説明

酸化プロピレンの製造方法

酸化剤でのプロピレンの触媒的酸化によって、酸化プロピレン(「PO」)を製造するための方法であって、前記触媒的酸化が、共溶媒の10容量%未満とともに水を含む水性反応媒体中で行われ、水溶性マンガン錯体が酸化触媒として使用され、
前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y (I)
の単核種又は一般式(II):
[LMn(μ−Χ)ΜnL]Y (II)
の二核種
(Mnは、マンガンであり、L又はそれぞれのLは、独立に、多座配位子であり、各Xは、独立に、配位種であり、及び各μ−Xは、独立に、架橋配位種であるのに対して、Yは、非配位性対イオンである。)
であり、及び触媒的酸化が1.5から6.0の範囲のpHで実施されることを特徴とする、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素とマンガン錯体を用いたプロピレンの触媒的酸化によって、酸化プロピレン(「PO」)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
POは、化学産業において重要な出発材料である。POは、ポリウレタンプラスチックの製造で使用されるポリエーテルポリオールの製造において使用される。POの他の用途には、プロピレングリコール、プロピレングリコールエーテル及びプロピレンカーボナートの調製が含まれる。
【0003】
POを調製するための伝統的な経路は、プロピレンのクロロプロパノールへの転化を介して進行する(「クロロヒドリン法」として知られる。)。この反応は、1−クロロ−2−プロパノールと2−クロロ−1−プロパノールの混合物を生成し、次いで、これらは、脱塩化水素化されてPOになる。このプロセスでは、塩素吸収物質として石灰が使用される。この方法には、塩化物塩が比較的大量に副産物として生成されるという難点がある。
【0004】
この25年間、POは、有機ヒドロペルオキシドのエポキシ化によって調製されてきた。ヒドロペルオキシドは、イソブタン、エチルベンゼン及びクメンの、酸素分子又は空気での均一酸化によって製造される。エポキシ化は、均一系Mo触媒又は不均一系Ti系触媒の何れかによって達成される。この技術は、Oxirane、Halcon、ARCO(イソブタン及びエチルベンゼン)、Shell(エチルベンゼン)及びSumitomo(クメン)によって使用されている。
【0005】
これらの方法は全て、POを極めて選択的に生成するが、単離が必要な副産物を生成するという欠点がある。このプロセスの経済性を維持するために、その後、この副産物は、別個に販売し(tert−ブチルアルコール又はスチレンの場合)又はリサイクルする(クミルアルコール)必要がある。このため、これらの方法は複数工程であり、複雑な施設を必要とする。
【0006】
最近になって、有機ヒドロペルオキシドの代替物として、希過酸化水素を使用するPO法が開発された。
【0007】
例えば、WO2005000827から、チタンシリカライト触媒とメタノール溶媒の存在下での、過酸化水素によるプロペンの連続的エポキシ化の方法が公知であり、触媒は、少なくとも100℃の温度で、メタノール溶媒で洗浄することによって、定期的に再生され、エポキシ化反応は、2つの再生工程の間に、300時間超の時間にわたって実施される。同様に、US2002004606から、触媒としてのチタンシリカライトの存在下で、オレフィン化合物を過酸化水素でエポキシ化することによって、エポキシドを調製する方法が公知である。塩基は、pHの制御下で、エポキシ化反応装置中に直接導入されるか、又は1つ以上の出発物質との混合物として導入される。反応混合物中で又は塩基を含有する出発物質中で、4から9.5の範囲のpH、好ましくは、5から9.5のpHが確立され、維持される。好ましくは、8から9の範囲のpHを有する水性−有機性過酸化水素溶液が使用され、エポキシ化は、固定床反応装置中で実施される。溶媒として、メタノールが使用される。
【0008】
プロピレンの直接的エポキシ化では、溶媒としての混合されたメタノールと水の中で、1−メトキシ−2−プロパノール(又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、PGME)の合計約3から7重量%及びプロピレングリコールが一般に形成される。さらに、これらのプロセスは有機溶媒のリサイクルを必要とするので、メタノール−水又はアセトニトリル−水系などの有機溶媒を溶媒として使用することは不利である。かかるプロセスは、プロピレン及び酸化プロピレンから溶媒を分離するために複雑な蒸留機構を用いた操作を必要とする。
【0009】
さらに、Mn錯体を触媒として使用する方法が公知である。環状トリアミンのMn錯体(Mn−TmTacn錯体;「TmTacn」=1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン)は、酸化剤としてHを用いて様々なオレフィンをエポキシ化するための触媒として知られている。
【0010】
