説明

酵素活性の促進のための多糖の使用

本開示は、オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素を含むがこれに限定されない、標的酵素の酵素活性の促進のための方法および組成物を提供する。該方法は、液体環境下で酵素の酵素活性を促進するための、非天然多糖(限定されないがHESを含む)の使用を含み、標的酵素を含む組成物中の多糖の濃度は約0.01%〜約55%w/vである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特に限定されることはないがヒドロキシエチルデンプンを含む、多糖の使用により酵素活性を促進するための組成物および方法に関する。本発明はさらに、酵素の使用を含む、タンパク質の製造方法に関する。本発明はさらに、酵素および他の生体分子の製造方法および/または調製に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
酵素は、多くの産業的応用に使用されることが見出されている。例えば、酵素は、洗剤産業(例えば、アミラーゼおよびバクテリアアルカリ性プロテアーゼ)、青果物ジュース産業(例えば、ペクチナーゼおよびキシラナーゼ)、食肉産業(例えば、キシラナーゼ、フィターゼ、β-グルカナーゼ)、デンプン産業(例えば、アミラーゼ)、パルプおよび製紙産業(例えば、キシラナーゼ)、織物産業(例えば、セルラーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、およびカタラーゼ)および皮革産業(例えば、プロテアーゼおよびリパーゼ)に広く使用される(Cherry et al., Curr. Opin. Biotechnol. 14:438-443 (2003))。
【0003】
また、酵素補充療法(ERT)を含む、酵素およびそれをコードする核酸の多くの医療的および治療的使用も存在する。酵素補充療法において、体内の酵素活性が欠乏している患者を、失われた(または機能不全になっている)酵素(「ERT」酵素)の投与により治療する。ERT酵素は多くの疾患の治療に有用である。例えば、特定のリソソーム貯蔵障害(LSD)は、ERT酵素の投与により効果的に治療することができる。
【0004】
医学的に重要な補充酵素の他の例は、ラクトース耐性のためのラクターゼおよび嚢胞性繊維症による膵臓不全を含む膵臓不全の個体の治療のための補充膵臓酵素である(Wallace et al., Clin. Pharm. 12:657-674 (1993) )。
【0005】
酵素活性の促進法は、多くの産業分野において非常に価値のあるものである。特にヒトまたは獣医学的使用のための治療用タンパク質の製造に関して、非動物由来成分(非ADC)を使用することが一般的に望ましい。従って、多岐にわたる応用について酵素の活性を非ADCで促進するための新規の方法および組成物を提供する必要性が特に存在している。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、(a)標的酵素および(b)非天然多糖を含む組成物を提供する。標的酵素とは、例えば、オリゴ糖/多糖酵素(すなわち、(1つ以上の)オリゴ糖/(1つ以上の)多糖上で作用する酵素)、タンパク質酵素(すなわち、キナーゼ、ホスホリラーゼなどの(1つ以上の)タンパク質上で作用する酵素)、ポリヌクレオチド酵素(すなわち、(1つ以上の)ポリヌクレオチド上で作用する酵素)、またはリパーゼ等を含むその他の産業的もしくは医学的に関連のある酵素のことであり得る。標的酵素は溶液中に存在してもよいか、または固相支持体上に固定されていてもよい。
【0007】
いくつかの態様において、非天然多糖は修飾デンプンである。例えば、非天然多糖はヒドロキシアルキルデンプンであり得、特に限定されることはないがヒドロキシエチルデンプン(HES)を含む。非天然多糖は、約0.01〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vで存在し得る。
【0008】
また、(a)オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素、リパーゼおよびその他の産業的かつ医学的に関連のある酵素からなる群より選択される標的酵素、ならびに(b)非天然多糖、ならびに(c)標的酵素の基質を含む組成物が本明細書に記載され、該組成物は約0.01%〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01%〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vの多糖を含む。該基質は、例えば標的酵素のタンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、または小分子基質であり得る。特定の具体的な態様において、標的酵素の基質はそれ自体が酵素であり、特に限定されることはないがリソソームヒドロラーゼなどのERT酵素を含む。
【0009】
他の具体的な態様において、本発明は、標的酵素がオリゴ糖分解酵素であり、多糖がHESであり、基質が糖タンパク質である組成物を提供する。他の代表的な態様において、標的酵素は、β-グルコセレブロシダーゼ、α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-N-ヘキソサミニダーゼ(例えば、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ)またはラロニダーゼである。
【0010】
本発明はまた、標的酵素の酵素活性の促進方法に関する。一態様において、該方法は、標的酵素と約0.01〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%の非天然多糖を合わせて組み合わせを生成する工程、および該組み合わせを、標的酵素の酵素活性を促進するのに充分な条件下で維持する工程を含む。
【0011】
本発明はまた、液体環境下の酵素の活性を非低温で促進するための非天然多糖の使用にも関し、組成物中の多糖の濃度は、約0.01〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%である。
【0012】
本発明はさらに、非天然多糖を含む酵素製剤(液体製剤および再構成製剤を含む)に関する。
【0013】
本発明はさらに、非天然多糖により活性が促進される標的酵素を含む医薬組成物に関する。
【0014】
前述および後述の詳細な説明、ならびに全実施例は非限定的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)のポリマー構造を示す。HESはD-グルコースのポリマーであり、単糖単位は、およそ20モノマー単位ごとに存在するα-1,4結合および分岐α-1,6結合により連結される。
【図2】図2は、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼでの処理によるβ-グルコセレブロシダーゼ(GCR)のオリゴ糖リモデリングのプロセスを示す(例えば、Furbish et al., Biochim. Biophys. Acta 673:425-434 (1981) 参照)。
【図3】図3は、標的酵素活性が本発明の多糖により促進される、本発明の方法の一態様を図示するフローチャートである。
【図4】図4は、標的酵素が溶液中にあり、基質が固相支持体に固定される、本発明の方法の一態様を図示するフローチャートである。
【図5】図5は、標的酵素および基質が溶液中にある、本発明の方法の一態様を図示するフローチャートである。
【図6】図6は、標的酵素が固相支持体上に固定され、基質が溶液中にある、本発明の方法の一態様を図示するフローチャートである。
【図7】図7は、rGCR安定性を促進するHESの効果を図示する、時間対元の活性の%のグラフである。
【図8】図8は、α-グルコシダーゼ安定性を促進するHESの効果を図示する、日数対元の活性の%のグラフである。
【図9】図9は、α-ガラクトシダーゼ安定性を促進するHESの効果のグラフである。
【0016】
(発明の詳細な説明)
標的酵素の活性を、特に非ADCで促進して、多岐にわたる応用についてより効果的な標的酵素の使用を可能にするための新規の方法および組成物を提供する必要がある。
【0017】
現在、ヒト疾患の治療のために、治療用酵素およびモノクローナル抗体を含む約400種類の治療用タンパク質が開発されている(Zopf et al., Pharmaceutical Visions 10-14 (Spring 2002))。いくつかの場合、治療用タンパク質の製造は、治療用タンパク質自体の酵素的修飾を含み得、特に限定されることはないが製造工程時のオリゴ糖のリモデリングを含む。他の場合、治療タンパク質はそれ自体が酵素である。
【0018】
特定の治療用タンパク質の最適な活性のためにはオリゴ糖リモデリングなどの修飾が望ましい。例えば、イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標)、Genzyme Corporation、Cambridge、MAの活性成分)は、リコンビナント細胞を使用して作製した、オリゴ糖修飾ヒトβ-グルコセレブロシダーゼ(GCR、酸β-グルコセレブロシダーゼ、酸β-グルコシダーゼ、グルコシルセラミダーゼ、β-D-グルコシル-N-アシルスフィンゴシングルコヒドロラーゼ、EC 3.2.1.45としても公知)であり、β-グルコセレブロシダーゼの欠乏または機能不全により生じる稀で甚大な被害をもたらす遺伝的障害である、ゴーシェ病の患者の治療に使用される。イミグルセラーゼはオリゴ糖の製造時にオリゴ糖リモデリングを行う:マクロファージの細胞膜上のマンノースレセプターが認識するようにコアマンノース残基を露出させるために、複合N-結合オリゴ糖をオリゴ糖リモデリング酵素に供することで、修飾GCRがより効果的に貪食されマクロファージリソソームに送達されることが可能になる(例えば、Furbish et al., Biochim. Biophys. Acta 673:425-434 (1981) 参照)。
【0019】
本発明は、標的酵素と本発明の多糖を合わせることで、標的酵素の酵素活性を促進するための方法および組成物を提供する。本発明はさらに、液体環境(例えば、溶液中または固相支持体に固定)下で標的酵素と本発明の多糖を合わせることで、標的酵素の酵素活性を非低温で促進するための方法および組成物を提供する。機構に限定されることなく、本発明の(1つ以上の)多糖は、標的酵素の活性の延長、または標的酵素の変性、分解もしくは凝集の低減、および/または標的酵素の安定化により標的酵素の特異的活性を増加させることで、酵素活性を「促進」し得る。従って、例えば、本発明の特定の態様において、本発明の方法による非天然多糖の使用により、多糖非存在下での使用と比較して、インビボまたはインビトロ酵素反応で少ない量の標的酵素の使用が可能になる。酵素活性および酵素反応は当該技術分野の標準的な方法により測定することが可能である(例えば、Eisenthal et al., Enzyme Assays: A Practical Approach, Oxford University Press: New York, 2002参照)。
【0020】
本明細書において、HESの存在により標的酵素が安定化されることが記載されている。また、HESが標的酵素の酵素活性を促進し、基質修飾に必要な標的酵素の量を低減し、標的酵素を使用できるpH範囲を広げることも記載されている。また、本明細書には、HESが種々の標的酵素および標的酵素濃度に適合性であること;異なる市販品から得たHESが標的酵素活性の促進に同等であること;ならびに標的酵素活性のHESによる促進が広い範囲の系容量で効果的であることも記載されている。
【0021】
標的酵素
本発明の方法は、標的酵素の酵素活性の促進に広く適用可能である。本明細書で使用される場合、用語「標的酵素」とは、本発明の方法による非天然多糖への曝露により活性が促進されるかまたは促進された酵素のことをいう。しかし、全血、血漿、組織プラスミノーゲンアクチベーター、インターロイキン、毒素、インターフェロン、プロテインC、γグロブリンおよびコラーゲンは、「標的酵素」の定義からは、明確に除外される。本発明の方法および組成物と共に、1つ以上の標的酵素を使用してもよい。用語「標的酵素」を使用する場合は、この用語が1つ以上の酵素を包含することを認識すべきである。本発明の特定の局面において、標的酵素は単離または精製される。
【0022】
いくつかの態様において、標的酵素は、産業的に関連のある酵素、例えばアセトラクテートデカルボキシラーゼ、酸プロテイナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アミノアシラーゼ、アミノペプチダーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、アスパラギンβ-デカルボキシラーゼ、ブロメライン、カタラーゼ、セルラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、β-グルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、デキストラナーゼ、デキストリナーゼ、エンドペプチダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルタミナーゼ、ヘミセルラーゼ、ヒスチダーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラクターゼ、リアーゼ、リゾチーム、アルギナーゼ(naringinase)、オキシレダクターゼ、ペクチナーゼ、ペニシリンアシラーゼ、ペプシン、ペルオキシダーゼ、プルラナーゼ、サブチリシンなどであり得る。
【0023】
他の態様において、標的酵素は、オリゴ糖または多糖の共有結合に影響を及ぼし得るオリゴ糖/多糖酵素であり得る(例えば、表1参照)。例えば、オリゴ糖/多糖酵素はグリコシルトランスフェラーゼまたはグリコシダーゼであり得る。他の態様において、標的酵素は、タンパク質もしくはペプチド、またはそのアミノ酸側鎖に影響を及ぼし得、タンパク質の分子変化を生じる、タンパク質酵素である(例えば表2参照)。例えば、タンパク質酵素はプロテアーゼまたはホスホリラーゼであり得る。他の態様において、標的酵素は、ポリヌクレオチドまたはヌクレオチドに影響を及ぼし得、ポリヌクレオチドの分子変化を生じる、ポリヌクレオチド酵素である(例えば、表3参照)。例えば、ポリヌクレオチド酵素はリガーゼまたはエンドヌクレアーゼであり得る。他の態様について、標的酵素は、グルコースをフルクトースに変換するグルコースイソメラーゼなどの分子に対して切断、添加または他の変化などの小分子についての共有結合修飾に影響を及ぼし得る。従って、特定の態様において、本発明の標的酵素は、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ホスホリラーゼ、スルファターゼ、アセチラーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼまたはリガーゼであり得る。標的酵素は、インビボまたはインビトロで作用し得るか、および/または単離もしくは精製されたオリゴ糖、多糖、タンパク質、ペプチド、脂質、小分子、またはポリヌクレオチドに作用し得る。
【0024】


