは単独で若しくは2種以上組合せて使用することができる。
【0062】
また上記有機オニウムイオン(e)としては、重合性不飽和基含有樹脂(a)との相溶性の点から重合性不飽和基を有する有機オニウムイオンを好適に使用することができる。なお、本明細書において重合性不飽和基とは、ラジカル重合し得る不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0063】
上記重合性不飽和基を有する有機オニウムイオンとしては、例えば重合性不飽和基を有する四級アンモニウムイオンを好適に使用することができる。
【0064】
該重合性不飽和基を有する四級アンモニウムイオンとしては例えば、ビニルベンジルジメチルエチルエタノールアンモニウムイオン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル四級アンモニウムイオン、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル四級アンモニウムイオン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル四級アンモニウムイオン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル四級アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0065】
また、前記重合性不飽和基を有する有機オニウムイオンは、アミノ基含有不飽和化合物と四級化剤との反応によって得ることもできる。該アミノ基含有不飽和化合物としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、前記四級化剤としては、例えばハロゲン化水素、ハロゲン化アルキル、硫酸ジアルキル、ヒドロカルビル置換炭酸塩、酸と組み合わせたエポキシ化合物等が挙げられる。
【0066】
また、前記有機オニウムイオン(e)は、該有機オニウムイオン(e)とアニオンよりなる有機オニウム塩であってもよい。該アニオンとしては例えば、Cl、Br、NO、OH、CHCOO、CHSO等を使用することができる。
【0067】
水性液状組成物(i)
本発明において前記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、粘土鉱物(d)、及び有機オニウムイオン(e)の各成分の配合割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、一般には、重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、及び粘土鉱物(d)の各成分が、固形分でそれぞれ下記の範囲内であり、
(b)重合開始剤:0.1〜10質量部、好ましくは、0.3〜5質量部、
(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類:0.5〜15質量部、好ましくは、1〜8質量部、
(d)粘土鉱物:0.5〜30質量部、好ましくは、1〜25質量部、
さらに有機オニウムイオン(e)が粘土鉱物(d)100質量部を基準として5〜200質量部、好ましくは、10〜150質量部、さらに好ましくは20〜90質量部の範囲内であることが好適である。
【0068】
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、重合開始剤(b)が、0.1質量部未満である場合は、重合成不飽和基含有樹脂が十分に架橋せず実使用時に流出してしまう可能性がある点で好ましくなく、10質量部を超えると得られた担体の強度が低下してしまう点で好ましくない。
【0069】
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)が、0.5質量部未満である場合は、担体粒子の安定性が得られない点で好ましくなく、15質量部を超えると得られた担体の強度低下の点で好ましくない。
【0070】
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、粘土鉱物(d)が、0.5質量部未満である場合は、強度向上効果が得られない点で好ましくなく、30質量部を超えると強度低下の点で好ましくない。
【0071】
粘土鉱物(d)の固形分100質量部を基準として、有機オニウムイオン(e)が、5質量部未満である場合は、強度向上効果の点で好ましくなく、100質量部を超えると残存有機オニウムイオンが実使用中に流出してしまう点で好ましくない。
【0072】
本発明において重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、粘土鉱物(d)、及び有機オニウムイオン(e)を含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体が、高い強度を有する理由としては、有機オニウムイオン(e)が粘土鉱物(d)の層間にインターカレート(層間挿入:intercalate)することによって粘土鉱物(d)の層間が剥離され、かかる層間は重合性不飽和基含有樹脂(a)の重合反応場となるために、重合性不飽和基含有樹脂(a)を連続相とし、該連続相中に有機オニウムイオン(e)と結合した粘土鉱物(d)がフィラーとして点在する構造を有する担体が作成される、すなわちナノコンポジットとしての様相を呈するためであると推察される。
【0073】
なかでも特に、有機オニウムイオン(e)として重合性不飽和基を有する有機オニウムイオンを用いた場合は、該有機オニウムイオン(e)の持つ不飽和基が重合性不飽和基含有樹脂(a)に取り込まれることによって、連続相とフィラーの親和性が増大し、あるいは粘土鉱物を完全層剥離に近づけることができるため、より高い強度を有する担体が得られるものと推察される。
【0074】
