説明

酵素水生成装置

【課題】酵素水を生成するに要する時間を短縮する酵素水生成装置を構成する。
【解決手段】保温機能を有した生成タンクTに給水機構Jから温水を供給し、酵素製剤供給機構Kから酵素製剤Xを供給し、設定時間だけ貯留した後に排出機構Lで排出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成タンクに対して給水と、酵素製剤の供給とを行い温度管理を行うことにより酵素水を生成する酵素水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された酵素水生成装置としては特許文献1に記載されるものが存在する。この特許文献1では、生成タンク(文献では活性化タンク)にバルブを介して水を送る給水系を備え、この生成タンクに製剤貯留タンクからポンプを介して酵素製剤を供給する供給系を備え、生成タンクには液面レベルセンサと、ヒータと、温度センサとを備え、この生成タンクからポンプを介して酵素水を送り出す排出系を備えている(段落番号〔0021〕〜〔0024〕・図5)。
【0003】
【特許文献1】特開2004‐242673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように生成タンクに貯留した溶液を加熱するヒータを備えた装置では、生成タンクに給水と、酵素製剤との供給とを行った後にヒータからの熱を目標とする温度に維持する制御形態が必要となる。しかしながら、冬季など水道の水温が低い場合には、この水道からの水を生成タンクに給水した後に、目標とする温度まで上昇するまでに必要とする時間が長くなり、結果として酵素水の生成開始から生成の完了までに要する時間を長くするものとなり改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、酵素水を生成するに要する時間をできるだけ短縮し得る酵素水生成装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、生成タンクに対して給水と、酵素製剤の供給とを行い温度管理を行うことにより酵素水を生成する酵素水生成装置において、
前記生成タンクが保温機能を有すると共に、この生成タンクに温水を送る給水機構と、この生成タンクに前記酵素製剤の供給を行う酵素製剤供給機構とを備えている点にある。
【0007】
この構成により、給水機構から送られた温水を、保温機能を有した生成タンクに貯留するので、この生成タンクにヒータを備えたもののように、水を加熱するための時間が不要となり、また、生成タンクに貯留した温水の温度は保温機能によって低下することが殆ど無い。これにより、水の温度を上昇させる時間が不要となるばかりでなく、温水に酵素製剤を加えた時点から生成処理を開始することが可能となる。その結果、酵素水を生成するに要する時間を短縮する酵素水生成装置が構成された。
【0008】
本発明は、前記給水機構が、酵素水を生成するに最適な温度に加熱された温水を送り出す給湯部を備えても良い。
【0009】
この構成により、給湯部で加熱した温水、あるいは、給湯部に加熱状態で予め貯留された温水を生成タンクに温水を供給することにより、極めて短い時間のうちに必要とする量の温水を生成タンクに貯留でき、酵素水を生成する時間を一層短縮できる。
【0010】
本発明は、前記酵素製剤供給機構が、前記生成タンクより高レベルに配置された酵素製剤貯留部に貯留された液状の酵素製剤を自重によって下方に導く供給管と、この供給管からの酵素製剤を点滴の形態で供給する定量供給部とを備えても良い。
【0011】
この構成により、酵素製剤貯留部から自重によって酵素製剤を供給することが可能となるので、生成タンクに酵素製剤を供給する際にポンプ類を用いないで良く、しかも、供給する際には、定量供給部が点滴の形態で酵素製剤を供給するので、供給する酵素製剤量が少ない場合にも適正な量の供給を行える。
【0012】
本発明は、生成タンクで生成された酵素水を、この生成タンクの底部から排出する排出機構を備えても良い。
【0013】
この構成により、生成タンクに生成された酵素水を排出機構によって、その自重によって排出でき、ポンプ類を備える構造を採用することや、人為操作によって酵素水を汲み出す等の構造を採用しなくて済む。
【0014】
本発明は、前記生成タンクに貯留された温水の温度を計測して表示する温度センサを備えても良い。
【0015】
この構成により、生成タンクに供給された温水の温度を温度センサを介して確認することが可能となり、例えば、高温過ぎる場合には冷水を加える等の対応も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態・装置構成〕
図1に示すように、酵素水を生成する生成タンクTと、この生成タンクTに温水を送る給水機構Jと、この生成タンクTに酵素製剤Xを供給する酵素製剤供給機構Kと、生成タンクTで生成された酵素水Wxを生成タンクTから排出する排出機構Lとを備えて酵素水生成装置Aが構成されている。
【0017】
この酵素水生成装置Aは、生成タンクTへの温水の供給(給水)と、酵素製剤Xの供給とを人為的操作によって行い、生成タンク内に生成され酵素水Wxを排出してストックタンクBに貯留する形態で使用される。
【0018】
また、この酵素水生成装置Aは、ファーストフード店やレストランの厨房のように、床面Fが油脂によって汚れやすい飲食店等に設置されるものであり、この飲食店等の営業が終了した時間帯にストックタンクBに貯留した酵素水Wxを人為的に床面Fに散布することにより、酵素水Wxに含まれる酵素の作用によって床面Fの油脂成分を分解して洗い流す形態で使用される。このように洗浄を行うことにより床面Fのヌメリが除去され、清浄な表面となる。
