説明

酵素水生成システム

【課題】生成タンクを清浄な状態に保ち、設定した酵素混合率の酵素水を正確かつ安定的に供給できる酵素水生成システムを提供する。
【解決手段】生成タンクに水を供給し、この水に酵素製剤を加えて温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された酵素水が送出されるストックタンクとを備えている酵素水生成システムにおいて、設定された総量と酵素混合率の酵素水をストックタンクに貯留させるため、生成タンクに所要量の水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成し、このように生成した酵素水をストックタンクに送出する生成プロセスを実行するとともに、生成プロセス終了時に、生成タンクに所定量の水を供給して洗浄を行う洗浄プロセスを実行する制御ユニットを酵素水生成装置に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成タンクに水を供給し、この水に酵素製剤を加えて温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された前記酵素水が送出されるストックタンクとを備えている酵素水生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された酵素水生成システムに関連する装置として、特許文献1及び特許文献2に記載されるものが存在する。
【0003】
特許文献1の装置では、水道管などから増殖タンク(生成タンク)に水を規定量に達するまで注入し、タンク内部に備えられたヒータで規定温度、具体的には酵素を発生する微生物の最適培養温度まで加温する。そして増殖タンク内に液体微生物製剤(酵素製剤)を適量注入し、所定時間培養することで微生物から酵素が発生し、酵素水が生成される。培養時間経過後、増殖タンクの底の栓が開き、生成された酵素水は装置下部に設置したタンクに送出される。
【0004】
また、特許文献2の装置では、活性化タンク(生成タンク)に所定量の水を貯留し、この活性化タンクに微生物酵素(酵素製剤)を供給した後に、ヒータを駆動して活性化タンク内の液体(水と酵素製剤の混合液)を加熱して、この液体の温度を微生物酵素を活性させるのに適した温度に維持し、次に、ポンプを駆動して外部タンク(ストックタンク)に生成タンクの液体を排出する処理を行う。この処理を、外部タンクに設定量が貯留されるまで繰り返すように制御形態が設定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−325938号公報(段落番号〔0008〕〜〔0009〕及び図1、図2)
【特許文献2】特開2004−242673号公報(段落番号〔0034〕及び図9)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献のような装置では、生成タンクにおいて水と酵素製剤の混合液を加温して酵素水を生成するため、生成タンクから酵素水を排出後、特に生成タンクが空の状態が長くなると、生成タンクの底部や排出口などに酵素水の澱などが付着するという問題があった。
【0007】
このような澱などの発生は生成タンクの汚れに繋がるだけでなく、酵素水の生成においては一般に加えられる酵素製剤の量が微量であるため、その後に生成される酵素水の酵素混合率に影響を及ぼす虞もある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、生成タンクを清浄な状態に保ち、設定した酵素混合率の酵素水を正確かつ安定的に供給できる酵素水生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る酵素水生成システムの第一特徴構成は、生成タンクに水と酵素製剤とを供給し、温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された酵素水が送出されるストックタンクとを備えている酵素水生成システムであって、設定された総量と酵素混合率の酵素水を前記ストックタンクに貯留させるため、前記酵素水生成装置は、前記生成タンクに所要量の水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成し、このように生成した酵素水を前記ストックタンクに送出する生成プロセスを実行する制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記生成プロセス終了時に、前記生成タンクに所定量の水を供給して洗浄を行う洗浄プロセスを実行する点にある。
【0010】