特に興味深いのは、EP0618202(US5329024に対応する。)である。EP0618202では、酸素源及びMn錯体、好ましくは、二核マンガン錯体(Mn対配位されたN原子の比率が1:3になるように、MnはNを含有する配位子に配位されている。)と接触させることによって、4−ビニル安息香酸、スチリル酢酸、トランス−3−ヘキセン酸、トランス−2−ヘキセン酸及びアリルアルコールなどのオレフィンがエポキシ化される。この参考文献によれば、エポキシ化のプロセスは、水性媒体中において実施され得る。エポキシ化が水性媒体中で実施される場合には、水溶性の基を有するオレフィンに対して最高の結果が得られる。実施例によれば、エポキシ化は、9.0に調整されたpHを有するNaHCO緩衝液を用いて、水の中で実施され得る。この参考文献は、水中でのプロピレンのエポキシ化を教示していない。プロピレンは、水溶性の基を有するオレフィンとは別のリストに列挙されている。さらに、添付の実験で例示されているように、溶媒としての水中の緩衝液とともに、推奨された触媒を使用すると、このプロセスは、プロピレンをPOへ全く転化させることができない。従って、POの調製において、この参考文献から開始した者は、水中でのPOのエポキシ化が可能であるとは考えなかった。
【0011】
Journal of Organometallic Chemistry690(2005)4498中の、Shul’pin他による文献“Oxidations by the system“hydrogen peroxide−[Mn](PF(L=1,4,7−trimethyl−1,4,7−triazacyclononane)−oxalic acid.”Part 6.Oxidation of methane and other alkanes and olefins in water”では、別のこのような試みが行われた。[Mn2+(PF6)を用いて、水の存在下で、1−デセンのエポキシ化の実施が試みられた。しかしながら、結果は、アセトニトリルの不存在下ではエポキシドは全く生成されないことを明らかにした。この文献中の実施例からは、50重量%超のアセトニトリルの添加後にのみ、1−デセンのエポキシ化が開始されたことが明白である。
【0012】
EP2149569では、同じ出願人によって、過酸化水素での末端オレフィンの触媒的酸化によって、1,2−エポキシドを製造するための方法が記載されており、該方法において、触媒的酸化は、有機相と水性反応媒体とを含む二相性の系内で行われ、水溶性マンガン錯体が酸化触媒として使用され、20℃で、水1L当り少なくとも0.01から100gの溶解度を有する末端オレフィンが使用され、末端オレフィン対過酸化水素のモル濃度比が1:0.1から1:2の範囲である。プロピレンのエポキシ化は具体的には言及されていない。
【0013】
さらに興味深いのは、Tetrahedron Letters 39(1998)3221−3224中の、DirkDeVos他による文献、「Epoxidation of Terminal or Electron−deficient Olefins with H catalysed by Mn−trimethyltriazacyclononane Complexes in the Presence of an Oxalate Buffer」である。この論文において、著者らは、アセトニトリル中において可溶性であり、活性を有する触媒系を製造する。次に、シュウ酸塩/シュウ酸緩衝液の触媒量が、Mn−TmTacn錯体の触媒特性を著しく増強することが示されている。特に、末端のオレフィンが容易にエポキシ化されることが記載されている。この技術をプロピレンに対して使用することは示唆されていない。とりわけ、1−デセンのエポキシ化が失敗したことに関連して、Shul’pin他による文献に照らせば、プロピレンのエポキシ化がアセトニトリルの不存在下で可能であることは予想できなかった。さらに、この文献に記載されているように、水を溶媒として用いて(すなわち、アセトニトリルで希釈されていない。)、プロピレン(末端オレフィン)のエポキシ化を実際に行うと、本発明者らは、可溶性触媒が全く調製されないことを見出した。実際、シュウ酸塩/シュウ酸緩衝液は、触媒に対して悪影響を及ぼすように見受けられた。従って、使用された過酸化水素に関して、POの極めて低い収率が見出された。
【0014】
Mn−TMTACN錯体(単核Mn−TMTACN錯体又は[Mn2+(PF6)のような二核Mn錯体)でのエポキシ化に関する従来技術では、プロピレンのエポキシ化は研究されなかった。
【0015】
特に興味深いさらなる参考文献は、WO2005095370である。この参考文献では、市販の過酸化水素とともに、溶媒の不存在下で又は溶媒の存在下で、遷移金属塩、無機性促進物質及び有機性添加物の組み合わせを用いて、アルケンからエポキシドを調製するための触媒的方法が記載されている。スチレン、インデン、シクロヘキセン、α−ピネン及び1,2−ジヒドロナフタレンは、通例、反応媒体としてドデカン、尿素及び水を含む混合物中でエポキシ化された。さらに、イソプレン、1−オクテン、tert−4−オクテン及びクロメンのエポキシ化は、水とともに、有機溶媒としてアセトニトリルの存在下で行われた。しかしながら、POの調製のために、尿素の最大可溶量を用いて、この方法を繰り返すと、過酸化水素に関して、低いPO収率が見出された。
【0016】
