説明

酵素活性を測定するための方法

核酸分子の構造を第1の状態から第2の状態に変化させることが可能な基質の活性を測定するための方法であって、これは、標識された核酸分子及び/又は相補オリゴヌクレオチドの用途に基づく。標識は、化学発光分子及び対応する消光分子であり、この光学的特性は、核酸分子が第1又は第2の状態に存在するか否かに応じて異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝物質の変形を含む処理の活性や活性阻害を評価する手段に関するものである。上記手段は、標識された核酸やオリゴヌクレオチドの使用に基づくものであり、標識としては、標識された核酸分子やオリゴヌクレオチドが単鎖又は複鎖の核酸として存在するか否かに応じて光学特性が異なる化学発光分子が用いられる。さらに、上記手段は、創薬に用いられる。
【背景技術】
【0002】
デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)の分子の複製、組み換え、修復および他の修飾は、遺伝物質の構造を変化させ、すべての生物にとって基本的に重要である。このような修飾の例としては、酵素反応がある。酵素としては、リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素、ギラーゼがある。これらの酵素は、至る所に存在し、核酸代謝の点において必要となる。これらの酵素の活性を分析することは重要であるため、分析システムの改良が試みられている。特に、これには限定されないが、酵素を阻害する能力を有する新規化合物をスクリーニングする場合において、細菌やウイルスの酵素活性を観察したり、非細菌又は非ウイルスの特性を立証したりすることは重要である。また、核酸に対して、この構造的特徴を変化させるように作用する非タンパク質分子も重要である。この分子としては、エンジイン、リボザイム、アプタマーがある。
【0003】
酵素(例えば、図1のリガーゼ)の活性を分析するための現在の分析には、酵素の中間体の生成や、基質又は/及び製品の構造的特徴を測定することが含まれる。このような分析の大部分は、放射能の使用、追加の実験的予防措置が必要であること、廃棄処理のためのコストを負担することである。最近の分析では、放射能を用いる代わりに、DNA基質の蛍光標識が用いられているが、これらを幅広く用いるためには検出精度に欠けている。一方、DNAリガーゼ活性による生物学的分析が開発されているが、これらは時間がかかり過ぎ(少なくとも、2日)、困難であるとともに、定量的よりも定性的である。より早く生物学的分析を行うものがある(米国特許第5,976,806号明細書)。しかし、この方法では、リポータ遺伝生成物の発現及びDNAリガーゼを用いる、結合した転写―翻訳システムを用いており、この分析は、将来性の製薬化合物を高い処理能力でスクリーニングするのには適していない。
【0004】
また、ヘリカーゼによる分析があり、これは、二重らせん構造の核酸を巻き戻すものである。1つの例(米国特許第5,958,696)では、二重らせん構造の核酸の固相誘導体を調合する。これは、放射性同位体を用いてらせん構造の一方を標識するものである。ヘリカーゼ活性は、溶解相において標識されたらせんを開放する能力によって検出される。ここで、標識されたらせんは、分離され、測定される。他の例では、一本鎖構造の核酸に対して、二本鎖構造の核酸に選択的に結合する標識の能力を用いたものがある。これにより、標識は、ヘリカーゼ活性によって巻き付けられていない物質に対しては結合しないことになる。
【0005】
さらに、感染性生物におけるRNAの数量化のために、直接、蛍光発光標識されたオリゴヌクレオチドのプローブを用いたものがある(米国特許第5,283,174号明細書、米国特許第5,399,491号明細書)。また、化学発光の供与体/受容体の対を用いたものがある(国際公開第01/42497号パンフレット)。これは、核酸標的物の検出及び/又は数量化のためのオリゴヌクレオチドのプローブの標識に用いられる。
【特許文献1】米国特許第5,976,806号明細書
【特許文献2】米国特許第5,958,696号明細書
【特許文献3】米国特許第5,283,174号明細書
【特許文献4】米国特許第5,399,491号明細書
【特許文献5】国際公開第01/42497号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に関係する基質は、核酸の基質における構造変化を生じさせ、核酸生成物を生成する。このため、基質を構成する核酸と、この基質に関する生産物分子とを区別することのできるプローブを用いる必要がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、核酸代謝、特に、遺伝物質の修復や複製における酵素や非タンパク質分子といった基質の活性を分析する手段を提供することにある。この手段では、基質と、これらの基質に対応した生成物分子とを区別することのできる、化学発光の発光/消光によって標識された核酸配列を用いている。さらに、本発明の手段は、創薬に用いられる。
【0008】
ここで、本発明における酵素活性や基質活性は、活性における増加、減少、活性の変化が無いことを含む。
【0009】
また、本発明における基質は、関連する基質が作用する分子を含む。
【0010】
さらに、本発明における生産物は、以下に説明する基質の活性によって生産される分子を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、核酸代謝に含まれる酵素や他の基質の活性を測定する分析であって、簡単で、早く、じょうぶな分析を開発した。活性の評価が必要とされる多くの条件において用いながらも、これらの特性によって、酵素活性を阻害することができ、推定される非バクテリア性及び非ウイルス性の化合物のスクリーニングに好適な分析を行わせる。
また、基質及び生産物の相対的な量を測定する能力は、通常は構造が酵素的に変化するとともに、構造が非酵素的に変化する条件において、用いられる。このように、ここで開示する原理は、修飾された核酸及び修飾されていない核酸の相対的な量を測定するためのあらゆる条件に適用することができる。例えば、このような条件は、紫外線又は電磁波が核酸分子の構造を変化させるのに用いられる場合を含む。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、核酸構成を第1の状態から第2の状態に変化させることが可能な酵素の活性を測定するための方法を提供することにある。ここで、この方法は、酵素と、核酸と、任意に、第1又は第2の状態において少なくとも一部が核酸と相補する1つ以上のオリゴヌクレオチドとを試験試料に供給する工程を有し、核酸及び/又はオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの発光分子及び/又は、化学発光分子から化学発光を減衰させる少なくとも1つの消光分子によって標識されているとともに、化学発光分子及び消光分子は、核酸が第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用を変化させるように配置されて、第1及び第2の状態の一方において化学発光が実質的に減衰されるものである。また、化学発光分子の化学発光を観察する工程を有する。さらに、任意に有する工程であって、基質の欠損に対応する部分と発光を比較する工程を有する。
【0013】
このため、本発明が、第1の分子が化学発光分子を保持するとともに、第2の分子が消光分子を保持する、いわゆる二分子システムを有することは、いわゆる当業者にとって明らかである。例えば、一例において、上記分子の一方はオリゴヌクレオチドであり、上記分子の第2は、核酸である。また、二分子システムは、一方の鎖が化学発光分子を備え、他方の鎖が消光分子を備えた二本鎖構造の核酸であることを意味していると解釈できる。
【0014】
したがって、本発明の方法は、化学発光分子が消光分子の近傍に近づくように化学発光分子によって標識された少なくとも1つの核酸又はオリゴヌクレオチド配列の使用を含む。化学発光分子の光学的特性は、化学発光標識が好適に取り付けられる核酸又はオリゴヌクレオチドがハイブリッド形成して、相補的な核酸配列を有する二本鎖構造を形成するか否かに応じて異なる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチド配列は、選択された酵素や、非タンパク質の基質の核酸又は、対応する生成物とハイブリッド形成されるようになっており、これらの間の結合を反応の観察に用いることができる。また、オリゴヌクレオチドは、他の手段によって核酸が第1の状態から第2の状態に変化するのを観察するために用いられる。これは、オリゴヌクレオチドが第1及び第2の状態を区別できるように確保することによって、達成される。この選択により、分子が第1の状態から第2の状態に切り換わるときに、反応の工程を観察することができる。
【0016】
最も理想的には、第1の状態から第2の状態への核酸の変化は、酵素的に行われ、この方法は、リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素及びギラーゼといった1又は2以上の酵素の活性を測定するために用いられる。
【0017】
また、オリゴヌクレオチド配列は、選択された非タンパク質基質の核酸や対応する生成物とハイブリッド形成するようになっている。
【0018】
また、オリゴヌクレオチド配列は、電磁エネルギ、特に、紫外線や電磁波によって形成される電磁エネルギといった物理的手段によって第1の状態から第2の状態に変化する、選択された基質や生成物の核酸とハイブリッド形成するようになっている。
【0019】
