説明

酵素糖化用原料の製造方法、糖の製造方法及びエタノールの製造方法

【課題】リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアにより処理して、酵素糖化用原料を製造する方法であって、高い酵素糖化効率を有する酵素糖化用原料を得ることができ、且つ、アンモニアの分離・回収に要するエネルギーを低減することが可能な方法の提供。
【解決手段】前記処理を行う系内に存在する水分量が下記式(1):水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30(1)を満たし、前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロースを含む植物バイオマスから糖を製造する際に用いられる酵素糖化用原料を製造する方法、前記原料から糖を製造する方法及びこれらを利用するエタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の一環として、植物バイオマスを原料として製造されたエタノールを輸送用車両等の燃料として利用することが行われている。中でも、食料や飼料としての利用と競合する穀物や植物から搾取される糖液などを原料とするのではなく、リグノセルロースを主体とする植物バイオマスを原料とするエタノールの製造が盛んに研究されている。
【0003】
リグノセルロースを主体として構成される植物バイオマスを原料とするエタノールの製造においては、原料である前記バイオマスを加水分解して糖化し、生成した糖を酵母等の微生物により発酵させてエタノールを得る。
【0004】
前記糖化は従来、濃硫酸を用いて行われることが多かったが、環境負荷低減の観点から、硫酸を使用しない方法の開発が望まれている。そこで、近年は、濃硫酸による糖化に代わる手段として、酵素を用いた前記バイオマスの糖化が広く研究されている。酵素による糖化は、環境に対する影響の観点から望ましい手段であるが、この酵素糖化のためには、酵素を作用させ易くする目的から、予めバイオマスに対して前処理を行い、糖の製造に用いられる酵素糖化用原料を得て、該原料を酵素糖化に供することが必要となる。この前記バイオマスの前処理方法として様々な方法が知られているが、中でも、加圧熱水、希硫酸等による蒸煮処理が一般的である(例えば、下記特許文献1〜4参照。)。しかしながら、希硫酸を用いる方法は、前術のように好ましくない硫酸の排出の問題があり、また、水による蒸煮処理においても、得られた処理物が酵素糖化において所望の程度の糖化効率を得るためには、当該処理を200℃以上の高温において実施する必要がある。このような高温での処理においては、前記バイオマスの過分解により、後の発酵工程において微生物に対する阻害作用を及ぼす物質が副生し、発酵工程の効率を低下させることがあった。また、蒸煮処理は通常多量の水中で行うため、前処理で得られた混合液をそのまま糖化工程に供する場合、得られる糖液中の糖濃度が低くなり、その後の発酵工程における効率が低下するとの問題もあった。
【0005】
一方、前記バイオマスをアンモニアにより前処理することにより、その化学的、生物化学的反応性が向上することが知られている(例えば、下記特許文献5、非特許文献1参照。)。アンモニア処理は、前述の蒸煮処理に比較して低温で行うことができるため、バイオマスの過分解による発酵に対する阻害物質の生成を、相対的に抑制することができる。また、アンモニア処理は非水系での処理が可能であるため、処理後の酵素糖化におけるバイオマス/水の比率を自由に設定することが可能であり、得られる糖液の濃度の低下を抑制することが可能である。
【0006】
アンモニアによる前記バイオマスの前処理においては、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースの結合が開裂することにより、セルロースとリグニンとが分離され、糖化工程において、酵素のセルロースに対する作用が容易になることにより、糖化効率が向上すると考えられている。
【0007】
また、アンモニア処理により、前記バイオマス中のセルロースを主として構成するセルロース型結晶が、より低い結晶密度を有する結晶型、特にセルロースIII型結晶に転移することによって、酵素による糖化効率が更に向上するという、前述のリグニンとヘミセルロースの結合の開裂とは別の作用機構が知られている(例えば、下記特許文献5参照。)。そして、前記セルロース結晶型の転移は、前記バイオマスを液相のアンモニア、あるいは超臨界状態にあるアンモニアに接触させることにより進行することが知られている。一方、気相のアンモニアは、セルロースに対して化学的観点及び構造的観点から何ら影響を与えず、酵素糖化の効率の向上に寄与しないとされている(非特許文献1参照。)。更に、気相のアンモニアは、セルロース−アンモニア中間体を形成することができないため、セルロースI型結晶をセルロースIII型結晶に転移させる作用がないことが知られている(非特許文献2参照)。したがって、前記バイオマスのアンモニアによる処理において、前記リグニンとヘミセルロースの結合の開裂による作用機構と、セルロース結晶形態の転移による作用機構の双方を利用して、より酵素糖化の効率を向上させようとすると、液相を含むアンモニアあるいは超臨界状態のアンモニアにより処理を行う必要がある。
【0008】
一方、商業的規模でアンモニアによる前記バイオマスの処理を行う場合、コスト面からアンモニアの回収・再利用が必須である。また、処理後のバイオマスとアンモニアの分離は、アンモニアを気相状態として気固分離することが、装置コストおよび運転コストの面から好ましい。しかし、極めて大きな蒸発潜熱(1262kJ/kg(0℃、101.3kPa))をもつアンモニアを、超臨界状態あるいは液相状態から気化させるためには、大きな熱エネルギーの投入が必要である。したがって、前記セルロース結晶形態の転移を進めるために、液相のアンモニアにより前記バイオマスを処理する際には、エネルギー・コスト低減の観点から、極力少量の液相のアンモニアによりこれを行うことが合理的である。そのためには、気液混相のアンモニアを用いることが好ましい。
【0009】
気液混相のアンモニアを用いて前記バイオマスの前処理を行う場合、従来は、アンモニアの相図に基づき、気液混相となる条件(温度、圧力)を選択していた。そして、相図上で気相であるアンモニアを用いて前処理を行っても、セルロース結晶形態の転移は進行せず、高い糖化効率をもつ酵素糖化用原料は得られないと思われてきた。
【0010】
一方、アンモニアを用いた前記バイオマスの処理により酵素糖化用原料を製造するにあたり、処理後にバイオマスとアンモニアとを分離する際に、アンモニアを気化するために要するエネルギー量を更に削減することは、該方法の商業的実施にとって不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−075007号公報
【特許文献2】特開2004−121055号公報
【特許文献3】特表2002−541355号公報
【特許文献4】特開2002−159954号公報
【特許文献5】欧州特許公開第77287号公報