本発明において上記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)、粘土鉱物(d)、及び有機オニウムイオン(e)を含んでなる水性液状組成物(i)のみから製造された粒状成形物は、一般に水とほぼ同じ1.01〜1.03の範囲内の比重を有するが、顔料、中空粒子等の比重調整材を添加することで所望の比重に調整することができる。
【0075】
例えば、比重を高くしたい場合には、ガラスビーズ、タルク、マイカ、バリタ等の比重が1以上の比重調整材を前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜50質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が1.03〜1.25の範囲になるように調整することができる。一方、比重を低くしたい場合には、中空ガラスビーズ、中空セライト、中空ポリマー等の比重が1以下の中空粒子を比重調整材として重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜30質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が0.90〜1.01の範囲になるように調整することができる。
【0076】
一般に酵素又は微生物固定化用担体に上記中空粒子を含有せしめた場合、形成される酵素又は微生物固定化用担体は槽内での流動性に優れる反面、強度が低い。一方、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は該中空粒子を含有する場合においても高い強度を有する。このため、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は、該担体が中空粒子を含有する場合に特に有用である。
【0077】
以上に述べた(a)〜(e)の各成分及び必要に応じて添加される比重調整材を水性媒体中に溶解ないし分散させることにより、水性液状組成物(i)が調製される。この水性液状組成物(i)の固形分濃度は一般に5〜30重量%の範囲内が適当である。
【0078】
なお、重合開始剤としてレドックス系熱重合開始剤を使用する場合は重合開始剤(b)として酸化剤及び還元剤を同時に上記水性液状組成物(i)中に含有させてもよいが、水性液状組成物(i)中に含有させるものを酸化剤又は還元剤のいずれか一方とし、もう一方を金属イオンを含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0079】
酵素又は微生物固定化用担体の製造方法
上記のようにして調製される水性液状組成物(i)は、次いで、前述した如き種類の金属イオンを含有する水性媒体中に滴下するか、又は平均粒子径が5mm以上の粒状物を得る場合には、該水性媒体表面上に所定の時間連続的に注加して液滴を所望の粒径になるまで生長させた後、その液滴を該水性媒体中に沈降させることにより、該液状組成物が粒状でゲル化せしめられる。
【0080】
金属イオンを含有する水性媒体中への水性液状組成物の滴下は、例えば、注射器の先端から該液状組成物を滴下する方法、遠心力を利用して該液状組成物を粒状に飛散させる方法、スプレーノズルの先端から該液状組成物を霧化して粒状とし滴下する方法などの方法により行うことができる。また、水性液状組成物の水性媒体表面への注加は、所望の孔径のノズル口から細い液流として連続的に供給することによって行うことができる。液滴の大きさは、最終の粒状固定化物に望まれる粒径に応じて自由に変えることができるが、通常、滴下法では、直径が約0.1〜約5mm、好ましくは約0.5〜約4mmの範囲内の液滴として滴下させるのが、また注加法では、約0.5〜3cmの範囲内の液滴とするのが好都合である。
【0081】
上記の如くして生成せしめた粒状ゲルは、そのまま水性媒体中に分散させた状態で、或いは水性媒体から分離した後、光重合又は熱重合させることにより、該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂(a)を硬化せしめる。これにより粒状ゲルは水に実質的に不溶性で機械的強度の大きい酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物となる。
【0082】
上記の硬化を光重合によって行う場合、使用しうる活性光線の波長は、該粒状ゲル中に含まれる重合性不飽和基含有樹脂(a)の種類等に応じて異なるが、一般には、約250〜約600nmの範囲内の波長の光を発する光源を照射に使用するのが有利である。そのような光源の例としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、太陽光等が挙げられる。照射時間は光源の光の強さ、光源からの距離等に応じて変える必要があるが、一般には約30秒〜約10分間の範囲内とすることができる。
【0083】
また、重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化を熱重合によって行う場合、粒状ゲルはレドックス系熱重合開始剤を含有していれば、室温で放置しておくだけでも熱重合が進行して必要な機械的強度が得られるまでに硬化されるが、必要に応じ、加熱硬化させてもよい。硬化温度は一般に0℃〜50℃、特に20℃〜40℃の範囲内が好適である。また、必要な機械的強度を得るためには、少なくとも熱硬化に10分〜30分の時間をかけることが望ましい。
【0084】
このように光重合及び/又は熱重合による硬化処理が終った粒状ゲルは水又は緩衝水溶液で洗浄し、そのままあるいは凍結乾燥して保存することができる。
【0085】