Enediynesは、制限酵素として作用する非タンパク質の有機分子(例えば、カリチェアミシン(calicheamicin)やエスペラミシン(esperamicin))を生成する。これらは、二本鎖構造の核酸を開裂する機能を有しており、核酸分子を第1の状態から第2の状態に変化させ、これらの分子は本発明の範囲内に含まれることになる。
【0020】
同様に、紫外線及び電磁波は、核酸を第1の状態から第2の状態に変化させるために核酸に作用する機能を有していることが分かっている。
【0021】
上述した基質(電磁エネルギを含む)は、本発明の範囲内であり、これらは、核酸分子を第1の状態から第2の状態に変化させることができる。したがって、ここで説明した技術を用いれば、基質の活性を分析することができる。さらに、ここで説明した本発明を用いれば、基質の存在、すなわち、試料における基質の活性の存在を区別することができる。さらに、本発明を用いて、基質の能力を与えて核酸の分子構造を第1の状態から第2の状態に変化させることにより、基質の活性を調節する分子をスクリーニングすることができるとともに、分子や、作用薬や抑制因子として薬理学的に作用する因子を区別することができる。
【0022】
この方法は、1つ以上の基質部分の活性を観察するために用いられ、この方法は、複数の基質、これに対応する核酸、適宜、複数のオリゴヌクレオチドを試験試料に与える工程を含む。核酸及び/又はオリゴヌクレオチドは、これに取り付けられる複数の異なる化学発光分子及び対応する消光分子を有する。ここで、選択された異なる化学発光分子及び消光分子を、選択された核酸及び/又はオリゴヌクレオチドに取り付けることによって、試験試料における特定の反応を観察できるようになっている。
【0023】
化学発光分子及び対応する消光分子は、これらからの信号が最大となるように、そして、これらの間の異なる信号が最大となるように、選択することは、いわゆる当業者にとって明白である。例えば、一実施形態において、1つ以上の酵素又は、他の核酸の修飾分子の反応を観察する場合には、第1の酵素又は修飾分子の基質又は生産物に相補的なオリゴヌクレオチドを、第1の化学発光分子及び対応する消光分子によって標識する。また、第2の酵素又は修飾分子の基質又は生産物に相補的な第2のオリゴヌクレオチドが設け、このオリゴヌクレオチドを、第1の化学発光分子とは異なる化学発光分子及び対応する消光分子によって標識する。これにより、2つの発光信号を同時に観察することができる。また、第1又は第2の化学発光分子を、核酸の基質又は、酵素又はこの生産物の修飾物に設けると共に、対応する消光分子をオリゴヌクレオチドに設けることができる。また、オリゴヌクレオチドは、試験試料から省略するとともに、基質の核酸又はこの反応生成物を化学発光分子及び消光分子によって標識することができる。
【0024】
消光分子は、化学発光の発光分子に対して同じ核酸鎖又は、異なる核酸鎖上で配置することができる。
【0025】
以下に説明する直接的な分析方法において、標識基は、酵素や修飾物の活性を測定するために用いられる基質の核酸の一部を形成する。また、これらは、後述するように、基質や、酵素や修飾反応の生産物分子が、反応に引き続いて起こる前に更なるオリゴヌクレオチド配列に結合する間接的な方法において用いられる。
【0026】
上述した手法において、基質や生産物としては、いかなる核酸やこの配列があり、戸国は、gDNA、cDNA、mRNA、tRNA又はrRNAがある。
【0027】
また、上述した手法において、基質や生成物の核酸は、一本鎖構造としたり、二本鎖構造としたりすることができる。
【0028】
本発明の好ましい観点において、化学発光によって標識されたオリゴヌクレオチドに基づいて、エネルギ転送消光剤により、エネルギ受容体により与えられたオリゴヌクレオチド配列は、化学発光分子によって標識される。発光分子及び消光分子間の距離が略5ナノメータ以下である場合に、エネルギ転送が発生することが知られている。エネルギ転送供与体及び受容体として作用できる分子は、文献に記載されており、オリゴヌクレオチドのプローブと結合できる方法を有している。本出願人は、核酸代謝に関与する酵素や他の基質の活性を測定するための化学発光消光システムを用いることができることが分かった。これは予期できないものである。なぜなら、反応を行わせ、ハイブリダイゼーションを行わせたり、保持したり、化学発光を開始させたりするのに必要な化学的及び物理的な条件は、報告によると全く異なるものであり、1又は2以上のこのような処理を、他の処理に悪影響を与えることなく、どのように促進するかについては明らかにされていないからである。また、化学発光分子は、標的分子の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドのプローブに対する標識として用いられているが、基質と、核酸代謝に関連する酵素や他の基質の生産物とを識別するために用いることができることについては、示唆していない。このため、酵素や他の基質の活性や活性阻害を検出する手段の基礎として用いることができる。
【0029】
酵素活性の間接的な測定において特に使用されるものは、ハイブリダイゼーションによって構成が変化する標識されたオリゴヌクレオチド配列である。この配列の改良は、蛍光の消光で記載されており(国際公開第97/39008号パンフレット)、この配列が標的核酸の検出に適用されることが知られている。この作業はここで説明した開示を含むものではなく、これらの原理から、いわゆる当業者は、本発明で用いられる物質をどのようにして構成するかを容易に理解できる。化学発光分子の発光/消光によって標識された内部分子のオリゴヌクレオチド配列を用い、基質と、核酸代謝に関与する酵素や他の基質の反応の生成物とを区別し、酵素や他の基質の活性や活性の阻害を測定できることが判明した。
【0030】
また、本出願人は、多くの場合において、酵素や他の基質は、基質の核酸が標識基を有しているときも、機能を発揮することを発見した。したがって、これらの場合において、標識された基質上で、関連する酵素や他の基質を作用させ、標識された基質及び標識された生産物が異なる光学特性を有するように標識された生産物を生成する手段を構成することができる。このことを、ここでは直接的な分析と称す。
【0031】
したがって、本発明の一実施形態において、この手法は、上述した標識されたオリゴヌクレオチドを有し、このオリゴヌクレオチドは、化学発光分子及びこれに対応する消光分子を有している。また、本発明の他の実施形態において、基質の核酸又は、これに対応する酵素や反応生成物に対して、少なくとも一部で相補的なオリゴヌクレオチドが提供される。ここで、オリゴヌクレオチドは、化学発光分子又は対応する消光分子によって標識され、化学発光分子及び消光分子のうち他の分子は、基質又は生産物の核酸上に設けられる。また、本発明の更なる実施形態において、オリゴヌクレオチドは、上述した手法から省略され、化学発光分子及びこれに対応する消光分子が、基質又は生産物の核酸上に設けられる。
【0032】
1つの実施形態において、リガーゼ活性を分析するとき、二本鎖構造の一方が不連続(ニック)を有する二本鎖構造の核酸が合成される。リガーゼ酵素の基質として作用する配列の合成は、従来において知られている。基質の溶液は、酵素と反応し、酵素が活性である場合には、ニックが修復(結紮)される。反応混合物の温度は、上昇し、すべての二本鎖構造の核酸は、一本鎖構造の核酸に分離する。そして、化学発光の発光/消光によって標識された内部分子のオリゴヌクレオチド配列(HICSプローブ)を用いた反応によって、結紮された配列があることが実証される。本出願人は、上述した標識された配列の修復された鎖に対するハイブリッド形成によって、消光の活性が無くなり、すなわち、照度計によって測定したときに化学発光の発光を生じ、ニックを有する鎖において消光が維持されることを発見した。HICSプローブの結紮された配列に対するエネルギ的に良好な結合によって、消光活性の消失と共に前者の構成が変化し、化学発光の発光が観察され、結紮されていない配列において構成の変化が生じないことが予測される。これにより、関連する配列のうち結紮しているものと結紮していないものの相対的な量を測定することができる。このように、基質及び生産物の分子は、結紮している配列か結紮していない配列かによって異なるため、リガーゼ酵素やヌクレアーゼ酵素の分析を行うことができる。
【0033】
また、これらの結果は、1つの不連続やニックを検出することができる分析の精度が極めて高いため、より価値のあるものである。したがって、この分析は、極めて際立ったものである。
【0034】
他の実施形態において、予め形成され、二本鎖構造の基質の核酸を用いることが好ましい。この基質では、二本鎖構造の核酸において、消光分子に対する発光分子の接近によって化学発光による発光が減衰される状態において、化学発光分子が一本鎖の核酸配列に受け入れられ、消光標識が相補鎖の核酸配列に受け入れられる。好ましい例において、このような方法は、DNAリガーゼ活性やこの阻害の評価で用いられる。この方法において、基質は、二本鎖構造の一方において不連続又はニックを有するように基質が構成され、ニックは、活性のあるリガーゼ酵素の作用に基づいて修復される。公知の知識を用いれば、所望の長さの核酸二本鎖を合成するとともに、アニーリングすることができ、ニックを有する二本鎖構造は、ニックを持たない(酵素で修復される)二本鎖構造とは異なる溶融温度を有する。そして、ニックを有するDNAの二本鎖構造が分離し、連続した(ニックを持たない)DNAの二本鎖構造が実質的に分離しない温度が実験的に選択される。したがって、リガーゼ活性の分析において、基質の溶液は、まず、酵素活性にとって好適な条件下において酵素を用いてインキュベートされる。酵素との接触後、反応混合物の温度は、上述した所望の溶融温度(Tm)まで上昇し、照度計によって化学発光強度が測定される。大きな化学発光がある場合には、発光分子及び消光分子は、核酸の二本鎖が、ニックの修復が行われず、酵素活性の欠損を示す一本鎖に分離されることによって、分離される。化学発光が無い場合には、消光が現れ、リガーゼ活性の結果として無傷の二本鎖構造が現れることを意味している。また、化学化合物は、リガーゼ活性を阻害することができ、この方法を用いて他の活性の酵素を区別することができる。