この点に関して、過酸化水素及び/又は別の酸化剤とともにアセトニトリルを使用することには、危険がないとは言えないことに注意すべきである。例えば、「Organic Synthesis,Coll.Vol.7,p.126(1990)」中に、有機溶媒、特に、アセトニトリルの使用に対して明確な警告を見出し得る。このため、この文献は、有機可溶性過酸化物は爆発性であり得るという注意書きから始まっている。
【0017】
上記から、当業界が、高いターンオーバー数と高い選択性で(ジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び溶媒の酸化に起因する生成物などの副産物が存在しないことを意味する。)、POを製造するための商業的に魅力のある方法をなお探していることは明らかである。さらに、この方法は、過酸化水素の使用の点で高い効率を有するべきである。アセトニトリル及び類似の有機溶媒に関して、環境的な問題及びその他の問題を回避するために、この方法は、反応媒体として水性溶媒(共溶媒の10容量%(v%)未満、好ましくは5v%未満、より好ましくは1v%未満を加えた水を意味する。)の使用も許容すべきである。
【0018】
本発明は、これらの欠点を克服する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2005/000827号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0004606号明細書
【特許文献3】欧州特許第0618202号明細書
【特許文献4】欧州特許第2149569号明細書
【特許文献5】国際公開2005/095370号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】“Oxidations by the system“hydrogen peroxide−[Mn2L2O3](PF6)2(L=1,4,7−trimethyl−1,4,7−triazacyclononane)−oxalic acid.”Part 6.Oxidation of methane and other alkanes and olefins in water”,Shul’pin et al.,Journal of Organometallic Chemistry690(2005)4498
【非特許文献2】“Epoxidation of Terminal or Electron−deficient Olefins with H2O2 catalysed by Mn−trimethyltriazacyclononane Complexes in the Presence of an Oxalate Buffer”,Dirk De Vos et al.,Tetrahedron Letters 39(1998)3221−3224
【非特許文献3】Organic Synthesis,Coll.Vol.7,p.126(1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は、酸化剤でのプロピレンの触媒的酸化(好ましくは、エポキシ化)によって、酸化プロピレン(「PO」)を製造するための方法であって、前記触媒的酸化が、共溶媒の10容量%未満とともに水を含む水性反応媒体中で行われ、水溶性マンガン錯体が酸化触媒として使用され、
前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y (I)
の単核種又は一般式(II):
[L−Mn(μ−Χ)ΜnL]Y (II)
の二核種
(Mnは、マンガンであり、L又はそれぞれのLは、独立に、多座配位子であり、各Xは、独立に、配位種であり、及び各μ−Xは、独立に、架橋配位種であるのに対して、Yは、非配位性対イオンである。)
であり、及びエポキシ化が1.5から6.0の範囲のpHで実施されることを特徴とする、前記方法を提供する。
【0022】
好ましい実施形態において、PO又はPOの一部は、PO又はプロピレンとPOの混合物を含む気相として単離される。
【0023】
発明を実施するための様式
本明細書において使用されるエポキシ化及び酸化という表現は同じ反応、すなわち、プロピレンの炭素−炭素二重結合のオキシラン環への転化を表す。以下、本発明をさらに詳しく論述する。
【0024】
水性反応媒体中で反応が実施されるにも関わらず、顕著な量の副産物(ジオールなど)もなく、高い選択性でPOを調製するために本発明の方法を使用できることはむしろ驚くべきことである。
【0025】
酸化触媒として使用され得る水溶性マンガン錯体に関しては、多くの適切な錯体が公知である。この点に関しては、本特許に記載されているのは、実際には、触媒前駆体であることに注意されたい。実際、全ての公開文献及び特許文献では、通例、触媒前駆体は、系の間に活性種は異なり得、実際には、当該触媒前駆体が触媒する反応中に変化することさえあると定義されている。便宜のために、また、文献ではこれが一般的なので、本発明者らは、あたかも錯体が触媒であるかのように錯体を表現する。
【0026】
典型的には、触媒は、1つ又は複数の配位子と配位された1つ又は複数のマンガン原子を含む。マンガン原子は、II、III又はIV酸化状態であり得、反応中に活性化され得る。特に興味深いのは、二核マンガン錯体である。従って、適切なマンガン錯体には、一般式(I):