【0025】


【0026】


【0027】
いくつかの態様において、標的酵素は、治療用タンパク質、すなわち治療剤、予防剤または診断剤として患者に投与されることを目的として製造されたタンパク質を修飾する酵素である。例えば、標的酵素はオリゴ糖/多糖酵素であり得、特に限定されることはないがグリコシダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼが挙げられる。グリコシダーゼの例としては、α-マンノシダーゼ、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、およびエンド-β-ガラクトシダーゼが挙げられる。グリコシルトランスフェラーゼの例としては、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、血液型A、Bトランスフェラーゼ、およびUDP-GalNAc:ポリペプチドN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼが挙げられる。糖修飾酵素の他の例については、例えば表1およびFukuda et al., Glycobiology: A Practical Approach, Oxford University Press: New York, 1993;Brooks et al., Functional and Molecular Glycobiology, BIOS Scientific Publishers Ltd.: Oxford, UK, 2002を参照のこと。特定の好ましい態様において、標的酵素はシアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、および/またはβ-ヘキソサミニダーゼである。
【0028】
いくつかの態様において、標的酵素はそれ自体治療用タンパク質である。例えば、標的酵素としては、限定されることはないが、具体的に、表4に列挙されるERT酵素が挙げられる。例えば、標的酵素は、β-グルコセレブロシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、またはα-グルコシダーゼであり得る。例えば、実施例1〜3に示されるように、グルコセレブロシダーゼ、α-グルコシダーゼおよびα-ガラクトシダーゼはHESの存在下で安定化される。
【0029】
いくつかの例において、標的酵素は標的酵素が使用される適用に依存して、1つより多くのカテゴリーに分けることができる。
【0030】