【特許文献6】特開2008−161125号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Sendich E.,Laser M.,Kim S.,Alizadeh H.,Laureano−Perez L.,Dale B.and Lynd L. Recent process improvements for the ammonia fiber expansion(AFEX) process and resulting reduction in minimum ethanol selling price Bioresource Technology 99,8429−8435(2008)
【非特許文献2】A.J.Barry,F.C.Peterson&A.J.King,x−Ray Studies of Reactions of Cellulose in Non−Aqueous Systems . Interaction of Cellulose and Liquid Ammonia,J.Am.Chem.Soc.,58,333(1936)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来技術における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアにより処理して、酵素糖化用原料を製造する方法であって、高い酵素糖化効率を有する酵素糖化用原料を得ることができ、且つ、アンモニアの分離・回収に要するエネルギーを低減することが可能な前記方法を提供することを目的とする。また、前記酵素糖化用原料を用いる効率的な糖の製造方法、及びこれらを利用する効率的なエタノールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。すなわち、リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアにより処理するに際して、従来知られているアンモニアの相図上の、従来気相域とされていた特定の領域においてアンモニアが気液混相となることを見出した。そして、前記特定の領域にあるアンモニアを用いて前記バイオマスを処理することにより、高い糖化効率をもつ酵素糖化用原料が得られ、且つ、従来知られている気液混相のアンモニアを使用する場合に比較して、より少量の液相のアンモニアによる処理を行うことができ、処理後のアンモニアの気化・分離に要するエネルギー消費量を低減できることを見出した。
【0015】
本発明の糖の製造に用いられる酵素糖化用原料の製造方法は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアで処理する酵素糖化用原料の製造方法であって、前記処理を行う系内に存在する水分量が下記式(1):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (1)
を満たし、前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置することを特徴とする。なお、前記領域を、以下、「特定領域」ということもある。
【0016】
リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアで処理する際に、処理を行う系内に存在する水分量が前記式(1)を満たし、且つ、アンモニアの温度及び圧力が前記相図上の上記特定領域内に位置すると、高い酵素糖化効率を有する酵素糖化用原料を得ることができ、且つ、処理後にアンモニアを分離・回収する際に要するエネルギーを低減することが可能となる。
【0017】
本発明の酵素糖化用原料の製造方法においては、前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、前記アンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−0.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、によって形成される閉じた領域内に位置することが好ましい。これにより、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率を更に向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の酵素糖化用原料の製造方法においては、前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、前記アンモニアの相図において、更に、飽和蒸気圧線に接する等エンタルピー線上又は該等エンタルピー線より低温・高圧側に位置することが好ましい。これにより、アンモニアをバイオマスから分離する際に、アンモニアを断熱膨張させた場合であっても、アンモニアが液化することがなく、アンモニアの分離・回収に要するエネルギーをより小さくすることが可能となる。
【0019】
本発明の酵素糖化用原料の製造方法においては、前記水分量が、下記式(2):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (2)
を満たすことが更に好ましい。バイオマスとアンモニアが接触する系内に存在する水分量が式(2)を満たすことにより、バイオマスを構成するセルロース結晶I型の実質的に全てをセルロース結晶III型に転移させることができ、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率を更に向上させることが可能となる。
【0020】
本発明の糖の製造方法は、前記酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化する工程を備えることを特徴とする。
【0021】
前記酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化することにより、高い糖化効率にて糖を得ることができる。
【0022】
本発明のエタノールの製造方法は、前記糖の製造方法によって得られた糖を発酵させる工程を備えることを特徴とする。
【0023】
前記酵素糖化用原料を用いて、酵素糖化により得た糖から、発酵法によりエタノールを製造することにより、リグノセルロースを含む植物バイオマスから、効率的にエタノールを生産することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前記従来技術における問題を解決し、リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアにより処理して、糖の製造に用いられる酵素糖化用原料を製造する方法であって、高い酵素糖化効率を有する酵素糖化用原料を得ることができ、且つ、アンモニアの分離・回収に要するエネルギーを低減しるすことが可能な前記方法を提供することができる。また、効率的な糖の製造方法、及び効率的なエタノールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】アンモニアの相図である。
【図2】参考例によりアンモニア処理したバイオマスのX線回折パターンを示す図である。
【図3】アンモニアの相図上における、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−0.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、によって形成される閉じた領域と、実施例1〜7及び比較例2〜7のアンモニア処理におけるアンモニアの温度及び圧力との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態:糖の製造に用いられる酵素糖化用原料の製造方法>