[LMnX]Y (I)
の単核種及び一般式(II):
[LMn(μ−Χ)ΜnL]Y (II)
の二核種
(Mnは、マンガンであり、L又はそれぞれのLは、独立に、多座配位子、好ましくは、3個の窒素原子を含有する環状又は非環状化合物であり、各Xは、独立に、配位種であり、並びに各μ−Xは、独立に、RO、Cl、Br、I、F、NCS、N、I、NH、NR、RCOO、RSO、RSO、OH、O2−、O2−、HOO、HO、SH、CN、OCN及びS2−及びこれらの組み合わせ(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるC1−C20基である。)からなる群から選択される架橋配位種であり、並びにYは、非配位性対イオンである。)
が含まれる。対イオンYは、例えば、RO、Cl、Br、I、F、SO2−、RCOO、PF6、トシラート、トリフラート(CFSO)及びこれらの組み合わせ(同じく、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるCからC20の基である。)からなる群から選択される陰イオンであり得る。陰イオンの種類はあまり重要ではないが、幾つかの陰イオンは、他の陰イオンより好ましい。好ましい対イオンは、CHCOOである。本発明に適する配位子は、各々、少なくとも2個の炭素原子によって隔てられた窒素原子を有する、骨格中に少なくとも7個の原子を含有する非環状化合物又は環中に少なくとも9個の原子を含有する環状化合物である。配位子の好ましいクラスは、(置換された)トリアザシクロノナン(「Tacn」)を基礎とするものである。好ましい配位子は、TmTacn(1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンであり、これは、例えば、Aldrichから市販されている。この点に関して、マンガン触媒の水溶性は、先述されている全ての触媒成分にあてはまることに注意するのが重要である。
【0027】
水中での活性及び溶解度がより大きいので、二核マンガン錯体が好ましい。好ましい二核マンガン錯体は、式[MnIV(μ−O)]Y(L及びYは、上で規定されている意味を有し、好ましくは、配位子としてTmTacn及び対イオンとしてCHCOO)のものである。
【0028】
本発明によれば、マンガン錯体は、直接、又は溶媒不溶性の支持体表面上に吸着させて使用され得る。このような基材の例示的であるが、非限定的な例は、構造化されたアルミノケイ酸塩(例えば、ゼオライトA、フォージャサイトおよび方ソーダ石)、非晶質ケイ酸アルミノケイ酸塩、シリカ、アルミナ、活性炭、微孔性ポリマー性樹脂(例えば、高内相エマルジョン技術を通じて形成されたポリスチレンビース)及び粘土(特に、ヘクトライト及びハイドロタルサイトなどの層状粘土)である。マンガン錯体対支持体の相対重量比は、約10:1から約1:10,000までの範囲にある全ての比であり得る。マンガン錯体は、触媒として有効な量で使用される。典型的には、触媒は、1:10から1;10,000,000、好ましくは1:20から1:100,000、最も好ましくは1:50から1:50000の触媒(Mn)対過酸化水素のモル濃度比で使用される。水溶性マンガン錯体を使用する本発明の利点は、触媒が実質的に有機相に移動しないことである。
【0029】
水性反応媒体は、典型的には、プロピレン及び/又は酸化プロピレン並びに、他の有機化合物が存在する場合には、その10容量%未満、好ましくは、極僅かな量を含有する水相である。好ましくはないが、反応媒体は、メタノール及びアセトンなどの共溶媒の微量を含有し得る。プロピレン及び/又はPOの存在を除外すると、水性反応媒体は、従って、少なくとも90容量%、好ましくは95v%、より好ましくは99v%、さらに好ましくは99.9v%の水を好適に含む。しかしながら、最も好ましくは、水性反応媒体(同じく、その中に溶解された一切のプロピレン及び/又は酸化プロピレンを除外する。)は、実質的に100%水相である。
【0030】
水性反応媒体は、pHを安定化するために緩衝系を含有する。例えば、水性反応媒体は、1.5から6.0のpH範囲に適切に安定化されるのに対して、好ましいpH範囲は1.5と5.0の間であり、最も好ましくは、2.0と4.0の間であることが見出された。
【0031】
適切な又は好ましい範囲は、幾つかの公知の有機酸−塩の組み合わせによって達成され、好ましい組み合わせは、シュウ酸−シュウ酸塩又は酢酸−酢酸塩(3.7から5.6)又はシュウ酸−シュウ酸塩および酢酸−酢酸塩を基礎とする。シュウ酸とシュウ酸ナトリウムが使用される場合には、pHの範囲は2.0から6.0まで変動し得る。
【0032】
典型的には、この緩衝液は、触媒に対して、約10:1のモル濃度比で使用され得るが、量は、幅広く(例えば、1:1から100:1の範囲で)変動し得る。緩衝液で修飾された架橋配位種(μ−X)を形成するために、緩衝液はマンガン錯体も修飾し得る。緩衝液材料から生成されるかかる架橋配位種の例には、[OOC−COOH]1−、[OOC−COO]2−、[OOCC−R−CCOOH]1−、[OOCC−R−CCOO]2−及びこれらの組み合わせが含まれる。修飾された架橋配位種は、本明細書に記載されているマンガン錯体の構造中に、利用可能な架橋配位種の位置の1つ以上を含み得る。例えば、[OOC−COOH]1−の架橋配位種は、シュウ酸塩シュウ酸−シュウ酸塩緩衝液を有する溶液中で、本明細書に記載されているマンガン錯体の3つの架橋配位種のうち2つを形成し得る。