【0031】
リソソーム貯蔵障害は、リソソームヒドロラーゼ活性の欠乏に関する40を超える障害を含む遺伝的疾患の種類に入る。リソソームは、細胞の主要な分解要素として機能し、この機能を実行するために必要な複数の酵素を含む。LSDの顕著な特徴は、多くの膨張したリソソームの形成をもたらすリソソームの代謝産物の異常な蓄積である。従って、LSDは、特定のLSDに関連する欠失または欠乏リソソームヒドロラーゼに対応するERT酵素の投与により治療され得る。
【0032】
例えば、上述のように、イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標)、Genzyme Corporation、Cambridge、MAの活性成分)は、リコンビナント細胞を使用して作製されたオリゴ糖修飾ヒトβ-グルコセレブロシダーゼ(GCR、酸β-グルコセレブロシダーゼ、酸β-グルコシダーゼ、グルコシルセラミダーゼ、β-D-グルコシル-N-アシルスフィンゴシングルコヒドロラーゼ、EC 3.2.1.45としても公知)であり、β-グルコセレブロシダーゼの欠損または機能不全により生じる稀であり甚大な被害をもたらす遺伝的障害である、ゴーシェ病の患者を治療するために使用される。実施例1に示されるように、β-グルコセレブロシダーゼは、HESなどの非天然多糖の存在により安定化される。
【0033】
アルグルコシダーゼα(α-グルコシダーゼ、アルファ-グルコシダーゼ、または酸αグルコシダーゼ、CAS Regとしても公知:420784-05-0、EC 3.2.1.3)、Myozyme(登録商標)(Genzyme Corporation、Cambridge、MA)の活性成分は、しばしば致死性の、稀であり衰弱する進行性疾患のポーンプ病の治療のためのERT酵素である。ポーンプ病(グリコーゲン貯蔵疾患II型、GSD II、糖原症II型、酸マルターゼ欠乏症)は、リソソーム酵素である酸αグルコシダーゼ(GAA)の非存在または著しい欠乏により生じるグリコーゲン代謝の遺伝的な障害である。実施例2に示されるように、α-グルコシダーゼは、HESなどの非天然多糖の存在により安定化される。
【0034】
ERT酵素の別の例は、ファービー病の治療に使用されるFabrazyme(登録商標)(アガルシダーゼβ)である。ファービー病のヒトは、体内でグロボトリアオシルセラミド(GL-3)と呼ばれる脂肪基質が分解されるのを補助するα-ガラクトシダーゼA、またはα-GALと呼ばれる必須酵素を失っているかまたはその充分な量を有していない。欠失している酵素の補充物であるFabrazyme(登録商標)(アガルシダーゼβ)は、天然のα-GAL酵素と同様に作用し、細胞内のGL-3を標的とする。細胞内に入ると、これはGL-3を小さな成分に分解し、その後自然のプロセスにより細胞から除去され得る。実施例3に示すように、α-ガラクトシダーゼも、HESのような非天然多糖の存在により安定化される。
【0035】
ERT酵素のさらに別の例は、複数の器官系および組織に影響を及ぼす、稀であり常染色体劣勢の遺伝的疾患である、ムコ多糖症I型(MPS I)を治療するために使用されるAldurazyme(登録商標)(ラロニダーゼ)である。この疾患は、リソソーム酵素α-L-イズロニダーゼをコードする遺伝子の欠損により生じる。この欠損の結果として、MPS Iを有するヒトの細胞は、該酵素を産生することまたはそれを少量産生することの両方ができず、特定のグリコサミノグリカン(GAG)(つまりデルマタン硫酸およびヘパラン硫酸)の段階的な分解において作用するリソソームの機能がなくなる。
【0036】
いくつかの態様において、標的酵素は、液体環境、すなわち液体中または特定の液体環境中に存在する。液体環境中の標的酵素は、固相支持体に固定され得るか、または溶液中に分散、部分的に溶解または溶解され得る。標的酵素は、共有結合的または非共有結合的に、直接または間接的に固体または半固体物質、例えば樹脂に結合する場合、固相支持体上に固定される。例えば、標的酵素は、例えば物理的吸着または共有結合により、あるいは固相支持体と直接接触した実体との相互作用により固相支持体に固定され得る。代表的な固相支持体は当該技術分野に周知である。例えば、標的酵素は、疎水性相互作用、静電気的相互作用、金属イオン-リガンド相互作用、小分子相互作用、ペプチド相互作用、偽親和性相互作用、抗原抗体反応またはその他の親和性相互作用により固相支持体上に固定され得る。好ましい態様において、固相支持体は、標的酵素および多糖(および任意に基質)を含む液体環境、水溶液または別のものに不溶性である。
【0037】
いくつかの態様において、標的酵素の基質は標的酵素と共に存在する。基質は固相支持体上に固定され得るか、または溶液中に分散、部分的に溶解または溶解され得る。例えば、基質は、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、脂質または小分子であり得る。いくつかの態様において、基質自体が酵素であり、特に限定されることはないが表4に挙げたようなリソソームヒドロラーゼを含む。基質が酵素である態様においては基質も標的酵素であり得る。
【0038】
当該分野に周知のように、酵素は通常、特定のpH、温度および基質濃度の範囲で活性である。いくつかの態様において、例えば、本発明の標的酵素についてのpH活性範囲は、約pH3〜pH9、pH3〜pH6、pH4〜pH8、pH5〜pH 7、またはpH5.5〜pH6.5であり得る。いくつかの態様において、好酸性酵素については、pHは酸性pH(例えば、約6.5、5.5、4.5、3.5または2.5未満のpH)であり得る。他の態様において、好アルカリ性酵素については、pHは塩基性pH(例えば、約7.5、8.5、9.5、10.5または11.5より高いpH)であり得る。いくつかの態様において、例えば、本発明の標的酵素についての温度範囲は約2〜50℃、10〜37℃、15〜32℃または20〜30℃であり得る。いくつかの態様において、高熱性酵素については、温度は約37℃、45℃、50℃、60℃、75℃または85℃よりも高い温度である。他の態様において、中温好性の酵素については、温度は約20〜40℃、25〜37℃または30〜35℃である。さらに他の態様において、好冷性酵素については、温度は約30℃、25℃、20℃、10℃または5℃よりも低い温度である。いくつかの態様において、例えば、酵素対基質の比率は、約1:1,000,000,000、1:1,000,000、1:100,000、1:10,000、1:1000、1:100、1:10または1:1であり得る。
【0039】
一般的に、しかしながら、酵素反応速度は、ミカエリス-メンテンの反応速度の原理に支配されることが理解されよう、例えばLehninger Principles of Biochemistry, 第3版, David L. Nelson et al編, Worth Publishers, NY, NY参照。
【0040】
従って、かかる原理を使用して、当業者は、単純かつ常套的な実験により標的酵素の反応速度を測定し得る。また、Swiss-Protにおいて酵素情報および命名情報が利用可能である。酵素命名データベース-ExPASy(Expert Protein Analysis System)、リリース37、2005年3月、および2005年8月2日アップデート<URL:http://au.expasy.org/enzyme/>;Bairoch A. The ENZYME database in 2000. Nucleic Acids Res. 28:304-305(2000) も参照のこと。また、国際生化学および分子生物学連合の命名委員会(NC-IUBMB)、2005年7月27日アップデート、<URL:http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/>も参照;印刷版:Enzyme Nomenclature 1992 [Academic Press, San Diego, California, ISBN 0-12-227164-5, 0-12-227165-3]、増刊号1 (1993)、増刊号2 (1994)、増刊号3 (1995)、増刊号4 (1997) および増刊号5(Eur. J. Biochem. 1994, 223:1-5; Eur. J. Biochem. 1995, 232:1-6;Eur. J. Biochem. 1996, 237:1-5;Eur. J. Biochem. 1997, 250:1-6, and Eur. J. Biochem. 1999, 264:610-650のそれぞれ)も参照。
【0041】
多糖
多糖は、2つ以上の単糖単位を含む、天然または合成起源の単糖の直鎖または分岐ポリマーである。特定の態様において、本発明の多糖は、少なくとも約5、10、20、30、50、75以上の単位を含む。本発明の特定の局面において、多糖を構成する単糖単位は非同一単位である。多糖加水分解産物および多糖の混合物は本明細書で使用される用語、多糖に包含される。
【0042】
非天然多糖とは、その天然状態から修飾多糖のことをいう。すなわち、非天然多糖の化学的構造および/または生物学的活性は、天然の状態(修飾前)の多糖の化学的構造および/または生物学的活性と比較して修飾されている。例えば、可溶性を向上させるために(例えば、水溶液中で約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%の溶解性の非天然多糖を得るために)、多糖分子に親水性官能基を付加する。また、アニオンまたはカチオン官能基を多糖分子に付加することができる。非天然多糖を生成するために使用される適切な方法(例えば、熱および/または化学的手段の使用)は当業者に公知である。
【0043】
本明細書中の記載の大部分は、特に限定されることはないが修飾ヒドロキシアルキルデンプンまたはFicoll(登録商標)を含む非天然多糖について言及しているが、本発明の組成物および方法において、特に限定されることはないがα-アミロース、アミロペクチン、またはデキストランを含む天然の多糖を使用することができることが理解されよう。
【0044】
いくつかの態様において、多糖は、化学的に修飾デンプンなどの非天然デンプンであり、限定されることなく、ヒドロキシアルキルデンプン(限定されることなくHESまたはヒドロキシプロピルデンプンを含む)、カルボキシメチルデンプン、ジエチルアミノエチルデンプン、(ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドデンプン、シアノエチルデンプン、ベンジルデンプン、またはアセチルデンプンが挙げられる(例えば、Hjermstad "Starch Hydroxyethyl Ethers and Other Starch Ethers" In: Whistler et al., Eds., Industrial Gums, Academic Press: New York, 1973 and Moser, "Hydroxyethylated Starches." In Wurzburg, Ed., Modified Starches: Properties and Uses, CRC Press: Boca Raton, Florida, 1987、参照)。
【0045】
特定の態様において、多糖は、ヒドロキシメチルデンプン、HES、ヒドロキシプロピルデンプン、およびヒドロキシブチルデンプンからなる群より選択されるヒドロキシアルキルデンプンである。
【0046】
本発明の組成物および方法は、約0.1%〜約55%(w/v)の多糖を含むかまたは使用し得る。特定の態様において、多糖の濃度は、約0.01%〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vであり得る。特定の態様において、多糖の濃度は、少なくとも約5%(w/v)である。他の態様において、多糖の濃度は、(w/v)で少なくとも2%、4%、5%、6%、7%、9%、11%、13%、15%、20%、30%または40%であり、多糖の濃度は55%(w/v)未満である。本明細書の開示を考慮すると、特定の標的酵素の活性を促進する特定の多糖の濃度は、単純かつ常套的な実験により、当業者が測定し得る。
【0047】
当業者が理解するように、本発明の多糖の平均分子量(「AMW」)は、使用される特定の多糖に依存する。一般的に、しかしながら、本発明の(1つ以上の)多糖の平均分子量は、例えば約20kDa〜2,600kDa、100kDa〜2,000kDa、300kDa〜1,500kDa、または400kDa〜800kDaで変化し得る。好ましい態様において、多糖の平均分子量は、約400kDa〜約800kDaである。別の好ましい態様において、多糖の平均分子量は、約450kDa〜約800kDaである。別の好ましい態様において、多糖の平均分子量は、約400kDa〜約750kDaである。当業者が認識するように、一般的に、同一の多糖の高分子量のポリマーに対して、低分子量の範囲の多糖は、より高い溶解度(w/v、w/w)を有する。
【0048】
いくつかの好ましい態様において、本発明の多糖はHESである。HESは、ヒドロキシエチル化、例えば、酸化エチレンおよび金属アルコキシドの処理により、およびたとえば塩酸による加水分解により、例えばトウモロコシ、ジャガイモ、またはコムギ由来の、D-グルコース由来のポリマーである植物由来のデンプンアミロペクチンから調製され得るポリマーである(例えば、Hjermstad "Starch Hydroxyethyl Ethers and Other Starch Ethers." In: Whistler et al., Eds., Industrial Gums, Academic Press: New York, 1973 and Lutz et al., Acta Anaesthesiol. Belg. 35 (Suppl.):21-26 (1984) 参照)。HESの構造式を図1に示す。限定されることなく、HESのグルコース単位は、一般的に、およそ20モノマー単位ごとに生じるα-1,4結合および分岐α-1,6結合により連結される。HESはいくつかの供給業者から入手可能である(本明細書の実施例を参照)。HESの利点の1つは、HESが一般的に安全で無毒性であると考えられており、間接的な食物添加剤としておよび血漿エキステンダーとして認可されているということである(例えば、Moser, "Hydroxyethylated Starches." In Wurzburg, Ed., Modified Starches: Properties and Uses, CRC Press: Boca Raton, Florida, 1987 and Treib et al., Intensive Care Med. 25:258-268 (1999) 参照)。また、HESは非動物由来である。従って、ヒトでの使用のための治療薬またはその他の薬剤の製造に適用する場合、HESは本発明の方法および組成物に特に有用である。
【0049】
HESはその平均分子量およびヒドロキシエチル化の程度において異なり得る。平均分子量は、数平均分子量または重量平均分子量として報告することができる。ヒドロキシエチル化の程度は、モル置換比(「MS」;グルコース単位当たりのヒドロキシエチル基の数)または置換の程度(「DS」;ヒドロキシエチル基を含むグルコース単位の画分)として測定することができる。MSおよびDSは同じではないが、該用語は文献中でしばしば交換可能である。値が小さい場合、所定の試料のMSおよびDSは同等であるが、試料がより高度に置換される場合は、DSよりもMSの方が大きい。特定のHESは、その重量平均分子量(kDa)およびMSにより同定可能であり、例えばHESは、HES 480/0.7、HES 450/0.7、HES 200/0.5、またはHES 130/0.4として報告され得る。さらなる情報については、例えば、Thompson, "Hydroxyethyl Starch." In Hennessen, Ed., Developments in Biological Standardization Vol. 48, S. Karger: Basel, Switzerland;Moser, "Hydroxyethylated Starches." In Wurzburg, Ed., Modified Starches: Properties and Uses, CRC Press: Boca Raton, Florida, 1987;およびTreib et al., Intensive Care Med. 25:258-268 (1999) を参照のこと。HESバリアントとしては、特に限定されないが、(AMWの昇順で)TetrastarchTM、ペンタデンプン、ヘキサデンプン、およびヘプタデンプン(hetastarch)が挙げられる。
【0050】
好ましい態様において、多糖はHESである(例えば、HES 480/0.7またはHES 450/0.7)。一般的に、HESはおよそ400〜550kDaの重量平均MW(AMW)、およびおよそ0.7の平均MSを有する。特定の態様において、HESはおよそ500、550、600、650、750または800kDaの重量平均MWを有する。特定の態様において、約70%、75%、80%以上の分子は20kDa〜2,600kDaの範囲内にある。特定の態様において、MSはおよそ0.6、0.65、0.7、0.75、0.8または0.85である。
【0051】
さらに他の好ましい態様において、本発明の多糖は1つ以上の以下の特徴を有する:
a) 多糖は、標的酵素を含む液体環境に実質的に可溶性である;
b) 多糖は、標的酵素およびかかる標的酵素の基質を含む液体環境に実質的に可溶性である;
c) 多糖は(酵素活性を促進する以外は)標的酵素とは反応しない;