本構成においては、生成タンクにおける酵素水の生成プロセス終了時に、生成タンクに所定量の水を供給して洗浄を行う。生成タンクには酵素水を生成するための水が供給されるように構成されているので、この水を洗浄に利用することにより、従来の装置に新たに洗浄手段を設けることなく生成タンクの洗浄を行うことができる。これにより、生成タンクにおける澱などの発生を抑制して生成タンクを清浄な状態に保つことができ、設定した酵素混合率の酵素水を正確かつ安定的に供給することができる。
【0011】
本発明に係る酵素水生成システムの第二特徴構成は、前記洗浄プロセスはさらに洗浄に用いた水を前記ストックタンクに送出するプロセスを含み、前記制御ユニットは、この洗浄プロセスを実行する洗浄管理部と、前記送出された酵素水と前記洗浄に用いた水とが混合した前記ストックタンク内の酵素水の総量と酵素混合率とが前記設定された総量と酵素混合率に略同一となるように、前記生成プロセス時に供給する水と酵素製剤の所要量を調整する供給量調整部とを有する点にある。
【0012】
本構成では、洗浄プロセスにおいて洗浄に用いた水が酵素水生成装置で生成された酵素水と同様にストックタンクに送出されるので、洗浄に際して手間がかからない。さらに、酵素水生成装置から送出された酵素水と洗浄に用いた水とが混合したストックタンク内の酵素水の総量と酵素混合率が、設定された総量と酵素混合率に略同一となるように、生成プロセス時に供給する水と酵素製剤の所要量を調整するので、ストックタンクにおいて最終的に得られる酵素水を所望の総量と酵素混合率の酵素水とすることができる。このように、水を用いて生成タンクを洗浄し澱などの発生を抑制するとともに、ストックタンクに送出されるこの水の量も考慮して生成プロセス時に供給する水と酵素製剤の所要量を調整することにより、生成タンクを清浄な状態に保ち、設定した酵素混合率の酵素水を正確かつ安定的に供給することができる。
【0013】
本発明に係る酵素水生成システムの第三特徴構成は、前記温度管理が前記生成タンク内に備えられたヒータを用いて行われ、前記洗浄に用いられる水の前記所定量は、前記ヒータが浸漬する量である点にある。
【0014】
酵素水を生成する際の温度管理が生成タンク内に備えられたヒータで行われる場合、このヒータの周囲にも澱などが付着し易くなる。この場合、生成タンクの洗浄の際にヒータが浸漬されるまで水を貯留することで、ヒータ周囲の澱などの発生を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る酵素水生成システムの第四特徴構成は、生成プロセスが複数回行われる場合、最終回の生成プロセス以外の生成プロセス終了時においては前記洗浄プロセスが省略される点にある。
【0016】
生成タンクの容量を超える量の酵素水を生成する場合には、前記生成プロセスを繰返し行い、生成された酵素水をストックタンクに貯留することで所望の量の酵素水を得ることができる。上述したように、生成タンクが空の状態が長くなると澱などが発生し易くなるので、このように生成プロセスを複数回行うときには、最終回以外の生成プロセス終了時における洗浄プロセスを省略し、最終回の生成プロセス終了時に生成タンクの洗浄を行うだけで、澱などの発生を十分抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔システム構成〕
図1〜図3に示すように、水道水に酵素製剤Xを加えて温度管理を行うことによって酵素水Wxを生成する酵素水生成装置Aと、この酵素水生成装置Aから排出された酵素水Wxを貯留するストックタンクBとを備えて酵素水生成システムが構成されている。ストックタンクBは、上方に開放する単純な容器構造を有した樹脂成形物である。
【0018】
この酵素水生成システムは、ファーストフード店やレストランの厨房のように、床面Fが油脂によって汚れやすい飲食店等に設置されるものであり、この飲食店等の営業が終了した時間帯にストックタンクBに貯留した酵素水Wxを人為的に床面Fに散布することにより、酵素水Wxに含まれる酵素の作用によって床面Fの油脂成分を分解して洗い流す形態で使用される。このように洗浄を行うことにより床面Fのヌメリが除去され、清浄な表面となる。
【0019】
図1に示すように、厨房の床面Fには排水溝1からの水が導かれる位置にグリストラップ2が形成される。このような厨房では調理や食器の洗浄に使用された排水が排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、この排水に含まれる油脂成分はグリストラップ2に蓄えられる。また、床面Fに散布した酵素水Wxは、排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、このグリストラップ2に滞留することにより、油脂成分を分解し、このグリストラップ2の内部を洗浄するように作用する。