【0033】
水性反応媒体は、相転移剤及び/又は界面活性剤も含有し得る。本発明の方法で使用され得る公知の相転移剤には、第四級アルキルアンモニウム塩が含まれる。本発明の方法で使用され得る公知の界面活性剤には、Union Carbideから入手可能なTritonX100(商標)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性反応媒体は少なくとも微量のプロピレンを含有することが有益であると考えられる。これは純粋に仮説であるが、プロピレンの存在が触媒を活性状態に保つと考えられるのに対して、プロピレンが存在しないと、及び/又はプロピレンが存在せずに、PO及び/又は酸化剤が存在することによって、活性触媒の活性は減少すると考えられる。
【0034】
触媒的酸化のための反応条件は、当業者によって素早く決定され得る。エポキシ化は、加圧下又は大気圧下の何れかで実施される。反応は、発熱性であると考えられ、反応媒体の冷却が必要とされ得る。反応は、5℃から40℃、好ましくは、5℃から30℃の任意の温度で好ましく実施される。
【0035】
本発明の高い選択性とターンオーバー数を達成するために、触媒及び酸化剤は、(プロピレンとの反応のために)1:100から1:10,00,000、より好ましくは1:500から1:100,000、さらに好ましくは、1:1000から1:50,000のモル濃度比で好ましく組み合わされる。
【0036】
プロピレン対過酸化水素のモル濃度比は、本発明の方法において極めて重要である。使用される過酸化水素が多すぎると、プロパン−1,2−ジオールなどの望ましくない副産物の生成のために、所望のエポキシドに対する選択性が減少し、又は酸化剤の著しい無駄が伴う。十分な過酸化水素が使用されないと、ターンオーバー数は最適を下回る。従って、これは、過酸化水素の過剰量が使用される従来技術に記載されている漂白条件とは大幅に異なる。プロピレンは、好ましくは、酸化剤に対して過剰で使用され得る。過酸化水素に対するプロピレンのモル濃度比は、約1:1から約10:1(あるいは、約1:1.2から約2:1)、例えば、約1:1など、1:2超から約10:1の範囲内であり得る。過酸化物の使用に関するエポキシドの収率は、約70%から約99.7%、例えば、約89%である。POへのプロピレンの転化は、本明細書の以下で論述されている。反応条件に応じて、反応は、1つの相、すなわち、水相中で、又は有機相と水相を含む2層系で実施され得る。
【0037】
反応条件下におけるプロピレンの存在下での反応混合物の状態は、以下に論述されている。
【0038】
濃度が反応媒体中でその最高溶解度を下回る割合でプロピレンが供給され、及び濃度が反応媒体中でPOの最大溶解度を下回る量で、POが形成される場合には、反応系は単相である。
【0039】
しかしながら、濃度が反応媒体中でその最大溶解度を上回る割合でプロピレンが供給される場合には、反応温度と圧力に応じて、プロピレンは、別個の気相又は液相を形成する。例えば、プロピレンは、1バールの分圧で、約0.4g/Lの溶解度(20℃での、水1L当たりのグラム数で表される。)を有する。プロピレンが気相として又は本明細書の以下に記載されている条件下で導入されると、プロピレンの溶解度は、異なる分圧条件下で変化し得る。
【0040】
低圧及び/又は高温条件(例えば、10℃以上及び1バール)では、プロピレンは、別個の気相を形成し得る。反応媒体を離れたプロピレンは、好ましくは、リサイクルされる。十分に低圧及び/又は高温の条件の場合には、反応中に形成されたPOは、気体としても、反応媒体を離れ得る(例えば、40℃及び1バール)。POがリサイクルされるプロピレン気体と一緒に反応混合物から取り除かれる点で、これは有利である。POは、リサイクルされるプロピレンを冷却することによって、プロセスから回収される。その場合には、POは、凝結によってプロセスから除去される。しかしながら、当業者に公知であるように、PO除去の他の方法も、本発明から除外されない。圧力及び温度条件が、プロピレンを気体として存在させるのに十分であるが、POを除去させるのには不十分な場合には、このような方法が必要であり得る。酸化プロピレンは、その後、反応媒体中に溶解されたままとなり、又は濃縮が溶解度を超えたら、別個の有機相を形成する場合さえある。
【0041】
圧力がプロピレンを液化するのに十分高く(例えば、30バール)、及びプロピレンが反応媒体中でその最大溶解度を超えれば、プロピレンは別個の有機相として存在する。この場合には、反応中に形成されたPOは、反応媒体中に溶解され得、及び/又はプロピレン相(有機相)中に溶解され得る。一部又は全部の反応混合物が超臨界状態になる反応条件も、本発明の一部である。
【0042】
好ましくは、プロピレンは、反応媒体中に気体として微細に分散され、過剰に供給されたプロピレン及び反応媒体を気体として離れる過剰のプロピレンはリサイクルされる。最も好ましくは、反応中に形成されるPOが気体として反応媒体を離れるように、反応温度及び圧力並びにPO濃度が選択される。より好ましくは、POは、プロピレンリサイクルによって除去されている反応媒体を離れ、POは凝結によってプロピレンリサイクルから回収される。