本発明の第1実施形態に係る糖の製造に用いられる酵素糖化用原料の製造方法は、リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアで処理する酵素糖化用原料の製造方法であって、前記処理を行う系内に存在する水分量が下記式(1):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (1)
を満たし、前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置するものである。なお、本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法は、必要に応じて上記のアンモニア処理工程以外の工程を備えてもよい。
以下、本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法について詳述する。
【0027】
本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法においては、出発原料としてリグノセルロースを含む植物バイオマスが用いられる。かかる植物バイオマスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、農業や林業等の生産活動に伴う残渣として得られる「廃棄物バイオマス」や、エネルギー等を得る目的で意図的に栽培して得られる「資源作物バイオマス」などを使用することができる。前記「廃棄物バイオマス」としては、例えば、廃建材、間伐材、稲わら、麦わら、もみ殻、バガスなどが挙げられ、また、前記「資源作物バイオマス」としては、例えば、セルロース類の利用を目的として栽培されるユーカリ、ポプラ、アカシア、ヤナギ、スギ、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、ミスカンサス、ススキ、リードカナリーグラスなどが挙げられる。また、前記バイオマスは、木に由来する「木質バイオマス」、草に由来する「草本バイオマス」などにも分類される。本発明においては、木質バイオマス及び草本バイオマス共に使用することができる。
【0028】
(バイオマスの粒子化工程)
前記バイオマスは、収集されたものをそのまま使用してもよいが、バイオマスの粒子化工程において、粒子状に裁断又は粉砕してから使用することが好ましい。裁断又は粉砕により得られるバイオマス粒子の大きさとしては特に制限はなく、粒子としての取り扱いやすさや、後の酵素糖化における効率などに応じて適宜選択することができるが、例えば、裁断又は粉砕に際して通過するメッシュの目開きとして5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。前記メッシュの目開きの大きさが5mmを超えると、前記アンモニアによる処理の効果、あるいは後の酵素糖化における効率が十分に向上しないことがある。一方、単位操作としての粉砕はエネルギー効率が低く、粉砕により微細なバイオマス粒子を得ようとすると大きなエネルギーを要し、コストが過大となることから、粉砕に供するエネルギー投入量は、例えば乾燥バイオマス1kg当たり1MJ以下が好ましい。
【0029】
前記裁断、粉砕に用いる粉砕機としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ディスクミル、ボールミル、振動ミル等を用いることができる。
【0030】
(バイオマスの乾燥工程)
本実施形態において、前記バイオマスの水分含有量は特に制限されないが、後述する、前記バイオマスのアンモニア処理を行う系内に存在する水分量を好ましい範囲とするために、バイオマスの乾燥工程において、バイオマスの乾燥を行なうことが好ましい。
【0031】
前記バイオマスの乾燥方法は特に限定されないが、大気中、高温にて加熱すると、バイオマスの組織の破壊あるいは酸化が起こることから、例えば、天日乾燥、100℃以下の加温下での通風による乾燥、減圧乾燥、ジメチルエーテルを用いた乾燥などを採用することが好ましい。なお、前記バイオマスの乾燥は、収集した前記バイオマス原料を粒子状に粉砕あるいは裁断する前であってもよいし、その後でもよい。
【0032】
前記バイオマスの乾燥は、乾燥された前記バイオマスの水分含有量が、好ましくは、水分を含むバイオマスの質量を基準として30質量%以下、より好ましくは、15質量%以下となるように行うことが望ましい。バイオマスの水分含有量を前記の範囲とすることにより、後述する、前記バイオマスのアンモニア処理を行う系内に存在する水分量を好ましい範囲とすることが容易となる。
【0033】
(アンモニア処理工程)
次に、図1に示すアンモニアの相図を参酌して、アンモニア処理について説明する。図1に示したアンモニアの相図は、横軸をアンモニアの温度(℃)、縦軸をアンモニアの密度(kmol/m、横軸との交点におけるアンモニアの密度を0kmol/m)としたものである。ここで、アンモニアの密度とは、アンモニアを収容する容器内に存在する全てのアンモニアのモル数(kmol)を当該容器の容量(m)で除した値であり、アンモニアは気相、液相、気液混相のいずれにあるものも含まれる。よって、アンモニアが気液混相にある場合は、密度は気相と液相の平均値となる。また、当該相図においては、圧力を等圧線により表す。この相図において、飽和蒸気圧線よりも低温/高圧(高密度)側においてはアンモニアが気液混相又は液相にあり(図1記載の範囲においては気液混相)、飽和蒸気圧線よりも高温/低圧(低密度)側においては、アンモニアが気相にあることを意味する。また、等圧線は、それぞれ一定の圧力におけるアンモニアの温度と密度を表す点を結んだものである。この相図は、例えば、小松安雄,新しいモリエル線図,日本機械学会論文集,26,1622(1960)から計算などによって得ることができ、一義的に決定することができる。
【0034】
なお、前記バイオマスが共存することにより、相図上の特定領域及び従来の気液混相域においては、相図の示すアンモニアの密度は実際のアンモニアの密度とは異なっている。このことから、前記特定領域を示す相図上の位置は、横軸である温度と等圧線で表される圧力により決定され、縦軸であるアンモニア密度は用いられない。
【0035】
本実施形態の糖の製造に用いられる酵素糖化用原料の製造方法においては、アンモニア処理工程におけるアンモニアの温度及び圧力が、上記のアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置する。
【0036】
前記アンモニアの相図において、飽和蒸気圧線よりも低温/高圧(高密度)側の相図上の気液混相域にあるアンモニアを用いて処理を行う場合には、処理を行う系内に、前記バイオマス中のセルロース結晶形態の転移を効率的に進行させるために必要な量を超える過剰な液相のアンモニアが存在する場合があり、処理後のアンモニアの気化に際して、必要な熱エネルギーの量が増加する傾向がある。
【0037】
前記アンモニアの相図において、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線よりも高温/低圧(低密度)側の領域にあるアンモニアを用いて処理を行う場合には、前記セルロース結晶形態の転移を効率的に進行させるために必要な量の液相のアンモニアが存在しない場合があり、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率が十分に向上しない傾向にある。