【0019】
このような厨房では調理や食器の洗浄に使用された排水が排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、この排水に含まれる油脂成分はグリストラップ2に蓄えられる。また、床面Fに散布した酵素水Wxは、排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、このグリストラップ2に滞留することにより、油脂成分を分解し、このグリストラップ2の内部を洗浄するように作用する。
【0020】
前記生成タンクTは、タンク本体の外面を断熱材5で覆った構造により保温機能を有するものであり、この生成タンクTには、内部の温度を検出部において計測し、上端の表示部に表示する温度センサ6と、内部の溶液の液面を示す液面ゲージ7とを備えている。尚、この生成タンクTは、魔法瓶と同様にタンク本体を二重の壁材を用いて構成し、この壁材の中間を真空構造にしたものであっても良い。
【0021】
前記温度センサ6は、下端にセンサ部6Aを備え、上端に液晶型の表示部6Bを備えている。前記液面ゲージ7は、透明なガラスや樹脂で成るチューブを生成タンクTに連通させた構造を有し、チューブの外面形成した指標から給水量を把握できるように構成されている。
【0022】
前記給水機構Jは、瞬間湯沸型、あるいは、貯湯型の給湯部10を備えており、この給湯部10には給水管11を介して水道水が送られると共に、ハンドル12Aの操作で開閉するバルブ12を介して温水を送り出す給水管13を備えている。
【0023】
前記酵素製剤供給機構Kは、酵素製剤貯留部としてのボトル15と、このボトル15に貯留した酵素製剤Xが自重で送られるようにボトル15の下端に接続するチャンバー16と、この下端に接続する柔軟なチューブ状となる供給管17と、この供給管17の中間に形成されたクランプ18とを備えている。前記チャンバー16とクランプ18とが定量供給部として機能するものであり、チャンバー16では、このチャンバー16の内部で一定量の液滴を落下させる形態で送り出し、前記クランプ18は前記供給管に圧力を加えることでチャンバー16での滴下量を調節する機能と、供給管17を完全に閉塞して供給を遮断する機能とを有している。
【0024】
前記排出機構Lは、生成タンクTの底部に連通する排出管20にハンドル21Aで開閉自在されるコック21を備えている。
【0025】
この酵素水生成装置Aは、前記酵素製剤Xとして、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含むと共に、これらの酵素を生成する微生物を含むものであり、この微生物は、低温状態では休眠状態にあり、40℃程度に維持されることにより活性化して酵素を生成する性質を有する。
【0026】
〔操作形態〕
この酵素水生成装置Aで酵素水Wxを生成する際には、オペレータがバルブ12のハンドル12Aを開放操作し、液面ゲージ7を介して給水量を確認して設定量に達したことを確認したタイミングでバルブ12のハンドル12Aを閉じ操作して生成タンクTに対して温水を設定量だけ貯留する。次に、クランプ18を操作して、チャンバー16での滴下数から供給量を確認しながら設定量の酵素製剤Xを生成タンクTに供給する。
【0027】
前述した給水を行う際には、給湯部10の給水の温度を40℃程度に設定しておき、生成タンクTに給水した温水の温度を温度センサ6で確認し、必要な場合には温度の調節を行うことが可能である。また、酵素製剤Xを生成タンクTに供給した後には、20分程度貯留を継続して酵素水Wxの生成を行い、この後、コック21のハンドル21Aを開放操作して、酵素水WxをストックタンクBに排出する。
【0028】
〔第2実施形態・装置構成〕
この第2実施形態では前記第1実施形態と同じ機能を有するものには、第1実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0029】
図2に示すように、酵素水生成装置Aは、生成タンクTと、この生成タンクTに温水を送る給水機構Jと、この生成タンクTに酵素製剤Xを供給する酵素製剤供給機構Kと、生成タンクTで生成された酵素水Wxを生成タンクTから排出する排出機構Lとを備えている。
【0030】
前記生成タンクTは、タンク本体の外面を断熱材5で覆った構造により保温機能を有するものであり、生成タンクT内の液温を計測して電気信号として出力する温度センサ6と、生成タンクT内の液面レベルを計測して電気信号として出力する非接触型の液面センサ7とを備えている。
【0031】
この酵素水生成装置Aは、生成タンクTへの温水の供給(給水)と、酵素製剤Xの供給と、生成タンク内に生成され酵素水WxのストックタンクBへの排出とをコントローラ25からの制御信号によって自動的に行うように構成されている。コントローラ25は操作パネル26において設定されたスケジュールに基づき、設定された生成日時に、設定された生成量の酵素水Wxの生成を行う制御を実現する。
【0032】
前記給水機構Jは、瞬間湯沸型等の温度調節が可能な給湯部10に給水管11を介して水道水が送られると共に、電磁操作型のバルブ12を介して温水を送り出す給水管13を備えている。
【0033】