【0035】
同様に、同じ原理が、遺伝子配列のうち個別のヌクレオチド配列における挿入(インテグラーゼ)や転位(トランスポザーゼ)を触媒する酵素や基質の分析に適用される。ここで、使用は、生産物の配列とハイブリッド形成できるが、基質の配列とはハイブリッド形成できない適切に標識されたオリゴヌクレオチド配列からなる。このように、インテグラーゼやトランスポザーゼの活性を予測することができるだけでなく、反応混合物に加えられる化学化合物が酵素活性を阻害するか否か、薬理学的な因子としての用途を有するか否かを測定することができる。
【0036】
ヌクレアーゼ、リガーゼ、インテグラーゼ及びトランスポザーゼによって例示される酵素や基質は、遺伝子物質の共有結合修飾の触媒及び生成において共通の特徴を有している。また、酵素や基質は、遺伝物質の非共有構造を変化させ、このような酵素や基質としては、ヘリカーゼがある。これらの酵素や基質の活性によって、結合していない核酸の部分が形成される。ここで、酵素や基質の活性の結果として生成され、結合していない成分の核酸は、基質の二本鎖構造を有する核酸配列と比べて、標識された相補オリゴヌクレオチド配列によって結合し易い。この条件において、化学発光の発光/消光によって標識された内部分子のオリゴヌクレオチド配列のプローブにより、上述したリガーゼ分析と同様の方法で、核酸の利用可能な部位を露呈させることができる。したがって、例えば、化学発光の有無は、ヘリカーゼ活性の結果として巻き戻された配列が存在することを示す。
【0037】
ヘリカーゼ活性の分析の特に好ましい例としては、二本鎖構造の核酸内における発光分子の消光分子に対する接近によって化学発光が減衰される状況において、化学発光の発光分子が、一本鎖の核酸配列に受け入れられ、消光標識が相補鎖の核酸配列に受け入れられる、合成された二本鎖構造の核酸基質がある。そして、ヘリカーゼ活性によって、二本鎖構造の核酸は分離せず、消光基の影響から離れることにより、化学発光による発光が行われる。この場合において、化学発光の強度は、ヘリカーゼ活性に比例する。
【0038】
この状況の変形として、標識されたオリゴヌクレオチド配列の結合を用いて酵素反応や他の反応を行う場合には、標識されたオリゴヌクレオチド配列を反応の生成物よりも基質に結合するように設定することが好適である。
【0039】
また、ここでの開示は、反応物質は無いが、反応の生産物が標識された相補オリゴヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるため、核酸の生産物を、各塩基といった小さな先駆物質から生成する状況において適用することができる。このような反応に関与する酵素の例としては、プライマーゼ、ポリメラーゼ、逆転写酵素がある。一般的な酵素活性では、相補的な内部分子であって、化学発光の発光/消光によって標識されたオリゴヌクレオチド配列(HICSプローブ)とハイブリッド形成することのできる核酸を得ることができ、その後に形成される標識された二本鎖構造によって、化学発光による発光が行われる。酵素の阻害によって、標識されていない二本鎖構造が形成され、化学発光は生じない。このため、化学発光の測定は、関与する酵素の活性や他の量的指標となる。
【0040】
ここでの開示から、いわゆる当業者は、核酸の基質や生産物における構造上の違いが、標識として用いられる化学発光の発光/消光分子の光学特性を選択的に調節するのに用いることができることを考慮して、考えられる広範囲の酵素や基質のための分析を構築することができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、選択された酵素や他の基質に関連する活性を調節するための因子をスクリーニングするための、上述した手法の用途を提供することにある。また、本発明によれば、上述した手法によって判別される基質を提供することにある。
【0042】
理想的には、調節作用は、薬理的なものであって、非細菌性、非ウイルス性、非菌性又は、非腫瘍性である。
【0043】
また、本発明の手法は、核酸分子が第1又は第2の状態で存在するように変化したか否かを検出するために用いられる。
【0044】
照度計と化学発光反応を生じさせる試薬は、使用される化学発光標識の性質に基づいて選択される。一般的に、開始試薬は、発光する光を観察しながら、化学発光反応を生じさせるために用いられる。また、化学発光反応の反応速度が十分に遅い場合には、照度計内に反応容器を配置する前に、化学発光を開始させることができる。
【0045】
規定した標的配列を検出するためのオリゴヌクレオチドであって、化学発光により標識され、蛍光により標識されたオリゴヌクレオチドの用途は知られており、これらの光学特性を変化させる一般的な原理も知られている。これらの方法を実行するための技術は、公知であり、いわゆる当業者は、必要な実用上の詳細を手に入れることができる。
【0046】
本発明においては、以下の化学式が好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
ここで、Rは、アミン又はチオール基と反応する反応基であり、
は、炭素原子2〜12で構成され、適宜、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cのアルコキシを有する炭化水素結合基であり、
は、水素、C〜Cのアルキル、C〜Cのハロアルキル、アリール、溶融アリール、C〜Cのアルコキシ、C〜Cのアシル、ハロゲン化物、ヒドロキシ又はニトロである。
【0049】
化合物「R−L−」は、C〜Cのアルキル基で構成され、適宜、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cアルコキシが用いられる。
【0050】
は、「R−L―」の基で構成され、Rは、アミン又はチオール基と反応する反応基であり、Lは、上述したものである。
【0051】
は、=C(=O)O−、−C(=O)−S−、又は−C(=O)N(SO)−を示し、ここで、それぞれの場合において、「−C(=O)」は、環状炭素原子に結合され、Rは、C〜Cのアルキル、アリール、C〜Cのアルコキシ、又はC〜Cのアクリルを示す。

は、C〜Cのアルキル、C〜Cのアルケニル、C〜Cのアルキニル、又はアリール基で構成され、この構成の少なくとも1つは、L基におけるR基及びL基の−O,−S又は−N(SO)から構成された離脱基の共役酸のpKaが、略9.5以下となるような電子求引性を有する。
【0052】
は、分子の合成処理によって形成されたアニオンであり、化合物は、環の外側の一方又は両方に、1つ又は複数の追加的なR基を含んでいてもよく、R基の1つは、R−L−基で構成してもよい。
【0053】
基の基質は、R及びL基の−O,−S又は−N(SO)によって形成される離脱基の共役酸のpKaが略9.5以下となるように選択される。実際には、R基の基質の少なくとも1つが電子求引性を有している。これは、PH8以下で、分子を化学発光させるときに、特に重要な特徴である。したがって、多のアクリジニウム化合物に比べて、一般式(1)のアクリジニウム化合物の化学発光は、一般的に使用される消光剤と相性が良く、結紮された二重構造に要求される安定性と相性が良いpH値において、行うことができる。
【0054】
標識される分子を生物学的に重要な分子に結合する方法は、公知であり、本発明を実行することのできる多くの種類のR及びLがある。ここで、Lが2〜10の炭素原子で構成されているときに、良好な結果が得られることが分かった。より好ましくは、Lを、メチレン基で構成された飽和鎖とする。
【0055】
化合物を生物学的に重要な分子に結合する場合に特に有用であることが発見されたR基及びR基は、スクシニミドエステルやイミデートエステルといった活性のあるエステルと、マレイミドと、クロロカルボニル、ブロモカルボニル、ヨードカルボニル、クロロスルフォニルやフルオロジニトロフェニルといった活性のあるハロゲン化物とを含む。
【0056】
同様に、化学発酵作用を有し、化学発光標識の発光波長を変えるために使用されるRによって表される置換基が数多くあることが知られている。このことは、分析に用いられる消光剤の選択に影響を与える。本発明者は、最も有益な化合物は、Rが水素又はC〜Cのアルキル、特に、メチル又はエチルであるものを含み、これらは、受容体としてのメチルレッドと共に用いるのが好適であることを発見した。Rが水素である化合物は、特に好ましい。
【0057】
好ましい化合物の化学式(1)において、Lは、−C(=O)O−である。
【0058】
上述したように、Rは、R及び−O、−S、又は−N(SO)によって形成される離脱基の共役酸のpKaが略9.5以下となるように選択しなければならない。これは、少なくとも1つの電子吸引基を含むことを意味する。
【0059】
ここで、R基が反応性の良い離脱基を形成する場合には、化合物が、標識される化合物として用いられる十分な安定性を常に有していないことになる。化学発光転送分析のための標識化合物として最適な効率を得るためには、L基におけるR及び−O、−S、又は−N(SO)によって形成される離脱基の共役酸のpKaが3以上であることが好ましい。
【0060】
このため、電子吸引基を加えると、R置換基は、電子吸引を持たない基を含むことができ、電子供与基を用いてもよい。電子吸引基の効果は優先される。Rの構成は、化学発光反応に起因する離脱基のpKa値を演算することによって容易に予測することができる。これにより、このような基の範囲を、従来技術に基づいて理解することができる。
【0061】