【0038】
前記アンモニアの相図において、横軸と温度60℃の位置にて直交する直線よりも低温側にある(60℃よりも低温である)アンモニアを用いて処理を行う場合には、前記リグニンとヘミセルロースとの結合(エステル結合)の開裂が十分に進行せず、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率が十分に向上しない傾向にある。
【0039】
なお、アンモニアの温度及び圧力が前記相図上の特定領域内に位置するためには、アンモニアの温度は60℃〜132.5℃(アンモニアの臨界温度)の範囲となる。好ましいアンモニアの温度範囲は70〜120℃である。
【0040】
前記アンモニアの相図において、圧力が1.7MPaAである等圧線よりも低圧側にあるアンモニアを用いて処理を行う場合には、前記リグニンとヘミセルロースとの結合(エステル結合)の開裂及び前記セルロース結晶形態の転移が十分に進行せず、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率が十分に向上しない傾向にある。
なお、アンモニアの温度及び圧力が前記相図上の特定領域内に位置するためには、アンモニアの圧力は1.7MPaA〜11.3MPaA(アンモニアの臨界圧力)の範囲となる。
【0041】
前述のように、前記バイオマスのアンモニアによる処理による酵素糖化効率の向上に対しては、2種の異なる作用機構、すなわち、リグニンとヘミセルロースとの間の化学結合(エステル結合)の開裂、及びセルロースI型結晶のセルロースIII型結晶への転移が提案されている。
【0042】
前記リグニンとヘミセルロースとの間の化学結合の開裂は、気相、液相、超臨界状態のいずれにあるアンモニアであっても、60℃程度以上の温度での処理を行えば、効率的に進行させることができる。一方、前記セルロース結晶形態の転移を進行させるためには、液相(気液混相を含む)あるいは超臨界状態にあるアンモニアと前記バイオマスとの接触が必要であり、気相のアンモニアとの接触では、該転移は進行しない。
【0043】
本発明者らは、前記バイオマスと液相のアンモニアとの接触による前記セルロース結晶形態の転移は、乾燥バイオマスの質量と、液相のアンモニアの質量の比(液相のアンモニアの質量/乾燥バイオマスの質量)の増加と共に進行し易くなること、及び、前記比が約0.4以上の場合には実質的に全てのセルロースI型結晶がセルロースIII型結晶に転移するとの新たな知見を得た。また、前記バイオマスと液相のアンモニアとの接触においては、前記結晶形態の転移の速度は極めて大きく、処理温度が例えば−20℃程度の低温であっても、前記結晶形態の転移は速やかに進行するとの知見を得ている。
【0044】
一方、前記比が約0.4であれば前記結晶形態の転移は十分に進行するので、液相のアンモニアによる処理を行う場合はもとより、気液混相のアンモニアによる処理を行う場合であっても、処理を行う系内に前記比を超える量の液相のアンモニアが存在する場合は、過剰な量の液相のアンモニアを使用することとなる。この場合、処理後に、アンモニアを気化させ、固気分離によりバイオマスから分離して回収する際に、前記過剰な量の液相のアンモニアを気化させるための熱エネルギーを供給する必要があり、コストの上昇をもたらすこととなる。したがって、低減されたエネルギー・コストにおいて、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率を向上させるためには、前記セルロース結晶形態の転移を効率的に進めるために必要であり、且つ、過剰分を含まない量の液相のアンモニアによる処理を行うことが必要である。このような条件においてアンモニア処理を行うためには、液相のアンモニアと気相のアンモニアとの比率がコントロールされた気液混相のアンモニアによる処理を行うことが必要である。
【0045】
更に、本発明者らは、アンモニアと前記バイオマスが共存する系において、特定の条件下では、アンモニアは従来知られている相図とは異なる挙動をとるとの新たな知見を得た。すなわち、横軸を温度、縦軸を密度とし、圧力を等圧線で描く従来知られるアンモニアの相図において、温度及び圧力が、飽和蒸気圧線よりも高温/低圧(低密度)側である気相域のうちの特定領域にプロットされる場合には、相図上では気相であっても、実際にはアンモニアが気液混相となることを見出した。理由は定かではないが、アンモニア単独では気相である温度及び圧力の領域であっても、前記バイオマスが共存することにより、一部のアンモニアが凝縮するのである。なお、前記アンモニアの相図においては、飽和蒸気圧線の低温/高圧(高密度)側が気液混相(湿り蒸気)域、飽和蒸気圧線の高温/低圧(低密度)側が気相(乾き蒸気)域を表す。
【0046】
従来、前記バイオマスを気液混相のアンモニアにより処理する場合、通常は、前記一般に知られたアンモニアの相図上で気液混相となる条件(温度、圧力)、すなわち、前記相図上で飽和蒸気圧線よりも低温/高圧(高密度)側の領域内の条件を選択していた。これに対して、上記本発明者らが新たに見出したアンモニアが気液混相となる領域は、相図上の気液混相域に比較して高温/低圧側に位置するため、相図上の気液混相域よりも液相のアンモニア/気相のアンモニアの比が小さい。前述のように、前記バイオマス中のセルロース結晶形態の転移が効率的に進行するためには、乾燥バイオマスの質量に対する液相のアンモニアの質量が一定の比以上となることが好ましいが、一方で、必要量以上の液相のアンモニアの存在は、処理後のアンモニアの気化に要する熱エネルギーの増大を招く。上記本発明者らが新たに見出した、従来のアンモニアの相図上の気相域内であって、前記バイオマスの共存下では気液混相となる特定領域においては、前記セルロース結晶形態の転移が相図上の気液混相域と同様に効率的に進行し、且つ、相図上の気液混相域よりも、過剰量の液相のアンモニアの存在が抑制され、処理後のアンモニアの気化に際して、供給する熱エネルギーが低減できるとの点で、より好ましい条件である。一方、前記アンモニアの相図上で気液混相域の条件を選択した場合には、処理を行う系内に、前記セルロース結晶形態の転移を十分に進行させるために必要とする量を超える過剰量の液相のアンモニアが存在していたことが判明したのである。
【0047】
なお、前記特定領域においてアンモニアが気液混相にあることは、当該特定領域にあるアンモニアにより前記バイオマスの処理を行った後、アンモニアの回収、定量を行った結果、従来知られたアンモニアの相図から得られる当該特定領域の気相のアンモニアの密度から計算される量を超えるアンモニアが回収されたことにより確認された。
また、前記液相のアンモニアの質量/乾燥バイオマスの質量の比が約0.4以上において実質的に全てのセルロースI型結晶がセルロースIII型結晶に転移するとの知見も、処理後に回収されたアンモニア量と相図上の気相のアンモニアの密度から計算されるアンモニア量との差から液相にあるアンモニア量を推定し、これから求められる液相のアンモニアの質量/乾燥バイオマスの質量の比と、処理後のバイオマスを分析して得られるセルロースI型結晶の残存とセルロースIII型結晶の生成に関する情報とから得たものである。
【0048】