本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、表面の構造が特に微生物の付着に適しており、微生物を大量に付着させることができる。該担体に付着させうる微生物は、嫌気性微生物、好気性微生物のどちらでも用いることができ、微生物の種類としては、例えば、アスパルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属などのカビ類、サッカロミセス属、ファフィア属、カンジダ属などの酵母類;ザイモモナス属、シュードモナス属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属、パラコッカス属、ビブリオ属、メタノサルシナ属、バチルス属などの細菌類等を挙げることができる。
【0086】
なお、上記した微生物は、重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化温度が常温のような低温度であれば、予め(a)〜(e)の各成分からなる水性液状物に混合しておいて包括固定化してもよい。
【0087】
かくして得られる本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、粒状固定化物の強度が高く、微生物菌体の付着性に優れたものを得ることができ、バイオリアクター、発酵槽等の用途に適用することも可能である。
【0088】
方法(II)
また、本発明の酵素又は微生物固定化用担体は、上記方法(I)に代えて、前記(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、及び(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類と、以下に説明する(f)粘土鉱物(d)に有機オニウムイオン(e)がイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物とを含んでなる水性液状組成物(ii)を、前記アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることによっても製造することができる。
【0089】
すなわち、上記方法(II)は前記方法(I)における粘土鉱物(d)及び有機オニウムイオン(e)に代えて、粘土鉱物(d)に有機オニウムイオン(e)がイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物(f)を用いて酵素又は微生物固定化用担体を製造する方法である。
【0090】
粘土鉱物(d)に有機オニウムイオン(e)がイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物(f)
上記有機化粘土鉱物(f)は、例えば、前記粘土鉱物(d)及び前記有機オニウムイオン(e)を含水溶媒中で混合することによって得ることができる。混合方法としては、攪拌羽根を備えた攪拌槽(配合槽)に、上記粘土鉱物(d)及び上記有機オニウムイオン(e)を添加し高速攪拌することが挙げられる。上記有機化粘土鉱物(f)を調整する装置としては、剪断力と溶液を全体混合できる複数の攪拌羽根、例えば、プロペラ、タービン、ディスパー、ホモジナイザーなどを備えた攪拌装置が望ましく、特に好ましくはディスパー、ホモジナイザー等が挙げられる。攪拌速度としては、攪拌羽根の周速が50〜10000m/min、好ましくは100〜8000m/minである。
【0091】
また有機オニウムイオン(e)が粘土鉱物(d)100質量部を基準として5〜200質量部、好ましくは、10〜150質量部、さらに好ましくは20〜90質量部の範囲内であることが好適である。
【0092】
水性液状組成物(ii)
本発明において前記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)及び有機化粘土鉱物(f)の各成分の配合割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、一般には、重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)及び有機化粘土鉱物(f)の各成分は固形分でそれぞれ下記の範囲内であることが好適である。
【0093】
(b)重合開始剤:0.1〜10質量部、好ましくは、0.3〜5質量部、
(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類:0.5〜15質量部、好ましくは、1〜8質量部、
(f)有機化粘土鉱物:0.5〜30質量部、好ましくは、1〜25質量部、
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、重合開始剤(b)が、0.1質量部未満である場合は、重合成不飽和基含有樹脂が十分に架橋せず実使用時に流出してしまう可能性があるの点で好ましくなく、10質量部を超えると得られた担体の強度が低下してしまう点で好ましくない。
【0094】
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)が、0.5質量部未満である場合は、担体粒子の安定性が得られないの点で好ましくなく、15質量部を超えると担体の強度低下の点で好ましくない。
【0095】
重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として、有機化粘土鉱物(f)が、0.5質量部未満である場合は、強度向上効果が得られない点で好ましくなく、30質量部を超えると強度低下の点で好ましくない。
【0096】
本発明において重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)及び有機化粘土鉱物(f)を含んでなる水性液状組成物(ii)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体が、高い強度を有する理由としては、有機オニウムイオン(e)が粘土鉱物(d)の層間にインターカレートすることによって粘土鉱物(d)の層間が剥離され、かかる層間は重合性不飽和基含有樹脂(a)の重合反応場となるために、重合性不飽和基含有樹脂(a)を連続相とし、該連続相中に有機化粘土鉱物(f)がフィラーとして点在する構造を有する担体が作成される、すなわちナノコンポジットとしての様相を呈するためであると推察される。