【0020】
酵素水生成装置Aは、厨房内のテーブル3に設置され、壁面4には水道水の水量を制御するようにハンドル5Aで開閉可能なバルブ5を備え、このバルブ5と酵素水生成装置Aとの間には、バルブ5からの水道水を酵素水生成装置Aに送る水道配管6が形成されている。また、この酵素水生成装置Aで生成された酵素水Wxはゴム等のフレキシブルな排出ホース7を介してストックタンクBに送り出される。
【0021】
〔酵素水生成装置〕
酵素水生成装置Aは、金属製のケース10の内部に生成タンクTを備えると共に、この生成タンクTに水道水を給水する給水機構Jと、半透明の樹脂で成るボトル8内の液状の酵素製剤Xを生成タンクTに加える(滴下する形態での供給になる)酵素製剤供給機構Kと、この生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出する排出機構Lとを備えている。生成タンクTの内部には液面のレベルを検知するフロート式の液面センサ15と、生成タンクT内の溶液(酵素製剤Xが加えられた水)を加熱するヒータ16と、この溶液の温度を計測する温度センサ17とを備えている。更に、ケース10の側部位置には酵素水Wxを生成する制御を行う制御ユニット18を備えている。
【0022】
ちなみに、酵素製剤Xは、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含むと共に、これらの酵素を生成する微生物を含むものであり、この微生物は、低温状態では休眠状態にあり、40℃程度に維持されることにより活性化して酵素を生成する性質を有する。なお、酵素製剤は微生物だけを含むものや酵素だけを含むものでも良い。
【0023】
ケース10はステンレス等の耐腐食性が高い金属板を接合して箱状に形成され、このケースはケース本体10Aと、ケース10の前面側に配置される扉10Bとを備えている。ケース本体10Aの前面のうち制御ユニット18が配置された側で、扉10Bと並列する位置の前壁10Cには操作パネル11を備えている。扉10Bは、操作パネル11と反対側の端部に形成された縦向き軸芯Y周りで揺動開閉自在にケース本体10Aに支持されている。
【0024】
この酵素水生成装置Aでは、扉10Bを開放することによりボトル8の交換を容易に行え、ボトル8に貯留された酵素製剤Xの残量を視覚によって確認できるように扉10Bには窓部10Wを形成している。
【0025】
〔酵素水生成装置の内部構成〕
生成タンクTは、透明な樹脂で成ると共に、正面視で図2に示す如く逆L字状の形状に形成され、この生成タンクTの上部には上部開口を覆う上部プレート20を備え、この生成タンクTの下側の側部にはボトル8を収容する空間を形成している。
【0026】
給水機構Jは、水道配管6から生成タンクTに給水する給水管21と、この給水管21の中間位置に配置した給水用電磁バルブ22とを備えている。
【0027】
酵素製剤供給機構Kは、半透明の樹脂製のボトル8に貯留された液状の酵素製剤Xを吸い上げる吸引チューブ25と、この吸引チューブ25からの酵素製剤Xが導かれる定容量ポンプKPと、この定容量ポンプKPから酵素製剤Xが送られる供給チューブ26と、この供給チューブ26の先端に接続したノズル27とを備えている。また、このような生成タンクTに貯留した水の量に対するノズル27から加えられる酵素製剤Xの量の割合のように、水の量に対する加えられた酵素製剤Xの量の割合が後述する酵素混合率となる。
【0028】
吸引チューブ25は、透明で柔軟な樹脂で成り、この吸引チューブ25の吸引側の端部は、ボトル8の上部開口にネジ式に固定される蓋8Aに形成された貫通孔を介してボトル内部に差し込まれている。供給チューブ26は、透明で柔軟な樹脂で成り、この供給チューブ26の吐出側をノズル27の上端部に接続している。このノズル27は下端側が小径となる円錐形であり、上端部が上部プレート20に支持され、下端には小さい開口を形成している。
【0029】
定容量ポンプKPは、縦向き姿勢のシリンダ30の内部にピストン31を上下移動自在に内嵌し、シリンダ30と連通する吸引側のチェック弁32に吸引チューブ25の排出側の端部を接続している。このシリンダ30と連通する吐出側のチェック弁33に供給チューブ26の一端を接続している。電動モータ34の出力軸34Aにおいて偏芯する位置に連結軸35を形成し、この連結軸35とピストン31の下端のプレート36とを連結体35Aで連結することにより、電動モータ34の回転力を往復作動力に変換してピストン31に伝えるクランク機構を備えている。また、クランク機構の作動位置からピストン31が上端まで移動したタイミング信号を出力する作動センサ37を備えている。