本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法においては、アンモニア処理に使用するアンモニアの温度及び圧力が、前記特定領域の中でも、更に、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−0.5kmol/m平行移動した曲線上及びこの曲線の高密度側に位置することが好ましい。アンモニアの温度及び圧力が当該領域内に位置することにより、前記バイオマス中のセルロースI型結晶のセルロースIII型結晶への転移が更に効率的に行われ、得られる糖の製造に使用される酵素糖化用原料の酵素糖化の効率が更に向上する。
【0049】
本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法においては、アンモニア処理に使用するアンモニアの温度及び圧力が、前記特定領域の中でも、更に、飽和蒸気圧線に接する等エンタルピー線上及びこの等エンタルピー線より低密度側に位置することが好ましい。アンモニアが当該領域内に位置することにより、処理後のアンモニアをバイオマスから分離するに際して、例えばアンモニアを大気圧まで断熱的に降圧したとしても、温度降下による一部のアンモニアの凝縮が生じることがないので、凝縮したアンモニアを再度気化させるためのエネルギー投入の必要がなく、エネルギー・コストの点で一層有利である。
【0050】
前記アンモニア処理工程において、前記バイオマスとアンモニアが接触する系内に存在する水分量は、前記式(1)を満たす。
【0051】
前記水分量が前記式(1)を満たすことにより、前記バイオマスを構成するセルロースI型結晶の少なくとも一部をセルロースIII型結晶に転移させることができ、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率を向上させることが可能となる。
【0052】
更に、前記バイオマスとアンモニアが接触する系内に存在する水分量は、下記式(2):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (2)
を満たすことがより好ましい。
【0053】
前記水分量が前記式(2)を満たすことにより、前記バイオマスを構成するセルロースI型結晶の実質的に全てをセルロースIII型結晶に転移させることができ、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化効率を更に向上させることが可能となる。
【0054】
前記バイオマスとアンモニアが接触する系内に存在する水分量は、前述の、植物バイオマスの乾燥及び処理に使用するアンモニアの水分を管理することにより制御することができる。実質的に水分を含まないアンモニアを使用する場合は、前記バイオマスが含む水分のみが水分の供給源となるので、前記バイオマスの乾燥工程における前記バイオマスの乾燥が、前記水分量を決定することとなる。
【0055】
前記アンモニア処理工程における処理時間は限定されず、アンモニアの温度によっても大きく異なるが、一般的には5分〜12時間程度であることが好ましく、15分〜6時間程度であることがより好ましい。前記時間が5分未満である場合には、前記バイオマス中のリグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間の化学結合の開裂が十分に進行せず、セルロースとリグニンとの分離が不十分となり、得られる糖の製造に用いられる酵素糖化用原料の酵素糖化の効率が向上しない場合がある。一方、前記時間が12時間を超える場合には、酵素糖化用原料の生産効率が低下し、実用性に乏しいものとなる場合がある。
【0056】
なお、アンモニア処理工程において使用するアンモニアは、前記植物バイオマス原料を構成するヘミセルロース中のエステル結合の少なくとも一部を切断すること、及びセルロースI型結晶をIII型結晶に転移させることが可能な範囲であれば、アンモニア以外の化合物を更に含有していてもよい。アンモニア以外の化合物としては、例えば、二酸化炭素、窒素、エチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、フェノール、ジオキサン、キシレン、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。また、エチレンジアン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
前記アンモニア処理工程において使用する装置は、回分式であっても、半回分式であっても、また連続式であってもよい。
【0058】
(アンモニアの分離・回収工程)
アンモニアによる処理が終了した前記バイオマス及びアンモニアは、アンモニアの分離・回収工程において、好ましくは前記処理を行うための容器の出口に設けられたバルブを開放することにより、前記バルブに接続された別な容器に移送される。その際に、アンモニアの圧力を好ましくは大気圧又はその近傍まで降下させ、アンモニアを気相に保ち、続いて気固分離によりアンモニアと処理済みの前記バイオマスとを分離する。
【0059】
前記バイオマスの処理に使用するアンモニアの温度及び圧力が、前記アンモニアの相図において、特定領域の内、飽和蒸気圧線に接する等エンタルピー線上及び該線よりも低温/高圧(高密度)側の領域に位置する場合には、前記バルブの開放によるアンモニアの降圧を断熱的に行う場合には、アンモニアの温度降下により、一部のアンモニアが凝縮することとなる。この場合には、アンモニアと前記バイオマスとの気固分離により分離を円滑に行うために、前記アンモニアの凝縮を防止する、あるいは一旦凝縮したアンモニアを再び気化するために必要なエネルギーをアンモニアに供給する必要がある。一方、前記バイオマスの処理に使用するアンモニアの温度及び圧力が、特定領域の内、前記等エンタルピー線上及び該線よりも高温/低圧(低密度)側の領域に位置する場合には、前記バルブの開放によるアンモニアの降圧を断熱的に行う場合であっても、アンモニアの温度降下により、一部のアンモニアが凝縮することはなく、降圧に際してエネルギーの供給なしに、アンモニアの気相を保つことができる。よって、前記バイオマスの処理に使用するアンモニアの温度及び圧力は、特定領域の内、前記等エンタルピー線よりも高温/低圧(低密度)側の領域に位置することが、エネルギー消費量の低減の観点からより好ましい。
【0060】
前記バイオマスから分離されたアンモニアは回収され、必要に応じて脱水等の精製処理が施された後、必要な圧力まで加圧されて前記バイオマスの処理に再利用される。
【0061】
(残留アンモニア除去工程)
上記のようにしてアンモニアと分離された処理済みの前記バイオマス中には、アンモニアが残留している。そこで、残留アンモニア除去工程において、このバイオマスを例えば加温下に窒素ガス等の不活性ガス流と接触させる、あるいは減圧とすること等により、その中に残留するアンモニアを除去することが好ましい。このようにして、糖の製造に使用される酵素糖化用原料が得られる。
【0062】
<第2実施形態:糖の製造方法>
本発明の糖の製造方法は、前記本発明の酵素糖化用原料の製造方法により得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化する酵素糖化工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
以下、本実施形態に係る糖の製造方法について詳述する。
【0063】
本実施形態の糖の製造方法に係る酵素糖化工程は、前記酵素糖化用原料と酵素とを接触させることにより、前記酵素糖化用原料中に含まれる、アンモニア処理された前記バイオマスを構成するセルロース、及びヘミセルロースを加水分解して単糖類を得る工程である。