【0097】
なかでも特に、(e)として不飽和基含有機オニウムイオンを用いた場合は、(e)の持つ不飽和基が重合性不飽和基含有樹脂(a)に取り込まれることによって、連続相とフィラーの親和性が増大し、あるいは粘土鉱物を完全層剥離に近づけることができるため、より高い強度を有する担体が得られるものと推察される。
【0098】
本発明において上記重合性不飽和基含有樹脂(a)、重合開始剤(b)、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類(c)及び有機化粘土鉱物(f)を含んでなる水性液状組成物(ii)のみから製造された粒状成形物は、一般に水とほぼ同じ1.01〜1.03の範囲内の比重を有するが、顔料、中空粒子等の比重調整材を添加することで所望の比重に調整することができる。
【0099】
例えば、比重を高くしたい場合には、前記の比重が1以上の比重調整材を前記重合性不飽和基含有樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜50質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が1.03〜1.25の範囲になるように調整することができる。一方、比重を低くしたい場合には、前記の比重が1以下の中空粒子を比重調整材として不飽和基及びウレタン結合を有する樹脂(a)の固形分100質量部を基準として0.1〜30質量部の割合で添加することによって粒状成形物の比重が0.90〜1.01の範囲になるように調整することができる。
【0100】
一般に酵素又は微生物固定化用担体に上記中空粒子を含有せしめた場合、形成される酵素又は微生物固定化用担体は槽内での流動性に優れる反面、強度が低い。一方、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は該中空粒子を含有する場合においても高い強度を有する。このため、本発明に係る酵素又は微生物固定化用担体は、該担体が中空粒子を含有する場合に特に有用である。
【0101】
以上に述べた(a)、(b)、(c)及び(f)の各成分ならびに必要に応じて添加される比重調整材を水性媒体中に溶解ないし分散させることにより、水性液状組成物(ii)が調製される。この水性液状組成物(ii)の固形分濃度は一般に5〜30重量%の範囲内が適当である。
【0102】
なお、重合開始剤としてレドックス系熱重合開始剤を使用する場合は重合開始剤(b)として酸化剤及び還元剤を同時に上記水性液状組成物(ii)中に含有させてもよいが、水性液状組成物(ii)中に含有させるものを酸化剤又は還元剤のいずれか一方とし、もう一方を金属イオンを含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0103】
酵素又は微生物固定化用担体の製造方法
上記のようにして調製される水性液状組成物(ii)は、前記方法(I)の酵素又は微生物固定化用担体の製造方法の欄において記載した方法と同様にしてゲル化せしめられ、粒状ゲルは水に実質的に不溶性で機械的強度の大きい酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物となる。
【0104】
上記粒状ゲルは水又は緩衝水溶液で洗浄し、そのままあるいは凍結乾燥して保存することができる。
【0105】
本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、表面の構造が特に微生物の付着に適しており、微生物を大量に付着させることができる。該担体に付着させうる微生物としては、前記方法(I)の説明において記載したものを使用することができる。
【0106】
なお、微生物は、重合性不飽和基含有樹脂(a)の硬化温度が常温のような低温度であれば、予め(a)、(b)、(c)及び(f)の各成分からなる水性液状物に混合しておいて包括固定化してもよい。
【0107】
かくして得られる本発明の酵素又は微生物菌体固定化用担体は、粒状固定化物の強度が高く、微生物菌体の付着性に優れたものを得ることができ、バイオリアクター、発酵槽等の用途に適用することも可能である。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。尚、以下各例において「部」及び「%」は特記しない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0109】
製造例1
有機化粘土鉱物(f−1)の合成
溶液A:粘土鉱物(d)として「クニピアF」(商品名、クニミネ工業社製、モンモリロナイト)を用いた。「クニピアF」80部を脱イオン水5000部に分散させた。
溶液B:有機オニウムイオン(e)として「コータミン24P」(商品名、花王社製、トリメチルラウリルアンモニウムクロライド、有効成分27%)を用いた。
【0110】
溶液A(100部)を直径3cmの攪拌翼をセットしたディスパーを用い、回転数1000rpmで攪拌した中に、溶液B(2.22部)を添加することで2.1%有機化粘土鉱物溶液(f−1)を得た。
【0111】
製造例2
有機化粘土鉱物(f−2)の合成
溶液A:粘土鉱物(d)として「クニピアF」を用いた。「クニピアF」32部を脱イオン水1500部に分散させた。
溶液B:有機オニウムイオン(e)として「DMAPAA−Q」(商品名、興人社製、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル四級塩)を用いた。「DMAPAA−Q」9.4部を脱イオン水183部に溶解させた。
溶液A100部に対して、溶液B12.6部を製造例1と同様の条件下で添加することで、2.4%有機化粘土鉱物溶液(f−2)を得た。
【0112】
製造例3
有機化粘土鉱物(f−3)の合成