d) 多糖は(基質が標的酵素である場合に酵素活性を促進する以外は)標的酵素の基質とは反応しない;
e) 多糖は、標的酵素が活性であるかまたは使用される温度および/またはpHで安定である;
f) 多糖は標的酵素とは結合しない;
g) 多糖は標的酵素の基質とは結合しない;
h) 多糖は非動物由来である;
i) 多糖は少なくとも2種類の異なる単糖単位を含む;
j) 標的酵素と組み合わせた多糖は、多糖による酵素活性の促進の少なくとも一部、好ましくは実質的な部分の間、非凍結状態で維持される;
k) 標的酵素(および任意に基質)と組み合わせた多糖は、多糖により酵素活性が促進される少なくとも一部、好ましくは実質的に一部の間、凍結されない;
および/または
l) 特に、標的酵素が治療用タンパク質である場合に、多糖は動物および/またはヒトに対して非毒性である。
【0052】
本明細書で使用する場合、標的酵素または基質に対して「多糖は反応しない」とは、限定されないが、標的酵素または基質を不活性化しない、標的酵素または基質を阻害しない、標的酵素または基質を切断しない、または標的酵素または基質を分解しないということを含む。
【0053】
多糖の使用
本発明は、液体環境下で、(1つ以上の)多糖により、(1つ以上の)標的酵素の酵素活性を促進する方法を提供する。該方法は、標的酵素が活性である温度、例えば、特に限定されないが、約1℃〜40℃、1℃〜20℃、15℃〜35℃、5℃〜30℃、10℃〜30℃、または20℃〜30℃で実施される。特定の態様において、該方法は、室温、すなわち25℃±約5℃の温度で実施される。
【0054】
本発明の方法の1つの態様を図3に示す。この態様において、標的酵素および多糖を組み合わせてカクテルを作製し(工程1)、その後多糖の非存在下の標的酵素活性と比較して、標的酵素活性が促進されるのに充分な時間維持する(工程2)。任意に、カクテルは標的酵素のための基質を含んでもよい。任意の態様において、標的酵素と基質の酵素反応の間、カクテルを維持し得る。かかる態様において、標的酵素または基質は、溶液中にあるか、固相支持体に固定されるかまたはその両方であり得る。
【0055】
本発明の方法の代替的な態様を図4に示す。この態様において、液体環境中の標的酵素の活性は、カラムに詰められた樹脂などの固相支持体に固定された基質の存在下で多糖により促進される。標的酵素カクテルの調製(プロセスA)は、多糖と標的酵素を合わせて「カクテル」を調製する工程(工程1)および使用するまでカクテルを維持する工程(工程2)を含む。基質組成物を調製して(プロセスC、工程9)、使用するまで維持する(工程10)。任意に、まずカラムを平衡化して(工程3)基質をカラムに充填する(工程4)。その後標的酵素カクテルをカラムに添加して(工程5)、任意にカラム中を再循環させ(工程6)、標的酵素により基質を修飾させる。例えば、標的酵素カクテルは、特に限定されないが、例えば、約1〜240時間、1〜40時間、5〜35時間、10〜30時間、15〜30時間、または19〜25時間、カラム中に再循環させてもよい。あるいは、酵素反応の速度に依存して、標的酵素カクテルは、特に限定されることはないが、例えば、約1〜48時間、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間もしくは1〜3時間、または1時間未満、カラム中に再循環させてもよい。所望のレベルの修飾が達成されたら、好ましくは標的酵素カクテルをカラムから洗い出して、修飾基質を溶出および回収する。この態様の他のバリエーションも本発明の範囲内である。例えば、図4に示される態様からプロセスAを取り除き、標的酵素をカラムに添加する前、後、またはそれと同時に多糖を直接カラムに添加してもよい。他の態様において、固相支持体または樹脂はカラムの形態ではなく、例えば、スラリー、バッチまたはその他の形態である。
【0056】
本発明の方法の別の態様を図5に示す。この態様において、溶液中の標的酵素の酵素活性は、溶液中の基質の存在下で多糖により促進される。特定の局面において、標的酵素カクテルの調製(プロセスA)は、多糖と標的酵素を合わせる工程(工程1)および使用するまでカクテルを維持する工程(工程2)を含む。プロセスCにおいて、基質組成物を調製して(工程7)、使用するまで維持する(工程8)。標的酵素カクテルおよび基質組成物を合わせて、標的酵素、多糖、および基質を含む第3の組成物を調製する(プロセスB、工程3)。第3の組成物をインキュベートして(工程4)(いくつかの態様において、攪拌しながら、泡立たせながら、または緩やかに振動させながら)、標的酵素により基質を修飾させる。特に限定されないが、例えば、約1〜240時間、1〜40時間、40〜100時間、5〜35時間、10〜30時間、30〜60時間、15〜30時間、または19〜25時間、第3の組成物をインキュベートしてもよい。あるいは、特に限定されないが、例えば、約1〜48時間、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、1〜3時間、または1時間未満、標的酵素カクテルをインキュベートしてもよい。所望のレベルの修飾が達成されると、標的酵素と修飾基質を分離する(工程5)。任意に、修飾の程度は、例えば、反応混合物のアリコートの除去、および適切な分析方法または酵素アッセイ(特に限定されないが、例えばFACE、アントラニル酸標識HPLC、HPLC、ELISAまたはSDS-PAGE)を使用した修飾状態の探査により、プロセス中にモニターし得る。
【0057】
本発明の方法の別の態様を図6に示す。この態様において、カラムに詰められた樹脂などの固相支持体に固定化された標的酵素の活性は、溶液中の基質の存在下で多糖により促進される。標的酵素カクテルの調製(プロセスA)は、多糖と標的酵素を合わせて「カクテル」を調製する工程(工程1)、および使用するまでカクテルを維持する工程(工程2)を含む。基質を含む組成物を調製して(プロセスC、工程9)使用するまで維持する(工程10)。任意に、適切な樹脂(例えば、(1つ以上の)標的酵素を保持し得る樹脂)を詰めたカラムを平衡化する(プロセスB、工程3)。標的酵素カクテルをカラムに流す(工程4)その後、基質組成物をカラムに添加して(工程5)、任意にカラム中に再循環させ(工程6)、標的酵素により基質を修飾させる。特に限定されないが、例えば、約1〜240時間、1〜40時間、5〜35時間、10〜30時間、15〜30時間、または19〜25時間、基質組成物をカラム中に再循環させてもよい。あるいは、酵素反応の速度に依存して、特に限定されないが、例えば、約1〜48時間、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、および1〜3時間、基質をカラム中に再循環させてもよい。あるいは、約1時間未満、基質をカラム中に再循環させてもよい。所望のレベルの修飾が達成されると、修飾基質を回収する(工程7)。また、任意に、標的酵素を回収してもよい(工程8)。この態様の他のバリエーションも本発明の範囲に包含される。例えば、図6に示される態様からプロセスAを取り除いてもよく、基質をカラムに添加する前、後、またはそれと同時に、多糖を直接カラムに添加してもよい。他の態様において、固相支持体または樹脂はカラムの形態ではなく、スラリー、バッチまたはその他の形態である。
【0058】
本発明の方法において、標的酵素、多糖、および任意に基質を合わせる順序は重要なものではない。そのため、本発明のさらなる態様において、標的酵素、多糖、および基質組成物を一緒に添加してもよく、標的酵素を添加する前に多糖を基質組成物に添加してもよい。
【0059】
従って、本明細書に記載される方法の利点の1つは、活性が促進されない場合に必要な量と比較して、少ない量の標的酵素の使用が可能であるということである。
【0060】
本発明はさらに、(例えば液体環境下で)標的酵素の酵素活性を促進する方法を提供し、該方法は
(a) 標的酵素と非天然多糖および任意に標的酵素の基質を合わせる工程;ならびに
(b) 工程(a)において調製された組み合わせを、凍結することなく:(i) 多糖非存在下での標的酵素活性などの適切な対照と比較して(非天然多糖と合わされていない標的酵素の活性と比較して)、標的酵素活性を促進するのに充分な時間;および/または(ii) 多糖非存在下で標的酵素活性の実質的な消失に充分な時間維持する工程を含む。本明細書に示されるように、酵素活性および酵素反応は、標準的な方法により測定可能である(例えば、Eisenthal et al., Enzyme Assays: A Practical Approach, Oxford University Press: New York, 2002および実施例の説明を参照)。
【0061】
本発明の方法はさらに:
(c) 標的酵素により基質を修飾して、修飾基質を生成する工程;および
(d) 修飾基質を回収する工程を含む。
【0062】
本発明はまた、本明細書に記載された方法により産生される、修飾基質または標的酵素を含む組成物に関する。
【0063】
該組成物は、工程(b)において、少なくとも約1、2、3、4、5、6、10、15、20、22、24もしくは48時間、または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、15、20、30、40、50もしくは60日間、かつ90日未満維持され得る。例えば、組み合わせは、約1〜40時間、5〜35時間、10〜30時間、15〜30時間、または19〜25時間維持されてもよい。いくつかの局面において、組み合わせは、約1〜90日、1〜45日、46〜90日、2〜60日、2〜30日、2〜15日、または2〜7日維持されてもよい。
【0064】
上述のように、本明細書の方法の標的酵素は、任意の酵素、例えば、特に限定されないが表1に挙げられるものを含むオリゴ糖/多糖酵素、特に限定されないが表2に挙げられるものを含むタンパク質酵素、もしくは特に限定されないが表3に挙げられるものを含むポリヌクレオチド酵素、特に限定されないが表4に挙げられるものを含むリパーゼ、リソソームヒドロラーゼ、または小分子酵素であり得る。
【0065】
当業者が認識するように、特定の標的酵素について同じ性質の基質が当該技術分野に周知である。一般的に、限定されることなく、基質は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、脂質、オリゴヌクレオチドまたは小分子であり得る。例えば、いくつかの好ましい態様において、基質は治療用タンパク質である。例えば、いくつかの態様において、基質は、特に限定されることはないが表4に挙げられるものを含むERT酵素であり得る。1つの好ましい態様において、(1)標的酵素はシアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼであり;(2)デンプンはHESであり;(3)基質はβ-グルコセレブロシダーゼである。
【0066】
本発明はさらに、オリゴ糖を修飾する酵素の酵素活性を促進する方法を提供する。例えば、一態様において、該方法は、β-グルコセレブロシダーゼを修飾する1つ以上の酵素(例えば、オリゴ糖修飾酵素)と約3%〜約7%のHESを合わせて、組み合わせを生成する工程を含む。適切な対照と比較した場合(例えば、約3%〜約7%のHESと合わされない1つ以上のオリゴ糖修飾酵素と比較して)、1つ以上の酵素の活性が促進(向上)される条件下で組み合わせを維持する。かかるオリゴ糖の修飾の程度は、アントラニル酸標識HPLC法または蛍光標識糖質電気泳動法(FACE)などの標準的な方法により測定可能である(例えば、Eisenthal et al., Enzyme Assays: A Practical Approach, Oxford University Press: New York, 2002 および実施例の説明を参照)。
【0067】
具体的な態様において、該方法は:
(a) β-グルコセレブロシダーゼと1つ以上のオリゴ糖修飾酵素および約3%〜約7%のHESを合わせて組み合わせを生成する工程;および
(b) オリゴ糖/多糖酵素がHESの存在下でβ-グルコセレブロシダーゼを修飾する条件下で組み合わせを維持して、修飾β-グルコセレブロシダーゼを生成する工程を含む。該方法はさらに修飾β-グルコセレブロシダーゼを回収する工程を含み得る。
【0068】
いくつかの態様において、本発明は、標的酵素および/または基質の製造時に、特に限定されないがオリゴ糖/多糖酵素またはリソソームヒドロラーゼを含む標的酵素の酵素活性を促進する方法を提供する。
【0069】
本発明はさらに、標的酵素および/または基質の1つ以上の精製工程時に、標的酵素の酵素活性を促進する方法を提供する。当該技術分野には多くの精製工程が知られている(例えば、Scopes Protein Purification: Principles and Practice, 第3版、Springer-Verlag: New York, 1994;Abelson et al., Guide to Protein Purification, Academic Press: New York, 1990;Roe Protein Purification Techniques: A Practical Approach, 第2版、Oxford University Press: New York, 2001 を参照)。純度は、特に限定されないが、SDS-PAGE、キャピラリー電気泳動またはHPLCを含む任意の適切な方法により評価し得る。
【0070】
特定の態様において、本発明はβ-グルコセレブロシダーゼを修飾する1つ以上の酵素(例えば、オリゴ糖/多糖酵素)の酵素活性を促進する方法に関する。例えば、本明細書に記載される方法を使用して、(例えばリコンビナント細胞由来の)β-グルコセレブロシダーゼの精製の間に、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよび/またはβ-ヘキソサミニダーゼの酵素活性を促進することが可能である。この態様において、該方法は、β-グルコセレブロシダーゼ;シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるオリゴ糖/多糖酵素;ならびに約3%〜約7%のHESを合わせ、組み合わせを生成する工程を含む。(例えば、適切な対照と比較して)シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよび/またはヘキソサミニダーゼの酵素活性が促進され、該酵素がHES存在下でβ-グルコセレブロシダーゼを修飾する条件下でこの組み合わせを維持する。それにより修飾β-グルコセレブロシダーゼが生成され、該方法はさらに修飾β-グルコセレブロシダーゼを回収する工程を含み得る。
【0071】
本明細書に記載される方法を使用して、基質に対して作用し得るように標的酵素を安定化することができ、該方法は、基質、基質をリモデリングする標的酵素および約0.1%〜約55%w/vの非天然多糖を合わせて組み合わせを生成する工程を含む。非天然多糖の存在下で標的酵素による基質の酵素修飾が生じる条件下で該組み合わせを維持する。特定の態様において、本発明は、基質、酵素および約0.1%〜約15%w/vの非天然多糖を合わせることにより、組み合わせを生成する工程を含む、オリゴ糖/多糖酵素(例えば、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよび/またはβ-ヘキソサミニダーゼ)により基質のオリゴ糖(例えば、β-グルコセレブロシダーゼ)を酵素的に修飾する方法を提供する。非天然多糖の存在下で酵素により基質のリモデリングが生じる条件下で、組み合わせを維持する。
【0072】
さらなる組成物
本発明はまた、(a)オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素、リパーゼ、キナーゼおよびリソソームヒドロラーゼからなる群より選択される標的酵素、ならびに(b)非天然多糖を含む組成物を提供し、該組成物は約0.01%〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%の多糖を含む。いくつかの態様において、標的酵素はそれ自体治療用タンパク質である。
【0073】
本発明はさらに、(a)精製された標的酵素、(b)非天然多糖、および(c)該酵素の基質を含む組成物を提供し、該組成物は約0.01%〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01%〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vの多糖を含む。
【0074】
本発明はさらに、(a)1つ以上のオリゴ糖/多糖酵素および(b)約0.01%〜 55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01%〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vのHESを含む組成物を提供する。HESの存在下でオリゴ糖/多糖酵素を維持し、試料を回収して適切な基質に対する酵素活性を測定することにより、オリゴ糖/多糖酵素の活性を経時的に測定する。別の態様において、本発明は、(a)1つ以上のオリゴ糖/多糖酵素、(b)約0.01%〜55%w/v、約0.1%〜50%w/v、約1%〜50%w/v、約5%〜40%w/v、約10%〜40%w/v、約15%〜35%w/v、約20%〜30%w/v、約0.01%〜約15%w/v、約0.1%〜15%w/v、約1%〜10%w/v、約5%〜15%w/v、約3%〜7%w/v、または約4%〜6%w/vのHES、および(c)該酵素の基質を含む組成物を提供する。
【0075】
さらなる代表的、非限定的な組み合わせを表5に示す。
【0076】