【0064】
前記酵素糖化工程に用いられる酵素糖化の方法としては、酵素を用いる限りにおいて特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。この酵素糖化工程において使用する酵素としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セルラーゼ、セロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)などが挙げられる。また、これら酵素を適当な担体又はマトリックスに固定化した固定化酵素を使用することもできる。
【0065】
前記酵素糖化工程における酵素の使用量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記酵素糖化用原料中の固形分乾燥質量1gに対して、0.001mg〜100mgが好ましく、0.01mg〜10mgがより好ましく、0.1mg〜1mgが更に好ましい。前記酵素の使用量が、前記酵素糖化用原料中の固形分乾燥質量1gに対して、0.001mg未満であると、酵素糖化が不十分となることがあり、100mgを超えると、糖化阻害が起こることがある。一方、前記酵素の使用量が前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
【0066】
前記酵素糖化工程における温度としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃〜70℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましく、30℃〜50℃が更に好ましい。前記温度が、10℃より低い温度であると、酵素糖化が十分に進行しないことがあり、70℃を超えると、酵素が失活することがある。一方、前記温度が、前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
【0067】
前記酵素糖化工程におけるpHとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3.0〜8.0が好ましく、3.5〜7.0がより好ましく、4.0〜6.0が更に好ましい。前記pHが、3.0未満、又は8.0を超えると、酵素が失活することがある。一方、前記pHが、前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
【0068】
前記酵素糖化工程により、前記酵素糖化用原料に含まれるセルロースからはグルコースが得られる。また、ヘミセルロースからはグルコース、ガラクトース、マンノースといった六炭糖及びキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成する。
【0069】
上記の酵素糖化工程により得られる単糖を含む糖液は、そのまま後述する発酵工程に供してもよいが、例えば、糖液のpHを調整する工程、糖の濃度を調整する工程などを施すことにより、発酵により適した糖液としてもよい。
【0070】
本実施形態の糖の製造方法により得られる糖は、後述するエタノールの製造方法に用いるだけでなく、乳酸の製造方法やその他の物質の製造の原料として用いることもできる。
【0071】
<第3実施形態:エタノールの製造方法>
本発明のエタノールの製造方法は、前記本発明の糖の製造方法により得られた糖を発酵する発酵工程(エタノール発酵工程)を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
以下、本実施形態に係るエタノールの製造方法について詳述する。
【0072】
本実施形態のエタノールの製造方法に係る発酵工程は、前記本発明の糖の製造方法により得られた糖を含む糖液に、エタノール発酵微生物を添加し、エタノール発酵を行う工程である。
【0073】
前記エタノール発酵微生物としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酵母、ザイモモナス・モビリス等のザイモモナス属の細菌等が好ましく、酵母がより好ましい。
【0074】
前記酵母としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サッカロマイセス・セルビシエ等のサッカロマイセス属の酵母が好ましい。但し前述のように、前記バイオマスを構成するヘミセルロースからは、酵素糖化によりキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成するが、サッカロマイセス属の天然酵母は五炭糖を資化してエタノールを産生する能力をもたない。このため、六炭糖だけでなくヘミセルロース由来の五炭糖も有効に利用してエタノールに変換するためには、五炭糖を資化してエタノールを産生する能力を有する酵母(ペントース資化酵母)を使用することも好ましく行われる。前記ペントース資化酵母としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピキア・スティピティス、カンジダ・シハタエ等が好ましい。六炭糖及び五炭糖を効率的にエタノールに変換するためには、サッカロマイセス属の酵母と、前述のペントース資化酵母とを組み合わせて使用する方法も好ましく採用される。この場合、サッカロマイセス属の酵母と前述のペントース資化酵母を共存させて発酵を行なってもよいし、まずサッカロマイセス属の酵母により糖液中のグルコースを資化させ、その後前述のペントース資化酵母により五炭糖を資化させてもよい。
【0075】
前記発酵工程に用いる酵母は、天然の酵母であってもよいし、遺伝子組換え酵母であってもよい。特に、六炭糖と五炭糖の両方の資化能を有する遺伝子組換え酵母を用いることにより、効率的にセルロース及びヘミセルロース由来の六炭糖及び五炭糖の両方をエタノールに変換することができる。
【0076】
前記発酵工程における前記酵母の使用量、糖以外の添加物、発酵温度、pH、発酵時間等の条件としては特に制限はなく、公知の条件を適宜選択して用いることができるが、pHは4〜7、発酵温度は20℃〜37℃程度が好ましい。
【0077】
また、耐熱性の酵母を用いて、通常よりも高い温度で発酵を行なうことで、冷却のための設備を必要とせず、また雑菌の繁殖を抑制して効率的に発酵を行なうこともできる。前記耐熱性の酵母としては例えば、クロイベロマイセス・マルキシアナス等のクロイベロマイセス属に属する耐熱性酵母が挙げられる。これらの耐熱性酵母を使用する場合は、発酵の温度は37℃以上50℃以下程度とすることができる。
【0078】
前記発酵工程としては、前述の酵素糖化工程と発酵工程とを同時に行う、所謂並行複発酵法を採用してもよい。この並行複発酵法を採用することにより、前記酵素糖化工程と発酵工程とを単一の工程として実施することができ、簡略化された工程によってエタノールを製造することが可能となる。前記並行複発酵としては、前記本実施形態の酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料に、酵素糖化のための酵素、及び、酵素糖化により生成する糖をそのまま反応系内でエタノール発酵させるための微生物を添加し、酵素糖化及びエタノール発酵を行う。
【0079】