ここで、例として、実用的なR基は、1つ以上のハロゲン化物又はハロゲン化アルキルで構成されたアルキル基又はアリール基を含む。特に好ましい化合物としては、R3が、2位置及び6位置においてこのような基、特に、ニトロ基、フッ素、塩素、臭素又はトリフルオロメチルが独立して構成されたフェニル基であるものを含む。このような基の例としては、2,6−ジブロモフェニル、2,6−ビス(トリフルオロメチレン)フェニル、2,6−ジニトロフェニルがある。
【0062】
X―は適切なアニオンのなかの1つである。ここで、ヨウ化物、フルオロ硫酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、又はトリフルオロ酢酸塩といったアニオンを含むハロゲン化物が好ましい。
【0063】
R2が水素又は下級アルキルである化合物は、エネルギ受容体としてのメチルレッドを用いるときに特に好適である。これらの化合物は、化学発光のスペクトルが、pH9における消光剤メチルレッドの吸収スペクトル内に完全に位置しているといった特有の利点がある。このことは、以下のことを意味する。すなわち、上述した好ましい化合物の1つが発光分子として用いられ、メチルレッドが受容体となる化学発光エネルギ転送システムにおいて、内容物や、結紮しているもの及び結紮していないものの間の反応比率の量的に測定することができ、これにより、基質の存在と、反応に影響を与えるものとを測定することができる。これは、化学発光信号の変化を測定するだけで簡単に行うことができる。
【0064】
本発明で用いられる特に好ましい化合物としては、
9−(2,6―ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシニミドロキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシニミドロキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチレン)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシニミドロキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシニミドロキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシニミドロキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシニミドロキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホンサン塩、
がある。
【0065】
また、発光による標識を利用することにより、多要素の分析を構成することができるといった利点を有する。そして、波長と、標識の混合物を同時に且つ独立して計ることができる一時的な区別とを用いたものがある(米国特許第5,827,656号明細書)。この同一の原理は、本発明の開示において効果的に用いることができ、例えば、リガーゼ及びインテグラーゼに対して同時に阻害活性を示す化学化合物をスクリーニングすることが好ましい。現在の知識に基づいて、いわゆる当業者は、多重分析を実行できる手段を容易に理解することができる。
【0066】
また、本発明は、所定の酵素や、他の基質の活性を検出する方法において、基質として用いられる核酸に関するものであり、核酸からなる複合体と、化学発光分子及び/又は対応する消光分子とを有し、前記核酸は、前記酵素又は他の基質による作用を受けることが可能であり、作用する酵素又は他の基質において、核酸は、第1の状態から第2の状態に変化することで、化学発光分子及び消光分子間の相互作用を変化させるとともに、この化学発光を変化させる。
【0067】
本発明によれば、選択された酵素又は基質の作用を受ける核酸に対して、少なくとも一部で相補的又は、酵素又は基質の生産物に対して相補的なオリゴヌクレオチドを提供することにある。ここで、前記オリゴヌクレオチドは、化学発光分子及び対応する消光分子と結合し、前記化学発光分子及び前記消光分子は、前記オリゴヌクレオチドがこの相補的な配列とハイブリッド形成しないときに、化学発光を減衰するように配置されている。
【0068】
好ましい実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、ステムループ構成となっている。より具体的には、前記オリゴヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチド鎖の第1の端に向けて配置された化学発光標識と、前記鎖の対向する第2の端に向けて配置された対応する消光分子とを有する。さらに、前記オリゴヌクレオチドは、ハイブリッド形成によってステムループ構成を生成することが可能な、少なくとも一対の相補的な内部鎖配列を有する。
【0069】
本発明によれば、化学発光分子又は対応する消光分子を含む所定の酵素の活性を測定する場合において、基質として用いられる核酸複合体と、前記核酸に対して、少なくとも一部において相補的なオリゴヌクレオチドとを有し、前記オリゴヌクレオチドは、前記核酸に対して、対応する消光分子又は、前記化学発光分子を有するものを提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
本発明では、リガーゼ活性を測定するための分析試薬を生成する。この分析試薬について、図3を用いて説明する。ここで、第2の配列を補完するオリゴヌクレオチドの配列を有する第1のオリゴヌクレオチド配列が生成される。第2の配列は、核酸の二本鎖において、第1のオリゴヌクレオチドと結合したときに、損傷していない(結合した)らせん構造又は、ニックを有する(結合していない)らせん構造のいずれかで存在する。結合していないらせん構造では、配列の少なくとも一部が、リガーゼ酵素の基質として作用することができ、酵素活性によって結合したらせん構造に変化する。また、好ましくは、結合していない配列における2つの構成の相対的長さの比が4を越えない位置において、ニックを有する。ここで、いわゆる当業者は、ニックの位置の可能な範囲が、ニックを有する配列の全長によって抑制されることを認識している。また、合成された第3のオリゴヌクレオチド配列は、化学発光による発光分子及び消光分子がそれぞれ結合される少なくとも2つのリンカー部分を有している。標識されたオリゴヌクレオチドが補完する核酸に結合していないときに、化学発光による消光が発生し、標識されたオリゴヌクレオチドが補完配列に結合することによって構造変化を受けるときに、化学発光による消光が発生しないように、リンカー及び標識基の位置が決定される。このような標識の設計及び合成は、従来において定められている(国際公開第01/42497号パンフレット参照)。第3のオリゴヌクレオチド配列のヌクレオチド配列は、後述する本発明の実施形態に基づいて、第1及び第2の配列の一方を補完することができる。好ましい方法として、第1及び第3のヌクレオチド配列は、10から60の塩基で構成され、より好ましくは、20から40の塩基で構成される。また、好ましくは、発光分子として、化学発光分子が用いられ、より好ましくは、化学発光アクリジニウム塩が用いられる。
【0071】
好適なリガーゼ基質としては、以下に説明するアニーリング、ニックを有する二本鎖構造を生成する、第1及び第2の配列の混合物を調合する。このような二本鎖構造を生成する方法は、従来において知られている。実際には、第2の配列は、2つの短い配列で構成され、このうちの1つは、公知の方法によって、遊離の5’末端においてリン酸化されたものである。そして、好ましくは、10〜100nmolの各配列が、適切な緩衝剤、例えば、60℃、0.5〜2時間において、1〜100mM、0.1〜1mlのリチウムスクシネートにおいて融合するものを用いる。そして、適切な量の基質を、適切な量の酵素と混合し、特定の酵素が用いられる場合と共通の条件下において適切な時間だけ反応を行わせる。
【0072】
本発明における1つの方法(図3の左側)において、標識された第3のオリゴヌクレオチド配列は、第2のオリゴヌクレオチド配列を補完する。標識された第3のオリゴヌクレオチド配列は、補完される無傷の第2のオリゴヌクレオチド配列と融合する点と、ハイブリダイゼーション反応において試薬の安定度を保持する点とにおいて、標識配列と共通の緩衝剤で溶融する。このような緩衝剤は、この分野において用いられている。一般的な緩衝イオンは、好ましくは、濃度が1〜100mMの有機及び/又は無機の塩で構成され、溶液は、界面活性剤及び/又は防腐剤といった、他の溶質を含み、好ましくはpH値が7以下を示すものを用いることができる。使用される標識された第3のオリゴヌクレオチドの量は、分析において要求される、標識を検出する精度と、無傷の第2のオリゴヌクレオチド配列を検出する精度とに基づいて決定される。各測定のために用いられる標識オリゴヌクレオチドの量は、10−18〜10−9molの範囲内であり、より好ましくは、10−15〜10−12molの範囲内である。これは、1μl〜1mlの範囲内の体積、場合によっては1μlよりも小さい体積の緩衝材に含有される。標識オリゴヌクレオチドの溶液は、
好適な反応槽において分析試料と混合される。この反応槽は、一般的には、試験管や、96,384又は1536のマイクロタイター板といった反応槽の分析部分がある。また、固定化マイクロアレイの使用を含む固相システムで用いられる多くの分析工程が知られており、本実施形態における方法は、従来の標識プローブ分析で用いられている方法と同時に、このようなシステムに適用することができる。
【0073】
酵素を用いた基質のインキュベーションにおいて、反応混合温度は、結紮している二本鎖構造及び結紮していない二本鎖構造の両方が溶融するように、すなわち、これらの溶融温度(Tm)を超えるように上昇する。温度の選択は、規定された基準及び方法に基づいて決定される。標識された第3のオリゴヌクレオチド配列が加えられ、反応混合温度は、結紮している二本鎖構造の温度Tmよりも低く、ニックを有する二本鎖構造の温度Tm以上となるように低下する。