【0030】
この定容量ポンプKPは、電動モータ34の出力軸34Aが1回転する毎に、ピストン31を1往復作動させ、この1往復作動毎に設定された量の酵素製剤Xを送り出す性能を有し、電動モータ34の作動時には作動センサ37によってピストン31の作動回数を計数して制御ユニット18にフィードバックすることにより、酵素製剤Xの供給量を把握できるようにしている。
【0031】
排出機構Lは、生成タンクTの底部の酵素水Wxを排出ホース7に導く排出管38と、この排出管38の中間に配置した排出用電磁バルブ39とを備えている。
【0032】
液面センサ15は、上部プレート20から下方に突設したロッド15Aに対して上下移動自在に外嵌したリング状のフロート15Bと、このフロート15Bに備えたマグネット(図示せず)の磁気が作用することによりON又はOFFするリードスイッチ(図示せず)とを備えている。
【0033】
ヒータ16は、通電により発熱する発熱体を金属チューブの内部に収容した構造を有し、上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。温度センサ17は、サーミスタ等を収容したロッド状の構造を有し、上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。
【0034】
〔酵素水生成装置の制御構成〕
操作パネル11は図2に示すように、スタートボタン51と、ストップボタン52と、電源ランプ53と、複数のモニタランプ54と、警報ランプ55と、液晶ディスプレイ56と、複数の設定ボタン57とを備えている。
【0035】
この酵素水生成装置Aにおいて酵素水の生成を行う場合には、電源が投入されていることを電源ランプ53の点灯で確認し、操作パネル11の複数の設定ボタン57を操作して行うことができる。なお、生成タンクTの洗浄プロセス実行の設定もこの設定ボタン57を通して行うことができる。また、この酵素水生成装置Aでは酵素水の生成スケジュールを設定して、この設定されたスケジュールに従って、設定された日時に設定された酵素混合率の酵素水を設定された量だけ生成することができる。これらの設定の際には設定内容を液晶ディスプレイ56を介して設定内容を確認できるものとなり、スタートボタン51を操作することで制御が開始され、ストップボタン52を操作することで制御が停止する。なお、エラーが発生した場合には警報ランプ55が点灯して制御が停止する。
【0036】
図4に示すように、制御ユニット18は、マイクロプロセッサCPUに信号のアクセスを行う入出力インタフェース41を備えており、この入出力インタフェース41に対してヒータ16と、給水用電磁バルブ22と、電動モータ34と、排出用電磁バルブ39とを駆動する信号系が形成され、液面センサ15と、温度センサ17と、作動センサ37とからの検出信号が入力する信号系が形成され、更に、操作パネル11との間で情報がアクセスする信号系が形成されている。
【0037】
マイクロプロセッサCPUのデータバスにスケジュールテーブル42、スケジュール管理部43、生成管理部44、洗浄管理部45夫々が接続している。ちなみに、この制御ユニット18において制御を実現するためにはデータバスの他にコントロールバスやアドレスバス等を必要とするものであるが、複雑化を避けるために図面にはコントロールバスやアドレスバス、あるいは、インタフェース類を示していない。
【0038】
スケジュールテーブル42は、操作パネル11によって設定される生成スケジュールのデータを保存する手段であり、このスケジュールテーブル42には酵素水Wxを生成する日時(生成完了日時)、必要とする酵素水Wxの総量、酵素混合率(酵素製剤Xの量でも良い)、生成プロセス終了時における洗浄プロセスの有無等が保存される。スケジュール管理部43はスケジュールテーブル42に保存されたデータを参照し、生成プロセスの回数などを算出し、生成管理部44を制御することにより酵素水Wxを生成する処理を実行する。なお、スケジュール管理部43は後述する供給量調整部43Aを有している。
【0039】
生成管理部44は、給水制御部44A、混合制御部44B、加温制御部44C、排出制御部44Dを有している。給水制御部44Aは、給水用電磁バルブ22を開放操作して生成タンクTに給水し、液面センサ15での検出信号に基づいて給水用電磁バルブ22を閉じ操作して生成タンクTに対して設定量の水を貯留する制御を実現する。混合制御部44Bは、作動センサ37によって計数信号をフィードバックする形態で電動モータ34を駆動することにより、生成タンクTに貯留された水に対して設定量の酵素製剤Xを供給することによって、設定された酵素混合率の溶液を生成する。加温制御部44Cは、生成タンクTに貯留された水と酵素製剤Xとが混合した溶液を40℃程度まで昇温し、この目標温度(40℃程度)に維持することにより、酵素水Wxを生成する。排出制御部44Dは、加温制御部44Cでの制御によって生成タンクTに酵素水Wxが生成された後に、排出用電磁バルブ39を設定時間だけ開放状態に維持することにより、生成タンクTの酵素水Wxを排出管38から排出する。