本発明に係るエタノールの製造方法は、前記発酵工程において得られたエタノールを含む培地からエタノールを分離・精製する精製工程を更に備えることが好ましい。前記精製工程により、エタノールは発酵培地中に含まれる種々の物質から分離・精製され、また濃縮される。前記分離・精製の方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、まず発酵培地を、菌体等の固形分を遠心分離及び/又はろ過などにより固液分離し、エタノールを含む水溶液を回収し、その後、該水溶液を蒸留、膜分離などの方法によりエタノールを濃縮、精製する方法が好ましい。
【0080】
本実施形態のエタノールの製造方法によれば、前記酵素糖化用原料を用いて得られた糖を用いることで、効率的にエタノールを製造することができる。前記エタノールの製造方法により得られたエタノールは、例えば、燃料用エタノール、工業用エタノールなどとして好適に利用可能である。
【実施例】
【0081】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
(参考例1〜5)
リグノセルロースを含む植物バイオマスを気液混相のアンモニアによって処理を行う場合の、前記バイオマスの量に対する液相のアンモニアの量の比率が前記バイオマス中のセルロース結晶形態の転移に与える影響を調べる目的で、以下のアンモニア処理実験を行った。
【0083】
(バイオマス原料)
リグノセルロースを含むバイオマスとしてエリアンサスを用いた。
【0084】
(粉砕)
収穫したエリアンサスを4mmの目開きを有するスクリーンで粒度を制御しながらカッターミルを用いて粉砕した。レーザー回折法で測定した平均粒子径(d50)は975μmであった。
前記粉砕されたエリアンサスの含水率は、水分を含むエリアンサスの質量を基準として18.5質量%であった。
【0085】
(乾燥)
前記粉砕されたエリアンサスを40℃、5kPaAの減圧下に一昼夜乾燥し、含水率0.5質量%の乾燥エリアンサスを得た。
【0086】
(アンモニア処理)
約5Lの内容積をもち、撹拌装置を備えたステンレス・スチール製オートクレーブに前記乾燥エリアンサス200gを充てんし、窒素ガスによる加圧・脱圧を繰り返して、オートクレーブ内の空気を除去して窒素雰囲気とした後減圧として脱気を行った。このオートクレーブをドライアイス/塩化カルシウム水溶液浴により−20℃に冷却し、ここへマス・フロー・メータを介して、表1記載のそれぞれの量のアンモニアガスを導入した。アンモニアの導入後、30分間撹拌下に−20℃でアンモニア処理を行った。その後、オートクレーブを室温まで昇温した後、脱圧してアンモニアを除去した。更に、窒素ガスを流通させることによりエリアンサス中に残留したアンモニアを除去し、各酵素糖化用原料を得た。
なお、処理中にオートクレーブ内に存在する液相のアンモニアの質量は、マス・フロー・メータにより測定したアンモニア仕込量と、アンモニアの相図において温度、圧力から示されるアンモニアの飽和蒸気の密度から推定される気相のアンモニア量との差から算出した。この液相のアンモニア質量を仕込んだ乾燥エリアンサスの質量(200g)で除した比を表1に示す。
【0087】
(X線回折分析)
前記各酵素糖化用原料及びアンモニア処理を行っていない乾燥エリアンサスの試料各100mgを20MPaの圧力にて加圧成型して試料を作成し、X線回折分析に供した。X線回折分析は、管球型X線発生装置 RINT2200(商品名、リガク社製)を用い、モノクロメーターで単色化したCuKα線(波長0.15418nm)を用い、ディフラクトメトリー法により、電圧38kV、電流50mA、操作範囲2θ=5〜30°、ステップ幅0.1°、積算時間20秒の条件にてステップスキャン法で行った。参考例1、2、5及びアンモニア処理を行っていない乾燥エリアンサスのX線回折パターンを図2に示す。
それぞれの試料に関するX線回折パターンに基づき、セルロースI型に帰属されるピーク(例えば2θ=約16.2°、約21.9°)及びセルロースIII型結晶に帰属されるピーク(例えばから、2θ=約11.7°、約20.8°)から、それぞれの結晶形態の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
(実施例1〜7)
(バイオマス原料)
実施例1〜5においては、参考例1〜5と同様にして乾燥エリアンサスを得、以下の工程に供した。
また、実施例6においては、参考例1〜5と同様にして粉砕されたエリアンサスを得、次いで40℃、5kPaAの減圧下に2時間乾燥して、含水率9.5質量%のエリアンサスを得、以下の工程に供した。
また、実施例7では、参考例1〜5と同様にして粉砕されたエリアンサスを得、乾燥せずにそのまま以下の工程に供した。
【0090】
(アンモニア処理)
前記参考例1〜5で用いたものと同一のオートクレーブに、前記それぞれのエリアンサス200g(乾燥エリアンサスとしての質量)を充てんし、窒素ガスによる加圧・脱圧を繰り返して、反応器内の空気を除去して窒素雰囲気とした。そしてこの反応器を所定の処理温度近くまで昇温した。また、前記エリアンサスを充填したオートクレーブと配管により接続され、バルブにより遮断された別途のステンレス・スチール製オートクレーブを加熱し、ここへアンモニアを充填して前記処理温度よりやや高い温度までアンモニアを昇温した。前記エリアンサスを充填したオートクレーブを脱気して窒素ガスを除去し、2つのオートクレーブを連結する配管に設置されたバルブを開くことにより、エリアンサスを充填したオートクレーブにアンモニアを表1に記載の所定の温度、圧力となるように充填した。その後2時間、撹拌下にアンモニア処理を行い、その後脱圧し、更に窒素ガスを流通させることにより、エリアンサス中に残留するアンモニアを除去し、各酵素糖化用原料を得た。
表2に、各実施例において使用したエリアンサスの含水率、アンモニア処理条件を記載した。表2中、「特定領域内」はアンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置することを意味する。
また、各実施例のアンモニア処理におけるアンモニアの温度及び圧力を、図3に示したアンモニアの相図中にプロットした。図3中の丸囲みの数字は実施例番号を意味する。
【0091】
(回収アンモニア量の測定)
実施例1において、アンモニア処理の終了後の脱圧の際に、処理を行ったオートクレーブと別途の圧力容器とを配管にて連結し、該圧力容器をドライアイス温度に冷却することにより、脱圧によりオートクレーブから排出されたアンモニアをトラップした。その後該圧力容器を密封し、秤量することによりトラップされたアンモニアの量を計測した。そして相図上で当該温度、圧力条件から得られるアンモニアの蒸気密度から計算される、処理を行う系内に存在すると推定されるアンモニア量との比較を行った。その結果、処理後に回収されたアンモニア量は240gであり、当該温度、圧力条件(80℃、3.8MPaA)から相図上で求められるアンモニアの蒸気密度(1.8kmol/m(31g/L))から推定される処理を行う系内に存在すると推定されるアンモニア量は160gであった。回収アンモニア量の240gと推定アンモニア量の160gの差、80gが処理を行う系内に液相で存在したアンモニア量と判断した。そして、前記液相のアンモニアの質量を仕込んだ乾燥エリアンサス質量で除した液相のアンモニアの質量/乾燥バイオマス質量の比は0.4と算出された。
実施例1並びに実施例1と同一の温度、圧力条件である実施例6、7以外の実施例については、図3から、大まかな液相のアンモニアの質量/乾燥バイオマス質量の比の推定を行った。