前記酵素製剤供給機構Kは、酵素製剤貯留部としてのボトル15に貯留した酵素製剤Xをチャンバー16から柔軟なチューブ状の供給管17に自重で送る供給系を備えると共に、チャンバー16内を滴下する液滴を計数するためのカウントセンサSと、供給管17に送られる酵素製剤Xの量を制御する電磁操作型のクランプ18とを備えている。
【0034】
前記チャンバー16は一定量の液滴を落下させる形態で送り出す定量供給部として機能するものであり、前記カウントセンサSは、光源Saと受光部Sbとを備えたインタラプト型に構成され、前記クランプ18は前記供給管17に圧力を加えることにより供給管中の流量を調節する機能と、供給管17を完全に閉塞して供給を遮断する機能とを有している。
【0035】
前記排出機構Lは、生成タンクTの底部に連通する排出管20に電磁操作型のコック21を備えている。
【0036】
前記コントローラ25は、前記カウントセンサS、温度センサ6、液面センサ7からの信号が入力し、前記給湯部10に対して温度調節用の信号を出力し、バルブ12、クランプ18、コック21へ操作信号を出力する。
【0037】
図面には示さないが、コントローラ25はマイクロプロセッサを備え、このマイクロプロセッサで実行されるプログラムが設定されている。
【0038】
このような構成から、酵素水Wxを生成する際には、コントローラ25がケジュールに設定された生成日時に、生成量に基づいてバルブ12を制御して生成タンクTに対して温水の給水を行う。この給水時には温度センサ6で計測された水温をフィードバックすることにより、給湯部10から供給される温度を調節する制御が実行される。次に、カウントセンサSで供給量をフィードバックしながらコック21を制御することで設定された酵素製剤Xの供給を行う。
【0039】
このように給水と、酵素製剤Xの供給が行われた後には、設定された時間(20分程度)の時間が経過した後にコック21を開放操作して、生成タンクTにおいて生成された酵素水WxをストックタンクBに排出する制御が行われる。尚、このコック21を開放操作する際には、生成タンクTで生成された酵素水Wxを完全に排出するに充分な時間だけコック21が開放操作される。
【0040】
〔本発明の機能〕
このように、本発明の酵素水生成装置Aでは、酵素水Wxを生成するために最適な温度の温水を、保温機能を有する生成タンクTに供給するので、例えば、生成タンクTに水を供給し、この水を加熱するためのヒータ類を備えるものと比較すると、このヒータを必要としないばかりか、生成タンクTが大容量であっても、温水の給水を行った直後に酵素製剤Xを供給して酵素水の生成を開始することが可能となり、生成時間の短縮を可能にしている。
【0041】
第1実施形態のようにオペレータの人為操作によって、温水の給水、酵素製剤Xの供給、生成タンクTからの酵素水Wxの排出を行うものでは、電気的な制御系を必要とせず簡単な構成で比較的簡単に組み立てることも可能となる。また、第2実施形態のように、給水と酵素製剤Xの供給とをコントローラ25で行うように構成したものでは、給水、酵素製剤Xの供給、設定時間の経過後に生成タンクTから酵素水Wxの排出を自動的に行えるものとなりオペレータが手間を掛けずに済むものになる。特に、この生成タンクTによって酵素水Wxを複数回生成してストックタンクBに排出するように制御形態を設定することも可能であり、このように制御形態を設定した場合には、多量の酵素水Wxを比較的短時間のうちに作り出し、ストックタンクBに貯留することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の酵素水生成装置の構成を示す図
【図2】第2実施形態の酵素水生成装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0043】
6 温度センサ
10 給湯部
15 酵素製剤貯留部(ボトル)
17 供給管
J 給水機構
K 酵素製剤供給機構
L 排出機構
T 生成タンク
X 酵素製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成タンクに対して給水と、酵素製剤の供給とを行い温度管理を行うことにより酵素水を生成する酵素水生成装置であって、
前記生成タンクが保温機能を有すると共に、この生成タンクに温水を送る給水機構と、この生成タンクに前記酵素製剤の供給を行う酵素製剤供給機構とを備えている酵素水生成装置。
【請求項2】
前記給水機構が、酵素水を生成するに最適な温度に加熱された温水を送り出す給湯部を備えている請求項1記載の酵素水生成装置。
【請求項3】
前記酵素製剤供給機構が、前記生成タンクより高レベルに配置された酵素製剤貯留部に貯留された液状の酵素製剤を自重によって下方に導く供給管と、この供給管からの酵素製剤を点滴の形態で供給する定量供給部とを備えている請求項1又は2記載の酵素水生成装置。
【請求項4】
前記生成タンクで生成された酵素水を、この生成タンクの底部から排出する排出機構を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素水生成装置。
【請求項5】
前記生成タンクに貯留された温水の温度を計測して表示する温度センサを備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素水生成装置。


【図1】
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【図2】
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