【0074】
標識された第3のオリゴヌクレオチド配列を用いたインキュベーションは、所定時間、好ましくは、1分〜240分の範囲内、より好ましくは、5分〜30分の範囲内において行われる。この間、リガーゼの酵素活性によって生成された結紮した第2のオリゴヌクレオチド配列は、標識された第3のオリゴヌクレオチド配列とハイブリッド形成し、化学発光反応が開始するときに化学発光による発光が現れる構造変化をもたらす。一方、結紮していない第2のオリゴヌクレオチド配列が標識された第3のオリゴヌクレオチド配列とハイブリッド形成しないと、反応温度において標識された第3のオリゴヌクレオチド配列の構造変化をもたらし、化学発光反応を開始したときに、化学発光による発光が発生しない。以下のハイブリダイゼーション処理において、反応混合物は、環境温度と平衡状態となり、化学発光の活性が照度計において測定される。このようにして、化学発光による発光強度は、結紮していない核酸に対する結紮している核酸の比率に対して比例する。
【0075】
上述したリガーゼ活性を測定する方法を用いるためには、ハイブリダイゼーション反応を、酵素が作用して基質を生産物に変化させる反応工程よりも先に行い、そして、温度やハイブリッド形成条件を変化させる。化合物又は化合物の混合物が酵素活性を抑制するか、活性させるかを測定する場合には、酵素は、化合物又は化合物の混合物上に露出し、測定される酵素活性又は酵素活性の欠損は、露出していない酵素の酵素活性と比較される。同様な方法において、基質を生産物に変化させる非タンパク質分子や基質の活性は、阻害剤又は活性剤の活性として測定される。
【0076】
化学発光反応を開始させる方法は、使用される特定の化学発光標識に基づいて行われ、このような方法は、いわゆる当業者にとって公知である。標識として、化学発光のアクリジニウム塩を用いる場合には、一般的に、化学発光反応の開始は、過酸化水素及びアルカリの追加に影響する。光学発光による検出のための広範囲の好適な器具(照度計)は、市販されている。
【0077】
上述した実験条件は、本発明を実行する他の形態を用いる場合を除き、従来において通常使用されるものである。ここで説明する条件は、一般的な実験の目安であり、本発明を実行するために用いられる幅広い実験条件に関して制限するものではない。いわゆる当業者にとって、使用される条件が、化学発光を開始する前に形成された結合複合体の分離を生じさせないようにすることは、容易に理解される。また、このような条件が、化学発光標識又は消光標識の化学的又は光学的な特性を悪化させるものであってはならないことは、いわゆる当業者にとって容易に理解される。このような条件設定について説明する。
【0078】
本発明の方法の他の実施形態において、標識された第3のヌクレオチドの核酸配列は、第1のオリゴヌクレオチド配列における核酸配列を補完する。本実施形態において、
酵素のインキュベーションによって得られる反応混合物は、結紮していない二本鎖構造の温度Tmを超え、且つ、結紮している二本鎖構造の温度Tmを超えない温度となり、そして、標識されたオリゴヌクレオチドが加えられる。この温度において、反応混合物は、ハイブリダイゼーションによって一本鎖構造の第1のオリゴヌクレオチド配列が生成するようにインキュベートされる。この場合において、標識された第3のオリゴヌクレオチド配列は、化学発光反応を開始するときに化学発光を観察できる構造変化を生じるように、第1のオリゴヌクレオチド配列に対してハイブリッド形成することができる。
【0079】
結紮された核酸及び結紮されていない核酸の転換を促進する酵素活性を測定するための分析において、上述した工程は、所定の条件下で上述した酵素を核酸基質と混合する方法よりも前であって、反応のために必要となる共因子の前に行われる。また、この時点において、又は、この時点よりも前に、酵素活性に対して推定される影響が調査された基質を加えてもよい。酵素活性と相性の良い反応条件は、公知であり、ここでの教示に適用することができる。さらに、酵素と阻害剤との間の相互作用を生じさせる最も好ましい態様を示す一般的な処理は、公知である。ここで、この開示が、ここで説明した酵素又は基質の活性に影響を与える因子の研究を可能にさせることは、いわゆる当業者において容易に認識される。化学発光反応及びこれに伴う強度測定を開始させる方法は、使用される特定の化学発光標識に依存する。このような方法は、いわゆる当業者において知られている。標識として、化学発光のアクリジニウム塩を用いた好ましい方法において、一般的に化学発光反応の開始は、過酸化水素及びアルカリの付与に影響を受ける。化学発光の検出のための幅広い好適な機器(照度計)は、市販されている。
【0080】
一方、化学発光の強度は、結紮されていない配列に対する結紮されている配列の濃度比に関係し、酵素の活性や、酵素活性の不活性、酵素活性の阻害を測定することができる。ここで開示したものは、核酸の変形に関与し、これらの全機能の一部としての結紮及び/又は分離を含む、酵素や修飾分子における活性の範囲を測定する方法として用いることができることは、いわゆる当業者にとって明らかである。このような状況において、いわゆる当業者は、結紮していない二本鎖構造を溶融する温度を最適化できるとともに、結紮している二本鎖構造を無傷の状態に保持することができる。適切な温度は、異なる配列においては異なり、用いる配列に対する温度は、実験的なアプローチによって最適化する必要がある。
【0081】
本発明を用いたリガーゼ分析(図4参照)の例においては、二本鎖構造のオリゴヌクレオチド配列で構成されたリガーゼ基質が生成される。ここで、二本鎖構造の少なくとも1つは、少なくとも1つのニックを有している。また、基質は、各二本鎖構造においてリンカー基を介して結合された各標識を備えた化学発光の発光/消光の対を有している。オリゴヌクレオチド配列が二本鎖構造の場合には、化学発光による発光は、発光/消光対の接近によって抑制される。このような配列は、いわゆる当業者の従来の知識の範囲内において、設計及び合成が可能である。このように生成された基質は、二本鎖構造の基質からなる第1及び第2のオリゴヌクレオチド配列が標識を有することを除き、間接のリガーゼ分析のための上述したガイダンスによって設計したり、調合したりできる。この例において、リガーゼ酵素や修飾因子のような他のリガーゼの活性によって、結紮していない基質は、結紮している基質に変化する。結紮していない二本鎖構造を溶融するのに十分であって、結紮している二本鎖構造を溶融する温度よりも低い温度を与えた場合には、未反応の基質だけが溶融し、発光/消光対の分離をもたらし、化学発光反応を開始したときに化学発光による観察を行うことができる。発光/消光対は、実験的に測定され、酵素活性のための最適となる位置に基づいて、オリゴヌクレオチドの末端における互いに対向する位置や二本鎖構造内に配置することができる。
【0082】
理想的には、各測定のために用いられる標識された基質の量は、10−18〜10−9molの範囲内、より好ましくは、10−15〜10−12molの範囲内が好ましい。これは、1μl〜1mlの範囲内の体積、場合によっては1μlよりも小さい体積の緩衝剤に含有される。基質の溶液は、適切な反応容器、好ましくは、試験管や、96,384又は1536well microtitre plateといった反応容器の分析の一部において、分析試料と混合させられる。また、固定されたマイクロアレイの用途を含む固相システムで用いられる多くの分析処理が知られている。そして、ここで説明した方法は、従来の標識されたプローブの分析を用いる方法と同時に、上述したシステムに適用することができる。研究対象の酵素や修飾分子は、反応のために必要となる共因子の前に、所定の条件下で基質と混合される。また、この時点において、又は、この時点よりも前において、酵素や基質の活性に対して推定される影響が研究された因子を追加することができる。用いられる酵素や基質の活性と相性の良い反応条件は、良く知られており、本発明の技術に適用することができる。さらに、酵素又は基質と、これらの阻害剤との間の相互作用を生じさせる最も好ましい形態を示す一般的な手法は、公知である。ここで、本発明の開示が、ここで説明した酵素又は基質の活性に影響を与える因子の研究を可能とすることは、いわゆる当業者にとって容易に認識される。また、化学発光の開始は、結紮していない配列に対する結紮している配列の濃度比に関係し、酵素や基質の活性、不活性、活性に対する阻害を測定することができる。
【0083】
さらに、発光/消光対を備えた基質を用いるリガーゼ分析の例において、発光/消光対が二本鎖構造の基質の同じ鎖に位置し、二本鎖構造の相補鎖が結紮していない基質を用いることができる。ニックがあることによっては、結紮していない第2のオリゴヌクレオチド配列が、標識された第3のオリゴヌクレオチド配列の構成を、化学発光反応を開始したときに化学発光が観察できないように大幅に変化させるものではない。一方、活性リガーゼ酵素又は他の基質によって、結紮していない基質を結紮していない生成物に変化させると、標識された基質の構造が変化し、発光/消光対が空間的に分離され、化学発光反応を開始したときに化学発光を観察することができる。上述した類似の方法において、本実施形態は、リガーゼ酵素を阻害する化合物の能力の測定するために用いることができる。
【0084】
ここでの基本的な技術知識や、分子生物学及び酵素学の関連する分野において用いられている慣習知識を用いれば、いわゆる当業者は、本発明を実施する他の実施形態を決定することができる。
【0085】