【0077】
本発明はさらに、標的酵素および非天然多糖を含む医薬組成物を提供し、該組成物は約0.01%〜約55%w/vの多糖を含む。別の態様において、医薬組成物は、それ自体がかかる方法およびこれを使用した方法に従って生成されるリソソームヒドロラーゼなどの酵素であり得る基質を含む。代表的な態様において、本発明は、本発明の方法によって生成される、例えばβ-グルコセレブロシダーゼなどのリソソームヒドロラーゼを含む医薬組成物を提供する。許容され得る医薬製剤および賦形剤は公知である(例えば参照により本明細書に援用される、2005 Physicians' Desk Reference(登録商標), Thomson Healthcare: Montvale, NJ, 2004;Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版、Gennado et al., Eds. Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2000;Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第5版、Rowe, R., et al., 2005;Kibbe, A.H. (編), Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版、Washington, D. C, American Pharmaceutical Association;M. F. Powell, et al., PDA Journal of Pharm. Sci. Tech., 52:238-311 (1998);S. Neema, et al., Encyclopedia of Pharmaceutical Technology;J. Swarbick and J. C. Boylan eds., M. Dekker (2002) を参照)。
【0078】
本発明の医薬組成物は、任意に、1つ以上の薬学的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤、充填剤、および/または安定化剤(例えば、ラクトース、セルロース、デキストロース)を含み、これらは医薬組成物の他の成分と適合性であり該組成物または該組成物のレシピエントに対して有害ではないという意味において「許容され得る」。医薬組成物は、単位容量形態中に都合よく存在することが可能であり、当業者に公知の任意の適切な方法により調製することができる。一般的に、標的酵素、非天然多糖および/または基質と、担体、希釈剤、賦形剤、充填剤および/または安定化剤を組み合わせ、次いで、必要に応じて産物をその単位容量に分割して医薬組成物を調製する。
【0079】
医薬組成物は、例えばサシェ、スラリー、トローチ、エリキシル、懸濁液、液体または錠剤として調製することができる。特定の態様において、医薬組成物は注射用に調製される。例えば、医薬組成物は、液体注射(バイアル、前充填シリンジ)、凍結乾燥注射(バイアル、二重チャンバーシリンジ)、吸入投与(微粒子、噴霧状)、徐放性経口および注射製剤、点眼液および/または鼻腔投与用(液体)に調製される。一態様において、医薬組成物は、標的酵素および非天然多糖を液体担体(例えば、水)中に含む。医薬組成物は、任意に薬学的に許容され得る保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール)を含み得る。特定の態様において、医薬組成物は、非天然多糖を含む液体中に可溶化されたかまたは再度可溶化された(凍結乾燥産物の再可溶化など)標的酵素を含む。
【0080】
本発明はさらに、治療の必要のある被検体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に本発明の医薬組成物を投与する工程を含む、表4に挙げられるLSD(例えば、ゴーシェ病)などのリソソーム貯蔵障害の治療方法を提供する。投与は、任意の特定の送達系に限定されることなく、限定されることなく静脈内、非経口(皮下、脊髄内、動脈内、筋内または腹腔内注射を含む)、経皮、または経口(例えば、カプセル、懸濁液、または錠剤および徐放性送達手段およびデバイス)を含む。個体への投与は、単一投与または繰り返し投与および種々の生理学的に許容され得る塩形態の任意のもの、および/または薬学的に許容され得る単体および/または(本明細書に記載される)医薬組成物の一部としての添加剤中で生じ得る。
【0081】
本明細書における組成物は、症状の重症度および疾患の進行に応じて、およそ1μg/kg〜80mg/kgの活性成分の用量で投与され得る。あるいは、患者の体重1kgあたりおよそ0.01単位(U/kg)〜1000U/kgの用量が投与される。本発明の組成物を投与するために、当該技術分野で公知の任意の投与手段が使用され得る。最も一般的には、タンパク質性化合物は、外来患者の場合、毎日、毎週、隔週、毎月または隔月投与で投与される。ある種の組成物は、数回のみ、または1回のみ投与され得る。化合物の適切な治療有効用量は、およそ約1μg/kg〜80mg/kg、約1μg/kg〜25mg/kg約1μg/kg〜10mg/kg、約1μg/kg〜1mg/kg、約10μg/kg〜1mg/kg、約10μg/kg〜100μg/kg、約100μg〜1mg/kg、または約500μg/kg〜15mg/kgである。あるいは、酵素の適切な治療有効用量は、およそ約0.1U/kg〜200U/kg、約5U/kg〜300U/kg、約10U/kg〜100U/kg、約100U/kg〜500U/kg、約5U/kg〜50U/kg、約500U/kg〜2000U/kg、または約1000U/kg〜2500U/kgである。さらに、特定の投薬量は、Physicians' Desk Reference(登録商標)に示されている。
【0082】
例えば、一態様において、本発明の方法によって作製されるβ-グルコセレブロシダーゼは、静脈内(IV)注入によって被検体に投与され得る。例えば、初期投薬計画は、疾患の重症度に基づいて医師によって調整され得るが、1週あたり約1U/kg〜5U/kg体重の単回用量もしくは反復用量またはおよそ約30〜100U/kg体重の隔週用量を含み得、ここで、GCRの単位(U)は、37℃で1分あたり1μmolのp-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシドの加水分解を触媒するGCRの量と規定される。IV注入は、一般的に1〜2時間にわたるものである。
【0083】
例えば、別の態様において、本発明の方法によって作製されるα-ガラクトシダーゼは、静脈内(IV)注入によって被検体に投与され得る。例えば、初期投薬計画、は、疾患の重症度に基づいて医師によって調整され得るが、1週あたり約0.3〜3.0mg/kgの単回用量もしくは反復用量を含み得る。IV注入は、一般的に1〜2時間にわたるものである。α-ガラクトシダーゼに関連して、単位(U)は、37℃で1分あたり1μmolのp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドの加水分解を触媒する酵素の量と規定される。
【0084】
また別の態様において、本発明の方法によって作製されるα-グルコシダーゼは、静脈内(IV)注入によって被検体に投与され得る。例えば、初期投薬計画は、疾患の重症度に基づいて医師によって調整され得るが、隔月送達で1週あたり約20mg/kg〜約40mg/kgの単回用量もしくは反復用量を含み得る。IV注入は、一般的に4〜7時間にわたるものである。α-グルコシダーゼに関連して、単位(U)は、37℃で1分あたり1μmolのp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドの加水分解を触媒する酵素の量と規定される。
【0085】
標的酵素の酵素活性を評価するためのアッセイ
標的酵素の酵素活性は、当業者によって決定される適切なアッセイによって評価され得る(例えば、Eisenthal et al., Enzyme Assays:A Practical Approach, Oxford University Press:New York, 2002;Freifelder, D., Physical Biochemistry;Applications to Biochemistry and Molecular Biology、第2版、W. H. Freeman & Co., New York, 1982および実施例の記載を参照のこと)。
【0086】
例えば、基質の修飾状態または標的酵素を含む酵素反応の程度または標的酵素の活性は、当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、限定されないが、電気泳動、クロマトグラフィー、免疫学的方法、流体力学的方法、分光測光法または他の方法)によって測定され得る。例えば、Freifelder, D., Physical Biochemistry:Applications to Biochemistry and Molecular Biology、第2版、W. H. Freeman & Co., New York, 1982を参照のこと;また、Eisenthal et al., Enzyme Assays:A Practical Approach, Oxford University Press:New York, 2002を参照のこと。他の態様において、修飾の程度は、例えば、反応混合物をサンプリングし、適切な分析方法(例えば、限定されないが、FACE、HPLCもしくはSDS-PAGE、または上記のアッセイ)を用いて基質の修飾状態を調べることにより、プロセス中またはプロセス後に測定され得る。また、特定の標的酵素と関連して使用すべき適切なアッセイの選択は、当業者によって簡単な通常の実験手法により決定され得る。
【実施例】
【0087】
一般情報:
以下の実施例では、特に記載のない限り、B. Braunのヒドロキシエチルデンプン(HES)を使用した。B. BraunのHESは、450〜700kDaの範囲の表示平均分子量(AMW)および0.70〜0.80の(ヒドロキシエチル)モル置換比(MS)を有する。HESの2つのさらなる供給元(AjinomotoおよびFresenius Kabiから入手)の標的酵素活性を促進する比較可能性を実施例11に示す。
【0088】
いくつかのロットの標的酵素を実施例1〜9で使用する。3つの標的酵素(シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼ)の各ストック溶液の活性を下記のようにして測定した。β-グルコセレブロシダーゼ(GCR)オリゴ糖/多糖反応のために添加された3つの各標的酵素の単位(U)を該測定から計算した。これらの実施例において、GCRは、オリゴ糖/多糖酵素(すなわち、標的酵素):シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼの酵素基質としての機能を果たす。
【0089】
Faceアッセイ
蛍光標識糖質電気泳動法(fluorophore-assisted carbohydrate electrophoresis)(FACE)アッセイ(例えば、Jackson、Biochem. Soc. Trans. 21:121-5(1993);Hu, J. Chromatogr. A 705:89-103(1995);Friedman et al., Anal. Biochem. 228:221-225(1995);Starr et al., J. Chromatogr. A 720:295-321(1996)を参照のこと)は、オリゴ糖を特徴付けおよび測定するための標準アッセイである。また、これは、単糖を特徴付けするためにも使用され得る(Gao et al., Glycobiology 13:1G-3G (2003))。
【0090】
FACEアッセイは、標的酵素(1つまたは複数)の基質(例えば、限定されないが、タンパク質、糖タンパク質またはオリゴ糖)の修飾の程度を測定することにより、オリゴ糖/多糖酵素(本明細書の一部の実施例の標的酵素など)の酵素活性をモニタリングする好ましい方法である。FACEアッセイを使用した場合、FACEの数が多いほど、修飾の程度が高く、標的酵素(1つまたは複数)の活性の程度が高いことを示す。FACEアッセイは当該技術分野で公知である。
【0091】
簡単に、アッセイされるオリゴ糖が糖タンパク質由来である場合、まず、オリゴ糖をタンパク質から切断する(例えば、N-グリカナーゼ処理によりインタクトなN-結合オリゴ糖を放出させる、O-グリカナーゼ処理によりインタクトなO-結合オリゴ糖を放出させる、またはエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼH処理によりインタクトな高マンノース型N-結合オリゴ糖を放出させる)(Turner et al. Glycosylation and Glycosylphosphatidylinositol Membrane Anchors. In Regulatory Protein Modification, Hemmings編、Humana Press:Totawa, NJ, 1997)。
【0092】
次に、ナトリウムシアノボロヒドリドの存在下、オリゴ糖の還元性末端によるフルオロフォアの第1級アミンの還元的アミノ化によって、インタクトなオリゴ糖鎖を、8-アミノ-ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸(ANTS)二ナトリウム、2-アミノアクリドン(AMAC)、7-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸(ANDA)カリウムおよび4-アミノ-ナフタレンスルホン酸(ANSA)ナトリウムなどのフルオロフォアで標識する。フルオロフォアは、負に帯電したものであり得る(例えば、ANTS、ANDA、ANSAを使用する非限定的な例の場合のような硫酸化により)。
【0093】
フルオロフォア標識オリゴ糖は、次いで、高パーセンテージポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離される。電場内での移動に必要な電荷は、オリゴ糖の固有の化学構造(例えば、シアル酸やリン酸化もしくは硫酸化単糖を含むオリゴ糖の場合ように)によって、またはフルオロフォアによって供給される。
【0094】
次に、長波長UV光ボックスを用いて得られたゲルを画像化し、種々のバンドを同定し、その蛍光を定量する。オリゴ糖は、この方法によってピコモル範囲の低希釈濃度で定量され得る(Starr et al., J. Chromatogr. A 720:295-321(1996)。
【0095】
本明細書の実施例では、標的酵素がシアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼであった場合、GCR基質中の修飾オリゴ糖種のパーセンテージを測定するためにFACEアッセイを使用した。具体的には、GCRをN-グリカナーゼ(40μgのGCRあたり、およそ8UのN-グリカナーゼ)で処理して、インタクトなN-結合オリゴ糖鎖を放出させた。次いで、放出されたオリゴ糖を、フルオロフォア:ANTS(8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸で標識し、製造業者の使用説明書のとおりにオリゴ糖プロファイリングゲル(Glyko(登録商標)/Prozyme(登録商標)、San Leandro, CA)上で分離した。デキストラン参照ラダー標準(Glyko(登録商標)/Prozyme(登録商標)、San Leandro, CA)もまた、参照オリゴ糖、GlcNAc2(+Fuc)Man3およびGlcNAc2(-Fuc)Man3、Glyko(登録商標)/Prozyme(登録商標)、San Leandro, CA)とともにゲル上を泳動させた。次いで、蛍光画像形成ソフトウェアを有するSE2000画像形成システム(Glyko(登録商標)/Prozyme(登録商標)、San Leandro, CA)を使用し、蛍光に関してゲルをスキャンすることによりゲル上のバンドを定量した。
【0096】
所定のレーンにおいてGlcNac2Man3以下の移動度を有するバンドの総強度に対する2つのコア構造GlcNAc2(Fuc)Man3およびGlcNAc2Man3(コア構造)を示すバンドの蛍光強度の比率(%)により、修飾GCRのパーセンテージを得た。GCRは、3つの標的酵素、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼに対して基質の機能を果たすため、FACEの結果は、GCRに対する標的酵素の活性に相関する。GCRについて、FACE値は、約0〜約100%、約3%〜約90%および約5%〜約85%の範囲であり得る。
【0097】
標的酵素活性の測定および標的酵素の単位/mLの測定
標的酵素の酵素活性は、当業者によって決定される適切なアッセイによって評価され得る(例えば、Eisenthal et al., Enzyme Assays:A Practical Approach, Oxford University Press:New York, 2002および実施例の記載を参照のこと)。
【0098】
以下に示す実施例で用いた3つの標的酵素の酵素活性を、以下に6つの節で記載する。
【0099】
β-グルコセレブロシダーゼ (GCR)活性アッセイ:
p-ニトロフェノール(pNP)への合成基質p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド(pNP-βGlc)(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)の加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のβ-グルコセレブロシダーゼ(β-D-グルコシダーゼ)活性をアッセイした。これらのアッセイでは、10mMのpNP-βGlc 80μlを20μlのβ-グルコシダーゼ試料に添加し、試料を37℃で15分間インキュベートした。反応を800μlの0.1Mのグリシン、pH10.5でクエンチした後、試料の400nmにおける吸光度を測定した。β-グルコシダーゼ試料の活性を、以下の等式:


(式中、A400は、試料の400nmにおける吸光度であり、εは、400nmにおけるpNPのモル吸光係数であり、時間は分単位で測定され、光パス長は1cmであり、試料容量はmL単位で測定される)
に従って計算した。
【0100】
α-グルコシダーゼ活性アッセイ:
p-ニトロフェノール(pNP)への合成基質p-ニトロフェニル-α-D-グルコピラノシド(pNP-αGlc)(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)の加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のα-グルコシダーゼ(α-D-グルコシダーゼ)活性をアッセイした。これらのアッセイでは、40mMのpNP-αGlc 225μlを25μlのα-グルコシダーゼ試料に添加し、試料を37℃で15分間インキュベートした。反応を0.25mlの0.3Mのグリシン、pH10.6でクエンチした後、試料の400nmにおける吸光度を測定した。α-グルコシダーゼ試料の活性を、以下の等式:


(式中、A400は、試料の400nmにおける吸光度であり、εは、400nmにおけるpNPのモル吸光係数であり、時間は分単位で測定され、光パス長は1cmであり、試料容量はmL単位で測定される)
に従って計算した。
【0101】
α-ガラクトシダーゼ活性アッセイ:
p-ニトロフェノール(pNP)への合成基質p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(pNP-αGal)(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)の加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のα-ガラクトシダーゼ(α-D-ガラクトシダーゼ)活性をアッセイした。これらのアッセイでは、30mMのpNP-αGal 75μlを175μlのα-ガラクトシダーゼ試料に添加し、試料を37℃で10分間インキュベートした。反応を0.25mlの0.5Mのホウ酸ナトリウム、pH9.0でクエンチした後、試料の405nmにおける吸光度を測定した。α-ガラクトシダーゼ試料の活性を、以下の等式:


(式中、ΔODは、試料(または標準(Std))の405nmにおける吸光度とブランクとの差であり、時間は分単位で測定され、試料容量はmL単位で測定される)
に従って計算した。
【0102】
シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)活性アッセイ:
4-メチルウンベリフェロン(4MU)への合成基質4-メチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸(4MU-NANA)(Sigma Aldrich Company、St. Louis、MO)のシアリダーゼ触媒性加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)活性を測定した。これらのアッセイでは、5〜10uMの4MU-NANA 100μlを10μlの精製シアリダーゼに添加した。15分後、5mlの0.1Mのグリシン、pH10.5を添加することにより反応をクエンチし、蛍光計(励起360nm、発光450nm)により1.5mlの試料を分析した。4MU溶液を用いて作成した標準曲線に結果を外挿し、インキュベーション中に放出された4MUの量を測定した。活性を、以下の等式:


(式中、放出された4MUの量は、nmol単位で測定され、試料容量は、ミリリットル(mL)単位で測定され、時間は分単位で測定される)
に従って計算した。したがって、例えば、上記の計算を使用し、酵素ストック溶液が1000単位/mLの活性を有すると測定され、酵素反応において2000単位の酵素を使用することが所望される場合、かかる反応では、2mLのかかるストック溶液が必要とされ得る。
【0103】
β-ガラクトシダーゼ活性アッセイ:
o-ニトロフェノール(oNP)への合成基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(oNPGal)(Sigma Aidrich, St. Louis, MO)の加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のβ-ガラクトシダーゼ(β-D-ガラクトシダーゼ)活性をアッセイした。これらのアッセイでは、15mMのoNPGal 400μlを100μlのβ-ガラクトシダーゼ試料に添加し、試料を37℃で15分間インキュベートした。次いで、2.5mlの0.1Mのグリシン、pH10.5の添加によって反応をクエンチし、試料の430nmにおける吸光度を測定した。β-ガラクトシダーゼ試料の活性を、以下の等式:


(式中、A430は、試料の430nmにおける吸光度であり、εは、430nmにおけるoNPのモル吸光係数であり、時間は分単位で測定され、光パス長は1cmであり、試料容量はmL単位で測定される)
に従って計算した。
【0104】
β-ヘキソサミニダーゼ活性アッセイ:
p-ニトロフェノール(pNP)への合成基質p-ニトロフェニル-β-D-N-アセチルグルコサミニド(pNPGlcNAc)(Sigma Chemical, St Louis, MO)のβ-ヘキソサミニダーゼ触媒性加水分解の速度を測定することにより、ストック溶液のβ-ヘキソサミニダーゼ活性(β-N-アセチルグルコサミニダーゼ)をアッセイした。これらのアッセイでは、4mMのpNPGlcNAc 400μlを100μlのβ-ヘキソサミニダーゼ試料に添加した。試料を37℃で15分間インキュベートした。反応を2.5mlの0.1Mのグリシン、pH10.5でクエンチした後、試料の400nmにおける吸光度を測定した。β-ヘキソサミニダーゼ試料の活性を、以下の等式:


(式中、A400は、試料の400nmにおける吸光度であり、εは、400nmにおけるpNPのモル吸光係数であり、時間は分単位で測定され、光パス長は1cmであり、試料容量は、mL単位で測定される)
に従って計算した。
【0105】
本明細書で使用されるように、「sv」は、使用された系の容積を意味する(例えば、カラムの場合、svは、樹脂床の容積+関連するカラムパイピング内に含まれる容積をいう;バッチの場合は、系の容積は、バッチの総容積をいう)。「U/L sv」は、系の容積1リットルあたりの酵素の単位をいう。「%w/L sv」は、系の容積1リットルあたりの重量パーセントをいう。
【0106】
実施例1:GCR安定性に対するHESの効果
HESなどの安定剤の非存在下(すなわち、ストレス酵素)、標的酵素酵素活性の損失を促進することが意図された条件下で、標的酵素β-グルコセレブロシダーゼに対するHESの効果を評価するための試験を行なった。具体的には、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.5中4mg/mlの濃度のGCRを、適切な容量の50%HESストック溶液を添加することにより、0%、10%または40%HESの溶液に調製した。40℃で、表示した時間、調製物をインキュベートし、次いで、試料を取り出し、-80℃に凍結した。β-グルコセレブロシダーゼ活性の分析のために試料を解凍した。表6は、経時的な酵素活性を示す。図7は、各時点における活性を初期活性(TO;0時間)のパーセントで示す。
【0107】

【0108】
表6のデータは、0%および10%HESを含む標的酵素GCRは、40℃で6時間のストレス条件下で、その活性を95%より大きく失ったことを示す。対照的に、40%HESを含む試料は、同じストレス条件下の同じ時間内で初期活性を50%より大きく維持した。このデータは、標的酵素GCRが多糖HESの存在によって安定化されることを示す。
【0109】
実施例2 α-グルコシダーゼ安定性に対するHESの効果
標的酵素α-グルコシダーゼに対するHESの効果を評価するための試験を行なった。HESなどの安定剤の非存在下、標的酵素の酵素活性の損失を促進することが意図された条件において、精製α-グルコシダーゼを調製した。具体的には、酵素を50mMの酢酸ナトリウム、pH4.0に調製し、次いで、適切な容量の50%HESストック溶液を添加することにより、0%、10%および40%HESならびにα-グルコシダーゼを含有する溶液を調製した。溶液を40℃でインキュベートし、表示した時点で試料を取り出し、次いで-80℃に凍結した。試料を解凍し、α-グルコシダーゼ活性について分析した。表7は、0〜20日の期間にわたって種々の試料中で測定された活性を示す。図8は、各時点における活性を初期活性(T0;時間ゼロ)のパーセントで示す。
【0110】

【0111】
バッファーをpH4.0のバッファーに調製する前、標的酵素α-グルコシダーゼの出発溶液は、約16U/mlを有することが予測された。試料をpH4.0に調製するプロセスにおいて(約30分〜1時間)、対照試料0%HESは、その予測された初期α-グルコシダーゼ活性から約63%の減少を示した。10%および40%HESの試料は、この活性の損失を受けなかった。第4日までに、0%HES試料でわずか約10%の残留活性が示された。10%HES試料は、同じ時間中で、その活性の約55%を維持し、40%HES試料は、試験全体を通して(20日間)本質的に完全な活性を維持した。このデータは、α-グルコシダーゼは、HESの存在によって安定化されることを示す。
【0112】
実施例3:α-ガラクトシダーゼの安定性の促進に対するHESの効果
標的酵素α-ガラクトシダーゼを、0%、10%または40%HESを含有する50mMのリン酸ナトリウム、pH7.5バッファー中、同じタンパク質濃度で調製した。調製物を40℃で、表示した時間インキュベートし、次いで、試料を取り出し、-80℃に凍結した。試料を解凍し、α-ガラクトシダーゼ活性について分析した。表8は、経時的な酵素活性を示す。対照試料0%HESは、第3日には本質的に活性を示さなかったが、40%HES試料は、第3日にその初期活性の約35%を示し、第12日に約13%を示した。このデータは、β-ガラクトシダーゼは、HESの存在によって安定化されることを示す。
【0113】