【0092】
(X線回折分析)
前記各実施例により得られた各酵素糖化用原料は、前記参考例と同一の操作にてX線回折分析に供した。該分析により得られたセルロース結晶形態を表2に示す。
【0093】
(酵素糖化反応)
前記各条件によるアンモニア処理により得られた各酵素糖化用原料を用い、以下の操作により、それぞれ酵素糖化反応を実施した。
内容積1.5mlのマイクロチューブに、精秤した各酵素糖化用原料の試料10mgを取り、試料濃度1%(wt/vol)、酵素としてCelluclast(登録商標) 1.5L及びNovozyme(登録商標) 188(共に商品名、Novozyme社製)を各酵素濃度0.01%(wt/vol)、計0.02%(wt/vol)の酵素濃度、pH4.5(酢酸緩衝液)となるように酵素糖化反応液を調製した。これを37℃の恒温室にて回転振とう機(15回転/分)を用い24時間転倒振とうして酵素糖化反応を行った。反応後遠心分離によって得られた上澄み液中のグルコース濃度をグルコースCIIテストワコー(商品名、和光純薬社製)を用いて測定し、グルコース収率を算出した。
なお、グルコース収率は次式で定義される。
グルコース収率(%)=[酵素糖化反応液中のグルコース量/(酵素糖化用原料の量×全グルコース化率/100)]×100
全グルコース化率(%):(バイオマス原料を別途化学的に完全に加水分解したときに得られるグルコースの量/バイオマス原料の量)×100(バイオマス原料基準の理論収率に相当)
得られたグルコース収率を表2に示す。
【0094】
(比較例1〜7)
比較例1〜6においては、参考例1〜5と同様にして得られた乾燥エリアンサスを以下の工程に供した。
また、比較例7においては、参考例1〜5と同様にして得られた粉砕されたエリアンサスを、室温において飽和水蒸気を含む空気に接触させることにより吸湿させ、含水率32.0質量%の吸湿エリアンサスを得た。この吸湿エリアンサスを比較例7で用いた。
【0095】
(アンモニア処理)
比較例1においてはアンモニア処理を行わなかった。
比較例2〜7においては、前記各エリアンサスを用い、表2に記載の条件とした以外は、前記実施例1と同様の操作にてアンモニア処理を行い、各酵素糖化用原料を得た。表2に、各比較例において使用したエリアンサスの含水率、アンモニア処理条件を記載した。表2中、「特定領域外」はアンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置しないことを意味する。
また、各実施例のアンモニア処理におけるアンモニアの温度及び圧力を、図3に示したアンモニアの相図中にプロットした。図3中の下線付きの数字は比較例番号を意味する。
【0096】
(X線回折分析)
前記各比較例により得られた各酵素糖化用原料は、前記参考例と同一の操作にてX線回折分析に供した。該分析により得られたセルロース結晶形態を表2に示す。
【0097】
(酵素糖化反応)
前記各条件によるアンモニア処理により得られた各酵素糖化用原料を用い、前記実施例と同様の操作により、それぞれ酵素糖化反応を実施した。得られたグルコース収率を表2に示す。なお、比較例1においては、アンモニア処理を行っていない乾燥エリアンサスを用いて酵素糖化反応を行った。各比較例におけるグルコース収率を求め、結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
表1に示す参考例の結果から、バイオマスの乾燥質量に対する液相のアンモニアの質量の増加とともに、セルロース型結晶のIII型結晶への転移が進行し、その比が約0.4において実質的に全てのセルロースI型結晶がIII型結晶へ転移することが明らかとなった。また、その転移は−20℃といった低温であっても、速やかに進行することが明らかとなった。
【0100】
表2及び図3から、従来知られたアンモニアの相図において、気液混相域にあるアンモニアを用いて処理を行った場合は、セルロース結晶形態は全てIII型に転移し、酵素糖化効率も向上する。しかし、アンモニア処理を行う系内には、過剰の液相のアンモニアが存在し、処理後のアンモニアの気化に多量のエネルギーを要することが推定された。
一方、従来気相域とされていた、本願発明に係る、相図上の特定領域にあるアンモニアを使用した処理を行った場合は、得られる酵素糖化用原料は、前記相図において気液混相域にあるアンモニアを用いた場合に比較して、同等あるいはやや低いセルロースの結晶形態の転移及び酵素糖化効率を与えるが、アンモニア処理を行う系内には、過剰の液相のアンモニアは殆ど存在せず、処理後のアンモニアの気化に要するエネルギーを低減することができることが推定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースを含む植物バイオマスをアンモニアで処理する酵素糖化用原料の製造方法であって、
前記処理を行う系内に存在する水分量が下記式(1):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (1)
を満たし、
前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、横軸を温度軸、縦軸を密度軸とし、圧力を等圧線により描くアンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−1.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、圧力1.7MPaAの等圧線と、によって形成される閉じた領域内に位置することを特徴とする酵素糖化用原料の製造方法。
【請求項2】
前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、前記アンモニアの相図において、飽和蒸気圧線と、飽和蒸気圧線を縦軸方向に−0.5kmol/m平行移動した曲線と、横軸と温度60℃、密度0kmol/mの位置にて直交する直線と、によって形成される閉じた領域内に位置することを特徴とする請求項1記載の酵素糖化用原料の製造方法。
【請求項3】
前記処理における前記アンモニアの温度及び圧力が、前記アンモニアの相図において、更に、飽和蒸気圧線に接する等エンタルピー線上又は該等エンタルピー線より低温・高圧側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
【請求項4】
前記水分量が下記式(2):
水分の質量/(バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (2)
を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化する工程を備えることを特徴とする糖の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の糖の製造方法によって得られた糖を発酵させる工程を備えることを特徴とするエタノールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143179(P2012−143179A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3292(P2011−3292)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】