【0043】
最も好ましくは、反応は、5℃と40℃の範囲内の温度で、及び0.9から9バールの範囲の圧力で実施される。
【0044】
本発明の触媒的酸化は、好ましくは、過酸化水素を酸化剤として用いて実施される。他の酸化剤を使用し得る(すなわち、過酸化水素の前駆体として)が、利用可能性に鑑みて、及び環境への影響を低減するために、過酸化水素が好ましい酸化剤である。過酸化水素は、強い酸化特性を有する。漂白剤として、主として紙を漂白するために使用されている。過酸化水素は、典型的には、水溶液中で使用される。過酸化水素の濃度は、15%(例えば、髪を漂白するための家庭用等級)から98%(噴射剤等級)まで変動し得、産業用の等級としては、20から60%、好ましくは30から50%が好ましい。
【0045】
最適な酸化剤効率を確保するために、酸化剤は、触媒的酸化の反応速度にほぼ等しい速度で、水性反応媒体に好ましく添加される。
【0046】
触媒的酸化は、バッチプロセスで、連続的プロセスで、又は半連続的プロセスで実施され得る。実際には、本発明の核心から逸脱することなく、前記方法は様々な側面で改変され得る。
【0047】
一般的な例として、プロピレンの触媒的酸化が以下に記載されている。
【0048】
触媒的酸化は、撹拌の手段が付与された一般的な撹拌されたタンク反応装置中で実施され得る。例えば、これは、約400rpmの撹拌速度で運転されている一般的な防爆性羽根式撹拌装置であり得る。触媒、水性反応媒体及び反応試薬は、一度に添加され得、又は反応試薬は時間をかけて添加され得る。反応中に、過酸化水素が添加される場合、過酸化水素は、プロピレンを含む(撹拌された)有機相又は(撹拌された)水性反応媒体の何れかに添加される。(半)連続的操作では、反応条件を制御するために(5℃と40℃の間の温度に維持される。)及び生成速度を最適化するために、様々なリサイクルストリームが使用され得る。
【0049】
以下の例は、本発明の選択された実施形態をより完全に例示する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で参照されている全ての部、パーセント及び割合は、別段の記載がなければ、重量である。
【0050】
実験
触媒的酸化は、式:
【0051】
【化1】

の触媒として、二核マンガン錯体を用いて実施された。
【0052】
本発明に係る実施例では、シュウ酸塩/シュウ酸緩衝液を使用し、酸化剤として35%H水溶液及び水性反応媒体として水(純)を使用した。実験は、プロピレンを末端オレフィンとして用いて実施した。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
プロピレンの触媒的エポキシ化は、機械的撹拌装置、冷却ジャケット及び底弁で促進された4つ首ガラス反応装置中において、5℃で、[(TmTacn)MnIV(μ−O)2+(CHCOOを触媒として用いて行った。微細な気泡の形態で、反応装置中にプロピレンを送るために、スパージャー(多孔性)を使用した。生成物である酸化プロピレンを集めるために、反応装置の気体排出口を冷たい捕捉装置に接続した。酸化プロピレンを集めるために、冷たい捕捉装置中の溶媒として水を使用した。エポキシ化で再利用するため、未反応のプロピレンを安全に通過させるために、排出口は冷たい捕捉装置に配置した。
【0054】
プロピレン:過酸化水素:触媒:共触媒のモル濃度比は、過剰のプロピレン(過酸化水素に対して過剰のプロピレン、従って、4300より大きい):4300:1:59であった。
【0055】
水140mL中に、触媒約69μmolを添加した後、HO80mL中のシュウ酸ナトリウム2mmol及びHO80mL中のシュウ酸2mmolを、撹拌条件下にあるガラス反応装置中に添加した。プロピレンの投与を始める前に、触媒及び緩衝液を10分間撹拌した。反応は、酸化剤として希Hを添加することによって開始した。10mL/時間の流速で、反応溶液中に酸化剤の合計300mmolを添加した。酸化剤の投与は最初の2.8時間で完了し、計3時間反応を継続した。反応後、Hの残存レベルを測定するために、反応装置中の水溶液を分析した。反応装置中の未反応の過酸化水素は、NaSOで消去した。次いで、反応装置中の水溶液及び冷たい捕捉装置中の水溶液をGCによって分析した。
【0056】
2つの溶液から得られたPOの総量は15.5gであり、これは、300mmolの理論的最大生成量に対して266mmolに相当する。反応中で形成された唯一の副産物は、プロパン−1,2−ジオールであったが、0.06g(0.76mmolに相当)という無視できる量であった。反応の終了時に、Hの0.06重量%が反応混合物中に残存しており、6mmolに相当する。酸化プロピレンの選択性は99.7%であり、過酸化物の使用に関するエポキシドの収率は89%である。
【0057】
[実施例2](比較実験)