同様の実験的な手法は、同様な機能で作用したり、これを阻害したりするヘリカーゼ酵素や基質の活性を分析するために用いられる。これらの場合における間接的な分析の用途においては、酵素の生成物又は基質活性を構成する、巻き戻された遺伝物質と結合し、核酸の二本鎖構造によって表される基質には結合しないように、標識されたオリゴヌクレオチド配列を設定することができる。化学化合物又はこの混合物に阻害されることで発生した活性の損失により、標識されたオリゴヌクレオチド配列のハイブリッド形成のために利用可能な標的が生成される。
【0086】
ヘリカーゼ分析の更なる例(図5参照)において、酵素や基質によって二本鎖構造が分離されたときに、化学発光標識の発光強度が増加するように、二本鎖構造の基質の各鎖が発光/消光対によってそれぞれ標識された基質が生成される。この場合において、化学発光の強度は、酵素又は基質の活性に対して比例する。
【0087】
ヘリカーゼ分析の他の例(図6参照)において、ヘリカーゼ酵素又は、同様の作用の基質によって作用を受ける二本鎖構造における一方の鎖を補完するオリゴヌクレオチドが生成される。このオリゴヌクレオチドには、化学発光分子及び対応する消光分子をつなぐために、一対のリンカーが設けられている。この分析において、非らせん構造にオリゴヌクレオチドを結合することにより、化学発光分子を消光分子から分離させる構造変化が発生するとともに、化学発光を増加させる。したがって、この分析では、化学発光が、ヘリカーゼ活性の量に対して比例することになる。
【0088】
このようなヘリカーゼ分析の場合において、基質や他の試薬は、リガーゼ分析における上述したものと同様に幅広く設計できるとともに、調合することができる。この知識及び従来技術を用いれば、いわゆる当業者は、研究下において、使用する酵素に対して所望の特性を持たせた基質を設計したり、生成したりすることができる。
【0089】
同様な実験的な手法は、インテグラーゼ酵素、トランスポザーゼ酵素や、同様の活性を持つ基質、実際には、これらの阻害剤の活性を分析するために用いられる。ここで、間接的な分析において、生成物の核酸配列に対してはハイブリッド形成を行うことができるが、基質の核酸配列に対してはハイブリッド形成を行うことができない標識されたオリゴヌクレオチド配列を用いることができる。また、標識された基質の場合には、補完の二本鎖に近傍に位置する発光/消光の標識対における分子間距離は、酵素や基質が存在するか否か、これが作用するか否かに応じて異なる。
【0090】
また、同様な実験的な手法が、核酸配列の長さを増加させたり、減少させたりする酵素や基質、例えば、ポリメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素において用いることができる。これらの反応における基質や生成物が構造上、区別されることを考慮すれば、いわゆる当業者は、これらの酵素や基質、実際には、これらの阻害剤の活性を測定する分析を行うために、本発明を適用することができる。
【0091】
例えば、図7において、RNAポリメラーゼの活性を有する酵素や基質を分析するための仕組みを示す。この反応における基質は、標的分子をコード化するリポータとしての領域に結合されたプロモータを含むDNAらせん構造である。RNAポリメラーゼが存在する場合において、転写が発生し、メッセンジャーRNAが生成される。化学発光分子及び対応する消光分子を有するオリゴヌクレオチドのプローブは、オリゴヌクレオチドのプローブ及びメッセンジャーRNAが結合したときに、プローブがハイブリッド形成するように、メッセンジャーRNAに対してハイブリッド形成するようになっている。オリゴヌクレオチドのプローブがメッセンジャーRNAと結合することにより、プローブの化学発光特性に影響を与える構造変化が生じる。検出された信号は、試料におけるメッセンジャーRNAの量に対して比例し、RNAポリメラーゼの活性に対して比例する。
【0092】
図8において、DNAポリメラーゼの活性を分析する仕組みを示す。この例において、基質は、プロモータ及びリポータの配列をコードする一本鎖を含む、予めプライマー化された鋳型である。DNAポリメラーゼが存在すると、一本鎖に対する相補鎖が形成されることにより、二本鎖が形成される。そして、リポータ領域での転写を開始し、メッセンジャーRNAを生成するために、RNAポリメラーゼが反応に加えられる。そして、上述した図7で説明したように、標識されたオリゴヌクレオチドが反応に加えられる。このオリゴヌクレオチドは、メッセンジャーRNAとハイブリッド形成するようになっており、上述したように、信号の量は、反応を開始させるDNAポリメラーゼの量に比例する。
【0093】
本発明を例示する更なる方法において、図9に、DNAプライマーゼの分析を示す。この分析において、基質は、プロモータ及びリポータのコード配列よりも上流に位置するDNAプライマーゼ認識部位を含むDNAの一本鎖領域である。DNAプライマーゼが存在する場合において、プライマーゼは、一本鎖構造の基質をプライマー化する。そして、DNAポリメラーゼが分析試薬に加えられると、上述した図8で説明したように、DNAポリメラーゼは、基質を伸長し、一本鎖構造のDNAと相補する鎖を生成することで、二本鎖構造を生成する。そして、二本鎖構造の転写を行わせ、遺伝子のリポータ部位に対するメッセンジャーRNAを生成するために、分析試薬に対してRNAポリメラーゼを加える。そして、上述した図7及び図8で説明した例のように、メッセンジャーRNAに相補する標識されたオリゴヌクレオチドを加え、反応の結果として生成されるメッセンジャーRNAの量を測定することができる。この例において、DNAプライマーゼが存在すると、化学発光のオリゴヌクレオチドのプローブによって基質の検出が行われる配列の形成が開始される。再度、化学発光信号の強度は、存在するDNAポリメラーゼの量に関係し、反応を開始させることができる。
【0094】
上述した図3から図9を用いて説明した各例において、好適な時間において適切な因子を関連する反応に加え、化学発光反応における効果を観測するだけで、上述した反応を阻害する因子の活性を研究することができる。
【0095】
本発明の実施例について、以下の分析に基づいて説明する。
【0096】
DNAリガーゼの活性を観測するためのHyQ(Hybridization Quench)の化学発光分析について説明する。
【0097】
この分析は、ニックを有する二本鎖構造配列のDNAリガーゼ基質で利用され、この基質としては、一対の化学発光による発光(アクリジニウムエステル、AE)やエネルギ移送消化剤(メチルレッド、MeR)で標識される内部鎖を用いている。酵素作用によってニックを取り除くと、ニックを有する不連続の鎖が、温度Tmを上昇させる、ニックの無い連続した長い鎖に変化する。ニックの無い鎖を溶融させるのに十分な温度であって、修復された鎖を溶融するのに必要な温度よりも低い温度を与えると、ニックを有する鎖を含む変質しない基質だけが鎖分離を生じ、発光/消光対が非常に接近する。以下の従来のAEを用いた発光の開始において、得られた信号は、消光されていないAE量と比例するとともに、基質における結紮の程度に比例するため、DNAリガーゼの活性に比例することになる。AE/MeRの発光/消光対は、鎖の末端における互いに対向する位置又は、二本鎖構造内に配置することができる。
【0098】
3’末端において又は、3’末端から5ntにおける脂肪族側鎖を介して連結された、遊離するNHを有する合成36ntオリゴヌクレオチドは、ネルソン等によって開示された従来のAEによる方法で用いられる9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−(スクシニミドロキシカルボニル)−プロピル)アクリジニウムヨウ化物と結合する。このオリゴヌクレオチドは、上述した従来技術で説明されているように、EtOHの沈降及びRPLCによって精製される。また、2つの18ntの成分が得られる。左側の短いオリゴヌクレオチド(AEで標識された36ntのオリゴヌクレオチドにおける5’末端の第1の18ntに相補するオリゴヌクレオチド)は、5’リン酸塩と合成し、DNAリガーゼによる近接塩基との反応を促進する。右側のオリゴヌクレオチド(36ntのオリゴヌクレオチドにおける3’末端の18ntに相補するオリゴヌクレオチド)は、5’末端(末端の発光消光対)において、リンカーを介してメチルレッドに結合するか、5’末端から5ntの脂肪族リンカー(内部の発光/消光対)を介して結合する。2つの18ntのオリゴヌクレオチドのそれぞれよりも僅かに超える36ntを、24〜48時間の緩衝、室温でインキュベートして、3つのオリゴヌクレオチドの適切な組み合わせ(内部及び末端の発光/消光対のうちいずれかが得られるかに応じて)をアニーリングすることにより、二本鎖構造で、ニックを有するリガーゼ基質が生成される。発光を測定してアニーリングを観察することにより、二本鎖構造のAE−MeR消光対の形成と関連する信号の落ち込みに関する時間が明らかになった。
【0099】
10〜20μlの体積の分析試薬中において、Hepes200mM、pH7.2、NaCl50mM、MgCl4mM、NADH25μM(又は、非細菌性のDNAリガーゼのためのATP10mM)、ウシのアルブミン500μg/mlを含む分析緩衝器内に、EcoliのDNAリガーゼが存在した状態で、DNAリガーゼ活性の分析のために適切に希釈された基質を室温にてインキュベートした。インキュベーション区間の末端において、100μlの停止緩衝剤(8.5%w/vのリチウムラウリル硫酸塩を含む0.05MでpH5.2のリチウムスクシネート)を加えることによって、酵素活性が終結し、分析内容は、オリゴヌクレオチドと共役のニックを有するMeRではなく、ニックを持たない鎖の分離を生成するために十分に上昇するように実験的に決定された高温で、10分間だけ行った。端部での化学発光は、0.1%のHを含む200μl、0.2M、pH9.0のトリスを加えた状態で、追加直後から5粉を経過してから照度計を用いて測定した。
【0100】