【0040】
供給量調整部43Aは、スケジュールテーブル42に保存されている操作パネル11によって設定された総量と酵素混合率の酵素水WxをストックタンクBに貯留させるため、生成タンクTにおける酵素水Wxの生成プロセス時に供給する水とこの水に注入する酵素製剤Xの量を調整する。
【0041】
洗浄管理部45は、酵素水Wxの生成プロセス終了時に、生成タンクTに所定量の水を供給して洗浄を行うとともに、この水をストックタンクBに送出する洗浄プロセスを実行する。生成タンクTの洗浄は、給水用電磁バルブ22と排出用電磁バルブ39をともに開放状態にして所定量の水を供給しつつ排出を続けたり、生成タンクTに供給された水を一定時間貯留した後排出したり、貯留した水をヒータ16で昇温して温水にしたりすることなどにより行われる。この洗浄形態については、操作パネル11の設定ボタン57で選択可能である。本実施形態では生成タンクTの洗浄を供給された水を一定時間貯留した後排出することにより行い、この洗浄に用いられる水の所定量として、ヒータ16が浸漬する量である生成タンクTが満水となる量(1回の生成プロセスで酵素水Wxを生成するときの標準水量)の水を供給するように設定されている。したがって、酵素水生成装置Aの洗浄プロセスにおいては、排出用電磁バルブ39を閉じ状態にし、給水用電磁バルブ22を開放状態にして上記所定量の水を供給し、その後一定時間(数分程度)経過後、排出用電磁バルブ39を開放状態にして洗浄に用いた水を生成タンクTから排出してストックタンクBに送出する。
【0042】
〔生成酵素水の調整〕
この酵素水生成システムでは、生成プロセス終了時に生成タンクTに水を供給して洗浄を行い、洗浄に用いた水をストックタンクBに送出する場合、送出された酵素水Wxとこの洗浄に用いた水とが混合したストックタンクB内の酵素水Wxの総量と酵素混合率とが、スケジュールテーブル42に保存された(操作パネルで設定された)酵素水Wxの総量と酵素混合率と略同一となるように、生成プロセスにおいて供給される水と酵素製剤Xの所要量が調整される。なお、以下では説明をわかり易くするため、必要な場合、生成タンクTで生成された酵素水を一次酵素水、生成プロセス及び洗浄プロセスが全て終了した時にストックタンクBに貯留される酵素水を二次酵素水と称する。
【0043】
上述した生成プロセスにおける水や酵素製剤Xの供給量の調整のためには、まず、ストックタンクBに貯留される酵素水Wx(二次酵素水)の総量から洗浄に用いる水の量を減算することにより、生成プロセスで生成すべき酵素水Wx(一次酵素水)の総量を算出する。また、設定したストックタンクBに貯留する酵素水(二次酵素水)の総量と酵素混合率とから、生成プロセスで必要な酵素製剤Xの総量を算出する。これにより、生成プロセスで供給すべき水の総量と酵素製剤Xの総量が算出され、これらの値に基づいて必要な生成プロセス回数、1生成プロセス当たりに必要な供給水量とこの水に注入する酵素製剤Xの量を求めることができる。そして、これらの値に基づいて、各生成プロセスにおいて対応する酵素水Wx(一次酵素水)の生成が行われる。
【0044】
生成タンクTに一定量Lの水が供給され、酵素製剤Xを注入するポンプの1往復作動当たりの供給量dが一定である酵素水生成装置の場合は、上述した調整は次のようにして行われる。1回の生成プロセスで生成タンクTに一定量Lの水が供給され、これにmd(mは自然数)の酵素製剤Xを注入して、酵素混合率md/Lの酵素水を生成し、ストックタンクBに排出する処理をN回繰り返して、ストックタンクBに酵素水Wxを貯留する場合を例とする。この例において最後の生成プロセス終了時に生成タンクTの洗浄を行った場合でも、上記の場合と略同一の総量と酵素混合率の酵素水をストックタンクBに貯留させるためには、洗浄の際に供給される水量がLなので、生成プロセスにおいては総量(N−1)Lの水と、Nmdの酵素製剤Xを用いればよい。したがって、生成プロセスはN−1回繰り返されるので、各生成プロセスにおいて注入される酵素製剤Xの量は、NmdをN−1回に分配することにより算出される。各生成プロセスにおける酵素混合率はなるべく均等になることが好ましく、この酵素製剤Xをなるべく均等に分配する方法は、Nm/N−1を次のように表すことにより求めることができる。すなわち、