プロピレンの触媒的エポキシ化は、上記実施例1と同様に実施したが、EP0618202A1の実施例1に記載されているように、NaHCO緩衝液の存在下で、[(TMTACN)MnIV(μ−O)2+(PFを用いて実施した。0.1MNaHCO緩衝液300mL及び[(TMTACN)MnIV(μ−O)2+(PF触媒0.008Mを含有する反応装置中に、プロピレン気体を、微細な気泡として、継続的に送り込んだ。水中の35重量%過酸化水素を添加して、反応を開始する。希Hの合計300mmolを10mL/時間の流速で2.8時間添加し、反応を3時間継続する。実施例1と同様に、反応後に、反応装置中の水溶液と冷たい捕捉装置中の水溶液をGCによって分析した。反応装置中の残存過酸化水素は、92mmolであることが明らかとなる。反応中に生成されたPOは、1%未満であった。3時間の反応中に、Hの合計208mmolが、HO及びOに分解された。
【0058】
[実施例3](比較実験)
プロピレンの触媒的エポキシ化は、上記実施例1と同様にして実施したが、「Tetrahedron Letters 39(1998)3221」中のDeVosの論文の表1に記載されているように、シュウ酸塩緩衝液中のMnSO、TmTacnによって得られるインサイチュ触媒系を用いて実施した。可溶性触媒系は、アセトニトリルを溶媒として使用する場合にのみ、インサイチュで生成され得ることに留意すべきである。他方、溶媒として水を用いてこの方法を繰り返すと、可溶性触媒は形成されなかった。
【0059】
水300mLに、TmTacn配位子0.45mmol、MnSO0.3mmol、続いて、シュウ酸0.45mmol及びシュウ酸ナトリウム緩衝液0.45mmolを撹拌条件下で添加した。プロピレン:MnSO:TMTACN:共触媒:Hのモル濃度比は、過剰:1:1.5:1000であった。35重量%の希Hの合計300mmolを10mL/時間の流速で2.8時間添加し、反応を3時間継続する。反応中に生成されたPOは、2.8gのPO(48mmolに相当する。)及びプロパン−1,2−ジオール0.04mmolであった。反応の終了までに、残存するHは275mmolで測定された。酸化プロピレンの選択性は、99.9%である。しかしながら、添加された過酸化水素に関するエポキシドの収率は、16%に過ぎない。
【0060】
[実施例4](比較実験)
プロピレンの触媒的エポキシ化は上記実施例1と同様に実施したが、尿素あり及び尿素なしで、WO2005/095370の実施例1で使用されている触媒系を用いた。
【0061】
水300mLに、MnSO・HO0.0006mol、NaHCO0.18mol、続いて、ドデカン0.08molを撹拌条件下で添加した。水中の35重量%Hの合計300mmolを、10mL/時間の流速で、2.8時間添加した。反応を3時間継続する。反応中に生成されたPOは、2.1gのPO(37mmolに相当する。)であった。POの選択性は、97%である。添加された過酸化物に関するエポキシドの収率は、13%に過ぎない。反応の終了時点で、反応混合物中の残存過酸化水素は、3mmolである。
【0062】
尿素5molを添加すると(水の中に可溶性である尿素の最大量)、反応中に生成されたPOは6g(103mmolに相当する。)であった。POの選択性は、100%である。添加された過酸化水素に対するエポキシドの収率は、添加した尿素の結果として増加したが、34%という低い値に留まった。反応の終了時点で、反応混合物中の残存過酸化水素は、2mmolである。
【0063】
結果と考察
[実施例1]
実施例1は、本発明に係る実施例である。実施例1では、添加された過酸化水素に対するエポキシドの収率は、99.7%のPOの選択性で、89%であった。本実験条件下では、形成されたPOの大半の量は反応混合物中に存在し、POの極く少量が蒸発し、冷たい捕捉装置中で収集された。
【0064】
水中でのプロピレンの溶解度は低いが(5℃及び大気圧で0.7g/L、実施例1に対する条件)、本触媒系の高い活性の故に、プロピレンのエポキシ化は、驚くべきことに、支障なく起こった。
【0065】
[実施例2]
EP0618202の触媒系は、水溶性オレフィンに対して、水の中で活性を有する。プロピレンを用いた予備的実験は、プロピレンのような水に不溶性のオレフィンに対しては適さないことを当業者に教示する。むしろ、この触媒系は、Hの触媒的分解において活性を示す。
【0066】
従って、当業者は、水中でプロピレンの触媒的エポキシ化を実行可能であると仮定する理由を全く持たなかった。
【0067】
[実施例3]
当業者は、DeVosの論文の触媒は、学術的な興味のみを与えると考えた。その中で開示されている方法は、溶媒としてアセトニトリルを使用したときに、可溶性の触媒をもたらすが、水を溶媒として使用したときには可溶性の触媒をもたらさない。実際、可溶性触媒の調製を試みると、この緩衝液系は悪い方向に作用するようである。可溶性触媒を形成しなかったので、実施例3は、本発明の範囲外である。何れにしろ、添加された過酸化水素に関するエポキシドの収率は、16%に過ぎなかった。さらに、エポキシ化は反応工程の最後でのみ起こり、過酸化水素の残存量が消去されたという証拠が存在するので、これは、反応試薬として過酸化水素を使用するのに極めて非効率的な様式である。
【0068】
[実施例4]
比較実験4中の触媒系は、Hの大量(260mmol)をHOとOに効率的に分解した。さらに、ドデカン(水中に5重量%)を含有するので、この系内の反応混合物は100%水であるというわけではない。