【0114】
実施例4:酵素活性を促進する能力について試験した化合物
5つの化合物:(1)グリセロール、(2)プロピレングリコール、(3)ダイズタンパク質加水分解物、HY-SOYTM(Quest International, Chicago, IL)、(4)ヒドロキシエチルデンプン(「HES」)(特に記載のない限りB. Braun, Puerto Rico)および(5)Hmxlを、3つの標的酵素(シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼ)の酵素活性を促進するその能力について評価した。
【0115】
固体のHESを適切なpHのバッファーに溶解することにより、HESを20%(w/v)ストック溶液として調製した。この実施例では、100mMのクエン酸ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH5.7のバッファーを使用した。20%(w/w)ストック溶液を使用し、標的酵素カクテル中のHESの最終濃度を5%w/L svとした。以下の実施例において、3.5%のストック濃度のHaemaccel(Hmxl)ストック溶液(Aventis-Behring Gmdh, Marburg, GE)を、表示した量で使用した。グリセロールおよびプロピレングリコールを10%(w/v)まで添加し、乾燥粉末のHY-SOYTMを5%(w/v)まで、100mMのクエン酸ナトリウム(codium)、5mMの塩化カルシウム、pH5.7バッファーに添加した。
【0116】
シアリダーゼ(210U/L sv)、β-ガラクトシダーゼ(33U/L sv)、β-ヘキソサミニダーゼ(2500U/L sv)、およびHmxl(14 mL/L sv)またはHES(5%w/L sv)のいずれかを合わせることにより、3つの標的酵素を含む標的酵素カクテルを作製した。次いで、各標的酵素カクテルを以下のようにして別々に処理した。5mMの塩化カルシウムを含有する100mMのクエン酸ナトリウムバッファー、pH5.7で予め平衡化したPhenyl SepharoseTMカラムに(室温で)、カクテルを負荷し、次いで、GCR基質を70〜120U GCR/カラム樹脂mLで負荷した。GCRの酵素活性は、標準アッセイ(例えば、米国特許第6,451,600号を参照のこと)を用いて測定される。基質はカラムに結合した。次いで、標的酵素カクテルを室温でおよそ24時間カラム中に再循環させた。次いで、標的酵素カクテルをカラムから洗浄し、プロピレングリコールで基質を溶出させ、回収した。結果を表9に示す。
【0117】

【0118】
オリゴ糖/多糖の修飾の程度は、蛍光標識糖質電気泳動法(FACE)で測定したとき、添加剤の非存在(53.1;表9)と比べて、Hmxlまたはヒドロキシエチルデンプン(HES)いずれかの存在下で実質的に増加した(それぞれ、69.1および68.6;表9)。したがって、HmxlおよびHESはともに、この反応に使用した標的酵素の酵素活性を促進することができた。試験した他の3つの化合物はいずれも、標的酵素の促進を示さなかった(HY-SOYTMおよびプロピレングリコール)か、または標的酵素の促進の減衰を示した(グリセロール)。
【0119】
実施例5:HmxlおよびHESによる標的酵素活性の促進
以下の表10に示す6つの各実験において、同じ量の3つの標的酵素を使用した。
【0120】
シアリダーゼ(210U/L sv)、β-ガラクトシダーゼ(33U/L sv)、およびβ-ヘキソサミニダーゼ(2500U/L sv)の混合物を、室温で、非天然多糖なし、または
Hmxl(14ml/L sv)もしくはHES(5%w/sv)の存在下のいずれかで調べた。標的酵素カクテルを、5mMの塩化カルシウムを含有する100mMのクエン酸ナトリウムバッファー、pH5.7で予め平衡化したPhenyl SepharoseTMカラムに負荷し、次いで、基質を70〜120U GCR/カラム樹脂mLで負荷した。基質はカラムに結合された。次いで、標的酵素カクテルを室温でおよそ24時間カラム中に再循環させた。およそ24時間後、標的酵素カクテルをカラムから洗浄し、基質を溶出させ、回収し、FACE分析によってアッセイした。結果を表10に示す。
【0121】

【0122】
表10データは、HxmlおよびHESがともに、標的酵素の酵素活性を促進することができる、すなわち、標的酵素がオリゴ糖/多糖の修飾を引き起こす能力を増強することを示す。オリゴ糖/多糖の修飾は、HxmlまたはHESいずれかの非存在下では、実質的に低い(表10、実験番号1参照)。HESおよびHxmlはともに、標的酵素活性の有効な促進剤であるが、Hxmlは動物由来ペプチドであり、HESは非動物供給源(例えば、植物)由来の多糖である。したがって、本発明の多糖は、動物成分が望ましくない状況において、例えば、ヒトまたは獣医学的治療剤、食品または消耗品の作製または製造の際に標的酵素の活性を促進するのに特に有用である。
【0123】
実施例6:標的酵素活性のHES促進によって、同等の基質修飾を達成するのに必要とされる標的酵素の量が減少する
この実施例では、オリゴ糖/多糖の修飾に使用した標的酵素カクテルは、5%w/L sv HESを含んでいたか、HESを含まなかった。
【0124】
HES含有標的酵素カクテルでは、100mMのクエン酸ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH5.5中のシアリダーゼ(105U/L sv)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal、16.5U/L sv)、およびβ-ヘキソサミニダーゼ(β-hex、1250U/L sv)を、HESに添加した(5%w/L svの最終HES量)。
【0125】
非天然多糖の非存在下で調製された標的酵素カクテルでは、シアリダーゼ(168U/L sv)、β-ガラクトシダーゼ(52.8U/L sv)、およびβ-ヘキソサミニダーゼ(3000U/L sv)を、100mMのクエン酸ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH5.5中で合わせた。
【0126】
すべてのカクテルを使用まで2〜10℃で保持した。次いで、各標的酵素カクテルを以下のようにして別々に処理した。
【0127】
標的酵素カクテルを、5mMの塩化カルシウムを含有する100mMのクエン酸ナトリウムバッファー、pH5.5で平衡化したPhenyl SepharoseTM カラムに添加し、次いで、室温で基質(70〜120U GCR/樹脂mL)を負荷した。標的酵素カクテルをおよそ24時間カラム中に再循環させた。次いで、カラムを1カラム容量の平衡バッファーで、次いで、5カラム容量の20%プロピレングリコール含有バッファーで洗浄し、標的酵素カクテルを除去した。プロピレングリコールにより基質をカラムから除去した。7つの各試験反応物の得られたオリゴ糖成分をFACEアッセイによって評価し、表11に示す。
【0128】

【0129】
5%HESの存在下での3つの実験(実験番号5〜7)では、HESの非存在下で行なわれた実験(実験番号1〜4)と比較すると、オリゴ糖/多糖の修飾を達成するのに必要とされる3つの標的酵素の量は実質的に少なかった。HESの非存在下での4つの試験反応の平均FACE値は70.3+/-1.1であったが、HESの存在下での実験の平均FACE値は72.5+/-0.4であった、重要なことに、添加剤なしの標的酵素カクテルは、HES標的酵素カクテルと比較すると、1.6×(ここで、「×」は倍を示す)量のシアリダーゼ、3.2×量のβ-ガラクトシダーゼおよび2.4×量のβ-ヘキソサミニダーゼを含んだ。したがって、HESの非存在下では、該方法は、相当に多量の標的酵素が必要とされる。
【0130】
別の試験では(表12参照)、標的酵素カクテルを、5%w/L svのHESを含む、またはHESを含まないオリゴ糖/多糖の修飾反応で使用した。
【0131】
固体のHESを100mMのクエン酸ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH5.5に溶解することにより作製した20%(w/w)HESストック溶液を使用し、100mMのクエン酸ナトリウム、5mMの塩化カルシウム、pH5.5中において、表12に示す単位の酵素を含むカクテル中のHESの最終濃度を5%w/L svとした。
【0132】
非天然多糖の非存在下で調製された標的酵素カクテルでは、表12に示す単位(U/L sv)の酵素を含むようにカクテルを調製した。
【0133】
カクテルを使用まで2〜10℃で保持した。次いで、各標的酵素カクテルを以下のようにして別々に処理した。
【0134】
標的酵素カクテルを、5mMの塩化カルシウムを含有する100mMのクエン酸ナトリウムバッファー、pH5.5で平衡化したPhenyl SepharoseTMカラムに添加し、次いで、室温で基質(70〜120U GCR/樹脂mL)を負荷した。標的酵素カクテルをおよそ24時間カラム中に再循環させた。オリゴ糖修飾後、カラムを洗浄して標的酵素カクテルを除去した。プロピレングリコールを用いて基質をカラム溶出させた。5つの各試験反応の得られたオリゴ糖成分をFACEアッセイによって評価した。結果を表12に示す。
【0135】

【0136】
表12のデータは、HESを含む反応において、より少ない量の標的酵素で同等(または高い)FACE値が得られたことを示す。例えば、実験番号1と実験番号2を比較;また、例えば、実験番号3と実験番号4を比較。さらに、HESの存在下で、実験番号3(標的酵素促進剤の非存在下で実施)より7.9%高いFACE値であるFACE値85(実験番号5)を得るために、HESを含む実験番号5において必要とされたβ-ガラクトシダーゼは38%少なく、β-ヘキソサミニダーゼは33%少なく、シアリダーゼは25%までわずかに小幅に増加した。
【0137】
実施例7:HESは、種々の標的酵素濃度と適合性である。
この実施例で使用した条件は、すべての実験がHES 5%w/L svを含んだこと以外は、実施例6に記載のとおりにした。
【0138】

【0139】
表13のデータは、HES中の標的酵素の量が増加すると、オリゴ糖/多糖の修飾が増大することを示す。シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼの2.5×増加により、FACE値は、67.4(実験番号1)から85.0(実験番号5)まで17.6%増加した。したがって、HESは種々の酵素濃度と適合性である。
【0140】
実施例8:標的酵素促進に対するpHの効果
この実施例で使用した条件は、(標的酵素カクテル、平衡バッファーおよびカラム洗浄液の)pHを表14に指定したpHとし、HESの存在を表14に示したようにした以外は、実施例7に記載のとおりにした。
【0141】

【0142】
酵素による修飾反応のpHは、基質のオリゴ糖プロフィールに対して効果を有し得る。HESの非存在では、標的酵素の使用量を増加した場合であっても、pHが5.7から5.9に増大すると、同等のFACEは得られなかった(実験番号3と実験番号4;表14を参照)。HESの存在下では、pHが5.5から5.7に増大すると、両方のpHで同等のFACE値を得るのに、標的酵素レベルにおいてわずかに小幅な増大が必要とされた(実験番号2と実験番号1を比較)。さらに、標的酵素カクテルにHESを含めると、所定のpHで同等のFACEを得るのに必要とされる標的酵素の量は減少した(例えば、実験番号2と実験番号3を比較)。これは、HESなどの非天然多糖が、あるpH範囲にわたって使用される標的酵素の量の低減を可能にし、したがって、所望の活性を得るために標的酵素が使用され得るpH範囲が広くなることを示す。
【0143】
実施例9:HES濃度の増加により標的酵素促進が改善される
この実施例で使用した条件は、標的酵素カクテル、平衡バッファーおよびカラム洗浄液のpHをpH5.5とし、標的酵素カクテルが2%または5%いずれかのHES w/L svを含み、両方の実験で標的酵素量を互いに同一としたこと以外は、実施例8に記載のとおりにした。
【0144】


表15のデータは、HES濃度を2%から5%に増大させると標的酵素の促進が改善されることを示す。この実施例では、HESを2%から5%に増加すると、FACE値が7.7%増大した。
【0145】
さらに、データは、HESが2%濃度での標的酵素活性を促進することを示す。HESの非存在では、pH5.5において、同等のFACE値のために、79.2U/L svのβ-ガラクトシダーゼの標的酵素量(表15の実験番号1の2.4×量)、および3000U/L svのβ-ヘキソサミニダーゼ(表15の実験番号1の1.2×量)が必要とされた(76.9、実験番号177.3;標的酵素濃度以外は、表15で用いたのと同じ条件を使用)。
【0146】
実施例10. 種々の市販供給元のHES、ならびに種々のAMWおよびMSが、標的酵素活性を促進する
2つのさらなる市販供給元Ajinomoto (Raleigh、North Carolina、USA)、およびFresenius Kabi (Linz、Austria)のHESを、オリゴ糖/多糖の修飾反応における標的酵素活性の促進について、B. Braun製のHESと比較した。
【0147】
この実施例で使用した条件は、標的酵素カクテル、平衡バッファーおよびカラム洗浄液のpHをpH5.7とし、標的酵素カクテルがB Braun、Ajinomoto、またはFresenius KabiいずれかのHESを5%w/L svで含んだこと以外は、実施例10に記載のとおりにした。標的酵素量は、表16内の各実験で同一とした(210U/L svのシアリダーゼ、39.6U/L svのβ-ガラクトシダーゼおよび1500U/L svのβ-ヘキソサミニダーゼ)。
【0148】
AjinomotoのHESの3つの異なるロットおよびFresenius KabiのHESの3つの異なるロットを、B BraunのHESと比較した。AjinomotoのHESは、市販されており、平均分子量(AMW)が550〜760kDaおよびモル置換比(MS)が0.70〜0.80モルのものである。Fresenius KabiのHESは、市販されており、平均分子量が400〜500kDaおよびモル置換比が0.65〜0.75のものである。試験に使用したHESのロットの製造業者により示されたAMWおよびMSを表16に示す。
【0149】