[数1]
Nm/N−1 = m + m/N−1 = m + n + p/N−1 (1)
(ただし、n,pはn≧0、N−1>p≧0の整数)
と表された場合、N−1回の生成プロセスのうち、p回は(m+n+1)dの酵素製剤Xを、残りのN−p−1回は(m+n)dの酵素製剤Xを注入するように、各生成プロセスにおける酵素製剤Xの量を調整すればよい。
【0045】
より具体的な例でこれを説明すると、生成タンクTに供給する水の一定量Lを4リットル、酵素製剤Xを注入するポンプの1動作当たりの吐出量dを0.2cc、1回の生成プロセスで4リットルの水に注入する酵素製剤Xの量を0.8cc(すなわちm=4)、この生成プロセスを4回(すなわちN=4)繰り返して酵素水Wxを生成し、ストックタンクBに貯留させていたとする。この例において、最後の生成プロセス終了時に4リットルの水を供給する洗浄プロセスを行ってもストックタンクBにこれと同様の酵素水が貯留されるためには、式(1)がNm/N−1=4×4/3=4+1+1/3となることからn=1,p=1が得られ、酵素製剤Xを1.2cc注入する生成プロセスを1回、1.0cc注入する生成プロセスを2回行うように調整される。
【0046】
〔制御形態〕
スケジュール設定をして酵素水Wxの生成を行う場合の制御ユニット18による制御形態を図5のフローチャートのように示すことが可能である。なお、これは1回の生成プロセスで供給される水量と洗浄プロセスで供給される水量が同一水量(標準水量)で、酵素製剤Xを供給するポンプの1往復作動毎の供給量が一定量である場合の例である。まず、初期設定処理(#01ステップ)では、操作パネル11の操作に基づいてスケジュールテーブル42を作成する。このように作成されたスケジュールテーブル42には、上述したように、酵素水Wxを生成する日時(生成完了日時)、総量、酵素混合率、洗浄プロセスの有無等が保存される。スケジュールテーブル42をスケジュール管理部43が参照することにより、この酵素水生成装置Aにおいて生成する酵素水Wxの酵素混合率をセットし、この酵素水生成装置Aで生成する酵素水Wxの総量をセットし、この総量や洗浄プロセスの有無などから逆算される酵素水Wxの生成を開始する生成開始時刻をセットする。そして、生成タンクTの洗浄を行うことが設定されている場合(#02Yes分岐)、図6に示す供給量調整処理、すなわち生成プロセスにおいて供給される水と酵素製剤の所要量の調整処理が行われる。
【0047】
この供給量調整処理は、サブルーチンの形でセットされたものであり、まずスケジュールテーブル42に保存されている酵素水Wxの総量(ストックタンクBに貯留する総量)から洗浄に用いられる水の量を減算し、洗浄を行う場合に生成タンクTで生成する酵素水Wxの総生成量を算出する(#301)。次にスケジュールテーブル42に保存されている酵素水Wxの総量と酵素混合率とに基づいて生成プロセスにおいて供給する酵素製剤Xの総量(総酵素製剤量)を算出する(#302)。そして、生成タンクTにおける生成プロセスの実行回数(生成回数)が算出され(#303)、各生成プロセスにおいて生成する酵素水に対応する酵素製剤の量(定量ポンプKPの往復作動回数)を各生成プロセス毎に算出し(#304)、これらの値がセットされる(#305)。
【0048】
なお、操作パネル11で洗浄プロセスを行うことを選択し、これをスケジュールテーブル42に保存する際にこれらの各演算を行い、その結果をスケジュールテーブル42に保存する形態とするとよい。
【0049】
そして、このスケジュール管理部43がカレンダー部(図示せず)からの情報に基づいて、生成開始時刻に達していることを判別すると(#04Yes分岐)、給水制御の処理に移行する(#05)。この給水制御では、給水用電磁バルブ22を開放操作して給水を開始し、液面センサ15が、設定されたレベル(標準水量)まで水が貯留されたことを判別した場合には、給水用電磁バルブ22を閉じて給水を終了する。
【0050】
次に、混合制御では、電動モータ34の駆動力で定容量ポンプKPを作動させることにより、ボトル8に貯留された酵素製剤Xを吸引チューブ25で吸引し、供給チューブ26からノズル27を介して生成タンクTに滴下する形態で供給する(#06ステップ)。この供給の際には定容量ポンプKPの作動回数を作動センサ37で計数することにより、セットされた量の酵素製剤Xを供給する。
【0051】
加温制御では、ヒータ16に電力を供給し、生成タンクTに貯留された溶液の温度を温度センサ17で計測してフィードバックし、この溶液の温度を目標温度領域(40℃程度)に維持することにより、生成タンクTにおいて酵素水Wxを生成する制御を実行する(#07ステップ)。
【0052】