図10及び図11に示すグラフは、基質(ここでは、端部の発光/消光のAE/MeR対を用い、内部に配置された発光/消光のAE/MeR対を用いたのと同等の結果が得られた)の経時変化を示し、リガーゼの下において酵素として2つの量を用いた。修復されていない基質は、AE/MeRの発光/消光対の分離によって化学発光(RLUとして示す)を行う。そして、基質を消費すると、高温にさらされて消光の形で残る割合は、ニックを修復するリガーゼの作用と一致して増加し、高温にさらされて鎖分離を防止する。
【0101】
原理:この分析では、一対の化学発光(アクリジニウムエステル、AE)及びエネルギ転送消光剤(メチルレッド、MeR)によって標識される内部鎖の末端を利用する化学発光(HICS)プローブを生成するステムループのAE/MeRハイブリダイゼーションを用い、T7DNA依存性RNAポリメラーゼの作用によって特定のプローブ標的の生成を観察している。このプローブは、標的配列に加えて、3’末端及び5’末端において互いに相補的な伸長を有する合成オリゴヌクレオチドで構成されている。3’末端は、アクリジニウムエステル(AE)と共有結合しており、5’末端はメチルレッド(MeR)に結合している。標的が無い場合において、一本鎖構造のHICSプローブはステムループ構造として存在することが予測され、AE及びMeRは臨界エネルギ範囲内に存在している。プローブの二次構造を保持する条件において、アルカリ過酸化物によってAEの化学発光を開始すると、化学発光エネルギの殆どが、MeR消光剤によって吸収され、バックグラウンドに近い信号が得られる。特定の標的に対してハイブリッド形成されると、プローブは、線形化を受け、発光/消光対が非常に近接する。化学発光の開始において、得られる信号は、消光していないAEの量に比例し、すなわち、ハイブリダイゼーションに比例し、これ自体は標的の量に比例する。この例において、標的は、Lac−Z遺伝子における24ntのmRNA配列で構成され、鋳型T7のプロモータの下流で結合されている。この技術は、T7RNAポリメラーゼの作用によって標的が生成されるのを観察するために利用される。
【0102】
(T7DNA依存性RNAポリメラーゼによるlac z mRNAの生成)
商業上利用可能なプラスミドであるpGEM−4Z(プロメガ)の線形部分は、T7ポリメラーゼの鋳型のもととして用いられていた。このプラスミドは、Lac―Zに結合されるT7ポリメラーゼのプロモータを含む。所望の部分は、分離されているとともに、予測された336bpの線形鋳型を生成するPCRを用いて増幅されており、これは、295ntのmRNAの転写物をコードしている。ポストPCRの反応混合物のアガロースジェル分析では、校正ラダーにおける300〜400bpのバンド間で溶出する1つのバンドを示した。Quiagenキットを用いてPCR反応からDNAを抽出した。
【0103】
rNTPs(5mM)、スペルミジン(2mM)、MgCl(24mM)、リボヌクレアーゼの阻害剤(0.25U/μl)及びヘペス(80mM、pH7.2、KOHを含む)を含む分析緩衝器において、分析体積が10μlで、インキュベーション温度が37℃において、T7ポリメラーゼ(0.5U/μl)及び鋳型(2.5ng/μl)を用いて、Lac―Z RNA転写物を生成した。
【0104】
そして、85mMのコハク酸、1.5mMのEDTA、1.5mMのEGTA、8.5%のリチウムラウリル硫酸塩(pH5.2、LiOHを含む)で構成され、Lac―Z HICSプローブを含む緩衝剤を90μl用いて、酵素を停止させた。プローブは、中心となる24ntの標的配列と、互いに相補的であって、末端においてMeR及びAEをそれぞれ有する3ntの3’及び5’の伸長部とで構成した。このプローブは、37℃で60分を超える時間において、標的とハイブリッド形成を行った。そして、0.2M、pH9.0のトリスを200μl加え、追加直後から5分経過した時点において、照度計を用いることにより、末端の化学発光を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】リガーゼ酵素の活性の仕組みを説明するための図である。
【図2】ヘリカーゼ酵素の活性の仕組みを説明するための図である。
【図3】第1のDNAリガーゼの分析の仕組みを説明するための図であり、基質は、3つのオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって形成されたニックを有する二本鎖である。ここで、図の左側は、リガーゼ酵素又はリガーゼ活性を備えた基質がある場合の分析を示し、図の右側は、リガーゼ酵素又はリガーゼ活性を備えた基質が無い場合の分析を示す。
【図4】基質を用いたDNAリガーゼの分析を説明する図であり、二本鎖には、分析の観察に用いられる化学発光分子及び対応する消光分子が設けられている。ここで、図の左側は、リガーゼ又はリガーゼ活性の酵素がある場合の分析を示し、図の右側は、リガーゼ酵素又はリガーゼ活性の酵素が無い場合の分析を示す。
【図5】ヘリカーゼの分析を説明するための図であり、基質は、分離した端を有し、予めアニーリングされた鎖間の標識された二本鎖である。
【図6】ヘリカーゼの分析の仕組みを説明するための図であり、基質は、予めアニーリングされた二本鎖であり、化学発光分子とこれに対応する消光によって標識されたオリゴヌクレオチドが用いられている。このオリゴヌクレオチドは、二本鎖のうちの一本鎖を補完するようになっている。
【図7】RNAポリメラーゼの分析の仕組みを説明するための図であり、基質は、リポータ領域に結合されたプロモータを含むDNA二本鎖であり、リポータは、標識オリゴヌクレオチドのプローブの標的分子をコード化する。
【図8】DNAポリメラーゼの分析の仕組みを説明するための図であり、基質は、プロモータ及びリポータ配列の一本鎖コード領域を含み、予めプライマー化されたテンプレートである。また、この仕組みにおいて、化学発光標識及び対応する消光によって表紙記されたオリゴヌクレオチドのプローブの用途を示す。このオリゴヌクレオチドは、核酸分子のリポータ領域における転写物を補完する。
【図9】DNAプライマーゼの分析の仕組みを説明するための図であり、基質は、プロモータ及びリポータ配列をコード化する領域の上流におけるDNAプライマーゼ認識部位を含む一本鎖構造のDNAである。ここで、化学発光分子及び対応する消光分子によって標識されたオリゴヌクレオチドのプローブは、プロモータ配列に対応するメッセンジャーRNAを補完するようになっている。
【図10】酵素濃度が1.1nMであり、基質濃度が1nMである場合における、RNAポリメラーゼの時間に対する活性を示すグラフである。
【図11】酵素濃度が0.1nMであり、基質濃度が1nMである場合における、RNAポリメラーゼの時間に対する活性を示すグラフである。
【図12】lac z mRNAを生成するT7RNAポリメラーゼの時間を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構成を第1の状態から第2の状態に変化させることが可能な酵素の活性を測定するための方法であって、
酵素と、核酸と、任意に、第1又は第2の状態において少なくとも一部が核酸と相補する1つ以上のオリゴヌクレオチドとを試験試料に供給する工程であって、核酸及び/又はオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの発光分子及び/又は、化学発光分子から化学発光を減衰させる少なくとも1つの消光分子によって標識されているとともに、化学発光分子及び消光分子は、核酸が第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用を変化させるように配置されて、第1及び第2の状態の一方において化学発光が実質的に減衰されるものであり、
化学発光分子の化学発光を観察する工程と、
任意に有する工程であって、酵素の欠損に対応する部分と発光を比較する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酵素は、リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素及びギラーゼの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸が一本鎖構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸が二本鎖構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記化学発光分子及び前記消光分子が、前記核酸に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記化学発光分子及び前記消光分子は、二本鎖構造の核酸のうち異なる鎖に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記化学発光分子又は前記消光分子は、前記核酸に設けられており、
対応する前記化学発光分子又は前記消光分子は、前記オリゴヌクレオチドに設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記化学発光分子及び前記消光分子は、前記オリゴヌクレオチドに設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記核酸は、gDNA、cDNA、mRNA、tRNA又はrRNAであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記試験試料は、試験対象の酵素の活性に影響を与える因子を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記因子は、前記酵素の前又は後において、前記試験試料に加えられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の酵素及び/又は複数の核酸が設けられているとともに、任意に、複数のオリゴヌクレオチドが設けられており、