【0150】
表16のデータは、B. Braun、Ajinomoto、およびFresenius Kabiから購入したHESを使用すると、標的酵素活性の同等の促進が見られたことを示す。したがって、同じ販売元のHESのロット間、および異なる販売元のHESのロット間でのHESのAMWおよびMSの若干のばらつきは、基質に対する標的酵素活性のHES促進に有意に影響しないことがわかった。
【0151】
実施例11:標的酵素活性のHES促進は、系の容積(sv)に非依存性である
この実施例で使用した条件は、B. BraunのHESのみを実験に使用したこと以外は、実施例10に記載のとおりにした。標的酵素量は、表17の各実験で同一:すなわち、210U/L svのシアリダーゼ、39.6U/L svのβ-ガラクトシダーゼおよび1500U/L svのβ-ヘキソサミニダーゼとした。表示した「倍率(Scale)」は、表17に示した各実験で使用した系の容積(フェニル樹脂およびパイピングに占められる容積を含む)間の比較を反映する。例えば、150O×の系の容積は、系の容積が1×系の容積(sv)より1500倍大きいことを意味する。
【0152】

【0153】
表17のデータは、標的酵素活性のHES促進が、系の容積倍率に非依存性であることを示す。この実施例では、標的酵素活性のHES促進が広範な系の容積において有効で同等である。したがって、本発明は、種々の工業的および商業的倍率の酵素プロセスに適用可能である。
【0154】
実施例12;バッファー中のα-ガラクトシダーゼの安定性に対するHESの効果
α-ガラクトシダーゼ安定性に対するHESの効果を評価するための予言的試験を行なう。0%、10%または40%いずれかのヒドロキシルエチルデンプンを含む、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0中約5.0mg/mlのα-ガラクトシダーゼを無菌的に適切な容器内に濾過し、25℃で12ヶ月まで保持する。滅菌試料を0、3、6、9および12ヶ月のときに取り出し、-80℃に凍結する。試料を分析のために解凍し、α-ガラクトシダーゼ活性アッセイによってアッセイする。表18は、各時点における活性を初期活性(T0)のパーセントで示す。
【0155】

【0156】
10%および40%のHESを含むα-ガラクトシダーゼ試料は、HESを含まないα-ガラクトシダーゼ試料に対して最低50%以上の大きな活性を保持する。したがって、α-ガラクトシダーゼは、HESの存在によって安定化される。
【0157】
実施例13:バッファーおよびマンニトール中のα-ガラクトシダーゼの安定性に対するHESの効果
α-ガラクトシダーゼ安定性に対するHESの効果を評価するための予言的試験を行なう。0%、10%または40%いずれかのHESを含む、50mMのリン酸ナトリウム、3%マンニトール(w/w)、pH7.0中、5.0mg/mlのα-ガラクトシダーゼを無菌的に適切な容器内に濾過し、25℃で12ヶ月まで保持する。滅菌試料を0、3、6、9および12ヶ月のときに取り出し、-80℃に凍結する。試料を分析のために解凍し、α-ガラクトシダーゼ活性アッセイによってアッセイする。表19は、各時点における活性を初期活性(T0)のパーセントで示す。
【0158】

【0159】
10%および40%ヒドロキシエチルデンプンを含むα-ガラクトシダーゼ試料は、HESを含まないα-ガラクトシダーゼ試料に対して最低50%以上の大きな活性を保持する。したがって、α-ガラクトシダーゼは、HESの存在によって安定化される。
【0160】
実施例14:凍結乾燥製品をHES含有水で再構成後のα-ガラクトシダーゼの安定性に対するHESの効果
0%、10%または40%いずれかのHESを含む水中、ならびにベンジルアルコールまたはフェノールなどの適当な保存剤の存在下および非存在下での再構成後の凍結乾燥α-ガラクトシダーゼの安定性を評価するための予言的試験を行なう。50mMのリン酸ナトリウム、3%マンニトール、pH7.0中、5.0mg/mlのα-ガラクトシダーゼを適切な容器(バイアル)内に凍結乾燥する。再構成バイアルを25℃で保持し、試料を0、5、10、20および30日のときに取り出し、pNPアッセイによってアッセイする。表20は、各時点における活性を初期活性(T0)のパーセントで示す。
【0161】

【0162】
10%および40%のHESを含むα-ガラクトシダーゼ試料は、HESを含まないα-ガラクトシダーゼ試料に対して最低50%以上の大きな活性を保持する。したがって、α-ガラクトシダーゼは、HESの存在によって安定化される。
【0163】
したがって、本明細書の実施例は、本発明の組成物および方法の広範な有用性を実証している。
【0164】
本発明の他の態様は、本明細書を考慮し、本明細書に開示された本発明を実施すると、当業者に自明である。本明細書および実施例は単なる例示とみなし、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲に示されていることが意図される。
【0165】
本開示において挙げたすべての刊行物および特許文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本明細書における任意の参考文献の参照は、かかる参考文献が本発明に対する先行技術であると容認するものでない。多糖の濃度はすべて、特に記載のない限り容量/重量で示す。
【0166】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素、およびリパーゼからなる群より選択される標的酵素、ならびに;
(b)非天然デンプン
を含む組成物であって、約0.01%〜約55%w/vの多糖を含み、標的酵素の活性が非天然多糖によって促進されている組成物。
【請求項2】
標的酵素が、ガラクトシルトランスフェラーゼ、GalNAcトランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミニルホスホトランスフェラーゼ、O-結合グリコシルトランスフェラーゼ、N-結合グリコシルトランスフェラーゼ、α-マンノシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ、N-アセチル-グルコサミン-1-ホスホジエステルα-N-アセチルグルコサミニダーゼ、N-グリカナーゼ(N-グリコシダーゼF)、O-グリカナーゼ(エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ)、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼH、シアレート-O-アセチルトランスフェラーゼ、シアレート-O-アセチルエステラーゼ、およびα-グルコシダーゼからなる群より選択されるオリゴ糖/多糖酵素である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
標的酵素が、プロテアーゼ、ミリストイラーゼ、デホルミラーゼ、N-末端メチオニン切断酵素、ホスホリラーゼ、アセチル化酵素、ジスルフィド結合形成酵素、パルミトイル化酵素、ヒドロキシル化酵素、カルボキシル化酵素、ニトロ化酵素、硫酸化酵素、ADP-リボシル化酵素、デアミナーゼ、N-結合グリコシラーゼ、O-結合グリコシラーゼ、グリコシル-ホスホイノシトール化酵素、ファルネシラーゼ、ゲラニルゲラニラーゼ、メチラーゼ、アミド化酵素、およびユビキチン化酵素からなる群より選択されるタンパク質酵素(1種類または複数種)である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
標的が、エクソリボヌクレアーゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エクソデオキシリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼII、およびリガーゼからなる群より選択されるポリヌクレオチド酵素である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
標的酵素が、α-ガラクトシダーゼA、酸セラミダーゼ、酸α-L-フコシダーゼ、酸β-グルコセレブロシダーゼ(GCR)、酸β-ガラクトシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、酸α-マンノシダーゼ、酸β-マンノシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、酸β-ガラクトシダーゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、酸α-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼB、ヘパランN-スルファターゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アセチル-CoA:α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルフェートスルファターゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、シアリダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼAからなる群より選択されるリソソームヒドロラーゼである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
非天然デンプンがヒドロキシアルキルデンプンである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ヒドロキシアルキルデンプンがHESである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
(a)オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素、およびリパーゼからなる群より選択される標的酵素、ならびに;
(b)非天然デンプン
を含む組成物であって、約1%〜約50%w/vの多糖を含む組成物。
【請求項9】
(a)オリゴ糖/多糖酵素、タンパク質酵素、ポリヌクレオチド酵素、およびリパーゼからなる群より選択される標的酵素、ならびに;
(b)非天然デンプン
を含む組成物であって、約10%〜約40%w/vの多糖を含む組成物。
【請求項10】
(a)治療タンパク質である標的酵素および;
(b)非天然デンプン
を含む医薬組成物であって、約0.01%〜約55%w/vの多糖を含む組成物。
【請求項11】
標的酵素の基質をさらに含む、請求項1〜10いずれか記載の組成物。
【請求項12】
基質が、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、および小分子からなる群より選択される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
基質が酵素である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
基質がリソソームヒドロラーゼである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
リソソームヒドロラーゼが酸β-グルコセレブロシダーゼ(GCR)である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
標的酵素が、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびその組合せからなる群より選択され、非天然多糖がHESであり、基質がβ-グルコセレブロシダーゼである、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
(a)オリゴ糖/多糖酵素;
(b)約1%〜約12%w/vのHES;および
(c)オリゴ糖/多糖酵素の基質
を含む組成物。
【請求項18】
オリゴ糖/多糖酵素が、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびその組合せからなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
約6のpHのクエン酸バッファーおよび塩化カルシウムをさらに含む、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
(a)標的酵素を約0.01%〜約55%w/vの非天然デンプンと合わせ、それにより配合物を作製する工程;および
(b)標的酵素の酵素活性を促進するのに充分な条件下に配合物を維持する工程
を含む、標的酵素の酵素活性を促進する方法。
【請求項21】
標的酵素が液体環境中にある、請求項20記載の方法。
【請求項22】
配合物が、ある時間凍結することなく維持される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
標的酵素がオリゴ糖/多糖酵素である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
修飾デンプンがヒドロキシアルキルデンプンである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ヒドロキシアルキルデンプンがHESである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
配合物が、約1℃〜約40℃の温度で維持される、請求項20記載の方法。
【請求項27】
標的酵素の基質を標的酵素および非天然多糖と合わせる工程をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項28】
基質が酵素である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
酵素がリソソームヒドロラーゼである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
リソソームヒドロラーゼがβ-グルコセレブロシダーゼである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
標的酵素が、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびその組合せからなる群より選択され、非天然多糖がHESであり、基質がβ-グルコセレブロシダーゼである、請求項20記載の方法。
【請求項32】
標的酵素に基質を修飾させ、それにより修飾基質を作製し、修飾基質を回収する工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
(a)シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼならびに約1%〜約12%w/vのHESを合わせ、それにより配合物を作製する工程;および
(b)シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-ヘキソサミニダーゼの酵素活性を促進するのに充分な条件下に配合物を維持する工程
を含む、シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼの酵素活性の促進方法。
【請求項34】
液体環境(miliieu)における多糖の濃度が約0.01%〜約55%w/vである、液体環境において標的酵素の活性を非低温で促進するための非天然多糖の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−538619(P2009−538619A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513112(P2009−513112)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/021092
【国際公開番号】WO2007/139553
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(591042816)ジェンザイム コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】