溶液Bの成分として「DMAPAA−Q」の代わりに「DMAEMA−Q」(商品名、興人社製、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩)を用いる以外は製造例2と同様にし、2.4%有機化粘土鉱物溶液(f−3)を得た。
【0113】
実施例1
親水性光硬化性樹脂「ENTG−3800」(商品名、関西ペイント社製、固形分40%)50部、「クニピアF」(商品名、クニミネ工業社製、モンモリロナイト(ベントナイトを精製したもの))0.463部を加え、直径3cmの攪拌翼をセットしたディスパーを用い、回転数1000rpmで攪拌した中に、「コータミン24P」(商品名、花王社製、トリメチルラウリルアンモニウムクロライド、有効成分27%)0.652部、2%アルギン酸ナトリウム水溶液30部、光重合開始剤「ダロキュア1173」(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.2部を加えて十分に撹拌して、水性液状組成物を得た。得られた水性液状組成物を、1%の塩化カルシウム水溶液中に、注射針の先端から液面高さ約10cmより滴下して粒状化した後、高圧水銀灯を用いて紫外線を1分間照射することで固定化用担体を得た。
【0114】
実施例2〜18、比較例1、2
実施例1において配合組成を下記の表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして各実施例及び比較例の担体を得た。表1の数値は固形分で表記した。
【0115】
尚、表1において(*1)〜(*2)は下記の通りである。
(*1)「ラポナイトRD」:(商品名、ロックウッド社製、層状シリケート)
(*2)「ソマシフME−100」:(商品名、コープケミカル社製、膨潤性雲母)
担体性能評価試験
上記実施例1〜18及び比較例1、2で得た担体のそれぞれについて、以下に示した試験方法で圧縮破壊強度と硝化速度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0116】
(試験方法)
(1)圧縮破壊強度試験
各担体試料について50回ずつ、「Ez−Test」(商品名、島津製作所社製、小型卓上試験機)を用いて測定した。圧縮速度10mm/minで測定したときの破断応力値を圧縮破壊強度とした。目視で破断の開始した時点を観察してそのときの圧縮荷重値(kgf)を読み取り、担体の平均粒子径より計算した断面積でその荷重値を除して破断応力(kgf/cm)を算出した。
【0117】
(2)硝化速度測定試験
各担体試料を、大過剰の脱イオン水中に室温で24時間浸漬し、十分に洗浄したものを硝化活性試験の試料として用いた。
【0118】
容積各1Lの反応槽に160mg/Lのアンモニア性窒素を含む無機塩培地及び硝化菌含有活性汚泥を満たし、各担体試料250mL(見かけ体積)をそれぞれ投入した後、アンモニア性窒素負荷が0.1kg/m/日、0.3kg/m/日、0.5kg/m/日、となるように順次培地の流入速度を変化させて連続処理試験を行った。各負荷での処理時間はそれぞれ15日間とした。試験期間を通じて培地のpHは7.5〜8.5の範囲、液温は18〜25℃の範囲に調節した。更に曝気を行うことにより培地の溶存酸素濃度を常に5mg/L以上になるようにした。0.5kg/m/日の負荷で7日間連続処理を行った時点で担体をサンプリングした。これを50mLの無機塩培地(連続処理に用いたのと同じもの)中に10gの担体を投入し、三角フラスコ中で120rpm、8時間往復振盪した後の、培地中のアンモニア性窒素の減少量から1gの担体当たりの硝化速度を計算して硝化活性(mg−N/L−担体/h)を評価した。培地のアンモニア性窒素濃度の定量はインドフェノール法(比色法)を用いて行った。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、(d)粘土鉱物、及び(e)有機オニウムイオン
を含んでなる水性液状組成物(i)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項2】
(a)重合性不飽和基含有樹脂、(b)重合開始剤、(c)アルカリ金属イオン又は多価金属イオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類、及び(f)粘土鉱物(d)に有機オニウムイオン(e)がイオン結合することにより有機化された有機化粘土鉱物
を含んでなる水性液状組成物(ii)を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルを光重合及び/又は熱重合して該粒状ゲル中の重合性不飽和基含有樹脂を硬化させることにより製造されることを特徴とする酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項3】
重合開始剤(b)が光重合開始剤及び/又はレドックス系熱重合開始剤である請求項1又は2記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項4】
粘土鉱物(d)が2:1型層状粘土鉱物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。
【請求項5】
有機オニウムイオン(e)が、1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有する有機オニウムイオンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の酵素又は微生物固定化用担体。

【公開番号】特開2012−55206(P2012−55206A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200031(P2010−200031)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】