核酸及び/又はオリゴヌクレオチドを、異なる発光分子及び対応する消光分子によって標識して、対応する核酸を有する酵素、又は複数の酵素の活性を測定するために、複数の化学発光反応を同時に観察することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
酵素に関する活性を調節するための因子をスクリーニングするために、請求項1から12のいずれかに記載の方法を用いることを特徴とする方法の使用。
【請求項14】
核酸が第1又は第2の状態で存在するか否かを測定するために、請求項1から9のいずれかに記載の方法を用いることを特徴とする方法の使用。
【請求項15】
所定の酵素の活性を測定するための用いられる基質の核酸であって、
核酸の複合体と、
化学発光分子及び/又は対応する消光分子とを有し、
前記核酸は、前記酵素による作用を受けることが可能であり、
前記基質の核酸は、第1の状態から第2の状態に変化することで、化学発光分子及び消光分子間の相互作用を変化させるとともに、この化学発光を変化させることを特徴とする基質の核酸。
【請求項16】
所定の酵素の作用を受ける核酸に対して、少なくとも一部で相補的又は、酵素活性の生産物に対して相補的なオリゴヌクレオチドであって、
前記オリゴヌクレオチドは、化学発光分子及び対応する消光分子と結合し、
前記化学発光分子及び前記消光分子は、前記オリゴヌクレオチドがこの相補的な配列とハイブリッド形成しないときに、化学発光を減衰するように配置されていることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドは、ステムループ構成であることを特徴とする請求項16に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドは、第1の端に向けて配置された化学発光分子と、第2の端に向けて配置された対応する消光分子とを有し、
さらに、前記オリゴヌクレオチドは、ハイブリッド形成によってステムループ構成を生成することが可能な、少なくとも一対の相補的な内部鎖配列を有することを特徴とする請求項17に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
化学発光分子又は対応する消光分子を含む所定の酵素の活性を測定する場合において、基質として用いられる核酸複合体と、
前記核酸に対して、少なくとも一部において相補的なオリゴヌクレオチドとを有し、
前記オリゴヌクレオチドは、前記核酸に対して、対応する消光分子又は、前記化学発光分子を有することを特徴とする化学発光標識システム。
【請求項20】
核酸構成を第1の状態から第2の状態に変化させることが可能な少なくとも1つの酵素の活性を測定するための方法であって、
測定される活性を有する少なくとも1つの酵素と、基質の核酸と、任意に、第1又は第2の状態において、前記核酸に対して少なくとも一部が相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドとを試験試料に与える工程であって、前記核酸及び/又は前記オリゴヌクレオチドが、複数の化学発光分子及び/又はこれらに対応する消光分子で標識され、核酸が第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用が変化するように、各対に関して前記化学発光分子及び前記消光分子が配置されることにより、各対から信号が出力され、第1及び第2の状態の一方において、化学発光が実質的に減衰されるものであり、
前記化学発光対のそれぞれからの化学発光を観測する工程と、
任意の工程であって、前記酵素の欠損に対応した部分と発光とを比較する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項21】
核酸の構成を第1の状態から第2の状態に変化させる酵素の活性を測定するための方法であって、
リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素及びギラーゼの群から選択される酵素と、第1の状態の核酸と、任意に、第1又は第2の状態において前記核酸に対して少なくとも一部において相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドとを試験試料に与える工程であって、前記第1の状態の核酸及び/又は前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの化学発光分子及び/又は、前記化学発光分子から発光を減衰する少なくとも1つの消光分子とによって標識され、前記化学発光分子及び前記消光分子が、前記核酸が第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用が変化するように配置されており、前記核酸が前記第1及び第2の状態の一方の場合に化学発光を実質的に減衰するものであり、
前記化学発光分子の化学発光を検出する工程と、
任意の工程であって、前記酵素が欠損した試薬から生成される発光と、前記発光とを比較する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項22】
核酸構成を第1の状態から第2の状態に変化させる酵素を調整する因子をスクリーニングする方法であって、
試験対象の因子と、リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素及びギラーゼの群から選択された酵素と、前記第1の状態の核酸と、任意に、第1又は第2の状態において前記核酸に対して少なくとも一部で相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドとを、試験試料に与える工程であって、前記第1の状態の核酸及び/又は前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの化学発光分子及び/又は、前記化学発光分子から化学発光を減衰する少なくとも1つの消光分子とによって標識され、前記化学発光分子及び前記消光分子が、前記核酸が前記第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用が変化するように配置されて、前記核酸が前記第1又は第2の状態において前記化学発光を実質的に減衰するものであり、
前記化学発光分子の化学発光を検出する工程と、
任意の工程であって、前記酵素又は前記因子が欠損する試薬から生成される発光と、前記発光とを比較する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項23】
リガーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、プライマーゼ、逆転写酵素及びギラーゼの群から選択された酵素によって、構造が第1の状態から第2の状態に変化する核酸の状態を測定するための方法であって、
測定する状態の前記核酸と、前記第1又は第2の状態において前記核酸に対して少なくとも一部で相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドとを試験試料に与える工程であって、前記核酸及び/又は前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの化学発光分子及び/又は、前記化学発光分子から化学発光を減衰する少なくとも1つの消光分子によって標識され、前記化学発光分子及び前記消光分子は、前記核酸が前記第1又は第2の状態にあるかに応じて相互作用が変化するように配置されており、前記核酸が前記第1及び第2の状態の一方のときに前記化学発光を実質的に減衰するものであり、
前記化学発光分子の化学発光を検出する工程と、
任意の工程であって、測定した前記第1又は第2の状態の前記核酸の試料から生じた発光と、前記発光とを比較する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21又は22に記載の方法に用いられる基質の核酸であって、
化学発光分子及び/又は、前記化学発光分子から化学発光を減衰する消光分子によって標識され、第1の状態にある核酸を有し、
前記基質の核酸に前記酵素が作用したときに、前記基質の核酸が、第1の状態から第2の状態に変化し、前記化学発光分子及び前記消光分子間の相互作用が変化して化学発光の変化が生じることを特徴とする基質の核酸。
【請求項25】
請求項21から23のいずれかに記載の方法に用いられるオリゴヌクレオチドであって、
該オリゴヌクレオチドは、化学発光分子と、化学発光分子の発光を減衰する消光分子とを有しており、
前記化学発光分子及び前記消光分子は、前記オリゴヌクレオチドが前記核酸の相補配列をハイブリッド形成していないときに、化学発光を減衰するように配置されていることを特徴とするオリゴヌクレオチド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−503805(P2007−503805A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524416(P2006−524416)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003633
【国際公開番号】WO2005/021784
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(502151565)モレキュラー ライト テクノロジー リサーチ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】