この加温制御による温度の維持が設定時間経過したことを判別した(タイムアップを判別した)場合には、加温制御を停止し、排出用電磁バルブ39を開放することにより、生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出管38から排出ホース7に送ってストックタンクBに排出する排出制御を実行する(#08、#09ステップ)。この排出制御では、生成タンクTから酵素水Wxが排出されるに充分な時間以上排出用電磁バルブ39を開放状態に設定する制御が実行される。
【0053】
また、#05〜#09までの処理が酵素水Wxを生成するプロセスであり、この一連の処理を実行する際の処理の各ステップを実行する際には、操作パネル11の複数のモニタランプ54のうち、対応するモニタランプ54を点灯させる制御が行われる。
【0054】
このように、設定された総生成量を得るために必要な生成回数だけ生成プロセスが実行されるものであり、セットされた生成回数に達するまでこの生成プロセスが繰り返される(#10)。
【0055】
生成回数に達した場合には(#10Yes分岐)、生成タンクTに所定量の水が供給され、生成タンクTの洗浄が行われる(#11)。従って、生成プロセスが複数回行われる場合、最終回以外の生成プロセス終了時における洗浄は省略され、最終回の生成プロセス終了時に生成タンクの洗浄が行われる。洗浄の際には操作パネル11のモニタランプ54のうち、洗浄プロセスに対応するランプを点灯させる制御が行われる。生成タンクTの洗浄は、ここでは水を生成タンクTに一定時間貯留し、その後この水をストックタンクBに排出することにより行われるが、ストックタンクBにおいてこの洗浄に用いた水は先に生成されストックタンクBに貯留されている酵素水(一次酵素水)と混合する。このストックタンクBの最終的な酵素水(二次酵素水)の総量と酵素混合率は、生成タンクTで生成した酵素水(一次酵素水)に所要の供給量の調整を行っているので、洗浄を行わなかった場合と略同一の総量と酵素混合率の酵素水となっている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】酵素水供給システムの斜視図
【図2】酵素水生成装置の縦断正面図
【図3】酵素水供給システムの制御系の概要を示す図
【図4】制御系のブロック回路図
【図5】制御形態を示すフローチャート
【図6】供給量調整処理のフローチャート
【符号の説明】
【0057】
16 ヒータ
18 制御ユニット
43A 供給量調整部
45 洗浄管理部
A 酵素水生成装置
B ストックタンク
T 生成タンク
Wx 酵素水
X 酵素製剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成タンクに水と酵素製剤とを供給し、温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された酵素水が送出されるストックタンクとを備えている酵素水生成システムであって、
設定された総量と酵素混合率の酵素水を前記ストックタンクに貯留させるため、前記酵素水生成装置は、前記生成タンクに所要量の水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成し、このように生成した酵素水を前記ストックタンクに送出する生成プロセスを実行する制御ユニットを備え、
前記制御ユニットは、前記生成プロセス終了時に、前記生成タンクに所定量の水を供給して洗浄を行う洗浄プロセスを実行する酵素水生成システム。
【請求項2】
前記洗浄プロセスはさらに洗浄に用いた水を前記ストックタンクに送出するプロセスを含み、前記制御ユニットは、この洗浄プロセスを実行する洗浄管理部と、前記送出された酵素水と前記洗浄に用いた水とが混合した前記ストックタンク内の酵素水の総量と酵素混合率とが前記設定された総量と酵素混合率に略同一となるように、前記生成プロセス時に供給する水と酵素製剤の所要量を調整する供給量調整部とを有する請求項1に記載の酵素水生成システム。
【請求項3】
前記温度管理が前記生成タンク内に備えられたヒータを用いて行われ、
前記洗浄に用いられる水の前記所定量は、前記ヒータが浸漬する量である請求項1又は2に記載の酵素水生成システム。
【請求項4】
前記生成プロセスが複数回行われる場合、最終回の生成プロセス以外の生成プロセス終了時においては前記洗浄プロセスが省略される請求項1から3のいずれか一項に記載の酵素水生成システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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