【0069】
尿素は、おそらくは、その後エポキシ化のための酸化剤として作用する尿素過酸化水素の形成によって、エポキシ化を改善させるのに役立つように見受けられる。しかしながら、尿素の(大量の)使用は、単純に、経済的でない。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤でのプロピレンの触媒的酸化によって、酸化プロピレン(「PO」)を製造するための方法であって、前記触媒的酸化が、共溶媒の10容量%未満とともに水を含む水性反応媒体中で行われ、水溶性マンガン錯体が酸化触媒として使用され、
前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y (I)
の単核種又は一般式(II):
[LMn(μ−Χ)ΜnL]Y (II)
の二核種
(Mnは、マンガンであり、L又はそれぞれのLは、独立に、多座配位子であり、各Xは、独立に、配位種であり、及び各μ−Xは、独立に、架橋配位種であるのに対して、Yは、非配位性対イオンである。)
であり、及び触媒的酸化が1.5から6.0の範囲のpHで実施されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
触媒が、一般式(I):
[LMnX]Y (I)
の単核マンガン錯体又は一般式(II):
[LMn(μ−Χ)ΜnL]Y (II)
の二核マンガン錯体
(Mnは、マンガンであり、L又はそれぞれのLは、独立に、多座配位子、好ましくは、3個の窒素原子を含有する環状又は非環状化合物であり、各Xは、独立に、配位種であり、並びに各μ−Xは、独立に、RO、Cl、Br、I、F、NCS、N、I、NH、NR、RCOO、RSO、RSO、OH、O2−、O2−、HOO、HO、SH、CN、OCN及びS2−及びこれらの組み合わせ(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるC−C20基である。)からなる群から選択される架橋配位種であり、並びにYは、非配位性対イオンである。)
を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
1つ又は複数の配位子が、それぞれ少なくとも2つの炭素原子によって隔てられた窒素原子を有する、骨格中に少なくとも7個の原子を含有する非環状化合物又は環中に少なくとも9個の原子を含有する環状化合物から選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
二核水溶性マンガン錯体が触媒として使用される、請求項1から3の何れかの方法。
【請求項5】
触媒が、1:100から1:10,000,000の、好ましくは1:500から1:100,000の、最も好ましくは1:50から1:50,000の触媒(Mn)対酸化剤のモル濃度比で使用される、請求項1から4の何れかの方法。
【請求項6】
水性反応媒体が水相である、請求項1から5の何れかの方法。
【請求項7】
水性反応媒体が、1.5から5.0、好ましくは2.0から4.0の範囲にpHを安定化させるために緩衝系を含む、請求項1から6の何れかの方法。
【請求項8】
反応が、5℃と40℃の範囲内の温度で、及び0.9から9バールの範囲の圧力で実施される、請求項1から7の何れかの方法。
【請求項9】
酸化剤が、15%から98%の濃度で、好ましくは、20から60%、より好ましくは、30から50%の濃度で、水溶液として使用される、請求項1から8の何れかの方法。
【請求項10】
反応媒体が水相であり、及びプロピレンが微細に分散された気相として存在し、及びPOが液相中に溶解されて存在する、請求項1から9の何れかの方法。
【請求項11】
反応媒体が液相であり、及びプロピレンが微細に分散された気相として存在し、及び前記POの一部が未反応のプロピレンとともに、気体として反応媒体を離れる、請求項1から10の何れかの方法。
【請求項12】
反応媒体が水相であり、及びプロピレンも別個の液相として存在し得る、請求項1から11の何れかの方法。
【請求項13】
反応媒体が水相であり、並びにプロピレン及び酸化プロピレンが別個の液相として存在する、請求項1から12の何れかの方法。
【請求項14】
触媒的酸化の反応速度にほぼ等しい速度で、酸化剤が水性反応媒体に添加される、請求項1から13の何れかの方法。
【請求項15】
触媒的酸化が、バッチ工程で、連続的工程で又は半連続的工程で実施される、請求項1から14の何れかの方法。
【請求項16】
プロピレン:酸化剤の比が、1:2超から約10:1である、請求項1から15の何れかの方法。

【公表番号】特表2013−512205(P2013−512205A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540310(P2012−540310)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007107
【国際公開番号】WO2011/063937
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(511026854)モーメンテイブ・スペシヤルテイ・ケミカルズ・インコーポレーテツド (7)
【Fターム(参考)】